(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】骨欠損の治療および/または生物学的再建のためのインプラントおよびキット
(51)【国際特許分類】
A61L 27/14 20060101AFI20230417BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20230417BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20230417BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20230417BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20230417BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61L27/14
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/12
A61L27/20
A61L27/26
(21)【出願番号】P 2020527084
(86)(22)【出願日】2018-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2018079383
(87)【国際公開番号】W WO2019096561
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】102017220710.8
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルグ ヘティヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジルケ ケーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】ウォルフガング アーベレ
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特表平01-501208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を有するインプラント、好ましくは、骨欠損の治療および/または生物学的再建のためのインプラントであって、
骨誘導活性支持体と、
骨誘導活性支持体を少なくとも部分的に取り囲む被覆
(sheath)を備えており、
前記被覆が、水または水を含む液体に溶解するが生体内で分解または吸収されない被覆材を含む、またはそのような被覆材からなり、
前記被覆が、該被覆の他の部分とは異なる形態に形成された部分領域を有することを特徴とするインプラント。
【請求項2】
前記被覆が、第1の部分領域および第2の部分領域を有することを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記部分領域が、水もしくは水を含む液体への前記被覆の溶解性に関し、および/または前記被覆の厚さに関し、および/または前記被覆の構造に関し、互いに異なることを特徴とする、請求項2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記部分領域が、前記被覆材の化学組成に関
して互いに異なることを特徴とする、請求項2または3に記載のインプラント。
【請求項5】
前記第1の部分領域が、前記第2の部分領域よりも良好に、または素早く水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなることを特徴とする、請求項2~4のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項6】
前記第1の部分領域が、前記第2の部分領域よりも弱く架橋された水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなることを特徴とする、請求項2~5のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記第1の部分領域が、架橋されていない水または水を含む液体に溶解する被覆材を含み、またはそのような被覆材からなり、
前記第2の部分領域が、架橋された水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなることを特徴とする、請求項2~6のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項8】
前記第1の部分領域が、前記第2の部分領域よりも水または水を含む液体に溶解する被覆材の割合が大きいことを特徴とする、請求項2~7のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項9】
前記第1の部分領域が、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含み、またはそのような被覆材からなり、
前記第2の部分領域は、水または水を含む液体に溶解しない被覆材を含む、またはそのような被覆材からなることを特徴とする、請求項2~8のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記第1の部分領域が、前記第2の部分領域よりも厚さが薄いことを特徴とする、請求項2~9のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項11】
前記第1の部分領域が、織物状ではなく、
前記第2の部分領域が、織物
状に形成されていることを特徴とする、請求項2~10のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項12】
前記第1の部分領域が、移植された状態で、骨に向けて配置されているとともに、前記第2の部分領域が、移植された状態で、人工関節
窩に向けて配置されていることを特徴とする、請求項2~11のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項13】
前記骨誘導活性支持体が、個別化された形態で存在し、好ましくは、アパタイトおよび/もしくはリン酸三カルシウムを含み、またはアパタイトおよび/もしくはリン酸三カルシウムおよび/もしくは二相性リン酸カルシウムからなることを特徴とする、請求項1~12のうちいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項14】
前記アパタイトおよび/または前記リン酸三カルシウムおよび/または前記二相性リン酸カルシウムが、1~50
%の気孔率を有することを特徴とする、請求項13に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨欠損の治療および/または生物学的再建のためのインプラントおよびキット、骨誘導活性支持体のための被覆、骨誘導活性支持体のための被覆を作製するための、水または水を含む液体に溶解する材料の使用、ならびに骨欠損の治療および/または生物学的再建の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
寛骨臼に大きな骨欠損があると、人工股関節再置換術が非常に困難である。人工股関節再置換術では、後述する3つの目標が主に追求される。
【0003】
まず、本来の関節中心を修復する。
【0004】
続いて、寛骨臼欠損の治療のために設置したインプラントを安定的に固定する。この際、いわゆる第1の安定といわゆる第2の安定は区別される。
【0005】
第1の安定は、手術後1週間における、例えば骨ねじなどの固定要素または摩擦に基づくインプラントの固定と理解される。第2の安定は、骨の付着に基づくインプラントの固定と理解される。第2の安定は、通常、手術の約1ヵ月後に始まり、数年間続くことがある。
【0006】
最終的に、骨欠損のいわゆる生物学的再建を目指す。生物学的再建は、自家骨を用いた挿入および/または骨欠損の再構築と理解される。
【0007】
寛骨臼欠損は、患者の生体骨および関係する寛骨臼が欠損部を完全に取り囲んでいる場合、閉鎖性欠損(geschlossene Defekte)と呼ばれる。これに対し、関係する寛骨臼が欠損部を完全には取り囲んでいない、つまり開いた部分が残っている寛骨臼欠損は開放性欠損(offene Defekte)と呼ばれる。
【0008】
診療では、閉鎖性寛骨臼欠損の治療には、いわゆる「Impaction Bone Grafting(IBG)」法が実施されてきた。この技術では、同種の骨材料(大腿骨頭)から0.5cm大の骨片(海綿質)などを作製し、適切な器具を用いて骨欠損部に圧入する。この技術を用いて、寛骨臼欠損を生物学的に再建し、回転中心を修復することができる。もっとも、同種骨細片は熱処理を実施しても感染リスクがある。この他の欠点に、同種骨細片の作製コストがあり、規制上の要求事項が多いために費用が増大している。それに加え、術中の処理が極めて複雑で時間がかかる。例えば、骨細片の材料となるヒト大腿骨頭は、手術中に解凍させて細かく砕く必要がある。このようにして作製された骨片は、ふぞろいな形になり、この骨片を適切に用いるには、ある程度の手術経験が必要となる。
【0009】
骨欠損を治療する別の試みとして、人工の、特にリン酸カルシウム材料をベースとした骨代替材料がある。人工骨代替材料の欠点として、機械的強度が限定的であることが多く、すなわちこの材料で達成される第1の安定が限定的である。さらなる欠点として、骨成長がないのに骨代替材料の分解や再吸収が生じるため、第2の安定が達成されない恐れがある。
