(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】細胞の遺伝子修飾のための非組込みDNAベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230417BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230417BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230417BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230417BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230417BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230417BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230417BHJP
A61K 38/02 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12N5/10
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/17
A61P43/00 105
C12N15/63 Z ZNA
A61K38/02
(21)【出願番号】P 2020516608
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2018075353
(87)【国際公開番号】W WO2019057773
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-07-01
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルボトル,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ボッザ,マチアス
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506694(JP,A)
【文献】米国特許第05985607(US,A)
【文献】国際公開第2014/016580(WO,A2)
【文献】特表2009-511010(JP,A)
【文献】米国特許第6410314(US,B1)
【文献】BMC Biotechnology,2010年,10:20,p. 1-14,doi:10.1186/1472-6750-10-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 5/00
A61K 31/00
A61K 48/00
A61K 35/00
A61K 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプロモーターおよびS/MAR要素を含有するポリヌクレオチドであって、前記S/MAR要素が前記プロモーターの下流に配置され、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA(配列番号1)を含有
し、前記S/MAR要素がスプライスドナーおよびスプライスアクセプターに隣接している、前記ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記ポリヌクレオチドが、
ポリペプチドをコードするコード配列をさらに含有し、ポリペプチドをコードする前記コード配列が前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在する、請求項
1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドが、
選択マーカーをコードするコード配列をさらに含有し、
選択マーカーをコードする前記コード配列が前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在する、請求項
1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記ポリヌクレオチドが、選択マーカーをコードするコード配列(選択マーカー配列)をさらに含有し、前記選択マーカー配列は前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在し、前記プロモーターおよび前記選択マーカーは全体として選択マーカー遺伝子を構成しており、前記選択マーカーは真核細胞の選択マーカーである、請求項
1~
3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記選択マーカー遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、またはゼオシン耐性遺伝子
である、請求項
4に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
転写物が前記プロモーターから転写されるが、その転写物からS/MAR要素の配列がスプライシングで切り出される、請求項
1~
5のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチドが、細菌の複製開始点、および/または細菌性選択マーカー遺伝子をさらに含有し、前記の細菌の複製開始点および/または細菌性選択マーカー遺伝子が、少なくとも1つのインスレーションエレメントの存在によって、ポリヌクレオチド内に含まれる残りの配列から隔絶されている、請求項
1~
6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、サルウイルス40(SV40)複製開始点、ウシパピローマウイルス(BPV)複製開始点、およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製開始点を有しない、請求項
1~
6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドは宿主細胞内でエピソームとして複製
する、請求項
1~
8のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する
組成物。
【請求項11】
前記組成物が医薬組成物である、
請求項10に記載の前記組成物。
【請求項12】
請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する
宿主細胞。
【請求項13】
医薬に使用する
ための、請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、請求項
10若しくは11に記載の組成物、および/または請求項
12に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項14】
遺伝病の治療に使用するための、請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、請求項
10若しくは11に記載の組成物、および/または請求項
12に記載の宿主細胞を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および細胞内移行を媒介する化合物を含む、キット。
【請求項16】
請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、請求項
10若しくは11に記載の組成物、および/または請求項
12に記載の宿主細胞を含む、デバイス。
【請求項17】
宿主細胞を安定にトランスフェクトするための方法であって、
a) 前記宿主細胞を、請求項
1~
9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および/または請求項
10若しくは11に記載の組成物、および/または請求項
12に記載の宿主細胞と接触させること、ならびに
b) それによって、宿主細胞を安定にトランスフェクトすること
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記の安定なトランスフェクションが、ポリヌクレオチドの安定したエピソーム複製を含
む、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記の安定なトランスフェクションが、
平均して50回の細胞分裂後に宿主細胞集団においてそのポリヌクレオチドが依然として検出可能であるようなエピソーム複製を含む、請求項
17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含むポリヌクレオチドに関し、上記S/MAR要素は、上記プロモーターの下流に位置し、上記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA(配列番号1)を含む。本発明はさらに、上記ポリヌクレオチドを含む組成物及び宿主細胞、並びに医薬における使用及び遺伝病の治療における使用のためのポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、上記ポリヌクレオチドを含むキット及び装置、並びにポリヌクレオチドに関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の遺伝子修飾は、科学目的のために現代の細胞培養において日常的に使用されている。しかしながら、遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝病の治療における対応する技術の使用は、非常に望ましいものであるが、依然として、利用可能な方法が、通常、一過性修飾、例えば、一過性トランスフェクションプロトコールを提供するだけであり、一方、細胞の安定な修飾を提供する方法は、通常、導入遺伝子の宿主細胞のゲノムへの組込みに依存しているという問題によって阻止されている。しかしながら、導入遺伝子の組込みは、たとえ特定の遺伝子座を標的としたとしても、有害な突然変異を誘発する危険性があり、それは、例えば、治療の副作用として癌をもたらす場合がある。
【0003】
足場付着領域(SAR)又はマトリックス関連領域(MAR)としても公知である足場/マトリックス付着領域(S/MAR)は、核マトリックスの付着を媒介する真核生物のゲノム中の配列として公知である。S/MARはATに富んだ配列であり、一部のATに富んだモチーフはさらに濃縮されていることが見出された(Liebeichら、(2002年)、NAR 30巻(15号): 3433頁)。様々なベクターが、例えば、米国特許第6,410,314号及びHaaseら、(2010年)、BMC Biotechnology 10巻:20頁において、S/MARモチーフに基づく細胞内での安定な維持のために提案されている。さらに、このようなベクターの複製に影響を与えるエピジェネティック効果が同定された(Haaseら、(2013)、PLOS One 8(11):e79262)。それにもかかわらず、遺伝子治療における使用に十分に安定であるS/MARベースのベクターは依然として入手可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Liebeichら、(2002年)、NAR 30巻(15号): 3433頁
【文献】Haaseら、(2010年)、BMC Biotechnology 10巻:20頁
【文献】Haaseら、(2013)、PLOS One 8(11):e79262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
にもかかわらず、本技術分野において、特にS/MAR要素を使用し、導入遺伝子の宿主細胞のゲノムへの組込みに伴うリスクを回避する、細胞の安定なトランスフェクションのための改良された手段及び方法が必要とされている。この課題は、本明細書に開示されている手段及び方法によって解決される。
【0007】
したがって、本発明は、少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含むポリヌクレオチドに関し、前記S/MAR要素は、前記プロモーターの下流に位置し、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含む。
【0008】
以下で使用されるとき、用語「有する」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」、又はそれらの任意の文法的変形は、非排他的な形で使用される。したがって、これらの用語は両方とも、これらの用語によって導入される特徴以外に、これに関連して記載された実在物にさらなる特徴が存在しない状況、及び1つ以上のさらなる特徴が存在する状況を指し得る。例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」は両方とも、B以外に、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが唯一及び排他的にBからなる状況)、及びB以外に、1つ以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CとD、又はさらなる要素が存在する状況を指し得る。
【0009】
さらに、以下で使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」又は同様の用語は、さらなる可能性を制限することなしに、任意の用語とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施される。同様に、「本発明の一実施形態において」又は同様の表現によって導入される特徴は、本発明のさらなる実施形態に関するいずれも制限せず、本発明の範囲に関するいずれも制限せず、及びこのような方法で導入された特徴を本発明の他の任意の又は非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいずれも制限せず、任意の特徴であることが意図される。
【0010】
さらに、他に指示がない限り、「約」という用語は、関連分野において一般的に認められている技術的精度を有する指示値に関し、好ましくは指示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、「本質的に」という用語は、示された結果又は使用に影響を与える偏差が存在しない、すなわち、潜在的な偏差が、示された結果を±20%超、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%逸脱させないことを示す。したがって、「から本質的になる」とは、特定される成分を含むが、不純物として存在する、材料、その成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び本発明の技術的効果の到達以外の目的で添加される成分を排除することを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を使用して定義される組成物は、任意の公知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。好ましくは、本質的に一組の成分からなる組成物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の特定されていない成分(複数可)を含む。核酸配列との関連で、「本質的に同一」という用語は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%値を示す。理解されるように、本質的に同一という用語は、100%の同一性を含む。前述のことは、必要な変更を加えて「本質的に相補的」という用語に適用される。
