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特許7263256PD-L1抗体医薬組成物およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】PD-L1抗体医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230417BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230417BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230417BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230417BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230417BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230417BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20230417BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20230417BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61P35/00
A61P15/00
A61P1/00
A61P17/00
A61P11/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C07K16/18
C07K7/06
C07K16/46
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019563895
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 CN2018086866
(87)【国際公開番号】W WO2018210230
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】201710341680.7
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMA CEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲顔▼ ▲貞▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 健健
(72)【発明者】
【氏名】▲顔▼ ▲暁▼丹
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲珊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 洵
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533335(JP,A)
【文献】特表2005-508981(JP,A)
【文献】特表2012-511329(JP,A)
【文献】特開2011-256206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(a)30mg/mL~80mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントと、
(b)5mM~50mMのpH4.5~6.0のコハク酸緩衝液と、
(c)30mg/mL~90mg/mLの二糖であって、前記二糖はトレハロースまたはスクロースである、二糖と、
(d)0.1mg/mL~1.0mg/mLのポリソルベート80とを、含み、
ここで、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの重鎖可変領域配列は、配列番号15に示され、前記抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントの軽鎖可変領域配列は、配列番号17に示される、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物のpHは、.0~6.0である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物のpHは、.0~5.5である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物のpHは、5.2である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記コハク酸緩衝液の濃度は、0mM~30mMである、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記コハク酸緩衝液の濃度は、10mM~20mMである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記コハク酸緩衝液の濃度は、20mMである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗PD-L1抗体の濃度は、0mg/mL~60mg/mLである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗PD-L1抗体の濃度は、5mg/mL~55mg/mLである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗PD-L1抗体の濃度は、50mg/mLである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記二糖の濃度は、0mg/mL~80mg/mLである、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記二糖の濃度は、55mg/mL~65mg/mLである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記二糖の濃度は、60mg/mLである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記二糖は、スクロースである、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記ポリソルベート80の濃度は、0.4mg/mL~0.8mg/mLである、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ポリソルベート80の濃度は、0.5mg/mL~0.7mg/mLである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ポリソルベート80の濃度は、0.6mg/mLである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
(a)45mg/mL~55mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、
(b)10mM~20mMのコハク酸緩衝液(pH5.0~6.0)、
(c)55mg/mL~65mg/mLのスクロース、および、
(d)0.4mg/mL~0.8mg/mLのポリソルベート80、を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMのコハク酸緩衝液、60mg/mLのスクロース、および0.4mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物A、
50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMのコハク酸緩衝液、60mg/mLのスクロース、および0.6mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物B、
50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMのコハク酸緩衝液、60mg/mLのスクロース、および0.8mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物C、
50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.5の20mMのコハク酸緩衝液、60mg/mLのスクロース、および0.6mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物D、ならびに、
50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.8の20mMのコハク酸緩衝液、60mg/mLのスクロース、および0.6mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物E、からなる群から選択される一つである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
PD-L1媒介性疾患または状態を治療するための請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記PD-L1媒介性疾患または状態が、癌である、請求項20に記載の医薬組成物
【請求項22】
前記PD-L1媒介性疾患または状態が、PD-L1発現癌である、請求項20に記載の医薬組成物
【請求項23】
前記PD-L1媒介性疾患または状態が、乳癌、肺癌、胃癌、腸癌、腎癌、黒色腫、膀胱癌、または非小細胞肺癌である、請求項20に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年5月16日に出願された中国特許出願第CN201710341680.7号の優先権を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は医薬調製物の分野に関し、特に、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物、および抗癌剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
1992年に発見された、T細胞の表面上に発現するタンパク質受容体であるPD-1(Programmed death-I)は、アポトーシスのプロセスに関与する。PD-1は二つのリガンド、すなわちPD-L1およびPD-L2を有する。PD-L1は、主にT細胞、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞(DC)上で発現し、活性化された細胞上での発現はアップレギュレートされうる。PD-L2の発現は比較的限定されており、これは主に抗原提示細胞(たとえば、活性化マクロファージおよび樹状細胞)上で発現される。
【0004】
PD-L1はPD-1およびB7-1に結合して免疫系を阻害し、腫瘍微小環境中の多くの腫瘍細胞はPD-L1を発現する。最近の研究では乳癌、肺癌、胃癌、腸癌、腎癌、メラノーマ癌、非小細胞肺癌、結腸癌、膀胱癌、卵巣癌、膵臓癌、肝臓癌などのヒト腫瘍組織におけるPD-L1タンパク質の高発現が見出され、PD-L1の発現レベルは患者の臨床状態および予後と密接に関連している。PD-L1はT細胞増殖を抑制する第二のシグナル経路として機能するため、PD-L1/PD-1間の結合を阻止することは、がん免疫療法の分野において非常に有望な新たな標的となっている。
【0005】
他の化学薬品と比較して、抗体医薬は、それらのより大きな分子量、より複雑な構造、および、容易な分解、重合、または望ましくない化学修飾のために不安定になる。投与に適した抗体分子を作製し、保存およびその後の使用の間の安定性を維持し、より良好な効果を発揮するために、抗体医薬の処方に関する研究は特に重要である。
【0006】
多数の多国籍製薬会社が、現在、たとえば中国特許出願公開第105793288号明細書(特許文献1)、中国特許出願公開第103429264号明細書(特許文献2)、および中国特許出願公開第105960415号明細書(特許文献3)に開示されているようなPD-L1/PD-1抗体を含有する医薬組成物を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】中国特許出願公開第105793288号明細書
【文献】中国特許出願公開第103429264号明細書
【文献】中国特許出願公開第105960415号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. Biol. Chem. 243, p. 3558 (1968)
【文献】Kabat, E A, et al, 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.
