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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】網膜神経節細胞およびその前駆体
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0797 20100101AFI20230417BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20230417BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20230417BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230417BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20230417BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALN20230417BHJP
【FI】
C12N5/0797
C12N5/0793
A61P27/02
A61P27/06
A61P9/10
A61K35/30
C12N5/0735
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020124010
(22)【出願日】2020-07-20
(62)【分割の表示】P 2017512937の分割
【原出願日】2015-09-05
(65)【公開番号】P2020185004
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】62/046,165
(32)【優先日】2014-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509236520
【氏名又は名称】アステラス インスティテュート フォー リジェネレイティブ メディシン
(74)【復代理人】
【識別番号】100209314
【弁理士】
【氏名又は名称】千野 櫻子
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シー-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ランツァ,ロバート,ピー.
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/032263(WO,A1)
【文献】STEM CELLS,2011年,29(8),1206-1218
【文献】Stem Cells Transl Med.,2013年,2(1),16-24
【文献】Translational Vision Science & Technology,1-13,2014年07月,vol.3,no.4,article2,1-13
【文献】Invest Ophthalmol VisSci.,2010年,51(3),1747-1754
【文献】Invest Ophthalmol VisSci . ,2005年,46(4),1497-1503
【文献】Molecular Vision ,2010年,16,2867-2872
【文献】Stem cells translational Medicine,2014年02月03日,3,424-432
【文献】Molecular Vision,2012年,18,2922-2930
【文献】Developmental dynamics,2014年05月29日,243,1352-1361
【文献】Invest Ophthalmol VisSci.,2010年,51(11),5970-5978
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-5/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト網膜神経節(RG)前駆体細胞を生産する方法であって、
(i)BMPシグナル伝達阻害剤の存在下でヒト多能性幹細胞を培養すること、およびPax6(+)およびRx1(+)であるヒト眼領域前駆体細胞を生産すること、ここで、ヒト多能性幹細胞は、フィーダーフリー条件下で培養され、ここで、胚様体は生産されない;および
(ii)BMPシグナル伝達阻害剤の非存在下で細胞培地中でヒト眼領域前駆体細胞を培養すること、およびMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)および/またはニューロフィラメント(+)であるヒトRG前駆体細胞を生産すること
を含み、
ここで、(ii)における細胞培地が、フォルスコリン、BDNF、および/またはCNTFを含む、
前記方法。
【請求項2】
(i)に存在するBMPシグナル伝達阻害剤が、Nogginポリペプチド、dorsomophin、LDN-193189、SB431542またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(i)に存在するBMPシグナル伝達阻害剤が、10~500ng/mlの濃度においてNogginポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒト眼領域前駆体細胞が、低接着または非接着条件下で、細胞クラスターとして、(ii)において培養され、細胞スフィアを形成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
接着条件下で、細胞スフィアを培養することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト眼領域前駆体細胞が、Oct4(-)およびNanog(-)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ヒト眼領域前駆体細胞がSix3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、Tbx3(+)、Sox2(+)、Otx2(+)、またはネスチン(+)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒト多能性幹細胞が、ヒト胚性幹細胞である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヒト多能性幹細胞が、ヒト人工多能性幹細胞である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(i)少なくとも75%、85%または95%のRG前駆体細胞が、Brn3aおよびニューロフィラメントを発現する;または
(ii)少なくとも75%、85%、95%または99%のRG前駆体細胞が、Math5およびBrn3aを発現する;
請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法に従って生産される複数のヒト細胞を含む、組成物であって、ここで、少なくとも50%の細胞が、免疫細胞化学的な判定において、(i)Brn3aおよびニューロフィラメント、または(ii)Math5およびBrn3aを発現し、ここで、複数のヒト細胞は、ニューロスフィアとして形成される、前記組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は「RETINAL GANGLION CELLS AND PROGENITORS THEREOF」と題する2014年9月5日出願の米国仮出願第62/046,165号の利益を主張し、その内容全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
網膜疾患は、分裂終了ニューロン細胞の喪失による失明を多くの場合にもたらす。網膜疾患には、緑内障、網膜色素変性症、錐体杆体ジストロフィー、網膜変性、糖尿病網膜症、黄斑変性、レーバー先天性黒内障、およびスターガルト病がある。特に、緑内障は網膜神経節(RG)細胞の損傷または変性を包含する。
【0003】
網膜神経節(RG)細胞の潜在的な補充ソースは多能性幹細胞などの幹細胞である。初期の研究は、マウス胚性幹細胞からの網膜前駆体細胞のインビトロ作製(Ikeda et al. PNAS 102(32): 11331-11336, 2005)、生後第1日のマウス網膜からの網膜前駆体細胞の作製(Klassen et al. Invest. Ophthal. Vis. Sci. 45(11): 4167-4175, 2004)、網膜変性のRCSラットモデルにおける骨髄間葉系幹細胞のインプラント(Inoue et al. Exp. Eye Res. 8(2): 234-241, 2007)、網膜前駆体細胞を生ずるためのヒト線維芽細胞からの人工多能性幹細胞(iPS)の分化(Lamba et al. PLoS ONE 5(1): e8763.doi: 10.1371/journal.pone.0008763)、ならびにH1ヒト胚性幹細胞株からのアマクリン細胞、光受容体、双極細胞、および水平細胞を包含する網膜前駆体細胞の産生(Lamba et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 10(34): 12769-12774, 2006)を報告している。
【0004】
これらの最近の研究において、未成熟および成熟網膜細胞は異なる細胞型の混合集団として作製されており、網膜神経節細胞と思われるものは集団の小さいパーセンテージに相当した。その上に、ニューロフィラメント、Tuj1、およびHuC/Dを包含する特定の細胞型を同定するために用いられるマーカーは、網膜神経節(RG)細胞および/またはそれらの前駆体に特異的ではない。これらの研究の1つはBrn3発現に基づいて細胞を同定し、わずかな細胞しかこのマーカーを発現しないということを見いだした。従って、これらのアプローチのいずれも、網膜神経節(RG)細胞またはRG前駆体細胞の均質またはほぼ均質な集団を生じなかった。これらのアプローチのいずれも、例えばスクリーニングアッセイなどのインビトロ方法にまたはインビボ方法に有用であるために十分な数のRG細胞またはRG前駆体細胞を生じなかった。
【0005】
RG細胞が単離され得るドナー由来組織の供給(例えば死体、胎児組織、および生体動物)は限られている。初代RG細胞を培養しようという試みはせいぜい約2週間もつ培養物をもたらし、その後には成熟RG細胞は生存不能であった。初代RG前駆体細胞の単離は報告されていない。
【発明の概要】
【0006】
多能性幹細胞はインビトロでいつまでも増殖培養および拡大培養され得、ヒト治療のための非ドナー由来細胞の潜在的に無尽蔵のソースを提供する。多能性幹細胞から成熟RG細胞(成熟RG細胞の均質またはほぼ均質な集団を包含する)ならびに/または初期および/もしくは後期RG前駆体細胞(RG前駆体細胞の均質またはほぼ均質な集団を包含する)への分化は、網膜疾患のインプラントおよび処置またはスクリーニングアッセイなどのインビトロ使用のための非ドナー由来細胞の潤沢な供給を提供し得る。成熟RG細胞の高度に精製された集団は以前には得られておらず、十分な数または純度のRG前駆体細胞の集団もまた以前には得られていない。本発明は、従来技術の方法および組成物の少なくともこれらの限界を克服する。
【0007】
本発明は、特に、RG前駆体細胞および/または成熟RG細胞を含む組成物または調製物、ならびにかかる細胞およびかかる調製物を調製するための方法を提供する。驚くべきことに、本発明のRG前駆体細胞および成熟RG細胞は、初代神経節細胞と比較してより良好な同化および遊走特性ならびにより長い生存時間をインビボで見せることが見いだされた。
【0008】
ある種の態様において、本発明は、複数のRG前駆体細胞と、RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地とを含む網膜神経節(RG)前駆体細胞の実質的に純粋な調製物を提供する。かかる培地は、グルコース、インスリン、フォルスコリンなどのcAMPレベルを増大させる因子、ならびに毛様体神経栄養因子(CNTF)および脳由来神経栄養因子(BDNF)などの神経栄養因子を含み得る。
【0009】
ある種の態様において、本発明は、少なくとも50%のRG前駆体細胞を含有する複数の細胞と、RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地とを含むRG前駆体細胞の調製物を提供する。
【0010】
ある種の態様において、本発明はRG前駆体細胞の調製物を提供し、多能性幹細胞、眼領域前駆体細胞、光受容体前駆体細胞、成熟光受容体、および/またはアマクリン細胞などのRG前駆体細胞でない細胞を実質的に不含の複数のRG前駆体細胞を含む。いくつかの態様において、調製物は、10%未満のRG前駆体細胞でない細胞、さらにはより好ましくは5%、2%、1%、0.1%未満、またはさらには0.01%未満のそれらの細胞を包含する。いくつかの態様において、調製物はRG細胞(すなわち成熟RG細胞)を実質的に不含であり得る。それらの調製物のいずれかは、RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地をさらに含む。
【0011】
いくつかの態様において、調製物は成熟RG細胞とRG前駆体との混合物を含み得るが、多能性幹細胞、眼領域前駆体細胞、光受容体前駆体細胞、成熟光受容体、および/またはアマクリン細胞などの他の細胞型を欠き得る。
【0012】
ある種の態様において、本発明は、哺乳動物患者への使用に好適であるRG前駆体細胞の医薬調製物を提供し、複数のRG前駆体細胞と、哺乳動物患者への移植のためにRG前駆体細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体とを含む。
【0013】
ある種の態様において、本発明は、少なくとも10個のRG前駆体細胞と、RG前駆体細胞と適合性の、解凍後のかかる細胞の生存性を維持できる極低温保存剤系とを含む極低温細胞調製物を提供する。
【0014】
RG前駆体細胞を含む調製物のいくつかの態様において、調製物中の細胞の少なくとも70%は免疫細胞化学的にMath5(+)であり、さらにはより好ましくは調製物中の細胞の少なくとも80%、90%、95%、または98%は免疫細胞化学的にMath5(+)である。いくつかの態様において、調製物中の細胞はBrn3a(+)でもまたある。いくつかの態様において、調製物中の細胞はBrn3b(+)でもまたある。いくつかの態様においては、調製物中の細胞はIsl1(+)でもまたある。いくつかの態様においては、調製物中の細胞はBrn3a(+)およびBrn3b(+)でもまたある。いくつかの態様においては、調製物中の細胞はBrn3a(+)、Brn3b(+)、およびIsl1(+)でもまたある。
【0015】
RG前駆体細胞を含むいくつかの調製物においては、調製物中の細胞の少なくとも70%が免疫細胞化学的にMath5(+)およびBrn3a(+)(すなわちMath5およびBrn3aについて陽性)であり、さらにはより好ましくは調製物中の細胞の少なくとも80%、90%、95%、または98%は免疫細胞化学的にMath5(+)およびBrn3a(+)である。いくつかの態様において、調製物中の細胞はBrn3b(+)でもまたある。いくつかの態様においては、調製物中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%が免疫細胞化学的にMath5(+)、Brn3a(+)、およびBrn3b(+)である。いくつかの態様において、調製物中の細胞はIsl1(+)でもまたある。いくつかの態様において、調製物中の細胞の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%は免疫細胞化学的にMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、およびIsl1(+)である。いくつかの態様においては、細胞の30%、20%、10%、5%、1%未満がThy1を発現するか、または細胞のいずれも発現しない。RG前駆体細胞はTuj1をもまた発現し得る。
【0016】
RG前駆体細胞を含むいくつかの調製物においては、調製物中の細胞の少なくとも50%、60%、または70%が免疫細胞化学的にBrn3a(+)および/またはニューロフィラメント(+)であり、さらにはより好ましくは調製物中の細胞の少なくとも80%、90%、95%、または98%が免疫細胞化学的にBrn3a(+)および/またはニューロフィラメント(+)である。いくつかの態様において、調製物中の細胞の少なくとも50%、60%、または70%は免疫細胞化学的にBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)であり、さらにはより好ましくは調製物中の細胞の少なくとも80%、90%、95%、または98%が免疫細胞化学的にBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)である。いくつかの態様において、調製物中の細胞はThy1(+)でもまたある。いくつかの態様において、調製物中の細胞の少なくとも50%、60%、または70%は免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびThy1(+)である。RG前駆体細胞はTuj1をもまた発現し得る。
【0017】
RG前駆体細胞は増殖性である。いくつかの態様においては、RG前駆体細胞の調製物中の細胞の少なくとも70%、80%、90%、95%、または98%が増殖性である。
【0018】
ある種の態様において、RG前駆体細胞はHLA遺伝子型的に同一であり、好ましくはゲノム的に同一である。
【0019】
ある種の態様において、RG前駆体細胞は、7kb、7.5kb、8kb、8.5kb、9kb、9.5kb、10kb、10.5kb、11kb、11.5kb、またはさらには12kbよりも長い平均末端制限断片長(TRF)を有する。
【0020】
ある種の態様において、RG前駆体細胞はヒト患者への投与に好適である。
【0021】
ある種の態様において、RG前駆体細胞は獣医学的な非ヒト患者への投与に好適である。
【0022】
上の調製物の好ましい態様において、RG前駆体細胞は哺乳動物多能性幹細胞、特にヒト多能性幹細胞に由来し、好ましくは胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群から選択される。
【0023】
ある種の態様において、RG前駆体細胞は普通の多能性幹細胞ソースから分化する。
【0024】
ある種の態様において、RG前駆体細胞は、高眼内圧緑内障マウスもしくはラットモデル系のまたは視神経(ON)挫滅損傷マウスモデル系の硝子体または網膜下腔に移植され得、神経節細胞層まで遊走し、モデル系のいずれかにおいてパターンERG(網膜電図法)の応答および視力を改善するであろう。ある種の態様において、RG細胞およびRG前駆体細胞は視神経を再生し得る。
【0025】
ある種の態様において、RG前駆体細胞およびRG細胞は1つ以上のニューロン保護因子を分泌し、それによってニューロン保護を提供する。かかるニューロン保護は視神経損傷または緑内障の動物モデルを用いて測定され得る。
【0026】
ある種の態様において、RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地は、培養培地、極低温保存剤、およびヒト患者の注射に好適な生体適合性の注射媒体からなる群から選択される。
【0027】
ある種の態様において、RG前駆体細胞調製物は発熱性物質およびマイトジェン(mycogen)不含である。
【0028】
本発明の別の側面は、哺乳動物患者への使用に好適であるRG細胞の医薬調製物を提供し、多能性幹細胞由来RG細胞を含み、調製物中の細胞はニューロフィラメントおよび/またはBrn3aについて免疫細胞化学的に陽性であり、それゆえにいくつかの場合にはニューロフィラメント(+)Brn3a(+)であり得る。RG細胞はTuj1(+)であり得、それらは任意にThy1(+)でもまたあり得る。医薬調製物は、哺乳動物患者への移植のために、RG細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体をさらに含み得る。
【0029】
本発明の別の側面は、哺乳動物患者への使用に好適であるRG細胞の医薬調製物を提供し、多能性幹細胞由来RG細胞(調製物中の細胞は免疫細胞化学的にニューロフィラメント(+)、Brn3a(+)、およびTuj1(+)、ならびに任意にThy1(+)である)と、哺乳動物患者への移植のために、RG細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体とを含む。
【0030】
本発明の別の側面は、哺乳動物患者への使用に好適であるRG細胞の医薬調製物を提供し、多能性幹細胞由来RG細胞(細胞の70%、80%、90%、95%、またはさらには98%超は免疫細胞化学的にニューロフィラメント(+)およびBrn3a(+)である)と、哺乳動物患者への移植のために、RG細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体とを含む。いくつかの場合には、調製物中の細胞の50%、60%、または70%超が免疫細胞化学的にThy1(+)である。いくつかの態様においては、細胞の少なくとも70%、80%、90%、95%、またはさらには98%が免疫細胞化学的にTuj1(+)である。
【0031】
いくつかの態様において、RG細胞の医薬調製物中の細胞は分裂不活性(または分裂終了)であり、それらが非増殖性であるということを意味している。これは、当分野において公知の増殖アッセイ、例えばトリチウム化チミジン取り込みアッセイを用いて判定され得る。いくつかの態様においては、調製物中の細胞の50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%超が分裂不活性である。
【0032】
いくつかの態様において、RG細胞の医薬調製物中の細胞はRG前駆体クラスよりも多数の樹状突起および/または複雑な樹状突起を含む。いくつかの態様においては、調製物中の細胞の50%、60%、70%、80%、90%、95%、または98%超が(前駆体クラスと比較して)より多数の樹状突起および/またはより複雑な樹状突起を含む。それゆえに、成熟RG細胞は、RG前駆体細胞と比較して、増大した数の一次樹状突起ならびに/または二次、三次、およびより高いレベルの増大した樹状突起分岐、ならびに/または増大した樹状突起合計長を見せる。例えば、RG細胞はRG前駆体細胞よりも細胞あたりの基準で2~5倍多い樹状突起を有し得る(例えば、RG細胞は4~5つの樹状突起を細胞あたり有し得、RG前駆体細胞は1~2つの樹状突起を細胞あたり有し得る)。
【0033】
本発明のなお別の側面は、網膜色素上皮細胞、光受容体前駆体細胞、および/または光受容体細胞と一緒にRG前駆体細胞および/またはRG細胞と、哺乳動物患者への移植のために、RG前駆体細胞および/またはRG細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体とを含む医薬調製物を提供する。調製物は双極細胞および/またはアマクリン細胞をもまた包含し得る。細胞の調製物は、細胞懸濁液として(一緒に混ざって、または細胞の別々の用量が併せて送達されるキットの形態でいずれかで)、例えばシートまたは単層もしくは多層細胞グラフトを包含する3次元構造として(任意に、生体適合性のマトリックスもしくは固体支持体上に配置されて)提供され得る。多層細胞グラフトのケースでは、RPE細胞は、単層、好ましくは極性のある単層として提供され得る。それゆえに、いくつかの態様において、RG細胞および/またはRG前駆体細胞は、RPE細胞、光受容体細胞、または光受容体前駆体細胞を包含する他の神経網膜感覚細胞と一緒に用いられる。
【0034】
本発明のさらに別の側面は、患者の網膜神経節細胞の喪失または機能不全によって引き起こされる疾患および障害を処置するための方法を提供し、本明細書に記載されるような医薬調製物、例えばRG前駆体細胞もしくはRG細胞または両方の調製物を投与することを含む。調製物は、例えば患者の眼の網膜下腔、患者の硝子体などに局所注射されるか、または全身的にもしくは細胞が存続し得る他の体腔部に送達され得る。
【0035】
網膜神経節細胞の喪失によって引き起こされる疾患または障害は、緑内障、視神経損傷、虚血性視神経症、視神経炎、糖尿病網膜症、遺伝性神経節変性、および遺伝性網膜ジストロフィーを包含する。
【0036】
それゆえに、対象の網膜神経節細胞の喪失または機能不全によって引き起こされる疾患または障害の処置のための医薬の製造への、本明細書に記載されるおよび/または本明細書に記載される方法を用いて作られるRG前駆体細胞集団のいずれかの使用もまた提供される。対象の網膜神経節細胞の喪失または機能不全によって引き起こされる疾患または障害を処置する方法への使用のための、本明細書に記載されるおよび/または本明細書に記載される方法を用いて作られるRG前駆体細胞集団のいずれかもまた提供される。
【0037】
同様に、対象の網膜神経節細胞の喪失または機能不全によって引き起こされる疾患または障害の処置のための医薬の製造への、本明細書に記載されるおよび/または本明細書に記載される方法を用いて作られるRG細胞集団のいずれかの使用もまた提供される。対象の網膜神経節細胞の喪失または機能不全によって引き起こされる疾患または障害を処置する方法への使用のための、本明細書に記載されるおよび/または本明細書に記載される方法を用いて作られるRG細胞集団のいずれかもまた提供される。
【0038】
ある種の態様において、本発明はRG細胞を生ずる方法を提供し、
(a)眼領域前駆体細胞を、好ましくは細胞クラスターとして、好ましくは低接着または非接着条件下で、神経節細胞培地によって、細胞クラスターがRG前駆体細胞を含む個体の細胞スフィアを形成するために十分な時間培養し、