【0011】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状又は環状の核酸分子を指す。この用語は、一本鎖並びに部分的又は完全に二本鎖のポリヌクレオチドを包含する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、RNAであるか、又はcDNAを含むDNAである。さらに、天然に存在する修飾されたポリヌクレオチド、例えば、グリコシル化若しくはメチル化されたポリヌクレオチド、又は人工的に修飾された誘導体を含む化学的に修飾されたポリヌクレオチド、例えば、ビオチン化されたポリヌクレオチドもまた含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離されたポリヌクレオチドとして(すなわち、その天然の状況から単離された)又は遺伝子修飾された形態のいずれかで提供されるものである。本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞で活性な少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含む。さらに、ポリヌクレオチドは、すべて本明細書で以下において特定されるように、宿主細胞においてエピソーム的に複製する生物学的活性を有する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、最大1Mb、より好ましくは最大500kb、さらにより好ましくは最大200kb、最も好ましくは最大100kbの長さを有する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、天然に存在しないポリヌクレオチドである。したがって、好ましくは、ヌクレオチドは人工ポリヌクレオチドである。また好ましくは、ポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、それが含む残りの核酸配列に対して異種である少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0012】
本明細書において使用する場合、ポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、具体的に示されたポリヌクレオチドの変異体を含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドという用語は、示された特定のポリヌクレオチドに関する。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド変異体」という用語は、配列が少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/欠失によって前述の特定の核酸配列から誘導され得ることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書において関連するポリヌクレオチドの変異体であって、特定のポリヌクレオチドについて特定されているような生物学的活性又は複数の活性を有するものであるポリヌクレオチド変異体に関する。したがって、本発明に従って言及されるポリヌクレオチド変異体は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、欠失及び/又は付加のために異なる核酸配列を有するものである。好ましくは、上記ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列、例えばS/MAR要素、のオルソログ、パラログ又は他のホモログを含む。また好ましくは、上記ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列の天然に存在する対立遺伝子を含む。ポリヌクレオチド変異体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、標準的な教科書に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中でのハイブリダイゼーション条件、続いて50~65℃の0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄ステップである。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が、核酸の種類によって、例えば、有機溶媒が存在する場合には、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることを知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」の下では、温度は、濃度が0.1×~5×SSC(pH7.2)である水性緩衝液中で42℃~58℃の間で核酸の種類に応じて異なる。有機溶媒が、前述の緩衝液中に、例えば50%ホルムアミド中に存在する場合、標準条件下での温度は約42℃である。DNA-DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び20℃~45℃、好ましくは30℃~45℃である。DNA-RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び30℃~55℃、好ましくは45℃~55℃である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、長さが約100bp(=塩基対)であり、ホルムアミドの非存在下で50%のG+C含量を有する核酸について決定される。したがって、原則として当業者に公知である、低G+C DNAにさらに適した他の条件は、当業者によってより適切であることが見出され得る。当業者は、標準的な教科書を参照することによって、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を知っている。或いは、ポリヌクレオチド変異体は、PCRに基づく技術、例えば、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅によって、すなわち、本発明のポリペプチドの保存ドメインに対する縮重プライマーを用いて得ることができる。ポリペプチドの保存ドメインは、ポリヌクレオチドの核酸配列又は本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を他の生物の配列と配列比較することによって同定され得る。鋳型として、細菌、真菌、植物由来、又は好ましくは動物由来のDNA又はcDNAを使用し得る。さらに、変異体は、具体的に示された核酸配列、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列又はその機能的部分配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらに、具体的に示されたアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた包含される。同一性パーセント値は、好ましくは、全アミノ酸又は核酸配列領域にわたって計算される。異なる配列を比較するために、様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。これに関連して、Needleman及びWunsch、又はSmith及びWatermanのアルゴリズムが特に信頼できる結果をもたらす。配列アラインメントを実施するために、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution.、25巻、351-360頁、1987年、Higginsら、CABIOS、5巻 1989年: 151-153頁)又はプログラムGap及びBestFit(Needleman及びWunsch (J. Mol. Biol. 48巻; 443-453頁 (1970年))、Smith及び Waterman (Adv. Appl. Math. 2巻; 482-489頁 (1981年)))が好ましく使用される。好ましくは、上記プログラムは、それらの標準パラメーターとともに使用される。パーセント(%)である上述した配列同一性の値は、好ましくは、特に明記しない限り、通常、配列アラインメントの標準設定として使用される以下の設定:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均一致:10.000及び平均不一致:0.000を用いて、全配列領域にわたってプログラムGAPを用いて決定されるべきである。
【0013】
具体的に示された核酸配列のいずれかのフラグメントを含むポリヌクレオチドであって、示された1つ又は複数の活性を保持する上記ポリヌクレオチドもまた、本発明の変異体ポリヌクレオチドとして包含される。本明細書において意味するフラグメントは、好ましくは、特定の核酸配列のいずれか1つの少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個、より好ましくは少なくとも400個の連続したヌクレオチドを含み、又は特定のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも100個、好ましくは少なくとも200個、より好ましくは少なくとも300個の連続したアミノ酸を含み、なお示された活性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0014】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列からなるか、本質的にそれからなるか、又はそれを含むかのいずれかである。したがって、それらは、同様にさらなる核酸配列を含み得る。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、融合タンパク質又は選択マーカーをコードし得る。このような融合タンパク質は、発現をモニターするためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色又は赤色の蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼなど)、又は検出可能なマーカーとして若しくは精製目的の補助的な手段として役立ち得るいわゆる「タグ」を追加の部分として含み得る。異なる目的のためのタグは、当該技術分野において周知であり、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0015】
また好ましくは、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのカーゴ配列を含む。本明細書で使用される「カーゴ配列」という用語は、宿主細胞に導入され、その中で安定に維持される目的の核酸配列に関する。好ましくは、カーゴ配列は、ポリヌクレオチドをコードする核酸配列、例えばRNA、及び/又は目的のポリペプチドである。好ましくは、目的のポリペプチドは、治療用ポリペプチド、より好ましくはT細胞受容体(TCR)、さらに好ましくはヒト若しくはキメラT細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、好ましくはMART1 TCR、又は本明細書の他の箇所で特定される遺伝病に罹患した細胞において欠如しているポリペプチドである。したがって、例えば、好ましくは、ポリヌクレオチドは、フェニルケトン尿症の治療のためにフェニルアラニン-ヒドロキシラーゼ活性(EC1.14.16.1)を提供するポリペプチドをコードする少なくとも1つのカーゴ配列を含む。好ましい実施形態において、カーゴ配列は、少なくとも1つのプロモーターとS/MAR要素の間にある。さらに好ましい実施形態において、カーゴ配列は少なくとも1つのプロモーターとS/MAR要素の間に存在し、このS/MAR要素は、スプライスドナーおよびスプライスアクセプターに隣接している(挟まれている);したがって、好ましくは、S/MAR要素は、カーゴ配列をコードする転写物からスプライシングで切り出される。したがって、好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードするコード配列を含んでおり、このポリペプチドをコードするコード配列は前記プロモーターと前記S/MAR要素の間にある。さらに好ましい実施形態において、ポリペプチドをコードする配列は、少なくとも1つのプロモーターとS/MAR要素の間にあるが、このS/MAR要素は、スプライスドナーおよびスプライスアクセプターに隣接している;したがって、好ましくは、S/MAR要素は、ポリペプチドをコードする転写物からスプライシングで切り出される。
【0016】
好ましくは、選択マーカーをコードする配列及びカーゴ配列は、1つのmRNAから真核細胞中で2つ(又はそれを超える)のポリペプチドの発現を可能にする配列、例えば、内部リボソーム侵入配列(IRES)、又はより好ましくは自己切断ペプチド配列、例えば、最も好ましくはブタテッショウウイルス-1由来のペプチド2A(P2A)配列によって介在される。適切な配列は、当該技術分野において公知であり、例えば、Kimら (2011年) PLoS ONE 6(4): e18556に記載のものである。
【0017】
好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。好ましくは、ポリヌクレオチドは、原核生物及び/又は真核生物、好ましくは真核生物宿主細胞又はそれらの単離された画分における遺伝子の発現を可能にするさらなる発現制御配列を含む。上記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節要素は、当該技術分野において周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、及び場合により転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節要素は、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサーを含み得る。真核生物宿主細胞における発現を可能にする調節要素の例は、酵母におけるAOX1若しくはGAL1プロモーター、又はSMVP-、U6-、H1-、7SK-、CMV-、EFS-、SV40-若しくはRSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、又は哺乳動物細胞及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。さらに、誘導性又は細胞型特異的発現制御配列は、本発明のポリヌクレオチドに含まれ得る。誘導性発現制御配列は、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現制御配列は、当該技術分野において周知である。転写の開始に関与する要素に加えて、このような調節要素はまた、ポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、例えば、SV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位を含み得る。