【文献】Antibody Experimental Technology Guide of Cold Spring Harbor
【文献】The Immunoglobulin FactsBook, 2001(ISBN 012441351)
【文献】Watson etal. (1987) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p. 224 (4th Ed.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、十分に安定であり、投与に適した、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントおよび緩衝液を含む医薬組成物を提供し、ここで、緩衝液は、好ましくはコハク酸緩衝液または酢酸緩衝液であり、より好ましくはコハク酸緩衝液である。
【0011】
本開示の実施形態において、緩衝液の濃度は、約5~50mM、好ましくは約10~30mM、より好ましくは10~20mMであり、緩衝液の濃度の非限定的な実施形態は、10mM、12mM、14mM、16mM、18mMおよび20mMを含む。
【0012】
本開示の実施形態において、医薬組成物のpHは、約4.5~6.0、好ましくは約4.8~5.7、より好ましくは5.0~5.5であり、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4または5.5でありうる。
【0013】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体の濃度は、約30~約80mg/mL、好ましくは約40~約60mg/mL、より好ましくは45~約55mg/mLであり、抗体の濃度の非限定的な実施形態には45mg/mL、46mg/mL、47mg/mL、48mg/mL、49mg/mL、50mg/mL、51mg/mL、52mg/mL、53mg/mL、54mg/mLおよび55mg/mLが含まれる。
【0014】
さらに、本開示の医薬組成物は、糖類も含む。本明細書の「糖」は、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む従来の組成物(CHO)およびその誘導体を含み、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセロール、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メリチトース、メリトリオース、マンノトリオース、マンノトリオース、スタチオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルツロースなどからなる群から選択されうる。糖類は、好ましくは非還元二糖類であり、より好ましくはトレハロースまたはスクロースである。
【0015】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の糖類の濃度が約30~約90mg/mL、好ましくは50~約70mg/mL、より好ましくは55~約65mg/mLであり、糖類の濃度の非限定的な実施形態には55mg/mL、57mg/mL、59mg/mL、60mg/mL、61mg/mL、63mg/mLおよび65mg/mLが含まれる。
【0016】
さらに、本開示の医薬組成物は、界面活性剤も含む。ここで、界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、トリトン、ドデシル硫酸ナトリウム、 ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムオクチルグルコシド、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、ステアリルサルコシン、リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、セチルベタイン、ラウリルアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノラミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルベタイン、パルミトイルアミドプロピルベタイン、またはイソステアリルアミドプロピルベタイン、ミリスタミドプロピルジメチルアミン、パルミトイルアミドプロピルジメチルアミン、イソステアルアミドプロピルジメチルアミン、メチルココイルタウリン酸ナトリウム、またはメチルオレイルタウリン酸二ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールプロピレングリコール共重合体などからなる群から選択される。界面活性剤は、好ましくはポリソルベート80またはポリソルベート20、より好ましくはポリソルベート80である。
【0017】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の界面活性剤の濃度は、約0.1~1.0mg/mL、好ましくは0.2~0.8mg/mL、より好ましくは0.4~0.8mg/mLであり、界面活性剤の濃度の非限定的な実施形態は0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mLおよび0.8mg/mLを含む。
【0018】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗体重鎖可変領域HCDR配列(配列番号1~3、配列番号7~9)および/または抗体軽鎖可変領域LCDR配列(配列番号4~6、配列番号10~12)からなる群より選択されるCDR領域配列またはその変異配列のいずれか一つを含む。具体的には以下の通りである。
HCDR1は、NDYWX(配列番号1)またはSYWMH(配列番号7)から選択され、
HCDR2は、YISYGSTYNPSLKS(配列番号2)またはRIXPNSGXTSYNEKFKN(配列番号8)から選択され、および/または、
HCDR3は、SGGWLAPFDY(配列番号3)またはGGSSYDYFDY(配列番号9)から選択され、および/または、
LCDR1は、KSSQSLFYXSNQKXSLA(配列番号4)またはRASESVSIHGTHLMH(配列番号10)から選択され、
LCDR2は、GASTRES(配列番号5)またはAASNLES(配列番号11)から選択され、および/または、
LCDR3は、QQYYGYPYT(配列番号6)またはQQSFEDPLT(配列番号12)から選択され、
ここで、Xは、NまたはTから選択され、Xは、RまたはHから選択され、Xは、NまたはHから選択され、Xは、HまたはGから選択され、Xは、GまたはFから選択される。
【0019】
本開示の実施形態において、好ましくは、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、配列番号11、配列番号12、またはその変異配列からなる群から選択される軽鎖可変領域CDR配列、ならびに、配列番号7、配列番号8、および配列番号9、またはその変異配列からなる群から選択される重鎖可変領域CDR配列を含み、より好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、配列番号11および配列番号12にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列、ならびに配列番号7、配列番号8および配列番号9にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列を含み、または、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはその変異配列からなる群から選択される重鎖可変領域CDR配列、ならびに、配列番号4、配列番号5、および配列番号6、またはその変異配列からなる群から選択される軽鎖可変領域CDR配列を含み、より好ましくは、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1、配列番号2および配列番号3にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3配列、ならびに配列番号4、配列番号5および配列番号6にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3配列を含む。
【0020】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号10、配列番号11、および配列番号12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域CDR配列、ならびに配列番号7、配列番号8および配列番号9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する重鎖可変領域CDR配列を含む。
【0021】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合断片は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体、好ましくはヒト化抗体からなる群から選択されうる。
【0022】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する重鎖可変領域配列、および配列番号14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域配列を含む。
【0023】
本開示の実施形態において、医薬組成物中の抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する重鎖可変領域配列、および配列番号17に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する軽鎖可変領域配列を含む。
【0024】
本開示はさらに、約30~約80mg/mLの濃度を有する抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、約5~約50mMの濃度を有するpH5.0~6.0のコハク酸緩衝液、約30~約90mg/mLの濃度を有する二糖類、および約0.1~約1.0mg/mLの濃度を有するポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
