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特許7263339カテーテル遠位端における一体型のLCフィルタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】カテーテル遠位端における一体型のLCフィルタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/279 20210101AFI20230417BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230417BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61B5/279
A61B5/055 390
A61B18/14
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020523390
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 US2018055130
(87)【国際公開番号】W WO2019083725
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】15/793,126
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073384(JP,A)
【文献】特表2016-511026(JP,A)
【文献】国際公開第2000/028895(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0331940(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61B 5/055
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用装置の遠位端アセンブリであって、
フレキシブル基板であって、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含み、かつ、挿入管の遠位端に連結されるように構成されている、フレキシブル基板と、
導電体であって、前記フレキシブルプリント回路基板上に配設され、
(i)1つ以上の電極であって、前記医療用装置の近位端と電気信号を交換するように構成されている、1つ以上の電極と、
(ii)1つ以上のプリントフィルタであって、前記電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設され、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように構成されている、1つ以上のプリントフィルタと、を形成するように成形されている、導電体と、を備えており、
前記フレキシブルプリント回路基板は、前記挿入管の前記遠位端を形成するように内部部材と連結されかつこれを包み込むように構成されている、遠位端アセンブリ。
【請求項2】
前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、インダクタ及びコンデンサのうちの少なくとも一方を形成するように成形されている、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項3】
前記インダクタと前記コンデンサとが、並列に接続されている、請求項2に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項4】
前記所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項5】
前記所定の周波数範囲内でフィルタ処理された前記信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項6】
前記プリントフィルタのうちの1つ以上は、前記電極のうちの少なくとも1つに連結されている、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項7】
前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させるように構成されている、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項8】
前記所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項9】
前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、前記医療用装置内での加熱、前記医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された前記信号の、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減するように構成されている、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項10】
前記フレキシブル基板は、
リング形状のドームサポートを包み込むように構成されたドームカバーと、
前記ドームカバーから延び、前記ドームカバーを前記フレキシブルプリント回路基板に結合するように構成されている、一つまたはそれ以上のタブと、
を備えている、請求項1に記載の遠位端アセンブリ。
【請求項11】
医療用装置の遠位端アセンブリを製造する方法であって、
前記医療用装置の近位端と電気信号を交換するための1つ以上の電極を形成するように成形された第1の導電体を、フレキシブル基板のフレキシブルプリント回路基板(PCB)上に配設することと、
前記電極のうちの少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように設計された1つ以上のプリントフィルタを形成するように成形された1つ以上の第2の導電体を、前記電極のうちの前記少なくとも1つに隣接して配設することと、
前記フレキシブルプリント回路基板を、挿入管の遠位端に連結することと、を含み、 前記フレキシブルプリント回路基板を連結することは、前記挿入管の前記遠位端を形成するように、前記フレキシブルプリント回路基板で内部部材を包み込むことを含む、方法。
【請求項12】
前記フレキシブル基板のフレキシブルプリント回路基板上に配設することは、インダクタ及びコンデンサのうちの少なくとも一方を形成するように前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つを成形することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プリントフィルタのうちの前記少なくとも1つを成形することが、前記インダクタと前記コンデンサとを並列に接続することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の周波数範囲内でフィルタ処理された前記信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記1つ以上の第2の導電体を配設することは、前記プリントフィルタのうちの1つ以上を、前記電極のうちの少なくとも1つに連結することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させる応答を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の導電体を配設することは、前記医療用装置内での加熱、前記医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された前記信号の、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記フレキシブル基板は、
