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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】スタート装置
(51)【国際特許分類】
   A63K 3/02 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A63K3/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019086071
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020179041
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500198210
【氏名又は名称】セイコータイムクリエーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松下 康裕
(72)【発明者】
【氏名】潮▲来▼ 卓司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 政文
(72)【発明者】
【氏名】福田 和宏
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-002289(JP,B1)
【文献】特表2015-527915(JP,A)
【文献】特開2012-254298(JP,A)
【文献】特開2017-151075(JP,A)
【文献】特開2007-050257(JP,A)
【文献】国際公開第2018/076170(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63K 1/00-99/00
A63B 69/00-69/40
A63B 71/00-71/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポーツ競技を行う競技者の足を支持するフット部を少なくとも有するスタート装置本体と、
前記スタート装置本体に取り付けられ、前記競技者を撮影する撮像部と、を備え
前記スタート装置本体は、陸上競技用の競技面上に固定されることを特徴するスタート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスタート装置において、
前記スタート装置本体は、トラックレーンのレーン方向に延びるレール部材を備え、
前記フット部は、前記レール部材を挟んで前記トラックレーンのレール幅方向に一対配置されると共に、スタートラインに最も近い最前方調整位置と前記スタートラインから最も離れた最後方調整位置との間で前記レーン方向に位置調整可能に、前記レール部材に対して離脱可能に組み合わされ、
前記撮像部は、前記フット部における前記最前方調整位置よりも前記スタートライン側に位置した状態で、前記レール部材に取り付けられている、スタート装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスタート装置において、
前記撮像部は、
上方を向いて配置され、スタート前における前記競技者を撮影する第1撮像部と、
前記トラックレーンの進行方向を向いて配置され、スタート後の前記競技者を撮影する第2撮像部と、を備えている、スタート装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスタート装置において、
前記第1撮像部は、前記レーン方向に角度調整可能に取り付けられ、
前記第2撮像部は、前記競技面に対して上下方向に角度調整可能に取り付けられている、スタート装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のスタート装置において、
前記レール部材には、前記第1撮像部及び前記第2撮像部の周囲を囲むと共に、上方及び前記トラックレーンの進行方向に開口した保護枠が取り付けられ、
前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、前記保護枠内に収容された状態で前記保護枠に取り付けられている、スタート装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスタート装置において、
少なくとも前記保護枠の内面には、可視光の光エネルギーを吸収する光吸収材が形成されている、スタート装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載のスタート装置において、
前記レール部材には、前記撮像部を覆うカバー体が取り付けられ、
前記カバー体のうち前記撮像部の撮像領域に位置する部分には、可視光を透過可能な透明部材が取り付けられている、スタート装置。
【請求項8】
請求項7に記載のスタート装置において、
前記カバー体の外表面には、前記透明部材に沿って配置されると共に、上方に向かって突出した突起リブが形成されている、スタート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ競技において、競技者のスタートを補助するために、一般的にスタート装置を利用することが行われている。例えば、陸上競技における短距離種目では、スタート装置としてスターティングブロック装置を利用することが一般的に行われている。
スターティングブロック装置は、競技面上に固定されるレール部材、及びレール部材に対して位置調整可能に組み合わされ、左右の足受け台である一対のフットブロックを主に備えている。
【0003】
この種のスターティングブロック装置は、例えばスタート練習用等に用いられる簡易的なものも含めると、多種多様なものが存在する。そのうち、例えばメジャーな陸上競技大会等に好適に用いられるスターティングブロック装置の1つとして、圧力センサ等が組み込まれ、不正スタート(フォールスタート)の判定を行うことが可能なスターティングブロック装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2759769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、各種のスポーツ競技のTV中継、インターネット中継等を行う場合には、原則、競技者の競技の妨げとならない位置から撮影を行っている。例えば陸上競技の場合には、トラックコース外に設置される撮影カメラ等を利用して競技者の撮影を行っている。
しかしながら、コース外に設置される撮影カメラでは、より迫力のある映像や、緊迫感及び躍動感のある映像を撮影し難い場合があり、視聴者等のニーズに十分に応える映像を撮影することが難しかった。
【0006】
特に陸上競技における短距離種目は、視聴者の関心が高い、いわゆる花形種目とされ、競技者の表情及び一挙手一投足等に対する視聴者の注目度は高い。そのため、より迫力のある映像や緊迫感のある映像等が求められる場合が多いが、現状、このようなニーズに十分に応えることが難しい。
具体的に説明すると、短距離種目におけるスタート時、競技者はスターティングブロック装置を利用したクラウチングスタートを行うので、コース外に設置される撮影カメラでは、スタート直前の下方に俯いた競技者の表情を撮影することが難しい。そのため視聴者は、スタート直前の競技者の表情の変化等についてまでは、視認することが難しいのが現状である。さらに、コース外に設置される撮影カメラでは、スタート直後の競技者の走り去る動作(挙動)をローアングルで撮影することも難しい。そのため視聴者は、スタート直後のダイナミックで躍動感のある競技者の動きを、あたかも間近でみているかの如く視認することが難しいのが現状である。
