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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】内燃機関用点火コイルおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02P 13/00 20060101AFI20230417BHJP
   F02P 15/00 20060101ALI20230417BHJP
   H01F 38/12 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F02P13/00 301C
F02P13/00 303B
F02P15/00 303B
F02P15/00 303E
H01F38/12 G
H01F38/12 Q
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019174994
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021050674
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000174426
【氏名又は名称】日立Astemo阪神株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】谷池 明彦
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-95631(JP,A)
【文献】特開2019-94793(JP,A)
【文献】特開平8-229483(JP,A)
【文献】特開平8-130131(JP,A)
【文献】特開2018-66275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 13/00
F02P 15/00
H01F 38/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を発生する点火コイル本体および該点火コイル本体を格納する筐体からなる本体ユニットと、
絶縁性材料を用いて略筒状に形成され、前記点火コイル本体が発生した高電圧を、筒孔内部に配置した導電体からなる長尺状のスプリングを介して点火プラグに供給するプロテクタ部と、
を備え、
前記プロテクタ部は、
前記本体ユニットと係合する一の筒端部、
前記点火プラグの頭部電極と接続する他の筒端部、
前記一の筒端部から前記筒孔に挿入された前記スプリングが前記他の筒端部の近傍に設けられたタルク塗布部に接しないように、該スプリングを保持する一時保持部、
および、
前記一時保持部と前記他の筒端部との間に配置され、前記筒孔内のスプリングの位置決めを行う位置決め保持部、
を有し、
前記一時保持部は、
前記一の筒端部に連結された前記本体ユニットによって前記筒孔内のスプリングが押されたとき、該スプリングを介して加えられた押圧によって変形または撓みが生じる可撓性を有し、
前記変形または撓みが生じることにより前記スプリングが前記他の筒端部へ向かって移動することができる形状に形成されている、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記一時保持部は、
前記筒孔の中心に向かって突出した複数の薄板片状リブである、
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記スプリングは、
コイルスプリング部と該コイルスプリング部よりも大きな外径のスプリング当接部とを有し、
前記一時保持部は、
前記筒孔の径方向について、前記コイルスプリング部の外径よりも大きく、かつ、前記スプリング当接部の外径よりも小さい空隙を有し、該空隙に前記コイルスプリング部が挿通される、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項4】
略筒状に形成されたプロテクタ部の一の筒端部側の筒孔から長尺状のスプリングを挿入する第1過程と、
前記筒孔内に設けられた、可撓性を有する一時保持部に前記スプリングを保持させる第2過程と、
前記プロテクタ部の他の筒端部側の筒孔内にタルクを塗布する第3過程と、
前記プロテクタ部の一の筒端部に、点火コイル本体を格納した本体ユニットの係合部を係合する第4過程と、
前記プロテクタ部の一の筒端部に前記係合部を係合するとき、前記係合部が前記一時保持部に保持されている前記スプリングに当接して押圧を加える第5過程と、
前記押圧によって前記一時保持部に変形または撓みが生じて前記スプリングが前記プロテクタ部の他の筒端部へ向かって移動し、該スプリングが前記筒孔内に設けられた位置決め保持部に当接して位置決めされる第6過程と、
を有し、
前記第2過程は、