リング形状のドームサポートを包み込むように構成されたドームカバーと、
前記ドームカバーから延び、前記ドームカバーを前記フレキシブルプリント回路基板に結合するように構成されている、一つまたはそれ以上のタブと、
を備えている、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、「Integrated resistive filters in catheter distal end」と題された代理人整理番号BIO5855USNPの同日付の米国特許出願に関連するものであり、この開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、全般に、医療用装置に関し、特に、干渉をキャンセルするためにカテーテル遠位端に一体化されたフィルタに関する。
【背景技術】
【0003】
種々の医療処置において、医療用ツールは患者の体内に挿入され、磁気共鳴映像法(MRI)システムなどの解剖学的映像法システムを使用して同時に走査される。医療用ツールは、処置を実施するために使用される電極を備えてもよい。MRI環境において動作可能なカテーテル電極を製造するための種々の技術が当該技術分野において知られている。
【0004】
例えば、米国特許出願公開第2015/0366508号は、体腔に挿入されるように構成されているフレックスPCBカテーテル装置について記載している。このフレックスPCBカテーテルは、細長シャフト、拡張可能なアセンブリ、フレキシブルプリント回路基板(フレックスPCB)の基板、複数の電子的構成要素、及び複数の通信経路を備えている。
【0005】
米国特許出願公開第2014/0024909号は、対向する遠位端部と近位端部とを有するシャフトを含む、MRIに適合したカテーテルについて記載している。1つ以上のRFトラッキングコイルは、遠位端部に隣接して位置決めされ、各々が、RFトラッキングコイルをMRIスキャナに電気的に接続する導電性リードを含む。カテーテルは、シャフトの遠位端部に1つ以上の感知電極を含み、各々が、高インピーダンスを有するレジスタに電気的に接続される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、医療用装置の遠位端アセンブリを提供するものであり、この遠位端アセンブリは、フレキシブル基板と、導電体と、を含む。フレキシブル基板は、挿入管の遠位端に連結されるように構成されている。導電体は、フレキシブル基板上に配設され、(i)1つ以上の電極であって、医療用装置の近位端と電気信号を交換するように構成されている、1つ以上の電極と、(ii)少なくとも1つのレジスタを形成するように成形された1つ以上のプリントフィルタであって、電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設され、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように構成されている、1つ以上のプリントフィルタと、を形成するように成形されている。
【0007】
いくつかの実施形態において、所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む。他の実施形態において、所定の周波数範囲内でフィルタ処理された信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる。更に他の実施形態において、フレキシブル基板は、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む。
【0008】
一実施形態において、フレキシブル基板は、挿入管の遠位端を包み込むように構成されている。別の実施形態において、プリントフィルタのうちの1つ以上が、電極のうちの少なくとも1つに連結されている。更に別の実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織から、電極のうちの少なくとも1つにより感知された電気信号を通過させるように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させるように構成されている。他の実施形態において、所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む。
【0010】
一実施形態において、1つ以上のプリントフィルタは、ニッケル及びクロムを含む合金、銅及びニッケルを含む合金、並びにチタンからなるリストから選択される1つ以上の材料で作製されている。別の実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、医療用装置内での加熱、医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された信号の、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減するように構成されている。
【0011】
本発明の一実施形態によると、医療用装置の遠位端アセンブリを製造する方法であって、医療用装置の近位端と電気信号を交換するための1つ以上の電極を形成するように成形された第1の導電体を、フレキシブル基板上に配設することを含む、方法が更に提供される。
【0012】
1つ以上の第2の導電体が、電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設される。第2の導電体は、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように設計された少なくとも1つのレジスタを備える1つ以上のプリントフィルタを形成するように成形されている。フレキシブル基板は、挿入管の遠位端に連結されている。
【0013】
本発明の一実施形態によると、医療用装置の遠位端アセンブリであって、フレキシブル基板と、導電体と、を含む、遠位端アセンブリが更に提供される。フレキシブル基板は、挿入管の遠位端に連結されるように構成されている。導電体は、フレキシブル基板上に配設され、(i)1つ以上の電極であって、医療用装置の近位端と電気信号を交換するように構成されている、1つ以上の電極と、(ii)1つ以上のプリントフィルタであって、電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設され、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように構成されている、1つ以上のプリントフィルタと、を形成するように成形されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、インダクタ及びコンデンサとのうちの少なくとも一方を形成するように成形されている。他の実施形態において、インダクタとコンデンサとが、並列に接続されている。更に他の実施形態において、所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む。