(b)培養物中の細胞の大多数がBrn3a(+)および/またはニューロフィラメント(+)(好ましくはBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+))およびTuj1(+)および任意にまたThy1(+)としてキャラクタリゼーションされるRG細胞になるまで、細胞スフィアを網膜神経節細胞分化培地によって接着条件下で、好ましくは(バイオマテリアルスキャホールドなどの)マトリックス上で培養する、
ステップを含む。
【0039】
ある種の態様において、本発明は、眼領域前駆体細胞を、好ましくは細胞クラスターとして、好ましくは低接着または非接着条件下で、神経節細胞培地によって、細胞クラスターがRG前駆体細胞を形成するために十分な時間培養することを含む方法を提供する。RG前駆体細胞は、任意に、培養物中の細胞の大多数がBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびTuj1(+)、および任意にThy1(+)としてキャラクタリゼーションされるRG細胞になるまで、網膜神経節細胞分化培地によって接着条件下で、好ましくは(バイオマテリアルスキャホールドなどの)マトリックス上で培養され得る。
【0040】
いくつかの態様において、眼領域前駆体細胞はPax6(+)およびRx1(+)ならびにOct4(-)およびNanog(-)としてキャラクタリゼーション、例えば免疫細胞化学的にキャラクタリゼーションされ、さらにはより好ましくは、Six3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、Tbx3(+)、Sox2(+)、Otx2(+)、およびネスチン(+)としてもまたキャラクタリゼーションされ、例えば、免疫染色および/もしくはフローサイトメトリーまたは細胞のマーカー発現をキャラクタリゼーションするために用いられる他の標準的なアッセイによって判定され得る。
【0041】
いくつかの態様において、RG前駆体細胞は、Math5(+)として、またはMath5(+)およびBrn3a(+)として、またはMath5(+)、Brn3a(+)、およびBrn3b(+)として、またはMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、およびIsl1(+)として、またはBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)として、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ、例えば、免疫染色および/もしくはフローサイトメトリーまたは細胞のマーカー発現をキャラクタリゼーションするために用いられる他の標準的なアッセイによって判定され得る。
【0042】
ある種の態様において、接着条件は細胞が接着し得る表面を有する培養系を包含し、これは接着材料を包含し、これは、単に例示すると、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアルキレン、ポリフルオロクロロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート、セルロース、ガラス繊維、セラミック粒子、バイオマテリアルスキャホールド、ポリ-L-乳酸、デキストラン、不活性金属繊維、シリカ、ナトロンガラス、ホウケイ酸ガラス、キトサン、またはヘチマの1つ以上を含み得る。いくつかの態様において、接着材料は静電的に帯電している。ある種の態様において、バイオマテリアルスキャホールドは、細胞外マトリックス、例えば(コラーゲンIV型もしくはI型などの)コラーゲン、804G由来マトリックス、フィブロネクチン、ビトロネクチン、コンドロネクチン、ラミニン、またはマトリゲル(商標)である。他の態様において、バイオマテリアルはゼラチン、アルギン酸、ポリグリコリド、フィブリン、または自己組織化ペプチドである。
【0043】
ある種の態様において、RG前駆体細胞、および結果としてRG細胞は、胚性幹細胞または人工多能性幹細胞などの多能性幹細胞に由来する。
【0044】
好ましい態様において、RG前駆体細胞のもたらされる調製物は多能性幹細胞を実質的に不含で提供される。すなわち、調製物中の細胞の10%未満が多能性幹細胞であり、さらにはより好ましくは調製物中の細胞の5%、2%、1%、0.1%未満、またはさらには0.01%未満が多能性幹細胞である。
【0045】
好ましい態様において、RG前駆体細胞のもたらされる調製物は眼領域前駆体細胞を実質的に不含で提供される。すなわち、調製物中の細胞の10%未満、さらにはより好ましくは5%、2%、1%、0.1%未満、またはさらには0.01%未満が眼領域前駆体細胞である。
【0046】
好ましい態様において、RG前駆体細胞のもたらされる調製物の細胞構成要素は、他の細胞型に関して少なくとも50%純粋であり(すなわち、調製物中の細胞の少なくとも50%がRG前駆体細胞である)、好ましくは、調製物中の細胞の少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%がRG前駆体である。
【0047】
ある種の態様において、方法は、RG前駆体細胞またはRG細胞を極低温保存するさらなるステップを包含する。細胞は、好ましくは、凍結された細胞の解凍(および解凍された細胞そのもの)と適合性である極低温保存剤中で凍結され、任意に細胞を洗浄して極低温保存剤を除去した後に、RG前駆体細胞またはRG細胞は少なくとも25%の細胞生存率(例えば培養効率に基づく)、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、またはさらには少なくとも90%の細胞生存率を保持する。
【0048】
RG前駆体細胞またはRG細胞は極低温保存され得る。いくつかの態様において、RG前駆体細胞はスフィアとして極低温保存される。
【0049】
ある種の態様において、神経節細胞培地は、Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)などの基本培地(または同様の成分を含む他の培地)、D-グルコース、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質、GlutaMAX(商標)、N2サプリメント(Invitrogen)、B27サプリメント(またInvitrogenから)、フォルスコリン、BDNF、およびCNTFを含み得る。B27サプリメントは、特にSOD、カタラーゼ、および他の抗酸化剤(GSH)、ならびにユニークな脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸、リポ酸を含有する。N2サプリメントは例えば次のカクテルと取りかえられ得る:トランスフェリン(10g/L)、インスリン(500mg/L)、プロゲステロン(0.63mg/L)、プトレシン(1611mg/L)、およびセレナイト(0.52mg/L)。
【0050】
前述の側面および態様のある種の態様において、RG前駆体細胞は、多能性幹細胞のソース、例えばOct4、アルカリホスファターゼ、Sox2、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、およびTRA-1-80を発現する多能性幹細胞(例えば胚性幹(ES)細胞株または人工多能性幹(iPS)細胞株だが、これに限定されない)から、さらにはより好ましくは普通の多能性幹細胞ソースから分化させられる。
【0051】
前述の側面および態様のある種の態様において、RG前駆体細胞は、7kb、7.5kb、8kb、8.5kb、9kb、9.5kb、10kb、10.5kb、11kb、11.5kb、またはさらには12kbよりも長い平均末端制限断片長(TRF)を有する。
【0052】
前述の側面および態様のある種の態様において、調製物はヒト患者への投与に好適であり、より好ましくは発熱性物質不含および/または非ヒト動物産物を不含である。
【0053】
前述の側面および態様のある種の態様において、調製物は、犬、猫、または馬などだがこれに限定されない獣医学的な非ヒト哺乳動物への投与に好適である。
【0054】
1つの側面において、本開示はRG前駆体細胞を生ずる方法を提供し、多能性幹細胞を順次(i)網膜誘導(RI)培地、(ii)神経分化(ND)培地、および(iii)神経節細胞(GC)培地によって培養することを含む。
【0055】
多能性幹細胞はヒトであり得る。いくつかの態様において、多能性幹細胞はヒトES細胞またはヒトiPS細胞であり得る。多能性幹細胞は未分化状態において、フィーダーフリーおよび/またはゼノフリー条件下で、任意にマトリックスの存在下で培養され得る。多能性幹細胞は未分化状態において、マトリゲル(商標)を含む基質などだがこれに限定されない基質上で、任意にmTESR1培地によって培養され得る。
【0056】
分化は、多能性幹細胞を網膜誘導培地によって培養することによって始まる。網膜誘導培地は、DMEM/F12、DMEM/高グルコース、もしくはDMEM/ノックアウトなどの基本培地、またはDMEM/F12の構成要素を含む培地もしくはDMEM/高グルコースの構成要素を含む培地もしくはDMEM/ノックアウトの構成要素を含む培地を含み得る。
【0057】
網膜誘導培地はD-グルコースを含み得る。
【0058】
神経分化培地はD-グルコースを含み得る。D-グルコースは0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/mlの濃度で存在し得る。
【0059】
網膜誘導培地は1つ以上の抗生物質を含み得る。抗生物質は、ペニシリンおよびストレプトマイシンいずれかまたは両方を、任意に約0~100単位/mlまたは約100単位/mlのペニシリンおよび任意に約0~100μg/mlまたは約100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で包含し得る。
【0060】
網膜誘導培地は1つ以上の血清サプリメントを含み得る。網膜誘導培地はN2サプリメントを含み得る。N2サプリメントは約0.1から5%または約0.1から2%または約1%(体積/体積またはv/v)の濃度で存在し得る。
【0061】
網膜誘導培地はB-27サプリメントを含み得る。B-27サプリメントは約0.05~2.0%または約0.2%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0062】
網膜誘導培地は、非必須アミノ酸または最小必須培地(MEM)非必須アミノ酸を含み得る。非必須アミノ酸またはMEM非必須アミノ酸はストックからの1×濃度で存在し得、ストックは典型的には100×と考えられる。グリシンの終濃度(ストックの1×濃度で)は約0.1mMであり、それゆえにストックは10mMグリシンである。ストックは典型的にはL-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-プロリン、およびL-セリンをもまた包含する。
【0063】
網膜誘導培地はインスリンを含み得る。インスリンはヒトであり得る。インスリンは約5~50μg/mlまたは約20μg/mlの濃度で存在し得る。
【0064】
網膜誘導培地はBMPシグナル伝達阻害剤を含み得る。BMPシグナル伝達阻害剤はNogginポリペプチド、dorsomorphin、LDN-193189、およびそのいずれかの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0065】
網膜誘導培地はNogginポリペプチドを含み得る。Nogginポリペプチドは約5~100ng/mlの間または約10~100ng/mlまたは約10~500ng/mlまたは約50ng/mlの濃度で存在し得る。いくつかの態様において、Nogginポリペプチドは約10~500ng/mlで存在する。
【0066】
網膜誘導培地は、全体的にまたは部分的に、フレッシュな網膜誘導培地と毎日取りかえられ得る。いくつかの場合には、細胞は2×10/cmから6×10/cmの範囲の密度で生育される。
【0067】
網膜誘導培地の存在下における培養は約4~6日間、または約4日間、約5日間、または約6日間起こり得る。
【0068】
神経分化培地は、Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)などの基本培地、またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む基本培地を含み得る。
【0069】
神経分化培地はD-グルコースを含み得る。D-グルコースは0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/mlの濃度で存在し得る。
【0070】
神経分化培地は1つ以上の抗生物質を含み得る。抗生物質は、ペニシリンおよびストレプトマイシンいずれかまたは両方を、任意に0~100単位/mlの間または約100単位/mlのペニシリンおよび任意に0~100μg/mlの間または約100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で包含し得る。
【0071】
神経分化培地は1つ以上の血清サプリメントを含み得る。神経分化培地はN2サプリメントを含み得る。N2サプリメントは約0.1から5%または0.1からは2%または約1%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0072】
神経分化培地はB-27サプリメント(Life Technologies)を含み得る。B-27サプリメントは約0.05から5.0%、約0.5から2.0%、または約2%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0073】
神経分化培地は非必須アミノ酸もしくはMEM非必須アミノ酸またはグルタミンもしくはGlutaMAX(商標)を含み得る。非必須アミノ酸またはMEM非必須アミノ酸はストックの約1×濃度で存在し得、ストックは約200mMである(100×と考えられる)。GlutaMAX(商標)は2mMまたはストックの1×希釈で存在し得る(200mMである100×ストック溶液を用いる)。
【0074】
神経分化培地はBMPシグナル伝達阻害剤を含み得る。BMPシグナル伝達阻害剤は、Nogginポリペプチド、dorsomorphin、LDN-193189、およびそのいずれかの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0075】
神経分化培養培地はNogginポリペプチドを含み得る。Nogginポリペプチドは約10から1000ng/mlの間、または約10から500ng/ml、または10から100ng/ml、または約50ng/mlの濃度で存在し得る。
【0076】
神経分化培地の存在下における培養は約8~12日間、または約9~10日間、または約9日間起こり得る。神経分化培地は、全体的にまたは部分的に、毎日、または2日毎、または3日毎に交換され得る。
【0077】
神経節細胞培地は、Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)などの基本培地、またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地を含み得る。
【0078】
神経節細胞培地はD-グルコースを含み得る。神経分化培地はD-グルコースを含み得る。D-グルコースは0~10mg/ml、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/mlの間の濃度で存在し得る。
【0079】
神経節細胞培地は1つ以上の抗生物質を含み得る。抗生物質は、ペニシリンおよびストレプトマイシンいずれかまたは両方を、任意に0~100単位/mlの間または約100単位/mlのペニシリンおよび任意に0~100μg/mlの間または約100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で包含し得る。
【0080】
神経節細胞培地は1つ以上の血清サプリメントを含み得る。神経節細胞培地はN2サプリメントを含み得る。N2サプリメントは約0.1から5%または0.1から2%または約1%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0081】
神経節細胞培地はB-27サプリメント(調合番号080085-SA)(Life Technologies)を含み得る。B-27サプリメント(調合番号080085-SA)は約0.05から5.0%、約1.5から2.5%、または約2%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0082】
神経節細胞培地はGlutaMAX(商標)を含み得る。GlutaMAX(商標)はストックの1×希釈で存在し得る(200mMである100×ストック溶液を用いる)。
【0083】
神経節細胞培地はフォルスコリン、BDNF、およびCNTFの1つ、2つ、または全てを含み得る。フォルスコリンは1~20μMまたは1~10μMまたは約5μMの濃度で存在し得る。BDNFは1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/mlの濃度で存在し得る。CNTFは1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/mlの濃度で存在し得る。BDNFはヒトBDNFであり得る。CTNFはヒトCTNFであり得る。
【0084】
神経節細胞培地の存在下における培養は約40~50日間または約45日間起こり得る。神経節細胞培地は、全体的にまたは部分的に、毎日、または2日毎、または3日毎、またはより頻繁でなく交換され得る。
【0085】
方法によって生じたRG前駆体細胞は培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる培養物は1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0086】
RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、Isl1、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および/またはIsl1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体はPax6および/またはRx1を発現し得ず、それゆえに、Pax6(-)および/またはRx1(-)としてキャラクタリゼーションされ得る。ある種のRG前駆体細胞はMath5および/またはBrn3bを発現し得ず、それゆえに、Math5(-)および/またはBrn3b(-)としてキャラクタリゼーションされ得る。
【0087】
RG前駆体細胞は、Math5(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)、またはBrn3a(+)、またはニューロフィラメント(+)、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Thy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体はPax6および/またはRx1を発現し得ず、それゆえに、Pax6(-)および/またはRx1(-)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はTuj1(+)であり得る。RG前駆体細胞は増殖性であり得る。
【0088】
RG前駆体細胞は極低温保存され得る。RG前駆体細胞はヒトであり得る。
【0089】
方法は、網膜神経節細胞(RGC)分化培地の存在下における爾後の培養ステップをさらに含み得る。これは中間の極低温保存ステップなしに起こり得るか、またはRG前駆体細胞の極低温保存および解凍の後に起こり得る。
【0090】
RGC分化培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)、またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地を含み得る。
【0091】
RGC分化培地はD-グルコースを含み得る。神経分化培地はD-グルコースを含み得る。D-グルコースは0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/mlの濃度で存在し得る。
【0092】
RGC分化培地は1つ以上の抗生物質を含み得る。抗生物質は、ペニシリンおよびストレプトマイシンいずれかまたは両方を、任意に0~100単位/mlの間または約100単位/mlのペニシリンおよび任意に0~100μg/mlの間または約100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で包含し得る。
【0093】
RGC分化培地は1つ以上の血清サプリメントを含み得る。RGC分化培地はB-27サプリメント(調合080085-SA)を含み得る。B-27サプリメントは約0.05から5.0%、約1.5から2.5%、または約2%(v/v)の濃度で存在し得る。
【0094】
RGC分化培地はGlutaMAX(商標)を含み得る。GlutaMAX(商標)はストックの1×希釈で存在し得る。
【0095】
RGC分化培地はレチノイン酸を含み得る。レチノイン酸は約0.5~20μM、約0.5~10μM、約1~5μM、または約2μMの濃度で存在し得る。
【0096】
RGC分化培地は、フォルスコリン、BDNF、CNTF、cAMP、およびDAPTの全てを包含する1つ以上を含み得る。RGC分化培地はBDNFおよびCNTFの1つまたは両方を含み得る。RGC分化培地は、フォルスコリン、cAMP、およびDAPT、または他のNotch経路阻害剤もしくはNotch阻害剤(例えば、Notchブロック抗体または抗体断片、Notchの負の制御領域の抗体または抗体断片、アルファ-セクレターゼ阻害剤、ガンマ-セクレターゼ阻害剤、ステープルドペプチド、低分子ブロッカー、ならびにsiRNA、shRNA、およびmiRNA)の全てを包含する1つ以上を含み得る。フォルスコリンは1~20μMまたは1~10μMまたは約5μMの濃度で存在し得る。BDNFは1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/mlの濃度で存在し得る。CNTFは1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/mlの濃度で存在し得る。BDNFはヒトBDNFであり得る。CTNFはヒトCTNFであり得る。cAMPは1~500ng/mlまたは10~250ng/mlまたは5~150ng/mlまたは約100ng/mlの濃度で存在し得る。DAPTは1~100μMまたは1~50μMまたは1~20μM、または約10μMの濃度で存在し得る。
【0097】
RGC分化培地はインスリンを含み得る。インスリンはヒトであり得る。インスリンは約5~50μg/mlまたは約20μg/mlの濃度で存在し得る。
【0098】
RGC分化培地の存在下における培養は、約1~4週間または約2~4週間または約2~3週間または約2週間起こり得る。RGC分化培地は、全体的にまたは部分的に、毎日、または2日毎、または3日毎、またはより頻繁でなく交換され得る。
【0099】
方法によって生じたRG細胞は培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる培養物は1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0100】
RG細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、Tuj1、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG細胞は、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)として、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Thy1(+)として、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Thy1(+)として、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)として、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、Thy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG細胞は分裂終了であり得、RG前駆体細胞よりも多数の、長い、および/または複雑な樹状突起を含み得る。
【0101】
RG細胞は極低温保存され得る。RG細胞はヒトであり得る。
【0102】
別の側面において、本開示はRG前駆体細胞を生ずる方法を提供し、眼領域前駆体細胞を神経節細胞培地によって培養することを含む。
【0103】
眼領域前駆体細胞は細胞の集団として提供され得、その少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%が眼領域前駆体細胞である。眼領域前駆体細胞は、Pax6(+)およびRx1(+)、ならびに任意にSix3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、および/またはTbx3(+)でもまたあり得る。眼領域前駆体細胞はSox2(+)でもまたあり得る。眼領域前駆体細胞はネスチン(+)であり得る。眼領域前駆体細胞はOtx2(+)でもまたあり得る。
【0104】
眼領域前駆体は多能性幹細胞のインビトロ分化によって得られる。いくつかの態様において、多能性幹細胞はES細胞またはiPS細胞であり得る。多能性幹細胞はフィーダーフリーおよび/またはゼノフリー条件下で培養され得る。