【0007】
なお、撮影カメラをスタート位置近くの競技面上に設置、或いは競技面に埋込み設置することは、競技自体の妨げに繋がるうえ、競技者のスパイクのピンが刺さらなくなる等の不都合を招いてしまう。
また、スタートラインと競技者との位置関係は必ずしも一定ではない。さらに、競技距離(100m、200m等)によって、スタート位置自体が異なってしまう。従って、撮影カメラを、競技者に合わせて競技面上に設置したり、埋め込み位置を変更したりすることは容易ではない。
このようなことから、撮影カメラの設置は現実的ではない。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、競技者のスタートを補助しつつ、スタート時における競技者の表情や挙動等の間近での撮影を可能とするスタート装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る本発明に係るスタート装置は、スポーツ競技を行う競技者の足を支持するフット部を少なくとも有するスタート装置本体と、前記スタート装置本体に取り付けられ、前記競技者を撮影する撮像部と、を備え、前記スタート装置本体は、陸上競技用の競技面上に固定されることを特徴する。
【0010】
本発明に係るスタート装置によれば、スタート装置本体自体に撮像部が取り付けられているので、例えばフット部を利用してスタートの姿勢を保持している競技者の表情を間近で撮影することが可能であるうえ、スタート直後の競技者の挙動(動作、動き)を間近で撮影することが可能である。
従って、競技者のスタートを補助しつつ、スタート時における競技者の表情や挙動等を間近で撮影することが可能となる。そのため、コース外に設置されるような従来の撮影カメラでは撮影することが困難な、迫力があり且つ緊迫感及び躍動感のあるような映像等を撮影することができる。
【0011】
(2)前記スタート装置本体は、トラックレーンのレーン方向に延びるレール部材を備え、前記フット部は、前記レール部材を挟んで前記トラックレーンのレール幅方向に一対配置されると共に、スタートラインに最も近い最前方調整位置と前記スタートラインから最も離れた最後方調整位置との間で前記レーン方向に位置調整可能に、前記レール部材に対して離脱可能に組み合わされ、前記撮像部は、前記フット部における前記最前方調整位置よりも前記スタートライン側に位置した状態で、前記レール部材に取り付けられても良い。
【0012】
この場合には、スタート装置を陸上競技の短距離種目のスタートに用いられるスターティングブロック装置として利用することができる。特に、撮像部は、フット部における最前方調整位置よりもスタートライン側に位置しているので、競技者が最前方調整位置と最後方調整位置との間において、どの位置にフット部をセットしたとしても、フット部に乗せた足先よりもスタートライン側に撮像部を配置することができる。
そのため、フット部を利用してクラウチングスタートの姿勢を保持し、下方に俯いている競技者のスタート前の表情を間近で撮影することが可能である。さらには、スタート直後の競技者の走り去る動作(挙動)をローアングルから間近で撮影することも可能である。従って、陸上競技における短距離種目において、迫力があり且つ緊迫感及び躍動感のあるような映像等を撮影することができる。
【0013】
また、スタートラインとスターティングブロック装置(スタート装置)との位置関係が一定でないとしても、スターティングブロック装置と競技者との位置関係は概ね固定されているため、競技者の表情を間近で撮影することが比較的容易となる。さらにスターティングブロック装置は、スタート位置に応じて設けられるものであるから競技距離に応じてスタート位置が変更されても問題がない。さらにスタート後や競技終了後、スターティングブロック装置と共に撮像部を容易に撤去することができるので、その後の競技に影響を与えることもない。
【0014】
(3)前記撮像部は、上方を向いて配置され、スタート前における前記競技者を撮影する第1撮像部と、前記トラックレーンの進行方向を向いて配置され、スタート後の前記競技者を撮影する第2撮像部と、を備えても良い。
【0015】
この場合には、主に第1撮像部を利用して、クラウチングスタートの姿勢での、下方に俯いている競技者のスタート前の表情を撮影することができる。また、主に第2撮像部を利用して、スタート直後の競技者の走り去る動作(挙動)をローアングルから撮影することができる。このように、2つの専用の撮像部を利用するので、競技者のスタート前の表情及びスタート直後の競技者の走り去る動作を、それぞれより明瞭に撮影し易い。
【0016】
(4)前記第1撮像部は、前記レーン方向に角度調整可能に取り付けられ、前記第2撮像部は、前記競技面に対して上下方向に角度調整可能に取り付けられても良い。
【0017】
この場合には、上方を向いて配置されている第1撮像部をレーン方向に角度調整することができるので、例えば競技者の年齢、性別や体形等に応じて、撮像範囲を微調整することができる。そのため、クラウチングスタートの姿勢によって下方に俯いている競技者のスタート前の表情を、さらに明瞭に撮影することができる。
同様に、トラックレーンの進行方向を向いて配置されている第2撮像部を上下方向に角度調整することができるので、例えば競技者の年齢、性別や体形等に応じて、競技面に対する仰角の調整を行いながら撮像範囲の微調整を行うことができる。そのため、スタート直後の競技者の走り去る動作(挙動)を、ローアングルから、さらに明瞭に撮影することができる。
【0018】
(5)前記レール部材には、前記第1撮像部及び前記第2撮像部の周囲を囲むと共に、上方及び前記トラックレーンの進行方向に開口した保護枠が取り付けられ、前記第1撮像部及び前記第2撮像部は、前記保護枠内に収容された状態で前記保護枠に取り付けられても良い。
【0019】
この場合には、保護枠内に第1撮像部及び第2撮像部を収容できるので、これら第1撮像部及び第2撮像部を安定且つ強固に取り付けることができ、長時間に亘って安定した撮影を行うことが可能である。
【0020】
(6)少なくとも前記保護枠の内面には、可視光の光エネルギーを吸収する光吸収材が形成されても良い。
【0021】
この場合には、少なくとも保護枠の内面に光吸収材が形成されているので、光吸収材を利用して外部からの可視光の光エネルギーを吸収することができる。そのため、第1撮像部及び第2撮像部の周辺において、例えば外光が乱反射してしまうことを防止することができ、外光の影響を受け難い状態で撮影を行える。従って、さらに明瞭な撮像を行うことができる。また、第1撮像部及び第2撮像部の周辺で外光が反射し難くなるので、競技者は眩しさ等を感じることなく、スタート動作を行える。
【0022】
(7)前記レール部材には、前記撮像部を覆うカバー体が取り付けられ、前記カバー体のうち前記撮像部の撮像領域に位置する部分には、可視光を透過可能な透明部材が取り付けられても良い。
【0023】
この場合には、透明部材を利用して撮影領域を確保しながら、カバー体によって撮像部を覆うことができるので、撮像部をできるだけ目立ち難くすることができ、競技者に違和感を与え難い。また、カバー体及び透明部材によって撮像部を覆うので、撮像部に塵埃や水分等が入り込むことを抑制でき、天候等に影響されることなく、長時間に亘って安定した撮影を行うことができる。