【0015】
一実施形態において、所定の周波数範囲内でフィルタ処理された信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる。別の実施形態において、フレキシブル基板は、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む。更に別の実施形態において、フレキシブル基板は、挿入管の遠位端を包み込むように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態において、プリントフィルタのうちの1つ以上は、電極のうちの少なくとも1つに連結されている。他の実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させるように構成されている。
【0017】
一実施形態において、所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む。別の実施形態において、プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、医療用装置内での加熱、医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された信号の、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減するように構成されている。
【0018】
本発明の一実施形態によると、医療用装置の遠位端アセンブリを製造する方法であって、医療用装置の近位端と電気信号を交換するための1つ以上の電極を形成するように成形された第1の導電体を、フレキシブル基板上に配設することを含む、方法が更に提供される。1つ以上の第2の導電体が、電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設される。第2の導電体は、電極のうちの少なくとも1つと近位端との間で交換される電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように設計された1つ以上のプリントフィルタを形成するように成形されている。フレキシブル基板は、挿入管の遠位端に連結されている。
【0019】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態による、カテーテル法システムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、電極及びフィルタのプリントされたフレキシブル基板の概略描写図である。
図3】本発明の実施形態による、それぞれのフレキシブル基板に形成されたフィルタの概略描写図である。
図4】本発明の実施形態による、それぞれのフレキシブル基板に形成されたフィルタの概略描写図である。
図5】本発明の一実施形態による、カテーテルの遠位端アセンブリの概略展開描写図である。
図6】本発明の一実施形態による、フレキシブル基板に一体化された電極及びフィルタを備えるカテーテルを製造する方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
概要
いくつかの医療処置は、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)システムを使用して実施されるリアルタイム解剖学的映像法を含む。この映像法と同時に使用され得る医療用装置は、例えば、患者の組織に又はその組織から電気信号を伝導するために使用される電極を有するカテーテルを含み得る。
【0022】
MRIシステムは、パルス化無線周波数(RF)場を印加し、組織中の磁場の配向を変化させ、結果として、アンテナ(受信機コイル)において特定周波数での信号を誘導する。組織の磁化からの応答を引き出すために必要な周波数は、外部から印加される磁場の磁場強度に依存する。例えば、1.5テスラの磁場において、RF周波数は、約64MHzである。考慮されない限り、MRIシステムのRF場は、カテーテルの配線及び/又は電極に望ましくないRF信号を誘発することがあるため、カテーテルの望ましい信号を歪ませ、MRIスキャンにおける画像アーチファクト、及びカテーテルに沿った望ましくない加熱を生じる。
【0023】
以下に記載される本発明の実施形態は、MRI環境において動作するように適合されたカテーテルを提供する。具体的には、このカテーテルは、MRIシステムによって生じるRF干渉をキャンセルするためのフィルタを備え、この干渉は、電極の電気信号と干渉する場合がある。一体型のフィルタを備えたカテーテルを製造する方法についても、以下に示す。
【0024】
いくつかの実施形態において、カテーテルは、挿入管の遠位端に連結されたフレキシブルプリント回路基板(PCB)シートなどのフレキシブル基板で作製された遠位端アセンブリを備えてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、電気トレースは、電極と、MRIシステムの動きに起因して電極に生じる干渉をキャンセルするように設計されたフィルタと、を形成するのに好適なパターンで、PCBシート上に配設される。
【0026】
電極は、カテーテルの遠位端と電気信号を交換するように構成され、フィルタは、電極に隣接して形成され、交換された電気信号と干渉するRF信号をフィルタ除去するように構成される。
【0027】
いくつかの実施形態において、電極は、患者の心臓からの電気信号を感知するように構成され、この場合、フィルタは、レジスタを備える。他の実施形態において、電極は、患者の心臓の組織にアブレーション信号を印加するように構成されており、フィルタは、LC回路構成において、並列に相互接続されたインダクタLとコンデンサCとを備える。
【0028】
いくつかの実施形態において、電極及びフィルタは、超大規模集積(VLSI)プロセスを使用して製造される。一実施形態において、電気トレースは、例えば、1つ以上の物理気相成長法(PVD)プロセスを使用して、PCBシートの外面上に1つ以上の導電層を堆積させることにより形成される。
【0029】
一実施形態において、堆積された導電層は、リソグラフィ及びエッチングなどの好適なパターン化プロセスを使用して、電極及びフィルタを形成するように成形される。続いて、遠位端アセンブリは、PCBシートで挿入管を包み込むことにより製造される。
【0030】
開示される技術は、医療用カテーテルの機能を向上させ、MRIなどの高度な映像法手順と同時に、電気生理学(EP)マッピング及び組織アブレーションなどの複雑な救命処置を実施するのに役立つ。
【0031】