【0105】
眼領域前駆体細胞の培養は約5~45日間または約5~20日間または約35~45日間起こり得る。神経節細胞培地および神経節細胞培地の培養パラメータは上に記載されている通りであり得る。
【0106】
方法によって生じたRG前駆体細胞は培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる培養物(かかる%のRG前駆体細胞を含む)は1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0107】
RG前駆体細胞の表現型は上に記載されている通りである。それゆえに、例として、RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、Isl1、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および/またはIsl1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体はPax6またはRx1を発現し得ず、それゆえに、Pax6(-)および/またはRx1(-)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞は増殖性であり得る。他の表現型は上に記載されている。
【0108】
RG前駆体細胞は極低温保存され得る。RG前駆体細胞はヒトであり得る。
【0109】
別の側面において、本開示はRG細胞を生ずる方法を提供し、眼領域前駆体細胞を神経節細胞培地および網膜神経節細胞(RGC)分化培地によって順次培養することを含む。
【0110】
眼領域前駆体細胞は細胞の集団として提供され得、その少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%が眼領域前駆体細胞である。眼領域前駆体細胞はPax6(+)およびRx1(+)、ならびに任意にSix3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、および/またはTbx3(+)でもまたあり得る。眼領域前駆体細胞はSox2(+)でもまたあり得る。眼領域前駆体細胞はネスチン(+)であり得る。眼領域前駆体細胞はOtx2(+)でもまたあり得る。
【0111】
眼領域前駆体は多能性幹細胞のインビトロ分化によって得られる。いくつかの態様において、多能性幹細胞はES細胞またはiPS細胞であり得る。多能性幹細胞はフィーダーフリーおよび/またはゼノフリー条件下で培養され得る。
【0112】
神経節細胞培地および神経節細胞培地の培養パラメータは上に記載されている通りであり得る。RGC分化培地およびRGC分化培地の培養パラメータは上に記載されている通りであり得る。
【0113】
方法によって生じたRG細胞は培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる培養物(かかる%のRG細胞を含む)は1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0114】
RG細胞の表現型は上に記載されている通りである。それゆえに、例として、RG細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、Tuj1、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG細胞は分裂終了であり得る。RG細胞はRG前駆体細胞よりも複雑な樹状突起、長い樹状突起、および/または多くの樹状突起を有し得る。他の表現型は上に記載されている。
【0115】
RG細胞は極低温保存され得る。RG細胞はヒトであり得る。
【0116】
別の側面において、本開示はRG細胞を生ずる方法を提供し、RG前駆体細胞を網膜神経節細胞(RGC)分化培地によって培養することを含む。
【0117】
RG前駆体細胞は細胞の集団として提供され得、その少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%がRG前駆体細胞である。RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、Isl1、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および/またはIsl1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体はPax6またはRx1を発現し得ず、それゆえに、Pax6(-)および/またはRx1(-)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体は多能性幹細胞のインビトロ分化によって得られる。いくつかの態様において、多能性幹細胞はES細胞またはiPS細胞であり得る。多能性幹細胞はフィーダーフリーおよび/またはゼノフリー条件下で培養され得る。
【0118】
RGC分化培地およびRGC分化培地の培養パラメータは上に記載されている通りであり得る。
【0119】
方法によって生じたRG細胞は培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる培養物(かかる%のRG細胞を含む)は1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0120】
RG細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、Tuj1、およびThy1の1つ以上を発現し得、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、およびThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。
【0121】
RG細胞は極低温保存され得る。RG細胞はヒトであり得る。
【0122】
別の側面において、本開示は、例えば先行するパラグラフに記載されている、本明細書に記載される方法を用いて生じたRG前駆体細胞を含む組成物を提供する。
【0123】
別の側面において、本開示は、任意にヒトであるRG前駆体細胞を含む組成物を提供する。
【0124】
RG前駆体細胞は組成物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得る。
【0125】
RG前駆体細胞はマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、Isl1、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)、ニューロフィラメント(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1を発現し得、それゆえに、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、およびIsl1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞はBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。RG前駆体細胞の他の表現型は上に記載されている。
【0126】
RG前駆体細胞は極低温保存され得る。RG前駆体細胞はヒトであり得る。
【0127】
別の側面において、本開示はその必要がある個体の処置の方法を提供し、RG前駆体細胞を含む組成物(例えば、本明細書に記載される組成物、または本明細書に記載される方法を用いて生じた組成物)を前記の個体に投与することを含む。
【0128】
組成物は眼、硝子体、網膜下腔に、または静脈内投与され得る。RG前駆体細胞はヒトであり得る。
【0129】
別の側面において、本開示は、本明細書に、例えば先行するパラグラフに記載される方法に従って生じたRG細胞を含む組成物を提供する。
【0130】
方法によって生じたRG細胞は組成物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含み得、任意に、かかる組成物(かかる%のRG細胞を含む)は培養物中で1週間、2週間、または2週間超増殖培養され得る(3週間、4週間、またはより長くを包含する)。
【0131】
RG細胞はマーカーBrn3a、ニューロフィラメント、Tuj1、およびThy1の1つ以上を発現し得、それゆえに、Brn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、および/またはThy1(+)としてキャラクタリゼーションされ得る。
【0132】
RG細胞は極低温保存され得る。RG細胞はヒトであり得る。
【0133】
別の側面において、本開示はその必要がある個体の処置の方法を提供し、RG細胞を含む組成物、例えば本明細書に、例えば先行するパラグラフに記載される組成物または本明細書に、例えば先行するパラグラフに記載される方法によって生じた組成物を、前記の個体に投与することを含む。
【0134】
組成物は眼、硝子体、網膜下腔に、または静脈内投与され得る。
【0135】
別の態様において、本発明は、マウス線維芽細胞フィーダープラットフォーム上で生育していない細胞を起源とするヒト起源のRG前駆体細胞またはRG細胞、好ましくは非ドナー由来RG前駆体細胞またはRG細胞の、実質的に純粋な調製物を対象とする。例えば、調製物は85%~95%純粋であり得る。ある態様において、本発明は、マウス線維芽細胞フィーダープラットフォームに由来する細胞の必要を省いたヒト起源のRG前駆体細胞またはRG細胞の実質的に純粋な調製物を調製する方法を対象とする。フィーダー系を本発明の方法と取りかえることは、例えば75%から100%または85%から95%のRG前駆体細胞またはRG細胞のより高い均質性を生ずる。フィーダーフリー幹細胞の分化は外因性の誘導因子の導入の不在下でもまた起こり得、これは従来技術からの実質的な改善である。しかしながら、分化に必須ではないものの、Nogginポリペプチドの任意の追加は幹細胞の分化を加速させ得る。
【0136】
別の態様において、分化方法はフィーダーフリーおよびゼノフリーである。それゆえに、いくつかの態様においては、ヒト細胞は非ヒト種に由来するいずれかの培地構成要素の不在下で培養される。
【図面の簡単な説明】
【0137】
図1図1AおよびB.ヒトES細胞のインビトロ分化の間の遺伝子発現。(図1A)インビトロ細胞分化の第9日、第11日、および第13日における眼領域前駆体マーカーPax6およびRx1のフローサイトメトリー分析。図1B.ES細胞(各ペアの第1のバー)および眼領域前駆体(各ペアの第2のバー)のES細胞多能性マーカーの定量RT-PCR分析。
図2図2AおよびB.フローサイトメトリー分析は、Pax6およびRx1(図2A)、ならびにOtx2、Sox2、およびネスチン(図2B)の発現を示した。
図3図3AおよびB.網膜神経節細胞(RGC)分化に必須である転写因子の発現。(図3A)培養の第35日のES細胞(各バーペアの第1のバー)および網膜神経節細胞(RGC)前駆体(各バーペアの第2のバー)によるMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl-1の発現のリアルタイムRT-PCR分析。(図3B)免疫染色およびフローサイトメトリーによるMath5、Pax6、およびBrn3aの発現の定量。
図4図4.ES細胞(各三つ組の第1のバー)、初期網膜神経節細胞(RGC)前駆体(各三つ組の第2または真中のバー)、および後期網膜神経節細胞(RGC)前駆体(各三つ組の第3または最後のバー)のMath5、Brn3a、およびBrn3bの発現のリアルタイムRT-PCR分析。
図5図5.ES細胞由来成熟網膜神経節細胞(RGC)のThy1の発現。左パネル、Thy1の免疫染色。右パネル、フローサイトメトリーによるThy1の発現の定量。
【0138】
図6A-B】図6AおよびB.分化ヒトES細胞由来網膜神経節細胞。(図6A)ES細胞由来網膜神経節細胞の形態。(図6B)細胞はBrn3a、ニューロフィラメント、およびTuj1を発現した。
図7図7.レーザー光凝固を包含する緑内障ラットモデルの動物研究の概略図。眼のマイクロビーズ注射を包含する別の動物緑内障モデルが下に記載されている。
図8図8.コントロール(高IOP+PBS)、細胞処置(高IOP+細胞)、および正常ラットにおける眼内圧(IOP)上昇の5週間後の網膜神経節細胞(RGC)の生存の定量。
図9図9.多能性幹細胞から網膜神経節前駆体細胞および網膜神経節細胞までの分化の時系列。
図10図10.マイクロビーズ(MB)マウス緑内障モデルの眼内圧(IOP)に及ぼすRGC前駆体の効果。MB処置は片眼注射からなった(2μlの15μmマイクロビーズ、5×10/μ1)。反対側の眼は内部コントロールとして用いられた。細胞処置は硝子体注射による2μlのRGCP(300,000細胞)からなった。硝子体注射によって2μlの媒体を受けたマウスをコントロールとして用いた。MBが第0日に注射され、RGCPまたは基剤注射が第7日に実施され、第28または56日に(4および8週間)マウスは屠殺された。RGC、RGCおよび網膜の機能(pSTRおよびERG。Fortune et al. IVOS, 2004, 45: 1854-1862、Smith et al. Doc Ophthalmol, 2014, 128: 155-168))、ならびに視覚挙動(視運動)を評価した。IOPの統計的有意差は実験群間で観察されず、移植されたRGCPがIOPに影響せずにむしろ別のメカニズムによって働いているということを示した。
【0139】
図11図11.移植された網膜神経節細胞前駆体(RGCP)の同化。移植されたRGCPはRGCマーカーTuj-1を発現し(左下)、MB処置マウスの網膜に同化し、さらなる分化によって、伸長した長い神経突起を形成した(視神経乳頭に向かう。下の中央)。
図12図12.ホスト網膜神経節層への移植された網膜神経節細胞前駆体(RGCP)の同化。
図13図13AおよびB.MB処置マウスのRGC喪失の定量。図13Aは、ESC-RGCPの移植が、RGCP注射(黒色のバー)の4(左)および8(右)週間後の緑内障マウスにおいてホストRGCの生存を支持するということを示している。白色のバーはPBS注射を受けたマウスに相当する。p<0.05、**p<0.01。図13Bは網膜神経節層がサンプリングされた箇所を示している。楕円はRGCP移植のエリアに相当する。重要なことに、ホスト網膜神経節層は注射の部位から離れた箇所でサンプリングされ、なおRGC喪失の弱まりがRGCP注射の結果として観察された。これは、傍分泌メカニズムが、移植された細胞が内因性の元来の網膜神経節層の生存を促進する能力に包含され得るということを示唆している。
図14図14A~D.RGCPの移植は緑内障マウスのpSTR振幅を向上させる。pSTRはRGC機能の尺度である。図14Aは、pSTR記録の代表的な波形を正常マウス(MBなし)、シャム処置マウス(MBおよび基剤が注射された)、およびESC-RGC処置マウス(MBおよびPSC-RGCPが注射された)について示している。図14Bは、注射の4週間後の正常(正常)、RGCP移植(MB+RGCP)、または基剤注射(MB+基剤)緑内障マウスからのpSTR振幅の定量を示している。PBS注射を受けた緑内障の眼は正常のベースラインから有意に減縮したpSTR振幅を示し、一方で、RGCP注射を受けたものはベースラインと比較してpSTR振幅の有意な低減を示さなかった。図14Cはこれらの3つの実験群(正常、MB+基剤、およびMB+RGCP)の相対的なpSTR振幅を示しており、シャム処置およびRGCP処置マウスの間の相対的な振幅の差が有意であるということを示している。図14DはOKRによる視覚コントラスト感度の定量を示しており、注射の8週間後に、基剤注射した眼と比較してRGCP移植された眼の有意に向上した視覚コントラスト感度を示している。p<0.05、**p<0.01。NS:非有意な差。
図15】視神経挫滅モデルの概略図。
【0140】
図16A-J】16A~J.視神経損傷したマウスにおけるRGCP再定着、分化、およびシナプス形成。図16A~Cは、視神経損傷の3週間後のマウスからとられたTuj1免疫標識した網膜フラットマウント中のグラフトされたRGCP(GFP+)の落射蛍光写真である。図16AはGFP染色を示しており、図16BはTuj1染色を示しており、図16CはGFPおよびTuj1染色を示している。ほぼ全てのGFP+細胞はTuj1について陽性に免疫標識されており、多くは長い神経突起を持っている。図16D~Eは、hESC由来RGCP移植を受けたマウスのTuj1免疫標識された網膜フラットマウントを記録した3Dライトシート顕微鏡法の動画からとられた写真である。GFP+RGCP由来細胞はRGCマーカー(Tuj1)と共局在し(図16D。DAPIによって対比染色されている)、神経節細胞層(GCL)に再定着した(図16E)。INL:内顆粒層。図16F~Jは、網膜切片(図16F、H~J)またはフラットマウント(図16G)からとられた代表的な落射蛍光共焦点写真であり、これらはポストシナプスマーカーのPSD95(図16I)および/またはプレシナプスマーカーのシナプトタグミン(Synt)(図16F。GFP、Synt、およびDAPIを染色された)によって免疫標識された。矢印は陽性の免疫標識を示す細胞のスポットエリアを指している。図16Jのオーバーレイ写真は、GFP+細胞上へのプレおよびポストシナプスマーカーの共局在を明らかにしており、グラフトされた細胞による機能的なシナプスの形成を示唆している。 表1.DMEM/F12培地、Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)、N2サプリメント、およびB27サプリメントの構成要素。
【発明を実施するための形態】
【0141】
本発明は網膜神経節(RG)細胞およびRG前駆体細胞を作製するための方法を提供する。それらの方法は、多能性幹細胞および眼領域(EF)前駆体を包含するより初期の前駆体からのインビトロ分化を包含する。本明細書において提供される方法は、出発材料として前述の前駆体(幹細胞を包含する)集団のいずれかを用い得る。
【0142】
本発明は、RG細胞およびRG前駆体細胞をインビトロで初代の眼領域(EF)前駆体(すなわち、対象から得られるEF前駆体細胞)から作製することをさらに企図する。
【0143】
インビボまたはインビトロの網膜神経発生はいくつもの発生ステージを経て起こり、そのそれぞれは表現型的に(例えば、マーカー発現プロファイルによって)および/または機能的に定められ得る。インビトロの多能性幹細胞はEF前駆体に分化し、これは翻ってRG前駆体細胞に分化し、これは初期RG前駆体細胞および後期RG前駆体細胞を含み得、これは翻って成熟RG細胞(本明細書においてはRG細胞と言われる)に分化する。RG前駆体細胞のうち、初期RG前駆体細胞は後期RG前駆体細胞に分化し得る。後期RG前駆体細胞は成熟RG細胞に分化し得る。初期RG前駆体細胞は成熟RG細胞に直接分化し得る。本明細書において提供される方法はRG細胞およびRG前駆体細胞を効率的に作製する。
【0144】
多能性幹細胞からRG前駆体細胞およびRG細胞への発生の全般的な発生経路が図9に概略図的に例示されている。発生の各ステージのマーカー発現プロファイルもまた示されている。
【0145】
本明細書において用いられる前駆体細胞は、分裂性のままであり、より多くの前駆体細胞を生じ得るかまたは最終運命の細胞系譜に分化し得る細胞を言う。用語の前駆体(progenitor)および前駆体は(precursor)交換可能に用いられる。それらのステージのそれぞれの細胞は本明細書においてより詳細に論じられる。
【0146】
本明細書において提供されるRG前駆体およびRG細胞は種々のインビボおよびインビトロの方法に用いられ得る。例えば、RG前駆体細胞は網膜の状態を処置するためにインビボで用いられ得、緑内障、例えば開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、正常眼圧緑内障、先天性緑内障、色素緑内障、続発緑内障、偽落屑緑内障、外傷性緑内障、血管新生緑内障、および虹彩角膜内皮症候群、ならびに視神経損傷、任意に自己免疫疾患、外傷、ウイルス感染、および虚血再灌流損傷、任意に卒中に随伴する虚血再灌流損傷に随伴する視神経損傷、糖尿病網膜症、または眼への血液供給を損なう他の状態を包含するが、これに限定されない。
【0147】
本発明は、さらに、本明細書に記載される方法によって得られるRG前駆体細胞およびRG細胞を提供する。RG前駆体細胞およびRG細胞は、多能性幹細胞またはそれらの分化した子孫、例えば眼領域前駆体細胞のインビトロ分化によって得られる。眼領域前駆体細胞そのものは多能性幹細胞のインビトロ分化から得られるか、またはそれらは対象から得られた初代の眼領域前駆体であり得る。
【0148】
本発明は、初代のソースからは到達されたことがないかまたは到達不可能であるRG前駆体細胞の集団およびRG細胞の集団を提供する。これらの集団はそれらの細胞の内容が均質またはほぼ均質であり得る。例えば、かかる集団中の細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%がRG前駆体細胞であり得る。別の例として、かかる集団中の細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%がRG細胞であり得る。これらの集団中のこれらの細胞は単一のハプロタイプであり得る。例えば、それらはHLAマッチングし得る。これらの集団中のこれらの細胞は遺伝子的に同一であり得る。本発明はさらにHLAタイピングしたRG前駆体細胞のバンクを提供する。かかる細胞は種々のヒト対象に用いられ得る。
【0149】
加えて、本明細書において提供される方法は、さもなければ初代のソースからは可能でないであろう多数のRG前駆体細胞およびRG細胞を作製するために用いられ得る。例えば、方法は10個のRG前駆体細胞または10個のRG細胞を出発の100万個の多能性細胞あたり生じ得る。
【0150】
分化(非幹)細胞の型
眼領域前駆体細胞(EF前駆体細胞)。EF前駆体細胞は、最小限にはPax6(+)およびRx1(+)の細胞として定められる。それらはSix3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、およびTbx3(+)でもまたあり得る。これらのマーカーの全ては転写因子である。EF前駆体細胞はネスチン(+)および/またはSox2(+)および/またはOtx2(+)でもまたあり得る。EF前駆体細胞はOct4およびNanogを発現しない(すなわちそれらはOct4(-)およびNanog(-)である)。EF前駆体細胞は多能性幹細胞のインビトロ分化によって形成され得る。かかる分化は網膜誘導(RI)培地の存在下で起こり得、NogginポリペプチドまたはNoggin様化合物などの外因性の因子の存在または不在下で起こり得る。
【0151】
網膜神経節(RG)前駆体細胞。本発明の分化方法は、RG発生が以前に可能であったよりもさらに解析されることを可能にし、それによって2つのRG前駆体ステージを明らかにした。EF前駆体細胞から発生する第1のステージは初期RG前駆体細胞ステージである。これらの細胞は、Math5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上または全ての発現(すなわちMath5(+)および/もしくはBrn3a(+)および/もしくはBrn3b(+)および/もしくはIsl1(+))ならびにPax6およびRx1の発現なしまたは検出不可能な発現(すなわちPax6(-)およびRx1(-))によって定められる。それらのRG前駆体はMath5(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、またはMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、Isl1(+)であり得る。それらの初期RG前駆体細胞はさらに後期RG前駆体細胞に分化する。それらの細胞は、Brn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上または全ての発現(すなわちBrn3a(+)および/もしくはニューロフィラメント(+)および/もしくはThy1(+))ならびにMath5、Brn3b、およびIsl1の発現なしまたは検出不可能な発現(すなわちMath5(-)、Brn3b(-)、およびIsl1(-))によって定められる。それらのRG前駆体はBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびThy1(+)であり得る。それらの後期RG前駆体細胞はそれからRG細胞に分化する。例えばRGC分化培地によって培養されたときに、初期RG前駆体細胞はRG細胞に直接分化もまたし得る。RG前駆体細胞は増殖性である。
【0152】
網膜神経節(RG)細胞。RG細胞は、最小限にはニューロフィラメント、Tuj1、Thy1、およびBrn3aの1つ以上または全ての発現(すなわち、ニューロフィラメント(+)および/またはTuj1(+)および/またはThy1(+)および/またはBrn3a(+))によって定められる。RG細胞はBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、Tuj1(+)、および任意にThy1(+)であり得る。RG細胞は分裂終了である。RG細胞はRG前駆体細胞よりも多くの樹状突起、複雑な樹状突起、および長い樹状突起を有し得る。
【0153】
培養方法
