(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】抗ベータアミロイド抗体を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230417BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230417BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230417BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230417BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P25/00
A61P25/28
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/20
A61K9/08
A61K39/395 Y
A61K39/395 W
(21)【出願番号】P 2020511254
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 US2018047508
(87)【国際公開番号】W WO2019040612
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-02
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398050098
【氏名又は名称】バイオジェン・エムエイ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Biogen MA Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ランツ, スティーブン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】グプタ, カピル
(72)【発明者】
【氏名】スレ, シャンタヌ
(72)【発明者】
【氏名】ズニック, アドナン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501247(JP,A)
【文献】特開2016-065079(JP,A)
【文献】特表2008-528638(JP,A)
【文献】特表2008-528612(JP,A)
【文献】特表2015-510871(JP,A)
【文献】特表2016-513635(JP,A)
【文献】特表2012-533548(JP,A)
【文献】特表2010-514454(JP,A)
【文献】mAbs, 2015, Vol.7, No.4, pp.792-803
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
75mg/ml~225mg/mlの濃度の抗ベータアミロイド(Aβ)抗体と、
150mMの濃度のアルギニン塩酸塩(Arg.HCl)と、
10mMの濃度のメチオニンと
、
20mMの濃度のヒスチジンと、
0.01%~0.1%の濃度のポリソルベート80(PS80)と
を含む医薬組成物であって、
前記医薬組成物のpHが5.2~6.2であり、
前記抗Aβ抗体が免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号9のアミノ酸配
列を含み、前記軽鎖が配列番号10のアミノ酸配
列を含む、医薬組成物。
【請求項2】
チオール含有酸化防止剤をさらに含む、請求項
1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、前記抗Aβ抗体を
、175mg/m
lの濃度で含む、請求項1
または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、前記抗Aβ抗体を、150mg/mlの濃度で含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、前記抗Aβ抗体を、100mg/mlの濃度で含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物がポリソルベート80(PS80)を0.03~0.08%の濃度で含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物がPS80を0.05%の濃度で含む、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物のpHが5.3~5.7である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物のpHが5.5である、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
150mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体、
150mMの濃度のArg.HCl、
10mMの濃度のメチオニン、
20mMの濃度のヒスチジン、
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記医薬組成物のpHが5.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
100mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体、
150mMの濃度のArg.HCl、
10mMの濃度のメチオニン、
20mMの濃度のヒスチジン、
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記医薬組成物のpHが5.5である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記チオール含有酸化防止剤が還元型グルタチオン(GSH)である、請求項
2または1
0に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記チオール含有酸化防止剤が、0.02mM~4mMの濃度である、請求項
2または1
2のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記チオール含有酸化防止剤が、0.4mMの濃度である、請求項
13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
175mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体、
150mMの濃度のArg.HCl、
10mMの濃度のメチオニン、
20mMの濃度のヒスチジン、
0.4mMの濃度のGSH、
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記医薬組成物のpHが5.5である、請求項
2に記載の医薬組成物。
【請求項16】
それを必要とするヒト対象において、(i)中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着、(ii)軽度の認知機能障害、または(iii)アルツハイマー病の治療における使用のための、請求項1~
15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
それを必要とするヒト対象において、アルツハイマー病の治療における使用のための、請求項1~
15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、前記ヒト対象に皮下投与されるものである、請求項
16または
17に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項19】
前記医薬組成物が、前記ヒト対象に静脈内投与されるものである、請求項
16または
17に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年8月22日に出願された米国仮出願第62/548,583号の優先権の利益を主張するものであり、参照によりその内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
分野
本願は、総じて、抗ベータアミロイド(Aβ)抗体を含む医薬組成物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0003】
Aβは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)の代謝によって生成するペプチドである。いくつかのAβペプチドアロ形が存在する(例えばAβ40及びAβ42)。これらの単量体ペプチドは、凝集してより高次の二量体及びオリゴマーとなる変化しやすい傾向を有している。可溶性オリゴマーは線維形成のプロセスを通じて、βプリーツシート構造を有する不溶性沈着物に遷移し得る。これらの沈着物はアミロイド斑とも呼称され、主として線維性アミロイドからなる(Hampel et al.,Exp Neurol.,223(2):334-46(2010)、Gregory and Halliday,Neurotox Res.,7(1-2):29-41(2005))。Aβの可溶性形態及び線維性形態の両方ともが、Aβの沈着を特徴とする障害、例えばアルツハイマー病(AD)における疾患プロセスの誘因となっているようである(Meyer-Luehmann,J Neurosci.,29(40):12636-40(2009)、Hock,Dialogues Clin Neurosci.,5(1):27-33(2003)、Selkoe,Cold Spring Harb Perspect Biol.,3(7).pii:a004457(2011))。
【0004】
アミロイド斑を認識する抗Aβ抗体の血清力価が高いAD患者は、抗Aβ抗体を有さない患者に比べて認知機能低下及び障害の速度がより遅い。しかも、高力価の抗Aβ抗体を発達させる患者は、長期追跡後に評価される脳Aβ斑の数の低減及び認知成績の改善を示す。これらの臨床データは、受動免疫療法の枠組みの中で抗Aβ抗体で処置されたAD患者が認知機能障害の軽減、より低い脳Aβ沈着物密度、及び認知力退歩の減速を示す可能性があることを示唆している。
抗Aβ抗体BIIB037は、グリコシル化ヒトIgG1重鎖及びヒトカッパ軽鎖を含む完全ヒト抗体である。組換え発現したBIIB037は高い見掛け親和性でヒトAβの高分子量凝集物、おそらくは線維に結合する。免疫組織化学によればBIIB037は、ヒトAD脳、及びヒトAPP発現遺伝子導入マウスに由来する脳組織においてAβ斑に対する高親和性の結合を示す。ヒトAβの高分子量凝集物に対するBIIB037の親和性及び特異性は、免疫沈降、イムノブロッティング及び免疫組織化学によって確認された。Tg2576AD遺伝子導入マウスにおいてBIIB037処置は、ELISAによって評価される脳での測定可能な薬物レベルをもたらす。Tg2576マウスにおけるBIIB037投与の後にはBIIB037に対する免疫反応性が脳実質及び血管のアミロイド沈着物に関連して認められ、このことから、BIIB037が脳実質に進入してその標的に結合することが示唆された。全身投与された抗Aβ抗体、例えばBIIB037は、脳に進入し、Aβの沈着物に結合し、脳からのそのクリアランスをFc受容体依存的機序によって誘発すると考えられる。抗体によって媒介される脳からのAβの除去は、Aβ負荷を減少させ、それによって神経機能障害を防止し、病状の進行を遅くし、ADにおける認知機能低下の速度を低減する、という仮説が立てられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hampel et al.,Exp Neurol.,223(2):334-46(2010)
【文献】Gregory and Halliday,Neurotox Res.,7(1-2):29-41(2005)
【文献】Meyer-Luehmann,J Neurosci.,29(40):12636-40(2009)
【文献】Hock,Dialogues Clin Neurosci.,5(1):27-33(2003)
【文献】Selkoe,Cold Spring Harb Perspect Biol.,3(7).pii:a004457(2011)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一部において、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含有する医薬組成物ならびに、中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着、軽度の認知機能障害、及びAβ関連障害、例えばアルツハイマー病の治療におけるそれらの使用に関する。
【0007】
一態様において、本開示は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片と、アルギニン塩酸塩(Arg.HCl)とを含む医薬組成物を特徴とする。
【0008】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLはBIIB037のCDRを含む。ある場合には、BIIB037の6つのCDRは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む。他の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、組成物は、Arg.HClを50~250mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はArg.HClを75~175mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はArg.HClを150mMの濃度で含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにポリソルベート80(PS80)を含む。いくつかの実施形態では、組成物はPS80を0.01~0.1%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はPS80を0.03~0.08%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はPS80を0.05%の濃度で含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物はさらに、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される緩衝剤を含む。場合によっては緩衝剤はヒスチジンである。場合によっては緩衝剤は酢酸塩である。場合によっては緩衝剤はコハク酸塩である。場合によっては緩衝剤はクエン酸塩である。