開示される技術により、例えば、VLSIプロセスを使用して、PCBシート上に好適な回路を形成することにより、カテーテルの遠位端に一体化されたフィルタの特性をカスタマイズできるようにする。例えば、フィルタは、第1の周波数範囲をフィルタ除去するために、単一のレジスタを備えてもよく、一方で、フィルタは、第2の周波数範囲をフィルタ除去するために、並列LC回路を備えてもよい。
【0032】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテル法システム20の概略描写図である。システム20は、プローブ、本実施例においては心カテーテル22及び制御コンソール24などの医療用装置を備える。本明細書に記載される実施形態において、カテーテル22は、組織のアブレーション又は患者28の心臓(図示せず)からの電気生理学(EP)信号の感知など、任意の好適な治療目的及び/又は診断目的のために使用されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、システム20は、磁気共鳴映像法(MRI)システム38を備え、これは、患者の組織の解剖学的画像を生成するように構成される。いくつかの実施形態において、MRIシステム38は、磁場傾斜コイルを含む、磁場コイル(図示せず)を備え、これらはともに、空間的に異なる磁場を生成する。
【0034】
空間的に異なる磁場は、システム内で生成される無線周波数(RF)信号の空間位置確認を提供する。いくつかの実施形態において、MRIシステム38は、約64メガヘルツ(MHz)、又はRF周波数の他の任意の好適な範囲の周波数でRF信号を生成する。
【0035】
更に、MRIシステム38は、送信コイル及び受信コイル(図示せず)を備える。送信モードにおいて、送信コイルは、患者28にRFパルス化エネルギーを放射し、エネルギーのRFパルスが患者の組織の核スピンと相互作用することにより、原子核の磁気モーメントをそれらの平衡位置から離れて再整列させる。受信モードにおいて、受信コイルは、組織の原子核がそれらの平衡状態に弛緩する際に患者の組織から受信されるRF信号を検出する。
【0036】
いくつかの実施形態において、コンソール24は、MRIシステム38及びカテーテル22から信号を受信し、かつシステム20の他の構成要素を制御するために、好適なフロントエンド及びインターフェース回路を備えた、典型的には汎用コンピュータである、プロセッサ34を備える。
【0037】
いくつかの実施形態において、コンソール24は、メモリ50と、患者28の心臓の少なくとも一部の画像44など、データを表示するように構成されているディスプレイ46と、を更に備える。いくつかの実施形態において、画像44は、MRIシステム38を使用するか、又は他の任意の好適な解剖学的映像法システムを使用して、取得されてもよい。
【0038】
医師30(介入放射線医など)は、テーブル29上に横たわった患者28の脈管系を通じてカテーテル22を挿入する。カテーテル22は、挿入図26内に示されており、以下の図2及び図5に詳細に示される遠位端アセンブリ40を備える。医師30は、カテーテル22の近位端付近のマニピュレータ32によってカテーテル22を操作することにより、心臓内の標的位置の近傍でアセンブリ40を移動させる。カテーテル22の近位端は、プロセッサ34のインターフェース回路に接続されている。
【0039】
いくつかの実施形態において、心臓腔内の遠位端アセンブリ40の位置は、典型的には、位置検知技術を使用して測定される。この位置検出方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムにおいて実現されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、これらの開示は全て、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0040】
いくつかの実施形態において、コンソール24は、駆動回路42を備え、この駆動回路42は、テーブル29に横たわった患者28の体外における既知の位置、例えば患者の胴体の下に位置する、磁場発生装置36を駆動する。
【0041】
ここで、挿入図26を参照する。いくつかの実施形態において、遠位端アセンブリ40は、以下の図5に詳細に示される内部部材69を包み込むフレキシブルプリント回路基板(PCB)シート60を備える。内部部材は、本明細書において挿入管とも称される。
【0042】
いくつかの実施形態において、アセンブリ40は、ドームカバー66を更に備え、このドームカバー66は、フレキシブルPCBで製造され、任意の好適な連結技法を使用して、リング形のドーム支持体(以下の図5に示す)を包み込むように構成されている。
【0043】
いくつかの実施形態において、PCBシート60及び/又はドームカバー66は、1つ以上の灌注孔64を形成するように穿孔されてもよく、この灌注孔64は、例えば、アブレーション処置中、心臓の組織に灌注を行うときに、灌注流体を挿入管から流出させるように構成されている。
【0044】
いくつかの実施形態において、アセンブリ40は、1つ以上の微小電極62と、リング電極80と、を更に備え、これらは、カテーテル22の近位端と電気信号を交換し、心臓の組織に又はその組織から電気信号を伝導するように構成されている。心臓EPマッピング又は組織アブレーションなどの医療処置中、微小電極62及びリング電極80は、心臓の組織と接触させられて、それから生じる電気信号を感知するか、又は、後述のとおり、組織のアブレーションを行うためのアブレーション信号を印加するようにする。
【0045】
本開示及び本請求書の文脈において、「電極」及び「微小電極」という用語は、それぞれ、互換的に使用され、心臓からの電気信号を感知するか、又は心臓の組織のアブレーションを行うように構成された、感知電極又はアブレーション電極を指す。
【0046】
いくつかの実施形態において、リング電極80は、心電図(ECG)信号、又は患者28の心臓からの他の任意の種類の信号を感知するために使用されてもよい。なお、以下の説明は、主として微小電極62について言及するものであるが、リング電極80にも適用可能であることに留意されたい。
【0047】
いくつかの実施形態において、微小電極62は、(例えば、金又は他の任意の好適な材料で作製された)導電層によってコーティングされており、所定の周波数範囲において、心臓の組織に/その組織から電気信号を転送ように構成されている。
【0048】
いくつかの実施形態において、アセンブリ40は、心臓の組織のアブレーションを行うために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、微小電極62は、アブレーション中、所与の周波数範囲において電気信号を組織に転送するように構成されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、微小電極62の導電層は、典型的には、PCBシート60の外面上に堆積される。他の実施形態において、導電層は、PCBシート60上に加え、又は、PCBシート60上の代わりに、ドームカバー66上に堆積されてもよい。
【0050】
