(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】IL-15タンパク質複合体医薬組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20230417BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230417BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230417BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230417BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230417BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230417BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230417BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230417BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20230417BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20230417BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
A61K38/20 ZNA
A61K38/17
A61K47/68
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/19
A61P31/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P7/00
A61P7/06
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/00
A61P37/06
C07K19/00
C07K14/54
C07K14/715
(21)【出願番号】P 2020503306
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 CN2018096775
(87)【国際公開番号】W WO2019019998
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】201710611317.2
(32)【優先日】2017-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217124
【氏名又は名称】作山 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】ウー ティンティン
(72)【発明者】
【氏名】リー ハオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ シュン
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/095642(WO,A1)
【文献】特表2008-535819(JP,A)
【文献】特表2013-505270(JP,A)
【文献】国際公開第2017/054646(WO,A1)
【文献】"Best Practices in Formulation and Lyophilization Development", Baxter Biopharma Solutions, 2016-12, [retrieved on 2022-07-05], <https://biopharmasolutions.baxter.com/sites/g/files/ebysai3806/files/2021-07/Baxter_Best_Practices_Formulation_and_Lyo_Development.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/20
A61K 38/17
A61K 9/08
A61K 47/12
A61K 47/26
A61K 9/08
A61K 9/19
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1mg/ml~10mg/mlのIL-15タンパク質複合体、
(b)5mM~30mMのクエン酸緩衝液、
(c)60mg/ml~90mg/mlのトレハロース、および
(d)0.1mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20
を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物のpHは約5.0~6.0であり、
前記IL-15タンパク質複合体は、配列番号1のIL-15と、配列番号2のIL-15受容体の融合タンパク質とからなる、医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約1mg/ml~5mg/mlである、医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約0.9mg/ml~1.1mg/mlである、医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、1mg/mlである、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは約5.0~5.5である、医薬組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25である、医薬組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物のpHは5.2である、医薬組成物。
【請求項8】
前記クエン酸緩衝液の濃度は約5mM~20mMである、請求項1~7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記クエン酸緩衝液の濃度は約10±2mMである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記クエン酸緩衝液の濃度は10mMである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記クエン酸緩衝液のpHは約5.0~5.5である、請求項1~10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記クエン酸緩衝液のpHは約5.15~5.25である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記クエン酸緩衝液のpHは5.2である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記クエン酸緩衝液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液である、請求項1~13のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記トレハロースの濃度は約75mg/ml±5mg/mlである、請求項1~14のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記トレハロースの濃度は75mg/mlである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ポリソルベート20の濃度は約0.4mg/ml~0.6mg/mlである、請求項1~16のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記ポリソルベート20の濃度は0.5mg/mlである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
以下を含む、請求項1~18のいずれかに記載の医薬組成物:
(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体、
(b)10mM±2mMのクエン酸緩衝液、
(c)75mg/ml±5mg/mlのトレハロース、および
(d)0.4mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20、
前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25である。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の医薬組成物を調製する方法であって、前記方法は、前記IL-15タンパク質複合体を前記クエン酸緩衝液と混合する工程を含み、
前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約1mg/ml~10mg/mlである、方法。