【0010】
米国特許第8,562,613号明細書には、骨誘導活性材料と、骨誘導性材料と、多孔質コンテナとの混合物を含む骨欠損治療キットが開示されている。
【0011】
欧州特許第0 764 008号明細書の対象は、可撓性袋を用いた脊椎運動分節の安定化に用いる装置であり、袋は骨成長または繊維成長を促進する生物学的充填材料を含み得る。
【0012】
欧州特許第1 408 888号明細書は、多孔質袋と充填具を有する椎骨圧迫骨折矯正システムを開示しており、充填具は圧力をかけて骨補填材を多孔質袋に注入するように形成されている。
【0013】
国際公開第2012/061024号からは、鉱質除去した骨誘導性の骨片を少なくとも部分的に含んでいる移植可能なコンテナが知られている。
【0014】
“Bone Regeneration by the Combined Use of Tetrapod-Shaped Calcium Phosphate Granules with Basic Fibroblast Growth Factor-Binding Ion Complex Gel in Canine Segmental Radial Defects(J.Vet.Med.Sci.76(7):955-961,2014)” Honnami et al.は、α-リン酸三カルシウムおよび骨誘導性ゲルからなる四脚形状の顆粒の組み合わせを取り上げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、骨欠損、具体的には、寛骨臼欠損のようなプロテーゼ周囲の骨欠損の治療および/または生物学的再建に適し、特に股関節修正手術との関連で、冒頭で挙げた欠点を回避する、または少なくとも部分的に回避するインプラントを提供することである。インプラントは、特に、第1の安定および/または第2の安定および/または生物学的再建の達成を最適化し、取り扱いが簡単で、複雑でないものとする。
【0016】
さらに本発明の課題は、骨欠損の治療および/または生物学的再建のためのキット、骨誘導活性支持体のための被覆、そのような被覆を作製するための材料の使用、ならびに骨欠損の治療および/または生物学的再建の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これらの課題は、独立請求項1に記載の特徴を有するインプラントによって、ならびに本明細書に開示されるキット、本明細書に開示される被覆、本明細書に開示される使用、ならびに本明細書に開示される骨欠損の治療および/または生物学的再建の方法によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項および本明細書に定義されている。これにより、全請求項の文言は、本明細書の内容を明示的に参照することによって作成される。
【0018】
第1の態様に従って、本発明は、好ましくは骨欠損の治療および/または生物学的再建、具体的には、内張りおよび/または目張りおよび/または裏打ちおよび/または少なくとも部分的な充填のためのインプラントに関する。
【0019】
インプラントは、本発明の意味において、骨代替材料と呼ばれることもある。
【0020】
インプラントは、骨誘導活性支持体、および、骨誘導活性支持体を少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り囲む被覆を有する。
【0021】
被覆は、特に、水または水を含む液体に溶解する被覆材を有する、またはそのような被覆材からなることを特徴とする。そのような被覆材は、以下、略して溶解性被覆材とも呼ばれる。
【0022】
被覆は、フィルム、フリース、不織布、網、または繊維布、具体的には、織物、編み細工、もしくは編み地、例えば織った網、もしくは編んだ網であり得る。被覆は、特に、押し出し成形、ブロー成形、射出成形(injection molding)、圧縮成形(compression molding)、または追加的な方法で作製または製造できる。さらに被覆は、単繊維の糸材および/または多繊維の糸材を有し得る、または単繊維の糸材および/または多繊維の糸材からなり得る。
【0023】
用語「骨欠損」は、本発明の意味において、骨組織、特に関節の骨組織、好ましくは股関節の骨組織もしくは膝関節の骨組織、または椎体組織に該当する骨領域、特に関節の骨領域、好ましくは股関節の骨領域もしくは膝関節の骨領域、または椎体領域の喪失を意味する。骨喪失は、骨折、骨外傷、腫瘍疾患などの骨疾患、または外科的介入/再介入、特に人工股関節全置換術もしくは人工膝関節全置換術の結果であり得る。好ましくは、用語「骨欠損」は、本発明の意味において、プロテーゼ周囲の骨欠損、すなわちプロテーゼ周囲の骨組織喪失による、特に機械的過負荷および/または摩耗による骨溶解および/またはインプラントの移動に基づく、罹患した骨領域の骨欠損を意味する。
【0024】
好ましくは、骨欠損は、関節の骨欠損、特に膝関節の骨欠損、または股関節の骨欠損、好ましくは寛骨臼欠損、特に閉鎖性または開放性の寛骨臼欠損である。
【0025】
さらに用語「骨欠損」は、本発明の意味において、ヒトの骨欠損または動物の骨欠損を意味し得る。
【0026】
用語「動物の骨欠損」は、本発明の意味において、非ヒト哺乳類、例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、または齧歯類、例えばウサギ、ラット、またはマウスなどの骨欠損と理解される。
【0027】
用語「支持体」は、本発明の意味において、治療される、および/または生物学的に再建される骨欠損部で通常生じる力に、変形または破壊なしに、ただし少なくとも実質的な変形または破壊なしに抵抗するように、したがって耐荷重機能を担うように形成されている物体、特に定形および/または不定形の物体を意味する。そのためこの支持体は、本発明の意味において、骨誘導活性耐荷重支持体と呼ばれることもある。
【0028】
支持体との関連で用いられる用語「骨誘導活性」は、本発明の意味において、骨組織、特に骨の新組織の成長を促進する三次元構造、特に誘導構造、または三次元マトリックス、特に伝導マトリックスを形成するための支持体の能力を意味する。
【0029】
用語「生体内で分解される」は、本発明の意味において、ヒトまたは動物の体内で、特に酵素の作用下で代謝され得る物質または材料に関係する。物質または材料の分解は、無機化が、すなわち化学元素の放出と、無機化合物への、例えば二酸化炭素および/または酸素および/またはアンモニアなどへの化学元素の取り込みが完全に進行しても、または分解に対して安定な中間生成物または変換生成物の段階で残っていてもよい。
【0030】
用語「動物の体」は、本発明の意味において、非ヒト哺乳類、例えばウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、または齧歯類、例えばウサギ、ラット、またはマウスなどの体と理解される。
【0031】
用語「生体内で吸収される」は、本発明の意味において、ヒトまたは動物の体内で、分解されずに、またはそれほど分解されずに、生体細胞または生体組織、例えば腎臓に取り込まれ得る物質または材料に関係する。
【0032】
「被覆(sheath)」は、本発明の意味において、(少なくとも)骨誘導活性支持体を少なくとも部分的に、好ましくは完全に取り囲む、または包含するように形成されている形成物または構造物と理解される。これに加えて被覆は、好ましくは、少なくとも部分的に、好ましくは一部のみ、(少なくとも)骨誘導活性支持体で満たすことができる、または満たされている空洞を有する。
【0033】
用語「被覆材」は、本発明の意味において、被覆の構成要素であり、特に被覆の構築に関与している材料と理解される。被覆材は、水または水を含む液体への溶解性に応じて、被覆の主要構成要素、または唯一の構成要素、または特に添加物(補助剤)としての単なる副構成要素であり得る。
【0034】
用語「水を含む液体」は、本発明の意味において、水性液体、すなわち水を含む液体と理解され、液体は、任意選択で、その他の物質、例えば塩、タンパク質、多糖類、脂質、血液成分、もしくはこれらの混合物、および/または細胞を含むことができる。これに応じて、水を含む液体は、本発明の意味において、例えば水性分散液、水性塩類溶液などの水性溶液、水性懸濁液、または体液であり得る。好ましくは、用語「水を含む液体」は、本発明の意味において、水性溶液、または例えば血液および/もしくは組織液および/もしくはリンパ液などの体液と理解される。さらに、水を含む液体が、本発明の意味において、有機溶剤を含まなければ好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、具体的には、以下の利点を特徴とする。
- 被覆は、特に有利には、成長する骨組織の障害、すなわち骨欠損の生物学的再建の障害となることなく、骨誘導活性支持体の収納補助として用いられる。溶解性被覆材によって、特に有利には、骨欠損部へのインプラント留置後、被覆の少なくとも一部が溶解し、その結果、治癒過程が良好であれば、成長する骨組織が骨誘導活性支持体を貫通することができ、それにより骨誘導活性支持体が骨と一体化され得るという条件が生まれる。それにより、骨誘導活性支持体が生体内で分解されない、もしくは非常にゆっくりとしか分解されない、または生体内で吸収される場合でも、骨欠損の生物学的再建、したがって縮小が可能となる。