上述のとおり、MRIシステム38は、微小電極62とカテーテル22の近位端との間で交換される電気信号と干渉し、(例えば、画像44中に)画像アーチファクト、及びカテーテルに沿った望ましくない加熱を生じ得る、例えば、64MHzの所定の周波数で、RF信号を生成する。
【0051】
いくつかの実施形態において、1つ以上のフィルタ(以下の図2図4に示す)が、微小電極62のうちの少なくとも1つと隣接して、PCBシート60上に配設(例えば、プリント)される。典型的には、各電極は、1つ以上の各フィルタに関連付けられる。
【0052】
一実施形態において、フィルタは、それぞれの微小電極と近位端との間で交換される電気信号との干渉から、所定の周波数範囲をフィルタ処理するように構成される。いくつかの実施形態において、この周波数範囲は、1.5テスラの磁場強度を有するMRIシステム38によって生成された、約64MHzの周波数を含んでもよい。遠位端アセンブリ40を製造するための例示の方法、及びフィルタに関する更なる詳細について、以下の図2図6に詳しく示す。
【0053】
いくつかの実施形態において、フィルタ、及び1つ以上の熱電対(図示せず)などのカテーテルの他の構成要素は、PCBシート60の導電層間に製造されてもよく、又はPCBシート60の外面上に設置されてもよい。熱電対は、アブレーション中の組織温度をモニタリングするために使用することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、典型的には、汎用プロセッサを備え、その汎用プロセッサは、本明細書に記載される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は、代替的又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上で提供及び/若しくは記憶されてもよい。
【0055】
図1に示される遠位端アセンブリ40の構成は、あくまで概念を明確化するという目的で選択された例示的構成である。代替的な実施形態では、他の任意の好適な構成を用いることもできる。例えば、遠位端アセンブリ40のサイズ及び形状、並びに微小電極62及び各フィルタの数及び位置は、患者28の任意の臓器の組織に好適な医療処置を行うのに適した、任意の好適な構成要素及びレイアウトを使用して実装されてもよい。更に、遠位端装置の実装に使用されるフレキシブル基板は、PCB以外の、他の任意の好適な基板を含み得る。
【0056】
カテーテル遠位端へのフィルタの一体化
図2は、本発明の一実施形態による、フレキシブル基板48の概略描写図である。いくつかの実施形態において、基板48は、単一ユニットの遠位端アセンブリ40を製造するのに使用され得る単一セクションを備える。他の実施形態において、基板48は、複数のそれぞれのユニットの遠位端アセンブリ40を製造するのに使用される、1つ以上の実質的に同様のセクション(図示せず)を備えてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、基板48の各セクションは、PCBシート60と、カバー66と、上述の図1に示されるアセンブリ40の他の全ての要素と、を備える。これらの実施形態は、複数のセクションを同時に製造するための、上述の図1を参照して説明した超大規模集積(VLSI)プロセスの1セットを基板48上に適用することにより、アセンブリ40の大量製造(HVM)を可能にする。
【0058】
いくつかの実施形態において、VLSIプロセスは、物理気相成長法(PVD)など、任意の好適なプロセスを使用して、PCBシート60の外面上の選択された箇所に、1つ以上の導電層を堆積させることを含み得る。堆積された導電層は、例えば、リソグラフィ及びエッチングなどのパターン化プロセスを使用して、PCBシート60及びドームカバー66上に一体化された種々の構成要素を形成するように成形される。
【0059】
セクションの製造終了後、基板48を切断し、各セクションがその付近のセクションから分離されるようにする。図2の例において、基板48は、単一の単体化セクションを備える。
【0060】
いくつかの実施形態において、PCBシート60は、典型的には、導電性トレース52などの電気的相互接続部を備え、これらは、基板48に連結された電子機器を、カテーテルを横切る好適なワイヤに電気的に接続し、かつカテーテル22の近位端と電極62との間を電気的に接続するように構成されている。
【0061】
いくつかの実施形態において、1つ以上のフィルタ70は、それぞれの微小電極62に隣接して、PCBシート60上にプリントされる。いくつかの実施形態において、フィルタ70は、所定の周波数範囲(例えば、58MHz~70MHz)内の干渉信号をフィルタ除去するように構成される。一実施形態において、フィルタ70は、以下の図3に詳細に示されるLC回路構成において、並列に相互接続されたインダクタLと、コンデンサCと、を備えてもよい。本実施形態において、LC回路は、約64MHzを中心とする高インピーダンス信号のバンドストップフィルタとして機能し得る。
【0062】
他の実施形態において、フィルタ70は、本質的には有用な周波数範囲全体に亘って、干渉信号を均一に減衰する。一実施形態において、フィルタ70は、電極62とトレース52とに連結されたレジスタRを備えてもよい。本実施形態において、レジスタRは、トレース52上で伝導される、ピコアンペア(pA)電流などの低い電流を除く、全ての周波数の電流を減衰するように構成される。高電流を低減することで、(例えば、画像44上の)MRIスキャンでの画像アーチファクト、及びカテーテル22に沿った望ましくない加熱を低減する。
【0063】
干渉信号は、MRIシステム38によって生成され、微小電極62とカテーテル22の近位端との間で交換される電気信号に生じ得る干渉を低減、又は更にはキャンセルするように、フィルタ除去される。
【0064】
MRIシステム38又は他の任意の発生源からの干渉信号は、システム20の種々の構成要素の意図される動作に干渉することもあり、典型的には、トレース52によって、血液又は組織から、微小電極62、引いてはカテーテル内に伝導されることに留意されたい。
【0065】
いくつかの実施形態において、各フィルタ70は、微小電極62に物理的に連結され、フィルタ70が、トレース52を介して、さもなければ微小電極62とカテーテル22の近位端との間で伝導したであろう所定の周波数範囲(例えば、58MHz~70MHz)内の任意の干渉信号を遮断するか、又は十分に減衰するように構成されるようにする。
【0066】
いくつかの実施形態において、フィルタ82は、リング電極80に隣接して、PCBシート60上にプリントされる。フィルタ82は、リング電極80によって感知されるECG信号からのノイズレベルを低減するように、所定の周波数範囲(例えば、58MHz~70MHz)内の干渉信号をフィルタ除去するように構成される。いくつかの実施形態において、フィルタ82は、微小電極62のフィルタ70と同様の構造を有してもよい。代替的な実施形態において、フィルタ82は、他の任意の好適な構造を有してもよい。
【0067】
原理上、カテーテル22の近位端、例えば、マニピュレータ32において、所定の周波数範囲のフィルタを実装することにより、干渉信号を遮断することができる。しかしながら、この構成は、カテーテルの長さにわたるワイヤに誘発される加熱を排除するものでなく、関連の画像アーチファクトに対処するものでもない。したがって、干渉信号を遮断するようにフィルタを堆積するための望ましい位置は、可能な限り、遠位端アセンブリ40のそれぞれの電極(例えば、電極62及び80)に近い位置である。