【0018】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、ポリヌクレオチドを受容し、安定に複製することができる任意の細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは植物細胞若しくは酵母細胞であり、例えば、パン酵母の株の細胞、又は動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、昆虫細胞又は哺乳動物細胞、特にマウス細胞又はラット細胞である。さらにより好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。好ましくは、宿主細胞は、CD34+前駆細胞;CD61+血小板;CD19+Bリンパ球;CD14+単球;CD15+顆粒球;CD3+細胞傷害性Tリンパ球、好ましくはCD8及びCD45に対しても陽性であるCD3+細胞傷害性Tリンパ球;CD3+ヘルパーTリンパ球、好ましくはCD4及びCD45に対しても陽性であるCD3+ヘルパーTリンパ球;CD3+活性化Tリンパ球、好ましくはCD25及びCD45対しても陽性であるCD3+活性化Tリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球、又はナチュラルキラー(NK)細胞である。当業者に理解されるように、ポリヌクレオチドはさらに、細菌細胞中での複製を可能にする配列、特に細菌複製起点を有し得る。好ましくは、細菌細胞は、実験室細菌株の細胞、より好ましくは大腸菌細胞である。
【0019】
「プロモーター」という用語は、原則として、場合によりさらなる調節要素と協調して、所与の遺伝子の転写レベルを指示する遺伝的要素として当業者に公知である。プロモーターは、構成的であり得、すなわち、宿主細胞の状態と本質的に無関係に一定レベルの転写を提供し得、又は調節され得、すなわち、宿主細胞の状態に依存して転写レベルを提供し得る。さらに、プロモーターは、細胞型及び/又は組織特異的であり得、すなわち、数種又は1種のみの細胞型においてのみ検出可能なレベルの転写を提供し得る。好ましくは、本発明によるプロモーターは、本明細書において上記で特定される宿主細胞において活性である。当業者によって理解されるように、プロモーターの選択は、標的化を目的とする宿主細胞のタイプに依存し得る。特定の細胞型に適したプロモーター並びに構成的プロモーターは当該技術分野において公知である。好ましくは、プロモーターは、真核生物プロモーター、より好ましくは構成的真核生物プロモーター、さらに好ましくはより強い真核生物プロモーターである。好ましくは、プロモーターは、EF1アルファ(伸長因子1アルファ)プロモーター、UbiC(ユビキチンC)プロモーター、ROSA26プロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、及び/又はCAG(チキンアルファ-アクチン)プロモーターであり、より好ましくはEF1アルファプロモーターである。また好ましくは、プロモーターは、細胞及び/又は組織特異的真核生物プロモーターである。本明細書において使用する場合、「プロモーター」という用語は、上記で特定されるプロモーターについて使用され、一方、ポリヌクレオチド上に潜在的にさらに存在する他の任意のプロモーターは、「二次プロモーター」と呼ばれる。したがって、好ましくは、プロモーターは、宿主細胞中のS/MAR配列への転写を指示するプロモーターである。また好ましくは、例えば、原核生物プロモーターである、S/MAR配列から転写的に遮蔽される、及び/又はS/MAR配列から離れて転写を指示するプロモーターである、ポリヌクレオチドのS/MAR配列への転写を指示しないプロモーターは、二次プロモーターである。好ましくは、プロモーターは、アポリポタンパク質Bプロモーターに対応する1000未満、より好ましくは250未満、さらにより好ましくは100未満、最も好ましくは20未満の連続塩基対を含む。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、ヒトアポリポタンパク質Bプロモーターを含まず、より好ましくはアポリポタンパク質Bプロモーターを含まない。
【0020】
好ましくは、S/MAR配列は、プロモーター、もし存在するならば、本明細書の下記において特定される選択マーカー遺伝子のすぐ下流に位置される。好ましくは、「すぐ下流」に位置されることは、介在転写終結シグナルを欠くこと、より好ましくは介在遺伝子を欠くことである。したがって、好ましくは、プロモーターで開始され、コードされている場合、検出可能なマーカー配列を含む転写物は、好ましくは転写されたS/MAR配列を含み、より好ましくはポリヌクレオチドに含まれる完全なS/MAR配列を含む。本明細書の他の箇所の記載を考慮して当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチドは、一次転写物からのS/MAR配列の切除を媒介するスプライシング部位をさらに含み得る。したがって、より好ましくは、好ましくはプロモーターで開始され、コードされている場合、検出可能なマーカー配列を含む少なくとも一次転写物は、好ましくは転写されたS/MAR配列を含み、より好ましくはポリヌクレオチドに含まれる完全S/MAR配列を含む。また好ましくは、「すぐ下流」という用語は、転写終結シグナルがプロモーター及びS/MARによって介在されないという条件で、プロモーター及びS/MAR配列が伸長核酸配列によって分離されているポリヌクレオチドを含む。好ましくは、プロモーターに介在する配列、又は存在する場合には、選択マーカー遺伝子の終止コドン及びS/MAR配列は、最大2kb、より好ましくは最大0.5kb、さらにより好ましくは最大0.2kb、さらにより好ましくは最大0.1kb、最も好ましくは最大50bpの長さを有する。
【0021】
「足場/マトリックス付着領域」という名称でも公知である「S/MAR要素」という用語は、原則として、真核細胞の核マトリックスのDNAへの付着を媒介する前記DNA配列に関することが当業者に公知である。S/MAR配列は、典型的には、真核染色体のDNA中の配列に由来する。様々なS/MAR配列が利用可能であり、配列は公共のデータベース、例えば、Liebichら (2002年)、Nucleic Acids Res. 30巻、312-374頁に記載されるものから利用可能である。本発明によれば、上記S/MAR要素の核酸配列(これまでS/MAR配列と呼ばれていた)は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含む。したがって、S/MAR配列に含まれるモチーフは、多数の4ヌクレオチドモチーフ5'-ATTA-3'を含む。好ましくは、S/MAR配列は、少なくとも200ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも300ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも400ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、S/MAR配列は、最大3kb、より好ましくは最大2kb、さらにより好ましくは最大1.5kb、さらにより好ましくは最大1kb、最も好ましくは最大0.9kbの長さを有する。好ましい実施形態において、S/MAR配列は、最大0.7 kb、より好ましくは最大500 bp、最も好ましくは最大250 bpの長さを有する。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、0.2kb~3kb、より好ましくは0.3kb~2kb、さらにより好ましくは0.4kb~1.5kb、最も好ましくは0.5kb~1kbの長さを有する。理解されるように、「100ヌクレオチドあたりn個の配列モチーフを含む」という表示は、100塩基対の配列あたりで計算された上記配列モチーフの平均数に関し、したがって分数であり得る。例えば、配列番号6における100塩基対あたりのATTA配列モチーフの数は、34/525塩基対×100塩基対=6.5である。好ましくは、100塩基対あたりの配列モチーフの数は、S/MAR配列の全長にわたって決定される。疑われる場合、例えば、S/MAR配列の境界を決定することができない場合には、ポリヌクレオチドの100塩基対あたり
の配列モチーフの数は、好ましくは、上記ポリヌクレオチド内の200bpの任意のウィンドウについて決定可能な最大数であり、より好ましくは、上記ポリヌクレオチド内の500bpの任意のウィンドウについて決定可能な最大数である。好ましくは、S/MAR配列は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。また好ましくは、S/MAR配列は、最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、最も好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。また好ましくは、S/MAR配列は、最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、最も好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも10個の配列モチーフATTA、より好ましくは500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも20個の配列モチーフATTA、さらにより好ましくは500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも30個の配列モチーフATTAを含む。好ましくは、S/MAR配列中のATTAモチーフの少なくとも80%、
より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%は、それぞれ、9~13、好ましくは10~12、最も好ましくは11塩基対だけ離れている。
【0022】
好ましくは、S/MAR要素は、好ましくは本明細書中の上記のATTAモチーフを含む配列内に追加の配列モチーフを含む。好ましくは、上記ATTA配列モチーフを含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つの配列モチーフATTTA(配列番号2)、好ましくは少なくとも2つの配列モチーフATTTA、より好ましくは少なくとも4つの配列モチーフATTTA、最も好ましくは少なくとも8つの配列モチーフATTTAをさらに含む。また好ましくは、上記ATTA配列モチーフ、及び任意に上記ATTTAモチーフ(複数可)を含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも6つのパリンドロームモチーフ、好ましくはモチーフTAAATATTTTA(配列番号3)をさらに含む。好ましくは、上記モチーフTAAATATTTTAは、5'末端及び/又は3'末端で少なくとも1つのモチーフATTAと連続している。また好ましくは、上記ATTA配列モチーフを含むS/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも5つの配列モチーフATTATAAATATTTTAATTA(配列番号4)、より好ましくは配列モチーフATTTAATTATAAATATTTTAATTA(配列番号5)を含む。
【0023】
また好ましくは、S/MAR配列は、低いG+C含量を有する。当業者は、配列中の全てのグアニン及びシチジン塩基を計数し、累積結果を配列中のヌクレオチドの数で割ることによって公知の配列のC+G含量を計算する方法を知っている。好ましくは、上記配列モチーフATTAを含むS/MAR要素の配列ストレッチは、最大30%、より好ましくは最大20%、さらにより好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大5%のG+C含有量を有する。好ましくは、S/MAR要素の境界を決定することができない場合には、G+C含有量の計算に使用される配列は、本明細書で上記に特定されるように、100塩基対あたりのATTAモチーフの数の計算に使用されるものと同じである。また好ましくは、S/MAR配列は、少数のCGジヌクレオチドを有する。好ましくは、上記配列モチーフを含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、最大6個、より好ましくは最大4個、さらにより好ましくは最大2個の配列モチーフCGを含み、最も好ましくは配列モチーフCGを含まない。
【0024】
好ましくは、S/MAR配列は、アポリポタンパク質B遺伝子、好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子のS/MAR配列、より好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子の3'S/MAR配列を含む。より好ましくは、S/MAR配列は、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子の変異体、より好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子の3'S/MAR配列の変異体を含む。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、配列番号6、好ましくは配列番号7又は8の配列と少なくとも70%同一である配列を含む。より好ましくは、S/MAR配列は、配列番号6、好ましくは配列番号7、より好ましくは配列番号8の核酸配列を含む。好ましい実施形態において、S/MAR配列は配列番号15と少なくとも70%同一である配列を含み、より好ましくはS/MAR配列は配列番号15の配列を含む。
【0025】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、S/MAR要素の下流にポリAシグナルを含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、S/MAR要素の下流にポリAシグナル及び転写終結シグナルを含む。また好ましくは、S/MAR要素に、スプライスドナーとスプライスアクセプターが隣接し、したがって好ましい実施形態ではプロモーターから転写産物が転写され、該転写産物からS/MAR要素の配列がスプライシングされて切り出される(スプライスアウトされる)。また、好ましくは、S/MAR配列は、好ましくは転写後に選択マーカーをコードする転写物からスプライスアウトされる。また好ましくは、ポリヌクレオチドは、本明細書において上記で特定される(二次)細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子をさらに含む。好ましくは、細菌複製起点及び細菌選択マーカー遺伝子の発現を駆動するプロモーターは原核生物特異的であり、すなわち、より好ましくは宿主細胞中で非機能的である。また好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくはポリヌクレオチドに含まれる原核細胞において活性なすべての要素は、少なくとも1つの遮蔽要素の存在によって、より好ましくは遮蔽要素が隣接することによって、ポリヌクレオチドに含まれる残りの配列から遮蔽される。好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくは原核生物細胞で活性なすべての要素は、5'末端に少なくとも1つの遮蔽要素の存在、及び3'末端に少なくとも1つの遮蔽要素の存在によってポリヌクレオチドに含まれる残りの配列から遮蔽される。より好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくはポリヌクレオチドに含まれる原核細胞において活性なすべての要素は、少なくとも1つの遮蔽要素の存在によって、より好ましくは遮蔽要素が隣接することによってプロモーターから遮蔽される。好ましくは、上記遮蔽要素(複数可)は、抗抑制エレメント40要素(配列番号11)若しくはその変形形態、及び/又はS/MAR要素である。
【0026】
したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号7若しくは8の配列、又は配列番号7若しくは8の配列と少なくとも70%同一である配列、好ましくは配列番号12、又は配列番号12の配列と少なくとも70%同一である配列、より好ましくは配列番号13、又は配列番号13の配列と少なくとも70%同一である配列、最も好ましくは配列番号13、又は配列番号14の配列と少なくとも70%同一である配列を含む。好ましくは、ポリヌクレオチドは、GFPをコードする核酸配列が、異なるポリペプチド、好ましくは治療用ポリペプチド、より好ましくはヒトT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、好ましくはMART1 TCRをコードする核酸配列によって置き換えられた配列番号14の配列を含む。
【0027】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのプロモーター及びポリヌクレオチドのS/MAR要素を介在する選択マーカーポリペプチドをコードするコード配列をさらに含み、好ましくは上記プロモーター及び上記選択マーカー配列は一緒に選択マーカー遺伝子を構成する。本明細書で使用するとき、「選択マーカー配列」という用語は、表現「選択マーカーポリペプチドをコードするコード配列」の略記として使用される。「選択マーカー」という用語は、原則として当業者に理解され、宿主細胞中で発現される場合、適用されたときに宿主細胞への選択圧を媒介する少なくとも1つの条件に対する耐性を付与する核酸配列に関する。選択マーカーは、原核細胞及び真核細胞について当該技術分野において公知である。好ましくは、選択マーカーは真核細胞の選択マーカーである。好ましくは、選択マーカーは、選択マーカーポリペプチド、より好ましくは、ホット細胞(hot cell)から選択化合物を除去するか、又はそれを不活性にするように上記選択化合物を修飾するトランスポーター活性及び/又は酵素活性を有する選択マーカーポリペプチドである。好ましくは、選択マーカー遺伝子は、好ましくは選択マーカーポリペプチドをコードする配列の上流に、少なくとも1つのイントロンをさらにコードする。好ましくは、選択マーカーは、ピューロマイシン、ブラスチシジン、ネオマイシン、及び/又はゼオシン、より好ましくはピューロマイシンに対する耐性を媒介するマーカーである。したがって、好ましくは、プロモーター及び選択マーカーは一緒になって、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、又はゼオシン耐性遺伝子、より好ましくはピューロマイシン耐性遺伝子を構成する。好ましい実施形態において、選択マーカーは、特定の一連の増殖条件、好ましくは、増殖シグナルの存在および/または非存在、に対して耐性を付与するポリペプチドである。したがって、好ましい実施形態において、選択マーカーはT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)であるが、これらはいずれも一般に当技術分野で知られている。好ましくは、TCRおよび/またはCARは、好ましくはT細胞シグナリングが前記TCRおよび/またはCARを含有する宿主細胞内で誘導されうるという、既知の特異性を有する。このような場合、宿主細胞はT細胞もしくはNK細胞であることが好ましい。好ましくは、選択マーカーは、ポリAシグナルおよび(1つもしくは複数の)転写終結シグナルを欠く。したがって、好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードするコード配列(選択マーカー配列)をさらに含有するが、この選択マーカー配列は、前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在し、この前記プロモーターおよび前記選択マーカー配列は全体として選択マーカー遺伝子を構成しており、さらにこの選択マーカーは、真核細胞の選択マーカーである。
【0028】
好ましくは、選択マーカーは、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(Genbank Acc番号KX548903.1のヌクレオチド535~1134(配列番号10)によってコードされるGenbank Acc番号KX548903.1(配列番号9))である。したがって、選択マーカー遺伝子は、好ましくは、a)配列番号9の配列を含むピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こし、b)配列番号9の配列と少なくとも70%同一である配列を含むピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こし、c)配列番号10の配列を含み、d)配列番号10の配列と少なくとも70%同一である配列を含み、e)配列番号9の配列を含む、好ましくはそれからなるピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、及び/又はf)配列番号9の配列と少なくとも70%同一である配列を含む、好ましくはそれからなるピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、核酸配列を含む。
【0029】
本明細書において使用する場合、「複製する」という用語は、細胞複製周期の間に宿主細胞においてポリヌクレオチドの少なくとも2つの複製の産生を誘導するための上記ポリヌクレオチドの活性に関する。したがって、好ましくは、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの複製は、非複製ポリヌクレオチドが希釈されると予想される、一連の細胞分裂後にポリヌクレオチドの存在を決定することによって決定される。好ましくは、複製は安定複製であり、すなわち、ポリヌクレオチドが平均50細胞分裂後、より好ましくは平均100細胞分裂後、最も好ましくは平均250細胞分裂後に依然として宿主細胞集団において検出可能である程度までの複製である。好ましくは、宿主細胞集団中のポリヌクレオチドの検出は、標準的な条件下でPCRにより行われる。
【0030】
「エピソーム」複製という用語は、原則として、細胞ゲノムに組み込まれることのない、すなわち細胞ゲノムに共有結合的に付着するようになることのない、ポリヌクレオチドの複製に関することが当業者に公知である。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドのエピソーム複製は、自律複製単位としての上記ポリヌクレオチドの複製である。好ましくは、エピソーム複製は、閉環した二本鎖DNA分子の形態での宿主細胞におけるポリヌクレオチドの維持である。当業者に理解されるように、上記ポリヌクレオチドの実際の複製は、他の形態、例えば、ローリングサークル複製を含み得る。環状DNAのエピソーム維持は、好ましくは、当業者に公知であるプラスミド救出手順によって、すなわち、好ましくは、宿主細胞の溶解物を調製し、その中に含まれるDNAを適切な細菌細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞に形質転換することによって検証される。上記方法によって得ることができる適切な数の細菌コロニーが、元の環状DNAと同じ制限パターン及び/又は配列を有するプラスミドとして環状DNAを含む場合、好ましくは、環状DNAはエピソーム的に維持されていると推測される。当業者に公知でもあるエピソーム維持を確認するさらなる方法は、DNA/DNAブロッティング(「サザンブロット」法)である。したがって、好ましくは、宿主細胞の全DNAを調製し、1つ以上の制限酵素(複数可)で消化する。元のプラスミドをプローブとして使用するサザンブロットにおいて、元の環状DNAに対応するバンドのみが視認される場合、好ましくは、プラスミドがエピソーム的に維持されていると結論付けられる。より好ましくは、エピソーム維持は、本明細書の実施例に記載されるように検証される。
【0031】
したがって、本明細書で使用される「エピソーム的に複製する」という用語は、細胞複製サイクル中に宿主細胞内で上記ポリヌクレオチドの少なくとも2つの複製の産生を誘導するポリヌクレオチドの活性に関し、一方、上記ポリヌクレオチドは、自律複製実在物として上記細胞に存在する。安定なエピソーム複製は、少なくとも50細胞分裂後、好ましくは少なくとも100細胞分裂後、より好ましくは少なくとも250細胞分裂後、最も好ましくは少なくとも500細胞分裂後に、ポリヌクレオチドが依然として宿主細胞中で検出可能である程度までのエピソーム複製である。好ましくは、前述の細胞分裂数は、細胞集団に対する細胞分裂の平均数である。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくはサルウイルス40(SV40)複製起点、ウシパピローマウイルス(BPV)複製起点、及びエプスタイン-バーウイルス(EBV)複製起点を欠如し、好ましくはポリオーマウイルス複製起点、パピローマウイルス複製起点、及びヘルペスウイルス複製起点を欠如し、より好ましくは真核生物感染ウイルス複製起点を欠如している。より好ましくは、ベクターは、公知の真核生物複製起点を欠如している。しかしながら、好ましくは、ポリヌクレオチドは、原核生物、好ましくは細菌複製起点、特に大腸菌の複製起点をさらに含む。好ましくは、原核生物複製起点は、ポリヌクレオチドに含まれる唯一の複製起点である。
【0033】
有利には、本発明の基礎となる研究において、特定されるS/MAR要素を上記S/MAR要素を読み込むプロモーターと組み合わせることにより、専用の複製起点が存在しない場合でさえ、宿主細胞においてエピソーム形態で非常に安定であるポリヌクレオチドが得られることが見出された。さらに、ポリヌクレオチドの確立の効率は、ピューロマイシン耐性遺伝子を使用すること、耐性遺伝子を介してS/MAR要素への転写を確実にすること、及びポリヌクレオチド中に潜在的に存在する他のプロモーターから転写的にプロモーター-S/MARの組み合わせを遮断することによってさらに改善され得ることが見出された。
【0034】
上記でなされた定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。以下でさらになされるさらなる定義及び説明はまた、準用される本明細書中に記載されるすべての実施形態について適用する。
【0035】
本発明はさらに、本発明によるポリヌクレオチドを含む組成物に関する。
【0036】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定された化合物及び任意選択で1つ以上の許容される担体を含む物質の組成物に関する。好ましくは、組成物は、医薬として許容される組成物である。したがって、好ましくは、担体は、医薬として許容される担体である。本発明の化合物は、好ましくは医薬として許容される塩として製剤化することができる。好ましい塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物などを含む。
【0037】
担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないという意味で許容されるものでなければならない。使用される担体は、例えば、固体、ゲル又は液体のいずれかであり得る。固体医薬担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、リン酸緩衝食塩水、シロップ、油、例えば、落花生油及びオリーブ油、水、エマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などである。同様に、担体又は希釈剤は、当該技術分野で周知である時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリルを単独で又はワックスとともに含み得る。上記適切な担体は、上記のもの及び当該技術分野において周知である他のものを含む。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack PublishiNng Company、Easton、Pennsylvaniaを参照されたい。希釈剤(複数可)は、組成物中の化合物の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス液である。さらに、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は無毒性、非治療的、非免疫原性安定剤などを含み得る。
【0038】
好ましくは、組成物は、ポリヌクレオチドの宿主細胞への侵入を媒介する。したがって、好ましくは、組成物は、少なくとも1つのトランスフェクション剤を含む。適切なトランスフェクション剤の選択は、標的宿主細胞、並びに想定される特定用途に依存し得る。トランスフェクション剤、適切なトランスフェクション条件、並びにその選択基準は、当該技術分野において周知である。また、好ましくは、組成物はウイルス様粒子を含む。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子にパッケージングされている、すなわち、好ましくは、ポリヌクレオチドはウイルス様粒子に含まれている。
【0039】
医薬組成物は、好ましくは、局所的又は全身的に投与される。薬物投与に従来使用されている適切な投与経路は、経口投与、静脈内投与、又は非経口投与、並びに吸入である。しかしながら、化合物の性質及び作用様式に応じて、医薬組成物は、同様に他の経路によっても投与され得る。例えば、ポリヌクレオチド化合物は、本明細書において上記で特定されたように、ウイルスベクター又はウイルス若しくはリポソームを用いることによる遺伝子治療アプローチにおいて投与され得る。さらに、化合物は、共通の医薬組成物中で、又は別々の医薬組成物として他の薬物と組み合わせて投与することができ、上記別々の医薬組成物は、キットの部分の形態で提供され得る。化合物は、好ましくは、従来の手順に従って薬物を標準的な薬学的担体と組み合わせることによって調製される従来の剤形で投与される。これらの手順は、所望の調製物に適切なように成分を混合し、造粒及び圧縮し、又は溶解することを含み得る。医薬として許容される担体又は希釈剤の形態及び特徴は、それと組み合わされる活性成分の量、投与経路及び他の周知の変数によって決定されることが理解される。
【0040】
医薬組成物の治療有効量は、本明細書において言及される疾患又は状態に付随する症状を予防、改善又は治療する本発明の医薬組成物において使用される化合物の量を指す。このような化合物の治療効率及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%において致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。
【0041】
投薬レジメンは、主治医及び他の臨床的要因によって決定される。好ましくは上記の方法のいずれか1つに従う。医薬の分野において周知であるように、任意の一人の患者に対する投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間及び投与経路、一般的健康状態、並びに同時に投与されている他の薬などを含む多数の要因に依存する。進行は、定期的な評価によって監視することができる。典型的な用量は、例えば、1~1000μgの範囲であり得る。しかしながら、特に前述の因子を考慮すると、この例示的な範囲より下又は上の用量が想定される。一般的に、医薬組成物の通常の投与としてのレジメンは、1日あたり1μgから10mg単位の範囲内にあるべきである。レジメンが持続注入である場合、それはまた、それぞれ1分あたり体重1キログラムあたり1μgから10mg単位の範囲であるべきである。進行は、定期的な評価によって監視することができる。しかしながら、対象及び投与方法に応じて、物質投与量は、体重1kgあたり約0.01mgから体重1kgあたり約10mgまでを提供するように広い範囲にわたって変化し得る。ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルスベクターを投与する場合、好ましい用量は、5×1011~2×1013ウイルス粒子又はウイルスゲノム/kg体重である。理解されるように、これらの例示的な用量は、上記の因子に加えて、ウイルスのタイプ、標的臓器などのようなさらなる因子に応じて変更され得る。