骨成長がない、または悪い場合、骨誘導活性支持体は好ましくは保持されたままで、それにより第2の安定に役立つ。それに伴い、好ましくは第2の安定を確保でき、しかも、骨誘導活性支持体が移植後に骨組織と深く結合するか否かには依存しない。これは、骨成長がもはやまったく、またはごくわずかにしか起こらない高齢患者では特に有利である。
- 被覆のさらなる利点は、骨誘導活性支持体の局所付着を引き起こすことである。それにより、特に有利な方法で、支持体が骨欠損部に無制御に入り込むのを回避できる。
- 被覆のさらなる利点は、特に、骨誘導活性支持体の圧縮、特に詰め込みが可能であり、圧縮、特に詰め込みの際に、骨欠損部内で骨誘導活性支持体が無制御に広がらないことである。
- 被覆は、手術の際、容易に、とりわけ迅速に取り扱えるという利点をさらに提供する。
- さらなる利点は、骨誘導活性支持体を、特にばらの、または個別のバルク材の形態で、圧縮された状態、好ましくは詰め込まれた(挟み込まれた、または食い込ませた)状態に移行させることができ、この状態で、骨組織、特に新しい骨組織の内方成長の誘導構造として機能させられることである。
- さらなる利点は、特に骨誘導活性支持体が圧縮された状態、特に詰め込まれた状態にある場合、インプラントが持続的に、とりわけ均一に荷重を受けられることである。均一なインプラント荷重は骨成長の基本要件である。例えば、圧縮されている、特に詰め込まれている骨誘導活性支持体を有するインプラントは、最大5MPaの圧力荷重を持続的に受けることができる。圧縮、特に詰め込みによって生じ、骨誘導活性支持体によって構成される構造は、特に有利には、特に5~15%の弾性変形と、特に50~300MPaの小さな弾性率を有する。
好ましくは、骨誘導活性支持体は0.5~5mm、特に0.1~3mm、好ましくは1~2mmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、特に骨誘導活性支持体の高さおよび/または幅(厚さ)および/または長さおよび/または直径、特に平均直径であり得る。
さらなる実施形態では、骨誘導活性支持体は、互いに可動であり、特に互いに移動可能である。
さらなる実施形態では、骨誘導活性支持体は、詰め込み可能に、すなわち互いに挟み込み可能に、または互いに食い込み可能に形成されている。
さらなる実施形態では、骨誘導活性支持体は、すなわち、互いに挟み込ませた、または互いに食い込ませた状態にある。
さらなる実施形態では、骨誘導活性支持体は、好ましくは詰め込みによって、三次元の、特に空洞および/または隙間を有する構造またはマトリックスに移行させることができる、またはそのような構造またはマトリックスの状態にある。そのような構造またはマトリックスは、本発明の意味において、骨誘導活性誘導構造または骨誘導活性誘導マトリックスと呼ばれることもある。
構造またはマトリックスの空洞および/または隙間は、0.1~1.2mm、特に0.2~1mm、好ましくは0.3~0.8mmの直径を有し得る。
- 従来のインプラント、特に、インプラント縁部の隙間のみが機械的負荷を受ける金属補強とは異なり、骨誘導活性支持体が圧縮された状態にあると、存在する空洞および/または隙間は、弾性率が小さいために、欠損部が完全に充填された中でも、すなわち均一に、機械的負荷(微小な運動)を受けることができる。またこれにより骨成長、特に骨新生が刺激および/または強化される。これにより、全体として、骨欠損部全体の均一な骨化を達成できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施態様では、被覆材の溶解性は物理的溶解過程に基づくものであり、すなわち、被覆材は分解などの破壊なしに水または水を含む液体に溶解する。
【0037】
本発明のさらなる実施態様では、被覆材の溶解性は、溶解性被覆材の分解、特に加水分解、例えば酵素触媒による加水分解に基づく。
【0038】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は、1秒~72時間、特に1分~1時間、好ましくは2~20分のあいだに、水または水を含む液体、特に体液に溶解する。
【0039】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は多糖類を含む、または多糖類からなる。多糖類は、特に、ムコ多糖類および/またはセルロース誘導体、特にアルキルセルロースおよび/またはヒドロキシアルキルセルロースである。好ましくは、多糖類は、デンプン、アミロース、アミロペクチン、デキストラン、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシブチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、ケラチン硫酸、アルギン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、キトサン、これらの塩、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は合成重合体を含む、または合成重合体からなる。好ましくは、合成重合体は、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレンオキシド-プロピレンオキシド共重合体(EO-PO共重合体)、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロック共重合体(EO-POブロック共重合体)、アクリル酸単独重合体、アクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン単独重合体、ポリビニルピロリドン共重合体、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
前段落に挙げたポリビニルアルコールは、特にいわゆる低分子ポリビニルアルコール、すなわち平均分子量が10.000~30.000のポリビニルアルコール、および/またはいわゆる高分子ポリビニルアルコール、すなわち平均分子量が50.000~250.000のポリビニルアルコールである。
【0042】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は、低分子ポリビニルアルコール、すなわち平均分子量が10.000~30.000のポリビニルアルコール、および/または高分子ポリビニルアルコール、すなわち平均分子量が50.000~250.000のポリビニルアルコールに加えて、さらに多糖類、特にカルボキシアルキルセルロース、好ましくはカルボキシメチルセルロースを含む。
【0043】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は、多糖類と合成重合体からなる混合物を含む、または、そのような混合物からなる。好適な多糖類および合成重合体に関しては、上記段落に記載の多糖類および合成重合体を参照のこと。
【0044】
さらに溶解性被覆材は、被覆の総重量に対して0.1~100重量%、特に5~100重量%、好ましくは90~100重量%の割合で含まれ得る。溶解性被覆材の割合が高いほど、被覆は水または水を含む液体に、より完全に溶解する。したがって、特に有利には、被覆の溶解性は溶解性被覆材の割合で制御できる。
【0045】
本発明のさらなる実施態様では、溶解性被覆材は少なくとも部分的に、特に一部のみ、または完全に架橋されている。溶解性被覆材は、化学的に、および/または物理的に架橋させることができる。例えば被覆材は、特に、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド、ポリアルデヒド、ジイソシアネート、ジカルボジイミド、またはこれらの混合物からなる群から選択される化学架橋剤を用いて架橋させることができる。化学架橋剤は、被覆の総重量に対して0.1~20重量%、特に1~10重量%、好ましくは2~5重量%の割合で含まれ得る。別法として、または組み合わせて、被覆材は、照射、特にガンマ照射によって、および/または凍結融解サイクルによって架橋させることができる。架橋によって、特に架橋の種類および/もしくは程度によって、または架橋しないことによって、同様に、特に有利には、被覆材、したがって被覆の、水または水を含む液体への溶解性を制御することができ、このとき架橋は、一般に溶解性の低下、または溶解時間の延長を引き起こす。
【0046】
本発明のさらなる実施態様では、被覆は架橋剤を含まない。
【0047】
本発明のさらなる実施態様では、被覆はさらに、水または水を含む液体に溶解しない被覆材を含む。そのような被覆材は、以下、略して非溶解性被覆材とも呼ばれる。
【0048】
非溶解性被覆材は、好ましくは重合体、特に疎水性重合体である。
【0049】
好ましくは、重合体は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタンなどのポリウレタン、エラストマー、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フルオロカーボン、パーフルオロカーボン、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリラート、ポリメタクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロプロピレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、これらの共重合体、またはこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0051】
