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特許7263352サンドイッチ材料を製造するための樹脂吸収量が低下した高温フォーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】サンドイッチ材料を製造するための樹脂吸収量が低下した高温フォーム
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20230417BHJP
   C08J 9/228 20060101ALI20230417BHJP
   B29K 79/00 20060101ALN20230417BHJP
   B29K 81/00 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
B29C44/00 G
C08J9/228 CEZ
B29K79:00
B29K81:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020528467
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018081839
(87)【国際公開番号】W WO2019101703
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-09-24
(31)【優先権主張番号】17203684.0
(32)【優先日】2017-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン トラスル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス リヒター
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025337(JP,A)
【文献】特開平01-263033(JP,A)
【文献】特公昭48-042713(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60;67/20
C08J 9/00-9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンドイッチ材料へとさらに加工するためのHTフォームを製造する方法であって、高温ポリマー(HTポリマー)の粒子を、金型内で、HTフォーム成形品を形成しながら、焼結温度Tで発泡及び焼結させ、続いて金型キャビティを5~120秒間、前記焼結温度を少なくとも10℃上回り、かつHTポリマーのガラス転移温度を最大20℃上回る温度Tに加熱し、ここで、前記HTポリマーのガラス転移温度が210~235℃であることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記HTポリマーの焼結温度Tが140~220℃であり、かつ温度Tが180~255℃であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記HTポリマーの焼結温度Tが145~180℃であり、前記HTポリマーのガラス転移温度が215~230℃であり、かつ温度Tが190~240℃であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金型キャビティを15~90秒間、温度Tに加熱することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記HTポリマーが、ポリエーテルスルホン(PESU)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記HTポリマーが、ポリフェニルスルホン(PPSU)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記HTポリマーが、ポリエーテルイミド(PEI)であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記高温ポリマーの粒子を、前記金型内で、前記HTフォーム成形品を形成しながら、140~180℃の焼結温度Tで、前記金型キャビティの温度Tへの加熱の際に当初に使用された発泡剤少なくとも5質量%がなお前記材料中に存在するように発泡させることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記金型キャビティを5~120秒間、前記焼結温度を少なくとも15℃上回り、かつ前記HTポリマーのガラス転移温度を下回る温度Tに加熱することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記金型を、0.5~5.0mmの粒度を有する予備発泡されていないHTポリマー粒子で、発泡前に充填することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記金型を、1.0~10mmの最大粒度及び30~200kg/mのかさ密度を有する予備発泡されたHTポリマー粒子で、発泡前に充填することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、船舶、鉄道車両及び車両の製造において、殊に2つのカバー層との結合によりサンドイッチ材料へとさらに加工されて使用されるような、高温フォームを製造する分野に関する。そのためには、該軽量構造用のそのようなサンドイッチ部材の製造に特に適している、高温フォーム(HTフォーム)を製造する新種の方法が提供される。この方法を用いて、本発明により製造されるHTフォームの加工性の改善、並びに該サンドイッチ材料の質量軽減が達成される。該HTフォームはさらに、硬質ブロックフォームに比べて明らかにより有利に製造されうる、硬質パーティクルフォームである。
