(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】研究支援システム、研究支援装置、研究支援方法及び研究支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20230417BHJP
【FI】
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2019081038
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504217812
【氏名又は名称】ジェネシスヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】宮原 武尊
(72)【発明者】
【氏名】森田 良平
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジュニア タンバリタン
【審査官】後藤 昂彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097895(JP,A)
【文献】特開2018-110015(JP,A)
【文献】特開2019-021080(JP,A)
【文献】特表2016-540316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0294110(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研究に自らの情報を提供する複数の提供者が用いる複数の提供者端末と、前記研究を行う研究者が用いる研究者端末と、前記複数の提供者端末及び前記研究者端末と通信可能な研究支援装置と、を備える研究支援システムであって、
前記研究支援装置は、
前記提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を前記研究に提供する表明を、前記提供者端末から取得する取得部と、
前記表明が得られた複数の提供者情報の中から、前記研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出する抽出部と、
前記複数の提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、前記研究への参加を案内する案内部と、
前記研究に参加した提供者に報酬を付与する付与部と、を有する、
研究支援システム。
【請求項2】
前記研究支援装置は、
前記研究を行う機関に対して、手数料の請求を行う請求部をさらに有する、
請求項1に記載の研究支援システム。
【請求項3】
前記付与部は、前記報酬としてポイントを付与し、
前記ポイントは、電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換可能である、
請求項1又は2に記載の研究支援システム。
【請求項4】
前記研究者端末は、
前記研究支援装置により抽出された複数の提供者情報を、性別、年代及び居住地の少なくともいずれかで分類して表示する表示部を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項5】
前記研究者端末は、
前記条件の入力を受け付ける入力部と、
前記条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で表示する表示部と、を有する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項6】
前記提供者端末は、
前記研究に提供する提供者情報の種類及び用途の入力を受け付ける入力部を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項7】
前記提供者端末は、
前記案内とともに、前記報酬の額を表示する表示部を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項8】
前記提供者情報は、既往歴に関する情報、生活習慣に関する情報及び近親者の既往歴に関する情報の少なくともいずれかをさらに含む、
請求項1から7のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項9】
前記案内部は、前記提供者端末に対して、前記提供者情報に基づいて生成される、生活習慣改善のアドバイスを提供する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の研究支援システム。
【請求項10】
提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、前記提供者が用いる提供者端末から取得する取得部と、
前記表明が得られた複数の提供者情報の中から、前記研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出する抽出部と、
前記提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、前記研究への参加を案内する案内部と、
前記研究に参加した提供者に報酬を付与する付与部と、
を備える研究支援装置。
【請求項11】
研究支援装置に、
提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、前記提供者が用いる提供者端末から取得することと、
前記表明が得られた複数の提供者情報の中から、前記研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出することと、