前記第3過程で前記タルクを塗布する範囲に前記スプリングが到達しないように、前記一時保持部に前記スプリングを保持させる、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイルの製造方法。
【請求項5】
略筒状に形成されたプロテクタ部の他の筒端部側の筒孔内にタルクを塗布する第1過程と、
前記プロテクタ部の一の筒端部側の筒孔に、長尺状のスプリングを挿入する第2過程と、
前記筒孔内に設けられた、可撓性を有する一時保持部に前記スプリングを保持させる第3過程と、
前記プロテクタ部の一の筒端部に、点火コイル本体を格納した本体ユニットの係合部を係合する第4過程と、
前記プロテクタ部の一の筒端部に前記係合部を係合するとき、前記係合部が前記一時保持部に保持されている前記スプリング部に当接して押圧を加える第5過程と、
前記押圧によって前記一時保持部に変形または撓みが生じて前記スプリングが前記プロテクタ部の他の筒端部へ向かって移動し、該スプリングが前記筒孔内に設けられた位置決め保持部に当接して位置決めされる第6過程と、
を有し、
前記第3過程は、
前記第1過程で前記タルクを塗布する範囲に前記スプリングが到達しないように、前記一時保持部に前記スプリングを保持させる、
ことを特徴とする内燃機関用点火コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車に搭載される内燃機関の点火プラグに火花放電を発生させる内燃機関用点火コイルおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、乗用車に搭載される内燃機関には、点火プラグの電極端子に直接装着するダイレクトイグニッション型の点火コイルが一般的に用いられている。
ダイレクトイグニッション型の点火コイルは、高電圧を発生する点火コイル本体を格納した筐体と、筐体を内燃機関のヘッドカバー等に装着した状態において、点火コイル本体(上記の筐体)と点火プラグとを接続するプロテクタ部とを備えて構成されている。
プロテクタ部は、絶縁性材料を用いて概ね筒状に形成されており、筒孔内に導電性材料を用いた長尺状のスプリングが挿入されている。このスプリングは、点火コイル本体の高電圧出力端子等と点火プラグの頭部電極を電気接続するように備えられている。
【0003】
上記のスプリングを備えた点火コイルには、例えば、プロテクタ部の筒孔内から当該スプリングが脱落することを防ぐため、プロテクタ部の筒孔内に凸面を設けて、スプリングの所定部分に当接させたものがある(例えば、特許文献1)。
上記のスプリングは、長手方向において同一外径のコイルスプリングであるが、プロテクタ部の筒孔内部において位置決めを確実にするため、コイルスプリング長手方向の中央部分等に、当該コイルスプリングの外径よりも大きく形成した部位を備えたものがある。
【0004】
図5は、従来の点火コイルの構成を示す説明図である。なお、この図は、ダイレクトイグニッション型点火コイルを構成するプロテクタ部101の縦断面を示したもので、点火コイル本体、当該点火コイル本体を格納した筐体等の図示を省略している。
図5(a)は、プロテクタ部101にスプリング201を挿入する前の状態を示し、図5(b)は、プロテクタ部101にスプリング201を挿入した後の状態を示している。
プロテクタ部101は、略筒状に形成されており、当該略筒状長手方向の一端に本体ユニット側開口部110が設けられており、上記長手方向の他端に、点火プラグの頭部電極が接続される点火プラグ側開口部120が設けられている。
【0005】
本体ユニット側開口部110は、当該点火コイル本体を格納する本体ユニットと連結(嵌合)固定することができる形状に形成されている。
点火プラグ側開口部120は、内燃機関のシリンダヘッド等に固定された点火プラグの頭部電極と嵌合する形状に形成されている。
プロテクタ部101の筒孔内部には、例えば、本体ユニット側開口部110に、図示されない点火コイル本体を格納した筐体を連結したとき、当該筐体に接触しない孔奥側に、スプリング201を支持する位置決め保持部111が設けられている。
位置決め保持部111は、プロテクタ部101筒孔の内部において、当該筒孔の径方向に突出した凸形状に形成されている。
【0006】
スプリング201は、長尺状に形成されたコイルスプリングであり、例えば、コイルスプリング部203の長手方向中央の位置に、コイルスプリング部203よりも大きな径に形成されたスプリング当接部202を備えている。
本体ユニット側開口部110から、プロテクタ部101の筒孔にスプリング201を挿入すると、図5(b)に示したように、当該筒孔内部において、スプリング当接部202が位置決め保持部111に当接した位置でスプリング201が位置決めされ、点火プラグ側開口部120へ向かって落下しないように支持される。