【請求項21】
前記クエン酸緩衝液の濃度は約5mM~30mMであり、
前記クエン酸緩衝液のpHは、約5.0~6.0である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
トレハロースおよびポリソルベート20を添加する工程を更に含み、
前記トレハロースの濃度は、約60mg/ml~90mg/mlであり、
前記ポリソルベート20の濃度は、約0.1mg/ml~0.6mg/mlである、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~19のいずれかに記載の医薬組成物を形成するように再構成されることを特徴とする、凍結乾燥製剤。
【請求項24】
IL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、請求項1~19のいずれかに記載の医薬組成物を凍結乾燥する工程を含む、方法。
【請求項25】
前記凍結乾燥の工程が、予備凍結、一次乾燥および二次乾燥の工程を連続的に含む、請求項24に記載のIL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法。
【請求項26】
IL-15関連の疾患または状態の治療用の医薬品の製造における、請求項1~19のいずれかに記載の医薬組成
物または請求項2
3に記載の凍結乾燥製
剤の使用。
【請求項27】
前記IL-15関連の疾患または状態は、感染症、癌、血液疾患、炎症性疾患、および自己免疫疾患からなる群から選択される、請求項
26に記載の使用。
【請求項28】
前記癌は、メラノーマ、結腸直腸癌、皮膚癌、リンパ腫、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、胃癌、および乳癌からなる群から選択され;
前記感染症は、天然痘ウイルス(variola virus)感染症、HIV感染症、細菌感染症、真菌感染症およびHBV感染症からなる群から選択され;
前記血液疾患は、貧血、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびT細胞大顆粒リンパ球性白血病からなる群から選択され;
前記自己免疫疾患は、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、胃炎および粘膜炎からなる群から選択される、請求項
27に記載の使用。
【請求項29】
前記医薬組成物または前記凍結乾燥製
剤が、低分子阻害剤または抗体薬と組み合わせて投与され;
前記低分子阻害剤は、ターゲティング化学療法薬または放射線治療薬であり;
前記抗体薬は、モノクローナル抗体薬である、請求項
26~
28のいずれかに記載の使用。
【請求項30】
前記低分子阻害剤は、アルキル化剤であり;
前記抗体薬は、抗CD20抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗Her2抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体である、請求項
29に記載の使用。
【請求項31】
細胞免疫療法用の医薬品の調製における、請求項1~18のいずれかに記載の医薬組成
物または請求項2
3に記載の凍結乾燥製
剤の使用であって、前記細胞免疫療法は、樹状細胞免疫療法(Dendritic Cell Immunotherapy)、サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法(Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、樹状細胞-サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法(Dendritic Cell-Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、強化型サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法(Enhanced Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、ナチュラルキラー細胞免疫療法(Natural Killer Cell Immunotherapy)、複合抗原刺激T細胞免疫療法(Combined Antigen Stimulated T Cell Immunotherapy)、二重特異性抗原結合T細胞免疫療法(Bispecific antigen binding T cell immunotherapy)、T細胞受容体改変T細胞免疫療法(T cell receptor-engineered T-Cell Immunotherapy)およびキメラ抗原受容体T細胞免疫療法(Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy)からなる群から選択される腫瘍細胞の免疫療法である、使用。
【請求項32】
容器を含む製品であって、前記容器は、請求項1~19のいずれかに記載の医薬組成
物を含む、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬製剤の分野に属し、特に、本発明はIL-15タンパク質複合体を含む医薬組成物および医薬品としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-15(IL-15)は、1994年にGrabsteinらによって発見された約12~14kDのサイトカインである。IL-15は、T細胞、B細胞、およびナチュラルキラー細胞(NK)の増殖を促進するなど、in vivoでの正常な免疫応答において役割を果たすことができる。
【0003】
IL-15は、短い4本のα-ヘリックスのバンドルからなるサイトカインファミリー(Small Four α-helix Bundle Family of Cytokines)のメンバーである。IL-15は、その受容体に結合することで生物学的活性を発揮する。IL-15受容体は、3つの受容体サブユニットからなる:IL-15受容体α(IL-15Rα)、IL-2受容体β(IL-2Rβ、IL-15RβまたはCD122とも呼ばれる)、およびγc(CD132とも呼ばれる)。IL-15RαはSushiドメインを含み、当該SushiドメインはIL-15に結合することができ、結合したIL-15の生物学的機能に不可欠である。
【0004】
近年、IL-15がその受容体IL-15Rαに結合して複合体を形成すると、IL-15の生物学的活性が著しく向上することが明らかになっている。記憶CD8+Tリンパ球(memory CD8+T lymphocytes)およびNT/NKT細胞の増殖を刺激することにおいて、IL-15とその可溶性受容体IL-15Rαとによって形成される複合体はIL-15単独よりも著しく優れていることが研究により示されている。IL-15/IL-15Rα複合体は、抗原によって刺激されたCD44highCD8+記憶T細胞を含むCD12high細胞の増殖を有意に増幅および誘導する。IL-15/IL-15Rα複合体が増殖を刺激し、メモリーCD8+T細胞の生存を維持する能力は、IL-15単独の場合の10倍であり、そのメカニズムは、トランスプレゼンテーション(trans-presentation)の効果に関連している可能性がある。
【0005】
腫瘍免疫療法の分野でのIL-15の良い期待のため、米国国立衛生研究所(NIH)は最初にIL-15を用いた腫瘍の治療に関する研究を実施し、臨床第I相試験に向けて研究を進めることを試みた。しかしながら、IL-15にはいくつかの問題があり、例えば低分子量およびin vivoでの短い半減期のため、IL-15の繰り返し投与量を制御することは難しく、全身的な免疫学的副作用を引き起こすことは容易である。したがって、in vivoでのIL-15の半減期を改善し、in vivoにおけるその生物学的活性を促進または増強する緊急の必要性がある。多くの国内外の企業または研究機関がIL-15免疫療法についての研究に従事し、例えば、特許CN100334112C(Shanghai Haixin Biotechnology Co.、Ltd.)は、微生物感染の治療における使用のためのIL-15-hIgG4Fcホモ二量体タンパク質に関する。本出願の複合分子(complex molecule)へのIL-15およびIL-15Rαの間のジスルフィド結合の導入は、分子安定性および生物学的活性を向上させることができ、その調製プロセスを簡略化することもできる。
【0006】
しかしながら、高分子タンパク質薬剤は、その高分子量および複雑な構造のため、分解、重合、または不所望の化学修飾を受けやすいなど、安定ではない。タンパク質薬剤を投与に適したものにするため、保管、輸送、およびその後の使用中の安定性を維持するため、ならびにより良い効果を発揮させるために、タンパク質薬剤の安定な製剤に関する研究が特に重要である。
【0007】