ポリエチレンは、特に低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、これらの共重合体、またはこれらの混合物であり得る。ポリエステルは、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合体、またはこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0052】
ポリアミドは、特に、ポリアミド6(カプロラクタムからなるポリアミド)、ポリアミド46(テトラメチレンジアミンとアジピン酸からなるポリアミド)、ポリアミド6.6(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸からなるポリアミド)、ポリアミド69(ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸からなるポリアミド)、ポリアミド6/12(ヘキサメチレンジアミンとドデカン二酸からなるポリアミド)、ポリアミド1010(1,10-デカンジアミンとセバシン酸からなるポリアミド)、ポリアミド11(アルファ-アミノウンデカン酸からなるポリアミド)、ポリアミド12(ラウロラクタムからなるポリアミド)、ポリアミド1212(ドデカンジアミンとドデカン二酸からなるポリアミド)、絹、これらの共重合体、またはこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0053】
非溶解性被覆材は、被覆の総重量に対して0.1~99重量%、特に0.1~50重量%、好ましくは0.1~1重量%の割合で含まれ得る。代替的に用いられる非溶解性被覆材の割合によっても、意図的に被覆の溶解性に影響を及ぼすことができる。非溶解性被覆材を含有していると、全体として被覆の溶解性が低下する。
【0054】
さらに非溶解性被覆材は、特に被覆の添加剤の形態で存在し得る。
【0055】
用語「添加剤」は、本発明の意味において、被覆との関連で、被覆の総重量に対して、最大で49重量%、特に0.1~40重量%、好ましくは2~20重量%の割合で含まれる補助剤と理解される。
【0056】
本発明のさらなる実施態様では、被覆は、水または水を含む液体に溶解しない被覆材を含まない。
【0057】
本発明のさらなる実施態様では、被覆または被覆の部分領域は、10μm~1mm、特に20~800μm、好ましくは30~300μmの厚さを有する。被覆は、特に厚さが均一、または、以下にさらに詳しく述べるように、厚さが不均一、すなわち部分によって厚さがさまざまであり得る。
【0058】
本発明のさらなる実施態様では、被覆または被覆の部分領域はフォイル状に形成されている。つまり、本発明のさらなる実施態様において、被覆または被覆の部分領域は、フォイルの形態である。被覆のフォイル状の部分領域は、好ましくは、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。さらに、被覆のフォイル状の部分領域が、移植された状態で、骨に向けて配置されていると好ましい。好適な溶解性被覆材に関しては、前述の説明を参照されたい。
【0059】
被覆との関連で用いられる用語「フォイル状」または「フォイル」は、本発明の意味において、厚さが10μm~1mm、特に20~800μm、好ましくは30~300μmの被覆を意味する。被覆のこのように薄い態様は、被覆材、したがって被覆のできるだけ速やかな溶解性に関して特に有利である。
【0060】
本発明のさらなる実施態様では、被覆の部分領域は、織物状、特に網状、すなわち網の形態で形成されている。好ましくは、部分領域は、水または水を含む液体に溶解しない被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。さらに、部分領域が、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されていると好ましい。好適な非溶解性被覆材に関しては、前述の説明を参照されたい。
【0061】
用語「網状」または「網」は、本発明の意味において、好ましくは規則的な網目もしくは開口部を有する繊維布の形態または繊維布と理解される。網目または開口部は、例えばひし形、正方形、または六角形に形成することができる。特に、用語「網状」または「網」は、織った、もしくは編んだ布の形態、または織った、もしくは編んだ布と理解される。
【0062】
本発明のさらなる実施態様では、被覆は、部分領域、特に、異なるように形成された第1の部分領域および第2の部分領域を有する。これにより、特に、水または水を含む液体への、被覆の縦方向依存性および/または横方向依存性の溶解性を実現することが可能となる。
【0063】
本発明のさらなる実施態様では、部分領域は、水もしくは水を含む液体への被覆の溶解性に関して、および/または被覆の厚さに関して、および/または被覆の構造に関して互いに異なる。
【0064】
本発明のさらなる実施態様では、部分領域は、被覆材の化学組成に関して、特に架橋に関して互いに異なる。化学組成および可能な架橋に関しては、前述した(溶解性および非溶解性)被覆材、ならびに前述した架橋の方法を参照されたい。
【0065】
特に部分領域は、架橋の種類および/もしくは程度に関して互いに異なる。例えば部分領域は、化学架橋剤および/または物理的架橋に関して互いに異なる。好適な化学架橋剤および物理的架橋に関しては、溶解性被覆材の最適な架橋に関連した上記の説明を参照されたい。
【0066】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも良好に、または素早く水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。それにより、まず骨組織の内方成長が見込まれる領域の被覆のみが溶解し、一方、被覆の残りの部分は、水または水を含む液体に対する耐性が比較的高いという特徴を備えることにより、少なくとも移植後の初期段階には、被覆の部分的な完全性を保持できることが、特に有利な方法で達成できる。好適な被覆材に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0067】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも弱く架橋された、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。つまり、本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも架橋度が低い、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。好適な被覆材に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0068】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、架橋されていない、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含み、またはそのような被覆材からなり、一方、第2の部分領域は、架橋された、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。好適な被覆材に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0069】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも、水または水を含む液体に溶解する被覆材の割合が大きい。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。好適な被覆材に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0070】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含み、またはそのような被覆材からなり、一方、第2の部分領域は、水または水を含む液体に溶解しない被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。好適な被覆材に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0071】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも厚さが薄い。好ましくは、第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。
【0072】
本発明のさらなる実施態様では、第1の部分領域は、織物状、特にフォイル状ではなく、第2の部分領域は、織物状、特に網状、すなわち網の形態で形成されている。好ましくは、このとき第1の部分領域は、移植された状態で、骨に向けて配置されており、一方、被覆の第2の部分領域は、移植された状態で、人工関節窩、特に人工寛骨臼に向けて配置されている。
【0073】
本発明のさらなる実施態様では、被覆は、形状安定的に、特に骨欠損に合わせて形成されている。
【0074】
本発明のさらなる実施態様では、被覆は、一部のみ骨誘導活性支持体で占められている。例えば、被覆によって画定される空洞容積は、50~80%のみ骨誘導活性支持体で占められ得る。このようにして、特に有利には、成形可能な被覆、したがって治療する骨欠損および/または生物学的に再建する骨欠損に合わせられる被覆を実現できる。