【0002】
本発明において、殊に、繊維複合プロセスの際の樹脂吸収量の低下は、その表面構造のプロセスに制約された最適化により引き起こされる。
【0003】
従来技術
パーティクルフォームは、多数の個々のポリマーフォームビーズからなり、該ビーズは、外形を形作る金型内でエネルギー供給下にその界面で焼結する。それにより、図1に発泡ポリプロピレン(EPP)製の成形品の例で見られるように、特徴的な表面が生じる。明らかに、成形品においても依然として個々のフォームビーズの境界が認められる。
【0004】
そのうえ、プロセスに制約されて、充填過程のために使用される空気の一部が常に該金型キャビティ中に残留し、このことは該フォームビーズ間の空洞をまねく。パーティクルフォーム金型に関する従来技術からは、これらの問題を最小限にする方法が知られている。そして、例えば、構造化された金型表面は、より支配的な構造が該フォーム表面へ刻印されることによって、観測者の眼にその粒子境界をぼやけさせることをもたらしうる。
【0005】
しかしながら、このことは、該成形品がコアとしてサンドイッチ構造に利用されうる場合には、副次的にのみ重要である。ここでは、できるだけ閉じた表面への要望がある。これは実質的な3つの理由を有する:一方では、該(繊維複合材料の)カバー層の表面上への該フォームコア中の欠陥の写し取りを回避しなければならない。この現象は品質上の欠陥とみなされる。さらに、その軽量構造の最大の可能性の利用のために、該コア材料中への樹脂の浸透は、できる限り回避すべきである。最後に、プリプレグカバー層の使用の場合に、該フォーム表面上の空洞への該樹脂の浸透により、該カバー層中のいわゆる“乾いた”箇所のリスクがある。それらは殊に、該樹脂が完全にその隙間へ浸透されており、それによって該繊維の団結が不十分である、該フォームコア表面の箇所である。このことは、荷重下での該カバー層の機械的破壊をまねきうる。
【0006】
これらの問題の解決のために、従来技術によればまず最初に、該フォーム表面を発泡の際に要望通りに変更するために、純粋にその金型製造から得られる解決手段が提供される。図2は、その金型内部空間において多孔質金属挿入物の使用が役立てられる方法を用いて製造された、特徴的な表面を示す。しかしながら、ここでも詳しく見ると、空洞はこの技術により完全に回避できないことが認められる。
【0007】
そのような材料から完全に閉じた表面を実現するために、付加的に、該フォーム粒子焼結の工程の下流のプロセス工程において、該金型キャビティを、該フォームの成形品表面が流動性になり、その際に緻密なスキンが該フォーム上に形成されるような程度に加熱しなければならない。このスキンは、適したプロセス管理の際に完全に閉じており、ひいては液体を通さない。
【0008】
従来技術によれば、ポリプロピレンフォーム(発泡PP、もしくはEPP)に関して、例えば、別個に製造しなければならないインライナーの形の適したコーティング材料の使用が知られている。このインライナーは、該フォームの製造プロセスの過程で溶融される。こうして、該インライナーは、該EPPフォームと結合させることができる。そのような方法は、例えば独国特許出願公開第201020010411号明細書(DE 2010 200 10 411)に記載されている。独国特許出願公開第19640130号明細書(DE 19 640 130)による一変型において、該インライナーから形成されたこのフィルムは、孔があいていてもよく、ひいては蒸気透過性であってよい。発泡ポリスチレン(EPS)又はEPPに限定される、欧州特許出願公開第1155799号明細書(EP 11 557 99)による他の変型において、蒸気処理工程が付加的に実施される。その際に、該成形品表面は溶融し、かつ閉じた表面が達成される。これら全ての方法は、付加的な方法工程及び一部には付加的な装入材料を必要とする。したがって、上述のさらなる技術的挑戦のより単純で代替的な解決手段への大きな技術的需要がさらにある。
【0009】
国際公開第2017/125412号(WO 2017 125412)によれば、該フォーム表面の溶融のために放射エネルギーを利用することもできる。しかしながら、この手法は、プロセス及び安全性に関連した挑戦に基づいて、問題があるとみなさなければならない。
【0010】
課題
したがって、議論された従来技術の背景に対して、本発明の課題は、HTフォームから製造されるパーティクルフォームからなるフォームコアを有するサンドイッチ材料を製造するための、従来技術に対してより単純でより効率的な方法を、該サンドイッチ材料ができるだけ軽く、並びに良好な機械的安定性及びフォームコアとカバー層との間の良好な結合を有するように提供することであった。
【0011】
殊に、課題は、単純かつ高いスループット速度で、できるだけ閉じたフォーム表面を有するHTフォームを製造することができる新規な方法を提供することであった。
【0012】
特に好ましいのは、その際に、該HTフォームを製造する新規な方法が、インモールド発泡法の変更の形で提供することができる場合であろう。この方法は、その際に、迅速かつ低エネルギーで実施可能であるべきである。
【0013】
この箇所ではっきりと議論されないさらなる課題は、従来技術、詳細な説明、請求の範囲又は実施例から明らかになりうる。
【0014】
解決手段
前記課題は、サンドイッチ材料へのさらなる加工に殊に適している、HTフォームを製造する新種の方法によって解決される。本発明による方法はその際に、殊に、高温ポリマーの粒子が、金型内で、HTフォーム成形品を形成しながら、焼結温度Tで発泡及び焼結されることによって特徴付けられている。その際に、該発泡の態様は、必ずしも該高温フォームを製造するための全発泡過程を含まない。むしろ、一方では、ある程度まで予備発泡された粒子を使用することができ、該粒子をさらなる発泡により最終的に本方法において成形品へと焼結させる。さらに、殊に付加的に及びそれ自体として特に好ましくは、焼結温度Tでの発泡は完全に行われるのではなくて、むしろ、さらなる方法においてはじめて完了される。