【0024】
(8)前記カバー体の外表面には、前記透明部材に沿って配置されると共に、上方に向かって突出した突起リブが形成されても良い。
【0025】
この場合には、カバー体の外表面に突起リブが形成されているので、例えば競技者が誤ってカバー体を踏んでしまったとしても、透明部材に対して直接的に外力が加わってしまうことを、突起リブを利用して防止することができる。特に、競技者が陸上用スパイクを履いている場合であっても、スパイクピンで透明部材を不意に傷付けてしまうことを、突起リブを利用して効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係るスタート装置によれば、競技者のスタートを補助しつつ、スタート時における競技者の表情や挙動等の間近での撮影を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るスターティングブロック装置(スタート装置)の実施形態を示す図であって、競技者がクラウチングスタートの姿勢を維持している状態を示す側面図である。
図2図1に示すスターティングブロック装置の斜視図である。
図3図2に示すスターティングブロック装置を後方から見た斜視図である。
図4図2に示すスターティングブロック装置における前方カバー体の周辺を拡大した斜視図であって、透明カバーを取り外した状態を示す図である。
図5図4に示す状態から前方カバー体を取り外した状態を示す斜視図である。
図6図2に示すスターティングブロック装置における後方カバー体の周辺を拡大した斜視図であって、後方カバー体を取り外した状態を示す図である。
図7図2に示すフットブロックの斜視図である。
図8図5に示す撮像部の周辺を拡大した斜視図である。
図9図8に示す撮像部の周辺を側方から見た側面図である。
図10図5に示す状態から保護枠を取り外した状態を示す斜視図である。
図11】本発明に係るスタート台(スタート装置)の実施形態を示す図であって、水泳プール側から見たスタート台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係るスタート装置の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、スタート装置の一例として、スポーツ競技の1つである陸上競技における短距離種目(例えば100M走、200M走等)で使用されるスターティングブロック装置を例に挙げて説明する。
【0029】
図1図3に示すように、本実施形態のスターティングブロック装置1は、競技者Aの足を支持する一対のフットブロック(本発明に係るフット部)10を少なくとも有するスターティングブロック本体(本発明に係るスタート装置本体)2と、スターティングブロック本体2に取り付けられ、競技者Aを撮影する撮像部3と、を備えている。
【0030】
スターティングブロック本体2は、陸上競技用の競技面であるタータントラック(全天候型トラック)T上に固定されるものであり、上述した一対のフットブロック10、及びトラックレーンLのレーン方向L1に延びるレール部材20を主に備えている。
【0031】
本実施形態では、競技者AがトラックレーンLの進行方向に向かって走る方向を前方といい、その反対側を後方という。また、スターティングブロック装置1は、タータントラックT上に固定される場合に限定されるものではなく、一般的な土のトラック上に固定して使用しても構わない。
【0032】
レール部材20は、メインフレーム21及びサブフレーム25を有し、レーン方向L1に沿って延びるフレーム部30と、メインフレーム21の前端部21aに一体的に組み合わされた前方ベース部40と、メインフレーム21の後端部21bに一体的に組み合わされた後方ベース部50と、を備えている(図5及び図6参照)。
【0033】
メインフレーム21は、アルミニウム等の金属材料によって、レーン方向L1に沿って延びるように形成されている。本実施形態では、メインフレーム21は、縦断面視四角形状の角パイプ状に形成されている(図5参照)。
【0034】
サブフレーム25は、メインフレーム21と同様に、アルミニウム等の金属材料によってレーン方向L1に沿って延びるように形成され、メインフレーム21の下方に配置されている。本実施形態では、サブフレーム25は、上方に開口した縦断面時C形状の溝形状に形成されている。
具体的には、図4及び図5に示すように、サブフレーム25は、メインフレーム21の下方に配置されると共に、メインフレーム21よりもレーン方向L1に沿った長さが短く、且つメインフレーム21よりもトラックレーンLのレール幅方向L2に幅広に形成された底フレーム26と、底フレーム26の側縁部から上方に向かって突出した一対のサイドフレーム27と、を備えている。
【0035】
一対のサイドフレーム27は、メインフレーム21を挟んでレーン幅方向L2に向かい合うように平行に配置されている。なお、一対のサイドフレーム27の突出高さは、メインフレーム21よりも低く設定されている。
一対のサイドフレーム27には、一対のフットブロック10を離脱可能に組み合わせるための複数のセット溝28がそれぞれ形成されている。セット溝28は、レーン方向L1に一定の間隔(ピッチ)をあけて複数形成されていると共に、上方に向けて開口するように形成されている。
【0036】
メインフレーム21は、上述のように構成されたサブフレーム25の底フレーム26上に載置されている。そして、メインフレーム21とサブフレーム25とは、ボルト等の図示しない締結部材を介して一体的に組み合わされている。なお、メインフレーム21と一対のサイドフレーム27との間には、レーン方向L1に沿って所定の隙間が確保されている。
また、サブフレーム25のレーン方向L1に沿った長さはメインフレーム21よりも短いので、図5に示すようにメインフレーム21の前端部21aはサブフレーム25よりも前方に突出していると共に、図6に示すようにメインフレーム21の後端部21bはサブフレーム25よりも後方に突出している。
【0037】
図5に示すように、前方ベース部40は、サブフレーム25よりも前方に配置された第1前方ベース41、及び第1前方ベース41に対して重ね合わされた第2前方ベース45を備えている。
【0038】
第1前方ベース41は、レーン方向L1に沿って延びると共に、レーン幅方向L2に沿った横幅がサブフレーム25の横幅と同等とされたプレート状に形成されている。第1前方ベース41の下面は、タータントラックT上に接触する接触面とされている。
第1前方ベース41のスタートラインS側には、下方に向けて延びる複数の固定用ピン42が取り付けられている。これにより、固定用ピン42をタータントラックTに食い込ませながら、第1前方ベース41をタータントラックT上に設置することが可能とされている(図1参照)。なお、第1前方ベース41のうち、固定用ピン42が形成されている部分は、スターティングブロック本体2をタータントラックT上に固定する際の前方固定部43として機能する。
【0039】
第2前方ベース45は、レーン方向L1に沿って延びると共に、レーン幅方向L2に沿った横幅が第1前方ベース41の横幅よりも僅かに短いプレート状に形成されている。第2前方ベース45は、第1前方ベース41のうち前方固定部43を除いた部分に重ね合わされており、ボルト等の締結部材を介して第1前方ベース41に一体的に組み合わされている。
第2前方ベース45は、メインフレーム21の前端部21aの下方に位置する連結ベース46と、連結ベース46よりも前方側に配置され、連結ベース46よりも薄肉に形成されたベース本体47と、を備えている。