前記提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、前記研究への参加を案内することと、
前記研究に参加した提供者に報酬を付与することと、
を実行させる研究支援方法。
【請求項12】
研究支援装置に、
提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、前記提供者が用いる提供者端末から取得することと、
前記表明が得られた複数の提供者情報の中から、前記研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出することと、
前記提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、前記研究への参加を案内することと、
前記研究に参加した提供者に報酬を付与することと、
を実行させる研究支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研究支援システム、研究支援装置、研究支援方法及び研究支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩基配列情報と疾患リスクの関係を解析した結果を用いて、個人の塩基配列情報に基づいて、当該個人がどのような疾患リスクを有するか提供するサービスが行われている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、対象ユーザの遺伝子検査結果を参照することによって算出された各疾患の発症リスクの度合いを示す軸を第1軸とし、該各疾患に関する統計学的な値を示す軸を第2軸として、発症リスクの度合いと該疾患に関する統計学的な値とを示す位置に該疾患に対応するオブジェクトが配置された画面のデータを生成するデータ生成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
塩基配列情報と疾患リスクの関係の解析等の遺伝子解析は、多様な属性の人から塩基配列情報を集めて、統計的な傾向を見出すことで行われる。
【0006】
しかしながら、塩基配列情報は、有志の提供者から収集されることが多く、研究機関は、求める種類の情報を手に入れることが困難な場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようにする研究支援システム、研究支援装置、研究支援方法及び研究支援プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る研究支援システムは、研究に自らの情報を提供する複数の提供者が用いる複数の提供者端末と、研究を行う研究者が用いる研究者端末と、複数の提供者端末及び研究者端末と通信可能な研究支援装置と、を備える研究支援システムであって、研究支援装置は、提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、提供者端末から取得する取得部と、表明が得られた複数の提供者情報の中から、研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出する抽出部と、複数の提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、研究への参加を案内する案内部と、研究に参加した提供者に報酬を付与する付与部と、を有する。
【0009】
この態様によれば、研究に参加した提供者に報酬を付与することで、研究に参加するインセンティブを与えることができ、より多くの提供者情報を収集して、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0010】
上記態様において、研究支援装置は、研究を行う機関に対して、手数料の請求を行う請求部をさらに有してもよい。
【0011】
この態様によれば、研究機関から手数料を徴収することで、提供者に付与する報酬を賄うことができる。また、研究機関は、個別に提供者を探す場合よりも低廉な料金で提供者情報を入手することができる。
【0012】
上記態様において、付与部は、報酬としてポイントを付与し、ポイントは、電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換可能であってもよい。
【0013】
この態様によれば、研究支援システムで付与するポイントを、提供者の利用する電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換可能とすることで、研究に参加するインセンティブをさらに高めることができる。
【0014】
上記態様において、研究者端末は、研究支援装置により抽出された複数の提供者情報を、性別、年代及び居住地の少なくともいずれかで分類して表示する表示部を有してもよい。
【0015】
この態様によれば、抽出された複数の提供者情報が、所望の属性の提供者から提供されたものであるかを容易に確認することができる。
【0016】
上記態様において、研究者端末は、条件の入力を受け付ける入力部と、条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で表示する表示部と、を有してもよい。
【0017】
この態様によれば、提供者情報を抽出するための条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で表示することで、疾患に関係する条件のスクリーニングを容易に行うことができるようになる。
【0018】
上記態様において、提供者端末は、研究に提供する提供者情報の種類及び用途の入力を受け付ける入力部を有してもよい。
【0019】