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを20mMの濃度で含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにメチオニンを含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~150mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~125mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~100mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~75mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~50mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~20mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~15mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~50mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~75mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~100mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~125mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~150mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを10mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを50mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを75mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを100mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを125mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを150mMの濃度で含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにスクロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物はスクロースを0.01~5%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はスクロースを1~4%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はスクロースを3%の濃度で含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは5.2~6.2である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0016】
特定の実施形態では、医薬組成物は、50~250mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、50~200mMの濃度のArg.HCl、0~20mMの濃度のメチオニン、10~30mMの濃度のヒスチジン、0.01~0.1%の濃度のPS80、及び0~3%の濃度のスクロースを含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0017】
特定の実施形態では、医薬組成物は、150mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、10mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0018】
特定の実施形態では、医薬組成物は、100mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、10mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0019】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7の配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8の配列を含むかまたはそれからなる。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む。場合によっては、重鎖は、配列番号9と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。他の例では、重鎖は、配列番号9と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。さらに他の例では、重鎖は配列番号9の配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は配列番号10の配列を含むかまたはそれからなる。
【0021】
別の態様では、本開示は、中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0022】
別の態様では、本開示は、軽度の認知機能障害の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0023】
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0024】
これらの態様のいくつかの実施形態では、医薬組成物はヒト対象に皮下投与される。これらの態様のいくつかの実施形態では、医薬組成物はヒト対象に静脈内投与される。
【0025】
別の態様では、本開示は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片と、チオール含有酸化防止剤と、アルギニン塩酸塩(Arg.HCl)とを含む医薬組成物を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLはBIIB037のCDRを含む。ある場合には、BIIB037の6つのCDRは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む。他の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSHである。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSH及びGSSGである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.02~4mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.02~2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.4mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は1mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は4mMである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、0.4mMの濃度のGSH及び0.2mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、4mMの濃度のGSH及び2mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、2mMの濃度のGSH及び1mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、0.4mMの濃度のシステイン及び0.2mMの濃度のシスチンである。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物はArg.HClを50~250mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はArg.HClを75~175mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はArg.HClを150mMの濃度で含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにポリソルベート80(PS80)を含む。いくつかの実施形態では、組成物はPS80を0.01~0.1%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はPS80を0.03~0.08%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はPS80を0.05%の濃度で含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物はさらに、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される緩衝剤を含む。場合によっては緩衝剤はヒスチジンである。場合によっては緩衝剤は酢酸塩である。場合によっては緩衝剤はコハク酸塩である。場合によっては緩衝剤はクエン酸塩である。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを20mMの濃度で含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにスクロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物はスクロースを0.01~5%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はスクロースを1~4%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はスクロースを3%の濃度で含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにメチオニンを含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~150mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~125mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~100mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~75mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~50mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~20mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~15mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~50mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~75mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~100mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~125mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~150mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを10mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを50mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを75mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを100mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを125mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを150mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物のpHは5.2~6.2である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0034】
特定の実施形態では、医薬組成物は、50~250mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、50~200mMの濃度のArg.HCl、10~30mMの濃度のヒスチジン、0.01~0.1%の濃度のPS80、及び0~3%の濃度のスクロースを含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0035】
特定の実施形態では、医薬組成物は、150mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0036】
特定の実施形態では、医薬組成物は、100mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0037】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7の配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8の配列を含むかまたはそれからなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む。場合によっては、重鎖は、配列番号9と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。他の例では、重鎖は、配列番号9と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。さらに他の例では、重鎖は配列番号9の配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は配列番号10の配列を含むかまたはそれからなる。
【0039】