【0042】
本明細書において言及される医薬組成物及び製剤は、本明細書に記載される疾患又は状態を治療又は改善又は予防するために少なくとも一度投与される。しかしながら、上記医薬組成物は、2回以上、例えば1日~非限定数の日数に1~4回から投与することができる。
【0043】
特定の医薬組成物は、製薬の技術分野において周知である方法で調製され、本明細書において上記で言及された少なくとも1つの活性化合物を混合して含むか、又はそうでなければ医薬として許容される担体若しくは希釈剤と関連している。これらの特定の医薬組成物を製造するために、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合されるか、或いはカプセル、サシェ、カシェ、紙若しくは他の適切な容器又はビヒクルに封入又はカプセル化される。得られる製剤は、投与方法に、すなわち錠剤、カプセル、坐剤、液剤、懸濁剤などの形態で採用される。投薬量の推奨は、考慮されているレシピエントに応じて用量調整を予測するために、処方者又は使用者の指示に示されるものである。
【0044】
本発明はまた、医薬における使用のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞に関する。本発明はさらに、遺伝病の治療に使用するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞に関する。
【0045】
本明細書で使用される「遺伝病」という用語は、個体のゲノムにおける1つ以上の修飾、好ましくは突然変異に因果関係がある疾患に関する。したがって、好ましくは、遺伝病は、1つ以上のエピジェネティック変化と因果関係があり、より好ましくは1つ以上の遺伝的突然変異と因果関係がある。理解されるように、遺伝病の症状はしばしば、1つ以上の特定の組織(複数可)及び/又は細胞型(複数可)における、突然変異した遺伝子の発現、及び/又は遺伝子産物の正常な機能を提供する遺伝子の発現の欠如によって引き起こされる。したがって、突然変異が疾患に寄与するそれらの細胞においてのみ遺伝病を治療することが好ましい場合がある。好ましくは、遺伝病は単一遺伝子性疾患であり、すなわち1つの遺伝子における遺伝的変化によって引き起こされる。より好ましくは、遺伝病は単一遺伝子性劣性疾患、すなわち遺伝子の両方の対立遺伝子における遺伝的変化によって引き起こされる。したがって、好ましくは、症状の改善は、影響する遺伝子の少なくとも1つの改変されていないコピーを提供することによって予期される。最も好ましくは、遺伝病は、フェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病である。好ましい実施形態において遺伝病は癌である。
【0046】
本発明はまた、本発明によるポリヌクレオチド及び細胞侵入を媒介する化合物を含むキットに関する。
【0047】
本明細書で使用される「キット」という用語は、一緒に包装されてもよく、又は包装されなくてもよい本発明の前述の化合物、手段又は試薬の集合を指す。キットの構成要素は、別々のバイアルによって(すなわち、キットの別々の部分として)構成され得る、又は単一のバイアルで提供され得る。さらに、本発明のキットは、好ましくは、本明細書の上記で言及した方法を実施するために使用されうることを理解されたい。好ましくは、全ての構成要素は、上記に言及した方法を実施するためにすぐに使用できる方法で提供されることが想定される。さらに、キットは、好ましくは、上記方法を実施するための指示書を含む。指示書は、紙又は電子形式のユーザーマニュアルによって提供することができる。さらに、マニュアルは、本発明のキットを使用して前述の方法を実施するときに得られる結果を解釈するための指示書を含み得る。上記から理解されるように、ポリヌクレオチドを含むキットの説明は、好ましくは、必要な変更を加えて対応するベクターを含むキットに関する。
【0048】
好ましくは、キットは、それが含むポリヌクレオチドに対する細胞侵入を媒介する少なくとも1つの化合物をさらに含み、「細胞侵入を媒介する化合物」という用語は、キットのポリヌクレオチドを宿主細胞の内部に、好ましくは宿主細胞に侵入させるのに適した任意の手段に関する。細胞進入を媒介する適切な化合物(送達手段)は当該技術分野において公知であり、特にトランスフェクション手段、パッケージング組成物などを含む。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは送達手段に、例えば、ウイルス粒子に、より好ましくは複製欠損ウイルス粒子に、最も好ましくはウイルス様粒子(VLP)に予め包装されている。当業者は、所与の標的宿主細胞に適切な送達手段が選択され得るように、細胞受容体に対して異なる特異性を提供する送達手段を知っている。
【0049】
本発明はさらに、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞を含む装置に関する。
【0050】
本明細書で使用される「装置」という用語は、少なくとも、本発明の化合物又は組成物の投与を可能にするように互いに作動可能に連結された手段を含む手段のシステムに関する。ポリヌクレオチド、組成物、宿主細胞を投与するための好ましい手段は、当該技術分野において周知である。手段を作動方法で連結する方法は、装置に含まれる手段のタイプ、及び想定される投与の種類に依存する。好ましくは、手段は、このような場合において、単一の装置によって構成される。したがって、上記装置は、化合物又は組成物を投与するための送達ユニット、及び投与まで上記化合物又は組成物を貯蔵するための貯蔵ユニットを含み得る。しかしながら、本発明の手段は、このような実施形態では別々の装置として現れ得、好ましくはキットとして一緒に包装されていることも意図される。当業者は、さらなる手間をかけずに手段を連結する方法を理解する。好ましい装置は、専門技術者の特別な知識なしに適用することができるものである。好ましい実施形態では、装置は、本発明の化合物又は組成物を含むシリンジ、より好ましくは針付きのシリンジである。別の好ましい実施形態では、装置は化合物又は組成物を含む静脈内注入(IV)機器である。別の好ましい実施形態では、装置は、投与部位を洗い流すための化合物若しくは薬剤を含むか、又はさらに化合物若しくは組成物の、例えば腫瘍への、局所適用のための、針を含む内視鏡装置である。さらに別の好ましい実施形態では、装置は本発明の化合物を含む吸入器であり、より好ましくは、上記化合物は、エアロゾルとして投与するために製剤化されている。
【0051】
本出願はまた、宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法であって、
a)上記宿主細胞を本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞と接触させるステップ、並びに
b)それにより、宿主細胞を安定にトランスフェクトするステップ
を含む方法に関する。
【0052】
本発明の宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法は、好ましくはインビトロ法である。さらに、それは、上記で明示的に述べたものに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)について宿主細胞又はそれを含む試料を用意すること、及び/若しくは接触した宿主細胞に選択的圧力を適用することに関し得る。さらに、上記ステップのうちの1つ以上は自動化装置によって実行され得る。
【0053】
宿主細胞を安定にトランスフェクトするという用語は、ポリヌクレオチド、好ましくは異種ポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドが本明細書において上記で特定された宿主細胞によって安定に複製されるように細胞に導入することに関する。好ましくは、安定なトランスフェクションは、ポリヌクレオチドの安定なエピソーム複製を含む。好ましくは、安定なトランスフェクションは、接触後、宿主細胞に選択圧を適用して、選択マーカーの存在について選択することを含む。選択圧は、場合によりポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする最初の時間枠を除外して、接触後に適用される。ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続時間は、接触した宿主細胞のタイプ及び使用される選択マーカーの種類に大部分依存する。好ましくは、ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続期間は、1時間~48時間、より好ましくは2時間~24時間、最も好ましくは3時間~16時間である。しかしながら、ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続時間はまたゼロであり得る。すなわち、選択圧は接触直後又は接触中でさえも適用され得る。より好ましくはポリヌクレオチドを含まない宿主細胞が増殖するのを防ぐために、選択的な圧力を連続的に、すなわち、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に確立することを可能にする最初の時間枠の後の実質的にすべての時点で適用することができる。又は、選択圧は、より好ましくはポリヌクレオチドを受容していない細胞を除去するために一過性に適用され得る。好ましくは、上記接触後に細胞が生物に戻し導入される場合には、一過性の選択圧の適用が用いられる。しかしながら、また、特に標的宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入効率が十分に高いことが公知である場合、及び/又はトランスジェニック宿主細胞の純粋な集団があまり重要ではない場合、選択圧が適用されないことも考えられる。好ましい実施形態において、安定にトランスフェクトされた細胞集団は、検出可能なポリペプチドをコードするカーゴ配列を上記のように発現させることを可能にすることによって、ならびに、カーゴ配列を発現する細胞を、たとえばセルソーティング、好ましくはFACSで選択することによって、得ることができる。好ましい実施形態において、安定にトランスフェクトすることは、ポリヌクレオチドの安定なエピソーム複製を含むが、これは、好ましくは、平均して50回の細胞分裂後に宿主細胞集団においてそのポリヌクレオチドが依然として検出可能であるようなエピソーム複製である。
【0054】
本発明の方法の文脈において使用される「接触する」という用語は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は宿主細胞を、例えば、宿主細胞と化合物(複数可)の相互作用を可能にするように、例えば、宿主細胞と物理的に接触させるようにすることに関する。好ましくは、接触させることは、好ましくは上記に特定されたような送達手段を介して、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞の内部に送達することを含む。
【0055】
本発明はまた、対象における遺伝病を治療する方法であって、
a)上記対象を本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞と接触させるステップ、並びに
b)それにより、上記対象における遺伝病を治療するステップ
を含む方法にも関する。
【0056】
本発明の遺伝病を治療する方法は、好ましくはインビボ法である。さらに、それは上記で明示的に述べたものに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)について宿主細胞若しくはそれを含む試料を用意すること、及び/又は上記試料若しくは宿主細胞を対象に再投与することに関する。したがって、遺伝病を治療する方法は、上記で特定された宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法のステップを含む。さらに、上記ステップのうちの1つ以上は自動化装置によって実行され得る。
【0057】
さらに、本発明は、宿主細胞を安定に遺伝的に修飾するための本発明のポリヌクレオチドの使用に関する。
【0058】
また、本発明は、医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。並びに、遺伝病、好ましくは単一遺伝子性疾患、より好ましくは単一遺伝子性劣性疾患、最も好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病を治療するための医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。好ましい実施形態において、本明細書に上記に記載したとおり、遺伝病は癌である。
【0059】
また、本発明は、初代細胞、好ましくは初代皮膚線維芽細胞の遺伝子修飾のための、誘導多能性幹細胞(IPSC)の生成のための本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。好ましくは、上記初代細胞はマウス又はヒト初代細胞である。
【0060】
「初代細胞」という用語は、培養細胞株の細胞とは対照的に、当業者によって理解される。したがって、好ましくは、初代細胞は、生物由来の細胞であり、最大20継代、より好ましくは最大15継代、さらにより好ましくは最大10継代、さらにより好ましくは最大5継代培養された細胞である。最も好ましくは、初代細胞は、生物の組織、好ましくはマウス又はヒトの組織に直接由来する細胞である。
【0061】
「幹細胞」という用語はまた、少なくとも2つの細胞型、好ましくは少なくとも5つの細胞型、より好ましくは少なくとも1つの完全な細胞系統への分化の可能性を有する未分化又は低分化型細胞に関することも当業者によって理解される。好ましくは、幹細胞は全能性幹細胞、より好ましくは多能性幹細胞である。用語「誘導多能性幹細胞」又は「IPSC」は、分化細胞、好ましくは分化初代細胞に由来する多能性幹細胞に関する。IPSCを作製する方法は当該技術分野において公知であり、好ましくは、細胞における4つの転写因子の発現を含む(例えば、Takahashiら (2006年)、Cell. 126巻 (4号):663頁による)。
【0062】
本発明はまた、胚性幹細胞の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。本発明はまた、遺伝病、好ましくは単一遺伝子性疾患、より好ましくは単一遺伝子性劣性疾患、最も好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病を治療するための医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関し、ここで前記医薬は本発明のポリヌクレオチドを含む。
【0063】
本発明はまた、トランスジェニック動物を作製するための幹細胞の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。本発明はさらに、トランスジェニック動物を作製するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0064】
本明細書で使用される「トランスジェニック動物」という用語は、好ましくは遺伝子工学の方法によって動物に導入された少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含む上記動物に関する。好ましくは、トランスジェニック動物は、本発明による少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、少なくとも1個、より好ましくは少なくとも10個、なおより好ましくは少なくとも1000個、さらにより好ましくは少なくとも10000個の細胞を含む。