この態様によれば、研究に提供する提供者情報の種類及び用途を提供者がコントロールすることができ、提供者情報の提供に対する抵抗感を低減することができる。
【0020】
上記態様において、提供者端末は、案内とともに、報酬の額を表示する表示部を有してもよい。
【0021】
この態様によれば、報酬の額を考慮して研究に参加するか否かを判断することができるようになり、予測可能性を高めて、提供者が研究に参加する抵抗感を低減することができる。
【0022】
上記態様において、提供者情報は、既往歴に関する情報、生活習慣に関する情報及び近親者の既往歴に関する情報の少なくともいずれかをさらに含んでもよい。
【0023】
この態様によれば、塩基配列情報だけでなく、既往歴、生活習慣及び近親者の既往歴の少なくともいずれかを用いて提供者情報を抽出する条件を設定することができ、提供者情報をより細かく限定した研究を行うことができるようになる。
【0024】
上記態様において、案内部は、提供者端末に対して、提供者情報に基づいて生成される、生活習慣改善のアドバイスを提供してもよい。
【0025】
この態様によれば、提供者に対して、報酬とは異なる形で研究に参加するインセンティブを与えることができ、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0026】
本発明の他の態様に係る研究支援装置は、提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、提供者が用いる提供者端末から取得する取得部と、表明が得られた複数の提供者情報の中から、研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出する抽出部と、提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、研究への参加を案内する案内部と、研究に参加した提供者に報酬を付与する付与部と、を備える。
【0027】
この態様によれば、研究に参加した提供者に報酬を付与することで、研究に参加するインセンティブを与えることができ、より多くの提供者情報を収集して、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0028】
本発明の他の態様に係る研究支援方法は、研究支援装置に、提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、提供者が用いる提供者端末から取得することと、表明が得られた複数の提供者情報の中から、研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出することと、提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、研究への参加を案内することと、研究に参加した提供者に報酬を付与することと、を実行させる。
【0029】
この態様によれば、研究に参加した提供者に報酬を付与することで、研究に参加するインセンティブを与えることができ、より多くの提供者情報を収集して、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0030】
本発明の他の態様に係る研究支援プログラムは、研究支援装置に、提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、提供者が用いる提供者端末から取得することと、表明が得られた複数の提供者情報の中から、研究を行う研究者が用いる研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出することと、提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末に対して、研究への参加を案内することと、研究に参加した提供者に報酬を付与することと、を実行させる。
【0031】
この態様によれば、研究に参加した提供者に報酬を付与することで、研究に参加するインセンティブを与えることができ、より多くの提供者情報を収集して、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようにする研究支援システム、研究支援装置、研究支援方法及び研究支援プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る研究支援システムのネットワーク構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る研究支援装置の機能ブロックを示す図である。
【
図3】本実施形態に係る研究支援装置の物理的構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る研究者端末の表示部に表示される第1画面例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る研究者端末の表示部に表示される第2画面例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る研究者端末の表示部に表示される第3画面例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る提供者端末の表示部に表示される第1画面例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る提供者端末の表示部に表示される第2画面例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る提供者端末の表示部に表示される第3画面例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る提供者端末の表示部に表示される第4画面例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る提供者端末の表示部に表示される第5画面例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る研究支援システムにより実行される研究支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る研究支援システム100のネットワーク構成を示す図である。本実施形態に係る研究支援システム100は、研究支援装置10、第1提供者端末20、第2提供者端末30及び研究者端末40を含む。