別の態様では、本開示は、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片と、チオール含有酸化防止剤と、メチオニンと、アルギニン塩酸塩(Arg.HCl)とを含む医薬組成物を提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、VH及びVLはBIIB037のCDRを含む。ある場合には、BIIB037の6つのCDRは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、またはそれらからなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む。他の実施形態では、組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSHである。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。場合によっては、チオール含有酸化防止剤はGSH及びGSSGである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.02~4mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.02~2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は0.4mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は1mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は2mMである。特定の実施形態では、チオール含有酸化防止剤の濃度は4mMである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、0.4mMの濃度のGSH及び0.2mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、4mMの濃度のGSH及び2mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、2mMの濃度のGSH及び1mMの濃度のGSSGである。場合によっては、組成物中のチオール含有酸化防止剤は、0.4mMの濃度のシステイン及び0.2mMの濃度のシスチンである。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~150mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~125mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~100mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~75mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~50mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はメチオニンを0.01~20mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~15mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~50mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~75mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~100mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~125mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はメチオニンを5~150mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを10mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを50mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを75mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを100mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを125mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はメチオニンを150mMの濃度で含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物はArg.HClを50~250mMの濃度で含む。他の実施形態では、組成物はArg.HClを75~175mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はArg.HClを150mMの濃度で含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにポリソルベート80(PS80)を含む。いくつかの実施形態では、組成物はPS80を0.01~0.1%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はPS80を0.03~0.08%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はPS80を0.05%の濃度で含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物はさらに、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される緩衝剤を含む。場合によっては緩衝剤はヒスチジンである。場合によっては緩衝剤は酢酸塩である。場合によっては緩衝剤はコハク酸塩である。場合によっては緩衝剤はクエン酸塩である。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを10~30mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを20mMの濃度で含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物はさらにスクロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物はスクロースを0.01~5%の濃度で含む。他の実施形態では、組成物はスクロースを1~4%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はスクロースを3%の濃度で含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物のpHは5.2~6.2である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。
【0049】
特定の実施形態では、医薬組成物は、50~250mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、5~150mMの濃度のメチオニン、50~200mMの濃度のArg.HCl、10~30mMの濃度のヒスチジン、0.01~0.1%の濃度のPS80、及び0~3%の濃度のスクロースを含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0050】
特定の実施形態では、医薬組成物は、150mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、10mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0051】
特定の実施形態では、医薬組成物は、150mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、150mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0052】
特定の実施形態では、医薬組成物は、100mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、10mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0053】
特定の実施形態では、医薬組成物は、100mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、150mMの濃度のArg.HCl、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、150mMの濃度のメチオニン、20mMの濃度のヒスチジン、及び0.05%の濃度のPS80を含む。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.2である。ある場合には、この組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物のpHは5.3~5.7である。他の実施形態では、組成物のpHは5.5である。ある場合には、チオール含有酸化防止剤は、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSSGである。ある場合には、チオール含有酸化防止剤はGSHとGSSGとの組合せである。
【0054】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号7の配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号8の配列を含むかまたはそれからなる。
【0055】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含む。場合によっては、重鎖は、配列番号9と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも80%同一である配列を含むかまたはそれからなる。他の例では、重鎖は、配列番号9と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は、配列番号10と少なくとも90%同一である配列を含むかまたはそれからなる。さらに他の例では、重鎖は配列番号9の配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖は配列番号10の配列を含むかまたはそれからなる。
【0056】
別の態様では、本開示は、中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0057】
別の態様では、本開示は、軽度の認知機能障害の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0058】
別の態様では、本開示は、アルツハイマー病の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法を特徴とする。方法は、本明細書に記載の医薬組成物をヒト対象に投与することを含む。
【0059】
これらの態様のいくつかの実施形態では、医薬組成物はヒト対象に皮下投与される。これらの態様のいくつかの実施形態では、医薬組成物はヒト対象に静脈内投与される。
【0060】
特に定義していない限り、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似するまたは等価である方法及び材料を本発明の実施及び試験に使用することはできるが、例示的な方法及び材料を以下に記載する。本明細書中で言及される全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。齟齬がある場合には定義を含めて本願が優先されることになる。材料、方法及び実施例は例示のためのものにすぎず、限定する意図はない。
【0061】
本発明の他の特徴及び利点は以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】4週間にわたって40℃で保存された示されている製剤の%HMWを表す棒グラフである。
【
図2】6週間にわたって40℃で保存された示されている製剤の%HMWを示すグラフである。
【
図3】25℃+相対湿度60%で保存したときの様々なpHでの%HMWの傾向を示すグラフである。
【
図4】25℃+相対湿度60%で保存したときの様々な賦形剤での%HMWの傾向を示すグラフである。
【
図5】製剤の20℃での粘度を示す棒グラフである。
【
図6】室温で72時間後のポリソルベート80製剤の%HMW結果を表す棒グラフである。
【
図7】GSHとGSSGとの併用が25℃及び相対湿度60%でのアデュカヌマブ製剤の安定性に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図8】システインとシスチンとの併用が25℃及び相対湿度60%でのアデュカヌマブ製剤の安定性に及ぼす影響を示すグラフである。
【
図9】チオール含有賦形剤の還元型が25℃及び相対湿度60%での安定性に対してレドックス対と同じ影響を与えることを示すグラフである。
【
図10】GSHと併用した場合にメチオニンが25℃及び相対湿度60%でのアデュカヌマブ製剤の安定性に対して限られた利益をもたらすことを例証するグラフである。
【
図11】種々の抗体濃度及びGSHが25℃及び相対湿度60%での安定性に及ぼす影響を示す一対のグラフである。
【
図12】GSHが低濃度であってもHMW安定性を改善することができることを示す一対のグラフである。
【
図13】HMW低減に4mMのGSHが0.5~2mMのGSHと同じ影響を与えることを示すグラフである。
【
図14】メチオニンの増加が25℃(上)及び40℃(下)でのHMWレベルに及ぼす影響を示す一対のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本願は、抗Aβ抗体及びそのAβ結合性断片を含有する医薬組成物、ならびに中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着、軽度の認知機能障害、及びAβ関連障害(例えばアルツハイマー病)の治療におけるそれらの使用を提供する。
【0064】
アミロイドベータ(AβまたはAベータ)
Aβペプチドは重要な危険因子であり、アルツハイマー病の発症及び進行において中心的役割を有する。Aβは正常個体において産生されるが、ある状況下ではこの分子が凝集して疾患進行を招く。
【0065】
Aβは、アルツハイマー病患者の脳にみられるアミロイド斑を形成するのに関与する36~43アミノ酸のペプチドを表す。同様の斑は、レビー小体型認知症のいくつかの変化形態、及び封入体筋炎において現れる。Aβはまた、脳アミロイドアンギオパチーにおいて脳血管を覆う凝集物を形成する。
【0066】
Aβペプチドは、酵素ベータセクレターゼ及びガンマセクレターゼによるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の切断によって形成される。Aβ分子は凝集して、いくつかの形態で存在し得る柔軟な可溶性オリゴマーを形成することができる。いくつかのAβペプチドアロ形、Aβ40及びAβ42が存在する。ヒトアミロイドβペプチド(1~40)のアミノ酸配列を以下に提供する:
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV(配列番号11)。
ヒトアミロイドβペプチド(1~42)のアミノ酸配列を以下に提供する:
DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号12)。
Aβペプチドの可溶性オリゴマー形態は、アルツハイマー病の進展の原因物質であると考えられている。
【0067】
抗Aβ抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法において使用される抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、「BIIB037」またはアデュカヌマブと呼称される抗体の3つの重鎖可変ドメイン相補性決定領域(CDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片はBIIB037の3つの軽鎖可変ドメインCDRを含む。さらに他の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片はBIIB037の3つの重鎖可変ドメインCDR及び3つの軽鎖可変ドメインCDRを含む。
【0068】
BIIB037は、グリコシル化ヒトIgG1重鎖及びヒトカッパ軽鎖を含む完全ヒト抗体である。BIIB037は、配列番号9で表される成熟重鎖アミノ酸配列及び配列番号10で表される成熟軽鎖アミノ酸配列からなる。