【0065】
また、本発明は、前核注入による単細胞胚の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0066】
当業者によって理解されるように、「前核注入」という用語は、好ましくはトランスジェニック動物を作製するために、受精卵母細胞の核に遺伝物質、好ましくは本発明のポリヌクレオチドを注入することに関する。
【0067】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチドまたは本発明の組成物を、宿主細胞における遺伝子発現の改変に使用することに関する。この目的のために、干渉非コード核酸をコードするポリヌクレオチド配列が発現可能な形で含まれるようにすることができる。したがって、ポリヌクレオチドから発現される非コード干渉核酸は、典型的にはアンチセンスRNA、siRNA、マイクロRNAまたはリボザイムとすることができる。その結果、本発明のポリヌクレオチドまたは組成物を使用することによって、遺伝子発現を改変する、すなわちダウンレギュレートすることができる。本発明のポリヌクレオチドを含有する干渉非コード核酸のための発現ベクターは、改善された安定性および発現能力を有するが、宿主細胞もしくは宿主生物において、機能的な非コード干渉核酸を同時に発現する可能性があった。したがって、本発明のポリヌクレオチド、ならびに上記の非コード干渉核酸をコードする発現可能な形のポリヌクレオチドを含有する発現構築物を、臨床状況における遺伝子サイレンシングのために、すなわち、本明細書に別記されるものを含めた、疾患および障害を治療するために、使用することもできる。改善された安定性および発現特性によって、遺伝子サイレンシングアプローチもまた改善されうる。
【0068】
以上を考慮して、以下の実施形態が好ましい:
1. 少なくとも1つのプロモーターおよびS/MAR要素を含有するポリヌクレオチドであって、前記S/MAR要素が前記プロモーターの下流に配置され、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA(配列番号1)を含有する、前記ポリヌクレオチド。
【0069】
2. 前記S/MAR配列が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTAを含み、好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTAを含み、より好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む、実施形態1のポリヌクレオチド。
【0070】
3. 前記S/MAR配列が、最大で400ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含み、好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で400ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTAを含み、より好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で400ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTAを含み、もっとも好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で400ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む、実施形態1または2のポリヌクレオチド。
【0071】
4. 前記S/MAR配列が、最大で500ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含み、好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で500ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTAを含み、より好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で500ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTAを含み、もっとも好ましくは、前記S/MAR配列が、最大で500ヌクレオチドの一続きの区間にわたって100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む、実施形態1~3のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0072】
5. 前記S/MAR配列が、500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも10個の配列モチーフATTAを含み、好ましくは、前記S/MAR配列が、500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも20個の配列モチーフATTAを含み、より好ましくは、500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも30個の配列モチーフATTAを含む、実施形態1~4のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0073】
6. 前記ATTA配列モチーフを含有する前記S/MAR要素の配列区間が、少なくとも1つの配列モチーフATTTA(配列番号2)をさらに含み、好ましくは少なくとも2つの配列モチーフATTTA、より好ましくは少なくとも4つの配列モチーフATTTA、もっとも好ましくは少なくとも8つの配列モチーフATTTAをさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0074】
7. 前記ATTA配列モチーフ、および、場合によっては前記ATTTAモチーフ(1つもしくは複数)を含有する前記S/MAR要素の配列区間が、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも4つ、もっとも好ましくは少なくとも6つのモチーフTAAATATTTTA(配列番号3)をさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0075】
8. 前記モチーフTAAATATTTTAが、5’末端または3’末端側で少なくとも1つのモチーフATTAと隣接する、実施形態7のポリヌクレオチド。
【0076】
9. 前記ATTA配列モチーフを含有する前記S/MAR要素の配列区間が、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つ、もっとも好ましくは5つの配列モチーフATTATAAATATTTTAATTA(配列番号4)、より好ましくは配列モチーフATTTAATTATAAATATTTTAATTA(配列番号5)を含む、実施形態1~8のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0077】
10. 前記配列モチーフを含有する前記S/MAR要素の配列区間が、最大で30%、好ましくは最大で20%、より好ましくは最大で15%、さらにより好ましくは最大で10%、もっとも好ましくは最大で5%のG+C含量を有する、実施形態1~9のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0078】
11. 前記配列モチーフを含有する前記S/MAR要素の配列区間が、最大で6つの配列モチーフCG、より好ましくは最大で4つの配列モチーフCG、さらにより好ましくは最大で2つの配列モチーフGCを含み、もっとも好ましくは配列モチーフCGを含まない、実施形態1~10のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0079】
12. 前記S/MAR配列が、アポリポタンパク質B遺伝子のS/MAR配列、好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子のS/MAR配列、より好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子の3’ S/MAR配列を含む、実施形態1~11のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0080】
13. 前記S/MAR配列が、配列番号6、好ましくは配列番号8または配列番号7、より好ましくは配列番号8の配列と少なくとも70%同一な配列を含む、実施形態1~12のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0081】
14. 前記S/MAR配列が、配列番号6、好ましくは配列番号7、の核酸配列を含む、実施形態1~13のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0082】
15. 実施形態1~14のいずれか1つのポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドが、ポリペプチド、好ましくは選択マーカー、をコードするコード配列をさらに含み、ポリペプチドをコードする前記コード配列は、前記プロモーターと前記S/MAR要素の間にある;好ましくは、前記ポリヌクレオチドは、選択マーカーをコードするコード配列(選択マーカー配列)、好ましくは選択マーカーポリペプチドをコードするコード配列を含み、前記選択マーカー配列は、前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在し、好ましくは前記プロモーターおよび前記選択マーカー配列は全体として選択マーカー遺伝子を構成しており、好ましくは前記選択マーカーは真核細胞の選択マーカーである、前記ポリヌクレオチド。
【0083】
16. 前記ポリヌクレオチドが、宿主細胞内でエピソームとして複製するが、好ましくはこのエピソームとしての複製が安定したエピソーム複製であって、好ましくは、少なくとも50回、好ましくは少なくとも100回、より好ましくは少なくとも250回の細胞分裂の間安定である、実施形態1~15のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0084】
17. 前記S/MAR配列が前記プロモーターのすぐ下流に位置し、場合によっては前記選択マーカー遺伝子のすぐ下流に位置する、実施形態1~16のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0085】
18. すぐ下流に位置するということは、間に転写終結シグナルがないということであり、より好ましくは、間に遺伝子がないということである、実施形態17のポリヌクレオチド。
【0086】
19. すぐ下流に位置するということは、選択マーカー配列の転写物が、転写されたS/MAR配列を含むほど近接して存在することである、実施形態17または18のポリヌクレオチド。
【0087】
20. すぐ下流とは、選択マーカー遺伝子の終止コドンの最後のヌクレオチドから、最大で250 bp、好ましくは最大で100 bp、より好ましくは最大で50 bp下流である、実施形態17~19のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0088】
21. 前記プロモーターが宿主細胞内で活性であり、好ましくは、構成的な真核生物プロモーター、好ましくはEF1α(伸長因子1α)プロモーター、UbiC(ユビキチンC)プロモーター、ROSA 26プロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、および/またはCAG(ニワトリαアクチン)プロモーターである、実施形態16~20のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0089】
22. 前記プロモーターが、細胞特異的、および/または組織特異的な真核生物プロモーターである、実施形態1~21のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0090】
23. 前記選択マーカー遺伝子が、好ましくは選択マーカーポリペプチドをコードする配列の上流に、少なくとも1つのイントロンをさらにコードしている、実施形態15~22のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0091】
24. 前記選択マーカー遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、またはゼオシン耐性遺伝子であり、好ましくはピューロマイシン耐性遺伝子である、実施形態15~23のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0092】
25. ピューロマイシン耐性遺伝子が
a) 配列番号9の配列を含有するピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こす;
b) 配列番号9の配列と少なくとも70%同一な配列を含有するピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こす;
c) 配列番号10の配列を含有する;
d) 配列番号10の配列と少なくとも70%同一な配列を含有する;
e) 配列番号9の配列を含有し、好ましくはその配列からなる、ピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する;および/または
f) 配列番号9の配列と少なくとも70%同一な配列を含有し、好ましくはその配列からなる、ピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含有する、
実施形態24のポリヌクレオチド。
【0093】
26. 前記ポリヌクレオチドが、サルウイルス40(SV40)複製開始点、ウシパピローマウイルス(BPV)複製開始点、およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製開始点を有しておらず、好ましくは、ポリオーマウイルス複製開始点、パピローマウイルス複製開始点、およびヘルペスウイルス複製開始点を有することなく;より好ましくは、真核生物感染性ウイルスの複製開始点を持たない、実施形態1~25のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0094】
27. 前記ベクターが、唯一の複製開始点として細菌の複製開始点を含有する、実施形態1~26のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0095】
28. 前記ポリヌクレオチドが、S/MAR要素の下流にポリAシグナルを含有する、実施形態1~27のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0096】
29. 前記S/MAR要素が、スプライスドナーおよびスプライスアクセプターに隣接している、実施形態1~28のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0097】
30. 前記選択マーカー遺伝子がポリAシグナルを持たない、実施形態15~29のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0098】
31. 前記選択マーカー遺伝子から転写物が転写され、その転写物からS/MAR要素の配列がスプライシングで切り出される、実施形態15~30のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0099】