本開示はさらに、40~60mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、10~30mMのコハク酸緩衝液(pH5.0~5.5)、40~80mg/mLのスクロース、および0.4~0.8mg/mLのポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
本開示はさらに、45~55mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.0~5.5の10~20mMコハク酸緩衝液、55~65mg/mLスクロース、および0.5~0.7mg/mLポリソルベート80を含む医薬組成物を提供する。
【0027】
本開示はさらに、約30~約80mg/mLの濃度を有する抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、約5~約50mMの濃度を有するpH5.0~6.0の酢酸緩衝液、約30~約90mg/mLの濃度を有する二糖類、および約0.1~約1.0mg/mLの濃度を有するポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0028】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.3の10mMコハク酸緩衝液、および60mg/mLスクロース、を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5の10mM酢酸緩衝液、および90mg/mLスクロース、を含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5の30mM酢酸緩衝液、および60mg/mLのトレハロース、を含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5の30mM酢酸緩衝液、および60mg/mLのトレハロース、を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.6の30mM酢酸緩衝液、および90mg/mLスクロース、を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.0~5.5の10mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.2mg/mLポリソルベート20、を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
本開示はさらに、50mg/mLの抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の10mM-20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.2mg/mLポリソルベート20、を含む医薬組成物を提供する。
【0035】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mM酢酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.1~0.3mg/mLポリソルベート20、を含む医薬組成物を提供する。
【0036】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mM酢酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.1~0.3mg/mLポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0037】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.2~0.6mg/mLポリソルベート20を含む医薬組成物を提供する。
【0038】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.4~0.8mg/mLポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0039】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.4mg/mLポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0040】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.6mg/mLポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0041】
本開示はさらに、50mg/mLのPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメント、pH5.2の20mMコハク酸緩衝液、60mg/mLスクロース、および0.8mg/mLポリソルベート80、を含む医薬組成物を提供する。
【0042】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中のコハク酸緩衝液の濃度は、約5~50mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のコハク酸緩衝液の濃度は、約10~30mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のコハク酸緩衝液の濃度は、約20mMである。
【0043】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中の酢酸緩衝液の濃度は、約5~50mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の酢酸緩衝液の濃度は、約10~30mMである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の酢酸緩衝液の濃度は、約20mMである。
【0044】
いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、約5.0~6.0である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、約5.0~5.5である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは、5.2または5.5である。
【0045】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中の抗体の濃度は、約30~約80mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の抗体の濃度は、約40~約60mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の抗体の濃度は、約50mg/mLである。
【0046】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中の二糖類の濃度は、約30~約90mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の二糖類の濃度は、約40~約80mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の二糖類の濃度は、約60mg/mLである。
【0047】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中のポリソルベートは、ポリソルベート20またはポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のポリソルベートは、ポリソルベート80である。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.1~1.0mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.4~0.8mg/mLである。いくつかの実施形態では、医薬組成物中のポリソルベートの濃度は、約0.6mg/mLである。
【0048】
いくつかの実施形態では、調製物は、2~8℃で少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも12ヶ月間、少なくとも18ヶ月間、または少なくとも24ヶ月間安定である。いくつかの実施形態では、調製物が40℃で少なくとも7日間、少なくとも14日間、または少なくとも28日間安定である。
【0049】
本開示はさらに、本明細書に記載の安定な医薬組成物のいずれかを含有する容器を含む物品またはキットを提供する。いくつかの実施形態では、容器はガラスバイアルであり、ガラスバイアルは注射用の中性ホウケイ酸ガラスバイアルである。
【0050】
本開示はさらに、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを薬学的に許容される賦形剤と混合することを含む上記の医薬組成物を調製するための方法を提供する。
【0051】
本開示はさらに、PD-L1媒介疾患または状態を治療するための医薬を製造する際の上記医薬組成物の使用を提供する。ここで、疾患または状態が、好ましくは癌、より好ましくはPD-L1発現癌、さらに好ましくは乳癌、肺癌、胃癌、腸癌、腎癌、黒色腫または非小細胞肺癌、特に好ましくは非小細胞肺癌、黒色腫、膀胱癌または腎癌である。
【0052】
本開示はさらに、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与することを含むPD-L1媒介疾患または状態を治療または予防するための方法を提供する。ここで、疾患は好ましくは癌であり、より好ましくはPD-L1発現癌であり、さらに好ましくは乳癌、肺癌、胃癌、腸癌、腎癌、黒色腫、非小細胞肺癌または膀胱癌であり、特に好ましくは非小細胞肺癌、黒色腫、膀胱癌または腎癌である。