【0069】
BIIB037のVH及びVLは、米国特許第8,906,367号に記載の抗体NI-101.12F6AのVH及びVLのアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を有する(表2~4を参照のこと。参照によりその全体を本明細書に援用する)。具体的には、抗体BIIB037は、表1(VH)及び表2(VL)に示すVH及びVL可変領域を含む抗原結合ドメイン、表3に示す対応する相補性決定領域(CDR)、ならびに表4(H)及び表5(L)に示す重軽鎖を有する。
【表1】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【0070】
BIIB037の成熟重鎖のアミノ酸配列を以下の表4に示す。
【表4】
【0071】
BIIB037の成熟軽鎖のアミノ酸配列を以下の表5に示す。
【表5】
【0072】
いくつかの態様では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR1、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR2、及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR1、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR2、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVL CDR3を含む。
【0073】
特定の態様では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号1~6に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるCDRを含む。
【0074】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVHを含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、BIIB037のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号7)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号7に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、VHドメインを含む。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0075】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVLを含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、BIIB037のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号8)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号8に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、VLドメインを含む。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、(i)BIIB037のVHドメインのアミノ酸配列(配列番号7)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるVHドメイン、及び(ii)BIIB037のVLドメインのアミノ酸配列(配列番号8)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるVLドメインを含む;または、配列番号7及び/または配列番号8に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なっている。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0077】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有する重鎖(HC)を含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号9に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、HCを含む。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0078】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)を含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号10に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、LCを含む。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0079】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するHC、及び配列番号10に示されるアミノ酸配列を有するLCを含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合するものであり、(i)アミノ酸配列(配列番号9)と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号9に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、HC、及び(ii)配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上同一であるかまたは、配列番号10に比べて少なくとも1~5アミノ酸残基であって40、30、20、15もしくは10よりも少ない残基が異なった、LCを含む。いくつかの実施形態では、これらの抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0080】
特定の実施形態では、抗Aβ抗体はIgG抗体である。具体的な実施形態では、抗Aβ抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD及びIgEから選択される重鎖定常領域を有する。一実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1アイソタイプのものである。別の実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG2アイソタイプのものである。さらに別の実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG3アイソタイプのものである。さらに別の実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG4アイソタイプのものである。さらなる実施形態では、抗体は、例えば、ヒトカッパまたはヒトラムダ軽鎖から選択される軽鎖定常領域を有する。特定の実施形態では、抗Aβ抗体はヒトIgG1/ヒトカッパ抗体である。ある場合には、重鎖定常領域はヒト型、またはヒト定常領域の改変型である。場合によっては、ヒト定常領域は、少なくとも1個であって2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個以下の置換を含み得る。ある実施形態では、改変型ヒトFc領域は改変型ヒトIgG1 Fc領域である。ある場合には、抗Aβ抗体の定常領域は、所望の機能的特性(例えば、改変されたエフェクター機能または半減期、低減されたグリコシル化)を付与する1つ以上のアミノ酸残基の突然変異によって改変されている。例えば、Fc領域(例えばヒトIgG1 Fc領域)のN結合グリコシル化を防止または低減するためにN結合グリコシル化部位が置換されていてもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は完全長(完全)抗体または実質的に完全長である。タンパク質は、少なくとも1つ、好ましくは2つの完全な重鎖、及び少なくとも1つ、好ましくは2つの完全は軽鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体はAβ結合性断片である。ある場合には、Aβ結合性断片はFab、Fab’、F(ab’)2、Facb、Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、またはダイアボディである。
【0082】
抗体、例えばBIIB037、またはそのAβ結合性断片は、例えば、列挙されるアミノ酸配列をコードする合成遺伝子を作製し発現させること、またはヒト生殖細胞系遺伝子を突然変異させて列挙されるアミノ酸配列をコードする遺伝子を形成させることによって作られ得る。さらに、この抗体及び他の抗Aβ抗体は、例えば、以下の方法の1つ以上を用いて生産され得る。
【0083】
抗体を生産する方法
抗Aβ抗体またはAβ結合性断片は、細菌細胞または真核細胞で産生され得る。いくつかの抗体、例えばFab’を細菌細胞、例えば大腸菌細胞で産生させることができる。また、抗体を形質転換細胞株(例えば、CHO、293E、COS)などの真核細胞で産生させることもできる。加えて、酵母細胞、例えば、Pichia(例えば、Powers et al.,J Immunol Methods.251:123-35(2001)を参照されたい)、HanseulaまたはSaccharomycesにおいて抗体(例えばscFv’)を発現させることができる。関心対象の抗体を産生させるためには、抗体をコードするポリヌクレオチドを構築し、発現ベクターに導入し、その後、好適な宿主細胞において発現させる。本明細書に記載のAβ抗体のVH及び/またはVL、HC及び/またはLCを含む抗Aβ抗体をコードするポリヌクレオチドは当業者によって容易に予想されるであろう。標準的な分子生物学の技術を用いて組換え発現ベクターを作製し、宿主細胞にトランスフェクトし、形質転換体を選抜し、宿主細胞を培養し、抗体を回収する。
【0084】
細菌細胞(例えば大腸菌)において抗Aβ抗体またはAβ結合性断片を発現させることになっている場合、発現ベクターは、細菌細胞でのベクターの増殖を可能にする特徴を有していなければならない。加えて、大腸菌、例えば、JM109、DH5α、HB101、またはXL1-Blueを宿主として使用する場合、ベクターは、大腸菌における効率的な発現をさせることができるプロモーター、例えば、lacZプロモーター(Ward et al.,341:544-546(1989))、araBプロモーター(Better et al.,Science,240:1041-1043(1988))またはT7プロモーターを有していなければならない。そのようなベクターの例としては、例えば、M13系列ベクター、pUC系列ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script、pGEX-5X-1(Pharmacia)、「QIAexpressシステム」(QIAGEN)、pEGFP、及びpET(この発現ベクターを使用する場合、宿主は、T7RNAポリメラーゼを発現させるBL21であることが好ましい)が挙げられる。発現ベクターは抗体分泌のためのシグナル配列を含有していてもよい。大腸菌のペリプラズム内に産生させるためには、抗体分泌のためのシグナル配列としてpelBシグナル配列(Lei et al.,J.Bacteriol.,169:4379(1987))を使用してもよい。細菌における発現のためには、塩化カルシウム法または電気穿孔法を用いて発現ベクターを細菌細胞内に導入してもよい。
【0085】
動物細胞、例えば、CHO、COS及びNIH3T3細胞において抗体を発現させることになる場合、発現ベクターは、これらの細胞での発現に必要なプロモーター、例えば、SV40プロモーター(Mulligan et al.,Nature,277:108(1979))、MMLV-LTRプロモーター、EF1αプロモーター(Mizushima et al.,Nucleic Acids Res.,18:5322(1990))、またはCMVプロモーターを含む。免疫グロブリンまたはそのドメインをコードする核酸配列に加えて、組換え発現ベクターはさらなる配列、例えば、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば複製起点)及び選択マーカー遺伝子を保有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが中に導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号及び第5,179,017号を参照のこと)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞にG418、ヒグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬物に対する抵抗性を付与する。選択マーカーを有するベクターの例としては、pMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、及びpOP13が挙げられる。
【0086】
一実施形態では、抗体は哺乳動物細胞において産生される。抗体を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばKaufman and Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されているようなDHFR選択マーカーと共に使用されるUrlaub and Chasin(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載のdhfr-CHO細胞を含む)、ヒト胚性腎臓293細胞(例えば、293、293E、293T)、COS細胞、NIH3T3細胞、リンパ球細胞株、例えばNS0骨髄腫細胞及びSP2細胞、ならびに遺伝子導入動物、例えば遺伝子導入哺乳動物からの細胞が挙げられる。例えば、細胞は乳腺上皮細胞である。
【0087】
例示的な抗体発現用システムにおいて、抗Aβ抗体(例えばBIIB037)の抗体重鎖と抗体軽鎖との両方をコードする組換え発現ベクターをリン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内で抗体重軽鎖遺伝子はそれぞれ、遺伝子の高レベルの転写を促すためにエンハンサー/プロモーター調節エレメント(例えば、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来するもの、例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメントまたはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター調節エレメント)に機能的に繋げられている。組換え発現ベクターはさらにDHFR遺伝子も保有するが、これは、ベクターがトランスフェクトされたCHO細胞を、メトトレキサート選択/増幅を用いて選択することを可能にするものである。選択された形質転換宿主細胞を培養して抗体重軽鎖を発現させ、培養培地から抗体を回収する。
【0088】