現在、多くの企業が、例えばCN103370339A、CN100334112、CN101735982、WO2007001677、US20070160578、WO2016/095642などのIL-15タンパク質複合体を開発している。しかしながら、新規構造を有するIL-15タンパク質複合体については、投与により適した当該IL-15タンパク質複合体を含む医薬組成物(製剤)を開発する必要が依然として存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、IL-15タンパク質複合体および緩衝液を含む医薬組成物を提供し、前記IL-15タンパク質複合体は、IL-15と、以下からなる群から選択されるいずれか1つとからなる:
IL-15受容体、
IL-15受容体の細胞外領域を含む断片、および
IL-15受容体の細胞外領域を含む融合タンパク質。
【0009】
前記緩衝液は、ヒスチジン緩衝液、コハク酸緩衝液、リン酸緩衝液およびクエン酸緩衝液からなる群から選択され、好ましくはクエン酸緩衝液、より好ましくはクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0010】
別の実施形態では、前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度(即ち、前記緩衝液に配合された前記IL-15タンパク質複合体の濃度)は、約1mg/ml~50mg/ml、好ましくは約1mg/ml~20mg/ml、最も好ましくは1mg/ml~10mg/mlである。非限定的な例として、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/mlが含まれる。
【0011】
別の実施形態では、前記医薬組成物中の前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約0.9mg/ml~1.1mg/ml、好ましくは約1mg/mlの少量の形態である。
【0012】
別の実施形態では、前記緩衝液の濃度は、約5mM~30mM、好ましくは約10mM~20mMであり、非限定的な例として10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mMを含み、より好ましくは約10mM±2mMを含み、最も好ましくは10mMを含む。
【0013】
別の実施形態では、前記医薬組成物中の前記緩衝液のpHは、約5.0~6.0、好ましくは約5.0~5.5であり、非限定的な例として約5.0、約5.1、約5.15、約5.2、約5.25、約5.3、約5.35、約5.4、約5.45、約5.5を含み、より好ましくは約5.15~5.25を含み、最も好ましくは約5.2を含む。
【0014】
更に、別の実施形態では、前記医薬組成物は糖類を更に含む。本開示における「糖類」は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセロール、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレチトース(melezitose)、メリトリオース、マンノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース(lactulose)、マルツロース(maltulose)、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルトキソース(iso-maltoxose)などからなる群から選択され得る、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む、従来の組成物(CH2O)nおよびその誘導体を含む。好ましい糖類は非還元二糖類であり、より好ましくはトレハロースまたはスクロースである。本開示において、「トレハロース」は好ましくはα、α-トレハロース二水和物である。
【0015】
別の実施形態では、前記医薬組成物中の前記糖類の濃度は、約60mg/ml~約90mg/ml、好ましくは75mg/ml±5mg/mlであり、非限定的な例は70mg/ml、71mg/ml、72mg/ml、73mg/ml、73mg/ml、74mg/ml、75mg/ml、76mg/ml、77mg/ml、78mg/ml、79mg/ml、80mg/mlを含み、最も好ましくは75mg/mlを含む。
【0016】
別の実施形態では、前記医薬組成物は界面活性剤を更に含む。前記界面活性剤は、ポリソルベート20(polysorbate 20)、ポリソルベート80(polysorbate 80)、ポロキサマー(poloxamer)、トリトン(Triton)、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、ステアリルスルホベタイン、ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、ステアリルサルコシン、リノレイルベタイン(linoleyl-betaine)、ミリスチルベタイン(myristyl-betaine)、セチルベタイン(cetyl-betaine)、ラウラミドプロピルベタイン(lauramido propyl-betaine)、コカラミドプロピルベタイン(cocaramide propyl-betaine)、オレアミドプロピルベタイン(oleyamide propyl-betaine)、ミリスチルアミドプロピルベタイン(myristylamide propyl-betaine)、パルミタミドプロピルベタイン(palmitamide propyl-betaine)、イソステアリン酸アミドプロピルベタイン(isostearamide propyl-betaine)、ミリスチルアミドプロピルジメチルアミン(myristylamide propyl-dimethylamine)、パルミタミドプロピルジメチルアミン(palmitamide propyl-dimethylamine)、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミン(isostearamide propyl-dimethylamine)、ナトリウムメチルココイル(sodium methyl cocoyl)、ナトリウムメチルオレイルタウレート(sodium methyl oleyl taurate)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンおよびプロピレングリコールの共重合体などからなる群から選択され得る。界面活性剤は、好ましくはポリソルベート80またはポリソルベート20、より好ましくはポリソルベート20である。
【0017】
別の実施形態では、前記医薬組成物中の前記界面活性剤の濃度は、約0.1mg/ml~0.6mg/ml、好ましくは約0.4mg/ml~0.6mg/mlであり、非限定的な例は0.4mg/ml、0.42mg/ml、0.44mg/ml、0.46mg/ml、0.48mg/ml、0.5mg/ml、0.52mg/ml、0.54mg/ml、0.56mg/ml、0.58mg/ml、0.6mg/mlを含み、最も好ましくは0.5mg/mlを含む。
【0018】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、
(a)1mg/ml~10mg/mlのIL-15タンパク質複合体、
(b)5mM~30mMのクエン酸緩衝液、
(c)60mg/ml~90mg/mlのトレハロース、および
(d)0.1mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20
を含み、前記医薬組成物のpHは約5.0~6.0である。
【0019】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/ml~5mg/mlのIL-15タンパク質複合体、(b)10~20mMのクエン酸緩衝液、(c)60mg/ml~90mg/mlのトレハロース、および(d)0.4mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20を含み、前記医薬組成物のpHは約5.0~5.5である。
【0020】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、
(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体、
(b)10mM±2mMのクエン酸緩衝液、
(c)75mg/ml±5mg/mlのトレハロース、および
(d)0.4mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20
を含み、前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25である。
【0021】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、
(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体、
(b)10mMのクエン酸緩衝液、
(c)75mg/mlのトレハロース、および
(d)0.5mg/mlのポリソルベート20