【0053】
本明細書で説明される様々な実施形態の特徴のうちの一つ、いくつか、またはすべてをさらに組み合わせて、本開示の他の実施形態を得ることができることを理解されたい。本開示の上記の実施形態の組み合わせによって得られる他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ヒト化クローン構築中のプライマー設計の概略図
図2】ヒト化クローン構築中のベクター構築の概略図
図3】Tm因子(緩衝系、緩衝液の濃度、医薬組成物のpH、糖類の濃度、および糖類の種類を含む)の主な効果プロット
【発明を実施するための形態】
【0055】
〔用語〕
本開示をより容易に理解するために、特定の技術用語および科学用語を以下に具体的に定義する。本明細書で特に別段の定義がない限り、本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するものと解釈されるものとする。
【0056】
「緩衝液」は、その共役酸-塩基成分のためにpHが変化しにくい緩衝液を指す。本開示の緩衝液のpH値は、約4.5~6.0、好ましくは約5.0~6.0、より好ましくは約5.0~5.5、最も好ましくは5.2である。このような範囲のpHを制御する緩衝液の例としては、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グリシルグリシンおよび他の有機酸緩衝液が挙げられる。本開示の緩衝液は、好ましくはコハク酸緩衝液または酢酸緩衝液、より好ましくはコハク酸緩衝液である。
【0057】
「コハク酸緩衝液」は、コハク酸イオンを含む緩衝液を指す。コハク酸緩衝液の例には、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸ヒスチジン、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウムなどが含まれる。本開示のコハク酸緩衝液は、好ましくはコハク酸-コハク酸ナトリウムである。
【0058】
「酢酸緩衝液」は、酢酸イオンを含む緩衝液を指す。酢酸緩衝液としては、たとえば、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン、酢酸-酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウム等が挙げられる。本開示の好ましい酢酸緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウムである。
【0059】
「医薬組成物」は、本明細書に記載の化合物の一つ以上、またはその生理学的/薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグと他の化学成分とを含む混合物を指す。前記他の化学成分はたとえば、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤である。医薬組成物の目的は活性成分の吸収を促進し、それによって生物学的活性を発揮する、生物への投与を促進することである。
【0060】
本開示の医薬組成物は、安定な効果を達成することができる。すなわち、医薬組成物に含まれる抗体は、貯蔵後にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を実質的に保持することができ、好ましくは、医薬組成物は、貯蔵後にその物理的安定性、化学的安定性および生物学的活性を実質的に保持する。貯蔵寿命は一般に、医薬組成物の所定の貯蔵寿命に基づいて選択される。現在、選択された温度で選択された期間貯蔵した後の安定性を測定する、タンパク質安定性を測定するための多くの分析技術が存在する。
【0061】
安定な抗体医薬調製物は、以下の条件において有意な変化が観察されないものである。すなわち、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間、さらにより好ましくは2年までの貯蔵、の条件である。さらに、安定な液体調製物は、25℃および40℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月、および6ヶ月を含む期間貯蔵したときに所望の特性を示す液体調製物を含む。安定性に関する一般的な許容基準は次のとおりである。SEC-HPLCの評価により、通常約10%以内、望ましくは抗体モノマーの約5%以内が分解される。医薬液体調製物は目視分析により、無色または透明~わずかに乳白色である。調製物の濃度、pHおよび浸透圧は、±10%以下の変化を有する。典型的には、10%以下、好ましくは5%以下のクリッピングが観察される。典型的には、10%以下、好ましくは5%以下の凝集が形成される。
【0062】
抗体は、色および/または透明度の目視検査時に、またはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および動的光散乱(DLS)によって測定して、凝集、沈殿および/または変性の有意な増加を示さない場合、医薬調製物中で「その物理的安定性を保持する」といえる。タンパク質コンホメーションの変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を決定する)およびFTIR分光法(タンパク質の二次構造を決定する)によって評価することができる。
【0063】
抗体は、それが有意な化学的変化を示さない場合、医薬調製物中で「その化学的安定性を保持する」といえる。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変化した形態を検出および定量することによって評価できる。タンパク質の化学構造をしばしば変化させる分解プロセスには、加水分解またはクリッピング(サイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEなどの方法によって評価される)、酸化(質量分析法またはMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチドマッピングなどの方法によって評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸測定などの方法によって評価される)、および異性化(イソアスパラギン酸含量、ペプチドマッピングなどを測定することによって評価される)が含まれる。
【0064】
抗体は、所与の時点での抗体の生物学的活性が医薬調製物が調製された時点で示される生物学的活性の所定の範囲内である場合、医薬調製物中で「その生物学的活性を保持する」といえる。抗体の生物学的活性はたとえば、抗原結合アッセイによって決定されうる。
【0065】
本明細書中で使用されるアミノ酸残基についての3文字コードおよび1文字コードは、J. Biol. Chem. 243, p. 3558 (1968)(非特許文献1)に記載された通りである。
【0066】
本開示において使用される「抗体」は、二つの同一の重鎖と二つの同一の軽鎖との間のジスルフィド結合によって一緒に連結されたテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。重鎖定常領域のアミノ酸組成および順序の違いは、免疫グロブリン抗原性の違いをもたらす。したがって、免疫グロブリンは5つのクラス(または免疫グロブリンアイソタイプ)、すなわちIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEに分類することができ、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、およびγ鎖、α鎖、およびε鎖である。そのヒンジ領域のアミノ酸組成、ならびに重鎖ジスルフィド結合の数および位置に従って、同じアイソタイプのIgを異なるサブクラスに分けることができ、たとえば、IgGをIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分類することができる。軽鎖は、定常領域の違いによりκ鎖またはλ鎖に分類される。Igの5つのクラスの各々は、κ鎖またはλ鎖を有することができる。
【0067】
本開示において、本開示の抗体軽鎖は、ヒトまたはマウスのκ鎖、λ鎖またはその変異体を含む軽鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0068】
本開示において、本開示の抗体重鎖は、ヒトまたはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはその変異体を含む重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0069】
抗体の重鎖および軽鎖のN末端に隣接する約110個のアミノ酸配列は、可変領域(Fv領域)として知られる高度に可変であり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が定常領域として知られる比較的安定である。可変領域は、三つの超可変領域(HVR)および四つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む。抗体の特異性を決定する三つの超可変領域は、相補性決定領域(CDR)としても知られている。各軽鎖可変領域(LCVR)および各重鎖可変領域(HCVR)は、三つのCDR領域および四つのFR領域からなり、アミノ末端からカルボキシル末端への順序は、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4、の順序である。軽鎖の三つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を指し、重鎖の三つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3を指す。本明細書中の抗体または抗原結合フラグメントのLCVRおよびHCVR領域におけるCDR領域アミノ酸残基の数および位置は、公知のKabat番号付け基準(LCDR1-3、HCDE2-3)に従うか、またはkabatおよびchothia番号付け基準(HCDR1)に従う。
【0070】
本開示の抗体は、マウス抗体、キメラ抗体およびヒト化抗体、好ましくはヒト化抗体を含む。
