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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230417BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230417BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20230417BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20230417BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20230417BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09J7/21
C09J7/29
C09J7/24
B32B27/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019148059
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028370
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390019264
【氏名又は名称】ダイヤテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】宮城 宏臣
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-270000(JP,A)
【文献】特開2003-055625(JP,A)
【文献】特開2013-159643(JP,A)
【文献】特開2007-063512(JP,A)
【文献】特開2012-097155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる線条体を経糸及び緯糸として使用し、これらを織成又は交差接着せしめて形成した布状体の両面に、熱可塑性樹脂によりフィルム層を各々積層してなり、
前記一方のフィルム層の前記布状体と反対側の面に、粘着剤層を形成してなる粘着テープにおいて、
前記両層を構成する熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレンからなり、
前記一方のフィルム層は、厚さ40μm以上であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記両層を構成する熱可塑性樹脂は、0.930~0.970g/cmの高密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記線条体は、熱可塑性樹脂を延伸して得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記布状体は、織成された織物であるものであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着テープに関し、詳しくは、床面に貼付された後の踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れを生じない耐久性を有し、台車やフォークリフトを使用する環境での使用に好適な粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や倉庫等においては、台車やフォークリフトの走行経路や立入り区分等が、床面上に貼られた粘着テープにより表示されている(特許文献1)。
粘着テープは目視確認を容易とするために着色されており、特に複数の台車やフォークリフトの走行経路や立入り区分等を区別するために様々に着色された複数の粘着テープが使用されることも多い。
また、この種業界では、作業員の歩行経路や作業位置の表示にも同じ粘着テープが使用されている。
【0003】
このような粘着テープには、床面に貼付された後の踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れを生じない耐久性が要求される。捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れが生ずると、表示ができず、床面から除去されてしまうためである。
このことから粘着テープには、踏付けに対する耐久性を有することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-237395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の粘着テープは、耐久性が不十分であり、台車やフォークリフトの走行経路や立入り区分等の表示に使用すると、踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れを生じてしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、床面に貼付された後の踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れを生じない耐久性を有し、台車やフォークリフトを使用する環境での使用に好適な粘着テープを提供することを課題とする。