【0036】
第1提供者端末20及び第2提供者端末30は、研究に自らの情報を提供する複数の提供者が用いる複数の提供者端末である。第1提供者端末20及び第2提供者端末30は、汎用のコンピュータで構成されてよく、例えばスマートフォンで構成されてよい。本明細書では、複数の提供者端末を総称して提供者端末20と記載する。
【0037】
研究に自らの情報を提供する提供者は、提供者端末20を用いて、自らの遺伝子検査の結果を研究に用いる同意を研究支援装置10に送ったり、自らの生活習慣に関するアンケートに答えたり、自らの既往歴や身体情報を研究支援装置10に送ったりする。
【0038】
研究者端末40は、研究を行う研究者が用いる端末であり、汎用のコンピュータで構成されてよい。研究者は、研究者端末40を用いて、研究において必要とされる種類の塩基配列情報を持つ提供者に対して、研究への参加を案内する。なお、研究支援システム100は、複数の研究機関に所属する複数の研究者が用いる複数の研究者端末を含んでよい。
【0039】
研究支援装置10は、第1提供者端末20、第2提供者端末30及び研究者端末40と通信ネットワークNを介して通信可能であり、汎用のコンピュータで構成されてよい。研究支援装置10は、提供者端末20から、提供者の遺伝子検査の結果等を研究に提供する表明を取得し、研究機関が求める種類の情報を持つ提供者に対して、研究への参加を案内する。そして、研究に参加した提供者に対して、研究支援システム100で用いることのできるポイント等の報酬を付与する。
【0040】
図2は、本実施形態に係る研究支援装置10の機能ブロックを示す図である。研究支援装置10は、取得部11、提供者情報データベース12、抽出部13、案内部14、付与部15及び請求部16を備える。また、第1提供者端末20は、入力部21及び表示部22を備える。第2提供者端末30は、入力部31及び表示部32を備える。研究者端末40は、入力部41及び表示部42を備える。
【0041】
取得部11は、提供者の塩基配列情報を含む提供者情報を研究に提供する表明を、提供者端末20から取得する。提供者情報を研究に提供する表明は、提供者端末20に同意書を表示し、その内容に同意する情報を研究支援装置10に送信することで行われてよい。
【0042】
提供者情報データベース12は、複数の提供者から収集した提供者情報を記憶する。ここで、提供者情報は、既往歴に関する情報、生活習慣に関する情報及び近親者の既往歴に関する情報の少なくともいずれかをさらに含んでよい。塩基配列情報は、提供者に関する遺伝子検査によって得られてよい。また、既往歴に関する情報、生活習慣に関する情報及び近親者の既往歴に関する情報は、提供者端末20を用いて、提供者にアンケートを実施することで得られてよい。このように、塩基配列情報だけでなく、既往歴、生活習慣及び近親者の既往歴の少なくともいずれかを用いて提供者情報を抽出する条件を設定することができ、提供者情報をより細かく限定した研究を行うことができるようになる。
【0043】
抽出部13は、提供者情報を研究に提供する表明が得られた複数の提供者情報の中から、研究者端末40から指定された条件に合致する提供者情報を抽出する。抽出した提供者情報が妥当であるか確認するため、研究者端末40の表示部42は、研究支援装置10により抽出された複数の提供者情報を、性別、年代及び居住地の少なくともいずれかで分類して表示してよい。これにより、抽出された複数の提供者情報が、所望の属性の提供者から提供されたものであるかを容易に確認することができる。
【0044】
研究者端末40の入力部41は、提供者情報を抽出する条件の入力を受け付け、表示部42は、条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で表示してよい。表示部42は、例えば、提供者情報を絞り込むための条件として、特定の疾患のリスクと高い相関があるアンケート項目を、他の項目より目立つ態様で表示してよい。例えば、複数のアンケート項目のうち、特定の疾患のリスクとの相関が最も大きい項目を、他の項目と異なる色で表示したり、下線を引いて表示したり、太字にして表示したり、大きなフォントで表示したりしてよい。ここで、アンケート項目と特定の疾患との相関は、任意の統計的手法により算出されてよい。このように、提供者情報を抽出するための条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で表示することで、疾患に関係する条件のスクリーニングを容易に行うことができるようになる。
【0045】
案内部14は、複数の提供者端末のうち、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末20に対して、研究への参加を案内する。研究への参加の案内は、提供者端末20に研究の内容や参加条件を表示することで行われてよい。
【0046】