筒孔内部に支持されたスプリング201の下側には、タルク塗布部112が設けられている。タルク塗布部112は、点火プラグ側開口部120から筒孔奥側へ向かって距離α4の範囲である。タルク塗布部112の上端は、位置決め保持部111によって位置決めされたスプリング201の下端の位置と概ね同じであり、若干、プリング201の下端よりも上側に位置する。即ち、スプリング201の下端は、若干、タルク塗布部112に重なり配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-66275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これまでの点火プラグは、コルゲーション形状に形成された絶縁体を備えていたが、コルゲーション形状を採用することなく構成されたものがみられるようになってきた。このような点火プラグは、十分な絶縁効果を得るため、また、放熱効果を損なわないように長い絶縁体を備えており、この点火プラグに対応するため、点火プラグのプロテクタ部にタルクを塗布する範囲も延長することが必要になる。
このようにタルク塗布範囲を大きく設けると、プロテクタ部の内部に備えたスプリングが、孔内壁面に塗布されたタルクに当接する場合が生じる。このようにスプリングにタルクが付着すると、当該スプリングと点火プラグの頭部電極が接触する部分に導通不良等が発生する懸念がある。
【0009】
本開示は、上記の問題に鑑みなされたもので、プロテクタ部へタルクを塗布するとき、タルクがスプリングに付着することを防ぎ、スプリングと点火プラグの高電圧導通を良好にする内燃機関用点火コイルおよび製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る内燃機関用点火コイルは、高電圧を発生する点火コイル本体および該点火コイル本体を格納する筐体からなる本体ユニットと、絶縁性材料を用いて略筒状に形成され、前記点火コイル本体が発生した高電圧を、筒孔内部に配置した導電体からなる長尺状のスプリングを介して点火プラグに供給するプロテクタ部と、を備え、前記プロテクタ部は、前記本体ユニットと係合する一の筒端部、前記点火プラグの頭部電極と接続する他の筒端部、前記一の筒端部から前記筒孔に挿入された前記スプリングが前記他の筒端部の近傍に設けられたタルク塗布部に接しないように、該スプリングを保持する一時保持部、および、前記一時保持部と前記他の筒端部との間に配置され、前記筒孔内のスプリングの位置決めを行う位置決め保持部、を有し、前記一時保持部は、前記一の筒端部に連結された前記本体ユニットによって前記筒孔内のスプリングが押されたとき、該スプリングを介して加えられた押圧によって変形または撓みが生じる可撓性を有し、前記変形または撓みが生じることにより前記スプリングが前記他の筒端部へ向かって移動することができる形状に形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
また、前記一時保持部は、前記筒孔の中心に向かって突出した複数の薄板片状リブである、ことを特徴とする。
【0012】
また、前記スプリングは、コイルスプリング部と該コイルスプリング部よりも大きな外径のスプリング当接部とを有し、前記一時保持部は、前記筒孔の径方向について、前記コイルスプリング部の外径よりも大きく、かつ、前記スプリング当接部の外径よりも小さい空隙を有し、該空隙に前記コイルスプリング部が挿通される、ことを特徴とする。
【0013】
本開示に係る内燃機関用点火コイルの製造方法は、略筒状に形成されたプロテクタ部の一の筒端部側の筒孔から長尺状のスプリングを挿入する第1過程と、前記筒孔内に設けられた、可撓性を有する一時保持部に前記スプリングを保持させる第2過程と、前記プロテクタ部の他の筒端部側の筒孔内にタルクを塗布する第3過程と、前記プロテクタ部の一の筒端部に、点火コイル本体を格納した本体ユニットの係合部を係合する第4過程と、前記プロテクタ部の一の筒端部に前記係合部を係合するとき、前記係合部が前記一時保持部に保持されている前記スプリングに当接して押圧を加える第5過程と、前記押圧によって前記一時保持部に変形または撓みが生じて前記スプリングが前記プロテクタ部の他の筒端部へ向かって移動し、該スプリングが前記筒孔内に設けられた位置決め保持部に当接して位置決めされる第6過程と、を有し、前記第2過程は、前記第3過程で前記タルクを塗布する範囲に前記スプリングが到達しないように、前記一時保持部に前記スプリングを保持させる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本開示に係る内燃機関用点火コイルの製造方法は、略筒状に形成されたプロテクタ部の他の筒端部側の筒孔内にタルクを塗布する第1過程と、前記プロテクタ部の一の筒端部側の筒孔に、長尺状のスプリングを挿入する第2過程と、前記筒孔内に設けられた、可撓性を有する一時保持部に前記スプリングを保持させる第3過程と、前記プロテクタ部の一の筒端部に、点火コイル本体を格納した本体ユニットの係合部を係合する第4過程と、前記プロテクタ部の一の筒端部に前記係合部を係合するとき、前記係合部が前記一時保持部に保持されている前記スプリング部に当接して押圧を加える第5過程と、前記押圧によって前記一時保持部に変形または撓みが生じて前記スプリングが前記プロテクタ部の他の筒端部へ向かって移動し、該スプリングが前記筒孔内に設けられた位置決め保持部に当接して位置決めされる第6過程と、を有し、前記第3過程は、前記第1過程で前記タルクを塗布する範囲に前記スプリングが到達しないように、前記一時保持部に前記スプリングを保持させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、点火コイルの製造時にプロテクタ部へ導電体のスプリングを備えるとき、当該スプリングにタルクが付着することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施例1による内燃機関用点火コイルの概略構成を示す説明図である。
図2】実施例1による内燃機関用点火コイルの概略構成を示す説明図である。
図3】実施例1による内燃機関用点火コイルの製造方法を示すフローチャートである。
図4】実施例2による内燃機関用点火コイルの製造方法を示すフローチャートである。
図5】従来の点火コイルの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
(実施例1)
図1は、本開示の実施例1による内燃機関用点火コイルの概略構成を示す説明図である。
図1は、後述する本体ユニット1と結合するプロテクタ部10の断面を示したもので、図1(a)は、プロテクタ部10へスプリング20を挿入する前の状態を示し、図1(b)は、図1(a)に示したA-A線におけるプロテクタ部10の径方向の断面を示している。
また、図1(c)は、図1(a)に示した状態から、スプリング20をプロテクタ部10の内部へ挿入した状態を示している。
なお、ここでは本体ユニット1の内部構成および組み立て過程の説明を省略する。
【0018】
スプリング20は、長尺状のコイルスプリングであり、適当な位置(例えばコイルスプリング部22の長手方向の中央部分)に、コイルスプリング部22よりも大きな外径を有するスプリング当接部21を備えている。
スプリング当接部21は、スプリング20の長手方向における両端がテーパー状に形成されており、当該スプリング当接部21よりも外径の小さいコイルスプリング部22へ向かって絞り込まれるように形成されている。
【0019】
プロテクタ部10は、高電圧に対する絶縁性、耐熱性、耐油性などを有する樹脂等を用いて形成されている。また、プロテクタ部10は、内燃機関のヘッドカバーに固定された(後述する)本体ユニット1から、シリンダヘッド等に装着された点火プラグの頭部電極まで届く程度の長さを有する略筒状に形成されている。
プロテクタ部10は、略筒状の筒孔内部に、後述するスプリング20を支持する位置決め保持部11を有し、位置決め保持部11よりも上部(本体ユニット側開口部30の側)にリブ部12を有している。換言すると、位置決め保持部11は、リブ部12と点火プラグ側開口部31との間に配置されている。
【0020】
位置決め保持部11は、プロテクタ部10の筒孔に挿入されたスプリング20のスプリング当接部21に当接するように上記筒孔の径中心へ向かって突出している。また、位置決め保持部11は、プロテクタ部10の筒孔の周方向に沿って設けられており、スプリング20が所定位置を越えて点火プラグ側開口部31に向かって移動しないように形成されている。
位置決め保持部11が設けられた部分の筒孔径は、コイルスプリング部22の外径よりも大きく、スプリング当接部21の外径よりも十分小さく設けられており、当該位置決め保持部11は、コイルスプリング部22が挿通可能で、スプリング当接部21が挿通できないように形成されている。
【0021】
リブ部12は、例えば、図1(b)に示したようにプロテクタ部10に一体形成されており、プロテクタ部10筒孔の周方向に沿って、等間隔を空けて4か所(4個)設けられている。リブ部12は、例えば、上記筒孔の径中心に向かって突出し、適当な可撓性を有するように薄い板片状に形成されている。
各リブ部12の配置は、図1(c)に示したようにスプリング20が本体ユニット側開口部30から筒孔へ挿入され、スプリング当接部21が当該リブ部12に当接した場合(リブ部12によってスプリング20を保持した場合)、スプリング20の中心軸と筒孔の中心軸が重なるように構成されている。
【0022】
スプリング当接部21の外径を、例えばα1とする。また、前述のように配置された各リブ部12の間に生じる空隙の径(筒孔の径方向に生じる空隙の大きさ)を、例えばα2とする。
各リブ部12の大きさ形状は、空隙の径α2が外径α1よりも若干小さくなるように構成されている。即ち、各リブ部12の間(筒孔の中心部分)に生じる空隙は、コイルスプリング部22を挿通することができ、スプリング当接部21を挿通することが難しい(各リブ部12がスプリング当接部21に当接する)大きさである。