32. S/MAR要素の下流のポリAシグナルが、前記スプライシングにおいて保持される、実施形態31のポリヌクレオチド。
【0100】
33. 前記宿主細胞が哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である、実施形態1~20のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0101】
34. 前記ポリヌクレオチドが、細菌の複製開始点、および/または細菌性選択マーカー遺伝子、および/またはカーゴ配列をさらに含有する、実施形態1~33のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0102】
35. 前記細菌性選択マーカー遺伝子が原核生物特異的プロモーターを含む、実施形態34のポリヌクレオチド。
【0103】
36. 前記の細菌の複製開始点および/または細菌性選択マーカー遺伝子、好ましくは原核細胞において活性のあるあらゆるエレメントが、少なくとも1つのインスレーションエレメントの存在によって、より好ましくは、複数のインスレーションエレメントに隣接することによって、ポリヌクレオチド内に含まれる残りの配列から隔絶されている、実施形態34または35のポリヌクレオチド。
【0104】
37. 前記インスレーションエレメントが、エレメント40および/またはS/MAR要素である、実施形態36のポリヌクレオチド。
【0105】
38. 前記の細菌の複製開始点および/または細菌性選択マーカー遺伝子、好ましくは原核細胞において活性のあるあらゆるエレメントが、5’末端における少なくとも1つのインスレーションエレメントの存在、ならびに3’末端における少なくとも1つのインスレーションエレメントの存在によって、ポリヌクレオチド内に含まれる残りの配列から隔絶されている、実施形態36または37のポリヌクレオチド。
【0106】
39. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号12の配列、または配列番号12の配列と少なくとも70%同一な配列を含む;好ましくは、配列番号13の配列、または配列番号13の配列と少なくとも70%同一な配列、より好ましくは、配列番号14の配列、または配列番号14の配列と少なくとも70%同一な配列を含む、実施形態1~38のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0107】
40. GFPをコードする核酸が、別のポリペプチド、好ましくは治療用ポリペプチド、より好ましくはヒトT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、好ましくはMART1 TCR、をコードするヌクレオチドで置き換えられた配列番号14の配列を、前記ポリヌクレオチドが含む、実施形態1~39のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0108】
41. 前記ポリヌクレオチドが、配列番号12の配列;好ましくは配列番号13の配列;より好ましくは配列番号14の配列を含む、実施形態1~40のいずれか1つのポリヌクレオチド。
【0109】
42. 実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む組成物。
【0110】
43. 前記組成物が、前記ポリヌクレオチドの宿主細胞内への移行を媒介する、実施形態42の組成物。
【0111】
44. 前記組成物が少なくとも1つのトランスフェクション剤を含む、実施形態31または32の組成物。
【0112】
45. 前記組成物がウイルス様粒子を含み、好ましくは、前記ポリヌクレオチドが前記ウイルス様粒子に含まれる、実施形態31~33のいずれか1つの組成物。
【0113】
46. 実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞がCD34+前駆細胞;CD61+血小板;CD19+ Bリンパ球;CD14+単球;CD15+顆粒球;CD3+細胞傷害性Tリンパ球、好ましくは、CD8およびCD45も陽性;CD3+ヘルパーTリンパ球、好ましくはCD4およびCD45も陽性;CD3+活性化Tリンパ球、好ましくはCD25およびCD45も陽性、腫瘍浸潤リンパ球、またはナチュラルキラー(NK)細胞である、前記宿主細胞。
【0114】
47. 医薬に使用するための、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞。
【0115】
48. 遺伝病、好ましくは単一遺伝子疾患、より好ましくは単一遺伝子劣勢遺伝病、もっとも好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レーバー先天黒内障、コロイデレミア、またはシュタルガルト病の治療に使用するための、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞。
【0116】
49. 実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および細胞内移行を媒介する化合物を含むキット。
【0117】
50. 細胞内移行を媒介する前記化合物が、トランスフェクション手段である、実施形態49のキット。
【0118】
51. 細胞内移行を媒介する前記化合物が、前記ポリヌクレオチドをウイルス様粒子内にパッケージングするためのパッケージング組成物である、実施形態49または50のキット。
【0119】
52. 実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞を含むデバイス。
【0120】
53. 宿主細胞を安定にトランスフェクトするための方法であって、
a) 前記宿主細胞を、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞と接触させること、ならびに
b) それによって、宿主細胞を安定にトランスフェクトすること
を含む、前記方法。
【0121】
54. 前記方法が、前記宿主細胞に対して、前記選択マーカー遺伝子の存在について選択する選択圧を加えることをさらに含む、実施形態53の方法。
【0122】
55. 前記選択圧が、連続的に、または好ましくは一過性に加えられる、実施形態53または54の方法。
【0123】
56. 被験体において遺伝病を治療するための方法であって、
a) 前記被験体を、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞と接触させること、ならびに
b) それによって、前記被験体において遺伝病を治療すること
を含む、前記方法。
【0124】
57. 宿主細胞を安定に遺伝子改変するための、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドの使用。
【0125】
58. 薬剤を製造するための、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞の使用。
【0126】
59. 遺伝病、好ましくは単一遺伝子疾患、より好ましくは単一遺伝子劣勢遺伝病、もっとも好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レーバー先天黒内障、コロイデレミア、またはシュタルガルト病を治療するための薬剤を製造するための、実施形態1~41のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態42~45のいずれか1つに記載の組成物、および/または実施形態46に記載の宿主細胞の使用。
【0127】
本明細書の引用文献はすべて、その開示内容全体、ならびに本明細書で個別に言及される開示内容について参照することにより本明細書に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1】遺伝子改変細胞集団の確立効率および分析:A) ピューロマイシンによる4週間の選択後に形成された、クリスタルバイオレット染色コロニーを有する細胞培養プレート;ベクター確立の効率は約40%であった;B) ピューロマイシン選択細胞におけるGFP蛍光のFACS検出;蛍光はきわめて均一であり、無蛍光細胞の数はきわめて少ない;1= pEPI, 2= pSMARt。
【
図2-1】確立された細胞集団からのpS/MARtベクターのプラスミドレスキューの結果。pS/MARtおよびpEPIプラスミドDNAを用いて確立されたHek293T細胞に由来する全DNAの細菌形質転換後のプラスミドレスキューおよび制限酵素解析。
【
図3】選択された細胞内で維持されるpSMARtベクターのサザンブロット:pS/MARtのGFP遺伝子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用し、宿主細胞(pS/MARt 1~3)からの抽出物においてBamHIで制限切断されるベクターDNAを検出した;非トランスフェクトベクターを対照として使用した(「pS/MARt(+)」)。
【
図4】pS/MARtのベクターマップ;ori:細菌の複製開始点、P2A:ブタテッショウウイルス-1由来の自己切断型2Aペプチドをコードする配列、アポリポB MAR:アポリポタンパク質B遺伝子に由来するS/MAR配列。
【
図5】Hek293TおよびHeLa細胞における、さまざまなのバージョンのpSMARtを用いたコロニー形成アッセイ。
【
図6】pSMRtは、連続選択を行わない場合にも分裂細胞において効率的に保持される。
【
図7】pSMARtの確立効率は、選択マーカーと無関係である(A)が、プロモーターの前にインスレーターエレメントが存在すると、その確立効率が上昇する(B);
図7A:1=pEPI、2=pSMARt-Ele40-GFP-2A-Puro、3=pSMARt-Ele40-GFP-2A-G418;B:1=pSMARt-UCOE、2=pSMARt-Ele40、3=pSMARt、4=pEPI。
【
図8】pSMARtベクターは、初代ヒトCD3+細胞において1月以上にわたって効率的に保持される。
【
図9】SMARに隣接するスプライスジャンクションの導入は、分裂細胞におけるベクターの確立を改善する。(1) pEPI、(2) pS/MARt、(3) NP、(4) NP-SPlice(1、2、3、4はいずれも、β-inf MARを有する) (5) pS/MARt、(6) NPsplice(5、6はApoLMARを有する)。
【
図10】pSMARtは、マウス胚性幹細胞(mESC)において維持され、ベクターの存在は細胞の挙動に影響を与えない。
【
図11】pSMARtベクターは、杯形成および分化過程においてアクティブであって、エピジェネティックサイレンシングに抵抗性を示す。
【
図12】pSMARtは、幹細胞分化の過程で導入遺伝子GFPの発現を持続する。
【
図13】pSMARtベクターおよびレンチウイルスにより改変されたCAR-T細胞の比較;リアルタイム腫瘍死滅、インターフェロン産生、および細胞傷害性分析。
【
図15】腫瘍サンプルの分析、およびpSMARtおよびレンチウイルスで改変されたCAR-T細胞のin vivoでの維持;1= アイソタイプコントロール、2= 未処理、3= モックT細胞による処理、4= CAR抗ヒトCEAについてコードされたレンチウイルスを導入されたT細胞、5= CAR抗ヒトCEAについてコードされたpSMARtでトランスフェクトされたT細胞。
【
図16】スプライシング配列を含有するpS/MARtおよびNanoベクターからの発現データ。さまざまなバージョンのpS/MARtで確立されたHek293T細胞集団を、DNAデリバリーの35日後の導入遺伝子発現、およびフローサイトメトリーによるピューロマイシン(0.5μg/ml)中での選択について分析した(A)。導入遺伝子GFPの相対発現を、ハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現に対して、それを基準として評価した(B)。この図は、スプライシング配列の導入が、細胞内のRNA量を向上させることによって導入遺伝子発現を向上させることを示す。図(A):(1) pS/MARt、(2) Nano-S/MARt、(3) Nano-S/MARt-スプライス;図(B):(1) pS/MARt、(2) Nano-S/MARt、(3) Nano-S/MARt-スプライス。
【0129】
以下の実施例はただ単に本発明を説明するだけのものとする。それらは、どのようなものであれ、本発明を制限すると解釈されるべきでない。
【0130】
(実施例)
実施例1:遺伝子的に修飾された細胞集団の確立の効率及び分析(
図1)
安定に発現する細胞の生成おける効率は、pS/MARt(
図4、配列番号14)を用いたコロニー形成アッセイにおいてpEPIと比較して評価された。DNA送達時に、GFP導入遺伝子発現に陽性である細胞をFACS選別(FACS Aria II)を介して単離し、100個の細胞を6cm細胞培養皿に播種した。次に、それらを0.5μg/mlピューロマイシンの存在下で4週間培養した。4週間後、細胞をPFAで固定し、コロニーをクリスタルバイオレットで染色した。コロニー数は、ベクター確立の効率、すなわち播種されたFACS選別した細胞数あたりのコロニー形成数と見なされる。安定な細胞株の生成は非常に効果的であり、トランスフェクトされた細胞の40%超が確立されるようになる(
図1A))。導入遺伝子(GFP)発現細胞の数をフローサイトメトリーによって推定した。
図1b)に示されるように、pS/MARtは、導入遺伝子の発現が有意な数の陰性細胞なしで均質である修飾された集団を生成する。
【0131】
安定発現細胞を作製する効率をフローサイトメトリーによって評価した。Hek293T細胞を、pEPIまたはpS/MARtによってトランスフェクトした。細胞は35日間培養した後、FACS解析に供して、導入遺伝子(GFP)を発現し続ける細胞の割合、およびそれらの平均蛍光強度を測定した。
図1 B)の上の図は、pS/MARtが、導入遺伝子の発現がロバストで均一である遺伝子改変細胞集団を生じることを示す。これは、pEPIによりトランスフェクトされた細胞とは対照的であって、こうした細胞は不均一で低レベルの導入遺伝子発現を示す。棒グラフは、上記細胞プールにおいて、pS/MARtでは有意なネガティブ細胞集団は存在しないのに対して、pEPI系統は導入遺伝子活性をほとんど発現停止または喪失していることを示す。それに加えて、pS/MARt系統において、導入遺伝子の平均発現はかなり高い。実験の詳細:JetPEIによる細胞トランスフェクション、0.5μg/ml ピューロマイシン、およびpEPIについては1mg/ml G418による選択。
【0132】
実施例2-確立された細胞集団からのpS/MARtベクターのプラスミドレスキュー(
図2)
哺乳動物細胞におけるベクターの、エピソーム状態および分子的完全性を判定するために、DNAレスキュー実験を行った。
【0133】
ベクターDNAは、プラスミドpS/MARtまたはpEPIのいずれかによって確立された細胞から単離された。上記細胞は、抗生物質ピューロマイシン(0.5μg/ml)の存在下で1週間増殖させてから、さらに抗生物質なしで少なくとも30日間増殖させた。プラスミドレスキューのために、Blood&Tissue DNAeasyキット (Qiagen)を用いて、確立された細胞からgDNAを抽出し、DH10B大腸菌(E.Coli)に導入して形質転換した。細菌を、カナマイシン(50μg/ml)含有LB寒天プレート上で増殖させた。12コロニーを、カナマイシン(50μg/ml)含有液体LB培地中で一晩培養し、Miniprepキット(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを抽出した。分析のために、DNAミニプレップを37℃にて10分間、制限酵素BamHI(Thermo Fisher)で消化して、1%アガロースゲル上で制限パターンを検討した。対照として、確立手順の最初に細胞をトランスフェクトするために使用されたDNAを同じ酵素で消化して、基準として泳動した。(A) pS/MARtから単離された12個の代表サンプルを分析し、分子として元のDNAベクターと等しいことが立証されたが、(B)pEPIにより確立された細胞からのDNAレスキューは、擦り付けたように尾を引くバンドが元のDNAの再構成を明確に示しており、分子として元のベクターと異なることが示された。