多能性幹細胞維持培養。多能性幹細胞はフィーダーフリー系によって任意にマトリックス上で維持、それゆえに増殖培養され得る。好適なマトリックスは、ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、エンタクチン、コラーゲン、コラーゲンI、コラーゲンIV、コラーゲンVIII、ヘパラン硫酸、マトリゲル(商標)(Engelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫細胞からの可溶性調製物)、CellStart(ヒト基底膜抽出物)、またはそのいずれかの組み合わせを含むかまたはそれからなるものを包含するが、これに限定されない。いくつかの態様において、マトリックスはマトリゲル(商標)を含むか、それからなるか、またはそれから本質的になる。マトリゲル(商標)はBD Biosciencesなどの市販のソースから利用可能である。組換えヒトラミニンを包含するラミニンはマトリゲル(商標)の代替として用いられ得る。
【0154】
例示的な方法において、多能性幹細胞はそれらの未分化状態においてフィーダーフリー条件下でマトリゲル(商標)またはラミニン上で維持される。細胞は典型的には約80~90%コンフルエンシー時に継代または凍結される。継代は酵素的(例えばディスパーゼ)または非酵素的(例えば、PBS系解離緩衝液、Invitrogen)手段を用いて実施され得る。いくつかの態様において、多能性幹細胞はゼノフリー条件下で培養され得、いくつかの場合には、N2血清サプリメントなどだがこれに限定されない血清サプリメントの存在下における培養を包含し得る。
【0155】
多能性幹細胞分化培養。多能性幹細胞は直接分化させられ得、RG細胞またはRG前駆体細胞へのそれらの分化が、例えば胚様体(EB)では起こり得る非神経節細胞系譜への分化を包含しないということを意図する。それゆえに、本明細書において提供される方法はEB形成を要求せず、好ましくはそれを回避する。これは従来技術の方法からの改善である。
【0156】
RG前駆体細胞またはRG細胞は、ニューロスフィアの形成を包含する懸濁培養によって、またはマトリゲル(商標)もしくはラミニンなどだがこれに限定されないマトリックスに接着して作製され得る。
【0157】
次は、多能性幹細胞をRG前駆体細胞およびRG細胞に分化させるための例示的なプロセスである。
【0158】
多能性幹細胞は、多能性幹細胞を網膜誘導(RI)培地および神経分化(ND)培地によって培養することによって先ずEF前駆体細胞に分化させられる。
【0159】
RI培地が、約15~20%コンフルエンシーである多能性幹細胞に第0日に追加される。RI培地は、基本培地、例えばDMEM/F12またはDMEM/F12の構成要素を含む培地、D-グルコース、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質、N2サプリメントおよびB27サプリメントなどの1つ以上の血清サプリメント、非必須アミノ酸、インスリン、および任意にNogginポリペプチドまたはNoggin様因子などの外因性の分化因子を、下に記載されるように含む。
【0160】
DMEM/F12、N2サプリメント、およびB27サプリメントの構成要素は表1に提供されている。
【0161】
RI培地による培養は約5日間起こり得る。完全な培地交換が第1~4日に実施される。
【0162】
約4日後に(例えば、第4、5、または6日またはそのあたりに)、培地は神経分化(ND)培地に交換される。ND培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質、GlutaMAX(商標)、N2サプリメントおよびB27サプリメントなどの1つ以上の血清サプリメント、非必須アミノ酸、ならびに任意にNogginポリペプチドまたはNoggin様因子などの外因性の分化因子を、下に記載されるように含む。
【0163】
Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)の構成要素は表1に提供されている。
【0164】
GlutaMAX(商標)はL-アラニル-L-グルタミンであり、これはL-グルタミンの安定化された形態である。これは培養物中においてより少ない分解を経験し、それによって、長期培養物に起こり得るアンモニア蓄積を低減する。
【0165】
細胞はさらに約8日間(第6~13日)ND培地によって培養される。培地は定期的に交換される(例えば、約2日毎)。この培養期間の間に、細胞はコロニーとして生育し、辺縁の細胞はフラットで大きくなり、一方で、より中央に位置した細胞はより小さく、コンパクトな細胞クラスターを形成する。
【0166】
約第10~11日に細胞はPax6を発現し始め、次に第12日にRx1発現の開始がある(図1A)。RT-PCR分析はOct4およびNanog発現の喪失を示した(図1B)。第13日に、フローサイトメトリーによって定量すると90%超の細胞がPax6およびRx1を共発現し(図2A)、細胞の99%超がネスチン、Otx2、およびSox2を発現する(図2B)。これらの結果は多能性幹細胞がEF前駆体細胞に分化したということを示している。
【0167】
約第14日に(例えば、第11、12、13、14、または15日またはそのあたりに)、培地は神経節細胞(GC)培地に交換される。GC培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの1つ以上の抗生物質、GlutaMAX(商標)、N2サプリメントおよびB27サプリメント(調合080085-SA)などの1つ以上の血清サプリメント、ならびにフォルスコリン、BDNF、およびCNTFの全てを包含する1つ以上を含む。細胞はGC培地によって約第20日まで培養されることを継続する。
【0168】
約第20日に、細胞はセルスクレーパーを用いて生育表面から取られ、GC培地中で機械的にクラスターに破砕される。細胞クラスターは100mm超低接着培養皿に移入される。細胞クラスターは丸まり、この懸濁培養物中に個体のスフィアを形成する。GC培地は3日毎に交換される。約第35日に、リアルタイムRT-PCRはMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の発現の強い上方制御を示した(図3A)。フローサイトメトリーは、>99%の細胞が転写因子Math5およびBrn3aを発現したということを示した。約94%のMath5(+)細胞はPax6について陰性に染色した(図3B)。これらの結果は初期RG前駆体細胞の存在を示している。
【0169】
約第36~60日の間に、神経スフィアはGC培地によって培養され、約3~4日毎の培地交換がある。
【0170】
約第60日に、リアルタイムRT-PCRはBrn3aの継続した発現を示した。Math5およびBrn3bの発現レベルは非常に下方制御されていた(図4)。フローサイトメトリーは、細胞の95.3%がBrn3aおよびニューロフィラメントを共発現したということを示した(データは示さない)。これらの結果は後期RG前駆体細胞の存在を示している。
【0171】
RG細胞を形成するためのRG前駆体細胞の分化.RG前駆体細胞はAccutase(登録商標)細胞剥離溶液を用いて単細胞に解離させられる。細胞は網膜神経節細胞(RGC)分化培地によって約10~40/cmの密度でポリ-D-リジン/ラミニンコーティングプレート上にプレーティングされる。RCG分化培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)またはNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース、ペニシリンおよびストレプトマイシンなどの抗生物質、GlutaMAX(商標)、B27サプリメント(調合080085-SA)などの1つ以上の血清サプリメント、インスリン、BDNFおよびCNTFの1つまたは両方、ならびにフォルスコリン、cAMP、およびDAPT、または他のNotch阻害剤の全てを包含する1つ以上を含む。Neurobasal(商標)培地の構成要素は表1に提供されている。培地は約2日毎に交換された。
【0172】
2週間後に、細胞の約72%はThy1について陽性に染色した(図5)。細胞は樹状突起および軸索を有した(図6A)。免疫染色はBrn3a、ニューロフィラメント、およびTuj1の発現を示した(図6B)。これらの結果はRG細胞の存在を示している。
【0173】
RG前駆体およびRG細胞の極低温保存.初期RG前駆体細胞、後期RG前駆体細胞およびRG細胞は、Cryostor CS10などのアニマルフリーの極低温保存緩衝液中でニューロスフィアとして凍結/極低温保存され得る。
【0174】
細胞培養培地
本発明の態様において、細胞は種々の細胞培養培地によって保存、増殖、または分化する。それらの培地は下により詳細に記載される。
【0175】
網膜誘導(RI)培地。網膜誘導(RI)培地は多能性幹細胞をEF前駆体細胞に分化させるために用いられる。網膜誘導(RI)培地は、基本培地、例えばDMEM/F12またはDMEM/F12の構成要素(表1に示されている)を含む培地、D-グルコース(任意に0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/ml)、ペニシリン(任意に0~100単位/mlの間または約100単位/ml)およびストレプトマイシン(任意に0~100μg/mlの間または約100μg/ml)などの1つ以上の抗生物質、N2サプリメント(任意に約0.1から5%または約0.1から2%または約1%で(v/v)およびB27サプリメント(任意に約0.05~2.0%または約0.2%(v/v)などの1つ以上の血清サプリメント、MEM非必須アミノ酸溶液(任意に、ストックから作られる約1×濃度、およそ0.1mMグリシン)、ならびに任意にインスリン(任意に5~50μg/mlまたは約20μg/ml)を含む。RI培地はNogginポリペプチドを約5~100ng/mlの間または約10~100ng/mlまたは約10~500ng/mlまたは約50ng/mlの濃度で含み得る。網膜誘導培地はBMPシグナル伝達阻害剤を含み得、任意にNogginポリペプチド、dorsomorphin、LDN-193189、およびそのいずれかの組み合わせからなる群から選択される。RI培地はインスリン、Nogginポリペプチド、またはインスリンおよびNogginポリペプチドを包含し得る。
【0176】
Nogginポリペプチドは必要でないが、Nogginポリペプチドが存在するときにはEF前駆体細胞への増大した分化(EF転写因子の増大した発現によって示される)が観察される。Nogginポリペプチドは同様の活性を有する他の部分によって置換され得、SB431542を包含するがこれに限定されない。
【0177】
Nogginポリペプチドは分泌性のBMP阻害剤であり、これは報告によればBMP2、BMP4、およびBMP7に高い親和性で結合してTGFβファミリーの活性をブロックする。SB431542は、報告によれば、ACTRIB、TGFβR1、およびACTRIC受容体のリン酸化をブロックすることによってTGFβ/アクチビン/Nodalを阻害する低分子である。SB431542は、アクチビンおよびNanogによって媒介される多能性ネットワークを不安定化し、内因性のアクチビンおよびBMPシグナルをブロックすることによって、BMPによって誘導される栄養膜、中胚葉、および内肺葉細胞運命を抑制すると考えられている。
【0178】
前述の活性の1つ以上を有する薬剤は、例えば開示される方法の文脈で用いられると、NogginポリペプチドおよびSB431542の1つまたは両方の機能を代替または増強し得るということが予想される。例えば、Nogginポリペプチドおよび/または低分子SB4312542は、次の3つの標的エリアのいずれかまたは全てに影響する1つ以上の阻害剤によって代替または増強され得る。1)受容体へのリガンドの結合を防止すること、2)受容体の活性化をブロックすること(例えばdorsomorphin)、および3)SMAD細胞内蛋白質/転写因子の阻害。例示的な潜在的に好適な因子は、天然の分泌性のBMP阻害剤Chordin(これはBMP4をブロックする)およびFollistatin(これはアクチビンをブロックする)、ならびにそのアナログまたはミメティックを包含する。Nogginポリペプチドの効果をミミックし得る追加の例示的な因子は、BMP2、BMP4、および/またはBMP7を隔離するであろうドミナントネガティブ受容体またはブロック抗体の使用を包含する。加えて、受容体リン酸化をブロックすることに関して、dorsomorphin(または化合物C)は幹細胞に及ぼす同様の効果を有すると報告されている。SMAD蛋白質の阻害は、SIS3(6,7-ジメトキシ-2-((2E)-3-(1-メチル-2-フェニル-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-3-イル-プロプ-2-エノイル))-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、Smad3特異的阻害剤、SIS3)などの可溶性の阻害剤、阻害剤SMAD(例えば、SMAD6、SMAD7、SMAD10)の1つ以上の過剰発現、または受容体SMAD(SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、SMAD8/9)の1つのRNAiを用いてもまた達成され得る。神経前駆体を作製することに好適であると予想される因子の別の組み合わせは、白血病阻害因子(LIF)、GSK3阻害剤(CHIR99021)、化合物E(γセクレターゼ阻害剤XXI)、およびTGFβ阻害剤SB431542のカクテルを含み、これは神経堤幹細胞を作製することに有効であることが以前に示されている(Li et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 May 17; 108(20):8299-304)。追加の例示的な因子は、SB431542の誘導体、例えば1つ以上の追加されるかまたは異なる置換基、アナログ的な官能基などを包含し、且つ1つ以上のSMAD蛋白質に及ぼす同様の阻害効果を有する分子を包含し得る。好適な因子または因子の組み合わせは、例えば、多能性細胞を前記の因子(単数または複数)と接触させることと、EF前駆体細胞表現型の採択、例えば特徴的な遺伝子発現(本明細書に記載されるマーカーの発現、EF前駆体細胞プロモーターに連結されたレポーター遺伝子の発現、または同類を包含する)、または網膜神経前駆体細胞、RG前駆体細胞、もしくはRG細胞などの本明細書において開示される細胞型を形成する能力をモニターすることとによって同定され得る。
【0179】
好ましくは、細胞は、神経分化培地による培養に先立って網膜誘導培地によって処置または培養される。
【0180】
神経分化(ND)培地。神経分化(ND)培地は多能性幹細胞を眼領域(EF)前駆体細胞に分化させるために用いられる。ND培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)または表1に提供されているNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース(任意に0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/ml)、ペニシリン(任意に0~100単位/mlの間または約100単位/ml)およびストレプトマイシン(任意に0~100μg/mlの間または約100μg/ml)などの1つ以上の抗生物質、GlutaMAX(商標)(任意に1×、およそ2mM)、N2サプリメント(任意に0.1~5%v/vまたは0.1~2%v/v。1%v/vを包含する)およびB27サプリメント(任意に0.05~2%v/v。2%v/vを包含する)などの1つ以上の血清サプリメント、MEM非必須アミノ酸溶液(任意にストック溶液から1×濃度、またはおよそ0.1mMの終濃度)、ならびに任意にNogginポリペプチド(任意に10~500ng/ml。50ng/mlを包含する)を含む。
【0181】
神経節細胞(GC)培地。神経節細胞(GC)培地は、多能性幹細胞を網膜神経節(RG)前駆体細胞に分化させるために、より具体的には眼領域前駆体細胞を網膜神経節(RG)前駆体細胞に分化させるために用いられる。GC培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)または表1に提供されるNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース(任意に0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/ml)、ペニシリン(任意に0~100単位/mlの間または約100単位/ml)およびストレプトマイシン(任意に0~100μg/mlの間または約100μg/ml)などの1つ以上の抗生物質、GlutaMAX(商標)(任意に1×またはおよそ2mM)、N2サプリメント(任意に0.1~5%v/vまたは0.1~2%v/v。1%v/vを包含する)およびB27サプリメント(調合080085-SA)(任意に0.5~2%v/v。2%v/vを包含する)などの1つ以上の血清サプリメント、ならびにフォルスコリン(任意に1~20μM。5μMを包含する)、BDNF(任意に1~200ng/ml。10ng/mlを包含する)、およびCNTF(任意に1~200ng/ml。10ng/mlを包含する)の1つ以上を含む。
【0182】
網膜神経節細胞(RGC)分化培地。RGC分化培地は、多能性幹細胞を網膜神経節(RG)細胞に分化させるために、より具体的にはRG前駆体細胞をRG細胞に分化させるために用いられる。RGC分化培地は、基本培地、例えばNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)または表1に提供されるNeurobasal(商標)培地の構成要素を含む培地、D-グルコース(任意に0~10mg/mlの間、2.5~7.5mg/ml、3~6mg/ml、4~5mg/ml、または約4.5mg/ml)、ペニシリン(任意に0~100単位/mlの間または約100単位/ml)およびストレプトマイシン(任意に0~100μg/mlの間または約100μg/ml)などの1つ以上の抗生物質、B-27サプリメント(調合080085-SA)などの1つ以上の血清サプリメント(任意に約0.05から5.0%、約1.5から2.5%、または約2%(v/v)で)、GlutaMAX(商標)(任意に1×または約2mM)、ならびにフォルスコリン(任意に1~20μM。5μMを包含する)、BDNF(任意に1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/ml)、CNTF(任意に1~200ng/mlまたは5~50ng/mlまたは5~25ng/mlまたは約10ng/ml)、cAMP(任意に1~500ng/mlまたは10~250ng/mlまたは5~150ng/mlまたは約100ng/ml)、DAPT(任意に1~100μMまたは1~20μM)、および任意にレチノイン酸(任意に0.5~20μMまたは1~5μM)の全てを包含する1つ以上を含む。BDNFはヒトBDNFであり得る。CTNFはヒトCTNFであり得る。RGC分化培地はBDNFおよびCNTFの1つまたは両方を含み得る。RGC分化培地は、フォルスコリン、cAMP、およびDAPT、または他のNotch阻害剤の全てを包含する1つ以上を含み得る。RGC分化培地は、ヒトインスリンを包含するインスリンを含み得る(任意に約5~50μg/mlまたは約20μg/ml)。
【0183】
DMEM/F12、Neurobasal(商標)培地(Life Technologies)、N2血清サプリメント、ならびにB27血清サプリメントおよびB27血清サプリメント(調合080085-SA)の構成要素は表1に提供されている。本発明が、これらの特定の培地およびサプリメント、またはそれらの構成要素を含むか、本質的にそれらからなるか、もしくはそれらからなる培地もしくはサプリメントの使用を企図するということは理解されるべきである。
【0184】
細胞調製物およびその純度
本明細書において用いられる用語の調製物は、特に細胞調製物に関しては、用語の集団および組成物と交換可能に用いられる。簡略のために、側面および態様は調製物の観点で記載され得るが、かかる記載が等しく集団および組成物にも当てはまるということは理解されるべきである。調製物が他の非細胞置換物を含み得るということは理解されるべきである。
【0185】
本開示を通して用いられる細胞調製物の純度のレベルは、調製物中の細胞の総数に対して相対的に、所望の細胞型の1つ以上のマーカー(本願において同定されるマーカーまたは当分野において公知の他のものを包含する)を発現する調製物中の細胞の割合として定量され得る。純度は、関心の1つ以上のマーカーを発現する細胞および/または発現しない細胞を検出し数え上げることによって判定され得、任意に総細胞数を数え上げる。細胞を数え上げるために用いられ得る例示的な方法は、限定なしに、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、免疫組織化学、インシチュハイブリダイゼーション、および当分野において公知の他の好適な方法を包含する。典型的には、かかる分析は調製物中の生存不能細胞を除外する。
【0186】
本明細書において用いられる細胞の大多数は少なくとも50%を意味し、態様に依存して、細胞の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%を包含し得る。
【0187】
本開示は、開示される方法が多能性幹細胞などだがこれに限定されない前駆体細胞を直接分化させる能力に基づいて、種々の細胞集団の実質的に純粋な(または均質な)調製物を提供する。本明細書において用いられる指向的な分化は、前駆体細胞集団が、部分的にはかかる前駆体細胞に提供される因子または他の刺激によって、所望の系譜にまたはそれに向かって分化し、それによって、他の望まれない、それゆえに潜在的に混入して来る系譜への分化を回避するということを意図する。本明細書において提供される方法は、胚様体(EB)を作製することなしに、例えば多能性幹細胞から眼領域前駆体への分化を駆動する。EBは下に記載されるように3次元の細胞クラスターであり、これは胚性幹(ES)細胞を包含するがこれに限定されない多能性幹細胞の分化の間に形成し得、且つ典型的には前駆体を包含する中胚葉、外胚葉、および内肺葉系譜の細胞を含有する。EBの3次元的性質は、非EB系の本明細書に記載される方法において起こるものとは異なる、異なる細胞-細胞相互作用および異なる細胞-細胞シグナル伝達を包含する環境を作り出し得る。加えて、EB内の細胞は、周囲の培地中に存在する分化因子などの外因的に追加される薬剤の同様の用量を全てが受け得ず、これはEBの発生の間に種々の分化イベントおよび決定をもたらし得る。
【0188】
対照的に、前駆体細胞を培養する本発明の培養方法はEB形成を要求せず、好ましくはそれを回避する。代わりに、それらの方法は、かかる培地中の因子を包含する周囲の培地との等しい接触を細胞に提供する条件下で細胞を培養する。例として、細胞は、培養表面に接着した単層またはほぼ単層として生育し得る。
【0189】
前駆体細胞の全てまたは大多数がそれらの周囲の培地、それゆえにかかる培地中の因子とおよそ等しい程度に接触する能力は、それらの前駆体細胞が同様の時間に同様の程度に分化することをもたらす。前駆体細胞の集団のこの同様の分化時系列は、かかる細胞が同調しているということを示している。いくつかの場合には、細胞は細胞周期同調もまたされ得る。かかる同調性は、それらの細胞構成が均質またはほぼ均質である細胞の集団をもたらす。例として、本明細書に記載される方法は、細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%が関心の特定の細胞である細胞集団を生じ得る。関心の細胞は表現型的に、例えば細胞内または細胞外マーカー発現によって定められ得る。関心の細胞は眼領域前駆体細胞、RG前駆体細胞(初期または後期にかかわらない)、またはRG細胞であり得る。
【0190】
本明細書において用いられる「細胞の実質的に純粋な調製物」は、細胞が少なくとも60%純粋である細胞の調製物を言う。それゆえに、調製物中の細胞の少なくとも60%が特定の細胞型の1つ以上のマーカーを発現する(本願において同定されるマーカーまたは当分野において公知の他のものを包含する)。細胞は少なくとも65%純粋または少なくとも70%純粋であり得る。細胞は約70%超純粋であり得る(少なくとも75%、80%、85%、または90%純粋を包含する)。
【0191】
それゆえに、例えば「RG細胞の実質的に純粋な調製物」は、調製物中の細胞の少なくとも60%がRG細胞の1つ以上のマーカーを発現する(本願において同定されるマーカーまたは当分野において公知の他のものを包含する)細胞の調製物を言う。調製物中の細胞の少なくとも70%はRG細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は70%純粋である。調製物中の細胞の少なくとも85%はRG細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は85%純粋である。調製物中の細胞の少なくとも95%はRG細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は95%純粋である。いくつかの態様において、調製物は約85%から95%純粋であり得る。
【0192】
別の例として、「RG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物」は、調製物中の細胞の少なくとも60%がRG前駆体細胞の1つ以上のマーカー(本願において同定されるマーカーまたは当分野において公知の他のものを包含する)を発現する細胞の調製物を言う。調製物中の細胞の少なくとも70%はRG前駆体細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は70%純粋である。調製物中の細胞の少なくとも85%はRG前駆体細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は85%純粋である。調製物中の細胞の少なくとも95%はRG前駆体細胞の1つ以上のマーカーを発現し得、このケースでは、調製物は95%純粋である。いくつかの態様において、調製物は約85%から95%純粋であり得る。