【0068】
いくつかの実施形態において、微小電極62は、例えば、0.01mV~1mVほどで、患者28の心臓からの低電圧電気信号を感知するのに使用されてもよい。これらの実施形態において、第1の種類のフィルタ70は、MRIシステム38からの干渉信号をフィルタ処理するのに好適である。他の実施形態において、電極は、50mA~5Aなどの高電流の電気信号を使用して、例えば、心臓組織にアブレーションを印加するように構成される。
【0069】
これらの実施形態において、第1の種類とは異なる第2の種類のフィルタ70が、干渉信号のフィルタ処理に好適である。第1及び第2の種類のフィルタを採用する実施形態が、以下の図3及び図4に詳細に示されている。
【0070】
代替的な実施形態において、電極62は、任意の周波数範囲の干渉信号の存在下で、患者28の任意の臓器に/その臓器から、他の任意の種類の電気信号を伝導してもよい。
【0071】
これらの実施形態において、システム20は、電気信号の各種類毎に、それぞれの周波数範囲を有する干渉信号を遮断するのに好適な異なる種類のフィルタを必要とし得る。
【0072】
一実施形態において、シート60及びカバー66が平面位置にあるとき、以下の図5に示されるとおり、部材69及びリング形のドーム支持体を包み込む前に、灌注孔64がシート60及び/又はドームカバー66に形成される。
【0073】
いくつかの実施形態において、シート60は、以下の図5に示されるとおり、シート60が部材69を包み込むとき、シート60の縁部を互いに接続し、PCBシート60とカバー66との間を接続するように構成されたセクション54を備える。
【0074】
いくつかの実施形態において、カバー66は、複数のタブ51を備え、各々、カバー66のそれぞれのセクション53から延在し、ドームカバー66とシート60のセクション54との間を連結するように構成されている。
【0075】
いくつかの実施形態において、セクション54及びタブ51の一部は、シート60及びカバー66が部材69を包み込んだ位置にあるときに灌注孔64と重ならないように、タブ51の一部に作製される除外ゾーン要素57を備える。
【0076】
代替的な実施形態において、包み込んだ後、シート60の左縁部及び右縁部は、溶着、接着剤、又はシート60及びカバー66を部材69に連結する他の任意の好適な技術を使用して、互いに連結されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、以下の図5に詳細に示されるとおり、VLSIプロセスの終了後、シート60及びカバー66で部材69及びアセンブリ40の頂部上それぞれを包み込む前の、セクション48のシート60及びカバー66が平面形態で示されている。
【0078】
図3は、本発明の一実施形態による、PCBシート60上に形成されたフィルタ72及びアブレーション電極63の概略描写図である。フィルタ72及びアブレーション電極63は、それぞれ、例えば、上述の図2のフィルタ70及び電極62と交換されてもよい。
【0079】
他の実施形態において、電極63及びフィルタ72は、PCBシート60上に形成されるのに加えて、又はPCBシート60上に形成される代わりに、カバー66に形成されてもよい。
【0080】
以下に示すプロセスは、シート60及び/又はカバー66に電極63及びフィルタ72を製造するのに好適である。
【0081】
いくつかの実施形態において、電極63は、電流を送達し、カテーテル22の近位端から患者28の心臓組織にアブレーション信号を伝導するように構成される。いくつかの実施形態において、フィルタ72は、患者の組織にアブレーションを行うために、例えば、カテーテル22の近位端から電極63に、アブレーション信号を通過させるように構成される。
【0082】
一実施形態において、フィルタ72は、並列に接続されたインダクタL及びコンデンサCを備えた並列LC回路を備える。図3の例において、上述の図2におけるフィルタ70の相互接続構成と同様に、フィルタ72の一方の端子がトレース52に接続され、フィルタの他方の端子が電極63に連結されている。
【0083】
いくつかの実施形態において、インダクタL及びコンデンサCは、PVDプロセス又は他の任意の好適なプロセスを使用して、PCBシート60上に堆積された、好ましくは金又は銅の電気トレースの1つ以上の導電層から作製される。導電層は、例えば、リソグラフィ及びエッチングのプロセスを使用して、フィルタ72を備えた構成要素を形成するのに好適な形状に堆積される。
【0084】
いくつかの実施形態において、フィルタ72のインダクタL及びコンデンサCは、トレース52及び電極63など、PCBシート60の他の構成要素のパターン化するように構成された単一のマスクを使用して、パターン化されてもよい。
【0085】
他の実施形態において、フィルタ72は、別個のリソグラフィマスク及びパターン化プロセスを使用するなど、他の任意の好適な堆積シーケンス及びパターン化プロセスを使用して形成されてもよい。
【0086】
いくつかの実施形態において、フィルタ72は、所定の周波数範囲内の信号を、カテーテルの加熱及び画像アーチファクトを生じるトレース52上での連結からフィルタ処理するよう構成される。これらの実施形態において、干渉信号の周波数は、1.5TのMRIシステム38によって生成される64MHzの周波数を含む。磁場強度が異なる場合、対応するラーモア周波数が使用されることとなる。
【0087】
いくつかの実施形態において、フィルタ72の構成は、信号を、50mA~5Aの典型的な電流値及び50kHz~25MHzの周波数範囲を有するアブレーション信号との干渉からフィルタ処理するのに好適である。
【0088】
小さな値のインダクタンス(例えば、1nH~1000nH)及びキャパシタンス(例えば、5pF~5000pF)であっても、フィルタ72のインダクタL及びコンデンサCがMRIシステム38からの干渉信号を減衰するのに十分であることに留意されたい。
【0089】
他の実施形態において、基板48上に形成された任意の種類の電極と適合するフィルタを形成するために、1つ以上のインダクタL及び/若しくはコンデンサC並びに/又はその他の構成要素の他の任意の好適な構成が配置されてもよい。更に、フィルタ72(例えば、コンデンサC)の各構成要素は、任意の好適な値を有してもよい。
【0090】
図4は、本発明の一実施形態による、PCBシート60に形成されたフィルタ74及び微小電極65の概略描写図である。
【0091】
フィルタ74及び微小電極65は、それぞれ、例えば、上述の図2のフィルタ70及び微小電極62と交換されてもよい。いくつかの実施形態において、フィルタ74は、電極65及びトレース52に連結されたレジスタRを備える。
【0092】
いくつかの実施形態において、微小電極65は、患者28の心臓の組織から電気信号を感知するように構成された非導電電極である。システム20の例において、微小電極65によって感知された電気信号は、1pA~1μAの電流範囲と、0.01~1000Hzの周波数範囲と、を有する。
【0093】