【0040】
メインフレーム21の前端部21aは、第2前方ベース45における連結ベース46上に重ね合わされた状態で、ボルト等の締結部材を介して連結ベース46に対して一体的に組み合わされている。図示の例では、メインフレーム21の形状に対応してハット状に形成された金属製の連結金具48を介して、メインフレーム21の前端部21aと連結ベース46とが締結部材によって一体的に組み合わされている。その結果、メインフレーム21及び前方ベース部40は、互いに一体的に組み合わされている。
【0041】
図3及び図6に示すように、後方ベース部50は、サブフレーム25よりも後方に配置された第1後方ベース51、及びスペーサ54を介して第1後方ベース51に対して重ね合わされた第2後方ベース55を備えている。
【0042】
第1後方ベース51は、レーン幅方向L2に沿って延びる長尺のプレート状に形成されている。第1後方ベース51の下面は、タータントラックT上に接触する接触面とされている。第1後方ベース51の両端部側には、下方に向けて延びる複数の固定用ピン52が取り付けられている。これにより、固定用ピン52をタータントラックTに食い込ませながら、第1後方ベース51をタータントラックT上に設置することが可能とされている(図1参照)。なお、第1後方ベース51のうち、固定用ピン52が形成されている両端部は、スターティングブロック本体2をタータントラックT上に固定する際の後方固定部53としてそれぞれ機能する。
【0043】
第2後方ベース55は、スペーサ54を介して、第1後方ベース51におけるレーン幅方向L2の中央部分に重ね合わされており、ボルト等の締結部材を介して第1後方ベース51に一体的に組み合わされている。
第2後方ベース55は、メインフレーム21の後端部21bの下方に位置する連結ベース56と、連結ベース56から後方に向かって延びたベース本体57と、を備えている。ベース本体57は、レーン幅方向L2に沿った横幅がサブフレーム25の横幅と同等とされ、タータントラックTとの間に隙間をあけた状態でタータントラックTの上方に配置されている。
【0044】
メインフレーム21の後端部21bは、第2後方ベース55における連結ベース56上に重ね合わされた状態で、ボルト等の締結部材を介して連結ベース56に対して一体的に組み合わされている。図示の例では、メインフレーム21の形状に対応してハット状に形成された金属製の連結金具58を介して、メインフレーム21の後端部21bと連結ベース56とが締結部材によって一体的に組み合わされている。その結果、メインフレーム21及び後方ベース部50は、互いに一体的に組み合わされている。
【0045】
上述のように構成されたレール部材20は、図1及び図2に示すように、スタートラインSよりも後方に載置された後、前方固定部43及び2箇所の後方固定部53を例えば足等で踏みつける等して、前方固定部43の固定用ピン42及び後方固定部53の固定用ピン52をタータントラックTに食い込ませることで、タータントラックT上に安定して固定される。
【0046】
図2及び図3に示すように、一対のフットブロック10は、レール部材20を挟んでトラックレーンLのレーン幅方向L2に配置され、スタートラインSに最も近い最前方調整位置P1(図1参照)と、スタートラインSから最も離れた最後方調整位置P2(図1参照)との間でレーン方向L1に位置調整可能にレール部材20に対して離脱可能に組み合わされる。
【0047】
なお、一対のフットブロック10の一方は左足用とされ、他方は右足用とされている。そのため、一方のフットブロック10と他方のフットブロック10とは、基本的に左右対称に構成されている。本実施形態では、左足用のフットブロック10について簡単に説明し、右足用のフットブロック10については、説明を省略する。
【0048】
図2図3及び図7に示すように、左足用のフットブロック10は、タータントラックT上に載置されるフットベース11と、フットベース11に対して回動可能に組み合わされ、段階的に角度調整可能とされたフットプレート15と、フットベース11に一体的に組み合わされた連結止め具18と、を備えている。
【0049】
フットベース11は、レーン幅方向L2よりもレーン方向L1に長い平面視長方形状に形成されたベースプレート11aと、ベースプレート11aのうち、レーン幅方向L2に位置する両端部から上方に向かって突出した一対のサイドプレート11bと、を備えている。
ベースプレート11aには、レーン幅方向L2に間隔をあけて平行に配置され、レーン方向L1に延びる一対の角度調整用レール12が一体的に形成されている。角度調整用レール12には、上方に向けて開口した複数の調整溝13がレーン方向L1に一定の間隔(ピッチ)をあけて複数形成されている。
【0050】
フットプレート15は、一対のサイドプレート11bの内側に配置されている。フットプレート15は、下端部側が一対のサイドプレート11bに対して、レーン幅方向L2に延びる第1回転軸線M1(図7参照)回りに回転可能に連結されている。フットプレート15の上端部側には、角度調整アーム16がレーン幅方向L2に延びる第2回転軸線M2(図3参照)回りに回転可能に連結されている。角度調整アーム16の下端部には、レーン幅方向L2に沿って延びると共に、任意に選択した調整溝13内に係合可能な係合軸17が連結されている。
これにより、調整溝13に対する係合軸17の係合位置を調整することで、タータントラックTに対するフットプレート15の角度調整を任意に行うことが可能とされている。
【0051】
なお、フットプレート15の前面には、所定の弾性を有し、競技者Aが履いている陸上用スパイクの滑り止め機能を有する弾性体14が取り付けられている。
【0052】
図7に示すように、連結止め具18は、一対のサイドプレート11bのうち、サイドフレーム27に対して接触する側のサイドプレート11bに対してボルト等の締結部材を介して一体的に連結されている。連結止め具18は、サイドプレート11bに対して上方から被さる第1止め具18aと、第1止め具18aから下方に向かって突出すると共に、サイドフレーム27とメインフレーム21との間の隙間に上方から入り込む第2止め具18bと、を備えている。
第2止め具18bとサイドプレート11bとの間には、任意に選択したセット溝28内に上方から係合可能なセットピン19が連結されている。
【0053】
これにより、セット溝28に対するセットピン19の係合位置を調整することで、レール部材20に対するフットブロック10のセット位置を任意に調整することが可能とされている。従って、先に述べたように、スタートラインSに最も近い最前方調整位置P1と、スタートラインSから最も離れた最後方調整位置P2との間で、フットブロック10のセット位置を任意に調整することが可能とされている。
【0054】
図1に示すように、撮像部3は、フットブロック10における最前方調整位置P1よりも前方側、すなわちスタートラインS側に位置した状態でレール部材20に取り付けられている。
具体的には、図4及び図5に示すように、撮像部3は上方を向いて配置され、スタート前における競技者Aを撮像する第1撮像部60、及び前方を向いて配置(トラックレーンLの進行方向を向いて配置)され、スタート後の競技者Aを撮影する第2撮像部70を備え、前方ベース部40における第2前方ベース45のベース本体47に取り付けられた保護枠80を利用して取り付けられている。
【0055】