【0075】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、個別化された骨誘導活性支持体である。つまり、本発明のさらなる実施態様では、以下に詳述するように、骨誘導活性支持体は個別化された形態で、すなわちばらばらの支持体の形態で、例えばバルク材の形態で存在する。
【0076】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、アパタイトおよび/もしくはリン酸三カルシウムを含む、またはアパタイトおよび/もしくはリン酸三カルシウムからなる。骨誘導活性支持体は、それぞれ、アパタイトを0.1~100重量%の割合で含むことができる。さらに骨誘導活性支持体は、それぞれ、リン酸三カルシウムを0.1~100重量%の割合で含むことができる。
【0077】
好ましくは、アパタイトは生体内で分解されない、または生体内で吸収されないアパタイトである。それにより、もう(十分な)骨成長が見込まれない患者でも、十分な第2の安定を達成できる。これは特に高齢患者の骨欠損治療において有利である。
【0078】
別法として、アパタイトは生体内で分解される、または生体内で吸収されるアパタイト、好ましくは、生体内でゆっくり分解される、または生体内でゆっくり吸収されるアパタイトであり得る。特にアパタイトは、生体内での分解時間または生体内での吸収時間が6ヵ月~30年間、特に1~20年間、好ましくは4~10年間であり得る。この段落で開示される分解時間または吸収時間は、特に、骨成長がゆっくりである、またはまったくない患者の治療において有利である。
【0079】
さらにアパタイトは、特に結晶の形態で存在し得る。結晶化度が高いと、高い硬度が得られる。結晶化度が低いと、良好な、および/または速やかな分解性が得られる。
【0080】
さらにアパタイトは、微結晶性アパタイト、すなわち、マイクロメートル領域、特に0.5μm超、特に0.6~500μm、好ましくは0.6~100μmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する結晶子を有するアパタイトであり得る。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、結晶子の長さおよび/または幅(厚さもしくは高さ)および/または直径、特に平均直径であり得る。
【0081】
しかしながら、基本的にアパタイトは巨大結晶性アパタイトでもあり得る。
【0082】
さらにアパタイトは、ナノ結晶性アパタイト、すなわち、ナノメートル領域、特に0.1~500nm、好ましくは0.1~100nmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する結晶子を有するアパタイトであり得る。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、結晶子の長さおよび/または幅(厚さもしくは高さ)および/または直径、特に平均直径であり得る。
【0083】
さらにアパタイトは、非晶質形態で存在し得る。それにより、とりわけ良好な、および/または速やかな吸収性が得られる。
【0084】
さらにアパタイトは、相純粋なアパタイトであり得る。用語「相純粋」は、特に、関連規定の意味において、好ましくはASTM F1185に従って相純粋と理解される。
【0085】
さらにアパタイトは、気孔率が50%未満、特に20%未満、好ましくは15%未満であり得る。気孔率が小さいことにより、高い機械安定性が得られる。
【0086】
さらにアパタイトは、多孔性に形成されていなくてもよい。
【0087】
さらに骨誘導活性支持体は、特に支持体が、追加的な製造方法で作製される場合には、多孔質アパタイトおよび/またはさまざまな気孔率を有するアパタイトおよび/または非多孔質のアパタイトからなる混合物を含み得る、またはそのような混合物からなり得る。
【0088】
さらにアパタイトは、天然由来のアパタイト、または天然アパタイトから得られたアパタイトであり得る。
【0089】
さらにアパタイトは、合成、すなわち人工または人造アパタイトであり得る。
【0090】
好ましくは、アパタイトは、ヒドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイト、炭酸フルオロアパタイト、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0091】
特に好ましくは、アパタイトは、ヒドロキシアパタイトである。例えばヒドロキシアパタイトは、完全合成、ナノ結晶性、および相純粋なヒドロキシアパタイトであり得る。そのようなヒドロキシアパタイトは市販されており、例えばOstimの名称で入手可能である。
【0092】
アパタイトおよびリン酸三カルシウムは二相混合物としても存在し得る。二相構造は、骨細胞が内方成長でき、材料が徐々に置き換えられるため有利である。このとき、アパタイトおよび/またはリン酸三カルシウムおよび/または二相性リン酸カルシウムは、気孔率が1~50%、特に5~20%、好ましくは10~15%である。
【0093】
さらにアパタイトは焼結アパタイトであり得る。
【0094】
好ましくは、焼結アパタイトは、焼結ヒドロキシアパタイト、焼結フルオロアパタイト、焼結クロロアパタイト、焼結炭酸フルオロアパタイト、またはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0095】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体はリン酸三カルシウムを含む、またはリン酸三カルシウムからなる。
【0096】
好ましくは、リン酸三カルシウムは、生体内で分解されない、または生体内で吸収されないリン酸三カルシウムである。それにより、もう(十分な)骨成長が見込まれない患者でも、十分な第2の安定を達成できる。これは特に高齢患者の骨欠損治療において有利である。
【0097】
別法として、リン酸三カルシウムは、生体内で分解される、または生体内で吸収されるリン酸三カルシウムであり得、好ましくは、生体内でゆっくり分解される、または生体内でゆっくり吸収されるリン酸三カルシウムであり得る。特に、リン酸三カルシウムは、生体内での分解時間または生体内での吸収時間が1ヵ月~15年間、特に6ヵ月~10年間、好ましくは1~5年間であり得る。本段落で開示される分解時間または吸収時間は、特に、骨成長がゆっくりである患者の治療において有利である。
【0098】
さらにリン酸三カルシウムは、結晶の形態で存在し得る。結晶化度が高いと、高い硬度が得られる。結晶化度が低いと、良好な、および/または速やかな分解性が得られる。好ましくは、リン酸三カルシウムの結晶化度は50~99%、特に75~95%である。
【0099】
さらにリン酸三カルシウムは、微結晶性リン酸三カルシウム、すなわち、マイクロメートル領域、特に0.5μm超、特に0.6~500μm、好ましくは0.6~100μmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する結晶子を有するリン酸三カルシウムであり得る。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、結晶子の長さおよび/または幅(厚さもしくは高さ)および/または直径、特に平均直径であり得る。
【0100】
しかしながら、基本的にリン酸三カルシウムは巨大結晶性リン酸三カルシウムでもあり得る。
【0101】
さらにリン酸三カルシウムは、ナノ結晶性リン酸三カルシウム、すなわち、ナノメートル領域、特に0.1~500nm、好ましくは0.1~100nmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する結晶子を有するリン酸三カルシウムであり得る。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、結晶子の長さおよび/または幅(厚さもしくは高さ)および/または直径、特に平均直径であり得る。
【0102】
さらにリン酸三カルシウムは、非晶質形態で存在し得る。それにより、とりわけ良好な、および/または速やかな吸収性が得られる。
【0103】
さらにリン酸三カルシウムは、相純粋なリン酸三カルシウムであり得る。用語「相純粋」は、特に、関連規定の意味において、好ましくはASTM F1088に従って相純粋と理解される。
【0104】
さらにリン酸三カルシウムは、気孔率が50%未満、特に20%未満、好ましくは15%未満であり得る。
【0105】
さらにリン酸三カルシウムは、多孔性に形成されていなくてもよい。
【0106】
さらにリン酸三カルシウムは、天然由来のリン酸三カルシウム、または天然リン酸三カルシウムから得られたリン酸三カルシウムであり得る。
【0107】
さらにリン酸三カルシウムは、合成、すなわち人工または人造リン酸三カルシウムであり得る。
【0108】
リン酸三カルシウムは、好ましくは、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、およびα-リン酸三カルシウムとβ-リン酸三カルシウムの混合物からなる群から選択される。
【0109】
特に、リン酸三カルシウムは焼結リン酸三カルシウムであり得る。
【0110】
焼結リン酸三カルシウムは、好ましくは、焼結α-リン酸三カルシウム、焼結β-リン酸三カルシウム、および焼結α-リン酸三カルシウムと焼結β-リン酸三カルシウムの混合物からなる群から選択される。