【0134】
実施例3-pS/MARtベクターは改変細胞においてエピソームとして維持される(
図3)
pS/MARtベクターがエピソームとして哺乳動物細胞を改変していることをさらに立証するために、サザンブロット分析によって構造を物理的に測定した。DNAトランスフェクション後少なくとも30日間培養したHek293T細胞集団を分析した。ゲノムDNAをBlood&Tissue DNAeasyキット(Qiagen)で抽出し、制限酵素BamHI(NEB)により37℃にて一晩消化した。次に、全細胞DNAを1%アガロースゲル上で分離し、ナイロン膜に転写した。ベクターのGFP遺伝子に相当するオリゴヌクレオチドを用いて、細胞DNAに含まれるpS/MARt DNAを検出するために使用する放射性プローブを作製した。対照ベクターと同一サイズの単一バンドがサンプル中に存在することは、確立された哺乳動物細胞集団においてpS/MARtがエピソーム状態であることを示す。スメアおよび/または別のバンドが存在しないことは、そのベクターが細胞ゲノム内に組み込まれることも再構成されることもなかったことを示す。
【0135】
実施例3-安定発現細胞を生じる効率(
図5)
ApoL-MAR及びベータ-IFN-MARの構成要素を保有する、ある範囲のpS/MARt DNAベクターによる安定発現細胞を生じる効率をコロニー形成アッセイにて評価した。DNA送達後、レポーター遺伝子GFPの発現について陽性の細胞をFACSソーティング(FACS Aria II)により分離し、100を6 cm細胞培養ディッシュ上に播種した。次いで細胞を0.5 g/mlピューロマイシン存在下で4週間培養した。4週間後、細胞をPFAで固定し、コロニーをクリスタルバイオレットで染色し定量した。コロニーの数を、ベクター確立効率と判断した。アッセイは、ApoL MAR、コア配列又は断片2で遺伝子操作されたベクターが、遺伝子的に改変された細胞の生成に最も効率的であったことを示す。
【0136】
実施例4-選択しない場合の安定性(
図6)
インスレーター配列がDNAベクターのサイレンシングまたは喪失を妨げるかどうかを評価するために、(A) pSMARt-インスレーター-GFP-2a-Puro βインターフェロンMAR、または(B) pSMARt-インスレーター-GFP-2a-Puro ApoL MARでトランスフェクトされた細胞において、抗生物質選択をしない場合のGFPの導入遺伝子発現を測定した。細胞は、DNAベクターでトランスフェクトし、1μg/mlピューロマイシン中で培養した。1週間後、細胞を分割し、それぞれトランスフェクションを代表する細胞群から薬物を除去した。
【0137】
(1) pSMARt-インスレーター-GFP-2a-Puro βインターフェロンMAR - 連続選択で培養
(2) pSMARt-インスレーター-GFP-2A-Puro βインターフェロンMAR - 選択解除
(3) pSMARt-インスレーター-GFP-2a-Puro ApoL MAR - 連続選択で培養
(4) pSMARt-インスレーター-GFP-2A-Puro ApoL MAR - 選択解除
【0138】
実施例5-確立効率(
図7)
確立効率に及ぼす選択マーカーの影響を評価するために、
図5に示すようにコロニー形成アッセイを行った。
図7 (A)は、DNAベクターpS/MARtによる確立効率が抗生物質選択マーカーと無関係であることを示す。選択マーカーは、S/MARモチーフに転写で連結される場合、確立効率を向上させる。
図7 (B)は、細菌性の骨格と真核生物プロモーターとの間にインスレーションエレメントを追加で組み入れると、確立効率が改善されることを示す。
【0139】
実施例6-初代細胞の安定性(
図8)
本発明のDNAベクター系が初代ヒトCD3+細胞をトランスフェクトする効率を評価し、それらの発現プロファイルを測定するために、pS/MARtベクター系の3つのバリアント、およびGFPをコードするpERIをトランスフェクトし、それらがヒトT細胞においてレポーター遺伝子GFPの持続発現をもたらす能力を調べた。DNAベクターを、電気的導入(Nucleofector Device Y, Lonza)によって、新たに分離されたPBMCに導入し、その細胞をIL-2(5μg/ml、Biolegend)存在下で35日間培養した。7日ごとに、細胞の導入遺伝子発現をチェックし、その増殖を、抗体、抗CD28(Bioegend)および抗CD3(Biolegend)の培地中添加により刺激した。ApoLMARのコアバージョンを保有するpS/MARtは、全長ApoL-MAR配列、βIHN MAR保有pS/MARt、およびpERIと比較して、より多数の導入遺伝子発現細胞を生じることができる。
【0140】
実施例7-MARスプライシング(
図9)
スプライシング配列の導入によって確立効率を改善できることを示すために、MAR要素に隣接するスプライスドナーおよびアクセプター部位ありおよびなしの、一連のDNAベクターを作製した。確立効率に及ぼすスプライシング要素の影響を評価するために、
図5に示すようにコロニー形成アッセイを行った。
【0141】
DNAベクターの確立効率は、細菌性骨格の改善および最小化によって有意に改善される。前記の改善、すなわち選択マーカーおよびインスレーター配列、ならびに、最新の改善されたその骨格によって、pS/MARtはpERIより効率的に確立する。そして、
図9 (3)の骨格の最小化はこれをさらに改善する。mRNAからS/MAR要素を除去するためのスプライシング配列の導入は、この種のベクターの効率をほとんど倍増させる。この効果は、異なるS/MAR要素(5-6)を含有する類似のベクター組成物についても再現することができる。
【0142】
実施例8-幹細胞におけるpS/MARt(
図10)
pS/MARtが分子の損傷なしに幹細胞を効率よく改変することができるかどうか評価するために、安定な幹細胞株を作製した。pS/MARt-GFPベクターを用いてE14マウス胚性幹細胞(mESC)株を確立した。DNA導入の1か月後に、レポーター遺伝子GFPの発現を蛍光顕微鏡によって測定した(A)。pS/MARt-GFPにより改変されたmESCを、もっとも一般的な多能性マーカーについて染色したが、これは、エピソーム性ベクターの存在が、細胞の多能性を変化させないことを示す。
【0143】
実施例9-杯形成におけるpS/MARt(
図11および12)
pS/MARt-GFP標識mESCをC57BL/6マウスの胚盤胞に注入し、結果としてキメラを形成した。このキメラの造血器官、たとえば脾臓および骨髄を、pan血液表面マーカーで染色し(CD45)、それらの蛍光をフローサイトメトリーで分析した。C57BL/6マウスおよび構成的発現UBC::GFPマウスをそれぞれ陰性対照および陽性対照として使用した(
図11)。
【0144】
pS/MARtは、血球分化の過程において導入遺伝子の持続発現をもたらす。mESCをHSCに分化させ、分化プロセスの前(0日目)および後(6日目)に、それをフローサイトメトリーにより分析した。親細胞および標識細胞はいずれも、HSCへの分化に成功し、pS/MARt-GFPにより標識された細胞は、その過程を通じて、レポーター遺伝子の発現を維持した(
図12)。
【0145】
実施例10-レンチウイルスとの比較(
図13)
(A) 2人の異なる健康なドナーから選別されたCD3+細胞を、ヒトCEAエピトープに対するターゲティングをもたらす、CAR272発現S/MARt DNAベクターにより改変し、それらの細胞溶解活性を、MCF-7細胞(乳がん細胞株)において、細胞傷害性およびインターフェロンγ放出アッセイにより確認した。
【0146】
(B) CAR272発現S/MARt DNAベクター系により操作されたT細胞は、同じ発現カセットを保有するレンチウイルスで改変されたCD3+細胞と比較して、改善された死滅活性を示す。
【0147】
実施例11-腫瘍死滅(
図14および15)
S/MARt DNAベクター系、レンチウイルス、および次世代NanoS/MARt DNAベクターにより作製されたCAR-T細胞のin vivo分析(
図14)。
【0148】
NOD/SCIDマウス(n=6)に、2x106 HT29腫瘍細胞を皮下接種した。S/MARt DNAベクター、レンチウイルス、および次世代ベクターにより作製された3x105 CAR+ T細胞を、腫瘍細胞注入後7日目に、事前に化学療法も放射線療法も行うことなく、各マウスの尾静脈に注入した。改変細胞の腫瘍ターゲティング効力をモックエレクトロポレーションCD3+と比較し、腫瘍増殖(A)およびマウス生存(B)として記録した。
【0149】
増殖した腫瘍を、取り出して培養し、溶解して、CAR標的の存在を分析した(
図15)。腫瘍塊におけるCAR+ CD3の出現頻度、ならびに脾臓におけるCAR発現CD3の存在を分析した。
【0150】
残存する腫瘍は、標的とされるエピトープを欠いた腫瘍細胞のみを含んでおり、S/MARt処理T細胞が少なくともレンチウイルス対照と同等のレベルで、腫瘍細胞を死滅させ、除去するのに有効であることを示す。それに加えて、CAR-T陽性細胞は、腫瘍内への浸潤および脾臓での存在が依然として検出可能であって、それは、DNAベクターが遺伝子導入T細胞内で依然として活発に発現していることを示す。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 少なくとも1つのプロモーターおよびS/MAR要素を含有するポリヌクレオチドであって、前記S/MAR要素が前記プロモーターの下流に配置され、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)が、最大で200ヌクレオチドの一続きの区間にわたって、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA(配列番号1)を含有する、前記ポリヌクレオチド。
[2] 前記S/MAR要素がスプライスドナーおよびスプライスアクセプターに隣接している、実施形態1に記載のポリヌクレオチド。
[3] 前記ポリヌクレオチドが、ポリペプチド、好ましくは選択マーカー、をコードするコード配列をさらに含有し、ポリペプチドをコードする前記コード配列が前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在する、実施形態1または2に記載のポリヌクレオチド。
[4] 前記ポリヌクレオチドが、選択マーカーをコードするコード配列(選択マーカー配列)をさらに含有し、前記選択マーカー配列は前記プロモーターと前記S/MAR要素の間に存在し、前記プロモーターおよび前記選択マーカーは全体として選択マーカー遺伝子を構成しており、前記選択マーカーは真核細胞の選択マーカーである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
[5] 前記選択マーカー遺伝子が、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラストサイジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、またはゼオシン耐性遺伝子であり、好ましくはピューロマイシン耐性遺伝子である、実施形態4に記載のポリヌクレオチド。
[6]転写物が前記プロモーターから転写されるが、その転写物からS/MAR要素の配列がスプライシングで切り出される、実施形態2~5のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
[7] 前記ポリヌクレオチドが、細菌の複製開始点、および/または細菌性選択マーカー遺伝子をさらに含有し、前記の細菌の複製開始点および/または細菌性選択マーカー遺伝子が、少なくとも1つのインスレーションエレメントの存在によって、ポリヌクレオチド内に含まれる残りの配列から隔絶されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
[8] 前記ポリヌクレオチドが、サルウイルス40(SV40)複製開始点、ウシパピローマウイルス(BPV)複製開始点、およびエプスタイン・バーウイルス(EBV)複製開始点を有しない、実施形態1~6のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
[9] 前記ポリヌクレオチドは宿主細胞内でエピソームとして複製するが、好ましくはエピソーム複製が、好ましくは哺乳動物細胞内で安定したエピソーム複製である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
[10] 実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する組成物であって、好ましくは前記組成物が医薬組成物である、前記組成物。
[11] 実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞であって、好ましくは、前記宿主細胞がCD34+前駆細胞;CD61+血小板;CD19+ Bリンパ球;CD14+単球;CD15+顆粒球;CD3+細胞傷害性Tリンパ球、好ましくは、CD8およびCD45も陽性;CD3+ヘルパーTリンパ球、好ましくはCD4およびCD45も陽性;CD3+活性化Tリンパ球、好ましくはCD25およびCD45も陽性、腫瘍浸潤リンパ球、またはナチュラルキラー(NK)細胞である、前記宿主細胞。
[12] 医薬に使用するための、好ましくは遺伝病の治療に使用するための、実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態10に記載の組成物、および/または実施形態11に記載の宿主細胞。
[13] 実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および細胞内移行を媒介する化合物を含む、キット。
[14] 実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、実施形態10に記載の組成物、および/または実施形態11に記載の宿主細胞を含む、デバイス。
[15] 宿主細胞を安定にトランスフェクトするための方法であって、
a) 前記宿主細胞を、実施形態1~9のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、および/または実施形態10に記載の組成物、および/または実施形態11に記載の宿主細胞と接触させること、ならびに
b) それによって、宿主細胞を安定にトランスフェクトすること
を含む、前記方法。
[16] 前記の安定なトランスフェクションが、ポリヌクレオチドの安定したエピソーム複製を含み、それが、好ましくは、平均して50回の細胞分裂後に宿主細胞集団においてそのポリヌクレオチドが依然として検出可能であるようなエピソーム複製である、実施形態15に記載の方法。
[17] 宿主細胞を安定に遺伝子改変するための、実施形態1~8のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドの使用。
[18] 前記の宿主細胞の安定な遺伝子改変が、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの安定したエピソーム複製を含み、それが、好ましくは、平均して50回の細胞分裂後に宿主細胞集団においてそのポリヌクレオチドが依然として検出可能であるようなエピソーム複製である、実施形態17に記載の使用。
【配列表】