抗体を遺伝子導入動物によって産生させることもできる。例えば、米国特許第5,849,992号には、遺伝子導入哺乳動物の乳腺において抗体を発現させる方法が記載されている。乳特異的プロモーター、及び関心対象の抗体をコードする核酸、及び分泌のためのシグナル配列を含む、導入遺伝子を構築する。そのような遺伝子導入哺乳動物の雌が産生する乳は、その中に分泌された関心対象の抗体を含む。抗体は乳から精製され得るかまたは、いくつかの用途において直接使用され得る。本明細書に記載の核酸の1つ以上を含む動物も提供される。
【0089】
本開示の抗体は、宿主細胞の内部または外部(例えば培地)から単離されて実質的に純粋で均質な抗体として精製され得る。抗体の単離及び精製のためには、抗体精製に一般的に用いられる単離及び精製の方法が用いられ得るが、これは何ら特定の方法に限定されない。抗体は、例えば、カラムクロマトグラフィー、濾過、限外濾過、塩析、溶媒沈澱、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動、透析及び再結晶を適切に選択し組み合わせることによって単離及び精製され得る。クロマトグラフィーとしては、例えば、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー及び吸着クロマトグラフィーが挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual.Ed Daniel R.Marshak et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1996)。クロマトグラフィーを、HPLC及びFPLCなどの液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。親和性クロマトグラフィーに使用するカラムには、プロテインAカラム及びプロテインGカラムが含まれる。プロテインAカラムを用いるカラムの例としては、Hyper D、POROS、及びセファロースFF(GE Healthcare Biosciences)が挙げられる。本開示には、これらの精製方法によって高度に精製された抗体も含まれる。
【0090】
抗Aβ抗体組成物
本開示はさらに、本明細書に記載の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含む組成物(例えば医薬組成物)を提供する。例えば、抗Aβ抗体組成物は、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含み、VHはBIIB037のH-CDRを含むものであり、VLはBIIB037のL-CDRを含むものである。場合によっては、重鎖CDR(H-CDR)は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、軽鎖CDR(L-CDR)は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体組成物は、(i)配列番号7に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVH、及び(ii)配列番号8に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるVLを含んだ、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体組成物は、(i)配列番号9に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖、及び(ii)配列番号10に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖を含んだ、抗Aβ抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は、ヒトAβのアミノ酸1~16を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体は、ヒトAβのアミノ酸3~6を含むかまたはそれからなるペプチドに選択的に結合する。
【0091】
特定の実施形態では、これらの組成物は高濃度の抗Aβ抗体組成物である。「高濃度の抗Aβ抗体組成物」とは、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50mg/mlより高く300mg/mlより低い濃度で含む組成物を意味する。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~225mg/mlの濃度で含む。他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~225mg/mlの濃度で含む。他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む。他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100~225mg/mlの濃度で含む。さらに他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を125~225mg/mlの濃度で含む。他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を125~175mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を240mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を225mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を200mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を175mg/mlの濃度で含む。場合によっては、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む。他の例では、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を125mg/mlの濃度で含む。ある場合には、抗Aβ抗体組成物は抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む。
【0092】
本明細書に記載の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含む組成物(例えば医薬組成物)は、様々な形態のうちのいずれか1つにあり得る。これらとしては、例えば、液体溶液(例えば、注射液及び点滴液)、分散体または懸濁液が挙げられる。好ましい形態は、意図される投与様式及び治療用途によって決まり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は無菌の注射液または点滴液の形態である。
【0093】
無菌注射液は、所要量の本明細書に記載の抗体を成分の1つまたは組合せと混合してその後に無菌濾過することによって調製され得る。一般に、分散体は、基礎分散媒及び必要な他の成分を含有する無菌ビヒクルの中に本明細書に記載の抗体を混ぜ込むことによって調製される。無菌注射液を調製するための無菌粉末の場合、例示的な調製方法は、本明細書に記載の抗体と任意のさらなる所望の成分とが合わさった粉末を、先に無菌濾過されたそれらの溶液から得る、真空乾燥及び凍結乾燥である。例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用、分散体の場合での必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって、溶液の適度の流動性を維持することができる。
【0094】
抗Aβ抗体組成物(例えば医薬組成物)はさらに、1つ以上の賦形剤を含んでいてもよい。
【0095】
一実施形態では、賦形剤は、賦形剤を含まない医薬組成物の中の抗体の凝集及び/または粘度と比較して、組成物中の抗体の凝集及び/または粘度を減らす/低減する。特定の実施形態では、そのような賦形剤はアルギニンである。一例において、賦形剤はL-アルギニン塩酸塩である。アルギニン(例えばL-アルギニン塩酸塩)は組成物中に40~260mM、50~250mM、50~200mM、50~150mM、50~125mM、50~100mM、75~250mM、75~200mM、75~150mM、または75~100mMの濃度で含まれ得る。特定の実施形態では、アルギニン(例えば、Arg.HCl)は組成物中に50~250mMの濃度で存在する。他の実施形態では、アルギニン(例えば、Arg.HCl)は組成物中に50~200mMの濃度で存在する。場合によっては、アルギニン(例えばアルギニン塩酸塩)は組成物中に80mM、100mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、220mMまたは260mMの濃度で含まれ得る。具体例において、アルギニン(例えばアルギニン塩酸塩)は組成物中に100mMの濃度で含まれ得る。別の具体例において、アルギニン(例えばアルギニン塩酸塩)は組成物中に150mMの濃度で含まれ得る。
【0096】
アルギニンを含有する溶液は、室温またはより高い温度(例えば40℃)でのインキュベーション後に視認可能な粒子を発達させることがある。スクロースを添加することによって、視認可能な粒子の形成を軽減または防止することができる。さらに、スクロースは、視認できない粒子の数を減らすことができる。いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体組成物はスクロースを0.05~5%、0.05~4%、0.05~3%、1~5%、1~4%、1~3%、2~5%、2~4%、または2~3%の濃度で含む。特定の実施形態では、抗Aβ抗体組成物はスクロースを0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%または5%の濃度で含む。ある実施形態では、抗Aβ抗体組成物はスクロースを3%の濃度で含む。別のある実施形態では、抗Aβ抗体組成物はスクロースを1%の濃度で含む。
【0097】
一実施形態では、抗Aβ抗体組成物はメチオニンを含む。一例において、メチオニンは組成物中に0.5~150mMの濃度で含まれる。別の例において、メチオニンは組成物中に0.5~25mMの濃度で含まれる。さらに別の例において、メチオニンは組成物中に5~150mMの濃度で含まれる。一例において、メチオニンは組成物中に5mM、10mM、15mM、20mMまたは25mM、50mM、75mM、100mM、125mMまたは150mMの濃度で含まれる。ある例において、メチオニンは組成物中に10mMの濃度で含まれる。別のある例において、メチオニンは組成物中に150mMの濃度で含まれる。
【0098】
抗体製品製造は、いくつかのステップ、例えば、薬剤物質及びバルク製剤化、濾過、出荷、貯留、充填、凍結乾燥、検査、梱包及び貯蔵などを含み得る複雑なプロセスである。これらのステップの間、抗体は多種多様な形態のストレス、例えば、撹拌、温度、光曝露及び酸化に曝され得る。これらの類のストレスは抗体の変性及び凝集を招くことがあるが、これは製品の質を悪化させるものであり、生産バッチの損失を招く可能性さえある。撹拌は、製造プロセスの過程において抗体治療剤が曝される一般的な物理的ストレスの1つである。撹拌は例えば混合、限外濾過/透析濾過、圧送、出荷及び充填の最中に起こる。撹拌によって引き起こされるストレスから抗体組成物を保護するために、組成物はポリソルベートを含み得る。特定の実施形態では、組成物はポリソルベート80を0.01~0.5%、0.01~0.1%、0.01~0.09%、0.01~0.08%、0.01~0.07%、0.01~0.06%、0.01~0.05%、0.01~0.04%、または0.01~0.03%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はポリソルベート80を0.02~0.08%の濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はポリソルベート80を0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%または0.1%の濃度で含む。ある実施形態では、組成物はポリソルベート80を0.05%の濃度で含む。
【0099】
いかなる抗体組成物にも、良好な緩衝能を提供する緩衝剤が有用である。特定の実施形態では、抗体組成物はヒスチジンを緩衝剤として含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを5~50mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、10~25mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~25mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを5~35mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はヒスチジンを10~30mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はヒスチジンを5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mMまたは35mMの濃度で含む。ある実施形態では、組成物はヒスチジンを20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、抗体組成物は酢酸塩を緩衝剤として含む。特定の実施形態では、組成物は酢酸塩を5~50mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、10~25mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~25mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は酢酸塩を5~35mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物は酢酸塩を10~30mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物は酢酸塩を5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mMまたは35mMの濃度で含む。ある実施形態では、組成物は酢酸塩を20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、抗体組成物はコハク酸塩を緩衝剤として含む。特定の実施形態では、組成物はコハク酸塩を5~50mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、10~25mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~25mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はコハク酸塩を5~35mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はコハク酸塩を10~30mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はコハク酸塩を5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mMまたは35mMの濃度で含む。ある実施形態では、組成物はコハク酸塩を20mMの濃度で含む。特定の実施形態では、抗体組成物はクエン酸塩を緩衝剤として含む。特定の実施形態では、組成物はクエン酸塩を5~50mM、5~40mM、5~35mM、5~30mM、5~25mM、10~50mM、10~40mM、10~30mM、10~25mM、15~50mM、15~40mM、15~30mM、または15~25mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はクエン酸塩を5~35mMの濃度で含む。特定の実施形態では、組成物はクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はクエン酸塩を5mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mMまたは35mMの濃度で含む。ある実施形態では、組成物はクエン酸塩を20mMの濃度で含む。