【0071】
本開示における「マウス抗体」という用語は、当該分野の知識および技術に従って調製されたヒトPD-L1に対するモノクローナル抗体を指す。調製中、被験体にPD-L1抗原を注射し、次いで、所望の配列または機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを分離した。本開示の好ましい実施形態において、ネズミPD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ネズミκ鎖、λ鎖またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含みうるか、またはネズミIgG1、IgG2、IgG3またはその変異体の重鎖定常領域をさらに含みうる。
【0072】
「キメラ抗体」という用語は、マウス抗体の可変領域をヒト抗体の定常領域と融合させることによって形成される抗体を指し、キメラ抗体は、マウス抗体によって誘導される免疫応答を軽減することができる。キメラ抗体を構築するために、特異的マウスモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを最初に構築し、可変領域遺伝子をマウスハイブリドーマ細胞からクローニングする。続いて、ヒト抗体の定常領域遺伝子を所望に応じてクローニングし、マウス可変領域遺伝子をヒト定常領域遺伝子とライゲーションして、ヒトベクターに挿入可能なキメラ遺伝子を形成し、最後に、キメラ抗体分子を真核または原核産業系で発現させる。本開示の好ましい実施形態において、PD-L1キメラ抗体の軽鎖は、ヒトκ鎖、λ鎖、またはその変異体の軽鎖定常領域をさらに含む。PD-L1キメラ抗体の重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4の重鎖定常領域、またはその変異体をさらに含む。ヒト抗体の定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の重鎖定常領域またはその変異体から選択することができ、好ましくはアミノ酸変異後にADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)を伴わないヒトIgG2またはIgG4の重鎖定常領域を含む。
【0073】
「ヒト化抗体」という用語は、CDR移植抗体としても知られており、マウスCDR配列をヒト抗体の可変領域フレームワークに移植することによって生成される抗体、すなわち、異なるタイプのヒト生殖系列抗体フレームワーク配列から産生される抗体を指す。ヒト化抗体は、大量のマウスタンパク質成分を有するキメラ抗体によって誘導される強力な抗体応答の欠点を克服する。このようなフレームワーク配列は、生殖系列抗体遺伝子配列または公開された参考文献をカバーする公開DNAデータベースから得ることができる。たとえば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNA配列はヒト生殖系列配列データベース「VBase」(www.mrccpe.com.ac.uk/vbase上で入手可能)に見出すことができ、また、Kabat, E A, et al, 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.(非特許文献2)に見出すことができる。免疫原性の減少の間の活性の減少を回避するために、ヒト抗体の可変領域におけるフレームワーク配列は、活性を維持するために最小限の復帰突然変異または復帰突然変異に供される。本開示のヒト化抗体はまた、ファージディスプレイによってCDR親和性成熟が行われるヒト化抗体を含む。
【0074】
本開示における「抗原結合フラグメント」とは、抗原結合活性を有するFabフラグメント、Fab’フラグメント、またはF(ab’)2フラグメント、ならびにヒトPD-L1に結合するFvまたはscFvフラグメントをいい、それは本開示に記載される抗体の一つ以上のCDR領域(配列番号1~配列番号12からなる群より選択される。)を含む。Fvフラグメントは、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、定常領域を含まず、すべての抗原結合部位を有する最小抗体断片である。一般に、Fv抗体はVHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、抗原結合に必要な構造を形成することができる。また、異なるリンカーを使用して二つの抗体の可変領域を連結して、単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と呼ばれるポリペプチド鎖を形成することができる。本開示における「PD-L1に結合する」という用語は、ヒトPD-L1と相互作用できることを意味する。本開示における「抗原結合部位」という用語は、本開示の抗体または抗原結合断片によって認識される抗原上の不連続な三次元部位を指す。
【0075】
抗体および抗原結合フラグメントを産生および精製するための方法は当該分野で周知であり、たとえば、Antibody Experimental Technology Guide of Cold Spring Harbor(非特許文献3)第5~8章および第15章に見出されうる。たとえば、マウスをヒトPD-L1またはその断片で免疫化することができ、得られた抗体を復元し、精製し、通常の方法によりアミノ酸配列決定に供することができる。抗原結合フラグメントはまた、従来の方法によって調製されうる。本開示の抗体または抗原結合フラグメントは、一つ以上のヒトフレームワーク領域(FR)を非ヒト由来CDR領域に導入するように遺伝子操作される。ヒトFR生殖系列配列はウェブサイト(http://imgt.cines.fr)を介してImMunoGeneTics(IMGT)から、またはThe Immunoglobulin FactsBook, 2001(ISBN 012441351)(非特許文献4)から得ることができる。
【0076】
本開示の操作された抗体または抗原結合フラグメントは、従来の方法によって調製および精製されうる。たとえば、重鎖および軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組換えることができる。次いで、組換え免疫グロブリン発現ベクターをCHO細胞に安定にトランスフェクトすることができる。当該分野で周知のより推奨される方法として、哺乳動物発現系は、代表的にはFc領域における高度に保存されたN末端において、抗体のグリコシル化を生じる。安定なクローンは、ヒトPD-L1に特異的に結合する抗体の発現によって得ることができる。陽性クローンは、バイオリアクターにおける抗体産生のために無血清培養培地中で増殖させることができる。抗体が分泌された培養培地は、従来の技術によって精製することができる。たとえば、培地は、調節された緩衝液で平衡化されたプロテインAまたはGセファロースFFカラムによって都合よく適用されうる。カラムを洗浄して非特異的結合成分を除去する。結合した抗体をpH勾配によって溶出し、抗体断片をSDS-PAGEによって検出し、次いでプールする。抗体は一般的な技術を用いて濾過し、濃縮することができる。可溶性凝集体および多量体は、サイズ排除またはイオン交換を含む一般的な技術によって効果的に除去することができる。得られた生成物は直ちに、たとえば-70℃で凍結保存することができ、または凍結乾燥することができる。
【0077】
「保存的修飾」または「保存的置換または置換」の各用語は、タンパク質の生物学的活性を変化させることなく変化を頻繁に行うことができるように、類似の特徴(たとえば、電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格コンホメーションおよび剛性など)を有する他のアミノ酸でのタンパク質中のアミノ酸の置換を指す。当業者は一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する(たとえば、Watson etal. (1987) Molecular Biology of the Gene, The Benjamin/Cummings Pub. Co., p. 224 (4th Ed.)(非特許文献5)を参照のこと)。さらに、構造的または機能的に類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。
【0078】
「同一性」の用語は、二つのポリヌクレオチド配列間または二つのポリペプチド間の配列類似性を指す。二つの比較された配列の両方における位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有される場合、たとえば二つのDNA分子の各々における位置がアデニンによって占有される場合、これらの分子は、その位置において同一である。二つの配列間の同一性パーセントは、二つの配列によって共有される一致または一貫した位置の数を、比較された位置の数×100で割った関数である。たとえば、配列の最適なアラインメントにおいて、二つの配列の10の位置に6つの一致または一貫性がある場合、二つの配列は60%の同一性を有する。一般に、比較は、最も高い同一性パーセントを得るために二つの配列が整列される場合に行われる。
【0079】
「投与」および「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官、または生物学的流体に適用する場合、外因性医薬、治療、診断薬、または組成物を動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官、または生物学的流体と接触させることを指す。「投与」および「治療」は、たとえば、治療、薬物動態、診断、研究、および実験方法を指すことができる。細胞の処理は、試薬を細胞と接触させること、ならびに試薬を流体と接触させることを包含し、ここで流体は細胞と接触している。「投与」および「処置」は、また、たとえば、細胞の、試薬、診断、結合化合物による、または別の細胞による、in vitroおよびex vivo処置を意味する。「処置」とは、ヒト、家畜、または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防的または予防的手段、研究および診断適用をいう。
【0080】