図5図8及び図9に示すように、保護枠80は、アルミニウム等の金属材料で形成され、第1撮像部60及び第2撮像部70の周囲を囲むと共に、上方及び前方に開口した枠状に形成されている。
具体的には、保護枠80は、二段の段付き状に形成され、第2前方ベース45のベース本体47上及び第1前方ベース41上に載置される底壁部81と、第1撮像部60及び第2撮像部70を挟んでレーン幅方向L2に向かい合うように配置された一対の側壁部82と、第1撮像部60及び第2撮像部70の後方に配置され、一対の側壁部82同士を繋ぐ後壁部83と、を備え、図示しないボルト等の締結部材を介して第2前方ベース45のベース本体47に対して一体的に組み合わされている。
【0056】
このように構成された保護枠80の少なくとも内面には、図8に示すように、可視光の光エネルギーを吸収する反射防止膜84(本発明に係る光吸収材)が形成されている。例えば、反射防止膜84は、艶消しの暗色(黒色等)の塗装膜とされている。
なお、図8では反射防止膜84をドット状のハッチングで図示している。また、図8以外の各図面では、反射防止膜84の図示を省略している。また、反射防止膜84は保護枠80の全体に施しても構わない。
【0057】
図8に示すように、第1撮像部60及び第2撮像部70は、上述の保護枠80内に収容された状態で該保護枠80に取り付けられている。
第1撮像部60は、図示しないCMOS等の固体撮像素子が内部に収容された撮像ケース61と、撮像ケース61から突出すると共に複数の撮像レンズ62が組み込まれたレンズ鏡筒63と、を備えている。
【0058】
このように構成された第1撮像部60は、光軸O1が上方を向いた状態で保護枠80に取り付けられている。具体的には、第1撮像部60は、図8に示す矢印の如く光軸O1が上方を向いた状態でレーン方向L1に角度調整可能に保護枠80に取り付けられている。
【0059】
撮像ケース61は、概略直方体状に形成されており、内部には固体撮像素子だけでなく、撮像に関連する図示しない電子部品等が組み込まれている。撮像ケース61には、図示しない第1通信ケーブルが接続されており、第1通信ケーブルを介して電力及び各種の信号の入出力が行われる。これにより、第1撮像部60は、第1通信ケーブルを介した図示しない外部機器からの制御信号に基づいて、撮像動作が制御されている。また、撮影した撮影データは、第1通信ケーブルを介して外部機器に出力される。
【0060】
なお、第1通信ケーブルは、保護枠80の後壁部83に形成されたケーブル孔85を通じて保護枠80の外部に引き出された後、メインフレーム21の内部を通じて、後方ベース部50側に敷設されている。
【0061】
撮像ケース61のうち保護枠80における一対の側壁部82に対して向かい合う側面部には、図9及び図10に示すように、第1ねじ孔65及び第2ねじ孔66がレーン方向L1に間隔をあけてそれぞれ形成されている。
【0062】
これに対して一対の側壁部82には、図8及び図9に示すように、第1ねじ孔65及び第2ねじ孔66に連通するスリット状の長孔86がそれぞれ形成されている。長孔86は、レーン方向L1に離間して配置された前端部86a及び後端部86bを有し、下方に向けて凸となる平面視円弧状に形成されている。なお、図示の例では、長孔86は後端部86bが前端部86aよりも上方に位置するように形成されている。
【0063】
そして、第1ねじ孔65には長孔86を通じて第1連結ねじ90が螺着され、第2ねじ孔66には長孔86を通じて第2連結ねじ91が螺着されている。これにより、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91は、保護枠80の側壁部82を間に挟み込みながら、第1ねじ孔65及び第2ねじ孔66に取り付けられている。
その結果、第1撮像部60の全体は、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91によって保護枠80に強固に固定されている。なお、図8以外の各図面では、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91の図示を省略している。
【0064】
さらに、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91の締め付けを緩めることで、長孔86に沿って第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91を移動させることが可能とされ、これによって第1撮像部60をレーン方向L1に角度調整することが可能とされている。そのため、第1撮像部60の光軸O1が例えば前方に向けて傾くように第1撮像部60の角度調整を行うことが可能とされている。そして、角度調整後、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91を再び締め付けることで、角度調整後の位置で第1撮像部60を固定することが可能となる。
【0065】
第2撮像部70は、第1撮像部60と同様の構成とされているため、説明を簡略する。すなわち第2撮像部70は、図8に示すように、図示しないCMOS等の固体撮像素子が内部に収容された撮像ケース71と、複数の撮像レンズ72が組み込まれたレンズ鏡筒73と、を備え、光軸O2が前方を向いた状態で保護枠80に取り付けられている。具体的には、第2撮像部70は、光軸O2が前方を向いた状態で上下方向に角度調整可能に保護枠80に取り付けられている。
【0066】
第2撮像部70の撮像ケース71についても第1撮像部60と同様に、撮像に関連する図示しない電子部品等が内部に組み込まれていると共に、図示しない第2通信ケーブルが接続されている。そのため、第2撮像部70は、第2通信ケーブルを介した図示しない外部機器からの制御信号に基づいて、撮像動作が制御されている。また、撮影した撮影データは、第2通信ケーブルを介して外部機器に出力される。
なお、第2通信ケーブルは、第1撮像部60側の第1通信ケーブルと共にケーブル孔85を通じて保護枠80の外部に引き出された後、メインフレーム21の内部を通じて、後方ベース部50側に敷設されている。
【0067】
撮像ケース71のうち保護枠80における一対の側壁部82に対して向かい合う側面部には、図9及び図10に示すように、第3ねじ孔75及び第4ねじ孔76が上下方向に間隔をあけてそれぞれ形成されている。
【0068】
これに対して一対の側壁部82には、第3ねじ孔75に連通する貫通孔87が形成されていると共に、第4ねじ孔76に連通するスリット状の長孔88がそれぞれ形成されている。長孔88は貫通孔87を中心とした回転軌跡に沿って延びるように平面視円弧状に形成されている。なお、図示の例では、長孔88の長さが短いため、直線状に形成されているように図示されている。
【0069】
そして、図8に示すように、第3ねじ孔75には貫通孔87を通じて第3連結ねじ92が螺着され、第4ねじ孔76には長孔88を通じて第4連結ねじ93が螺着されている。これにより、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93は、保護枠80の側壁部82を間に挟み込みながら、第3ねじ孔75及び第4ねじ孔76に取り付けられている。
その結果、第2撮像部70の全体は、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93によって保護枠80に強固に固定されている。なお、図8以外の各図面では、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93の図示を省略している。