研究への参加を承諾した提供者は、研究機関において所定の期間にわたって研究に協力する。その後、研究が完了した場合、研究者端末40から研究支援装置10に対して、特定の提供者が研究に参加したことを証明する情報が送られてよい。
【0047】
付与部15は、研究に参加した提供者に報酬を付与する。研究に参加した提供者であるか否かは、研究者端末40から受信した証明情報に基づいて判定されてよい。報酬は、研究支援システム100で用いることのできるポイントとして付与されてよいが、現金や仮想通貨等で付与されてもよい。
【0048】
本実施形態に係る研究支援システム100によれば、研究に参加した提供者に報酬を付与することで、研究に参加するインセンティブを与えることができ、より多くの提供者情報を収集して、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0049】
付与部15は、報酬としてポイントを付与し、ポイントは、電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換可能であってもよい。ここで、電子商取引プラットフォームは、研究支援システム100と異なるプラットフォームである。研究支援システム100で付与するポイントを、提供者の利用する電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換可能とすることで、研究に参加するインセンティブをさらに高めることができる。
【0050】
請求部16は、研究を行う機関に対して、手数料の請求を行う。請求部16は、例えば、研究者端末40を通じて研究機関に手数料の請求を行ってよい。手数料は、提供者情報の収集及び研究機関と提供者のマッチングのために徴収されてよいが、その名目は任意である。このように、研究機関から手数料を徴収することで、提供者に付与する報酬を賄うことができる。また、研究機関は、個別に提供者を探す場合よりも低廉な料金で提供者情報を入手することができる。
【0051】
提供者端末20の入力部21は、研究に提供する提供者情報の種類及び用途の入力を受け付けてよい。これにより、研究に提供する提供者情報の種類及び用途を提供者がコントロールすることができ、提供者情報の提供に対する抵抗感を低減することができる。
【0052】
また、提供者端末20の表示部22は、研究への参加の案内とともに、報酬の額を表示してよい。これにより、報酬の額を考慮して研究に参加するか否かを判断することができるようになり、予測可能性を高めて、提供者が研究に参加する抵抗感を低減することができる。
【0053】
案内部14は、提供者端末20に対して、提供者情報に基づいて生成される、生活習慣改善のアドバイスを提供してもよい。アドバイスは、塩基配列情報や生活習慣に関するアンケートに基づいて予測される疾患のリスクを低減させるように生成されたものであってよい。このようなアドバイスを提供することで、提供者に対して、報酬とは異なる形で研究に参加するインセンティブを与えることができ、遺伝子解析の研究に必要となる情報を研究機関がより容易に手に入れることができるようになる。
【0054】
図3は、本実施形態に係る研究支援装置10の物理的構成を示す図である。研究支援装置10は、演算部に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10bと、記憶部に相当するROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では研究支援装置10が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、研究支援装置10は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、
図3で示す構成は一例であり、研究支援装置10はこれら以外の構成を有してもよいし、これらの構成のうち一部を有さなくてもよい。
【0055】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、研究者端末から指定された条件に合致する提供者情報を抽出し、その提供者に研究への参加を案内して、研究に参加した提供者に報酬を付与するプログラム(研究支援プログラム)を実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bやROM10cに格納したりする。
【0056】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行する研究支援プログラム、提供者情報といったデータを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよいし、これらの一部が記憶されていなくてもよい。
【0057】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば研究支援プログラムや、書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0058】
通信部10dは、研究支援装置10を他の機器に接続するインターフェースである。通信部10dは、インターネット等の通信ネットワークNに接続されてよい。
【0059】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0060】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、例えば、蓄積された提供者情報や、研究機関が実施する研究に関する情報を表示してよい。
【0061】
研究支援プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。研究支援装置10では、CPU10aが研究支援プログラムを実行することにより、