【0193】
本開示のある種の態様において、RG前駆体細胞およびRG細胞を包含するがこれに限定されない細胞は、7kb、7.5kb、8kb、8.5kb、9kb、9.5kb、10kb、10.5kb、11kb、11.5kb、またはさらには12kbよりも長い平均末端制限断片長(TRF)を有する。平均末端制限断片長(TRF)を測定するための方法は当分野において公知である。例えばKimura et al. Nat. Protocol, 5(9): 1596-1607, 2010参照。
【0194】
発生ステージの関数としての細胞マーカー発現
Pax6、Rx1、Six3、Six6、Lhx2、Tbx3、Sox2、Chx10、Math5、Brn3aおよびBrn3bを包含するBrn3、Isl1、ニューロフィラメント、Tuj1、Thy1、ネスチン、Otx2、Nanog、Oct4などだがこれに限定されないマーカーの発現が、蛋白質および/またはmRNAで評価され得る(Fischer AJ, Reh TA, Dev Neurosci. 2001:23(4-5):268-76、Baumer et al., Development. 2003 Jul;130(13):2903-15、Swaroop et al., Nat Rev Neurosci. 2010 Aug; 11(8):563-76、Agathocleous and Harris, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 2009. 25:45-69、Beby F, Lamonerie T, Exp. Eye Res. 2013; 111, 9-16参照。そのそれぞれはその全体が参照によってここに組み込まれる)。
【0195】
マーカーは、一般的には、例えば文脈が別様に示すところを除き、ヒトである。細胞マーカーは従来の免疫細胞化学的方法または従来のPCR方法を用いて同定され得、それらの手法は当業者に周知である。
【0196】
多能性幹細胞
本明細書において用いられる用語「多能性幹細胞」は、(a)免疫不全(SCID)マウスに移植されたときにテラトーマを誘導でき、(b)3つの胚葉全ての細胞型(例えば、外胚葉、中胚葉、および内肺葉細胞型)に分化でき、(c)多能性の1つ以上のマーカー(例えば、Oct4、アルカリホスファターゼ、SSEA-3表面抗原、SSEA-4表面抗原、nanog、TRA-1-60、TRA-1-81、SOX2、REX1など)を発現する細胞である。ある種の態様において、多能性幹細胞は、OCT-4、アルカリホスファターゼ、SSEA-3、SSEA-4、TRA-1-60、およびTRA-1-81からなる群から選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0197】
多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞、胚由来幹細胞、胚性生殖(EG)細胞、胚性癌(EC)細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、および刺激惹起性多能性獲得(STAP)細胞を包含する。例示的な多能性幹細胞は当分野において公知の方法のいずれかの種類を用いて作製され得る。当分野において認められるであろう通り、胚様体はとりわけES細胞またはEG細胞から形成され得る。当分野においてまた認められるであろう通り、ES細胞は胚の破壊なしに作製され得る。例えば、ES細胞は非胚である単為発生卵(卵細胞)から作製され得、ES細胞は生存不能である(例えば、インプラントをできない)ように故意に操作されたものを包含する生存不能胚から作製され得、ES細胞は生存不能胚を包含する胚の単一の割球から作製され得る。
【0198】
多能性幹細胞は、寿命、多能性、および/もしくはホーミングを増大させるように、ならびに/または同種免疫反応を防止もしくは低減するように、ならびに/または多能性幹細胞の分化した子孫に所望の因子を送達するように、ならびに/または多能性幹細胞の分化した子孫において所望の因子を発現するように改変され得、遺伝子改変を包含する。
【0199】
多能性幹細胞はいずれかの種からであり得る。ES細胞およびiPS細胞を包含する多能性幹細胞の種々の型が、マウス、ヒト、および他のソースから作製されて来た。従って、本方法に用いられる多能性幹細胞は、限定なしに、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス、ラット)、有蹄類(ウシ、羊など)、犬(飼育下および野生の犬)、猫(飼育下および野生の猫、例えばライオン、虎、チーター)、ウサギ、ハムスター、ヤギ、象、パンダ(ジャイアントパンダを包含する)、ブタ、アライグマ、馬、シマウマ、海棲哺乳動物(イルカ、鯨など)、および同類を包含するいずれかの種から得られる。ある種の態様において、種は絶滅危惧種である。ある種の態様において、種は現在絶滅種である。
【0200】
胚性幹(ES)細胞。胚性幹細胞は、それらのソースまたはそれらを生ずるために用いられる特定の方法にかかわらず、(i)全ての3つの胚葉の細胞に分化することができ、(ii)少なくともOct4およびアルカリホスファターゼを発現し、(iii)免疫不全動物に移植されたときにはテラトーマを生ずることができる細胞である。用語は、細胞株として連続継代されたものを包含するヒト胚盤胞または桑実胚の内部細胞塊(ICM)に由来する細胞、精子と卵細胞との人為的融合、精子による卵細胞の受精、体細胞核移植(SCNT)などの核移植、単為発生、雄性発生によって、またはクロマチンのリプログラミングとリプログラミングされたクロマチンの細胞への爾後の組み込みとによって生じた接合体、(例えば卵割ステージまたは桑実胚ステージ胚の)割球、または胚盤胞ステージの哺乳動物胚に由来する細胞を包含する。
【0201】
用語のES細胞は、細胞が胚の破壊によって作製されたということを言わんとするものではなく、それを意味すると推量されるべきではない。反対に、ヒト胚などの胚の破壊なしにES細胞を作製するために種々の方法が利用可能であり、用いられ得る。例として、ES細胞は、着床前診断(PGD)のための割球の採取と同様の様式で、胚に由来する単一の割球から作製され得る。かかる細胞株の例はNED1、NED2、NED3、NED4、NED5、およびNED7を包含する。用いられ得る例示的なヒト胚性幹細胞株はMA09細胞である。MA09細胞の単離および調製はKlimanskaya, et al. (2006) Human Embryonic Stem Cell Lines Derived from Single Blastomeres. Nature 444: 481-485、およびChung et al. (2008) Human Embryonic Stem Cell Lines Generated without Embryo Destruction, Cell Stem Cell, 2(2): 113-117に以前に記載されている。これらの株の全ては胚の破壊なしに作製された。
【0202】
用いられ得る追加のES細胞は、限定なしに、MA01、MA09、ACT-4、MA142、MA143、MA144、MA145、MA146、MA126(NED1)、MA127、(NED2)、MA128、(NED3)、MA129、(NED4)、NED7、No.3、H1、H7、H9、H14、およびACT30-ES細胞などのヒトES細胞を包含する。
【0203】
参照はNIHヒト胚性幹細胞レジストリにもまたされ得る。本開示に従って用いられるヒトES細胞は当分野において公知のGMP標準に従って誘導および維持され得る。
【0204】
本明細書において言及されるES細胞は、マウス、非ヒト霊長類の複数の種、およびヒトを包含する種々の種から誘導されており、胚由来幹細胞は数多くの追加の種から作製されている。
【0205】
人工多能性幹(iPS)細胞.人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、因子(本明細書においてはリプログラミング因子と言われる)の組み合わせを発現することによる体細胞のリプログラミングによって作製される細胞である。
【0206】
iPS細胞は、実質的にいずれかの発生ステージのいずれかの体細胞を出発点として用いて作製され得る。例えば、細胞は胚、胎児、新生児、若齢、または成体ドナーからであり得る。いくつかの場合には、細胞は新生児、若齢、もしくは成体ドナーからであるか、または羊水から得られ、それゆえに胚または胎児の破壊を要求しない。用いられ得る例示的な体細胞は、線維芽細胞、例えば皮膚サンプルまたは生検から得られる皮膚線維芽細胞、滑膜組織からの滑膜細胞、包皮細胞、頬細胞、および肺線維芽細胞を包含する。ある種の態様において、体細胞は線維芽細胞ではない。
【0207】
ある種の態様においては、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または少なくとも4つのリプログラミング因子が体細胞内で発現されて、体細胞を首尾よくリプログラミングする。リプログラミング因子はOct4(場合によってはOct3/4と言われる)、SOX2、c-Myc、Klf4、Nanog、およびLin28から選択され得るが、これらはあまり限定されない。いくつかの態様において、リプログラミング因子はOct4(場合によってはOct3/4と言われる)、SOX2、c-Myc、およびKlf4の組み合わせ、またはOct4、SOX2、Nanog、およびLin28の組み合わせを包含する。
【0208】
リプログラミング因子は種々の方法のいずれかを用いて体細胞内に導入され得、限定なしに、インテグレーションベクター、非インテグレーションベクター(例えば、Yu et al., Science. 2009 May 8;324(5928):797-801に記載されているものなどのエピソーマルプラスミド)、化学的手段、蛋白質導入、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、カチオン性両親媒性物質、脂質二重層との融合、界面活性剤透過処理など)、またはその組み合わせを包含する。加えて、リプログラミング因子の発現は、リプログラミング因子の発現を誘導する少なくとも1つの薬剤、例えば有機低分子薬剤と体細胞を接触させることによって誘導され得る。
【0209】
インテグレーションウイルスベクターを用いるOct3/4、SOX2、c-myc、およびKlf4の発現は、マウス体細胞をリプログラミングするために十分であることが示されている。インテグレーションウイルスベクターを用いるOct3/4、SOX2、NANOG、およびLin28の発現は、ヒト体細胞をリプログラミングするために十分であることが示されている。
【0210】
iPS細胞はセルバンクから得られる。iPS細胞は、具体的には、組織マッチングしたRG細胞またはRG前駆体細胞を作製する目的で、特定の患者またはマッチングしたドナーからの材料を用いて作製され得る。iPS細胞は意図されるレシピエントにおいて実質的に免疫原性ではない細胞から生じ得、例えば、自家細胞からまたは意図されるレシピエントと組織適合性の細胞から生じ得る。
【0211】
刺激惹起性多能性獲得(STAP)細胞。刺激惹起性多能性獲得(STAP)細胞は、低pH暴露などの準致死的な刺激によって体細胞をリプログラミングすることによって生ずる多能性幹細胞である。リプログラミングは体細胞への核移植またはその遺伝子操作を要求しない。Obokata et al., Nature, 505:676-680, 2014の参照がされ得る。
【0212】
成体幹細胞。「成体幹細胞」は成体組織から単離される多能性細胞を言い、骨髄幹細胞、臍帯血幹細胞、および脂肪幹細胞を包含し得、ヒト起源である。
【0213】
重要なことに、本発明の方法はEB分化ステップを使用していない(すなわち、分化は多能性幹細胞から網膜神経節細胞までEBの形成なしに起こる)。本明細書において論じられるように、かかる分化プロセスには思いがけない利点がある。
【0214】
「胚様体」は、多能性幹細胞(例えばiPSCまたはESC)を包含する細胞の塊またはクラスターを言い、これは、多能性幹細胞を非接着条件下で、例えば低接着基質上でまたは「ハンギングドロップ」によって培養することによって形成され得る。それらの培養物中で、多能性細胞は、胚様体と命名された細胞の塊またはクラスターを形成し得る。その全体が参照によってここに組み込まれるItskovitz-Eldor et al., Mol Med. 2000 Feb;6(2): 88-95参照。典型的には、胚様体は最初に多能性細胞の中実の塊またはクラスターとして形成し、経時的に、胚様体のいくつかは液で満たされた内腔を包含するようになり、後者の前者は文献では「単純」EB、後者は「嚢胞状」胚様体と言われる。
【0215】
適用および使用
スクリーニングアッセイ
本発明は、眼領域前駆体細胞から網膜神経節系譜に向かう分化を調節する種々の薬剤をスクリーニングするための方法を提供する。これは、眼領域前駆体細胞からの培養によって作製され得るRG前駆体細胞を支持および/またはレスキューする治療薬剤を発見するためにもまた用いられ得る。
【0216】
本発明は、RG前駆体細胞の分化を調節する種々の薬剤をスクリーニングするための方法を提供する。これは、RG前駆体細胞からの培養によって作製される成熟RG細胞を支持および/またはレスキューする治療薬剤を発見するためにもまた用いられ得る。
【0217】
本発明の目的には、「薬剤」は、生物系または化学系化合物、例えば単純もしくは複雑な有機もしくは無機分子、ペプチド、蛋白質(例えば抗体)、ポリヌクレオチド(例えばアンチセンス、RNA干渉(RNAi、shRNA、マイクロRNA))、またはリボザイムを包含することが意図されるが、これらに限定されない。さまざまな化合物例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドなどのポリマー、ならびに種々のコア構造に基づく合成有機化合物が合成され得、それらもまた用語「薬剤」に包含される。加えて、種々の天然のソースは、植物または動物抽出物および同類などのスクリーニングのための化合物を提供し得る。常に明確に書かれはしないが、薬剤が、単独で、または本発明のスクリーニングによって同定される薬剤と同じかもしくは異なる生物活性を有する別の薬剤との組み合わせで用いられるということは理解されるべきである。
【0218】
スクリーニング方法をインビトロで行うために、細胞の単離された集団が本明細書に記載されるように得られる。薬剤がDNAまたはRNA以外の組成物、例えば上に記載されている低分子であるときには、薬剤は直接に細胞に追加されるか、または追加のための培養培地に追加され得る。当業者に明らかである通り、経験的に決定され得る「有効」量が追加されなくてはならない。薬剤がポリヌクレオチドであるときには、これは遺伝子銃またはエレクトロポレーションの使用によって直接に追加され得る。代替的に、これは、遺伝子送達基剤または上に記載されている他の方法を用いて細胞内に挿入され得る。薬物または他の薬剤の主張する活性を確認するために、正および負のコントロールがアッセイされ得る。
【0219】
薬物スクリーニング
本発明の別の側面は、上昇したIOP、グルタミン酸毒性、または元来の網膜神経節細胞およびそれらの前駆体の機能喪失もしくは細胞死を引き起こし得る他の環境的もしくは遺伝学的条件の効果いずれかから神経節を保護することができる薬物を同定するためのアッセイの開発および使用に関する。保護は、例えばそれらの種々の効果に対する神経節の感度を低減することによって達成され得る。他の態様においては、アッセイは、元来の網膜神経節細胞および/またはそれらの前駆体の増殖を促進するおよび/または元来の網膜神経節前駆体から成熟網膜神経節細胞への分化/成熟を誘導し得る薬剤を同定するために用いられ得る。これらのアッセイによって試験され得る薬剤は、低分子(例えば、有機化合物は10,000原子質量単位(amu)未満の分子量を有する)、蛋白質およびペプチド、核酸などを包含するが、これに限定されない。試験されるべき薬剤は、例えば細菌、酵母、もしくは他の生物によって生ずるか(例えば天然産物)、化学的に生ずるか(例えば、ペプチドミメティックを包含する低分子)、または組換え的に生じ得る。
【0220】
例えば、アッセイは、化合物が培養中の網膜神経節細胞(例えば、本明細書において提供される方法を用いて多能性幹細胞、眼領域前駆体、またはRG前駆体細胞の分化によって誘導され得る)をグルタミン酸によって誘導される毒性から保護する能力を評価し得る。種々のアッセイフォーマットが用をなし、本開示に照らして、本明細書に明白に記載されてはいないものもやはり当業者には理解されるであろう。化合物および天然の抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいては、所与の時間内に調査される化合物の数を最大化するためにハイスループットアッセイが望ましい。試験薬剤の保護活性の検出および定量は、例えばアポトーシスのマーカーの相対的変化を検出することによって実施され得る。保護性である薬剤は、コントロールの未処置細胞に対して相対的に、上昇したグルタミン酸レベルなどの神経毒性条件下でアポトーシスのマーカーの発現の率/レベルの減少を生ずるはずである。薬剤の有効性は、試験化合物の種々の濃度を用いて得られるデータから用量反応曲線を作成することによって評価され得る。コントロールアッセイもまた比較のためのベースラインを提供するために実施され得る。コントロールアッセイでは、アポトーシスの程度が試験化合物の不在下で定量化され得る。一般的に、反応物が混ぜられ得る順序は変えられ得、同時に混ぜられ得るということは理解されるであろう。
【0221】
感覚神経網膜構造
RG前駆体細胞および任意にそれから分化したRG細胞は、網膜色素上皮(RPE)細胞、光受容体細胞、およびRG前駆体またはRG細胞そのものを包含する感覚神経網膜構造を作製するために用いられ得る。例えば、本発明は、RG細胞またはRG前駆体細胞、RPE細胞、および光受容体細胞(または光受容体前駆体細胞)からなる多層細胞構造の作製を企図する。それらの構造は薬物スクリーニングに、疾患のモデルとして、または医薬調製物に用いられ得る。後者のケースでは、医薬調製物はRPE-光受容体-RGグラフトであり得、これは「パッチ」のようにインプラントされ得る生体適合性の固体支持体またはマトリックス(好ましくは生体吸収性マトリックスまたは支持体)上に配置され得る。
【0222】
RG細胞またはRG前駆体細胞が網膜神経前駆体(例えばChx10(+)細胞)から光受容体と一緒に作製され得、それらの細胞がRPE細胞層(例えば単層)と一緒に移植され得るということがさらに企図される。
【0223】
さらに例示すると、細胞のための生体適合性の支持体は網膜前駆体細胞のための生分解性ポリエステルフィルム支持体であり得る。生分解性ポリエステルは、網膜前駆体細胞の増殖および分化を支持するための基質またはスキャホールドとしての使用に好適ないずれかの生分解性ポリエステルであり得る。ポリエステルは、薄いフィルム、好ましくはマイクロテクスチャー加工したフィルムを形成することができるべきであり、組織または細胞移植に用いられる場合には生分解性であるべきである。本発明への使用に好適な生分解性ポリエステルは、ポリ乳酸(PLA)、ポリラクチド、ポリヒドロキシアルカノアート、ホモポリマーおよびコポリマー両方、例えばポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ酪酸co-ヒドロキシバレラート(PHBV)、ポリヒドロキシ酪酸co-ヒドロキシヘキサノアート(polyhydroxybutyrate co-hydroxyhexanote)(PHBHx)、ポリヒドロキシ酪酸co-ヒドロキシオクタノアート(polyhydroxybutyrate co-hydroxyoctonoate)(PHBO)およびポリヒドロキシ酪酸co-ヒドロキシオクタデカノアート(PHBOd)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド(PEA)、脂肪族コポリエステル、例えばポリブチレンサクシナート(PBS)およびポリブチレンサクシナート/アジパート(PBSA)、芳香族コポリエステルを包含する。ブロック、分岐、またはランダムの高および低分子量ポリエステル両方、置換および無置換ポリエステル、ならびにポリエステル混合物およびブレンドが用いられ得る。好ましくは、生分解性ポリエステルはポリカプロラクトン(PCL)である。
【0224】
ある種の態様において、生体適合性の支持体はポリ(p-キシリレン)ポリマー、例えばパリレンN、パリレンD、パリレンC、パリレンAF-4、パリレンSF、パリレンHT、パリレンVT-4、およびパリレンCF、最も好ましくはパリレンCである。
【0225】
ポリマー製支持体は、典型的には公知の手法を用いて薄いフィルムに形成され得る。フィルム厚は、有利には約1ミクロンから約50ミクロン、好ましくは約5ミクロン厚である。フィルムの表面は平滑であり得るか、またはフィルム表面は部分的にまたは完全にマイクロテクスチャー加工され得る。好適な表面テクスチャーは例えば微小溝または微小柱を包含する。フィルムはインプラントに好適な形状を形成するために裁断および成形され得る。
【0226】
RPE、光受容体細胞または光受容体前駆体細胞、ならびにRG前駆体細胞および/またはRG細胞は、生体適合性のスキャホールドを形成するために、直接に、一緒に、または順次フィルム上にプレーティングされ得る(例えば、RPE層の後に光受容体細胞または光受容体前駆体細胞が形成される)。代替的に、ポリマーフィルムは、好適なコーティング材料、例えばポリ-D-リジン、ポリ-L-リジン、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンI、コラーゲンIV、ビトロネクチン、およびマトリゲル(商標)によってコーティングされ得る。細胞はいずれかの所望の密度にプレーティングされ得るが、RPE細胞の単一の層(RPE単層)が好ましい。
【0227】
治療的使用
例示的な態様において、細胞は、その必要があるラット、例えば高眼内圧ラット、または疾患の他の動物モデルに移植され得、視覚機能に及ぼすもたらされる効果が視運動反応試験、ERG(網膜電図法)、輝度閾値記録、および/または視覚中枢血流アッセイによって検出され得る。
【0228】
本明細書において用いられる疾患の「徴候」は、広く、患者の検査によって発見可能な疾患を示すいずれかの異常を言う。疾患の主観的目安である症状とは対照的に、疾患の客観的目安である。
【0229】
本明細書において用いられる疾患の「症状」は、広く、患者によって経験される疾患を示すいずれかの病的現象または構造、機能、もしくは感覚の正常からの逸脱を言う。
【0230】
本明細書において用いられる「治療(therapy)」、「治療(therapeutic)」、「処置する(treating)」、「処置する(treat)」、または「処置」は、広く、疾患を処置すること、疾患もしくはその臨床的な症状の発生を阻止もしくは低減すること、および/または疾患を緩和し、疾患もしくはその臨床的な症状の後退を引き起こすことを言う。治療は、疾患、疾患の徴候、および/または症状の予防、防止、処置、治癒、救済、低減、軽減、および/またはその緩和を提供することを包摂する。治療は、進行中の疾患徴候および/または症状がある患者の徴候および/または症状の軽減を包摂する。治療は「予防」および「防止」をもまた包摂する。予防は、患者の疾患の処置の爾後に起こる疾患を防止すること、または患者の疾患の発生率または重度を低減することを包含する。用語「低減された」は、治療の目的のためには、広く、徴候および/または症状の臨床的な有意な低減を言う。治療は、再発または反復性の徴候および/もしくは症状を処置することを包含する。治療は、徴候および/または症状の出現をいつでも妨げることと、存在している徴候および/または症状を低減することと、存在している徴候および/または症状を無くすこととを包摂するが、これに限定されない。治療は、慢性疾患(「維持」)および急性疾患を処置することを包含する。例えば、処置は、再発または徴候および/もしくは症状の反復を処置または防止することを包含する。
【0231】
いくつかの態様において、処置は、安定なもしくは改善した暗所閾値電位(scoptic threshold response)、安定なもしくは改善した視運動性反射(OKR)、安定なもしくは改善した視覚誘発電位(VEP)、および/または安定なもしくは改善した視力(例えばERGによって測定される)によって示され得る。安定なまたは改善したレベルは、処置前のレベルに対して相対的、または反対側の眼などの無処置のコントロールに対して相対的である。いくつかの場合には、これらの機能または応答の1つ以上が処置の不在下では経時的に悪化するであろうということと、本発明の移植される細胞がその悪化を妨害、低減、または限定し得るということとが理解されるべきである。それゆえに、いくつかの場合には、機能または応答はコントロールに対して相対的に安定なままであり、一方で、他の場合にはそれは改善し、両方の状況とも対象にとって有益であると考えられ、それゆえに処置と見なされる。
【0232】
これらおよび他の態様において、対象はその網膜神経節細胞層にとっての基礎的な利益を経験し得る。例えば、元来のRG細胞層はコントロールと比較して改善した生存または低減された細胞喪失を経験し得る。なお他の態様において、対象は視神経の軸索の増大した形成を経験し得る。
【0233】
本発明は、この処置の必要がある患者のRG細胞を取りかえるかまたは修復するための方法をもまた提供し、本発明のRG前駆体細胞もしくはそれに由来するRG細胞またはその組み合わせを包含する医薬調製物を患者に投与することを含む。本明細書に記載されるように、医薬調製物は細胞の懸濁液、またはインビトロで移植可能な組織に形成される細胞であり得る。多くの場合に、細胞は眼内注射によって投与されるであろう(硝子体注射および網膜下注射を包含する)。それゆえに、細胞は有疾患または変性網膜の網膜下腔に眼内投与され得る。しかしながら、RG前駆体細胞はニューロン保護効果をもまた有するので、細胞は、局所だが網膜の外に(例えば硝子体内に)、または体の他の部分へのデポットもしくは全身送達によって投与され得る。