【0070】
さらに、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93の締め付けを緩めることで、貫通孔87を中心として長孔88に沿って第4連結ねじ93を移動させることが可能とされ、これによって第2撮像部70を上下方向に角度調整することが可能とされている。そのため、第2撮像部70の光軸O2が例えば上方に向けて傾くように第2撮像部70の角度調整を行うことが可能とされている。そして、角度調整後、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93を再び締め付けることで、角度調整後の位置で第2撮像部70を固定することが可能となる。
【0071】
さらに本実施形態のスターティングブロック装置1では、図5に示すように、上述した撮像部3に隣接して、主にスタート音(スターターピストル音)を出力するスピーカ部100が取り付けられている。
スピーカ部100は、前方ベース部40における第2前方ベース45のベース本体47上に、保護枠80よりも後方に位置した状態でボルト等の締結部材を介して取り付けられている。
【0072】
なお、スピーカ部100には、図示しない第3通信ケーブルが接続されており、第3通信ケーブルを介して電力及び各種の信号の入出力が行われる。これにより、スピーカ部100は、第3通信ケーブルを介した図示しない外部機器からの制御信号に基づいて、音声出力動作が制御されている。
なお、第3通信ケーブルは、第1通信ケーブル及び第2通信ケーブルと共に、メインフレーム21の内部を通じて後方ベース部50側に敷設されている。
【0073】
上述のように構成された撮像部3、スピーカ部100及びメインフレーム21の前端部21aは、図2及び図4に示すように、前方カバー体(本発明に係るカバー体)110によって覆われている。
前方カバー体110は、例えばアルミニウム等の金属製カバーとされ、レーン方向L1に沿って延びると共に、撮像部3及びスピーカ部100を挟んでレーン幅方向L2に向かい合う一対のサイドカバー111と、撮像部3、スピーカ部100及びメインフレーム21の前端部21aの上方に位置する天井カバー112と、撮像部3よりも前方に位置する前方カバー113と、を主に備えている。
【0074】
前方カバー体110のレーン幅方向L2に沿った横幅は、前方ベース部40における第1前方ベース41の横幅と同等とされている。これにより、前方カバー体110は、撮像部3、スピーカ部100及びメインフレーム21の前端部21aを上方から覆った状態で第1前方ベース41上に載置可能とされている。また、前方カバー体110は、第2前方ベース45に対して、ボルト等の締結部材を介して一体的に組み合わされている。
【0075】
天井カバー112は、メインフレーム21の前端部21a及びスピーカ部100の上方に位置する第1天井カバー112aと、保護枠80の上方に位置する第2天井カバー112bと、を備えている。第2天井カバー112bは、第1天井カバー112aとの接続部分から前方に向かうにしたがって下方に向けて延びるように傾斜している。
【0076】
第2天井カバー112b及び前方カバー113には、図2に示すように、可視光を透過可能な透明カバー(本発明に係る透明部材)120が撮像部3の撮像領域に対応するように取り付けられている。なお、図4では、透明カバー120の図示を省略している。
【0077】
透明カバー120は、第2天井カバー112b及び前方カバー113の形状に対応して屈曲したプレート状に形成されており、前方カバー体110に一体的或いは取り外し可能に組み合わされている。従って、透明カバー120のうち第2天井カバー112bに組み合わされている部分は、第2天井カバー112bの形状に対応して傾斜している。
【0078】
なお、透明カバー120は、可視光を透過できればよく、透明或いは半透明であっても構わないし、無色透明或いは有色透明であっても構わない。また、透明カバー120の材質としては、特に限定されるものではないが、例えばガラス製、合成樹脂製等であっても構わない。
【0079】
第2天井カバー112bの外表面には、図2及び図4に示すように、透明カバー120に沿って配置されると共に、上方に向かって突出した一対の突起リブ125が形成されている。
突起リブ125は、レーン方向L1に延びるように形成されていると共に、透明カバー120を挟んでレーン幅方向L2に向かい合うように配置されている。突起リブ125の突出高さは、例えば陸上用スパイクにおけるスパイクピンの最大長さよりも高くなるように形成されている。なお、突起リブ125は、例えばアルミニウム等の金属製とされ、ヘアライン加工、アルマイト加工等が施されている。
【0080】
さらに、本実施形態のスターティングブロック装置1では、図6に示すように、後方ベース部50側に、外部との通信を行う外部通信ユニット130が組み込まれている。
外部通信ユニット130は、撮像部3に関連する各種の電子部品を具備するユニットであり、後方ベース部50における第2後方ベース55のベース本体57上に組み合わされている。また、メインフレーム21内を通じて敷設された第1撮像部60からの第1通信ケーブル、及び第2撮像部70からの第2通信ケーブルは、外部通信ユニット130に電気的に接続されている。外部通信ユニット130は、外部機器との間で有線接続を行うための外部接続端子131を具備している(図3参照)。
【0081】
図3に示すように、外部接続端子131の下方(トラックレーンL側)には、入出力端子132が設けられている。入出力端子132には、スタート音が入力され、第3通信ケーブルを介してスピーカ部100からスタート音が発生する。また、入出力端子132からは、フォールスタート検出用の図示しない圧力センサからの信号が出力される。
【0082】
上述のように構成された外部通信ユニット130及びメインフレーム21の後端部21bは、図2及び図3に示すように、後方カバー体140によって覆われている。
後方カバー体140は、例えばアルミニウム等の金属製カバーとされ、レーン方向L1に沿って延びると共に、外部通信ユニット130を挟んでレーン幅方向L2に向かい合う一対のサイドカバー141と、外部通信ユニット130及びメインフレーム21の後端部21bの上方に位置する天井カバー142と、外部通信ユニット130よりも後方に位置する後方カバー143と、を主に備えている。
【0083】
後方カバー体140のレーン幅方向L2に沿った横幅は、後方ベース部50における第2後方ベース55のベース本体57よりも僅かに幅広とされている。これにより、後方カバー体140は、外部通信ユニット130を及びメインフレーム21の後端部21bを上方から覆った状態で、第2後方ベース55のベース本体57に対して、ボルト等の締結部材を介して一体的に組み合わされている。
【0084】
後方カバー143には、外部通信ユニット130の外部接続端子131を露出させる開口部が形成されている。これにより、外部接続端子131は、後方カバー143側に露出した状態で配置されている。そのため、外部接続端子131を介して外部機器とスターティングブロック装置1との間の接続が可能とされている。
【0085】
(スターティングブロック装置の作用)
次に上述のように構成されたスターティングブロック装置1を利用して、競技者Aがスタート動作を行う場合について説明する。