【0111】
さらに骨誘導活性支持体は、アパタイトおよびリン酸三カルシウムを含み得る、またはアパタイトおよびリン酸三カルシウムからなり得る。好ましくは、骨誘導活性支持体は、ヒドロキシアパタイトおよびβ-リン酸三カルシウムを含む、またはヒドロキシアパタイトおよびβ-リン酸三カルシウムからなる。アパタイトおよびリン酸三カルシウムのさらなる特徴と利点に関しては、前述の説明を参照のこと。
【0112】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は粗面を有する。それにより、特に支持体によって形成される骨誘導活性誘導構造への骨組織の癒合と付着を最適化することができる。用語「粗面化」は、本発明の意味において、特に、支持体の成形によって、特にこのための作製ステップで表面の粗さを大きくすることと理解される。粗面化は、例えば、特にリン酸によるエッチングで行うことができる。好ましくは、支持体は、粗面化されていない支持体表面と比べて粗度が少なくとも10%大きい粗面を有する。用語「粗さ」は、特に骨誘導活性支持体表面に起伏があることと理解される。
【0113】
本発明のさらなる実施態様では、支持体は追加的な製造方法で作製される。
【0114】
本発明のさらなる実施態様では、支持体はリン酸カルシウムセメントを含む、またはリン酸カルシウムセメントからなる。リン酸カルシウムセメントは、特に、完全硬化前に少なくとも2barの圧力、好ましくは絶対圧をかけられるリン酸カルシウムセメントであり得る。このようにして、特に有利には、気孔率を下げることができる。
【0115】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、材料結合式に互いに接合されており、特に互いに接着されている。
【0116】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は接合剤でコーティングされている。接合剤は、好ましくは熱、または例えばN-メチルピロリドン(NMP)などの溶剤で溶解し得る接合剤である。このような接合剤を使用することによって、骨誘導活性支持体は、加熱およびその後の冷却によって、または溶剤の添加によって互いに接合させることが可能となる。接合剤は、例えばポリ乳酸および/または乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)であり得る。
【0117】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、支持体の圧縮、特に詰め込みを、例えばインパクターなどの好適な道具で促すことによって形成される。骨誘導活性支持体の相応に好適な実施形態に関しては、以下の説明を参照されたい。
【0118】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は規則的に形作られており、すなわち成形体として存在する。用語「規則的に形作られている」または「成形体」は、本発明の意味において、特に以下に説明する形態と理解される。
【0119】
骨誘導活性支持体、特に成形体は多角形断面を有し得る。例えば骨誘導活性支持体、特に成形体は、三角形、正方形、長角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、または星形の断面を有し得る。
【0120】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、さまざまな断面を有し得る。可能な断面に関しては、前段落で述べた断面を参照のこと。
【0121】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、多面体に、特に長方体、立方体、正四面体、プリズム形、ピラミッド形、錐台形、またはヘラ形に形成できる。
【0122】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、さまざまに多面体に形成できる。つまり、骨誘導活性支持体、特に成形体は、さまざまな多面体の形態で存在し得る。可能な多面体の形態については前段落を参照のこと。
【0123】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、角のない断面を有し得る。例えば構造要素は、長円形、特に円形または楕円形の断面を有し得る。
【0124】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、非多面体、特に球形、円錐形、円錐台形、環状、ドーナツ状、または円柱形に形成できる。
【0125】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、さまざまに非多面体に形成できる。つまり、骨誘導活性支持体、特に成形体は、さまざまな非多面体の形態で存在し得る。可能な非多面体の形態については前段落を参照のこと。
【0126】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、小脚(Oligopode)の形態で、すなわち小脚形で形成できる。
【0127】
小脚は、特に円錐形で、および特に回転対称的に形成された脚を有し得る。脚の円錐角は5~25度、特に7~15度であり得る。
【0128】
さらに小脚は、長さが0.5~5mm、特に1.5~2.5mmの脚を有し得る。
【0129】
加えて小脚は、平均直径が0.2~3mm、特に0.3~0.7mmの脚を有し得る。
【0130】
さらに小脚は、三脚、四脚、五脚、六脚、七脚、八脚、またはこれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0131】
本発明に従って、骨誘導活性支持体が四脚形で形成されていると、特に好ましい可能性がある。四脚形の造形によって、骨誘導活性支持体が特に効果的に互いにかみ合うことができる。
【0132】
さらに骨誘導活性支持体、特に成形体は、細長い構造要素を有し得る。特に骨誘導活性支持体、特に成形体は、細長い構造要素で構成され得る。
【0133】
用語「細長い構造要素」は、本発明の意味において、長さと幅の比、または長さと直径の比が1より大きい構造要素と理解される。
【0134】
好ましくは、骨誘導活性支持体、特に成形体は、細長い直線状の構造要素を有し得る。好ましくは、骨誘導活性支持体、特に成形体は、細長い直線状の構造要素で構成され得る。
【0135】
細長い構造要素は、好ましくは多面体に、特に長方体、立方体、プリズム形、ピラミッド形、錐台形、またはヘラ形に形成できる。つまり、骨誘導活性支持体、特に成形体の構造要素は、好ましくは、多面体の、特に長方体、立方体、プリズム形、ピラミッド形、錐台形、またはヘラ形の配置を有し得る。
【0136】
細長い構造要素は、0.4~5mm、特に0.8~4.5mm、好ましくは1~4mmの長さを有し得る。
【0137】
さらに細長い構造要素は、0.4~5mm、特に0.8~4.5mm、好ましくは 1~4mmの幅、特に平均幅、または直径、特に平均直径を有し得る。
【0138】
加えて、細長い構造要素は、角のない断面を有し得る。例えば構造要素は、長円形、特に円形または楕円形の断面を有し得る。
【0139】
別法として、構造要素は多角形の断面を有し得る。例えば構造要素は、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、または星形の断面を有し得る。
【0140】
細長い、特に直線状の構造要素を有する、特に前述したような骨誘導活性支持体、特に成形体の形態は、支持体、特に成形体ごとに構造要素を相互に配置することにより、追加の空洞容積を作ることができ、それにより、支持体、特に成形体、したがってインプラントの骨伝導特性をさらに向上させることができるという利点がある。特に、ヒトまたは動物の骨の細孔の大きさ(絶対空洞容積)および気孔率(空洞容積に対する材料の容積の比率)を最適に再現できる。
【0141】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は不規則的に形成されている。
【0142】
骨誘導活性支持体は、特に粒子状、すなわち粒子の形態で存在し得る。
【0143】
好ましくは、骨誘導活性支持体は破砕物として、特にバルク材として、好ましくは顆粒として形成される。
【0144】
用語「バルク材」は、本発明の意味において、少なくとも1つのサイズまたは寸法が7mm未満、好ましくは0.5~5mmの大きさである粒状材料、すなわち粒子形態の材料と理解される。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、粒子の高さおよび/または長さおよび/または幅(厚さ)および/または直径、特に平均直径であり得る。用語「顆粒」は、本発明の意味において、不規則的に形成されている粒状材料、特に破砕材料および/またはふるい分けられた材料と理解される。
【0145】
さらに骨誘導活性支持体は、破砕されていない材料として形成できる。例えば骨誘導活性支持体は、追加的に製造された材料として、すなわち追加的な製造方法で作製された材料として形成できる。
【0146】
用語「追加的な製造方法」は、本発明の意味において、モデル、見本、試作品、ツール、および最終製品を迅速かつ安価に製造する原型成形方法と理解され、製造は、直接コンピュータ内部のデータモデルに基づいて(通常はSTLインターフェースを介して転送)、無形(例えば、液体、ゲル、ペースト、または粉末)および形状にこだわらない(例えば、帯状、ワイヤー状、またはシート状)の材料から、化学的および/または物理的工程によって行われる。そのような方法は、生成的製造方法と呼ばれることもある。