【0234】
本発明の医薬調製物は、網膜変性関連疾患を包含する視覚系の悪化をもたらす多種多様な疾患および障害に用いられ得る。かかる疾患および障害は加齢によって引き起こされ得、その結果、悪化の実質的なソースとして同定可能である損傷または疾患の不在があるように見える。当業者は、かかる疾患状態を診断および/またはかかる損傷の公知の徴候を検査するための立証された方法を理解するであろう。加えて、文献は動物の視覚系の側面の加齢性の減退または悪化の情報に事欠かない。用語「網膜変性関連疾患」は、先天または生後の網膜変性または異常からもたらされるいずれかの疾患を言うことを意図される。網膜変性関連疾患の例は、網膜異形成症、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、先天性網膜ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、網膜剥離、緑内障、視神経症、および外傷を包含する。
【0235】
加えてまたは代替的に、感覚神経網膜などの視覚系構成要素の悪化は、視覚系そのもの(例えば眼)、頭部もしくは脳、またはより一般的に体の損傷、例えば外傷によって引き起こされ得る。ある種のかかる損傷は加齢性の損傷であることが公知であり、すなわちそれらの見込みまたは頻度は年齢によって増大する。かかる損傷の例は網膜裂孔、黄斑円孔、網膜上膜、および網膜剥離を包含する。そのそれぞれはいずれかの年齢の動物において起こり得るが、さもなければ健康な高齢の動物を包含する高齢の動物において起こる見込みがより高いか、または起こる。他の場合には、視覚系構成要素の悪化が虚血および/または再灌流損傷によってより高い頻度で起こり得る。
【0236】
視覚系またはその構成要素の悪化は疾患によってもまた引き起こされ得る。疾患には、視覚系に影響する種々の加齢性疾患が包含される。かかる疾患は、若年者よりも高齢の動物においてより高い見込みおよび/または頻度で起こる。例えば感覚神経網膜層を包含する視覚系に影響し、その悪化を引き起こし得る疾患の例は、種々の形態の網膜炎、視神経炎、黄斑変性、増殖性もしくは非増殖性の糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、進行性網膜萎縮症、進行性網膜変性、突発性後天性網膜変性、免疫介在性網膜症、網膜異形成症、脈絡網膜炎、網膜虚血、網膜出血(網膜前、網膜内、および/または網膜下)、高血圧性網膜症、網膜炎症、網膜浮腫、網膜芽細胞腫、または網膜色素変性症である。
【0237】
前述の疾患のいくつかは、伴侶動物などのある種の動物、例えば犬および/または猫に特異的である傾向がある。疾患のいくつかは総称的に挙げられており、すなわち網膜炎または網膜出血の多くの型があり得る。それゆえに、疾患のいくつかは1つの特異的な病因によって引き起こされるのではなく、疾患の型または結果をより描写している。視覚系の1つ以上の構成要素の減退または悪化を引き起こし得る疾患の多くは、動物の視覚系に及ぼす一次および二次両方またはより遠隔の効果を有し得る。
【0238】
有利には、本発明の医薬調製物はいくつもの状態を処置または改善するために用いられ得、虚血再灌流損傷、網膜血管疾患、視神経損傷(自己免疫、外傷、および/またはウイルス系にかかわらない)、緑内障(型にかかわらない)、糖尿病網膜症(低酸素性および血管新生系にかかわらない)、遺伝性神経節変性、および遺伝性視神経症(例えばレーベル遺伝性視神経症(LHON)またはレーベル視神経萎縮症)を包含するが、これに限定されない。
【0239】
1つの側面において、細胞は、処置の必要がある患者の前述の状態のいずれかの症状を処置または軽減し得る。細胞は患者にとって自家または同種であり得る。さらなる側面において、本発明の細胞は他の処置との組み合わせで投与され得る。
【0240】
本発明のRG前駆体細胞は変性疾患の処置に使用を見いだす。細胞は、それらが意図される眼の部位、例えば網膜の神経節細胞層に生着または遊走し、機能的に不完全なエリアを再構成または再生することを可能にする様式で投与される。
【0241】
遺伝子操作されたRG前駆体細胞またはRG細胞もまた、遺伝子産物を変性の部位に標的化するために用いられ得、例えば、分泌性の生物活性蛋白質、ペプチド、もしくは核酸(例えばRNA干渉分子またはアプタマー)、または同類をコードする1つ以上の遺伝子によって操作され得る。それらの遺伝子産物は、元来の変性して行くニューロンをレスキューする生存促進因子、グラフトされた細胞の生存および部位特異的ニューロンへの分化を促進または神経伝達物質(単数または複数)を送達して、機能的な回復を可能にするように自己分泌様式で作用し得る因子を包含し得る。例えば、1つ以上の生物活性分子(単数または複数)は、抗血管新生抗体および分子、抗血管新生抗体スキャホールド、可溶性の受容体、免疫経路分子を標的化および阻害または調節する薬剤、成長因子阻害剤、成長因子、神経栄養因子、血管新生因子、神経伝達物質、ホルモン、酵素、抗炎症性因子、または他の治療蛋白質を包含し得る。種々の態様において、かかる分子は、C3a阻害剤、C3b阻害剤、免疫経路分子を標的化および阻害または調節する他の薬剤、脳由来神経栄養因子(BDNF)、NT-4、毛様体神経栄養因子(CNTF)、Axokine、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、インスリン様成長因子I(IGFI)、インスリン様成長因子II(IGFII)、酸性線維芽細胞成長因子(aFGF)、線維芽細胞成長因子(aFGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング成長因子アルファ.(TGF-アルファ)、トランスフォーミング成長因子ベータ(TGF-ベータ)、神経成長因子(NGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、ミッドカイン、チルホスチン(tryophotin)、アクチビン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、インターロイキン、骨形成蛋白質、マクロファージ炎症性蛋白質、ヘパリン硫酸、amphiregulin、レチノイン酸、腫瘍壊死因子.アルファ.、線維芽細胞成長因子受容体、上皮成長因子受容体(EGFR)、PEDF、LEDGF、NTN、Neublastin、ニューロトロフィン、リンホカイン、VEGF阻害剤、PDGF阻害剤、胎盤成長因子(PIGF)阻害剤、Tie2、CD55、C59、VEGFおよびPDGFに同時に結合する二重特異性分子、ならびに潜在的な標的組織に及ぼす治療に有用な効果を有すると予想される他の薬剤を包含するが、これに限定されない。ある種の好ましい態様において、組換え操作されたRG前駆体細胞またはRG細胞は1つ以上の組換え成長因子およびニューロトロフィン、例えばFGF2、NGF、毛様体神経栄養因子(CNTF)、および脳由来神経栄養因子(BDNF)を発現するように操作され、これらの因子は、細胞死のプロセスを有意に遅くするということが網膜変性のモデルにおいて示されている。成長因子または成長因子の組み合わせを合成するように操作されたRG前駆体および/またはRG細胞を用いる治療は、ニューロン保護因子の持続的送達を保証するのみならず、損傷した網膜をもまた再構築し得る。
【0242】
ある種の態様において、RG前駆体またはRG細胞を操作するために用いられる遺伝子構築物は、神経節細胞死および/または緑内障を促進する条件、例えば上昇した眼内圧(IOP)、グルタミン酸の上昇したレベルなどに対して感受性である転写および/または翻訳コントロールエレメント(例えば、エンハンサーまたはプロモーター)を包含し得る。上昇したIOPに対して感受性の例示的なプロモーターは、マトリックスGla蛋白質(MGP)遺伝子からのプロモーターである(例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれるGonzalez et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science, May 2004, 45(5): 1389参照)。選択的な標的化は、キチナーゼ3様1(「Ch3L1」)遺伝子の5’プロモーター領域を用いて、TMの最外部の前および後部を特異的に指向する発現によってもまた達成されている(Liton et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005, 46: 183。参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。さらに、小柱網の数多くの遺伝子プロファイリング研究が発表されており、小柱網細胞選択的なプロモーターの追加の代替的な構成を提供している(Gonzalez et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2000, 41:3678-3693、Wirtz et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2002, 43:3698、Tomarev et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2003, 44:2588-2596、Liton et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2005, 46:183、Liton et al., Mol Vis. 2006, 12:774、Fan et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2008, 49:1886、Fuchshofer et al., Exp Eye Res. 2009, 88: 1020、Paylakhi et al., Mol Vis. 2012, 18:241、およびLiu et al., Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013, 54:6382。そのそれぞれはその全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0243】
本発明の方法において、移植されるべき細胞は、ヒト投与のための十分に無菌の条件下で調製された等張性の賦形剤を含むいずれかの生理的に許容される賦形剤によってレシピエントに移入される。薬用製剤の一般的原則については、読者はCell Therapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and Cellular Immunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan eds, Cambridge University Press, 1996を参照されたい。細胞の賦形剤および組成物のいずれかの付随する要素の選択は、投与に用いられる経路およびデバイスに従って適用されるであろう。細胞は注射、カテーテル、または同類によって導入され得る。細胞は液体窒素温度で凍結され、長時間保存され得、解凍時の使用ができる。凍結される場合に、細胞は10%のDMSO、50%のFCS、40%のRPMI1640培地中で保存され得る。好ましい態様において、細胞はCryostor CS10などのアニマルフリー極低温保存緩衝液中で保存されるであろう。
【0244】
本発明の医薬調製物は、任意に、所望の目的のための説明書のある好適な容器内にパッケージングされる。かかる製剤は、網膜分化および/または栄養因子のカクテルを、RG前駆体またはRG細胞との組み合わせに好適な形態で含み得る。かかる組成物は、動物への移入に適当な好適な緩衝液および/または賦形剤をさらに含み得る。かかる組成物はさらにグラフトされるべき細胞をもまた含み得る。
【0245】
医薬調製物
RG前駆体細胞またはRG細胞は医薬的に許容される担体と調合され得る。例えば、RG前駆体細胞またはRG細胞は単独でまたは医薬製剤の構成要素として投与され得る。対象化合物は、医療への使用にとっていずれかの好都合なやり方での投与のために調合され得る。投与に好適な医薬調製物は、RG前駆体細胞またはRG細胞を、1つ以上の医薬的に許容される無菌の等張性の水性もしくは非水性溶液(例えば平衡塩溶液(BSS))、分散液、懸濁液、もしくはエマルション、または使用の直前に無菌の注射可能な溶液または分散液に水戻しされ得る無菌の粉末との組み合わせで含み得、これは抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、溶質、または懸濁もしくは粘稠薬剤を含有し得る。例示的な医薬調製物は、RG前駆体細胞またはRG細胞をALCON(登録商標)BSS PLUS(登録商標)(各ml中に、水中の塩化ナトリウム7.14mg、塩化カリウム0.38mg、塩化カルシウム二水和物0.154mg、塩化マグネシウム六水和物0.2mg、二塩基リン酸ナトリウム0.42mg、重炭酸ナトリウム2.1mg、デキストロース0.92mg、グルタチオンジスルフィド(酸化型グルタチオン)0.184mg、塩酸および/または水酸化ナトリウム(pHをおよそ7.4に調整するため)を含有する平衡塩溶液)との組み合わせで含む。
【0246】
投与されるときに、本開示への使用のための医薬調製物は発熱性物質不含の生理的に許容される形態であり得る。
【0247】
RG前駆体細胞またはRG細胞を含む調製物は懸濁液、ゲル、コロイド、スラリー、または混合物によって移植され得る。さらに、調製物は望ましくは網膜または脈絡膜損傷の部位への送達のためにカプセル化されるか、または粘稠な形態で硝子体液中に注射され得る。また、注射時に、極低温保存したRG前駆体細胞またはRG細胞は、網膜下注射による投与のための所望のオスモラリティおよび濃度を達成するために平衡塩溶液によって再懸濁もされ得る。調製物は、疾患によって完全に喪失しなかった黄斑辺縁部のエリアに投与され得、これは投与された細胞の接着および/または生存を促進し得る。例えば緑内障動物モデルを包含するいくつかの場合には、RG前駆体および/またはRG細胞は硝子体内投与される。
【0248】
RG前駆体細胞および/またはRG細胞は本明細書に記載されるように凍結(極低温保存)され得る。解凍時に、かかる細胞の生存率は少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%であり得る(例えば、解凍後に集められた細胞の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは約100%が生存可能であるか、または最初に凍結された細胞数の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは約100%が解凍後に生存可能な状態で集められる)。
【0249】
RG前駆体細胞またはRG細胞は、眼内注射に好適な医薬的に許容される眼用基剤または製剤に調合され、送達され得る。いくつかの場合には、調製物は、細胞が例えば前眼房、後眼房、硝子体、房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜、網膜、強膜、脈絡膜上腔(suprachoridal space)、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜腔隙(intracorneal space)、角膜上隙(epicorneal space)、毛様体扁平部、手術誘発性の無血管領域、または黄斑のような眼の患部に浸透することを可能にするために十分な時間、眼の表面と接触して維持されるように設計される。
【0250】
RG前駆体細胞またはRG細胞は細胞のシートに含有され得る。例えば、RG前駆体細胞またはRG細胞を含む細胞のシートは、細胞の無傷のシートが取り外され得る基質、例えば、温度応答性ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)をグラフトした表面などの温度応答性ポリマー上でRG前駆体細胞またはRG細胞を培養することによって調製され得、この上で細胞は培養温度においては接着および増殖し、それから温度シフトによって表面の特徴が変改され、細胞の培養されたシートの取り外しを引き起こす(例えば、下限臨界溶液温度(LCST)よりも下まで冷却することによる。例えば、da Silva et al., Trends Biotechnol. 2007 Dec; 25(12):577-83、Hsiue et al., Transplantation 2006 Feb 15; 81(3):473-6、Ide, T. et al. (2006); Biomaterials 27, 607-614、Sumide, T. et al. (2005), FASEB J. 20, 392-394、Nishida, K. et al. (2004), Transplantation 77, 379-385、およびNishida, K. et al. (2004), N. Engl. J. Med. 351, 1187-1196参照。そのそれぞれは参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)。細胞のシートは移植に好適な基質、例えばシートがホスト生物に移植されたときにインビボで崩壊し得る基質に接着され得、例えば、細胞を移植に好適な基質上で培養すること、または細胞を別の基質(例えば温度応答性ポリマー)から移植に好適な基質上に取り外すことによって調製される。移植に好適な例示的な基質はゼラチンを含み得る(上記のHsiue et al.参照)。移植に好適な代替的な基質は、フィブリン系マトリックスおよび他を包含する。細胞のシートは、網膜変性の疾患の防止または処置のための医薬の製造に用いられ得る。
【0251】
細胞のシートは、例えばRG前駆体細胞またはRG細胞のシートの移植の中心窩下膜切除術を包含する外科手術または他の侵襲的治療に関係して、その必要がある眼に導入され得る。従って、細胞のシートは、中心窩下膜切除術に関係して、移植のための医薬の製造に用いられ得る。
【0252】
本明細書に記載される方法に従って投与される調製物の体積は、投与モード、RG前駆体細胞またはRG細胞の数、患者の年齢および体重、ならびに処置されようとする疾患の型および重度などの因子に依存し得る。例えば硝子体内注射によってなど、製剤を眼に局所投与するときには、製剤は最小体積が送達され得るように十分に濃縮されているべきである。例えば、注射によって投与される場合に、RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物の体積は約1、1.5、2、2.5、3、4、もしくは5ml、または約1~2mlであり得る。例えば、注射によって投与される場合に、RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物の体積は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、100、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、または200μL(マイクロリットル)であり得る。例えば、本開示の調製物の体積は約10~50、20~50、25~50、または1~200μLであり得る。本開示の調製物の体積は約10、20、30、40、50、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200μL、またはより高くあり得る。
【0253】
注射の濃度は有効且つ非毒性であるいずれかのレベルであり得、本明細書に記載される因子に依存する。患者の処置のためのRG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は少なくとも約10細胞/mlの用量で調合され得、少なくとも約10、10、10、10、10、10、10、または1010個のRG前駆体細胞またはRG細胞/mlを包含する。医薬調製物は、少なくとも約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、または9×10個のRG前駆体細胞またはRG細胞をμLあたり含み得る。調製物は2000個のRG前駆体細胞またはRG細胞をμLあたり含み得、50μLあたり100,000個のRG前駆体細胞もしくはRG細胞、または90μLあたり180,000個のRG前駆体細胞もしくはRG細胞を包含する。
【0254】
RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は少なくとも約1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、または9,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を含み得る。RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は少なくとも約1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×10、2×10、3×10、4×10、5×10、6×10、7×10、8×10、9×10、1×1010、2×1010、3×1010、4×1010、5×1010、6×1010、7×1010、8×1010、または9×1010個のRG前駆体細胞またはRG細胞を含み得る。RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は少なくとも約1×10~1×10、1×10~1×10、1×10~1×10または、1×10~1×10個のRG前駆体細胞またはRG細胞を含み得る。RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は少なくとも約10,000、20,000、25,000、50,000、75,000、100,000、125,000、150,000、175,000、180,000、185,000、190,000、または200,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を含み得る。例えば、RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は、少なくとも約20,000~200,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を少なくとも約50~200μLの体積中に含み得る。さらに、RG前駆体細胞またはRG細胞の医薬調製物は、約50,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を150μLの体積に、約200,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を150μLの体積に、または少なくとも約180,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を少なくとも約150μLの体積に含み得る。
【0255】
前述の医薬調製物および組成物において、RG前駆体細胞もしくはRG細胞の数またはRG前駆体細胞もしくはRG細胞の濃度は、生存可能細胞を計数し、生存不能細胞を除外することによって判定され得る。例えば、生存不能なRG前駆体細胞またはRG細胞は、生体染色色素(例えばトリパンブルー)を排除しないことによって、または機能アッセイ(例えば、培養基質に接着する能力など)を用いて検出され得る。加えて、RG前駆体細胞もしくはRG細胞の数またはRG前駆体細胞もしくはRG細胞の濃度は、1つ以上のRG前駆体細胞もしくはRG細胞マーカーを発現する細胞を計数することおよび/またはRG前駆体細胞もしくはRG細胞以外の細胞型を示す1つ以上のマーカーを発現する細胞を除外することによって判定され得る。
【0256】
網膜変性を処置する方法はさらに免疫抑制剤の投与を含み得る。用いられ得る免疫抑制剤は、抗リンパ球グロブリン(ALG)ポリクローナル抗体、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)ポリクローナル抗体、アザチオプリン、BASILIXIMAB(登録商標)(抗IL-2Rα受容体抗体)、シクロスポリン(シクロスポリンA)、DACLIZUMAB(登録商標)(抗IL-2Rα受容体抗体)、エベロリムス、ミコフェノール酸、RITUXIMAB(登録商標)(抗CD20抗体)、シロリムス、およびタクロリムスを包含するが、これに限定されない。免疫抑制剤は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10mg/kgで投与され得る。免疫抑制剤が用いられるときには、それらは全身または局所投与され得、それらは、RG前駆体細胞またはRG細胞の投与に先立って、それと同時に、またはその後に投与され得る。免疫抑制治療は、RG前駆体細胞またはRG細胞の投与後に数週間、数ヶ月、数年、またはいつまでも継続し得る。例えば、患者は、RG前駆体細胞またはRG細胞の投与後に5mg/kgシクロスポリンを6週間投与され得る。
【0257】
網膜変性の処置の方法は、RG前駆体細胞またはRG細胞の単一の用量の投与を含み得る。代替的に、本明細書に記載される処置の方法は、RG前駆体細胞またはRG細胞が何らかの期間に渡って複数回投与される治療のクールを含み得る。例示的な処置のクールは毎週、隔週、毎月、年四回、年二回、または毎年の処置を含み得る。代替的に、処置は複数の用量が最初に投与され(例えば、第1週は毎日投与)、爾後に、より少ないかまたはより頻繁でない投与が必要とされる複数相で進み得る。
【0258】