【0100】
抗体組成物のpHは5.0~6.5であり得る。場合によっては、抗体組成物のpHは5.2~6.2であり得る。場合によっては、抗体組成物のpHは、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5である。ある実施形態では、抗体組成物のpHは5.5である。
【0101】
場合によっては、Aβ組成物はアルギニン(例えば、Arg.HCl)を含む。他の例では、Aβ組成物はアルギニン(例えば、Arg.HCl)及びメチオニンを含む。
【0102】
特定の実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば10mM)、ヒスチジン(例えば20mM)及びPS80(例えば0.05%)を含み、pHが5.2~6.2である。いくつかの実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば、10mM、150mM)、ヒスチジン(例えば20mM)及びPS80(例えば0.05%)を含み、pHが5.5である。特定の実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば、10mM、150mM)、ヒスチジン(例えば20mM)、PS80(例えば0.05%)及びスクロース(3%以下)を含み、pHが5.2~6.2である。いくつかの実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩、メチオニン、ヒスチジン、PS80及びスクロースを含み、pHが5.5である。これらの実施形態の全てにおいて、抗Aβ抗体は100~165mg/mlの濃度で存在する。一例において、抗Aβ抗体は150mg/mlの濃度で存在する。一例において、抗Aβ抗体は100mg/mlの濃度で存在する。
【0103】
ある場合には、抗Aβ組成物は、チオール含有酸化防止剤(例えば、還元型グルタチオン(GSH)、酸化型グルタチオン(GSSG)、GSH+GSSG、システイン、シスチン、システイン+シスチン)を0.02~4mM(例えば、0.02、0.03、0.05、0.06、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、または4.0mM)の濃度で含む。そのようなチオール含有酸化防止剤は、不都合な、または誤架橋したジスルフィド結合を切断することができ、好都合な、または適切に架橋したジスルフィド結合の形成を促進することができる。これは、抗体またはその断片の本来の確証の安定化をもたらすであろうし、凝集速度を落とさせるであろう。これらの分子の酸化防止剤特性は、凝集を招く酸化プロセスを減速させ得る。ある場合には、組成物はGSHを0.4mMの濃度で含む。ある場合には、組成物はGSSGを0.2mMの濃度で含む。ある場合には、組成物は0.4mMの濃度のGSH及び0.2mMの濃度のGSSGを含む。ある場合には、組成物は4mMの濃度のGSH及び2mMの濃度のGSSGを含む。ある場合には、組成物は2mMの濃度のGSH及び1mMの濃度のGSSGを含む。ある場合には、組成物はシステインを0.4mMの濃度で含む。ある場合には、組成物はシスチンを0.2mMの濃度で含む。ある場合には、組成物は0.4mMの濃度のシステイン及び0.2mMの濃度のシスチンを含む。
【0104】
特定の実施形態では、Aβ組成物は、アルギニン(例えば、Arg.HCl)、チオール含有酸化防止剤及びメチオニンを含む。
【0105】
特定の実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば10mM)、ヒスチジン(例えば20mM)、チオール含有酸化防止剤、例えば、GSH、GSSG、GSHとGSSG、システイン、シスチン、またはシステインとシスチン(例えば、0.02~4mM)、及びPS80(例えば0.05%)を含み、pHが5.2~6.2である。いくつかの実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば、10mM、150mM)、ヒスチジン(例えば20mM)、チオール含有酸化防止剤、例えば、GSH、GSSG、GSHとGSSG、システイン、シスチン、またはシステインとシスチン(例えば、0.02~4mM)、及びPS80(例えば0.05%)を含み、pHが5.5である。特定の実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩(例えば150mM)、メチオニン(例えば、10mM、150mM)、ヒスチジン(例えば20mM)、PS80(例えば0.05%)、チオール含有酸化防止剤、例えば、GSH、GSSG、GSHとGSSG、システイン、シスチン、またはシステインとシスチン(例えば、0.02~4mM)、及びスクロース(3%以下)を含み、pHが5.2~6.2である。いくつかの実施形態では、Aβ組成物は、L-アルギニン塩酸塩、メチオニン、ヒスチジン、PS80、チオール含有酸化防止剤、例えば、GSH、GSSG、GSHとGSSG、システイン、シスチン、またはシステインとシスチン、及びスクロースを含み、pHが5.5である。これらの実施形態の全てにおいて、抗Aβ抗体は100~165mg/mlの濃度で存在する。一例において、抗Aβ抗体は150mg/mlの濃度で存在する。一例において、抗Aβ抗体は100mg/mlの濃度で存在する。
【0106】
特定の実施形態では、組成物(例えば医薬組成物)は、50~250mg/mlの濃度の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片、50~200mMの濃度のアルギニン(例えば、L-アルギニン塩酸塩)、1~150mM(例えば、1~20mM)の濃度のメチオニン、0.01~0.1%の濃度のポリソルベート80、10~30mMの濃度のヒスチジン、及び0~3%の濃度のスクロースを含む。ある場合には、組成物のpHが5.2~6.2である。他の例では、組成物のpHは5.2~6.0である。特定の実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、BIIB037のCDR(例えば、配列番号1、2、3、4、5及び6)を含むVH及びVLを含む。特定の実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号7及び8をそれぞれ含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号9及び10をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖を含む。一実施形態では、組成物はpHが5.5であり、150mg/mlの濃度のBIIB037またはそのBIIB037結合性断片、150mMの濃度のL-アルギニン塩酸塩、10mMまたは150mMの濃度のメチオニン、0.05%の濃度のポリソルベート80、及び20mMの濃度のヒスチジン(16.2mMのL-ヒスチジンHCl一水和物、3.8mMのL-ヒスチジン遊離塩基)を含む。特定の実施形態では、組成物はさらにチオール含有酸化防止剤(例えば、GSH、GSSG、GSH+GSSG、システイン、シスチン、システイン+シスチン)を0.02~4mMの濃度で含む。いくつかの実施形態では、組成物はさらにスクロースを0.01~3%の濃度で含む。特定の実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、BIIB037のCDR(例えば、配列番号1、2、3、4、5及び6)を含むVH及びVLを含む。特定の実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号7及び8をそれぞれ含むVH及びVLを含む。いくつかの実施形態では、組成物の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片は、配列番号9及び10をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖を含む。
【0107】
一実施形態では、組成物はpHが5.5であり、150mg/mlの濃度のBIIB037またはそのBIIB037結合性断片、150mMの濃度のL-アルギニン塩酸塩、0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤(例えば、GSH、GSSG、GSH+GSSG、システイン、シスチン、システイン+シスチン)、0.05%の濃度のポリソルベート80、及び20mMの濃度のヒスチジンを含む。一実施形態では、チオール含有酸化防止剤は0.4mMの濃度のGSHである。一実施形態では、チオール含有酸化防止剤は0.4mMの濃度のGSH及び0.2mMの濃度のGSSGである。一実施形態では、チオール含有酸化防止剤は4mMの濃度のGSH及び2mMの濃度のGSSGである。一実施形態では、チオール含有酸化防止剤は2mMの濃度のGSH及び1mMの濃度のGSSGである。別の実施形態では、チオール含有酸化防止剤は0.4mMの濃度のシステインである。別の実施形態では、チオール含有酸化防止剤は0.4mMの濃度のシステイン及び0.2mMの濃度のシスチンである。
【0108】
治療方法
BIIB037は、斑を含めたAβの凝集形態を認識する。試験管内での特性評価試験では、Aβ凝集物中に存在する配座エピトープを抗体BIIB037が認識することが立証されたが、これの蓄積がアルツハイマー病(AD)の進展及び進行の根底にあると考えられている。生体内での薬理試験は、類似する特性を有する抗体(ch12F6A)のマウスIgG2aキメラ型が、ADのマウスモデルである老齢Tg2576マウスの脳のアミロイド斑負荷を有意に低減することを示唆している。特定の抗Aβ抗体について報告されているように、実質アミロイドの低減に血管アミロイドの変化は付随しなかった。
【0109】
本明細書において開示される組成物は、中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着の治療を必要とするヒト対象の当該治療をするのに役立つ。本明細書において開示される組成物は、軽度の認知機能障害の治療を必要とするヒト対象における当該治療をする上でも役に立つ。本明細書中で使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は概して所望の薬理及び/または生理作用を得ることを意味する。
【0110】
特定の実施形態では、本明細書において開示される組成物は、ADの治療を必要とするヒト対象における当該治療をするのに役立つ。他の実施形態では、本明細書において開示される組成物は、ADの予防を必要とするヒト対象における当該予防をするのに役立つ。
【0111】
本明細書において開示される組成物は、(a)ADに罹患しやすい可能性があるが未だそれを有すると診断されたことがない対象にADが起こるのを防止すること、(b)ADを阻止すること、例えばその進展を阻むこと、(c)ADを軽減すること、例えばADの消退をもたらすこと、または(d)治療を受けない場合の予測生存期間に比べて生存期間を延長することのために使用され得る。
【0112】
それを必要とするヒト対象に治療的有効量または用量の抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を投与する。治療的有効量は、ADに関連する症候または症状を改善するに足る抗体の量を指す。抗体の治療有効性及び毒性は標準的な薬学的手順によって決定することができる。理想的には、アルツハイマー病の場合に正常な行動及び/または認知特性を回復させるかまたは患者のADの進行を少なくとも遅くするもしくは防止するに足る量で、抗体を使用する。
【0113】
いくつかの実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含む組成物をヒト対象に静脈内投与する。特定の実施形態では、抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を含む組成物をヒト対象に皮下投与する。
【0114】
以下は本発明の実施に関する実施例である。それらは決して本発明の範囲を限定するとみなされるべきでない。
【実施例】
【0115】
実施例1:最適な製剤化のためにスクリーニングされたpH及び緩衝剤
以下の製剤を調製及びスクリーニングして最適な緩衝剤及びpHを決定した。
【表6】
【0116】
製剤を40℃+相対湿度(RH)75%で4週間保存した(
図1)。
結論:
1)ヒスチジン緩衝剤は、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩緩衝剤と比較して高分子量種百分率(%HMW)の最も小さな変化を示した。
2)傾向は5.5~6.5のpH範囲にわたって一貫していた。
【0117】
実施例2:HMWを制御するのに最適な賦形剤としてのアルギニン
以下の製剤を調製して、最適な安定化賦形剤(複数可)を決定した。ほとんどのものは、L-アルギニンHClを単独で、あるいは別の賦形剤と組み合わせて含有していた。2つの製剤はアルギニンを含有せず糖(スクロースまたはトレハロース)を含有するのみであった。
【表7】
【0118】
製剤を6週間にわたって40℃+75%RHで保存し%HMWを試験した(
図2)。
結論:
1)アルギニンを含有する製剤(実線)はアルギニンなしの製剤(破線)に比べて成績がより良好であった。
2)アルギニン+メチオニンの組合せ(グラフ中、最下の2本の実線)は、アルギニン単独、及びアルギニンと他の賦形剤との組合せに比べて成績がより良好であった。
3)5.5及び6.0の両方のpHで調製した製剤の成績は常に、pH5.5のときの方が良好であった。
【0119】
実施例3:pH及びタンパク質濃度に対する製剤の堅牢性
主幹製剤をおおよその基準とした様々な製剤(表8)を調製すること、及び様々な質の属性についてスクリーニングすることによって、さらなる製剤最適化を実施した。
【表8】
【0120】
図3は、25℃+相対湿度60%で保存したときの様々なpHでの%HMWの傾向を示す。経時的な%HMWの増加速度はこのpH範囲にわたって一貫している。
【0121】
図4は、25℃+相対湿度60%で保存したときの様々な賦形剤での%HMWの傾向を示す。安定化賦形剤が、150mMのL-アルギニンHCl+10mMのメチオニン、100mMのL-アルギニンHCl+10mMのメチオニン、メチオニンなしで150mMのL-アルギニンHCl、または100mMのL-アルギニンHCl+3%のスクロースのいずれであろうと、%HMWの増加速度は一貫している。
【0122】
実施例4:アルギニンは製剤の粘度を低下させる