【0007】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0009】
(請求項1)
熱可塑性樹脂からなる線条体を経糸及び緯糸として使用し、これらを織成又は交差接着せしめて形成した布状体の両面に、熱可塑性樹脂によりフィルム層を各々積層してなり、
前記一方のフィルム層の前記布状体と反対側の面に、粘着剤層を形成してなる粘着テープにおいて、
前記両層を構成する熱可塑性樹脂は、高密度ポリエチレンからなり、
前記一方のフィルム層は、厚さ40μm以上であることを特徴とする粘着テープ。
(請求項2)
前記両層を構成する熱可塑性樹脂は、0.930~0.970g/cmの高密度ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
(請求項3)
前記線条体は、熱可塑性樹脂を延伸して得られたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
(請求項4)
前記布状体は、織成された織物であるものであることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、床面に貼付された後の踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれ、摩擦による削れを生じない耐久性を有し、台車やフォークリフトを使用する環境での使用に好適な粘着テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープを説明する縦断面図
図2】フラットヤーンの例を説明する縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る粘着テープの一実施形態を説明する縦断面図である。
図1に示す粘着テープは、線条体11a、11bから形成した布状体1の両方の面に、熱可塑性樹脂によりフィルム層2,3を各々積層してなる。
両方のフィルム層2,3の一方(図面上、上方)のフィルム層は、高密度ポリエチレンからなる第1のフィルム層2であり、他方の(図面上、下方)のフィルム層は、高密度ポリエチレンからなる第2のフィルム層3である。
第2のフィルム層3と、第2のフィルム層3の布状体1と反対側の面(図示下面)には、粘着剤層4が設けられている。第2のフィルム層3の厚みは、40μm以上である。
【0014】
粘着テープの耐久性(床面に貼付された後の踏付けにより捲り上がり、千切れ、剥がれを生じないこと)は、第1のフィルム層の剛性、粘着剤層の床面への粘着力、粘着剤層の凝集力(保持力)などによって決まる。これらの物性の何れかが不十分であると、踏付け時のせん断力により、捲り上がり、千切れ、剥がれが発生するおそれがある。
【0015】
本発明者は、粘着テープの耐久性を向上するべく鋭意検討し、本願発明に至ったものである。
本発明者は、まず、第1のフィルム層の剛性を確保するため、第1のフィルム層を高密度ポリエチレンから形成するようにした(後述の「実験2(比較)」参照)。
しかし、第2のフィルム層が低密度ポリエチレンであると、第1のフィルム層と第2のフィルム層を積層する時の冷却による収縮の差から、粘着剤層を設ける前の原反がカールすることが判明した。原反がカールすると、その後の加工でシワの原因になるなど好ましくない。
【0016】
そこで、本発明者は、第2のフィルム層も高密度ポリエチレンから形成することとした(後述の「実験3(比較)」参照)。
しかし、第2のフィルム層を単に高密度ポリエチレンから形成すると、床面に貼って剥がした際に、第2のフィルム層と布状体の層間剥離(デラミネーション)により、床面側に粘着剤層と第2のフィルム層が残ってしまうことが判明した。その原因について検討したところ、第2のフィルム層の布状体に対する接着力が不十分であることが判明した。
【0017】
そこで、本発明者は、高密度ポリエチレンである第2のフィルム層の厚みに着目し、本願発明に至った。
すなわち、原反カールを抑制する観点から、第2のフィルム層を高密度ポリエチレンとし、且つ、その厚みを上げることで布状体へのアンカー効果を発揮させ、布状体とフィルム層との層間剥離を防止する観点から、その厚みを40μm以上とすることが有効であることを見出したのである(後述の「実験4~9(本発明)」参照)。
【0018】
以下、第1のフィルム層2、第2のフィルム層3をともに高密度ポリエチレンから形成し、第2のフィルム層3の厚さを40μm以上とすることが重要な特徴である本発明に係る粘着テープの各構成についてさらに詳述する。
【0019】
〔布状体〕
布状体1を構成する線条体11の材質は格別限定されず、例えば高分子材料等を好ましく用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好適である。
かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等を用いることができる。
【0020】
線条体11の形状は、モノフィラメント、テープ、ヤーン、スプリットヤーン、マルチフィラメント、ステープルファイバー等から選ばれるものであればいずれでもよいが、中でも、テープ状のフラットヤーンが好ましい。かかるフラットヤーンは、長手方向(縦方向)に多数の小さな切れ目を入れてスプリットヤーンとすることもできる。