【0147】
好ましくは、骨誘導活性支持体は、0.5~5mm、特に0.1~3mm、好ましくは1~2mmの範囲の少なくとも1つのサイズまたは寸法を有する。少なくとも1つのサイズまたは寸法は、骨誘導活性支持体の高さおよび/または幅(厚さ)および/または長さおよび/または直径、特に平均直径であり得る。
【0148】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、互いに可動、特に互いに移動可能に形成されている。
【0149】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、詰め込み可能に、すなわち互いに挟み込み可能に、または互いに食い込み可能に形成されている。
【0150】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、詰め込んだ、すなわち互いに挟み込ませた、または互いに食い込ませた状態にある。
【0151】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、好ましくは詰め込みによって、三次元の、特に空洞および/または隙間を有する構造またはマトリックスに移行させることができる、またはそのような構造またはマトリックスの状態にある。そのような構造またはマトリックスは、本発明の意味において、骨誘導活性誘導構造または骨誘導活性誘導マトリックスと呼ばれることもある。
【0152】
構造またはマトリックスの空洞および/または隙間は、0.1~1.2mm、特に0.2~1mm、好ましくは0.3~0.8mmの直径を有し得る。
【0153】
さらに構造またはマトリックスは、特に有利には、5~95%、特に10~80%、好ましくは20~70%の空洞容積および/または隙間容積を有し得る。このような空洞容積および/または隙間容積は、ヒトまたは動物の海綿質の細孔容積を最適に反映し、インプラントの骨誘導活性、および特に骨欠損の生物学的再建を向上させる。
【0154】
好ましくは、構造またはマトリックスの空洞および/または隙間は、少なくとも一部が互いに結合している。このように、構造またはマトリックスは、ヒトまたは動物の海綿質の多孔性、特に連続多孔性を最適に反映している。それにより、特に有利には、欠損した骨領域への骨組織の内方成長、また特に、生体骨組織を伴う欠損した骨領域の貫通成長を、刺激および/または亢進させることができる。これはまた、インプラントの骨伝導特性の向上、また特に骨欠損の生物学的再建にも役立つ。
【0155】
さらに、構造またはマトリックスが、10MPa~10GPa、特に50MPa~1GPa、好ましくは80~350MPaの弾性率(ヤング率とも呼ばれる)を有すると好ましい。用語「弾性率(ヤング率)」は、本発明の意味において、弾性率と理解される。弾性率の値は、材料の弾性変形に対する抵抗が大きいほど大きくなる。そのため弾性率の大きな材料からなる物体は、弾性率が小さな材料からなる同じ実施形態(同じ幾何学的寸法)の物体よりも硬い。本段落に開示する弾性率の値は、100~1,000MPaの弾性率を有する海綿骨の対応する値を最適に反映している。
【0156】
前段落に記載の低い弾性率によって、骨誘導活性支持体は、一様な、すなわち均一な機械的荷重を受けることができる。特に、上記の段落に記載の構造またはマトリックスの空洞および/または隙間も、機械的荷重を受けることができる。さらに、骨誘導活性支持体、したがってインプラントへの一様または均一な機械的荷重によって、特に有利には、骨欠損領域内全体での骨形成、特に骨新生が達成できる。
【0157】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、開口部または凹部、特に貫通開口部を有する。それにより、支持体は荷重を受けると、有利な方法で(容易に)圧搾される、特に変形することができる。支持体の圧搾に応じて生じる荷重は、例えば、使用者、好ましくは外科医が力を加えたときに発生し得る。それにより、骨誘導活性支持体の圧縮、特に詰め込みをさらに向上させることができ、結果として、インプラントの耐荷重特性が向上する。
【0158】
開口部または凹部は、穴、細孔、亀裂、スリット、切れ目、裂け目、刻み目、および前述の少なくとも2つの開口部または凹部の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0159】
さらに開口部または凹部は、幾何学的に画定された、または画定されない開口部または凹部であり得る。
【0160】
特に、開口部または凹部は、長円形、特に円形または楕円形の断面を有し得る。別法として、または組み合わせて、開口部または凹部は、多角形、特に三角形、正方形、長角形、五角形、六角形、七角形、八角形、九角形、十角形、または星形の断面を有し得る。
【0161】
開口部または凹部は、0.01~5mm、特に0.1~4mm、好ましくは0.5~3mmの直径を有し得る。このような直径は、以下に詳述するように、開口部が貫通開口部として形成されており、骨誘導活性支持体を互いに結びつける、または縛りつけるために牽引要素がそこを通り抜けるように形成されていると好ましい可能性がある。
【0162】
別法として開口部または凹部は、60~500μm、好ましくは100~400μmの直径、特に平均直径を有し得る。このような直径は、開口部または凹部が細孔として形成されていると好ましい。
【0163】
好ましくは、開口部または凹部は細孔であり得る。言い換えると、骨誘導活性支持体は、好ましくは開放孔として形成することができる。特に、骨誘導活性支持体は連続多孔性を有し得る。
【0164】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は繊維を有する。繊維は基本的に短繊維および/または長繊維であり得る。
【0165】
用語「短繊維」は、本発明の意味において、長さが0.01~1mm、特に0.1~1mm、好ましくは0.5~1mmの繊維と理解される。
【0166】
用語「長繊維」は、本発明の意味において、長さが1mm超の繊維と理解される。
【0167】
短繊維および/または長繊維は、金属繊維および/または高分子繊維であり得る。
【0168】
本発明のさらなる実施態様では、インプラントはさらに牽引要素を有する。牽引要素は、好ましくは、骨誘導活性支持体の貫通開口部を通り抜けさせるよう形成されている。それにより、特に有利には、骨誘導活性支持体を互いに結びつける、または互いに縛りつけることができる。そのため牽引要素は、合目的的に細長い牽引要素である。
【0169】
好ましくは、牽引要素は織物の、特に糸状の牽引要素である。例えば牽引要素は、糸(引張糸)、特に単繊維、偽単繊維、または多繊維の糸であり得る。特に牽引要素は外科縫合糸であり得る。
【0170】
さらに、牽引要素は、繊維布、特に織物、編み細工、編み物、不織スクリム(Gelege)、フリース、または不織布の形態であり得る。好ましくは、牽引要素は網、特に多細孔性の網、好ましくはヘルニアネットである。骨誘導活性支持体を網状の牽引要素にくるむことによって、支持体の規則的な配置を実現できる。
【0171】
別法として、牽引要素はワイヤー(引張ワイヤー)であり得る。
【0172】
牽引要素を使用することで、特に有利には、骨誘導活性支持体の固定または縛りつけが可能となり、それにより骨誘導活性支持体の相互の強度、したがってインプラントの強度を即時に向上させることができる。このような強度の向上により、支持体によって形成された骨組構造が、脆性破壊後に崩壊する危険性を低減することができる。さらに、骨誘導活性支持体を固定または縛りつけることによって、特に有利には、開放孔の骨組構造を実現できる。さらに、(必要に応じて複数の)牽引要素-支持体ユニットを別のインプラントおよび/または骨に固定し、それにより局所的に安定させて固定することが可能となる。(必要に応じて複数の)牽引要素-支持体ユニットは、固定することによって、別のインプラント、例えば創面切除した骨に押しつけることができる。これにより骨に最適に結びつけることが可能となり、結果的に骨への圧力が生じることで骨成長が促進される。好ましくは、インプラントは骨欠損部への力の伝導を担う。これにより、骨を刺激して骨を構築する圧力刺激がなくなる(ストレスシールディング)。この圧力刺激は、骨への圧力を受けた牽引要素支持体ユニット(複数可)によって構築することができる。
【0173】
牽引要素は、重合体および/または金属を含み得る、または重合体および/または金属からなり得る。重合体は、例えばポリエチレンまたはポリプロピレン、金属は、例えばチタンまたはタンタルであり得る。
【0174】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、形状結合式に、摩擦結合式に、および/または材料結合式に互いに結合できるように形成されている。好ましくは、骨誘導活性支持体は形状結合式に互いに結合できるように形成されている。例えば支持体は、コネクターシステムまたは一種のコネクターシステムを用いて互いに結合できるように形成することができる。コネクターシステムは、いわゆるピンと穴の原理に基づくことができ、好ましくは、骨誘導活性支持体の固定を向上させるアンダーカットを有する。このために、骨誘導活性支持体の一部にピンを設け、骨誘導活性支持体の別の部分には、これに合うピン穴またはスリットを設けることができる。