各製剤の粘度を室温(20℃)で測定した。タンパク質濃度は粘度に大きな影響を与えたが、製剤化方法における他の変更は影響を及ぼさなかった。50cP未満の粘度は製造プロセス及び投与経路選択肢のために最適である。アルギニンに基づく製剤は高タンパク質濃度(約220mg/mL)において一貫して低い粘度(約20cP)を示す(
図5)。
【0123】
実施例5:ポリソルベート80の濃度に対する製剤の堅牢性
製剤中の界面活性剤(ポリソルベート80)の最適レベルを評価するために以下の製剤を調製した。
【表9】
【0124】
物理的ストレス中に製品安定性を維持するのに必要とされる界面活性剤の適切なレベルを決定するために撹拌試験を実施した。表9の製剤を3mLのガラス製バイアル及び1mLの針付きガラス製シリンジの中に分配し、その後、650rpmで72時間室温で撹拌した。非撹拌対照を同じ時間及び温度でガラス製バイアル内に保存した。
【0125】
%HMW結果は、撹拌された製剤の全てにわたって一貫していた(
図6)。非撹拌対照バイアルは、%ポリソルベート80が0.05%から0.00%に低下するにつれてHMWの漸増を示す。どの結果も方法の可変性(ノイズ)(±0.2%)の範囲内であり、真の差異ではない可能性がある。安定性は%ポリソルベート80の広い範囲にわたって同程度である。
【0126】
実施例6:チオール基含有賦形剤はアデュカヌマブ製剤の凝集安定性を改善する
チオール基含有賦形剤をアデュカヌマブ製剤に添加することで、保存中の高分子量種の発達によって判定される凝集が軽減される。
【0127】
対照アデュカヌマブ製剤は、165mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのL-アルギニンHCl、10mMのメチオニン、0.05%のポリソルベート80を含み、pHが5.5である。対照製剤に、チオール基含有賦形剤であるGSH及びGSSGを混入した。製剤を25℃で相対湿度60%で保存した。
図7に示すように、GSH及びGSSGの添加は保存中のHMW種の発達を軽減する。
【0128】
同じ対照アデュカヌマブ製剤に、システイン及びシスチンを混入した。これらの製剤も25℃で相対湿度60%で保存した。GSH及びGSGGの場合と同様に、システイン及びシスチンの添加は保存中のHMW種の発達を抑制する(
図8)。
【0129】
実施例7:チオール基含有賦形剤の還元型はレドックス対と同様にHMWの制御に効果的である
チオール基含有賦形剤の還元型単独の添加はレドックス対の添加と同じ影響を及ぼす。
【0130】
対照アデュカヌマブ製剤は、165mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのL-アルギニンHCl、10mMのメチオニン、0.05%のポリソルベート80を含有し、pHが5.5である。この製剤に、GSH+GSSG、GSH単独、またはGSSG単独を混入した。製剤を25℃で相対湿度60%で保存した。
図9に示すように、GSH、GSSG、及びGSH+GSSGの添加はどれもHMW種の形成を軽減した。
【0131】
実施例8:HMWの制御においてチオール含有賦形剤はメチオニンよりも優れている
メチオニンの添加は、GSH単独でみられる安定性を向上させない。
【0132】
対照アデュカヌマブ製剤は、165mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのL-アルギニンHClを含み、pHが5.5である。GSH、またはGSH+メチオニンを対照製剤に添加した。これらの製剤を25℃で相対湿度60%で保存した。メチオニンの添加は、GSH単独でみられるHMW種の低減に対して付加的利益を何らもたらさなかった(
図10)。
【0133】
実施例9:タンパク質及びGSHの複数の濃度でのチオール含有賦形剤製剤の堅牢性
GSHの添加によるHMW種の低減は、タンパク質の複数の濃度及びGSHの複数の濃度において認められた。
【0134】
GSHの様々な濃度で、アデュカヌマブ(165または200mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのL-アルギニンHCl、10mMのメチオニン、0.05%のポリソルベート80、pH5.5)を25℃で相対湿度60%で保存した。
図11に示すように、200mg/ml以下のタンパク質濃度においてGSHは0.2~1.0mMの濃度でHMW種形成を抑制する。
【0135】
実施例10:チオール含有賦形剤はHMWを非常に低い濃度に制御するのに効果的である
わずか0.02mMのチオール含有賦形剤の濃度で、様々な濃度のアデュカヌマブの安定性が改善された。
【0136】
GSHの様々な濃度で、アデュカヌマブ(165または225mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのL-アルギニンHCl、10mMのメチオニン、0.05%のポリソルベート80、pH5.5)を25℃で相対湿度60%で保存した。
図12に示すように、225mg/ml以下のアデュカヌマブを含有する製剤の中のGSHはわずか0.02mMの濃度でHMW種形成を抑制する。
【0137】
実施例11:チオール含有賦形剤の増加がHMWに及ぼす影響
この実験は、GSHの濃度の増加がHMW低減に及ぼす影響を評価するために実施された。
【0138】
試験した製剤は全て、210mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、10mMのメチオニン、及び0.05%のポリソルベート80を含有し、GSH濃度のみが異なっていた。試験したGSH濃度は0mM、0.5mM、1mM、2mM及び4mMであった。試料を25℃で相対湿度60%で最長4.5ヶ月間保存した。
【0139】
データは、HMW低減に4mMのGSHが0.5~2mMのGSHと同じ影響を与えることを示した(
図13参照)。
【0140】
実施例12:メチオニン濃度の増加がHMWに及ぼす影響
この実験は、メチオニンの濃度の増加がHMW低減に及ぼす影響を評価するために実施された。
【0141】
試験した製剤は全て、165mg/mLのアデュカヌマブ、20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.05%のポリソルベート80を含有し、
図14に示すとおり、メチオニンまたはGSHの濃度のみが異なっていた。25℃で相対湿度60%(上)、及び40℃で相対湿度75%(下)で試料を最長3.5ヶ月間保存した。
【0142】
この実験は、メチオニン濃度を150mMまで増加させることが10mMのメチオニンと比較してHMWの低減に役立つことを示した。
【0143】
実施例13:カニクイザルへの静脈内及び皮下注射によって投与される場合のBIIB037の4週間の忍容性及び毒物動態の試験
この試験の目的は、BIIB037(150mg/mLの強さとし、ヒスチジン緩衝剤[16.2mMのL-ヒスチジン一水和物、3.8mMのL-ヒスチジン遊離塩基]を20mMとし、L-アルギニン塩酸塩(HCl)を150mMとし、メチオニンを10mMとし、ポリソルベート80を0.05%とし、pHを5.5とする)を4週間にわたって週に1回、静脈内(IV)または皮下(SC)注射によって群1つあたり3頭のカニクイザルに与える場合のその忍容性を決定することであった。加えて、試験物品の毒物動態特性を決定した。
【0144】
4週間にわたる週に1回の300mg/kg/用量のBIIB037のIV及びSC投与(22日目の時間0から時間tまでの濃度-時間曲線下面積[AUC0-t]はIV及びSCについてそれぞれ324,000μg・h/mL及び243,000μg・h/mL)はどちらも、臨床所見または、体重もしくは食餌摂取への悪影響を何らもたらさなかった。1頭のSC注射動物に限っては第3及び第4週目の投与後にSC注射部位の所見がみられ、それは、手技に関係する可能性がある軽度の巣状の好中球性または単核細胞性浸潤及び出血(4回目の注射部位にのみ関連する)を伴った無害でごくわずかな紅斑及び/または浮腫からなっていた。SD1及びSD22のAUCτについては生物学的利用能の絶対%が56.7~75.1%の範囲であり、アデュカヌマブSC投与後の良好な吸収動態を示唆していた。平均TKパラメータをまとめたものを表10に示す。
【表10】
【0145】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と併せて記載してきたが、上記記載は、別記の請求項の範囲によって画定されるものである本発明を例示するがその範囲を限定しないことを意図している。他の態様、利点及び改変形態は以下の請求項の範囲内に含まれている。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
抗ベータアミロイド(Aβ)抗体またはそのAβ結合性断片と、アルギニン塩酸塩(Arg.HCl)とを含む医薬組成物であって、前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片が免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、前記VH及びVLがそれぞれ、
(a)
VH-CDR1が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、
VH-CDR2が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、
VH-CDR3が、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる、
VH相補性決定領域(CDR)、及び
(b)
VL-CDR1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、
VL-CDR2が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなり、
VL-CDR3が、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる、
VL CDR
を含み、前記組成物のpHが5.2~6.2である、前記医薬組成物。
(項目2)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目3)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む、項目1に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記組成物がArg.HClを50~250mMの濃度で含む、項目1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記組成物がArg.HClを75~175mMの濃度で含む、項目1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記組成物がArg.HClを150mMの濃度で含む、項目1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記組成物がポリソルベート80(PS80)を含む、項目1~8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記組成物がPS80を0.01~0.1%の濃度で含む、項目9に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記組成物がPS80を0.03~0.08%の濃度で含む、項目9に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記組成物がPS80を0.05%の濃度で含む、項目9に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記組成物が、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される緩衝剤を含む、項目1~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記組成物がヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む、項目13に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記組成物がヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を20mMの濃度で含む、項目13に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記緩衝剤がヒスチジンである、項目13に記載の医薬組成物。
(項目17)
ヒスチジンの濃度が10~30mMである、項目16に記載の医薬組成物。
(項目18)
ヒスチジンの濃度が20mMである、項目16に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記組成物がメチオニンを含む、項目1~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目20)
メチオニンの濃度が0.01~150mMである、項目19に記載の医薬組成物。
(項目21)
メチオニンの濃度が5~15mMである、項目19に記載の医薬組成物。
(項目22)
メチオニンの濃度が10mMである、項目19に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記組成物がスクロースを含む、項目1~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記組成物がスクロースを0.01~3%の濃度で含む、項目23に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記組成物がスクロースを3%の濃度で含む、項目23に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記組成物のpHが5.2~6.0である、項目1~25のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記組成物のpHが5.3~5.7である、項目1~26のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記組成物のpHが5.5である、項目1~27のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目29)
50~250mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
50~200mMの濃度のArg.HCl、
0~150mMの濃度のメチオニン、
10~30mMの濃度のヒスチジン、
0.01~0.1%の濃度のPS80、
0~3%の濃度のスクロース
を含み、前記組成物のpHが5.2~6.0である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目30)
150mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
150mMの濃度のArg.HCl、
10mMの濃度のメチオニン、
20mMの濃度のヒスチジン、及び
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記組成物のpHが5.5である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目31)
100mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
150mMの濃度のArg.HCl、
10mMの濃度のメチオニン、
20mMの濃度のヒスチジン、及び