【0021】
線条体11は、無延伸でもよいが、延伸されたものであることが好ましい。延伸は、一軸延伸及び二軸延伸の何れでもよい。
【0022】
布状体1は、線条体11を経糸及び緯糸として織成された織布とすることができる。また、布状体1は、線条体11からなる交差結合布(ソフ)であってもよい。
【0023】
フラットヤーンからなる線条体11の断面形状の好ましい態様は、図2(a)~図2(d)に例示的に示されている。また、モノフィラメントからなる線条体11の断面形状の好ましい態様は、図2(e)~図2(g)に例示的に示されている。
【0024】
図2(a)は、フラットヤーンが、単層に構成された例であり、図2(b)は、基層12の片面に接合層13が積層された例であり、図2(c)は、接合層13が基層12の両面に積層された例であり、図2(d)は、基層12が芯材、接合層13が鞘である芯鞘構造の例である。
【0025】
図2(e)は、基層12が芯材、接合層13が鞘である芯鞘構造の例であり、図2(f)は、基層12の幅方向の片側に接合層13が設けられたサイドバイサイド構造の例であり、図2(g)は、基層12が島、接合層13が海である海島構造の例である。
【0026】
接合層13は、基層12を構成する熱可塑性樹脂より融点が低く熱融着性の優れた熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。接合層13は、基層12となる熱可塑性樹脂より融点が10℃以上、好ましくは、15℃以上低い熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0027】
上記の融点の差を利用して、線条体同士の接合や布状体とフィルムの接合を行う際には、接合層13の融点と基層12の融点の間の温度で加熱して、熱融着を行うと、接合層13が溶融し、基層12が溶融しないで残るために、線条体11が布状とされた後、線条体11間を好適に接合し、あるいは、布状体1と第1のフィルム層2、第2のフィルム層3との間を好適に接合することができる。
【0028】
織成された布状体1の糸密度は、格別限定されず、経糸(粘着テープの長さ方向に沿う糸)が10~80本/25.4mmであることが好ましく、20~60本/25.4mmであることが更に好ましい。また、緯糸(粘着テープの幅方向に沿う糸)が5~40本/25.4mmであることが好ましく、10~30本/25.4mmであることが更に好ましい。更に、経糸の繊度が緯糸の繊度より低く、経糸の打ち込み本数が緯糸の打ち込み本数より多くなるように形成されることが好ましい。
【0029】
〔第1、第2のフィルム層〕
次に、第1のフィルム層2、第2のフィルム層3について説明する。
【0030】
第1のフィルム層2、第2のフィルム層3は、ともに高密度ポリエチレン(HDPE、密度0.930以上)からなる。高密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど持たずに直鎖状に結合したものである。
【0031】
第1のフィルム層2、第2のフィルム層3をなす高密度ポリエチレンとしては、密度が0.930~0.970g/cmが好ましく使用できる。密度が低くなると機械的強度が低下し、また、高くなると粘着テープの柔軟性が低下する。
【0032】
第1のフィルム層2の厚みは、限定されないが、剛性を確保する観点から、35μm以上であることが好ましい。
第2のフィルム層3の厚みを上げることにより布状体1へのアンカー効果を発揮させ、デラミネーションを防止する観点から、40μm以上である。製造コスト及び粘着テープの実用性の観点から、40~100μmであることが好ましく、40~80μmであることがより好ましい。
【0033】
本発明では、布状体1の両面に、第1、第2のフィルム層2、3を積層させているが、布状体1と第1のフィルム層2、第2のフィルム層3とを積層させる方法は格別限定されず、例えば押出ラミネート法を用いることができる。
【0034】
第1のフィルム層2及び第2のフィルム層3は、フィルム状に成形された溶融フィルムを予め布状体1にラミネートすることによって形成することが好ましい。この場合、ラミネートされる溶融フィルムの温度は布状体1を構成する樹脂の融点より130~220℃高い温度とすることが好ましい。ラミネートを高温で行なうことによって、布状体1に熱可塑性樹脂が浸入することで布状体組織を固定化する結果、線条体11a、11bのずれを抑制し、手切れ性を向上することができる。
【0035】
第1のフィルム層2、第2のフィルム層3には、目的に応じて各種の添加剤を添加することができ、具体的には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤、充填材、着色顔料、抗菌剤、蓄光剤等が挙げられる。
【0036】
第1のフィルム層2に蓄光剤を添加すると、工場や倉庫等の床面に貼付された後に蓄光し、その後に貼付場所が暗くなった場合に、上面となっている第1のフィルム層2が発光するので、走行経路や立入り区分等を明確に表示することができる。
【0037】
なお、第2のフィルム層3において粘着剤層4を積層する面には、必要に応じて、粘着剤層4との密着力を高めるため、サンドブラスト処理や火炎処理等の物理的処理またはコロナ処理やプラズマ処理等の化学的処理、あるいは、プライマー処理等を施すことも好ましい。
【0038】