眼内注射を包含する注射によって投与される場合には、RG前駆体細胞またはRG細胞は患者の一生を通して定期的に1回以上送達され得る。例えば、RG前駆体細胞またはRG細胞は年に1回、6~12ヶ月毎に1回、3~6ヶ月毎に1回、1~3ヶ月毎に1回、または1~4週間毎に1回送達され得る。代替的に、ある種の状態または障害にとっては、より頻繁な投与が望ましくあり得る。インプラントまたはデバイスによって投与される場合には、RG前駆体細胞またはRG細胞は、処置されようとする特定の患者および障害または状態の必要に応じて、患者の一生を通して1回または定期的に1回以上投与され得る。同様に、経時的に変化する治療レジメンが企図される。例えば、出だしにはより頻繁な処置が必要とされ得る(例えば、毎日または毎週の処置)。経時的に、患者の状態が改善すると、より頻繁でない処置が必要とされ得るか、またはさらにはいかなるさらなる処置も必要とされ得い。
【0259】
本明細書に記載される方法は、対象の網膜電図の応答、視運動視力閾値、または輝度閾値を測定することによって処置または防止の有効性をモニターするステップをさらに含み得る。方法は、細胞の免疫原性、あるいは細胞の遊走または眼における同化もしくは生存をモニターすることによって処置あるいは防止の有効性をモニターすることをもまた含み得る。
【0260】
RG前駆体細胞またはRG細胞は、網膜変性を処置するための医薬の製造に用いられ得る。本開示は、失明の処置へのRG前駆体細胞またはRG細胞を含む調製物の使用をもまた包摂する。例えば、ヒトRG前駆体細胞またはRG細胞を含む調製物は、網膜損傷および失明をもたらすいくつもの視覚を変改する病気、例えば虚血再灌流損傷、網膜血管疾患、視神経損傷(自己免疫、外傷、および/またはウイルス系にかかわらない)、緑内障(型にかかわらない)、糖尿病網膜症(低酸素性および血管新生系にかかわらない)、および(レーベル遺伝性視神経症(LHON)またはレーベル視神経萎縮症などの)遺伝性視神経症に随伴する網膜変性を処置するために用いられ得る。いくつかの態様において、ヒトRG前駆体細胞またはRG細胞を含む調製物は、単独でまたは他の療法(例えば、RPE細胞および/または光受容体細胞集団などの他の細胞治療)と一緒に、黄斑変性(加齢黄斑変性、例えばウェット型の加齢黄斑変性およびドライ型の加齢黄斑変性を包含する)、網膜色素変性症、およびスターガルト病(黄色斑眼底)、鳥目、および色盲を処置するために用いられ得る。調製物は少なくとも約5,000~500,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞を含み得る(例えば100,000個のRG前駆体細胞またはRG細胞)。
【0261】
RG前駆体細胞およびRG細胞いずれかまたは両方が用いられ得る。ヒト細胞はヒト患者および動物モデルまたは動物患者に用いられ得る。例えば、ヒト細胞は網膜変性のマウス、ラット、猫、犬、または非ヒト霊長類モデルにおいて試験され得る。加えて、ヒト細胞は、獣医学医療などのその必要がある動物を処置するために治療に用いられ得る。
【0262】
ここで定める通り、単数形は例示的な目的のために提供されるが、語の複数版にもまた当てはまり得る。
【0263】
本発明の種々の付番した態様が下に記載される。
【0264】
1. 複数のRG前駆体細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である、
RG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
2. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である、態様1のRG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
3. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にPax6(-)およびRx1(-)である、態様1または2のRG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
4. 調製物中の細胞が免疫細胞化学的にBrn3b(+)および/またはIsl1(+)である、態様1、2、または3のRG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
5. 複数のRG前駆体細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)である、
RG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
【0265】
6. 調製物中の細胞がThy1(+)である、態様5のRG前駆体細胞の実質的に純粋な調製物。
7. 少なくとも50%のRG前駆体細胞を含有する複数の細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
RG前駆体細胞が免疫細胞化学的にMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および任意にIsl1(+)である、
RG前駆体細胞の調製物。
8. 少なくとも50%のRG前駆体細胞を含有する複数の細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
RG前駆体細胞が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および任意にThy1(+)である、
RG前駆体細胞の調製物。
9. 多能性幹細胞、成熟光受容体、および/またはアマクリン細胞を実質的に不含の複数のRG前駆体細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
RG前駆体細胞が免疫細胞化学的にMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および任意にIsl1(+)である、
RG前駆体細胞の調製物。
10. 多能性幹細胞、成熟光受容体、および/またはアマクリン細胞を実質的に不含の複数のRG前駆体細胞と、
RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含み、
RG前駆体細胞が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および任意にThy1(+)である、RG前駆体細胞の調製物。
【0266】
11. (a)複数のRG前駆体細胞(調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である)と、
(b)哺乳動物患者への移植のために、RG前駆体細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体と、
を含む、
哺乳動物患者への使用に好適であるRG前駆体細胞の医薬調製物であって、。
12. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である、態様11の医薬調製物。
13. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にPax6(-)およびRx1(-)である、態様11または12の医薬調製物。
14. 調製物中の細胞が免疫細胞化学的にBrn3b(+)および/またはIsl1(+)である、態様11、12、または13の医薬調製物。
15. (a)複数のRG前駆体細胞(調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)である)と、
(b)哺乳動物患者への移植のために、RG前駆体細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体と、
を含む、
哺乳動物患者への使用に好適であるRG前駆体細胞の医薬調製物。
【0267】
16. 調製物中の細胞が免疫細胞化学的にThy1(+)である、態様15の医薬調製物。
17. (a)複数のRG前駆体細胞(調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である)と、
(b)解凍時のRG前駆体細胞の生存性と適合性の極低温保存剤系と、
を含む、少なくとも10個のRG前駆体細胞を含む極低温細胞調製物。
18. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にMath5(+)ならびに任意にMath5(+)およびBrn3a(+)である、態様17の極低温細胞調製物。
19. 調製物中の細胞の99%超が免疫細胞化学的にPax6(-)およびRx1(-)である、態様17または18の極低温細胞調製物。
20. 調製物中の細胞が免疫細胞化学的にBrn3b(+)および/またはIsl1(+)である、態様17、18、または19の極低温細胞調製物。
【0268】
21. (a)複数のRG前駆体細胞(調製物中の細胞の90%超が免疫細胞化学的にBrn3a(+)およびニューロフィラメント(+)である)と、
(b)解凍時のRG前駆体細胞の生存性と適合性の極低温保存剤系と、
を含む、
少なくとも10個のRG前駆体細胞を含む極低温細胞調製物。
22. 調製物中の細胞が免疫細胞化学的にThy1(+)である、態様21の極低温細胞調製物。
23. RG前駆体細胞が多能性幹細胞に由来する、態様1~22のいずれか1つの調製物。
24. 多能性幹細胞がヒト胚性幹細胞および人工多能性幹細胞からなる群から選択される、態様23の調製物。
25. RG前駆体細胞がヒト細胞である、先行する態様のいずれか1つの調製物。
【0269】
26. RG前駆体細胞がHLA遺伝子型的に同一である、先行する態様のいずれか1つの調製物。
27. RG前駆体細胞がゲノム的に同一である、先行する態様のいずれか1つの調製物。
28. RG前駆体細胞が8kbよりも長い平均末端制限断片長(TRF)を有する、先行する態様のいずれか1つの調製物。
29. RG前駆体細胞が増大した細胞生存およびニューロン保護活性を有する、先行する態様のいずれか1つの調製物。
30. ヒト患者への投与に好適である、態様11~16のいずれか1つの調製物。
【0270】
31. 獣医学的な非ヒト患者への投与に好適である、態様11~16のいずれか1つの調製物。
32. RG前駆体細胞が普通の多能性幹細胞ソースに由来する、態様23または24の調製物。
33. RG前駆体細胞の生存性を維持することに好適な培地が、培養培地、極低温保存剤、およびヒト患者の注射に好適な生体適合性の注射媒体からなる群から選択される、態様1~10のいずれか1つの調製物。
34. RG前駆体細胞が、視神経挫滅モデルマウスの硝子体腔内に移植されたときに、外側の有核層まで遊走し、マウスのパターンERGの応答を改善および/または視神経再生を向上させる、先行する態様のいずれか1つの調製物。
35. 調製物が発熱性物質およびマイトジェン(mycogen)不含である、態様11~16のいずれか1つの調製物。
【0271】
36. RG前駆体細胞が1つ以上のニューロン保護因子を分泌する、先行する態様のいずれか1つの調製物。
37. (a)多能性幹細胞由来RG細胞(細胞の60%超が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびTuj1(+)である)と、
(b)幹細胞由来RG細胞の生存性を維持することに好適な培地と、
を含む、
多能性幹細胞由来RG細胞の実質的に純粋な調製物。
38. 調製物中の細胞がThy1(+)である、態様37の実質的に純粋な調製物。
39. 細胞の約70%が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびTuj1(+)である、態様37または38の実質的に純粋な調製物。
40. (a)多能性幹細胞由来RG細胞(調製物中の細胞の60%超が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびTuj1(+)である)と、
(b)哺乳動物患者への移植のために、RG細胞の生存性を維持するための医薬的に許容される担体と、
を含む、
哺乳動物患者への使用に好適であるRG細胞の医薬調製物。
【0272】
41. 調製物中の細胞がThy1(+)である、態様40の医薬調製物。
42. 細胞の約70%が免疫細胞化学的にBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、およびTuj1(+)である、態様40の医薬調製物。
43. 態様11~16のいずれか1つのRG前駆体細胞の医薬調製物もしくは態様40のRG細胞の医薬調製物または両方を患者に有効量で投与することを含む、患者のRG細胞の喪失によって引き起こされる疾患または障害を処置する方法。
44. 細胞の調製物が患者の網膜下腔に注射される、態様43の方法。
45. 細胞の調製物が硝子体内注射される、態様43の方法。
【0273】
46. 眼領域前駆体細胞を、好ましくは細胞クラスターとして、好ましくは低接着または非接着条件下で、神経節細胞培地によって、細胞クラスターがMath5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および任意にIsl1(+)、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および任意にThy1(+)としてキャラクタリゼーションされるRG前駆体細胞を含む個体の細胞スフィアを形成するために十分な時間培養するステップを含み、
眼領域前駆体細胞は、Pax6(+)およびRx1(+)ならびにOct4(-)およびNanog(-)としてキャラクタリゼーションされ、好ましくはSix3(+)、Six6(+)、Lhx2(+)、Tbx3(+)、Sox2(+)、Otx2(+)、およびネスチン(+)としてもまたキャラクタリゼーションされ、これは免疫染色および/またはフローサイトメトリーによって判定される、
RG前駆体細胞を生ずる方法。
47. 眼領域前駆体細胞が多能性幹細胞に由来する、態様46の方法。
48. 多能性幹細胞が胚性幹細胞または人工多能性幹細胞、任意にヒト胚性幹細胞またはヒト人工多能性幹細胞である、態様47の方法。
49. RG前駆体細胞が実質的に多能性幹細胞を不含で提供される、態様46または47の方法。
50. RG前駆体細胞が、他の細胞型に関して少なくとも50%純粋、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%純粋である、態様46~49のいずれか1つの方法。
【0274】
51. RG前駆体細胞を極低温保存するさらなるステップを包含する、態様46~50のいずれか1つの方法。
52. (a)フィーダーフリー系によって多能性幹細胞を培養して、1つ以上の眼領域前駆体細胞を生ずること、
(b)前記の1つ以上の眼領域前駆体細胞を培養して、Math5(+)、Brn3a(+)、Brn3b(+)、および任意にIsl1(+)、またはBrn3a(+)、ニューロフィラメント(+)、および任意にThy1(+)であるRG前駆体細胞を生ずること、
を含む、
多能性幹細胞由来RG前駆体細胞の実質的に純粋な培養物を調製するための方法。
53. 神経節細胞培地によって眼領域(EF)前駆体細胞を培養することを含む、RG前駆体細胞を生ずる方法。
54. EF前駆体細胞がPax6(+)およびRx1(+)である、態様53の方法。
55. EF前駆体細胞がSix3(+)、Six6(+)、Lhx(+)、Tbs(+)である、態様53または54の方法。
【0275】
56. EF前駆体細胞がSox2(+)である、態様53~55のいずれか1つの方法。
57. EF前駆体細胞が、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または約100%のEF前駆体細胞である細胞の集団として提供される、態様53~56のいずれか1つの方法。
58. 神経節細胞培地がNeurobasal(商標)培地などの基本培地を含む、態様53~57のいずれか1つの方法。
59. 神経節細胞培地がBDNFを含む、態様53~58のいずれか1つの方法。
60. BDNFがヒトである、態様59の方法。
【0276】
61. BDNFが約1~200ng/ml、5~50ng/ml、もしくは約5~25ng/ml、または約10ng/mlの濃度で存在する、態様59または60の方法。
62. 神経節細胞培地がCNTFを含む、態様53~61のいずれか1つの方法。
63. 前記のCNTFがヒトである、態様62の方法。
64. 前記のCNTFが約1~200ng/ml、5~50ng/ml、もしくは約5~25ng/ml、または約10ng/mlの濃度で存在する、態様63の方法。
65. 神経節細胞培地がフォルスコリンを含む、態様53~64のいずれか1つの方法。
【0277】
66. 前記のフォルスコリンが約1~20μMもしくは約1~10μM、または約5μMの濃度で存在する、態様65の方法。
67. 神経節細胞培地が約0~10mg/mlの間のD-グルコース、約2.5~7.5mg/mlの間のD-グルコース、約3~6mg/mlの間のD-グルコース、約4~5mg/mlの間のD-グルコース、または約4.5mg/mlのD-グルコースを含む、態様53~66のいずれか1つの方法。
68. 神経節細胞培地が1つ以上の抗生物質を含む、態様53~67のいずれか1つの方法。
69. 1つ以上の抗生物質が、ペニシリンおよびストレプトマイシンからなる群から、任意に約0~100単位/mlのペニシリンおよび約0~100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で選択される、態様68の方法。
70. 神経節細胞培地がN2サプリメントを含む、態様53~69のいずれか1つの方法。
【0278】
71. N2サプリメントが約0.1から5%または約1%の濃度で存在する、態様70の方法。
72. 神経節細胞培地がB-27サプリメント(調合080085-SA)を含む、態様53~71のいずれか1つの方法。
73. B-27サプリメント(調合080085-SA)が約0.05~5.0%もしくは約1.5~2.5%、または約2.0%の濃度で存在する、態様72の方法。
74. 神経節細胞培地がグルタミンまたはGlutaMAX(商標)を含む、態様53~73のいずれか1つの方法。
75. 眼領域前駆体細胞が多能性幹細胞に由来する、態様53~74のいずれか1つの方法。
【0279】
76. 多能性幹細胞がヒトES細胞またはヒトiPS細胞である、態様75の方法。
77. 多能性幹細胞がフィーダーフリーおよび/またはゼノフリー条件下で培養される、態様75または76の方法。
78. 培養が約5~45日間起こる、態様53~77のいずれか1つの方法。
79. 培養が約5~20日間起こる、態様78の方法。
80. 培養が約35~45日間起こる、態様78の方法。
【0280】
81. 細胞を極低温保存することをさらに含む、態様79または80の方法。
82. 細胞を網膜神経節細胞分化培地によって培養することによって網膜神経節(RG)細胞を生ずることをさらに含む、態様53~80のいずれか1つの方法。
83. 網膜神経節細胞分化培地がNeurobasal(商標)培地を含む、態様82の方法。
84. 網膜神経節細胞分化培地が、約0~10mg/mlの間のD-グルコース、約2.5~7.5mg/mlの間のD-グルコース、約3~6mg/mlの間のD-グルコース、約4~5mg/mlの間のD-グルコース、または約4.5mg/mlのD-グルコースを含む、態様82または83の方法。
85. 網膜神経節細胞分化培地が1つ以上の抗生物質を含む、態様82~84のいずれか1つの方法。
【0281】
86. 抗生物質が、ペニシリンおよびストレプトマイシンからなる群から、任意に約0~100単位/mlの間のペニシリンおよび約0~100μg/mlのストレプトマイシンの濃度で選択される、態様85の方法。
87. 網膜神経節細胞分化培地がインスリン、BDNF、およびCNTFの1つ以上または全てを含む、態様82~86のいずれか1つの方法。
88. 網膜神経節細胞分化培地がインスリンを含む、態様87の方法。
89. インスリンがヒトインスリンである、態様88の方法。
90. インスリンが約5~50μg/mlまたは約20μg/mlの濃度で存在する、態様88または89の方法。
【0282】
91. 網膜神経節細胞分化培地がBDNFを含む、態様87~90のいずれか1つの方法。
92. BDNFがヒトである、態様91の方法。
93. BDNFが約1~200ng/ml、5~50ng/ml、もしくは約5~25ng/ml、または約10ng/mlの濃度で存在する、態様91または92の方法。
94. 網膜神経節細胞分化培地がCNTFを含む、態様87~93のいずれか1つの方法。
95. CNTFがヒトである、態様94の方法。
【0283】
96. CNTFが約1~200ng/ml、5~50ng/ml、もしくは約5~25ng/ml、または約10ng/mlの濃度で存在する、態様93または94の方法。
97. 網膜神経節細胞分化培地がフォルスコリン、cAMP、およびDAPTの1つ以上または全てを含む、態様82~96のいずれか1つの方法。
98. 網膜神経節細胞分化培地がフォルスコリンを含む、態様97の方法。
99. 前記のフォルスコリンが約1~20μM、もしくは約1~10μM、または約5μMの濃度で存在する、態様98の方法。
100. 網膜神経節細胞分化培地がcAMPを含む、態様97の方法。
【0284】
101. cAMPが約5~200ng/mlの間の濃度で存在する、態様100の方法。
102. 網膜神経節細胞分化培地がDAPTを含む、態様97の方法。
103. DAPTが約1~50μMの間の濃度で存在する、態様102の方法。
104. 網膜神経節細胞分化培地がB-27サプリメント(調合080085-SA)を含む、態様82~103のいずれか1つの方法。
105. B-27サプリメント(調合080085-SA)が約0.05~5.0%、約0.05~2.5%、または約2%の濃度で存在する、態様104の方法。
【0285】
106. 網膜神経節分化培地がグルタミンまたはGlutaMAX(商標)を含む、態様82~105のいずれか1つの方法。
107. 網膜神経節分化培地がレチノイン酸を含む、態様82~106のいずれか1つの方法。
108. レチノイン酸が約1~50mM、約5~40mM、約10~30mM、または約20mMの濃度で存在する、態様107の方法。
109. 細胞が網膜神経節細胞分化培地によって約7~60日間もしくは約14~35日間または約24日間培養される、態様82~106のいずれか1つの方法。
110. 網膜神経節前駆体細胞が培養物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含む、態様53~80のいずれか1つの方法。
【0286】
111. 網膜神経節前駆体細胞がマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上または全てを発現する、態様110の方法。
112. 網膜神経節前駆体細胞の少なくとも90%、94%、96%、98%、または99%がMath5および任意にBrn3aを発現する、態様111の方法。
113. 網膜神経節前駆体細胞がPax6(-)およびRx1(-)である、態様111または112の方法。
114. 網膜神経節前駆体細胞の少なくとも90%、92%、または94%がPax6(-)およびRx1(-)である、態様113の方法。
115. 網膜神経節前駆体細胞がBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上または全てを発現する、態様52~80のいずれか1つの方法。
【0287】
116. 前記の網膜神経節前駆体細胞の少なくとも90%、92%、または94%がBrn3aおよびニューロフィラメントを発現する、態様115の方法。
117. 網膜神経節前駆体細胞がMath5(-)および/またはBrn3b(-)である、態様115または116の方法。
118. 網膜神経節前駆体細胞を網膜神経節細胞に分化させることをさらに含む、態様52~80のいずれか1つの方法。
119. 態様52~118のいずれか1つの方法に従って生じた網膜神経節前駆体細胞または網膜神経節細胞を含む組成物。
120. 網膜神経節前駆体細胞または網膜神経節細胞を含む組成物。
【0288】
121. 前記の網膜神経節前駆体細胞が前記の組成物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、少なくとも99%、または約100%を含む、態様119または120の組成物。
122. 前記の網膜神経節細胞が前記の組成物中の細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、または少なくとも70%を含む、態様119または120の組成物。
123. 網膜神経節前駆体細胞がマーカーMath5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の1つ以上または全てを発現する、態様119~122のいずれか1つの組成物。
124. 網膜神経節前駆体の少なくとも90%、94%、96%、98%、または99%がMath5および任意にBrn3aを発現する、態様123の組成物。
125. 網膜神経節前駆体細胞がPax6(-)およびRx1(-)である、態様123または124の組成物。
【0289】
126. 網膜神経節前駆体細胞の少なくとも90%、92%、または94%がPax6(-)およびRx1(-)である、態様125の組成物。
127. 網膜神経節前駆体細胞がBrn3a、ニューロフィラメント、およびThy1の1つ以上または全てを発現する、態様119~122のいずれか1つの組成物。
128. 網膜神経節前駆体細胞の少なくとも90%、92%、または95%がBrn3aおよびニューロフィラメントを発現する、態様127の組成物。
129. 網膜神経節前駆体細胞がMath5(-)およびBrn3b(-)である、態様127または128の組成物。
130. 網膜神経節細胞がBrn3a、ニューロフィラメント、およびTuj1の1つ以上または全てを発現する、態様119~122のいずれか1つの組成物。