図2を用いて説明した様々な動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、研究支援装置10は、CPU10aとRAM10bやROM10cが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0062】
図4は、本実施形態に係る研究者端末40の表示部42に表示される第1画面例を示す図である。第1画面例は、提供者情報を抽出するための条件を設定するための画面例である。
【0063】
第1画面例は、提供者の性別を選択するラジオボタンG、提供者の居住する都道府県を選択する選択欄P、提供者の年代を選択する選択欄A、提供者情報を絞り込むための検索キーを入力する入力欄S、疾患のリストL1、調査のリストL2及び決定ボタンNを含む。
【0064】
ラジオボタンGは、「Female」、「Male」及び「Any」の選択肢を含み、提供者情報の性別を絞り込むために用いる。選択欄Pは、プルダウンメニューの中に全国の都道府県が選択肢として含まれ、提供者が居住する都道府県を絞り込むために用いる。提供者が居住する都道府県を絞り込むことで、研究機関に滞在する必要のある研究に適した提供者を抽出することができる。なお、都道府県ではなく、任意の地域区分で絞り込みができるようにしてもよい。
【0065】
選択欄Aは、年齢の下限を設定する「Min」の欄と、年齢の上限を設定する「Max」の欄を含む。入力欄Sは、自由文による検索キーの入力を受け付け、例えば、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)に入力を受け付けてよい。
【0066】
疾患のリストL1は、疾患名のリストであり、疾患名を検索キーとすることで、当該疾患の既往歴を有する提供者を抽出することができる。また、提供者本人だけでなく、提供者の親族が既往歴を有する場合についても抽出することができる。
【0067】
調査のリストL2は、既存の研究結果をまとめたリストであり、疾患に関係する生活習慣や身体特徴に関する情報のリストを含む。
【0068】
提供者情報を抽出する条件を設定した後、「Next」と記載された決定ボタンNを押下すると、
図6に示す第3画面例に遷移する。
【0069】
図5は、本実施形態に係る研究者端末40の表示部42に表示される第2画面例を示す図である。第2画面例は、生活習慣に関するアンケート結果によって提供者情報を絞り込むための画面例である。
【0070】
第2画面例は、アンケート項目Qを含む。本例では、絞り込みに用いる条件の候補を、2型糖尿病のリスクに応じた態様で表示している。具体的には、「朝食を摂る頻度についてお答えください」というアンケート項目Qについて、「ほとんど食べない」、「週に1~2回」、「週に3~5回」及び「それ以上」という回答項目があり、これらのうち「それ以上」という回答項目が他の項目より目立つ態様で表示されている。本例では、「ほとんど食べない」、「週に1~2回」、「週に3~5回」及び「それ以上」という4つの回答項目と2型糖尿病のリスクの相関を統計的手法により算出し、これらのうち相関が最大である「それ以上」という回答項目を、他の項目と区別できるように表示している。具体的には、「それ以上」という回答項目に下線を付し太字で表示して、他の項目より目立つ態様で表示している。これにより、疾患に関係する条件のスクリーニングを容易に行うことができるようになる。
【0071】
図6は、本実施形態に係る研究者端末40の表示部42に表示される第3画面例を示す図である。第3画面例は、研究支援装置10により抽出された提供者情報を分類して表示する画面例である。
【0072】
第3画面例は、研究支援装置10により抽出された提供者情報を分類したテーブルTを含む。テーブルTは、「Gender」、「Prefecture」及び「Count」の項目を含み、抽出された提供者情報を、性別及び居住地で分類して抽出数を示すものである。本例の場合、性別が「Male」であり、「A」に居住する提供者の提供者情報は、「10」だけ抽出されている。また、抽出された提供者情報の総数(Total)は「3120」である。
【0073】
研究者は、抽出する提供者情報を修正する場合、「BACK」と記載されたボタンBを押下して、第1画面例に戻り、提供者情報を抽出する条件を再設定する。一方、抽出された提供者情報を有する提供者に研究の案内を送る場合、「SUBMIT」と記載されたボタンSUBを押下して、研究への参加の案内を提供者端末20に送信する。
【0074】
図7は、本実施形態に係る提供者端末20の表示部22に表示される第1画面例を示す図である。第1画面例は、研究に提供する提供者情報の種類及び用途を入力する画面例である。
【0075】
第1画面例は、「提供してもよい業態・目的を選択して下さい。」と記載された案内メッセージ、「広告」と記載された第1項目D1、「創薬」と記載された第2項目D2、「保険」と記載された第3項目D3、「食品」と記載された第4項目D4、「化粧品」と記載された第5項目D5及び「研究開発」と記載された第6項目D6を含む。
【0076】
提供者は、各項目をタップしてオン・オフを選択することで、自らの提供者情報をいずれの業態・目的に提供することを許可するか選択する。本例の場合、広告及び保険の業態について、提供者情報を提供しないことが選択され、それ以外の業態・目的について、提供者情報を提供することが選択されている。
【0077】
図8は、本実施形態に係る提供者端末20の表示部22に表示される第2画面例を示す図である。第2画面例は、研究に提供する提供者情報の種類及び用途を入力する画面例である。
【0078】