「処置」は、治療剤が既知の治療活性を有する一つ以上の疾患症状を有する患者に、治療剤(たとえば、本開示の結合化合物のいずれかを含む組成物)を、内用または外用で投与することを意味する。典型的には、薬剤が治療された患者または集団における一つ以上の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与され、そのような症状の退行を誘導するか、または任意の臨床的に測定可能な程度までそのような症状の進行を阻害する。任意の特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢、および体重、ならびに患者において所望の応答を引き出す薬物の能力などの因子に従って変動し得る。疾患症状が軽減されたかどうかは、その症状の重症度または進行状態を評価するために、医師または他の熟練した医療提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価され得る。本開示の実施形態(たとえば、治療方法または製品)は全ての患者における関心のある疾患症状を軽減するのに有効ではないかもしれないが、スチューデントt検定、カイ二乗検定、MannおよびWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定、およびWilcoxon検定などの当技術分野で公知の任意の統計学的検定によって決定される、統計学的に有意な数の患者における関心のある標的疾患症状を軽減すべきである。
【0081】
「有効量」は、医学的状態の症状または徴候を改善または予防するのに十分な量を包含する。有効量はまた、診断を可能にするかまたは容易にするのに十分な量を意味する。特定の患者または獣医学的被験体についての有効量は、処置される状態、患者の一般的健康、投与の経路および用量、ならびに副作用の重篤度のような因子に依存して変化し得る。有効量は、有意な副作用または毒性効果を回避する最大用量または投薬プロトコールであり得る。
【0082】
「Tm値」は、タンパク質の熱変性中点、すなわち、タンパク質の半分が展開され、タンパク質の空間構造が破壊される温度を指す。したがって、Tm値が高いほど、タンパク質の熱安定性は高くなる。
【0083】
本開示は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施形態を用いてさらに説明される。特定の条件を特定しない本開示の実施形態における実験方法は、通常、従来の条件に従って、または原料もしくは商品の製造業者が推奨する条件に従って実施される。特定の供給源を有さない試薬は、市販されている日常的な試薬である。
【0084】
実施形態では、Agilent-HPLC 1260高圧液体クロマトグラフ(Waters Xbridge(登録商標) BEH 200A SEC 3.5μm 7.8×300mmカラムおよびThermo ProPac (登録商標) WCX-10 BioLC(登録商標)、250×4mmカラム)を用いて、SE-HPLCおよびIEC-HPLCを測定した。Beckman PA800 plusキャピラリー電気泳動装置(SDS-Gel MWAnalysis Kit)を使用して、還元CE-SDSおよび非還元CE-SDSを測定した。GE MicroCalVP-Capillary DSC示差走査熱量計を使用して、タンパク質の熱変性温度中点(Tm)を測定した。Malvern Zetasizer Nano ZSナノ粒子サイズ電位差計を使用して、DLS(動的光散乱)平均粒子サイズを測定した。
【0085】
〔実施例1:PD-L1抗体の調製〕
(1)検出に用いるPD-L1抗原およびタンパク質の調製
UniProt Programmed Cell Death1リガンド1(PD-L1) アイソフォーム1(配列番号19)のヒトPD-L1全長遺伝子(Sino Biological Inc., HG10084-M)を、本開示のPD-L1のテンプレートとして使用した。本開示の抗原および検出に使用されるタンパク質をコードする遺伝子配列を得て、任意に抗体の重鎖Fcフラグメント(たとえば、ヒトIgG1)と組換え、pTT5ベクター(Biovector, Cat#: 102762)またはpTargeTベクター(promega, A1410)にクローニングし、293F細胞(Invitrogen, R79007)における一過性発現またはCHO-S細胞(Invitrogen, k9000-20)の安定な発現に供し、精製して、本開示の抗原および検出タンパク質を得た。ヒトPD-1遺伝子は、ORIGENE, Art. No. SC117011から購入した(NCBI Reference Sequence: NM_005018.1)。
【0086】
1.ヒトPD-L1全長アミノ酸配列
(配列番号19)
【0087】
注:二重下線の部分はシグナルペプチド(1-18)であり、一重下線の部分はPD-L1の細胞外ドメイン(19-238)であり、19-127はIg様V型ドメイン、133-225はIg様C2型ドメイン、点線の下線の部分は膜貫通ドメイン(239-259)、斜体部分は細胞質ドメイン(260-290)である。
【0088】
2.免疫原:HisおよびPADREタグを有するPD-L1:PD-L1(Extra Cellular Domain, abbr. ECD)-PADRE-His6
(配列番号20)
【0089】
注:一重下線の部分はPD-L1の細胞外ドメインであり、点線の下線の部分はPADREラベルであり、イタリック体の部分はHis6-タグラベルである。
【0090】
3.FLAGおよびHISタグを伴うPD-L1を得て、本開示の抗体の性能を試験するためにPD-L1(ECD)-Flag-His6を用いた。
(配列番号21)
【0091】
注:一重下線の部分はPD-L1の細胞外ドメインであり、点線の下線の部分はFLAG-タグラベルであり、イタリック体の部分はHis6-タグラベルである。
【0092】
4.PD-L1:PD-L1(ECD)-FcのFc融合タンパク質を、本開示の免疫学的抗原または検出試薬として使用した。
VKL-PD-L1(ECD)-Fc(ヒトIgG1)
(配列番号22)
【0093】
注:一重下線の部分はPD-L1の細胞外ドメインであり、イタリック体の部分はヒトIgG1 Fcの部分である。
【0094】
5.PD-L1:PD-L1(ECD)-FcのFc融合タンパク質を使用して、本開示の抗体の性能を試験した。
(配列番号23)
【0095】
注:一重下線の部分はPD-L1の細胞外ドメイン(ECD)であり、イタリック体部分はhFc(ヒトIgG1)の部分である。
【0096】
(2)PD-L1、PD-1組換えタンパク質、ハイブリドーマ抗体、および組換え抗体の精製
【0097】
1.「HisおよびPADREタグを有するPD-L1」:PD-L1(ECD)-PADRE-His6(配列番号20)組換えタンパク質の精製
細胞発現上清試料を高速で遠心分離して不純物を除去し、緩衝液をPBSで置換した後、イミダゾールを添加して最終濃度を5mMとした。ニッケルカラムを、5mMイミダゾールを含有するPBS溶液で平衡化し、2~5カラム容量で洗浄した。上清サンプルをNiカラム(GE, 17-5318-01)にロードした。カラムを、5mMイミダゾールを含有するPBSで、A280読取値がベースラインに低下するまで洗浄した。カラムをPBS+10mMイミダゾールで洗浄して、非特異的結合不純タンパク質を除去し、流出液を回収した。標的タンパク質を、300mMイミダゾールを含有するPBSで溶出し、溶出ピークを収集した。回収した溶出液を濃縮し、移動相としてPBSを用いたゲルクロマトグラフィーSuperdex 200(GE)によりさらに精製した。ポリマーピークを廃棄し、溶出ピークを収集した。得られたタンパク質は、電気泳動の同定、ペプチドマッピング(Agilent,6530 Q-TOF)およびLC-MS(Agilent, 6530 Q-TOF)により確認され、その後の使用に向けて小分けされた。HisおよびPADREタグを有するPD-L1:PD-L1(ECD)-PADRE-His6(配列番号2)を得て、本開示の抗体の免疫原として使用した。
【0098】
2.HisタグおよびFlagタグを有するPD-L1(ECD)-Flag-His6(配列番号21)組換えタンパク質の精製
試料を高速で遠心分離して不純物を除去し、所望の体積に濃縮した。上記のようにIMACカラムから溶出したタンパク質ピークを、0.5×PBS平衡フラグアフィニティーカラム(Sigma, A2220)に充填し、2~5カラム容量で洗浄した。不純物を除去した後、細胞発現上清サンプルをカラムに充填した。A280の読取値がベースラインに低下するまで、カラムを0.5×PBSで洗浄した。0.3M NaClを含有するPBSでカラムを洗浄し、不純なタンパク質を溶出し、回収した。標的タンパク質を0.1M酢酸(pH3.5~4.0)で溶出し、収集し、続いてpHを中性に調整した。回収した溶出液を濃縮し、移動相としてPBSを用いたゲルクロマトグラフィーSuperdex 200(GE)によりさらに精製した。ポリマーピークを廃棄し、溶出ピークを収集した。収集したサンプルを、電気泳動、ペプチドマッピングおよびLC-MSの同定によって確認し、その後の使用のために小分けした。HisタグおよびFlagタグを有するPD-L1、すなわちPD-L1(ECD)-Flag-His6(配列番号3)を、本開示の抗体の性能を試験するために得た。
【0099】
3.PD-L1とPD-1とのFc融合タンパク質の精製
細胞発現上清サンプルを高速で遠心分離して不純物を除去し、所望の体積に濃縮し、プロテインAカラム(GE, 17-5438-01)に充填した。A280読取値がベースラインに低下するまで、カラムをPBSで洗浄した。目的のタンパク質を、100mM酢酸ナトリウム(pH3.0)で溶出した。1MトリスHClによって中和したタンパク質を、PBS平衡ゲルクロマトグラフィーSuperdex 200(GE)によってさらに精製した。ポリマーピークを廃棄し、溶出ピークを収集し、その後の使用のために小分けした。この方法を用いて、PD-L1(ECD)-Fc(配列番号4)およびPD-1(ECD)-Fc(配列番号5)を精製した。PD-L1(ECD)-Fcは本開示の免疫化抗原または検出試薬として使用することができ、PD-1(ECD)-Fcは、本開示の抗体の性能を試験するために使用することができる。
【0100】