なお、スタート動作を行うにあたって、図1に示すように、競技者Aの体格等に応じてスタートラインSの後方にレール部材20が適切にセットされているものとする。また、レール部材20に対して一対のフットブロック10が適切な位置にセットされていると共に、タータントラックTに対する角度調整が適切にされているものとする。
【0086】
このようなセット状況のもと、競技者Aは「On your marks:位置について」の合図を受けて、クラウチングスタートの姿勢に移行する。すなわち、スタートラインSに沿って両手をつきながら、両足を一対のフットブロック10に乗せた姿勢に移行する。その後、競技者Aは「Set:用意」の合図を受けて、腰を上げた姿勢に移行して静止すると共に、スタート音の合図を受けてスタート動作に移行する。
【0087】
上述のスタート動作の際、本実施形態のスターティングブロック装置1によれば、スターティングブロック本体2に撮像部3が取り付けられているので、フットブロック10を利用してスタートの姿勢を保持している競技者Aの表情を間近で撮影することが可能であるうえ、スタート直後の競技者Aの挙動(動作、動き)を間近で撮影することが可能である。従って、競技者Aのスタートを補助しつつ、スタート時における競技者Aの表情や挙動等を間近で撮影することが可能となる。そのため、トラックコース外に設置されるような従来の撮影カメラでは撮影することが困難な、迫力があり且つ緊迫感及び躍動感のあるような映像等を撮影することができる。
【0088】
詳細に説明する。
本実施形態の撮像部3は、フットブロック10における最前方調整位置P1よりもスタートラインS側に配置されているので、競技者Aが最前方調整位置P1と最後方調整位置P2との間において、どの位置にフットブロック10をセットしたとしても、フットブロック10に乗せた足先よりもスタートラインS側に撮像部3を配置することができる。
そのため、フットブロック10を利用してクラウチングスタートの姿勢を保持し、下方に俯いている競技者Aのスタート前の表情を間近で撮影することが可能である。さらには、スタート直後の競技者Aの走り去る動作(挙動)をローアングルから間近で撮影することも可能である。従って、陸上競技における短距離種目において、迫力があり且つ緊迫感及び躍動感のあるような映像等を撮影することができる。
【0089】
しかも撮像部3として、上方を向いて配置され、スタート前における競技者Aを撮像する第1撮像部60と、前方を向いて配置され、スタート後の競技者Aを撮像する第2撮像部70と、を備えている。
従って、主に第1撮像部60を利用して、クラウチングスタートの姿勢での、下方に俯いている競技者Aのスタート前の表情を撮影することができる。また、主に第2撮像部70を利用して、スタート直後の競技者Aの走り去る動作(挙動)をローアングルから撮影することができる。このように、2つの専用の撮像部3を利用するので、競技者Aのスタート前の表情及びスタート直後の競技者Aの走り去る動作を、それぞれより明瞭に撮影し易い。
【0090】
なお、撮像レンズ62、72として広角レンズを利用した場合には、例えば隣のトラックレーンLの競技者Aを同時に撮影することが可能である。これにより、さらに臨場感のある撮影を行うことが可能である。
【0091】
さらに、第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91を緩めた後、長孔86に沿って第1連結ねじ90及び第2連結ねじ91を移動させることで、第1撮像部60をレーン方向L1に角度調整することが可能とされている。これにより、例えば競技者Aの年齢、性別や体形等に応じて、撮像範囲を微調整することができるので、クラウチングスタートの姿勢によって下方に俯いている競技者Aのスタート前の表情を、さらに明瞭に撮影することができる。
【0092】
同様に、第3連結ねじ92及び第4連結ねじ93を緩めた後、貫通孔87を中心として長孔88に沿って第4連結ねじ93を移動させることで、第2撮像部70を上下方向に角度調整することが可能とされている。これにより、タータントラックTに対する仰角の調整を行いながら撮像範囲の微調整を行うことができるので、スタート直後の競技者Aの走り去る動作(挙動)を、ローアングルからさらに明瞭に撮影することができる。
【0093】
また、第1撮像部60及び第2撮像部70を保護枠80内に収容しているので、第1撮像部60及び第2撮像部70を安定且つ強固に取り付けることができ、長時間に亘って安定した撮影を行うことが可能である。
しかも、保護枠80には反射防止膜84が塗装されているので、外部からの可視光の光エネルギーを吸収することができる。そのため、第1撮像部60及び第2撮像部70の周辺において、例えば外光が乱反射してしまうことを防止することができ、外光の影響を受け難い状態で撮影を行える。従って、さらに明瞭な撮像を行うことができる。また、第1撮像部60及び第2撮像部70の周辺で外光が反射し難くなるので、競技者Aは眩しさ等を感じることなく、スタート動作を行える。
【0094】
なお、前方カバー体110に取り付けている突起リブ125についても、同様に反射防止膜84等の塗装膜を形成することが好ましい。この場合には、上述の作用効果をより一層効果的に奏功することができる。
【0095】
さらに図2に示すように、透明カバー120を利用して撮影領域を確保しながら、前方カバー体110によって撮像部3(第1撮像部60及び第2撮像部70)を覆うことができるので、撮像部3をできるだけ目立ち難くすることができ、競技者Aに違和感を与え難い。また、前方カバー体110及び透明カバー120によって撮像部3を覆うので、撮像部3に塵埃や水分等が入り込むことを抑制でき、天候等に影響されることなく、長時間に亘って安定した撮影を行うことができる。
さらに、透明カバー120の一部は、第2天井カバー112bの形状に対応して傾斜しているので、例えば雨天での競技であっても、雨滴が透明カバー120の傾斜によって流れ落ち易く、透明カバー120の表面に例えば雨水が薄く溜まってしまう等といった不都合が生じ難い。従って、雨天の場合であっても、良好な撮影に繋げることができる。
【0096】
また、前方カバー体110の外表面に突起リブ125が形成されているので、例えば競技者Aが誤って前方カバー体110を踏んでしまったとしても、透明カバー120に対して直接的に外力が加わってしまうことを、突起リブ125を利用して防止することができる。特に、競技者Aが陸上用スパイクを履いている場合であっても、スパイクピンで透明カバー120を不意に傷付けてしまうことを、突起リブ125を利用して効果的に防止することができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0098】
例えば、上記実施形態では、第1撮像部60及び第2撮像部70を角度調整可能に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば決まった固定角度で取り付けても構わない。
ただし、競技者Aの年齢、性別、体格等に応じて、例えばクラウチングスタート時の頭の位置等が異なるので角度調整可能とされていることが好ましい。なお、角度調整する場合、上記実施形態では各種の連結ねじを利用して手動で行う場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えばモータ等を利用して遠隔操作等によって角度調整できるように構成しても構わない。
【0099】
また、上記実施形態では、第1撮像部60及び第2撮像部70を取り付けた場合を例に挙げて説明したが、例えば1つの撮像部を取り付けても構わないし、3つ以上の撮像部を取り付けても構わない。