第2画面例は、「提供してもよい情報を選択して下さい。」と記載された案内メッセージ、「遺伝子情報」と記載された第7項目D7、「基本情報」と記載された第8項目D8、「既往歴」と記載された第9項目D9、「家族の既往歴」と記載された第10項目D10、「アンケート情報(性格)」と記載された第11項目D11及び「アンケート情報(生活習慣)」と記載された第12項目D12を含む。
【0079】
提供者は、各項目をタップしてオン・オフを選択することで、自らの提供者情報のうちどのような種類の情報を提供するか選択する。本例の場合、遺伝子情報は提供が必須の項目であり、家族の既往歴を提供しないことが選択され、それ以外の種類の情報について、提供を許可することが選択されている。
【0080】
図9は、本実施形態に係る提供者端末20の表示部22に表示される第3画面例を示す図である。第3画面例は、参加募集中の研究を検索する画面例である。
【0081】
第3画面例は、参加募集中の研究を検索する検索キーの入力を受け付ける入力欄S、参加募集中の研究をカテゴリー毎にまとめたカテゴリー一覧C、参加募集中の研究を個別に表示するモニター欄Mを含む。
【0082】
本例では、カテゴリー一覧Cに「創薬」、「研究開発」、「食品」及び「化粧品」のカテゴリーが表示されており、いずれかのカテゴリーをタップすると、当該カテゴリーにおいて募集中の研究の内容が表示される。なお、第1画面例で除外したカテゴリーは、カテゴリー一覧Cに表示されない。
【0083】
本例では、モニター欄Mに「疾患A(研究機関X)」及び「疾患B(研究機関Y)」が表示されている。いずれかの項目をタップすると、当該項目の研究内容の詳細が表示される。提供者は、特定の疾患に関する研究に参加したり、特定の研究機関が行う研究に参加したりすることができる。
【0084】
図10は、本実施形態に係る提供者端末20の表示部22に表示される第4画面例を示す図である。第4画面例は、研究の内容と報酬の額を表示する画面例である。本例では、第3画面例のモニター欄Mの「疾患A(研究機関X)」を選択した場合に表示される画面例を示している。
【0085】
第4画面例は、「募集機関」と記載された第13項目D13、「募集人数」と記載された第14項目D14、「報酬(目安)」と記載された第15項目D15及び「募集目的」と記載された第16項目D16を含む。
【0086】
本例の場合、募集機関は「研究機関X」であり、募集人数は「健常者100名」であり、報酬の目安は「3,000ポイント」である。また、募集目的は、「疾患Aの治療薬の治験フェーズ1」に参加する人を募集することである。また、第4画面例には、注意事項が表示されている。
【0087】
提供者は、これらの項目に記載された内容を確認し、研究に参加する場合、「応募する」と記載されたボタンSUBを押下する。ボタンSUBを押下した後、研究機関から提供者に対して個別に研究の案内が送付されてよい。
【0088】
図11は、本実施形態に係る提供者端末20の表示部22に表示される第5画面例を示す図である。第5画面例は、研究支援システム100で得たポイントを、他の電子商取引プラットフォームのポイントに交換する画面例である。
【0089】
第5画面例は、「換金・振込申請」と記載された第17項目D17、「Aプラットフォームポイントに交換」と記載された第18項目D18、「Bプラットフォームポイントに交換」と記載された第19項目D19及び「寄付」と記載された第20項目D20を含む。
【0090】
提供者は、所望の項目を選択し、現在保有する「500」ポイントを、他の電子商取引プラットフォームのポイントに変換したり、換金したり、寄付したりする。なお、電子商取引プラットフォーム毎に、交換レートは異なっていてよい。
【0091】
図12は、本実施形態に係る研究支援システム100により実行される研究支援処理のフローチャートである。はじめに、研究支援装置10は、提供者端末20から、研究に提供する提供者情報の種類及び用途の入力を受け付け、提供者情報を研究に提供する表明を取得する(S10)。
【0092】
また、研究支援装置10は、研究者端末40から条件の入力を受け付け、条件の候補を、疾患のリスクに応じた態様で研究者端末40に表示させる(S11)。そして、研究支援装置10は、提供の表明が得られた複数の提供者情報の中から、指定された条件に合致する提供者情報を抽出し(S12)、抽出された複数の提供者情報を、性別、年代及び居住地の少なくともいずれかで分類して研究者端末40に表示する(S13)。
【0093】
その後、研究支援装置10は、抽出された提供者情報を有する提供者が用いる提供者端末20に対して、研究への参加を案内する(S14)。
【0094】
提供者が研究に参加した場合(S15:YES)、研究支援装置10は、研究に参加した提供者に報酬を付与する(S16)。そして、研究支援装置10は、提供者端末20の操作に応じて、報酬として付与されたポイントを、電子商取引プラットフォームで使用可能な他のポイントに交換する(S17)。また、研究支援装置10は、研究を行う機関に対して、手数料を請求する(S18)。なお、手数料の請求は、提供者が研究に参加した実績に応じて行ってもよいし、提供者が研究に参加したか否かに関わらず行ってもよい。以上により、研究支援処理が終了する。
【0095】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10…研究支援装置、10a…CPU、10b…RAM、10c…ROM、10d…通信部、10e…入力部、10f…表示部、11…取得部、12…提供者情報データベース、13…抽出部、14…案内部、15…付与部、16…請求部、20…第1提供者端末、21…入力部、22…表示部、30…第2提供者端末、31…入力部、32…表示部、40…研究者端末、41…入力部、42…表示部、100…研究支援システム