を含み、前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25、好ましくはpH5.2である。
【0022】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、および(b)10mMのクエン酸緩衝液を含み、前記医薬組成物のpHは約5.0~5.5である。
【0023】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1~5mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、(b)10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)60mg/mlのスクロース、および(d)0.4mg/mlのポリソルベート20を含み、前記医薬組成物のpHは約5.5である。
【0024】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、(b)10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、および(c)60mg/mlのトレハロースを含み、前記医薬組成物のpHは約5.5である。
【0025】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、(b)10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、および(c)90mg/mlのトレハロースを含み、前記医薬組成物のpHは約5.5である。
【0026】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、(b)10mM±2mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)75mg/ml±5mg/mlのトレハロース、および(d)0.4mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20を含み、前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25である。
【0027】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、(b)10mM±2mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)75mg/ml±5mg/mlのトレハロース、および(d)0.4mg/ml~0.6mg/mlのポリソルベート20を含み、前記医薬組成物のpHは約5.15~5.25である。
【0028】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、(a)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体、(b)10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、(c)75mg/mlのトレハロース、および(d)0.5mg/mlのポリソルベート20を含み、前記医薬組成物のpHは約5.2である。
【0029】
別の実施形態では、前記医薬組成物に含まれる前記IL-15タンパク質複合体は、配列番号1のポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するIL-15と、配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するIL-15受容体の融合タンパク質とからなる。
【0030】
好ましい実施形態では、前記IL-15タンパク質複合体は、配列番号1のIL-15と、配列番号2のIL-15受容体の融合タンパク質とからなる。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、少なくとも3か月間、少なくとも6か月間、少なくとも12か月間、少なくとも18か月間、または少なくとも24か月間、2~8℃で安定である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、少なくとも7日間、少なくとも14日間、または少なくとも28日間、40℃で安定である。
【0032】
本発明はまた、上記の医薬組成物を調製する方法を提供し、前記方法は、IL-15タンパク質複合体および緩衝液を用いて前記医薬組成物を調製することを含む。前記医薬組成物において、前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約1mg/ml~10mg/ml、好ましくは約1mg/ml~5mg/ml、より好ましくは約0.9mg/ml~1.1mg/ml、最も好ましくは1mg/mlである。
【0033】
前記緩衝液は好ましくはクエン酸緩衝液であり、前記緩衝液の濃度は好ましくは約5mM~30mM、より好ましくは約5mM~20mM、最も好ましくは約10mM±2mMであり、前記緩衝液のpHは約5.0~6.0であり、前記pHは好ましくは約5.0~5.5、最も好ましくは約5.15~5.25である。本開示において医薬組成物の調製に用いられる緩衝液のpHは、前記医薬組成物の最終pHと実質的に同じである。
【0034】
前記IL-15タンパク質複合体は、IL-15と、以下からなる群から選択されるいずれか1つとからなる:
IL-15受容体、
IL-15受容体の細胞外領域を含む断片、および
IL-15受容体の細胞外領域を含む融合タンパク質。
【0035】
具体的には、前記IL-15タンパク質複合体は、配列番号1のポリペプチドに対して少なくとも95%の配列同一性を有するIL-15と、配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも95%の配列同一性を有するIL-15受容体の融合タンパク質とからなる。
【0036】
好ましくは、前記IL-15タンパク質複合体は、配列番号1のIL-15と、配列番号2のIL-15受容体の融合タンパク質とからなる。
【0037】
別の実施形態では、上記の医薬組成物を調製する方法は、トレハロースおよびポリソルベート20を添加する工程を更に含み、好ましくは前記トレハロースの濃度は、約60mg/ml~90mg/ml、好ましくは75±5mg/ml、最も好ましくは75mg/mlであり、前記ポリソルベート20の濃度は、約0.1mg/ml~0.6mg/ml、好ましくは約0.4mg/ml~0.6mg/ml、最も好ましくは約0.5mg/mlである。
【0038】
本発明はまた、IL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、上記の医薬組成物を凍結乾燥する工程を含む、方法を提供する。
【0039】
別の実施形態では、前記IL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法に含まれる前記凍結乾燥の工程が、予備凍結、一次乾燥および二次乾燥の工程を連続的に含む。前記凍結乾燥の工程は、前記製剤を凍結し、その後、一次乾燥に適した温度で水を昇華することにより実施される。そのような条件下では、製品の温度は、前記製剤の共晶点または分解温度よりも低い。典型的には約50~250mTorrの範囲の適切な圧力下で、一次乾燥の温度範囲は、典型的には約-30~25℃である(一次乾燥中、製品が凍結したままであると仮定)。乾燥に必要な時間は、製剤のサイズおよび種類、サンプルを含む容器(ガラスバイアルなど)、ならびに液体の量に依存する。当該時間は、数時間から数日間の範囲であり得る(例えば、40~60時間)。二次乾燥は約0~40℃で実施され得るが、主に容器の種類およびサイズと、使用するタンパク質の種類とに依存する。二次乾燥の時間は、製品中の所望の残留水分レベルによって決定され、典型的には少なくとも約5時間が必要とされる。典型的には、低圧下で凍結乾燥された製剤は、約5%未満、好ましくは約3%未満の含水量を有する。圧力は、一次乾燥の工程で加えられる圧力と同じであってもよい。好ましくは、二次乾燥中に印加される圧力は、一次乾燥中に印加される圧力よりも低い。凍結乾燥の条件は、製剤およびバイアルのサイズによって異なる場合がある。本開示の予備凍結は、真空度に関係なく、5℃~-40℃または5℃~-50℃の凍結を意味し、好ましくは-45℃の凍結を意味する。一次乾燥の温度は、好ましくは-25℃である;真空度は0.01mBar~0.2mBarであり、最も好ましくは0.08mBarである。二次乾燥の温度は20℃~30℃、最も好ましくは25℃であり、真空度は0.01mBar~0.2mBar、最も好ましくは0.08mBarであり、真空度は0.005mBar~0.02mBar、最も好ましくは0.01mBarに低下される。
【0040】
本開示はまた、上記のIL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法により調製される、IL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤を提供する。