いくつかの実施形態において、フィルタ74は、所定の周波数範囲を、微小電極65によって感知された心臓組織の電気信号との干渉からフィルタ処理するよう構成される。いくつかの実施形態において、フィルタ74は、微小電極65によって感知され、トレース52を介してプロセッサ34に伝導される、心臓組織の電気信号を通過させるように更に構成される。
【0094】
なお、各フィルタ74は、上述の干渉信号をフィルタ処理するように、それぞれの微小電極65に近接して(例えば、数ミリメートル又は更には物理的に連結されて)形成されることに留意されたい。干渉信号は、MRIシステム38又は他の任意の発生源によって生成されてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態において、レジスタRは、トレース52と微小電極65との間に好適な抵抗層をパターン化することによって形成される。例えば、レジスタRは、微小電極65に近接して幅が狭くなるように、トレース52のセクションの幅を成形することによって形成されてもよい。この構成では、より幅の薄いトレース52のセクションが、トレース52の他のセクションに比して高い抵抗を有し得るため、干渉信号が微小電極65によって感知された心臓信号と干渉するのを減衰するか、又は完全に遮断し得る。
【0096】
他の実施形態において、レジスタRは、ニクロム(ニッケル及びクロムを含む合金)、コンスタンタン(銅及びニッケルを含む合金)、チタン、又は他の任意の好適な材料など、トレース52の材料に比して高い固有抵抗を有する、トレース52を作製した材料とは別の材料で、作製されてもよい。
【0097】
他の実施形態において、レジスタRは、材料の厚さがより薄い特徴をなすように、導電性のより低い材料を堆積させるか、又はより薄い材料層を残す材料を選択的に除外することにより、作製されてもよい。
【0098】
他の実施形態において、レジスタRの所望の提供を提供するように、上述の技術を任意に好適に組み合わせて適用してもよい。例えば、固有抵抗の高い材料から、狭く薄い特徴を形成してもよい。
【0099】
上述の図3及び図4に示されるフィルタ72及び74の構成は、単に例として示されている。代替的な実施形態において、遠位端アセンブリ40の基板48は、干渉信号の任意の所定の周波数範囲をフィルタ処理するのに好適な、任意の他の種類及び構成のフィルタを備えてもよい。このようなフィルタの特性は、このような構成要素(例えば、RLC又はRC回路の組み合わせ)の種類及び配置と、フィルタの各構成要素の特性とによって定義される。
【0100】
図5は、本発明の一実施形態による、遠位端アセンブリ40の概略分解描写図である。図5は、上述の図2に示されるシート60及びカバー66の反対側の表面を示している。
【0101】
いくつかの実施形態において、遠位端アセンブリ40の内部部材69は、プラスチック、又は他の任意の好適な材料で作製されてもよい。部材69は、図5に示されるような骨格支持構造、又は他の任意の好適な構造を有してもよい。
【0102】
基部58は部材69の近位端に位置し、リング形のドーム支持体68は部材69の頂部に位置し、複数のリブ56が、基部とドーム支持体とをつないでいる。本実施形態において、部材69は、フレキシブルPCBシート60により形成された空洞の内側に灌注を導くための内部管腔を有する。
【0103】
いくつかの実施形態において、ドームカバー66は、ドーム支持体68に糊付けされるか、又は上述の図2に示される構成を使用して、これに連結されてもよい。代替的な実施形態では、カバー66は液晶ポリマー(LCP)PCBで製造することができ、これは、形成(例えば熱成形)してカップ形状にし、シート60に接着することができる。カップ形状は、当該技術分野で公知の任意の好適な接着技法を使用して、ドーム支持体68と、基部58に接着されたシート60と、に接着することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、シート60及びカバー66は、PCBの単一の連続片、又は任意の他の好適なフレキシブル基板で製造される。代替的な実施形態では、シート60及びカバー66は、別個の材料片から形成することができ、これらは溶接又は任意の他の好適な連結技法を用いて互いに連結することができる。
【0105】
図6は、本発明の一実施形態による、遠位端アセンブリ40を製造するための方法を模式的に示すフローチャートである。この方法は、第1の堆積ステップ100において、フレキシブル基板48の第1の選択位置上に、第1の導電層を堆積させることにより開始する。
【0106】
第2の堆積ステップ102では、第1の選択位置に隣接する第2の選択位置においてフレキシブル基板48上に、第2の導電層を堆積させる。いくつかの実施形態において、第1及び第2の導電層は、金、又は他の任意の好適な材料など、同一の材料で作製される。
【0107】
これらの実施形態において、第1及び第2の導電層は、同時に堆積されてもよく、そのためステップ100及び102が単一の堆積ステップとして実施される。他の実施形態において、第1及び第2の導電層は、それぞれ異なる材料で作製され、典型的には、異なるプロセスステップで堆積される。
【0108】
いくつかの実施形態において、第1の導電層は、基板48の全面に亘って堆積され、続いて、フレキシブル基板48の第1の選択位置上にある第1の導電層の部分のみを保持するように、パターン化される。同様に、第2の導電層は、基板48の全面に亘って堆積され、続いて、フレキシブル基板48の第2の選択位置上にある第2の導電層の部分のみを保持するように、パターン化されてもよい。
【0109】
ステップ102の終了後、第1及び第2の導電層は、互いに隣接して、典型的には、互いに物理的に接触して、堆積される。
【0110】
パターン化ステップ104では、第1の導電層が、微小電極62などの電極を形成するように成形され、第2の導電層が、フィルタ70などのフィルタを形成するように成形される。一実施形態において、第1及び第2の導電層の成形は、単一のパターン化プロセスを使用して実施される。
【0111】
この実施形態において、パターン化プロセスは、微小電極62及びフィルタ70の形状を画定する単一のマスクを使用し、続いて、マスクによって画定された形状を転写するように構成された1つ以上のエッチングステップを含み得る。
【0112】
代替的な実施形態において、ステップ100、102、及び104に記載したプロセスシーケンスは、第1の導電層を堆積させ、第1のマスクを使用して微小電極62の形状をパターン化することと、続いて、第2の導電層を堆積させ、第2のマスクを使用してフィルタ70の形状をパターン化することと、を含んでもよい。
【0113】
上述のステップ100、102、及び104におけるプロセスの説明は、明確にするために簡易化されており、これらの例示的ステップは、単に例として示されている。代替的な実施形態において、他の任意の好適なプロセスを使用して、微小電極62及びフィルタ70を、互いに隣接して、又は互いに連結して製造してもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の導電層のうちの少なくとも一方は、各導電層が少なくとも2種類のサブレイヤーから作製された、多層構造を備えてもよい。