(3)抗ヒトPD-L1ハイブリドーマモノクローナル抗体の調製
【0101】
1.免疫化
抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体を、マウスを免疫することから産生した。ここで、SJL白色マウス、雌、6週齢((Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co., Ltd., animal production license number: SCXK (Beijing) 2012-0001)を使用した。給餌環境:SPFレベル。マウスを購入した後、マウスを実験室環境(12/12時間の明/暗サイクル調整、温度20~25℃、湿度40~60%)下で1週間飼育した。環境に適応したマウスを、二つのスキーム(スキームAおよびスキームB)、一群当たり6~10で免疫した。免疫化抗原は、HisおよびPADREタグ:PD-L1(ECD)-PADRE-His6(配列番号20)を有するPD-L1であった。
【0102】
スキームAにおいて、フロイントアジュバント(シグマロット番号:F5881/F5506)を乳化に使用した:完全フロイントアジュバント(CFA)を一次免疫に使用し、不完全フロイント不完全アジュバント(IFA)をレストブースト免疫に使用した。アジュバントに対する抗原の比は、1:1、100μg/マウス(一次免疫)、50μg/マウス(追加免疫)であった。乳化した抗原を、0日目に100μg/マウスで腹腔内注射し、一次免疫後2週間毎に1回、合計6~8週間注射した。
【0103】
スキームBでは、Titermax(シグマロット番号:T2684)およびAlum(Thremoロット番号: 77161)を交差免疫化に使用した。アジュバントに対する抗原の比率(Titermax)は1:1であり、アジュバントに対する抗原の比率(Alum)は3:1、マウスあたり10~20μg/μg(一次免疫)、およびマウスあたり5μg/μg(追加免疫)であった。乳化した抗原を0日目に20/10μg/マウスで腹腔内注射し、一次免疫後週1回注射した。TitermaxをAlumと交換可能に6~11週間使用した。免疫化の4週間後、抗原を、背部塊および腹部腫脹の状態に基づいて、背部または腹腔内注射によって投与した。
【0104】
2.細胞融合
プラトーに達する傾向がある高い血清抗体力価を有するマウスを脾細胞融合のために選択した。脾細胞融合の72時間前に、ショック免疫化を腹腔内注射によって行った。ハイブリドーマ細胞は、脾臓リンパ球を骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(登録商標)CRL-8287(登録商標))と、最適化されたPEG媒介融合手法を介して融合させることによって得た。ハイブリドーマ細胞をHAT完全培地(20%FBS、1×HATおよび1×OPIを含むRPMI‐1640培地)に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレート(1×10/150μL/ウェル)に分取し、続いて5%CO雰囲気下で37℃でインキュベートした。融合後5日目に、HAT完全培地を50μL/ウェル添加し、5%CO雰囲気下37℃でインキュベートした。融合後7日目から8日目まで、細胞増殖濃度に応じて、200μL/ウェルのHT完全培地(20%FBS、1×HT、1×OPIを含むRPMI-1640培地)で全培地を交換し、37℃、5%COでインキュベートした。
【0105】
3.ハイブリドーマ細胞スクリーニング
融合10日目~11日目に、細胞増殖密度に応じてPD-L1結合のELISA法を行った。ELISAで検出された陽性ウェルの細胞は、PD-L1/PD-1結合のELISAをブロックした。陽性ウェル中の培地を交換し、陽性細胞を細胞密度に従って24ウェルプレートに増殖させた。24ウェルプレートに移された細胞は、再試験に供され、次いで、細胞保存および最初のサブクローニングに供された。最初のサブクローニング後にスクリーニングした陽性のものを細胞保存に供し、続いて2回目のサブクローニングに供した。最初のサブクローニング後にスクリーニングした陽性のものを細胞保存に供し、続いてタンパク質発現に供した。PD-L1およびPD-1の結合をブロックしたハイブリドーマ細胞を、複数の融合によって得た。
【0106】
ハイブリドーマクローン細胞1および2を、ブロッキングアッセイおよび結合アッセイによってスクリーニングした。抗体は腹水法または無血清細胞培養法によってさらに調製され、抗体は試験実施形態で使用するための精製実施形態に従って精製された。
【0107】
マウス抗体の可変領域配列は配列決定によって得られ、ここで、ハイブリドーマクローンのCDR可変領域配列は以下の表1に示された:
【0108】
【表1】
【0109】
ここで、XはNまたはTから選択され、XはRまたはHから選択され、XはNまたはHから選択され、XはHまたはGから選択され、XはGまたはFから選択される。
【0110】
(4)抗ヒトPD-L1ハイブリドーマモノクローナル抗体のヒト化
重鎖および軽鎖可変領域において高い相同性を有する生殖系列遺伝子を、IMGTおよびMOEソフトウェアのヒト抗体重鎖可変領域生殖系列遺伝子データベースとアラインメントさせることによって、テンプレートとして選択した。マウス抗体1および2のCDRを対応するヒト化テンプレートに移植し、親和性成熟させて、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の可変領域配列を形成した。
【0111】
マウス抗体1のヒト化軽鎖テンプレートはIGKV4-1*01およびhjk4.1であり、ヒト化重鎖テンプレートはIGHV4-30-4*01およびhjh2であり、ヒト化可変領域配列は以下のとおりである。
【0112】
>1 hVH CDR移植片
(配列番号24)
【0113】
>1 hVL CDR移植片
(配列番号25)
【0114】
マウス抗体2のヒト化軽鎖テンプレートはIGKV7-3*01およびhjk2.1であり、ヒト化重鎖テンプレートはIGHV1-46*01およびhjh6.1であり、ヒト化可変領域の配列は以下の通りである。
【0115】
>2hVH.1
(配列番号26)
【0116】
>2-hVL.1
(配列番号27)
【0117】
注:順序はFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4であり、イタリック体の部分はFR配列であり、下線の部分はCDR配列である。
【0118】
(5)ヒト化クローン構築
各ヒト化抗体のVH/VK遺伝子断片を構築するようにプライマーを設計し、次いで発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)断片を有する)と相同的に組換えて、全長抗体発現ベクターVHCH1-FC-pHr/VK-CL-pHrを構築した。
【0119】
1.プライマー設計
オンラインソフトウェアDNAWorks(v3.2.2)(http://helixweb.nih.gov/dnaworks/)を使用して、組換えに必要な遺伝子フラグメントを含むVH/VKを合成するための複数のプライマー:5’-30bpシグナルペプチド+VH/VK+30bpCH1/CL-3’を設計した。プライマー設計原理:標的遺伝子2と標的遺伝子1との間に異なるアミノ酸が存在する場合、図1に示すように、突然変異部位を含む別のプライマーを設計した。
【0120】
2.フラグメントスプライシング
TaKaRaプライマーSTAR GXL DNAポリメラーゼの操作説明書に従って、組換えに必要な遺伝子フラグメントを含むVH/VKを、上記で設計された複数のプライマーを使用する2段階PCR増幅によって得た。
【0121】
3.発現ベクターpHrの構築および酵素消化(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを用いる)
発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを有する)を、認識配列が制限部位とは異なる特別な設計を有するいくつかの特別な制限エンドヌクレアーゼ(たとえば、BsmBI)を使用することによって構築した。構築の概略図を図2に示し、ベクターをBsmBIで消化し、ゲルを抽出して使用した。
【0122】
4.発現ベクターVH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrの組換え構築
組換えに必要なVH/VKを含む遺伝子断片および回収した発現ベクターpHr(シグナルペプチドおよび定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)断片を含む)を、3:1のモル比でDH5Hコンピテント細胞に添加し、0℃の氷浴中で30分間維持し、42℃で90秒間熱ショックに供し、続いて5倍容量のLB培地を添加し、37℃で45分間インキュベートし、LB-Ampプレート上に広げ、37℃で一晩インキュベートした。単一クローンを選択し、標的クローンを得るために配列決定のために送った。
【0123】
(6)抗PD-L1ヒト化抗体の親和性成熟
【0124】
1.ヒト化PD-L1抗体1および2のファージミドベクターの構築
ヒト化PD-L1抗体1および2は野生型配列(すなわち、親和性成熟のためにスクリーニングされた変異配列に対応する元の配列または開始配列)として、それぞれscFvモード(VH-(GGGS)-VL)でファージミドベクターに構築された。VH、(GGGS)リンカーおよびVLをオーバーラップPCRにより集合させ、NcoIおよびNotI制限認識部位を介してファージミドベクターに連結した。
【0125】
2.ファージディスプレイライブラリーの構築
構築した野生型scFvをテンプレートとして使用し、コドンベースのプライマーを使用した。プライマー合成プロセスにおいて、突然変異領域中の各コドンは50%の野生型コドンおよび50%のNNKを有し(リバースプライマーはMNNであった。)、これは突然変異体ライブラリーを構築するために全てのCDR領域に突然変異を導入した。PCR断片をNcoIおよびNotIで消化し、ファージミドベクターに連結し、最後に大腸菌TG1に電気的に形質転換した。独立したライブラリーを、各コドンベースのプライマーによって構築し、ここで、抗体1を7つのライブラリーに分割し、そして抗体2を8つのライブラリーに分割した。