【0041】
本開示はまた、上記の医薬組成物を含む凍結乾燥製剤の再構成溶液を調製する方法であって、前記方法は上記の凍結乾燥製剤を再構成する工程を含み、前記再構成に使用される溶媒が好ましくは注射用水である、方法を提供する。
【0042】
本開示はまた、上記の再構成溶液を調製する方法により調製される、IL-15タンパク質複合体を含む再構成溶液を提供する。
【0043】
別の実施形態では、前記再構成溶液ににおいて、前記IL-15タンパク質複合体の濃度は、約0.9mg/ml~1.1mg/ml、好ましくは約1mg/mlである。
【0044】
別の実施形態では、前記再構成溶液において、前記医薬組成物は、約5.0~6.0、好ましくは約5.0~5.5、より好ましくは約5.15~5.25、最も好ましくは5.2のpHを有する。
【0045】
別の実施形態では、前記再構成溶液はクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液を含み、前記緩衝液の濃度が約5mM~30mM、好ましくは約10mM~20mM、より好ましくは10mMである。
【0046】
別の実施形態では、前記再構成溶液は二糖類を更に含み、前記二糖類が好ましくはトレハロースおよびスクロースからなる群から選択され、最も好ましくはトレハロースである。
【0047】
別の実施形態では、前記再構成溶液において、前記糖類の濃度は、約60mg/ml~90mg/ml、好ましくは約75±5mg/ml、より好ましくは75mg/mlである。
【0048】
別の実施形態では、前記再構成溶液は界面活性剤を更に含み、前記界面活性剤は好ましくはポリソルベート、より好ましくはポリソルベート20である。
【0049】
別の実施形態では、前記再構成溶液において、前記界面活性剤の濃度は、約0.1mg/ml~0.6mg/ml、好ましくは約0.4mg/ml~0.6mg/ml、最も好ましくは0.5mg/mlである。
【0050】
本開示はまた、IL-15タンパク質複合体を含む凍結乾燥製剤に関し、前記凍結乾燥製剤は上記の医薬組成物を形成するように再構成される。
【0051】
本開示は、容器を含む製品またはキットを更に提供し、前記容器は、本明細書に記載のいずれかの医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、ガラスバイアルは、中性ホウケイ酸ガラス製の注射用バイアルである。
【0052】
本開示は、IL-15関連の疾患または状態の治療用の医薬品の製造における、上記の医薬組成物または凍結乾燥製剤または前記凍結乾燥製剤の再構成溶液の使用を更に提供する。
【0053】
別の実施形態では、上記の使用において記載される疾患または状態は、感染症、癌、血液疾患、炎症性疾患、および自己免疫疾患からなる群から選択され;前記癌は、好ましくは、メラノーマ、結腸直腸癌、皮膚癌、リンパ腫、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、胃癌、および乳癌からなる群から選択され;前記感染症は、好ましくは、天然痘ウイルス(variola virus)感染症、HIV感染症、細菌感染症、真菌感染症およびHBV感染症からなる群から選択され;前記血液疾患は、好ましくは、貧血、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびT細胞大顆粒リンパ球性白血病からなる群から選択され;前記自己免疫疾患は、好ましくは、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、胃炎および粘膜炎からなる群から選択される。
【0054】
別の実施形態では、上記の使用にしたがって、医薬組成物または凍結乾燥製剤または前記凍結乾燥製剤の再構成溶液が、低分子阻害剤または抗体薬(antibody drug)と組み合わせて投与され;前記低分子阻害剤は、好ましくはターゲティング化学療法薬(targeting chemotherapeutic drug)または放射線治療薬、より好ましくはアルキル化剤(alkylating agent)であり;前記抗体薬は、好ましくはモノクローナル抗体薬、より好ましくは抗CD20抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗Her2抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体である。
【0055】
本開示はまた、細胞免疫療法用の医薬品の調製における、上記の医薬組成物または凍結乾燥製剤または前記凍結乾燥製剤の再構成溶液の使用を提供し、特に、前記細胞免疫療法は、DC(樹状細胞免疫療法、Dendritic Cell Immunotherapy)、CIK(サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、DC-CIK(樹状細胞-サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、Dendritic Cell-Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、ECIK(強化型サイトカイン誘導キラー細胞免疫療法、Enhanced Cytokine Induced Killer Cell Immunotherapy)、NK(ナチュラルキラー細胞免疫療法、Natural Killer Cell Immunotherapy)、CAS-T(複合抗原刺激T細胞免疫療法、Combined Antigen Stimulated T Cell Immunotherapy)、BiAb-T(二重特異性抗原結合T細胞免疫療法、Bispecific antigen binding T cell immunotherapy)、TCR-T(T細胞受容体改変T細胞免疫療法、T cell receptor engineered T-Cell Immunotherapy)およびCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞免疫療法、Chimeric Antigen Receptor T-Cell Immunotherapy)などの腫瘍細胞の免疫療法である。
【0056】
本開示は、上記の医薬組成物または凍結乾燥製剤または前記凍結乾燥製剤の再構成溶液を対象(subject)に投与する工程を含む、IL-15関連の疾患または状態を治療する方法を更に提供する。
【0057】
別の実施形態では、上記のIL-15関連の疾患または状態を治療する方法において、前記疾患または状態は、感染症、癌、血液疾患、炎症性疾患、および自己免疫疾患からなる群から選択される。
【0058】
前記癌は、好ましくは、メラノーマ、結腸直腸癌、皮膚癌、リンパ腫、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、胃癌、および乳癌からなる群から選択され;前記感染症は、好ましくは、天然痘ウイルス(variola virus)感染症、HIV感染症、細菌感染症、真菌感染症およびHBV感染症からなる群から選択され;前記血液疾患は、好ましくは、貧血、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群およびT細胞大顆粒リンパ球性白血病からなる群から選択され;前記自己免疫疾患は、好ましくは、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、胃炎および粘膜炎からなる群から選択される。
【0059】
別の実施形態では、前述のIL-15関連の疾患または状態を治療する方法において、医薬組成物または凍結乾燥製剤または前記凍結乾燥製剤の再構成溶液が、低分子阻害剤または抗体薬(antibody drug)と組み合わせて投与され;前記低分子阻害剤は、好ましくはターゲティング化学療法薬(targeting chemotherapeutic drug)または放射線治療薬、より好ましくはアルキル化剤(alkylating agent)であり;前記抗体薬は、好ましくはモノクローナル抗体薬、より好ましくは抗CD20抗体、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、抗Her2抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体である。
【0060】
本明細書に記載の様々な実施形態の特徴の1つ、いくつか、またはすべてを組み合わせて、本開示の他の実施形態を形成し得ることを理解されたい。本開示のこれらおよび他の態様は、当業者には明らかであろう。本開示のこれらおよび他の実施形態は、以下の詳細な説明によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】D0と比較したときの、振盪後のSECの純度値の差を示すフィッティングカーブチャートである。
【
図2】D0と比較したときの、非還元CE-SDSの使用による、振盪後の純度値の差を示すフィッティングカーブチャートである。
【
図3】振盪後のSECおよび非還元CE-SDSの値の差を示す等高線図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