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記組成物のpHが5.5である、項目1に記載の医薬組成物。
(項目32)
(i)前記VHが、配列番号7と少なくとも80%同一である配列からなり、前記VLが、配列番号8と少なくとも80%同一である配列からなるか、
(ii)前記VHが、配列番号7と少なくとも90%同一である配列からなり、前記VLが、配列番号8と少なくとも90%同一である配列からなるか、または
(iii)前記VHが、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなり、前記VLが、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる、
項目1~31のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目33)
前記抗Aβ抗体が免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み、
(i)前記重鎖が、配列番号9と少なくとも80%同一である配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10と少なくとも80%同一である配列からなるか、
(ii)前記重鎖が、配列番号9と少なくとも90%同一である配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10と少なくとも90%同一である配列からなるか、または
(iii)前記重鎖が、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる、
項目1~32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目34)
中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目1~33のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目35)
軽度の認知機能障害の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目1~33のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目36)
アルツハイマー病の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目1~33のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目37)
前記医薬組成物が前記ヒト対象に皮下投与される、項目34~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記医薬組成物が前記ヒト対象に静脈内投与される、項目34~36のいずれか1項に記載の方法。
(項目39)
抗ベータアミロイド(Aβ)抗体またはそのAβ結合性断片と、チオール含有酸化防止剤と、アルギニン塩酸塩(Arg.HCl)とを含む医薬組成物であって、前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片が免疫グロブリン重鎖可変ドメイン(VH)及び免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン(VL)を含み、前記VH及びVLがそれぞれ、
(a)
VH-CDR1が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなり、
VH-CDR2が、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなり、
VH-CDR3が、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなる、
VH相補性決定領域(CDR)、及び
(b)
VL-CDR1が、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなり、
VL-CDR2が、配列番号5に示されるアミノ酸配列からなり、
VL-CDR3が、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる、
VL CDR
を含み、前記組成物のpHが5.2~6.2である、前記医薬組成物。
(項目40)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を50~250mg/mlの濃度で含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目41)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を75~165mg/mlの濃度で含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目42)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を150mg/mlの濃度で含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目43)
前記組成物が前記抗Aβ抗体またはそのAβ結合性断片を100mg/mlの濃度で含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目44)
前記チオール含有酸化防止剤が、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される、項目39~43のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目45)
前記チオール含有酸化防止剤がGSHである、項目44に記載の医薬組成物。
(項目46)
前記チオール含有酸化防止剤がGSSGである、項目44に記載の医薬組成物。
(項目47)
前記チオール含有酸化防止剤がGSHとGSSGとの組合せである、項目44に記載の医薬組成物。
(項目48)
前記チオール含有酸化防止剤の濃度が0.02~4mMである、項目39~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目49)
前記チオール含有酸化防止剤の濃度が0.2mMである、項目39~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目50)
前記チオール含有酸化防止剤の濃度が0.4mMである、項目39~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目51)
前記チオール含有酸化防止剤の濃度が1mMである、項目39~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目52)
前記GSHの濃度が0.4mMであり、前記GSSGの濃度が0.2mMである、項目47に記載の医薬組成物。
(項目53)
前記チオール含有酸化防止剤がシステインとシスチンとの組合せであり、前記システインの濃度が0.4mMであり、前記シスチンの濃度が0.2mMである、項目44に記載の医薬組成物。
(項目54)
前記組成物がArg.HClを50~250mMの濃度で含む、項目39~53のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目55)
前記組成物がArg.HClを75~175mMの濃度で含む、項目39~53のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目56)
前記組成物がArg.HClを150mMの濃度で含む、項目39~53のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目57)
前記組成物がポリソルベート80(PS80)を含む、項目39~56のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目58)
前記組成物がPS80を0.01~0.1%の濃度で含む、項目57に記載の医薬組成物。
(項目59)
前記組成物がPS80を0.03~0.08%の濃度で含む、項目57に記載の医薬組成物。
(項目60)
前記組成物がPS80を0.05%の濃度で含む、項目57に記載の医薬組成物。
(項目61)
前記組成物が、ヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩及びクエン酸塩からなる群から選択される緩衝剤を含む、項目39~60のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目62)
前記組成物がヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を10~30mMの濃度で含む、項目61に記載の医薬組成物。
(項目63)
前記組成物がヒスチジン、酢酸塩、コハク酸塩またはクエン酸塩を20mMの濃度で含む、項目61に記載の医薬組成物。
(項目64)
前記緩衝剤がヒスチジンである、項目61に記載の医薬組成物。
(項目65)
ヒスチジンの濃度が10~30mMである、項目64に記載の医薬組成物。
(項目66)
ヒスチジンの濃度が20mMである、項目64に記載の医薬組成物。
(項目67)
前記組成物がスクロースを含む、項目39~66のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目68)
前記組成物がスクロースを0.01~3%の濃度で含む、項目67に記載の医薬組成物。
(項目69)
前記組成物がスクロースを1~3%の濃度で含む、項目67に記載の医薬組成物。
(項目70)
前記組成物がスクロースを3%の濃度で含む、項目67に記載の医薬組成物。
(項目71)
前記組成物のpHが5.2~6.0である、項目39~70のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目72)
前記組成物のpHが5.3~5.7である、項目39~70のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目73)
前記組成物のpHが5.5である、項目39~70のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目74)
50~250mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
50~200mMの濃度のArg.HCl、
0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、
10~30mMの濃度のヒスチジン、
0.01~0.1%の濃度のPS80、
0~3%の濃度のスクロース
を含み、前記組成物のpHが5.2~6.0である、項目39に記載の医薬組成物。
(項目75)
150mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
150mMの濃度のArg.HCl、
0.02~4mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、
20mMの濃度のヒスチジン、及び
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記組成物のpHが5.5である、項目39に記載の医薬組成物。
(項目76)
100mg/mlの濃度の前記抗Aβ抗体または前記そのAβ結合性断片、
150mMの濃度のArg.HCl、
0.02~2mMの濃度のチオール含有酸化防止剤、
20mMの濃度のヒスチジン、及び
0.05%の濃度のPS80
を含み、前記組成物のpHが5.5である、項目39に記載の医薬組成物。
(項目77)
前記チオール含有酸化防止剤が、GSH、GSSG、GSHとGSSGとの組合せ、シスチン、システイン、及びシステインとシスチンとの組合せからなる群から選択される、項目74~76のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目78)
前記チオール含有酸化防止剤がGSHである、項目77に記載の医薬組成物。
(項目79)
前記チオール含有酸化防止剤がGSSGである、項目77に記載の医薬組成物。
(項目80)
前記チオール含有酸化防止剤がGSHとGSSGとの組合せである、項目77に記載の医薬組成物。
(項目81)
メチオニンをさらに含む、項目39~80のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目82)
メチオニンの濃度が0.01~150mMである、項目81に記載の医薬組成物。
(項目83)
メチオニンの濃度が5~20mMである、項目81に記載の医薬組成物。
(項目84)
(i)前記VHが、配列番号7と少なくとも80%同一である配列からなり、前記VLが、配列番号8と少なくとも80%同一である配列からなるか、
(ii)前記VHが、配列番号7と少なくとも90%同一である配列からなり、前記VLが、配列番号8と少なくとも90%同一である配列からなるか、または
(iii)前記VHが、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなり、前記VLが、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる、
項目39~83のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目85)
前記抗Aβ抗体が免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖を含み、
(i)前記重鎖が、配列番号9と少なくとも80%同一である配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10と少なくとも80%同一である配列からなるか、
(ii)前記重鎖が、配列番号9と少なくとも90%同一である配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10と少なくとも90%同一である配列からなるか、または
(iii)前記重鎖が、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなり、前記軽鎖が、配列番号10に示されるアミノ酸配列からなる、
項目39~84のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目86)
中枢神経系におけるAβの異常蓄積または沈着の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目39~85のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目87)
軽度の認知機能障害の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目39~85のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目88)
アルツハイマー病の治療を、それを必要とするヒト対象において行う方法であって、
項目39~85のいずれか1項に記載の医薬組成物を前記ヒト対象に投与すること
を含む、前記方法。
(項目89)
前記医薬組成物が前記ヒト対象に皮下投与される、項目86~88のいずれか1項に記載の方法。
(項目90)
前記医薬組成物が前記ヒト対象に静脈内投与される、項目86~88のいずれか1項に記載の方法。
【配列表】