【0290】
131. 網膜神経節前駆体細胞が極低温保存される、態様119~129のいずれか1つの組成物。
132. 網膜神経節前駆体細胞の約80~90%の間が解凍後に回復される、態様131の組成物。
133. 態様119~120のいずれか1つの組成物または態様131もしくは132の組成物を、解凍後に前記の個体に投与することを含む、その必要がある個体の処置の方法。
134. 組成物が眼、網膜下腔、または硝子体内に投与される、態様133の方法。
135. 眼領域前駆体細胞を神経節細胞培地によって培養することが、(i)眼領域前駆体細胞を破砕して細胞クラスターを得ることと、(ii)細胞クラスターを低接着条件下でプレーティングしてスフィアを形成することとを含む、態様52~80および82~117のいずれか1つの方法。
【0291】
136. ステップ(i)が、低接着プレート上で細胞を培養することを含む、態様135の方法。
137. 破砕が機械的または酵素的破壊によって実施される、態様135または136の方法。
138. 細胞を網膜神経節細胞分化培地によって培養することが、細胞を単細胞に解離させることと、スフィアをマトリゲル(商標)、ラミニン、またはコラーゲン上にプレーティングすることとを含む、態様135~137のいずれか1つの方法。
139. 解離した細胞をラミニン上にプレーティングすることを含む、態様138の方法。
140. 解離した細胞をポリ-D-リジン/ラミニンコーティングプレート上にプレーティングすることをさらに含む、態様138の方法。
【0292】
141. 解離した細胞がcmあたり10~40細胞の密度でプレーティングされる、態様139または140の方法。
【0293】
次は本発明を例示するための例であり、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。
【実施例
【0294】
例1.多能性幹細胞からのRG前駆体細胞およびRG細胞産生
1.ヒト胚性幹細胞をフィーダーフリー条件下でmTESR1培地(Stem Cell Technology)によってマトリゲル(商標)(BD Biosciences)上で培養する。80~90%のコンフルエンス時には、細胞は継代または凍結されることを必要とする。幹細胞の継代は酵素的(例えばディスパーゼ)または非酵素的(例えば、PBS系細胞解離緩衝液、Invitrogen)手法を用いて実施する。
【0295】
2.直接分化方法を網膜ニューロン/前駆体の作製のために用いる。胚様体ステップはない。
【0296】
3.第0日:細胞分化を15~20%コンフルエンスにおいて誘導する。培地を網膜誘導(RI)培地に交換する:4.5mg/mlのD-グルコース、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1%のN2サプリメント(Invitrogen)(0.1~2%)、0.2%のB27サプリメント(0.05~2%)、1×MEM非必須アミノ酸溶液、50ng/mlのNoggin(10~500ng/ml)、および20μg/mlヒトインスリン(5~50μg/ml)を補ったDMEM/F12。
【0297】
4.第1日~第4日:毎日、完全な培地交換。
【0298】
5.第5日:細胞培養物は第5日に80~90%コンフルエンスになる。培地を神経分化(ND)培地に交換する:4.5mg/mlのD-グルコース、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1×GlutaMAX(商標)、1%のN2サプリメント(Invitrogen)(0.1~2%)、2%のB27サプリメント(0.5~2%)、1×MEM非必須アミノ酸溶液、および50ng/mlのNoggin(10~500μg/ml)を補ったNeurobasal(商標)培地(Life Technologies)。
【0299】
6.第6日~第13日:細胞をND培地によって維持する。培地を2日毎に交換する。細胞のコロニーはND培地によって生育することを継続する。辺縁の細胞はフラットで大きくなり、一方で中央の細胞はより小さく、コンパクトな細胞クラスターを形成する。第10~11日に、細胞はPAX6を発現し始め、次に第12日にRx1発現の開始がある(図1A)。RT-PCRはOct4およびNanog発現の喪失を示した(図1B)。第13日に、フローサイトメトリーによって定量すると90%超の細胞はPax6およびRx1を共発現している(図2A)。細胞の99%超がOtx2、ネスチン、およびSox2を発現している(図2B)。これらの結果は、それらが眼領域前駆体細胞になるということを示している。
【0300】
7.第14日~第19日:第15日に培地を神経節細胞(GC)培地に交換する:4.5mg/mlのD-グルコース、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1×GlutaMAX(商標)、1%のN2サプリメント(0.1~2%)、2%のB27サプリメント(調合番号080085-SA)(0.5~2%)、5μMフォルスコリン(1~20μM)、10ng/mlのBDNF(1~200ng/ml)、および10ng/mlのCNTF(1~200ng/ml)を補った神経基本培地。
【0301】
8.第20日~第35日:第20日に、細胞を生育表面から取り、GC培地中で機械的にクラスターに破砕する。細胞クラスターを100mm超低接着培養皿に移入する。細胞クラスターは丸まり、懸濁培養物中に個体のスフィアを形成する。培地を3日毎に交換する。第35日に、リアルタイムRT-PCRは、Math5、Brn3a、Brn3b、およびIsl1の発現の強い上方制御を示した(図3A)。フローサイトメトリーは、>99%の細胞が転写因子Math5およびBrn3aを発現しているということを示した。約94%のMath5陽性細胞がPAX6について陰性に染色した(図3B)。
【0302】
9.第36日~第60日:神経スフィア培養物をGC培地によって維持し、培地を3~4日毎に交換する。第60日に、リアルタイムRT-PCRはBrn3aの継続した発現を示した。Math5およびBrn3bの発現レベルは非常に下方制御されていた(図4)。フローサイトメトリーは、細胞の95.3%がBrn3aおよびニューロフィラメントを共発現しているということを示した。
【0303】
10.RG前駆体細胞からRG細胞への分化:
a.Accutase(登録商標)細胞解離緩衝液を用いて細胞を単細胞に解離させる。細胞をポリ-D-リジン/ラミニンコーティングプレート上に10~40/cmの密度でRGC分化培地によってプレーティングする:4.5mg/mlのD-グルコース、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、1×GlutaMAX(商標)、2%のB27サプリメント(調合番号080085-SA。GC培地と同じ)、5μMフォルスコリン、10ng/mlのBDNF、10ng/mlのCNTF、100ng/mlのcAMP、1~50μMのDAPT、2μMレチノイン酸、および20μg/mlヒトインスリンを補った神経基本培地。半分の培地を2日毎に交換する。
b.2週間後に、細胞の約72%はThy1について陽性に染色した(図5)。細胞は樹状突起および軸索を有した(図6A)。免疫染色はBrn3a、ニューロフィラメント、およびTuj1の発現を示した(図6B)。
【0304】
例2.緑内障の実験モデルにおけるRG前駆体細胞(レーザー光凝固を用いる)
図7に略示されているように、緑内障の実験動物モデルを用いてインビボのRG前駆体細胞の効果を研究した。このモデル系では、慢性の眼内圧(IOP)上昇を小柱網レーザー光凝固によって3月齢の雄Brown-Norwayラットに誘導した。5μlのPBS中に懸濁した2×10個のRG(初期)前駆体細胞を翌日に硝子体腔部に注射した。PBSをコントロールの眼球に注射した。全てのラットはTonoLabによる明暗期IOP測定を週あたり2回受けた(処置の2週間前から処置の5週間後まで)。シクロスポリンAを処置の1週間前から処置の5週間後まで水によって投与した。処置の5週間後に、網膜神経節(RG)細胞のトポグラフィー定量をRbpms免疫組織化学を用いて実施した。コントロールの眼では27.3%のRG細胞の平均の細胞喪失があり、一方で、細胞処置群では有意により少ないRG細胞死があり、平均13.5%であった(図8)。この結果は、緑内障ラットモデルのRG前駆体細胞処置によるRG細胞死のレスキューを示唆している。
【0305】
例3:ヒトRG前駆体細胞およびRG細胞の極低温保存
初期RG前駆体細胞(例1のステップ8)および後期RG前駆体細胞(例2のステップ9)は、Cryostor CS10などのアニマルフリー極低温保存緩衝液、または90%FBSおよび10%DMSOなどの別の極低温保存緩衝液中のニューロスフィアとして凍結され得る。RG細胞も同じくこれらの緩衝液中で極低温保存され得る。
【0306】
例4:緑内障実験モデル(マイクロビーズ(MB)注射)におけるhESCおよび/またはiPSCに由来するRGCPの移植
hESCおよびiPSCからのRGCPの作製
hESC株GFP-H1(WA01でNIH登録されている。インビボにおける容易な同定のためにGFPを発現する)およびiPSC株HA1(ゲノムインテグレーションなしでmRNAによって作製されている31)は、以前に報告されているように維持する31。本明細書に記載されるように定型的および継続的に実施されるプロセスにおいては、これらの細胞を先ずEFPに分化させ、次に、EFPをマトリゲル上にプレーティングし直し、本明細書に記載される条件下で培養することによって、異なる発生ステージのRGCPの作製をする。分化プロセスの間に、EFP遺伝子(Pax6、Rx1、ネスチン、およびSox2)の発現をモニターする。インビボ移植前に、後期ステージRGCP(ニューロフィラメント+Brn3a+Math5-)を収集し、Accutase(登録商標)を用いて単細胞懸濁液に解離させる。
【0307】
緑内障マウスへのRGCP移植
成体C57BL/6Jマウスが、PBS(コントロールとして)または高眼圧(緑内障)を誘導すると以前に記載されたマイクロビーズいずれかの前眼房注射を受けた29。正常なIOPを有するPBS注射したコントロールをレシピエントマウスの群に追加して、グラフトされたRGCPの生存が緑内障疾患プロセスによって影響されるかどうかを検討した。
【0308】
PBSまたはマイクロビーズ注射の7日後に、GFP-hESCまたはHA1-iPSC由来RGCP(100,000細胞/μl)または基剤コントロール溶液を、正常IOP(PBS注射)および緑内障(マイクロビーズ注射)マウス両方に硝子体内注射した。この時点は、移植が、疾患の症状を現す患者の臨床像とより良く整合するように選択した。他の報告と一致して、予備的な研究においては、グラフトされた細胞は、免疫特権部位と考えられるマウスの眼において免疫抑制剤の不在下で移植の8週間後まで生存するということが観察された(図13、14、および16)。
【0309】
網膜のRGCの電気的活性をモニターするpSTRを4および8週間の時点で測定し、ベースライン値を得るために第1の測定がマイクロビーズ注射の1~2日前からとられた。コントロールおよび緑内障マウスをpSTR試験を用いて4および8週間に分析した。
【0310】
移植されたRGCPの治療有効性を評価するために用いられた別の試験は視運動性反射(OKR)である。OKRは、流れて行く縞パターンを眼および頭部の動きによってトラッキングすることによって視力およびコントラスト感度を測定する。緑内障マウスは、OKRアッセイにおいて、低下した視力なしに劇的に減少して行く視覚コントラスト感度を見せる。これらの観察はヒト患者において見られるものと一致している37,38。ベースラインOKRはマイクロビーズ注射の1~2日前に記録し、視覚機能および網膜形態の変化の継続的な評価のために、PBSまたはマイクロビーズ注射の8週間後にOKRを評価した。
【0311】
グラフトされた細胞の生存を維持するために免疫抑制が必要とされるかどうかを試験するために、免疫抑制剤シクロスポリンAによる処置に付したマウスを研究する。マウスのこの群は、移植の1日前に出発する飲み水中のシクロスポリンAの毎日処置を屠殺まで受ける。
【0312】
移植されたRGCPの治療有効性を評価するために用いられる別の試験は視覚誘発電位(VEP)である。VEPは、視覚刺激に応答して皮質によって生ずる総体的な電気シグナルを測定する。緑内障マウスは、長引くN1潜時および減縮したP1-N1振幅をVEPにおいて見せる。これらの観察はヒト患者において見られるものと一致している37,38。ベースラインVEPはマイクロビーズ注射の1~2日前に記録する。
【0313】
全ての実験群において、視覚機能および網膜形態の変化の継続的な評価のために、VEPおよびSD-OCTをPBSまたはマイクロビーズ注射の4、8、および12週間後に評価する。pSTRおよびOKRをPBSまたはマイクロビーズ注射の12週間後まで分析する。PBSまたはマイクロビーズ注射の12週間後に、最後のVEP、OKR、pSTR、およびSD-OCT評価の後にマウスを屠殺する。網膜および視神経切片を以前に記載されたように調製する29。網膜切片をTuj1またはBrn3bなどのRGC特異的マーカーに対する抗体によって免疫標識し、核マーカーDAPIによって対比染色して、ホストのRGC形態および網膜層状構造を明らかにする。腫瘍形成を生体動物のSD-OCTによってモニターし、網膜切片で検査する。軸索の計数を記載されているように視神経切片に実施して29、RGCP移植後の軸索変性/保護を測定する。
【0314】
これらの後期の時点のグラフトされた細胞の生存を、IOP上昇ありまたはなしのマウス(PBS注射対マイクロビーズ注射)で評価し、免疫抑制を受けることありまたはなしのマウスの群間でもまた比較する。
【0315】
加えて、臨床的に適用可能な非侵襲的イメージング技術のスペクトラルドメイン光干渉トモグラフィー(SD-OCT)を用いて網膜形態をモニターし、これは潜在的な腫瘍形成ならびに神経節細胞層(GCL)および神経線維層(NFL)厚の測定を包含する。他では、生体の緑内障マウスにおける神経節細胞複合体(GCC)層(これはGCLおよびNFLを包含する)の薄化の定量のためのSD-OCTの首尾良い適用を報告しており30、緑内障の患者において見られるものと一致する発見である。
【0316】
統計分析
データは平均±標準偏差として表し、Windows向けのGraphPad Prism 5.01(GraphPad Software Inc)によって分析する。対応のあるANOVAおよびMann-Whineyを統計分析に用いる。差はp<0.05で有意と考える。
【0317】
結果
先の例によって明証されたように、RGCPの高度に均質な(>95%)集団を作製するためのヒトPSCの確かな分化を可能にする新規の手順が、本開示に従って開発された。その上に、かかるRGCPを緑内障マウスに移植したときには、免疫組織化学、pSTR、およびOKRによって測定された有意に改善したRGCの生存(図13A)および機能(図14A~D)が観察された。これらのデータは、移植されたRGCPが緑内障において視覚を保つことができるということを示している。
【0318】
例5:RGCP移植後のRGC様細胞のキャラクタリゼーション
例5は、(1)緑内障マウス網膜への移植後にRGC様細胞に分化するRGCPのパーセンテージ、(2)免疫組織化学およびRNAシーケンシング(RNA-seq)を用いるヒトESCおよびiPSC由来RGC様細胞の形態的および分子的特性を調べ、(3)それらの細胞の遺伝子プロファイルを分析する。
【0319】
緑内障マウスへのRGCP移植と、RGC様細胞へのRGCP分化のパーセンテージの定量
RGCPは例1および4に記載されているようにGFP+hESCまたはiPSCから作製される。成体C57BL/6Jマウスがマイクロビーズの前眼房注射を受けて、この緑内障モデルに高眼圧を誘導した29。マイクロビーズ注射の7日後に、GFP-hESCまたはHA1-iPSC由来RGCP(100,000細胞/μl)を、シクロスポリン-Aの毎日処置ありまたはなしの緑内障マウスに硝子体内注射する。予備的な分析はシクロスポリン-Aの不在下でRGCPの生存および分化のいずれかの異常を検出しなかったが、細胞表現型およびトランスクリプトームの比較は、グラフトされたRGCPに及ぼす免疫抑制剤の効果に関して追加の情報を提供する。RGCP分化を定量的に評価するために、網膜フラットマウントを移植の3週間後に収集し、RGC特異的マーカー、例えばBrn3bおよびTuj1について免疫標識する。グラフトされたRGCPはGFP発現またはヒト特異的ミトコンドリア抗体によって同定する。グラフトされた細胞(GFP+)およびRGC様細胞(GFP+/Brn3b+)をそれぞれ計数し、RGC様細胞(GFP+/Brn3b+)になるグラフトされたRGCPのパーセンテージを計算する。他の網膜細胞マーカーの免疫検出(例えば、アマクリン細胞、双極細胞、光受容体、およびミュラー細胞)をもまた以前に記載されたように実施して9,28,39、グラフトされたRGCPが他の網膜細胞型に発生するかどうかを判定する。シナプトタグミン、PSD-95、GluR2/3などのプレおよびポストシナプスマーカーの免疫標識をもまた実施し、プレ(例えばシナプトタグミン)およびポスト(例えばPSC95)シナプスマーカーの共局在は機能的なシナプスの形成を示唆する40,41
【0320】
RGC分化のゲノムワイドな徴候のベリフィケーション
グラフトされたRGCPを(細胞分化を可能にするために)移植の3週間後に、それらのGFP発現に基づいてFACSによってマウス網膜から単離する。トータルRNAを、単離されたGFP+RGCPならびに培養されたEFP(Pax6+、Rx1+、ネスチン+、およびSox2+発現によってベリフィケーションされる)およびRGCP(ニューロフィラメント+/Brn3a+/Math5-)から抽出する。4つの注射された網膜から容易に単離され得る約40,000個のグラフトされた細胞は、RNAのこの分析に要求される量を提供するために十分である。簡略には、RNA-SeqのライブラリーをIllumina Truseqキットv2を用いて作製し、Illumina HiSeqによってシーケンシングした。配列をヒトトランスクリプトームに対してアラインメントして、アラインメントしたBAMファイルを生じ、公知の遺伝子および転写物をCufflinksアルゴリズムを用いて定量する。遺伝子および公知の転写物の差次的発現を遺伝子アノテーションによって判定する。GSEAアルゴリズムによるGene Set Enrichment AnalysisおよびIngenuity Pathway Analysisを実施する。関心の候補転写物をqPCRによってベリフィケーションする。グラフトされたRGCP、ならびにESCおよびiPSC由来培養物から直接とられたEFPおよびRGCPから得られたデータを比較する。RGC系譜のアイデンティティに対応する遺伝子の発現(例えば、POU、Islet1、Islet2、Thy1.1)42を、細胞がEFPからRGCPに分化する際、および移植されたRGCPの分化によってインビボで生ずるRGC様細胞においてもまたモニターする。光受容体特異的マーカーなどの他の網膜細胞遺伝子の発現もまたRGCPおよびRGC様細胞においてモニターする。
【0321】
統計分析
データは平均±標準偏差として表し、Windows向けのGraphPad Prism 5.01(GraphPad Software Inc)によって分析する。対応のあるANOVAおよびMann-Whineyを統計分析に用いる。差はp<0.05で有意と考える。
【0322】
例6:RGCPの移植
例6は、RGCPの移植が、移植された細胞から成熟RGCへの分化と脳に接続する視神経への長い軸索伸長とによって、視覚喪失を逆行させるか、または機能を取り戻すかどうかを調べる。
【0323】
視神経挫滅損傷したマウスへのRGCP移植
RGCPは例1および4に記載されているようにGFP+hESCまたはiPSCから作製した。GFP+hESC-RGCPは、移植後のhESC-RGCPの運命をそれらのGFP発現によって追跡することがより容易であったので用いた。成体C57BL/6Jマウスが、以前に記載されたように、全ての視神経軸索の完全な損傷に至る視神経挫滅損傷を受けた22。GFP+hESC-RGCP(100,000細胞/μl)または基剤コントロール溶液を、損傷の7日後にそれらのマウスに硝子体内注射した。マウスは損傷の8週間後に屠殺した。
【0324】
網膜フラットマウントおよび縦方向の視神経切片をRGCの生存、分化、および神経成長の定量のために次のように調製した。(1)RGCの生存および分化を分析するために、網膜フラットマウントをTuj1によって免疫標識して内因性の(ホスト)および新しい(GFP+)RGCを同定した。生存しているホストRGC(Tuj1+のみ)の数および新しく作製されたRGC(GFP+/Tuj1+)の数を記録した。RGCマーカーTuj1を発現する移植された(GFP+)細胞のパーセンテージを計算した(計数したGFP+/Tuj1+細胞を総GFP+細胞によって除算することによる)。他の網膜細胞マーカーの免疫検出をもまた実施して、グラフトされたRGCPが追加の細胞型に発生するかどうかを判定した。(2)軸索の生存および再成長を評価するために、縦方向の視神経切片をニューロフィラメント蛋白質に対する一次抗体によって染色して内因性の軸索を明らかにし、一方で、新しい軸索はGFP標識によって同定した。
【0325】
ホスト軸索の全てが損傷の4週間後までに挫滅部位を越えて損傷および変性していることと、再生して来る軸索のみが挫滅部位の後ろに見いだされるということとが予想される。この目的で、縦方向の神経切片中の新しいGFP+軸索の数およびそれが進んだ距離を定量した。新しい軸索が脳の中枢標的に達したかどうかを判定するために、マウス脳切片を収集した。外側膝状体および上丘を包含する視索および視神経の中枢標的に見いだされるGFP+軸索の数を記録した。その上に、シナプトフィジンおよびPSD95などのシナプスマーカーの免疫標識を脳切片に実施して、GFP+軸索がシナプスを発達させ、プレシナプスマーカーを発現するかどうかを判定した。
【0326】
他のマウスは損傷の4、8、および12週間後に屠殺する。RGCP移植の潜在的な機能的な利益を、VEP、pSTR、およびOKRを損傷の1~2日前および屠殺前に記録することによって評価する。SD-OCTをもまた実施して、生体マウスの網膜形態をモニターする。
【0327】
統計分析
データは平均±標準偏差として表し、Windows向けのGraphPad Prism 5.01(GraphPad Software Inc)によって分析する。対応のあるANOVAおよびMann-Whineyを統計分析に用いる。差はp<0.05で有意と考える。
【0328】
結果
視神経損傷の3週間後に、GFP+細胞はホスト網膜に再定着し、長い神経突起を伸長させた。移植した細胞のほぼ全て(>95%)がTuj1+RGCに分化した(図16A~C)。共焦点およびライトシート顕微鏡法両方を用いて、グラフトされたRGCPが神経節細胞層に同化し(図16D~E)、プレおよびポストシナプスマーカーの共局在によって明証される機能的なシナプスを発達させる(図16F~J)ことが観察された。これらのデータは、hESC由来RGCPが、視神経損傷マウスへの移植後にRGC様細胞に分化し、ホスト網膜に同化し、機能的なシナプスを発達させ、喪失した細胞を代替し得るということを支持している。
【0329】
結論
研究および治療のためにヒト網膜神経節細胞前駆体(RGCP)の純粋な再生可能な集団を提供することに際しての限界を克服するために、ヒト多能性幹細胞(PSC)から網膜ニューロンへの確かな分化のための明確な方法が開発された。この方法は複数のhESCおよびiPSC株(胚盤胞または単一の割球からの5つのhESC株、エピソーマルベクターまたはmRNAリプログラミングによって得られた6つのiPSC株)を用いて実施されて、RGCPの高度に均質な(>95%)集団を作製した。この方法は全てのそれらの株の網膜分化プロセスを同調させることができ、一貫してPSCから眼領域前駆体(EFP、図216~18、初期RGCP(Math5+、図3Bおよび4)19~21、および後期RGCP(Math5-/Thy1.1+、図3B、4、および5)への段階的な分化に至り、これはインビトロおよびインビボにおける成熟RGCの作製に至った(図13A、14A~B、および16A~J)。
【0330】
これらの細胞の治療能力を試験するための予備的な研究では、GFP+hESC-RGCPを人工緑内障のマウスの硝子体に注射した。RGCP移植を受けた緑内障マウスにおいて、有意に改善したRGC生存が観察され(図13A、下パネル)、RGC機能の尺度である陽性の暗所閾値電位(pSTR)の増大した振幅を伴った(図14A~C)。
【0331】
重度の視神経症におけるRGCPの治療能力をさらに立証するために、かかる細胞が視神経挫滅損傷モデルにおいて喪失したRGCを代替し新しい軸索を形成する能力を分析した。結果は、移植された細胞の全てがTuj1+RGCに分化し、細胞注射の3週間後に確かな遊走、同化、および新しい神経突起の形成を示したということを明らかにした(図16A~J)。
【0332】
これらの組み合わされた結果は、ヒトPSC-RGCPが緑内障治療に用いられ得、視神経症の他の形態の処置にもまた用いられ得るということを示している。
【0333】
表1
【表1-1】
【0334】
【表1-2】
【0335】
【表1-3】
【0336】
【表1-4】
【0337】
【表1-5】
【0338】
【表1-6】
【0339】
【表1-7】
【0340】
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図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B-1】
図3B-2】
図4
図5
図6A-B】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B-C】
図14D
図15
図16A-J】