I.用語
本開示をより容易に理解するために、特定の技術用語および科学用語を以下で具体的に定義する。本明細書で使用される他のすべての技術用語および科学用語は、本明細書で明示的に別の定義がされていない限り、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0063】
「緩衝液」とは、その酸-塩基コンジュゲート成分の作用により、pH変化に耐性がある緩衝液を指す。pHを適切な範囲内に制御する緩衝液の例は、酢酸緩衝液、コハク酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グリシルグリシン緩衝液および他の有機酸の緩衝液を含む。
【0064】
「ヒスチジン緩衝液」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝液である。ヒスチジン緩衝液の例は、ヒスチジン-塩酸(histidine-hydrochloride)緩衝液、ヒスチジン-酢酸(histidine-acetate)緩衝液、ヒスチジン-リン酸(histidine-phosphate)緩衝液、ヒスチジン-硫酸(histidine-sulfate)緩衝液などを含み、ヒスチジン-塩酸(histidine-hydrochloride)緩衝液が好ましい。ヒスチジン-塩酸緩衝液は、ヒスチジンおよび塩酸によって、またはヒスチジンおよび塩酸ヒスチジンによって調製される。「クエン酸緩衝液」は、クエン酸イオンを含む緩衝液である。クエン酸緩衝液の例は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-ヒスチジン、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウムなどを含む。好ましいクエン酸緩衝液は、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0065】
「コハク酸緩衝液」は、コハク酸イオンを含む緩衝液である。コハク酸緩衝液の例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸ヒスチジン、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウムなどを含む。好ましいコハク酸緩衝液は、コハク酸-コハク酸ナトリウム緩衝液である。
【0066】
「リン酸緩衝液」は、リン酸イオンを含む緩衝液である。リン酸緩衝液の例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウムなどを含む。好ましいリン酸緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝液である。
【0067】
「酢酸緩衝液」は、酢酸イオンを含む緩衝液である。酢酸緩衝液の例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましい酢酸緩衝液は、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液である。
【0068】
「トレハロース」は「α、α-トレハロース二水和物」としても知られている。
【0069】
「医薬組成物」は、本明細書に記載のIL-15タンパク質複合体の1つ以上と、生理学的/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を意味する。医薬組成物の目的は、活性成分の吸収および生物学的活性を促進するために、安定した保管、輸送を容易にし、生物への投与を促進することである。本明細書で使用される場合、「医薬組成物」および「製剤」は相互に排他的ではない。
【0070】
本開示によれば、別段の指定がない限り、医薬組成物の溶液形態の溶媒は水である。
【0071】
「凍結乾燥製剤」は、液体または溶液形態の医薬組成物または製剤の真空凍結乾燥により得られる製剤または医薬組成物を意味する。
【0072】
本開示の医薬組成物は、安定した効果を達成することができる:医薬組成物に含まれるタンパク質複合体は、保管中にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物活性を実質的に保持する。好ましくは、当該医薬組成物は、保管中にその物理的安定性および化学的安定性ならびに生物学的活性を実質的に保持する。保管の長さは一般に、医薬組成物の所定の貯蔵寿命に基づいて選択される。現在、タンパク質の安定性を測定するための多くの分析手法があり、選択された温度で選択された期間保管された後の安定性を測定するために当該分析手法を使用することができる。
【0073】
安定なタンパク質医薬製剤は、以下の条件下で有意な変化が観察されない製剤である:少なくとも3か月間、好ましくは6か月間、より好ましくは1年間、更により好ましくは最長で2年間、低温(2~8°C)にて保管。さらに、安定した液体製剤は、25℃~40℃の温度で1か月、3か月、または6か月間保管された後に所望の特性を示すものを含む。通常、安定性の許容基準は以下の通りである:SEC-HPLCで測定した場合、通常、タンパク質複合体モノマーの約10%以下、好ましくは約5%以下しか分解されない;目視検査で、医薬製剤は無色または透明からわずかに乳白色である;製剤の濃度、pH、および浸透圧に±10%以下の変動しか生じない;一般に、約10%以下、好ましくは約5%以下のトランケーション(truncation)しか観察されない;一般に、約10%以下、好ましくは約5%以下の凝集体(aggregate)しか形成されない。
【0074】
タンパク質複合体は、当該タンパク質複合体が、色および/もしくは透明度の目視検査により、またはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および動的光散乱(DLS)による測定により、凝集、沈殿および/または変性の有意な増加を示さない場合、医薬製剤中において「その物理的安定性を保持する」とみなされる。タンパク質の立体構造の変化は、タンパク質の三次構造を決定する蛍光分光法と、タンパク質の二次構造を決定するFTIR分光法によって評価することができる。
【0075】
タンパク質複合体は、当該タンパク質複合体が有意な化学修飾を示さない場合、医薬製剤中において「その化学的安定性を保持する」とみなされる。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変化した形態を検出および定量化することにより評価することができる。タンパク質の化学構造をしばしば変化させる分解プロセスは、加水分解またはトランケーション(サイズ排除クロマトグラフィーやSDS-PAGEなどの方法で評価される)、酸化(質量分析またはMALDI/TOF/MSと組み合わせたペプチド分光法などの方法で評価される)、脱アミド化(イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチド分光法、イソアスパラギン酸測定などの方法で評価される)、および異性化(例えばイソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチド分光法により評価される)を含む。
【0076】
所定時間でのタンパク質複合体の生物活性が、医薬製剤が最初に調製された時点で示された生物活性から所定の範囲内に依然としてある場合、タンパク質複合体は医薬製剤中において「その生物活性を保持する」とみなされる。タンパク質複合体の生物活性は、例えば、抗原結合アッセイにより決定することができる。
【0077】
本開示で使用されるアミノ酸の3文字コードおよび1文字コードは、J.biol.chem、243、3558頁(1968年)に記載されている。
【0078】
「IL-15タンパク質複合体」は、IL-15タンパク質とIL-15受容体(およびIL-15受容体の機能断片を含むタンパク質)とによって形成されるタンパク質複合体であり、IL-15受容体の機能断片には、IL-15受容体の細胞外領域を含む断片、またはIL-15受容体の細胞外領域を含む融合タンパク質が含まれる。「IL-15タンパク質複合体3」は、WO2016/095642に記載されているタンパク質複合体3を指し、当該タンパク質複合体3はIL-15Rα-Sushi+(S40C)-Fcに結合した変異IL-15(L52C)によって形成されるタンパク質複合体であり、ここで、IL-15はL52C変異を有し、IL-15Rαの細胞外領域はS40C変異を有し(IL-15Rα-Sushi)、IL-15Rα-Sushi+(S40C)はFcに融合されている。
【0079】
IL-15(L52C)(配列番号1):
【化1】
IL-15Rα-Sushi+(S40C)-Fc(配列番号2):
【化2】
【0080】
タンパク質を生産および精製する方法は、Molecular Cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press、第5~8章および第15章などのように、当技術分野で周知である。
【0081】