【0175】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、形状結合式に、摩擦結合式に、および/または材料結合式に互いに結合されている。好ましくは、支持体は形状結合式に互いに結合されている。例えば骨誘導活性支持体は、コネクターシステムまたは一種のコネクターシステムを用いて互いに結合することができる。コネクターシステムの特徴と利点の詳細に関しては、前段落を参照のこと。
【0176】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、形状結合式に、摩擦結合式に、および/または材料結合式にもう1つのインプラントと結合できるよう形成されている。好ましくは、支持体は形状結合式にもう1つのインプラントと結合できるように形成されている。例えば支持体は、コネクターシステムまたは一種のコネクターシステムを用いてもう1つのインプラントと結合できるように形成することができる。コネクターシステムは、いわゆるピンと穴の原理に基づくことができる。このために、支持体にピンを設け、もう1つのインプラントには、相補的なピン穴またはスリットを設けることができる。本発明に従って、逆の関係も可能である。
【0177】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は細長い結合要素で互いに結合されている。好ましくは、結合要素はこのために支持体の切欠部または開口部に突き出している。切欠部または開口部の可能な実施形態に関しては、上記の段落を参照のこと。
【0178】
本発明のさらなる実施態様では、骨誘導活性支持体は、インプラントの総重量に対して10~95重量%、特に20~90重量%、好ましくは30~70重量%の割合を有する。
【0179】
本発明のさらなる実施態様では、インプラントは骨代替材料である。
【0180】
第2の態様に従って、本発明は、好ましくは骨欠損の治療および/または生物学的再建、特に内張りおよび/または目張りおよび/または裏打ちおよび/または少なくとも部分的な充填のためのキットに関する。
【0181】
キットは、空間的に互いに分離された
- 骨誘導活性支持体、および
- 骨誘導活性支持体の被覆
からなる。
【0182】
キットは、被覆が、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなることを特徴とする。
【0183】
さらに外科的キットは、固定要素、人工寛骨臼などの人工関節窩、その他の生物学的および/または人工骨代替材料、組織接着剤、生体内で分解されない、または生体内で吸収されないフォイル、生体内で分解されない、または生体内で吸収されない網、金属補強、生体内で分解されない、または生体内で吸収されないフリース、生体内で分解されない、または生体内で吸収されない不織布、柔軟性のある、または柔軟性のない金属格子構造、骨セメント、成長因子、ならびに関節窩および/または支持材を適用するための1つまたは複数の器具からなる群から選択される少なくとも1つの構成要素を含み得る。
【0184】
固定要素は、特に骨ねじまたは骨釘であり得る。
【0185】
組織接着剤は、特にシアノアクリレートモノマー、特にn-ブチル-2-シアノアクリレートモノマーをベースとした硬化性接着剤組成物であり得る。そのような組織接着剤は、例えばHistoacryl(登録商標)の名称で市販されている。
【0186】
その他のキット構成要素の関連で上述した、生体内で分解されない、もしくは生体内で吸収性されないフォイル、網、フリース、不織布、またはその組み合わせ、特に複合構造を用いて、有利な方法で、開放性骨欠損、特に開放性寛骨臼欠損を覆うことができ、それにより結果的に、閉鎖性骨欠損、特に閉鎖性寛骨臼欠損の治療および/または生物学的再建のための条件を作り出すことができる。
【0187】
外科的キットのこの他の特徴および利点に関しては、くり返しを避けるために、本発明の第1の態様における詳述全体を参照のこと。特に被覆、被覆材、および骨誘導活性支持体に関するその詳述は、本発明の第2の態様に従った外科的キットにも(準用して)適用される。
【0188】
第3の態様に従って、本発明は骨誘導活性支持体の被覆に関する。被覆は、水または水を含む液体に溶解する被覆材を含む、またはそのような被覆材からなる。
【0189】
被覆のこの他の特徴および利点に関しては、不要なくり返しを避けるために、本発明の第1の態様における詳述全体を参照のこと。特に被覆、被覆材、および骨誘導活性支持体に関するその詳述は、本発明の第3の態様に従った被覆にも(準用して)適用される。
【0190】
第4の態様に従って、本発明は骨誘導活性支持体を被覆する、水または水を含む液体に溶解する被覆材の使用に関する。
【0191】
水または水を含む液体に溶解する好適な材料に関しては、本発明の第1の態様で開示した溶解性被覆材を参照のこと。そこに記載の溶解性被覆材は、本発明の第4の態様に従った使用のための材料としても考慮される。
【0192】
使用のこの他の特徴および利点に関しては、不要なくり返しを避けるために、本発明の第1の態様における詳述全体を参照のこと。特に被覆および骨誘導活性支持体に関するその詳述は、本発明の第4の態様に従った使用にも(準用して)適用される。
【0193】
第5の態様に従って、本発明は骨欠損の治療および/または生物学的再建、特に内張りおよび/または目張りおよび/または裏打ちおよび/または少なくとも部分的な充填の方法に関する。
【0194】
骨欠損は、好ましくは寛骨臼欠損、特に閉鎖性または開放性の寛骨臼欠損である。
【0195】
方法は、以下のステップを含む。
- 本発明の第1の態様に従って骨欠損部にインプラントを配置するステップ。
【0196】
本発明の実施態様では、方法はさらに以下のステップを含む。
- インパクター、すなわち骨誘導活性支持体を圧縮する、特に詰め込む手術器具を用いて、配置したインプラントに荷重をかけるステップ。
【0197】
本発明のさらなる実施態様では、方法はさらに以下のステップを含む。
- 配置した、特に荷重を受けたインプラントに骨セメントを塗布するステップ。
【0198】
本発明のさらなる実施態様では、方法はさらに以下のステップを含む。
- 人工関節窩、特に人工寛骨臼に被覆を取り付け、人工関節窩、特に人工寛骨臼を被覆に最適に固着/固定させるステップ。
【0199】
本発明のさらなる実施態様では、方法はさらに以下のステップを含む。
- 人工関節窩、特に人工寛骨臼を骨、好ましくは骨欠損部の少なくとも一部を取り囲んでいる骨に固定するステップ。
【0200】
方法のこの他の特徴および利点に関しては、くり返しを避けるために、同様に本発明の第1の態様における詳述全体を参照のこと。インプラント、特に被覆、被覆材、および骨誘導活性支持体に関するその詳述は、本発明の第5の態様に従った方法にも(準用して)適用される。
【0201】
本発明のさらなる特徴および利点は、特許請求の範囲、および実施例に基づく好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。本発明の特徴は、それぞれ個別に、または互いに組み合わせて実現することができる。以下に説明する実施例は、本発明を限定することなく、本発明をさらに説明するためのものである。
【実施例】
【0202】
1.材料:
カルボキシメチルセルロース(Tylopur C)、ポリビニルアルコール(Mowiol 56-98、高分子)、ポリビニルアルコール(Mowiol 4-98、低分子)、注射用蒸留水(WVI)。
【0203】
2.実施:
まず、20%の低分子PVA溶液と20%の高分子PVA溶液をショットフラスコ(Schottflasche)で生成した。これについて、20gの低分子ポリビニルアルコールと80gの注射用蒸留水、および20gの高分子ポリビニルアルコールと80gの注射用蒸留水を別々のショットフラスコに移した。次いで、両混合液を保温庫で、95℃で24時間貯蔵し、完全な溶液にした。その後、3%のカルボキシメチルセルロース溶液(3gのナトリウムカルボキシメチルセルロースと97gの注射用蒸留水)を、実験用ミキサー(実験用ミキサーモデルESCO Typ EL 10)またはホモジナイザーで、真空下(-0.8bar)、35℃、約3~4時間の混合時間で生成した。
【0204】
次いで、低分子PVA溶液と高分子PVA溶液からなる混合液、低分子PVA溶液とカルボキシメチルセルロース溶液からなる混合物、および高分子PVA溶液とカルボキシメチルセルロースからなる混合液を生成した。この混合液の生成は、それぞれ、前述の実験用ミキサーまたはホモジナイザー(最高温度35℃、真空-0.8bar、混合時間:少なくとも2時間)を用いて行った。
【0205】
生成した混合液は、次いで、実験用乾燥機およびフィクサー(Mathis LTF型143691)(約55~60℃、乾燥時間:約25分間)を用いてフォイル状に伸ばした。
【0206】
フォイルの厚さは38~45μmであった。フォイルは20~40秒で水に溶解した。
【0207】
裂け目の大きさに応じて、さまざまな厚さのフォイルを作製した。フォイルの厚さが増すほど、水に溶解するのに時間がかかった。
【0208】
作製した厚さ50~65μmのフォイルは約3~5分間で水に溶解した。
【0209】
作製したフォイルをヒートシーラーで溶着して小袋を作製し、これにまず骨誘導活性支持体を充填した。
【0210】
別法として、例えばn-ブチル-2-シアノアクリレートモノマーをベースとした組織接着剤(Histoacryl(登録商標))のような組織接着剤を用いてフォイルを閉じる溶着工程も考えられる。