着色顔料は、粘着テープの表面を所望の色にするためのものであり、黒、白、灰の無彩色の顔料の他、赤、青、緑、黄等の有彩色の顔料を使用することもできる。
【0039】
着色顔料の含有量は、バインダー樹脂100重量%に対して、5重量%以上60重量%以下とすることが好ましい。これよりも少なすぎると隠蔽性に欠け、これよりも多くしても隠蔽性はそれ以上向上せず、むしろコスト高となる。
【0040】
第1のフィルム層2を透明層として、この第1のフィルム層2と布状体1との間に印刷層を設けることも好ましい。印刷層は、布状体1の上面に直接印刷して形成してもよいし、第1のフィルム層2と布状体1との間に印刷がされたシート体を挟んで形成してもよい。また、第1のフィルム層2の上に印刷層を設け、さらにその上に第3の透明フィルム層を設けることも好ましい。
【0041】
印刷層により、工場や倉庫等の床面に貼付した場合に、上面となっている第1のフィルム層2を透して、印刷された情報(矢印や文字等)が表示されるので、走行方向や立入り区分等を明確に表示することができる。
【0042】
〔粘着剤層〕
次に、粘着剤層4について説明する。
【0043】
粘着力は、耐久性を達成できる程度の粘着力があれば良く、粘着剤層4に用いられる粘着剤は、格別限定されるわけではないが、アクリル系粘着剤から選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。
【0044】
アクリル系粘着剤としては、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を重合させて得られるアクリル系ポリマーを用いることができる。
【0045】
アルキル基は炭素数が1~12程度が望ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、特に、n-ブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレートが好適である。
【0046】
カルボキシル基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等のモノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸やこれらのモノエステル等が挙げられる。
【0047】
これらのカルボキシル基含有ラジカル重合性単量体のうち、アクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。カルボキシル基含有重合性単量体は、単量体全体の1~20重量%程度が望ましい。
【0048】
アクリル系粘着剤には、ガラス転移温度や極性等を調整する目的で少量の改質成分単量体が共重合されていてもよい。このような単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0049】
アクリル系ポリマーには、分子内にカルボキシル基と反応する官能基を2個以上有する多官能性化合物、または多官能性化合物及び分子内に前記官能基を1個有する単官能性化合物を配合することができる。この種の官能基含有化合物としては、例えば、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基(或いはグリシジル基)含有化合物、アジリジニル基含有化合物、金属錯体、メラミン系化合物等が挙げられる。
【0050】
粘着剤層4の厚みは格別限定されないが、5~100μmであることが好ましい。
【実施例
【0051】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0052】
(実施例1)
1.粘着テープの製造
実験1(比較)
<布状体の製造>
高密度ポリエチレン(密度0.956、MFR0.55)に高圧法低密度ポリエチレン(密度0.922、MFR10.0)を15重量%配合した熱可塑性樹脂をインフレーション成形法によってフィルムとし、得られたフィルムをレザーによってスリットして、フラットヤーンを得た。
次いで、上記のフラットヤーンを、温度110~120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度120℃の熱風循環式オーブン内で6%の弛緩熱処理を行ない、糸幅0.56mm、繊度109デシテックスの経糸を製造した。
同様の方法で高密度ポリエチレン(密度0.956、MFR0.55)100重量%の糸幅1.2mm、繊度310デシテックスの緯糸を製造した。
得られた経糸及び緯糸を、ウォータージェット機によって、経糸46本/25.4mm、緯糸16本/25.4mm、目付け量40g/mの平織の布状体を得た。
<第1のフィルム層及び第2のフィルム層の積層>
次いで、得られた布状体の一方の面に、低密度ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂により、厚さ40μmの第1のフィルム層を積層し、布状体の他方の面に、低密度ポリエチレンからなる熱可塑性樹脂により、厚さ40μmの第2のフィルム層を積層した。
低密度ポリエチレンの密度は、0.922g/cm、MFRは10.0、融点は111℃である。
<粘着剤層の形成>
次いで、第2のフィルム層に、アクリル系粘着剤に硬化剤(イソシアネート系架橋剤、日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートL-45E」)を適宜添加した粘着剤層を塗工により形成し、粘着テープを得た。