本開示の改変タンパク質複合体(engineered protein complex)は、従来の方法によって調製および精製することができる。例えば、IL-15およびIL-15受容体をコードするcDNA配列をクローン化し、GS発現ベクターに組み込むことができる。組換えタンパク質発現ベクターは、CHO細胞に安定的にトランスフェクトすることができる。推奨される先行技術として、哺乳動物発現系は、タンパク質のグリコシル化、特にFc領域の高度に保存されたN末端部位におけるグリコシル化をもたらし得る。安定なクローンは、ヒトIL-15に特異的に結合するタンパク質を発現させることにより得ることができる場合がある。タンパク質複合体を生産するために、陽性クローンはバイオリアクター内の無血清培地中で増殖させられる(expanded)。タンパク質が分泌される培地は、従来技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むAまたはGセファロースFFカラムを使用して精製が行われる。非特異的に結合した成分は洗い流される。結合したタンパク質複合体はpHグラジエントによって溶出され、タンパク質画分がSDS-PAGEによって検出され、収集される。タンパク質複合体は、従来の方法を用いたろ過により濃縮することができる。可溶性の混合物および多量体(multimers)は、モレキュラーシーブ(molecular sieves)、イオン交換などの従来の方法で除去することができる。得られた産物は、-70℃などで直ちに凍結するか、または凍結乾燥する必要がある。
【0082】
アミノ酸配列の「同一性」は、2つのタンパク質またはポリペプチドの間の配列類似性を指す。比較対象の2つの配列中の位置が同じアミノ酸残基で占められている場合、例えば2つのポリペプチド中の位置が同じアミノ酸残基で占められている場合、分子はその位置で同一であると見なされる。パーセント配列同一性およびパーセント配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschul et al. (1990年) J.Mol.Biol. 215:403-410頁およびAltschul et al. (1977年) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402頁に記載されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で公開されている。
【0083】
「投与」および「治療」は、動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官または生物学的流体に適用される場合、外因性薬物、治療薬、診断薬または組成物を、当該動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官または生物学的流体と接触させることを指す。「投与」および「治療」は、例えば、治療上の、薬物動態学的、診断上の研究および実験方法を指し得る。細胞の治療は、試薬を細胞と接触させること、および試薬を流体と接触させることを含み、当該流体は細胞と接触している。「投与」および「治療」は、例えば、試薬、診断薬、結合組成物、または別の細胞を用いて、in vitroおよびex vivoで細胞を治療することも意味する。「治療」は、ヒト、獣医学的対象、または研究対象に適用される場合、治療的処置、予防的または予防的措置(prophylactic or preventive measures)、研究および診断への応用を指す。
【0084】
「治療」は、内用または外用のための患者への治療薬の投与、例えば、本開示の結合化合物のいずれかを含む組成物の投与を意味し、当該患者は疾患の1つ以上の症状を有しており、当該治療薬はこれらの症状に対して治療効果を有することが知られている。一般に、任意の臨床的に測定可能な程度で、症状の退化(degeneration)またはそのような症状の進行の阻害を誘発するように、治療薬は、疾患の1つ以上の症状を効果的に緩和する量で治療される対象または集団に投与される。特定の疾患の症状を効果的に緩和する治療薬の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の病状、年齢および体重、ならびに患者に所望の効果をもたらす薬剤の能力などの様々な要因によって異なり得る。状態の重症度または進行を評価するために医師または他の専門医療提供者によって一般的に用いられる任意の臨床検査法を使用して、疾患の症状が緩和されたかどうかを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法または製品)は、単一の標的疾患の症状を改善するのに効果的ではないかもしれないが、スチューデントのt検定、カイ2乗検定、マン・ホイットニーのU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール-タプストラ検定、およびウィルコクソン検定などの当技術分野で知られている任意の統計的試験に従って、統計的に有意な数の患者において、標的疾患の症状を緩和するべきである。
【0085】
「有効量」は、医学的疾患の症状または状態を改善または予防するのに十分な量を含む。有効量はまた、診断を可能にするか、または診断を促進するのに十分な量を意味する。特定の患者または獣医学的対象(veterinary subject)の有効量は、治療される状態(condition to be treated)、患者の全体的な健康状態、投与の方法、経路および量、ならびに副作用の重症度などの因子に応じて異なり得る。有効量は、重大な副作用または毒性作用を回避する最大の用量または投与レジメンであり得る。
【実施例】
【0086】
II.実施例および試験例
本開示は、以下の実施例で更に説明される。ただし、これらの実施例は、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0087】
本開示の実施例または試験例において特定の条件が具体的に示されていない実験方法は、一般的に、従来の条件または製造業者が推奨する条件に従って実施された。J.Sambrook et al.,Molecular cloning: a laboratory manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press;Frederick M. Ausubel, The Modern Molecular Biology Method, Greene Press Associationを参照。ソースが特に示されていない試薬は、市場からルーチン的に購入された。
【0088】
IL-15タンパク質複合体を含む医薬組成物(製剤)の調製プロセス
実施例
IL-15タンパク質複合体を含む医薬組成物(製剤)の調製プロセスは、以下の通りである(各製剤の成分および組成は、タンパク質複合体の安定性に基づいて選択および調整することができる)。
【0089】
第1工程:IL-15タンパク質複合体3(IL-15タンパク質複合体3の調製、発現、および精製については、参照によりその全体が本明細書に援用される、2015年11月17日に出願された特許出願WO2016/095642(出願番号PCT/CN2015/094780)を参照)および安定剤成分を含むストック溶液を調製し、ろ過してから無菌性試験用の溶液をサンプリングする。ストック溶液を0.22μmのPVDFフィルターに通し、ろ液を回収した。
【0090】
IL-15タンパク質複合体3は、以下のポリペプチドからなる:
IL-15(L52C)(配列番号1):
【化3】
IL-15Rα-Sushi+(S40C)-Fc(配列番号2):
【化4】
【0091】
第2工程:ローディング量を1.1mlに調整し、ストッパーが不完全に差し込まれた状態で、ろ液を2mlバイアルに充填した。ローディングの違いを監視するために、充填の最初、中間、および最後にそれぞれサンプリングが実行される。
【0092】
第3工程:液体溶液をスットパーとともに凍結乾燥チャンバーに充填し、凍結乾燥した。凍結乾燥は、事前凍結、一次乾燥、および二次乾燥の工程を連続して含む。凍結乾燥の手順が終了したら、ストッパーは真空下で完全に差し込まれる。
【0093】
第4工程:キャッピングマシンを使用して、アルミニウムキャップでキャッピングする。
【0094】
第5工程:コラプス(collapse)のない製品、ローディング量の正確性、およびその他の欠陥を確認するために、目視検査が実施された。バイアルのラベルが印刷され、バイアルに貼り付けられた。バイアルはペーパートレイ中に置かれ、ラベルを印刷してペーパートレイに貼り付けた。
【0095】
(実施例1)
濃度1mg/mLのIL-15タンパク質複合体3の製剤が、pH5.0~8.5の一連の緩衝液中で調製された。各製剤をろ過し、2mLバイアルに1mL/バイアルにて充填し、ストッパーで栓をして、キャップをして密封した。サンプルは、例えば40℃の高温に置くこと、凍結融解の繰り返しおよび振盪によって、強制劣化試験にかけられた。外観およびSECが評価指標として使用された。結果は、各緩衝液系におけるSECモノマーの純度が、40℃での強制劣化試験後に著しく低下することを示した。しかしながら、クエン酸系における低下が最も少なかった。振盪、凍結融解後、各緩衝液系(リン酸系を除く)におけるSECは、D0のSECと比較して有意な変化を示さなかった。したがって、クエン酸が緩衝液系として選択された。クエン酸系の場合、pH6.0では、凍結融解後の外観および40℃でのSECはわずかに悪化した。したがって、pH5.0~5.5での条件の方が優れていた。