【0023】
各リブ部12は、筒孔径中心に向かって突出している先端部位が、スプリング当接部21のテーパー部分に対応した形状に形成されている。換言すると、上記のリブ部12の先端部位は、スプリング当接部21のテーパー部分に当接したとき、例えば隙間等が生じないように(摩擦抵抗が大きくなるように)、筒孔延設方向に対して所定の角度(スプリング当接部21のテーパー角度)で傾斜している。
【0024】
図2は、実施例1による内燃機関用点火コイルの概略構成を示す説明図である。図2(a)は、図1に示したプロテクタ部10に本体ユニット1を連結(係合固定)する前の状態を示し、図2(b)は、プロテクタ部10に本体ユニット1を連結(係合固定)した後の状態を示している。なお、図2においては、プロテクタ部10の縦断面を図示している。
本実施例の点火コイルを組み立てるときには、プロテクタ部10にスプリング20を挿入して、点火コイル本体等を格納した本体ユニット1とプロテクタ部10とを係合固定する。
プロテクタ部10の筒孔にスプリング20を挿入する場合には、本体ユニット側開口部30から挿入する。
筒孔に挿入されたスプリング20は、スプリング当接部21がリブ部12に当接し、図2(a)に示した筒孔内の位置に保持される。
【0025】
リブ部12によって保持されたスプリング20は、コイルスプリング部22の先端が点火プラグ側開口部31の近傍に設けられたタルク塗布部40に到達しない状態となる。
タルク塗布部40は、当該点火コイルを内燃機関に装着したとき、点火プラグ側開口部31に挿入された点火プラグ(点火プラグの絶縁体や頭部電極など)が到達する部位に設けられており、例えば、点火プラグ側開口部31の縁端部から筒孔奥側へ向かって距離(長さ)α3までの筒孔内壁面の範囲である。
【0026】
図3は、実施例1による内燃機関用点火コイルの製造方法を示すフローチャートである。
図3に示した組み立て過程は、本体ユニット1の内部等の組み立て過程を省略しており、本体ユニット1を(単体として)完成させた後の過程を示している。
【0027】
本体ユニット1とプロテクタ部10とを係合させる前に、プロテクタ部10の筒孔にスプリング20を挿入する(S101)。ここで、スプリング20は、本体ユニット側開口部30の筒孔から挿入される。
本体ユニット側開口部30の筒孔から挿入されたスプリング20を筒孔奥側へ進行させ、各リブ部12にスプリング20を保持させる(S102)。スプリング20は、図1(c)に示したように、スプリング当接部21がリブ部12に当接した位置で保持される。スプリング20がこの位置で保持されることにより、コイルスプリング部22の下端(点火プラグ側開口部近傍の端部)は、タルク塗布部40と重ならない(接することのない)位置に配置される。
【0028】
スプリング20がリブ部12によって保持されている状態で、点火プラグ側開口部31の筒孔(孔内壁)にタルクを塗布する(S103)。図2に示したタルク塗布部40にタルクを塗布するとき、スプリング20にタルクが付着することを抑える(好ましくは防ぐ)ことができる。
筒孔にタルクを塗布した後、プロテクタ部10に本体ユニット1の係合部1aを挿入し、これらを係合固定する(S104)。係合部1aを本体ユニット側開口部30の奥側へ向かって挿入すると、図2(b)に示したように、リブ部12に保持されているスプリング20の上端(本体ユニット側開口部30の近傍に配置された端部)に係合部1aが当接し、当該係合部1aによってスプリング20が筒孔奥側へ押し込まれる。
また、係合部1aがスプリング20に当接することにより、本体ユニット1に格納されている点火コイル本体が発生した高電圧を(本体ユニット1の外部へ)出力する端子等とスプリング20が電気接続される。
【0029】
プロテクタ部10と本体ユニット1を係合させるとき、係合部1aはスプリング20に押圧を加える。スプリング20は、この押圧によって点火プラグ側開口部31へ向かって移動する。具体的には、スプリング20に上記の押圧が加わると、この押圧によってリブ部12に変形または撓みが生じ、スプリング当接部21がリブ部12を乗り越えて移動することが可能になり、上記のようにスプリング20が移動する。
換言すると、リブ部12は、スプリング20に加えられた押圧(プロテクタ部10の筒孔延設方向に作用する力)によって変形または撓む可撓性を有している。また、リブ部12は、上記の押圧が作用して変形または撓みが生じることによって、スプリング当接部21に当接する(スプリング20の位置を保持する)機能が弱まる形状に形成されている。
【0030】