【0126】
3.ライブラリパニング
ライブラリーをレスキューし、パニングのためのファージ粒子のためにパッケージングした後、ビオチン化ヒトPD-L1(ECD)抗原およびストレプトアビジン磁気ビーズを液相パニングのために使用し、スクリーニングの各ラウンド後の抗原濃度を、前のラウンドと比較して減少させた。3ラウンドのパニングの後、250個のクローンを抗体1および抗体2から選択し、それぞれ結合活性を検出するためにファージELISAに供し、続いて陽性クローンを配列決定した。
【0127】
4.親和性の表面プラズモン共鳴(SPR)検出
クローンを配列決定した後、冗長配列を除去し、非冗長配列を哺乳動物細胞発現のために全長IG(γ1、κ)に変換した。アフィニティー精製後の全長IGを、BIAcoreTM X-100(GE Life Sciences)を用いてアフィニティー検出に供した。
【0128】
親和性成熟後のヒト化抗体2の可変領域配列を以下に示す。
【0129】
重鎖可変領域
(配列番号13)
【0130】
ここで、CDR2のXはGであり、XはFである。
【0131】
軽鎖可変領域
(配列番号14)
【0132】
注:配列中のイタリック体部分はFR配列であり;下線部分はCDR配列であり;そして二重下線部分は親和性成熟スクリーニング後に得られた部位である。
【0133】
親和性成熟後のヒト化抗体1の可変領域配列は以下の通りである。
【0134】
重鎖可変領域
(配列番号28)
【0135】
ここで、CDR1のXはTである。
【0136】
軽鎖可変領域
(配列番号29)
【0137】
ここで、CDR1のXはHであり、X3はHである。
【0138】
親和性成熟によって得られたクローンをIgG4型に変換し、コアヒンジ領域がS228P変異を含むIgG4を選択して、ADCCおよびCDCを含まない抗体を得て、抗体2から得られた抗体をHRP00052と命名した。
【0139】
以下の遺伝子配列(配列番号16および18)の最後の三つのヌクレオチド「TGA」は終止コドンであり、いかなるアミノ酸もコードしない。
【0140】
HRP00052抗体の重鎖配列
(配列番号15)
【0141】
HRP00052抗体の遺伝子配列をコードする重鎖配列
(配列番号16)
【0142】
HRP00052抗体の軽鎖配列
(配列番号17)
【0143】
HRP00052抗体の遺伝子配列をコードする軽鎖配列
(配列番号18)
【0144】
注:下線を付した部分は抗体重鎖もしくは軽鎖の可変領域配列、またはそれをコードするヌクレオチド配列であり;非線部分は抗体定常領域配列およびその対応するコードヌクレオチド配列である。
【0145】
PD-L1抗体HRP00052を発現するための発現プラスミドを構築した。重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列、およびその対応するプロモーター、ならびにそのポリアデニル化シグナル配列を、DNA配列分析によって確認した。発現ベクターをCHO細胞系にトランスフェクトした。抗体を発現するクローンを、増殖および産生安定性に基づいて選択し、続いてマスターシードバンクを調製し、これを使用して抗体を調製し、その後マスターセルバンクを作製した。
【0146】
マスターセルバンクからの細胞を振とうフラスコ、培養バッグおよびシードバイオリアクター中で増殖させ、得られたシード細胞を用いてバイオリアクターにより抗体産物を産生した。得られた抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィー、ならびにウイルスを除去するための低pHウイルス不活化および濾過工程によるさらなる精製に供した。具体的な精製工程は以下の通りであった。細胞発現上清サンプルを、PBS緩衝液平衡化プロテインAカラム(Merck, 175118824)に充填した。カラムを、A280読取値がベースラインまで低下するまでPBSで洗浄し、次いで、PB緩衝液で洗浄して、不純なタンパク質を除去した。標的タンパク質を50mMクエン酸ナトリウム(pH3.5)で溶出し、溶出したピークを収集した。精製物を1Mトリスで中和し、PB緩衝液で平衡化した陰イオンクロマトグラフィーカラム(GE, 17-5316-10)にロードし、フロースルーピークを収集し、1Mクエン酸でpH5.0に調整した。陰イオンクロマトグラフィー後、タンパク質を、クエン酸緩衝液(pH5.0)で平衡化した陽イオンクロマトグラフィーカラム(Merck, 1.168882)でさらに精製した。標的タンパク質を、0.18M塩化ナトリウムを含有するクエン酸緩衝液(pH5.0)で溶出し、溶出したピークを収集し、その後の使用のために等分した。
【0147】
〔実施例2〕
実験は、PD-L1調製物の緩衝系、緩衝液濃度、pH値、糖類タイプおよび糖類濃度(1mg/mL)に基づいて設計した。試料のTm値をDSC技術によって測定し、調製物の製剤を最初にスクリーニングした。
【0148】
緩衝液系、緩衝液濃度、pH値、糖類の種類および糖類濃度を因子として用い、Tm値を応答値として用いて試験を設計し、設計表を作成した。Tm値は、設計表の実験群に従って決定した。
【0149】
表2:Tm値応答を有するDSC結果
【表2】
【0150】
Tm値を応答値として使用し、モデルを実験結果に従って適合させた。R値は0.99987、調整R値は0.9979113、分散解析ではP=0.0348<0.05であり、モデルが効果的であり、結果が信頼できることが示された。
【0151】
注:糖濃度の単位はg/100mLである。
【0152】
Tmの値を最大にする原理に従い、Tm因子の主要な効果図(図3)によって定式化を予備的に選択した。緩衝系については(酢酸ナトリウム)がより良好であり、続いて(コハク酸ナトリウム)であり、緩衝液濃度が20~30mMである場合、Tm値はより高く、pH5~5.6はTm値に対して有意な効果を有さず、最良の糖類濃度は6%である。
【0153】
〔実施例3〕
抗PD-L1抗体(HRP00052)を、10mMコハク酸(ナトリウム)、酢酸(ナトリウム)、60mg/mLスクロース、および0.2mg/mLポリソルベート20、をそれぞれpH5.0~5.5で含有する調製物に製剤化し、タンパク質濃度は50mg/mLであった。各調製物を濾過し、ブロモブチルゴム栓で密封した中性ホウケイ酸ガラス注射バイアルに充填し、2~8℃で長期安定性を観察した。サンプルの安定性は、表3に示される種々の特徴によって例示された。
【0154】
試料の色、外観および透明度を、黒色バックグラウンドを有する室温での白色蛍光下での試料の目視検査によって決定した。標本の純度はさらに高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)によって評価され、モノマーの割合だけでなく高分子量物質(おそらく集合体)の割合と後期溶出ピーク(おそらく分解生成物)を決定した。純度は高速イオン交換クロマトグラフィー(HP-IEX)を用いて酸性または塩基性変異体の存在を明らかにすることによって評価し、結果は、観察された全物質のパーセンテージとして表した。試料をCE-SDS技術によって分析し、ここでタンパク質を還元および非還元条件下でドデシル硫酸ナトリウム(SDS)で変性させ、キャピラリー電気泳動(CE)を用いて分離した。タンパク質を、それらの見かけの分子量に基づいて分離した。非還元条件下で、主要なIgGピークを除く全ての物質を不純物として分類した。還元条件下で、IgGを重鎖と軽鎖に分割し、他の全ての物質を不純物として分類した。
【0155】
その結果、コハク酸緩衝液系における抗PD‐L1抗体の安定性は酢酸緩衝液系よりも有意に良好であり、抗PD‐L1抗体はpH5.0~5.5で非常に安定であった。
【0156】
表3:PD-L1抗体の長期安定性に及ぼすpHおよび緩衝系の影響(2~8℃)
【表3】
【0157】
〔実施例4〕
抗PD-L1抗体を、それぞれ10mMおよび20mMコハク酸(ナトリウム)(pH5.2)中に60mg/mLスクロースおよび0.2mg/mLポリソルベート20を含有する調製物に製剤化し、タンパク質濃度は50mg/mLであった。各調製物を濾過し、ブロモブチルゴム栓で密封した中性ホウケイ酸ガラス注入バイアルに充填し、続いて40℃で加速し、2~8℃で長期安定性を観察した。結果は、抗PD-L1抗体が10~20mMコハク酸緩衝系中で非常に安定であることを示した。
【0158】
表4:異なる緩衝系濃度を有する調製物の安定性(40℃)
【表4】
【0159】
表5:異なる緩衝系濃度を有する調製物の安定性(40℃)
【表5】
【0160】
〔実施例5〕
50mg/mLのPD-LI抗体(HRP00052)、pH5.2の20mM酢酸(ナトリウム)および60mg/mLのスクロース、ならびに異なるタイプおよび濃度の界面活性剤を含有する抗PD-L1抗体調製物を調製した。各調製物を濾過し、ブロモブチルゴム栓で密封した中性ホウケイ酸ガラス注入バイアルに充填し、25℃の恒温振とう器上に置き、200rpmで振とうした。
【0161】
DLS(動的光散乱)を用いて平均拡散係数を測定し、これを用いて溶液中のナノサイズ粒子の粒径および粒径分布を特徴づけた。PDI(粒子分散指数)分布係数は、粒子サイズの均一性を反映する。PDI値が低いほど、粒径分布は狭く、粒径はより均一である。
【0162】
安定性は、0.1~0.3mg/mLのポリソルベート20またはポリソルベート80が、抗PD-L1抗体の凝集および凝集した大きな粒子の形成を効果的に妨げたことを示した。
【0163】
表6:ポリソルベートの種類および濃度の異なる振とう試験の結果
【表6-1】
【表6-2】
【0164】
〔実施例6〕
50mg/mLのPD-LI抗体(HRP00052)、20mMコハク酸(ナトリウム)(pH5.2)および60mg/mLスクロース、ならびに異なるタイプおよび濃度の界面活性剤を含有する抗PD-L1抗体調製物を調製した。各調製物を濾過し、ブロモブチルゴム栓で密封した中性ホウケイ酸ガラス注入バイアルに充填し、安定性試験のために2~8℃に置いた。その結果、ポリソルベート80はポリソルベート20よりも有意に良好であり、各濃度間に有意差はなかった。
【0165】
表7:ポリソルベートの種類と濃度が異なる製剤の安定性の結果(2~8℃)
【表7-1】
【表7-2】
図1
図2
図3
【配列表】
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