【0096】
【0097】
(実施例2)
濃度1mg/mLのIL-15タンパク質複合体3、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム、60mg/mLスクロース、pH5.5を含む製剤は、以下のような様々な濃度の界面活性剤を含む緩衝液中で調製された:
1)0.2mg/mLポリソルベート20
2)0.4mg/mLポリソルベート20
3)0.2mg/mLポリソルベート80
4)0.4mg/mLポリソルベート80
【0098】
各製剤をろ過し、2mLバイアルに1mL/バイアルにて充填し、ストッパーで栓をして、キャップをして密封した。サンプルは、例えば40℃の高温に置くこと、および凍結融解の繰り返しによって、強制劣化試験にかけられた。安定性の結果は、異なる製剤間で外観およびSECにおいて有意な差がないことを示した。40℃の高温および凍結融解の条件下で得られた非還元CE-SDSの結果は、0.4mg/mLポリソルベート20グループにおける安定性がより優れていることを示した。
【0099】
【0100】
(実施例3)
濃度1mg/mLのIL-15タンパク質複合体3、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウムを含む医薬製剤が、α、α-トレハロース二水和物およびスクロースをそれぞれ含む緩衝液(pH5.5)中で調製された。各製剤をろ過し、2mLバイアルに1mL/バイアルにて充填し、ストッパーで栓をして、キャップをして密封した。サンプルは、例えば40℃の高温に置くこと、および凍結融解の繰り返しによって、強制劣化試験にかけられた。結果は、トレハロース系におけるIL-15タンパク質複合体3の安定性が、スクロース系におけるIL-15タンパク質複合体3の安定性よりも優れていることを示した。
【0101】
【0102】
(実施例4)
製剤の最適化
トレハロースおよびポリソルベート20の濃度、イオン強度、ならびにpHを更に最適化するために、DOE実験がJMPソフトウェアを使用して設計され、タンパク質濃度が1mg/mLであるRSMモデルを使用して、一連の製剤が得られた。溶液は、SECおよび非還元CE-SDSを評価指標として使用した強制劣化法に供され、結果が最小二乗検定により統計的に分析された。DOEパラメーターを表4に示した。試験製剤および結果を表5および表6に示した。統計分析結果を
図1~3に示した。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
強制劣化から得られたデータをフィッティングし、結果は以下の通りであった:D0およびD15(振盪後)の間のSECモノマー純度の値の差がフィッティングされ(当該差の値が負の場合は0とみなす)、R2>0.99、P<0.05で、モデルは妥当であった。結果を
図1に示した。
【0107】
非還元CE-SDSを使用することで、D0およびD15(振盪後)の間の純度の値の差がフィッティングされ、R2>0.98、P<0.05で、モデルは妥当であった。結果を
図2に示した。
【0108】
他のデータについては、フィッティングが無効であった。
【0109】
凍結乾燥製剤の良好な圧縮性および適切な浸透圧を確保するために、トレハロースの濃度は7.5±0.5%(75±5mg/ml)に設定された。10±2mMのイオン強度は十分な緩衝能力を有することが明らかになった。
【0110】
トレハロースの濃度は7.5%(75mg/ml)に設定され、イオン強度は10mMに設定され、pHは横軸にプロットされ、ポリソルベートの濃度は縦軸にプロットされ、振盪後のSECおよび非還元CE-SDSの値の差を示すために、等高線図がプロットされた。結果を
図3に示した。タンパク質複合体の等電点と組み合わせた図に示された結果に基づいて、製剤の好ましいpH範囲がpH5.15~pH5.25であり、ポリソルベートの濃度は0.4~0.6mg/mlであることがわかる。
【0111】
(実施例5)
IL-15タンパク質複合体3は、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム(pH5.2)、75mg/mLのα、α-トレハロース二水和物、0.5mg/mLのポリソルベート20、pH5.2中にて、1.0mg/mLで製剤された。該タンパク質を2mLバイアルに1.1mL/バイアルにて充填し、それぞれ-25℃、-20℃、および-15℃の一次乾燥温度で凍結乾燥し、試験用に凍結乾燥されたゴムストッパーで密封した。結果は、様々な温度でのすべての再構成溶液の外観が要件を満たし、-25℃で凍結乾燥された製剤の外観がより優れており、粉末固形物(powder cake)はコラプス(collapse)がなく完全(full)であることを示した。
【0112】
【0113】
(実施例6)
IL-15タンパク質複合体3は、10mMクエン酸-クエン酸ナトリウム(pH5.2)、75mg/mLのα、α-トレハロース二水和物、0.5mg/mLのポリソルベート20、pH5.2中にて、1.0mg/mLで製剤された。該製剤は、ガラスバイアル、液体保存バッグ、316Lステンレススチールタンクにそれぞれ充填され、2~8℃および25℃でそれぞれ24時間放置された。外観、pH、タンパク質含有量および純度の分析は、IL-15タンパク質複合体3が24時間以内は安定であることを示した。該製剤は、ガラスバイアル、ステンレススチールタンク、液体保存バッグと適合性があった。
【0114】
【0115】
(実施例7)
他の代替的な医薬組成物(製剤)または再構成溶液
更に提供される安定な医薬製剤は以下を含む:
(1)5mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、75mg/mlのトレハロース、0.5mg/mlのポリソルベート20、および10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pH5.2;
(2)10mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、75mg/mlのトレハロース、0.5mg/mlのポリソルベート20、および10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pH5.2;
(3)10mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、75mg/mlのスクロース、0.5mg/mlのポリソルベート20、および10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pH5.25;
(4)0.9mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、60mg/mlのトレハロース、0.1mg/mlのポリソルベート20、および20mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0);
(5)1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、75mg/mlのトレハロース、0.5mg/mlのポリソルベート20、および10mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.2);
(6)1.1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、90mg/mlのトレハロース、0.6mg/mlのポリソルベート20、および30mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.5);
(7)0.9mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、60mg/mlのトレハロース、0.1mg/mlのポリソルベート20、および20mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pH5.0;
(8)1.1mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、90mg/mlのトレハロース、0.6mg/mlのポリソルベート20、および30mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、最終pH5.5;
(9)0.5mg/mlのIL-15タンパク質複合体3、65mg/mlのトレハロース、0.3mg/mlのポリソルベート20(pH5.3)、および15mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液。
【配列表】