前述の押圧によってリブ部12が変形または撓むことによって、スプリング当接部21がリブ部12を乗り越え、スプリング20が点火プラグ側開口部31へ向かって移動し、スプリング当接部21が位置決め保持部11に当接する位置で停止する。即ち、スプリング20に作用する押圧により、当該スプリング20を位置決め保持部11の設置位置まで移動させ、位置決め保持部11にスプリング20を保持させる(S105)。
位置決め保持部11の設置位置に停止した(保持された)スプリング20は、図2(b)において、上端が係止部1aの出力端子等に電気接続され、スプリング20の下端は、タルク塗布部40の上端(もしくは上端よりも若干下側)に位置する。
換言すると、スプリング20が位置決め保持部11に保持された状態になると、スプリング20の下端は、プロテクタ部10に点火プラグが挿入された場合に、当該点火プラグの頭部電極と接触(電気接続)する位置に配置される。
【0031】
このように、プロテクタ部10にリブ部12を備えることにより、点火コイル組み立て時にタルクがスプリング20に付着することを防ぐとともに、完成した点火コイルを点火プラグへ接続した場合、プロテクタ部10内部のスプリング20が点火プラグの頭部電極に接続される配置構成とすることが可能になる。
【0032】
(実施例2)
実施例2による内燃機関用点火コイルは、図1および図2を用いて説明した実施例1による内燃機関用点火コイルと同様に構成されている。ここでは、実施例1の点火コイルと同様な構成について重複説明を省略する。
図4は、実施例2による内燃機関用点火コイルの製造方法を示すフローチャートである。図4に示した組み立て過程は、本体ユニット1の内部等の組み立て過程を省略しており、本体ユニット1を(単体として)完成させた後の過程を示している。
【0033】
本体ユニット1とプロテクタ部10とを係合させる前に、プロテクタ部10の点火プラグ側開口部31の筒孔内壁(タルク塗布部40)にタルクを塗布する(S100)。この後、図3と同様にプロテクタ部10の筒孔にスプリング20を挿入する(S101)。ここで、スプリング20は、本体ユニット側開口部30の筒孔から挿入される。
本体ユニット側開口部30の筒孔から挿入されたスプリング20を筒孔奥側へ進行させ、各リブ部12にスプリングを保持させる(S102)。スプリング20は、図1(c)に示したように、スプリング当接部21がリブ部12に当接した位置で保持される。スプリング20がこの位置で保持されることにより、コイルスプリング部22の下端(点火プラグ側開口部近傍の端部)は、タルク塗布部40と重ならない(接することのない)位置に配置される。
【0034】
この後、プロテクタ部10に本体ユニット1の係合部1aを挿入し、これらを係合固定する(S104)。係合部1aを本体ユニット側開口部30の奥側へ向かって挿入すると、図2(b)に示したように、リブ部12に保持されているスプリング20の上端(本体ユニット側開口部30の近傍に配置された端部)に係合部1aが当接し、当該係合部1aによってスプリング20が筒孔奥側へ押し込まれる。
また、図3の過程S104と同様に本体ユニット1の外部へ高電圧を出力する端子等とスプリング20が電気接続される。
プロテクタ部10と本体ユニット1を係合させるとき、実施例1で説明したように、係合部1aがスプリング20に押圧を加え、この押圧によってリブ部12に変形または撓みが生じ、スプリング部20が位置決め保持部11の設置位置へ移動する。
【0035】
前述の押圧によってスプリング20が移動し、位置決め保持部11に当接したスプリング20を保持させる(S105)。位置決め保持部11の設置位置に保持されたスプリング20は、図2(b)において、上端が係止部1aの出力端子等に電気接続され、下端がタルク塗布部40の上端(もしくは上端よりも若干下側)に配置される。
換言すると、スプリング20が位置決め保持部11に保持された状態になると、スプリング20の下端は、プロテクタ部10に点火プラグが挿入された場合に、当該点火プラグの頭部電極と接触(電気接続)する位置に配置される。
【0036】
実施例2による製造方法は、スプリング20をプロテクタ部10の筒孔へ挿入する前にタルクを塗布している。この製造方法においても、プロテクタ部10にリブ部12を備えることにより、スプリング20を位置決め保持部11に当接させる際に、当該スプリング20にタルクが付着することを抑制することができる。
具体的には、プロテクタ部10と本体ユニット1とを係合する製造過程を開始するまでの間、スプリング20はタルク塗布部40に接しない位置に配置されている。そのため、スプリング部20が不意にタルクと接触することを抑える(好ましくは防ぐ)ことが可能になる。
【符号の説明】
【0037】
1本体ユニット
1a係合部
10,101プロテクタ部
11,111位置決め保持部
12リブ部(一時保持部)
20,201スプリング
21,202スプリング当接部
22,203コイルスプリング部
30,110本体ユニット側開口部(一の筒端部)
31,120点火プラグ側開口部(他の筒端部)
40,112タルク塗布部(タルク塗布範囲)
図1
図2
図3
図4
図5