【0100】
また、上記実施形態では、第1撮像部60及び第2撮像部70を、フットブロック10における最前方調整位置P1よりもスタートラインS側に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、スターティングブロック本体2に取り付けられていれば、その設置は特に限定されるものではない。
例えば、後方カバー体140の内部或いは外部に、前方に向けて1つの撮像部を取り付けても構わない。この場合であっても、スタート直前における競技者Aの表情を撮影することができると共に、スタート直後の競技者Aの走り去る挙動を撮影することが可能である。ただし、スタート前における競技者Aにおける足等についても撮影されるので、上記実施形態の位置に撮像部3を取り付けることが好ましい。
【0101】
なお、上記実施形態において、スターティングブロック装置1に、その他の機能を適宜付加しても構わない。例えば、圧力センサ(加重センサ)等を利用して、競技者Aの不正スタートを検出する機能を追加しても構わない。
【0102】
さらに上記実施形態では、本発明に係るスタート装置の一例として、陸上競技における短距離種目で使用されるスターティングブロック装置1を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではない。例えば、水泳競技の競泳者(競技者)のスタートを補助するスタート台に適用しても構わない。
【0103】
例えば、図11に示すように、スタート台(本発明に係るスタート装置)200は、競泳者の足を支持するプラットホーム(本発明に係るフット部)230を少なくとも有するスタート台本体(本発明に係るスタート装置本体)201と、スタート台本体201に取り付けられ、競泳者を撮影する撮像部202と、を備えている。
【0104】
スタート台本体201は、水泳プールPの周囲に設けられたプールサイドPSに設置され、プールサイドPS上に固定された台座部210と、台座部210の上部に固定された上記プラットホーム230と、を備えている。
なお、以下の説明では、プラットホーム230に立つ競泳者が水泳プールPに向かって飛び込む方向を前方といい、その反対方向を後方という。また、前後方向及び上下方向に直交する方向を左右方向という。
【0105】
台座部210は、脚部211、手摺部212及び側板部213を備えている。
脚部211は、例えばステンレス等により形成された棒状部材であって、上下方向に沿うように複数(本実施形態では4本)配置されている。各脚部211の下端部は、プールサイドPS上に固定されている。
【0106】
手摺部212は、脚部211と同様に、例えばステンレス等により形成された棒状部材であって、左右方向に沿って延在する第1把持部220と、第1把持部220の両端部から上方に向かって延びる一対の前側接続部221と、前側接続部221の上端部から後方に向かって延びる一対の上側接続部222と、を有する。
第1把持部220は、脚部211の前方に配置されている。第1把持部220の上方には、左右方向に沿って延在する第2把持部223が設けられている。第2把持部223は、両端部が一対の前側接続部221に接続されている。
【0107】
側板部213は、例えばステンレス等により形成された板状部材であって、隣り合う各脚部211の間に複数(本実施形態では4個)配置されている。なお、各側板部213に囲まれた空間には、各種の計器類が収容された収容ケース224が配置されている。
【0108】
プラットホーム230は、平面視矩形状に形成されたフラット部231と、フラット部231の後方に配置されたフットレスト部232と、を備えている。
フラット部231は、後方から前方に向かうにしたがい低くなるように傾斜している。なお、フラット部231の上面は滑り止め加工が施されている。
フットレスト部232は、左右方向に沿って延在するブロック状の部材とされ、左右方向から見て三角形状に形成されている。フットレスト部232の前面は、後方から前方に向かうにしたがい低くなるように傾斜している。なお、フットレスト部232の前面は滑り止め加工が施されている。また、水平面に対するフットレスト部232の前面の傾斜角度は、水平面に対するフラット部231の上面の傾斜角度よりも大きくなっている。
【0109】
撮像部202は、例えば上方を向いて配置され、スタート時における競泳者を撮影する第3撮像部205と、前方を向いて配置され、スタート後の競泳者を撮影する第4撮像部206及び第5撮像部207と、を備えている。
なお、これら第3撮像部205、第4撮像部206及び第5撮像部207は、先に説明した第1撮像部60と同様の構成とされているので、詳細な説明は省略する。
【0110】
第3撮像部205は、プラットホーム230におけるフラット部231の前端部側に埋め込まれており、プラットホーム230上に登った状態でスタート姿勢をしている競泳者の表情を主に撮影することが可能とされている。
第4撮像部206は、プラットホーム230におけるフットレスト部232に埋め込まれており、プラットホーム230上から水泳プールPに飛び込んだ、スタート直後の競泳者の挙動を主に撮影することが可能とされている。
第5撮像部207は、収容ケース224の上面に取り付けられており、プラットホーム230上から水泳プールPに飛び込んだ、スタート直後の競泳者の挙動を主に撮影することが可能とされている。それに加え、第5撮像部207は、競泳者が背泳ぎをする場合において、競泳者が手摺部212を把持しながら、水泳プールPの壁面に足を掛けた状態でスタートする際の、競泳者の表情を撮像することが可能とされている。
【0111】
なお、上記実施形態では、第3撮像部205、第4撮像部206及び第5撮像部207を、それぞれ1つずつ、合計3つの撮像部を取り付けた場合を例に挙げて説明したが、撮影部の数はこの場合に限定されるものではない。例えば1つの撮像部を取り付けても構わないし、第3撮像部205、第4撮像部206及び第5撮像部207をそれぞれ複数取り付けても構わない。
【0112】
従って、本発明に係るスタート装置を水泳競技に用いられるスタート台200に適用した場合であっても、スタートの姿勢を保持している競泳者の表情を間近で撮影することが可能であるうえ、スタート直後の競泳者の挙動を間近で撮影することが可能である。従って、競泳者のスタートを補助しつつ、スタート時における競泳者の表情や挙動等を間近で撮影することが可能となる。そのため、水泳コース外に設置されるような従来の撮影カメラでは撮影することが困難な、迫力があり且つ緊迫感及び躍動感のあるような映像等を撮影することができる。
【符号の説明】
【0113】
L1…レーン方向
L2…レーン幅方向
P1…最前方調整位置
P2…最後方調整位置
A…競技者
L…トラックレーン
S…スタートライン
T…タータントラック(競技面)
1…スターティングブロック装置(スタート装置)
2…スターティングブロック本体(スタート装置本体)
3、202…撮像部
10…フットブロック(フット部)
20…レール部材
60…第1撮像部
70…第2撮像部
80…保護枠
84…反射防止膜(光吸収部材)
110…前方カバー体(カバー体)
120…透明カバー(透明部材)
125…突起リブ
200…スタート台(スタート装置)
201…スタート台本体(スタート装置本体)
230…プラットホーム(フット部)
図1
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