【0115】
先端形成ステップ106では、上述の図2及び図5に示される技法のうちの1つを使用して、基板48が部材69に連結される。遠位端アセンブリ40の例において、フレキシブルPCBシート60が基部58及びリブ56を包み込み、ドームカバー66がドーム支持体68を包み込む。いくつかの実施形態において、ステップ106にて、当該方法は終了し、遠位端アセンブリ40の形成が可能となる。
【0116】
本明細書に記載の実施形態は、主として心不整脈のマッピング及び処置に対処するものであるが、本明細書に記載の方法及びシステムは、耳鼻咽喉科又は神経科における処置など、他の用途で用いることもできる。
【0117】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上文に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献においていずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0118】
〔実施の態様〕
(1) 医療用装置の遠位端アセンブリであって、
フレキシブル基板であって、挿入管の遠位端に連結されるように構成されている、フレキシブル基板と、
導電体であって、前記フレキシブル基板上に配設され、
(i)1つ以上の電極であって、前記医療用装置の近位端と電気信号を交換するように構成されている、1つ以上の電極と、
(ii)1つ以上のプリントフィルタであって、前記電極のうちの少なくとも1つに隣接して配設され、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように構成されている、1つ以上のプリントフィルタと、を形成するように成形されている、導電体と、を備える、遠位端アセンブリ。
(2) 前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、インダクタ及びコンデンサのうちの少なくとも一方を形成するように成形されている、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(3) 前記インダクタと前記コンデンサとが、並列に接続されている、実施態様2に記載の遠位端アセンブリ。
(4) 前記所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(5) 前記所定の周波数範囲内でフィルタ処理された前記信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
【0119】
(6) 前記フレキシブル基板は、フレキシブルプリント回路基板(PCB)を含む、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(7) 前記フレキシブル基板は、前記挿入管の前記遠位端を包み込むように構成されている、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(8) 前記プリントフィルタのうちの1つ以上は、前記電極のうちの少なくとも1つに連結されている、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(9) 前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させるように構成されている、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(10) 前記所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
【0120】
(11) 前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、前記医療用装置内での加熱、前記医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された前記信号の、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減するように構成されている、実施態様1に記載の遠位端アセンブリ。
(12) 医療用装置の遠位端アセンブリを製造する方法であって、
前記医療用装置の近位端と電気信号を交換するための1つ以上の電極を形成するように成形された第1の導電体を、フレキシブル基板上に配設することと、
前記電極のうちの少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号から、所定の周波数範囲内の信号をフィルタ処理するように設計された1つ以上のプリントフィルタを形成するように成形された1つ以上の第2の導電体を、前記電極のうちの前記少なくとも1つに隣接して配設することと、
前記フレキシブル基板を、挿入管の遠位端に連結することと、を含む、方法。
(13) 前記フレキシブル基板上に配設することは、インダクタ及びコンデンサのうちの少なくとも一方を形成するように前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つを成形することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記プリントフィルタのうちの前記少なくとも1つを成形することが、前記インダクタと前記コンデンサとを並列に接続することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記所定の周波数範囲は、無線周波数(RF)の周波数範囲の少なくとも一部を含む、実施態様12に記載の方法。
【0121】
(16) 前記所定の周波数範囲内でフィルタ処理された前記信号は、磁気共鳴映像法(MRI)システムによって発せられる、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記フレキシブル基板上に配設することは、フレキシブルプリント回路基板(PCB)上に配設することを含む、実施態様12に記載の方法。
(18) 前記フレキシブル基板を連結することは、前記フレキシブル基板で前記挿入管の前記遠位端を包み込むことを含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記1つ以上の第2の電気トレースを配設することは、前記プリントフィルタのうちの1つ以上を、前記電極のうちの少なくとも1つに連結することを含む、実施態様12に記載の方法。
(20) 前記プリントフィルタのうちの少なくとも1つは、患者の組織に印加されるアブレーション信号を通過させる応答を有する、実施態様12に記載の方法。
【0122】
(21) 前記所定の周波数範囲は、58MHz~70MHzを含む、実施態様12に記載の方法。
(22) 前記第2の導電体を配設することは、前記医療用装置内での加熱、前記医療用装置を使用して取得された画像中のアーチファクト、及びフィルタ処理された前記信号の、前記電極のうちの前記少なくとも1つと前記近位端との間で交換される前記電気信号との干渉、のうちの1つ以上を低減することを含む、実施態様12に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6