粘着剤層の厚みは30μmとした。
層構成を整理すると、以下の通りである。
<全体の層構成>
第1のフィルム層/布状体/第2のフィルム層/粘着剤層
【0053】
実験2(比較)
実験1において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第1のフィルム層を高密度ポリエチレンに代えた。また、第1のフィルム層の厚さを35μmに代えた。更に第2のフィルム層の厚さを35μmに代えた。
高密度ポリエチレンの密度は、0.956g/cm、MFRは、10.0、融点は、132.5℃である。
【0054】
実験3(比較)
実験1において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第1のフィルム層を高密度ポリエチレンに代え、厚さを35μmに代えた。
第2のフィルム層を高密度ポリエチレンに代え、厚さを35μmに代えた。
【0055】
実験4(本発明)
実験2において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の材質を高密度ポリエチレンに代え、厚みを40μmに代えた。
【0056】
実験5(本発明)
実験4において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の厚みを45μmに代えた。
【0057】
実験6(本発明)
実験5において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の厚みを50μmに代えた。
【0058】
実験7(本発明)
実験6において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の厚さを55μmに代えた。
【0059】
実験8(本発明)
実験6において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の厚さを60μmに代えた。
【0060】
実験9(本発明)
実験6において、以下の変更をした以外は、同様にして粘着テープを製造した。
第2のフィルム層の厚さを65μmに代えた。
【0061】
2.評価方法
(1)SUS板粘着力
JISZ0237の180度引き剥がし法に準拠し、SUS(ステンレス)板への粘着力を測定した。結果は〔表1〕に示す通りである。
【0062】
(2)耐久性
幅50mm、長さ3mの粘着テープを工場床面に1ヶ月間貼付け、フォークリフト、台車、歩行者等の往来によるテープの剥がれ、千切れ具合を目視で評価した。
【0063】
評価は以下の通りである。
○:テープの剥がれ、千切れ3ヶ所未満
△:テープの剥がれ、千切れ3ヶ所以上10ヶ所未満
×:テープの剥がれ、千切れ10ヶ所以上
結果は〔表1〕に示す通りである。
【0064】
(3)第2のフィルム層3と布状体の層間剥離
幅50mm、長さ100mmの粘着テープをボンデ鋼板にエポキシ樹脂を塗装した試験板に貼付け、試験片とした。この試験片を70℃の雰囲気中に1週間静置したものについて、高速にて手剥離した後、試験板に残存したフィルム層の面積を目視にて評価した。
【0065】
評価は以下の通りである。
◎:残存フィルム層面積0%
○:残存フィルム層面積1%以上10%未満
×:残存フィルム層面積10%以上
結果は〔表1〕に示す通りである。
【0066】
(4)原反カール具合
幅400mm、長さ1.5mのラミネート原反を床に静置した後、床から原反端部までの距離を測定した。
【0067】
評価は以下の通りである。
○:床からの距離50mm未満
×:床からの距離50mm以上
結果は〔表1〕に示す通りである。
【0068】
【表1】
【0069】
以上の評価より、実験1(比較)では、第1、第2のフィルム層を低密度ポリエチレンで作製したことにより、フォークリフト、台車、歩行者等の往来によりテープの剥がれ、千切れが発生し、耐久性が不良であった。
【0070】
実験2(比較)では、第1のフィルム層の剛性を確保するために、第1のフィルム層を高密度ポリエチレンから形成した。結果は、原反カール具合が不良であった。これは、第1のフィルム層のみを高密度ポリエチレンで作製し、第2のフィルム層の厚さも不足(35μm)であることが原因と思われる。
【0071】
実験3(比較)では、第2のフィルム層3も、高密度ポリエチレンから形成した。結果は、第2のフィルム層3と布状体の層間剥離が50%で不良であった。これは、第2のフィルム層の厚さ不足(35μm)により、第2のフィルム層の布状体に対する接着力が不十分であるためと考えられる。
【0072】
これに対して、本発明の実験4~9では、第2のフィルム層の厚みを、40μm以上とした。結果は、耐久性、第2のフィルム層3と布状体の層間剥離、原反カール具合の全ての項目について良好であった。これは、第2のフィルム層の厚みを上げることにより、布状体へのアンカー効果が発揮されたためと考えられる。
【0073】
すなわち、実験4~9の粘着テープは、工場や倉庫等において、台車やフォークリフトの走行経路の表示等に好適に使用できる粘着テープであることが確認された。
【符号の説明】
【0074】
1:布状体
11(11a、11b):線条体(経糸、緯糸)
12:基層
13:接合層
2:第1のフィルム層
3:第2のフィルム層
4:粘着剤層
図1
図2