【0015】
本発明による方法はさらに、目下形成されたフォーム成形品が存在する金型キャビティが続いて、5~120秒間、好ましくは15~90秒間、極めて特に好ましくは60秒まで温度Tに加熱されることによって特徴付けられている。この温度Tは、焼結温度Tを少なくとも10℃上回り、かつ使用されるHTポリマーのガラス転移温度を最大20℃上回る。第2工程での温度作用はその際に、該フォーム部分がつぶれるのを防止するためにできるだけ短いべきであり、これは、当業者には驚くべきことに、示された短い期間内で実現することができる。
【0016】
好ましくは、該HTポリマーの焼結温度Tは、140~220℃、特に好ましくは145~180℃である。該焼結温度はこの際に、双方とも可塑剤として役立つ、含まれる発泡剤及び使用される蒸気の影響により、ベースポリマーと呼ぶこともできるHTポリマーのガラス温度を明らかに下回る。
【0017】
該HTポリマーのガラス転移温度は、好ましくは210~235℃、特に好ましくは215~230℃である。該ガラス転移温度は、ブレンド中に存在するものではないHTポリマーについては、添加剤を含まない及び殊に発泡剤を加えない純粋なポリマーのガラス転移温度であると理解される。ブレンドについては、添加剤を含まない及び殊に発泡剤を加えないポリマー混合物中の1つの層の、相応して測定されるガラス転移温度であると理解される。
【0018】
温度Tは最終的に、好ましくは180~255℃及び特に好ましくは190~240℃である。
【0019】
本方法の特に温和で、それにもかかわらず機能する変型は、該金型キャビティが15~90秒間、該焼結温度を少なくとも15℃上回り、かつ該HTポリマーのガラス転移温度を下回る温度Tに加熱されることによって特徴付けられている。
【0020】
本発明による当該方法は、驚くべきことに、高温パーティクルフォーム及び複合材料カバー層からなるサンドイッチコアの場合の樹脂吸収量の低下をもたらす。この効果は、驚くべきことに、該金型キャビティを、該ポリマーが溶融するが、しかしながらその際に損傷されない程度に加熱することによって実現される。該材料表面上の空洞のほぼ完全な回避はその際に、当業者には結果として予測することができなかった。
【0021】
高温ポリマー(HTポリマー)として、殊に、210℃~235℃のガラス転移温度Tを有するものが適している。より低いガラス転移温度を有する材料は、高温フォームの所望の性質の概要を満たすためにしばしば適していない。それに対して、より高いTを有する材料は、殆ど入手できない。該ガラス転移温度の定義は、本発明によればその際に、材料の最も関連性のある(エネルギー的に最も大きい)熱転移に関する。このことは、該材料が好ましいこの実施態様においても全く、210℃を下回る二次熱転移を有することができることを意味する。これは、例えば相分離系、殊にポリマーブレンド(ポリマー混合物)の場合に生じる。
【0022】
明らかに開示されたガラス転移温度が公知ではない材料については、このガラス転移温度は、DSC(示差走査熱量測定法)によって測定することができる。当業者は、DSCが、最も高いガラス転移温度もしくは溶融温度を最小で25℃上回るが、しかしながらその際に材料の最も低い分解温度を少なくとも20℃下回る温度までの第1の加熱サイクル後に、該材料の試料が少なくとも2分間この温度で保持される場合にのみ、十分に有意義であることを知っている。その後再び、測定すべき最も低いガラス転移温度又は溶融温度を少なくとも20℃下回る温度に冷却され、その際に、該冷却速度は、20℃/分以下、好ましくは10℃/分以下であるべきである。数分間のさらなる待ち時間後に、ついで実際の測定が行われ、その際に、通例10℃/分又はそれ未満の加熱速度で、該試料は、最も高い溶融温度又はガラス転移温度を少なくとも20℃上回るまで加熱される。
【0023】
該DSCのさらなる実施、例えば試料調製に関して、当業者は、DIN EN ISO 11357-1及びISO 11357-2に従って実施することができる。その際に、該DSCは、それ自体として極めて安定な方法であり、その温度プログラムの偏差の場合にのみ、該測定結果におけるより大きな分散をまねきうる。
【0024】
本発明による方法においてHTポリマーとして使用するのに特に適した材料として、ポリエーテルスルホン(PESU)が判明している。PESUは、純粋なポリマーとして、約225℃のガラス転移温度を有する。
【0025】
それとは選択的にかつ同じく好ましくは、HTポリマーとして、ポリフェニルスルホン(PPSU)を使用することができる。この材料は、約220℃のガラス転移温度を有する。
【0026】
本方法の特に好ましい変型において、該HTポリマーは、ポリエーテルイミド(PEI)である。PEIは、約217℃のガラス転移温度を有する。
【0027】
本発明によれば、ブレンドも使用することができ、前記ブレンド中で1つの成分が、例えばそのガラス転移温度が低すぎるために、それ自体として単独では本発明によれば使用できないかもしれない。そのような混合物において、そうすると一方は、単独で取り出されても本発明により使用することができる第2の成分であろう。その際に、好ましくは、本発明によれば使用できるポリマーの割合は、双方のポリマーの混合物の60質量%超、特に好ましくは75質量%超になる。
【0028】
本発明によれば使用できるブレンドのさらなる例は、PPSU及びPESUからなる混合物である。そのようなブレンドは、1:9~9:0.5、好ましくは1:1~8.5:1のPESUとPPSUとの比で使用することができる。
【0029】
該方法を実施するために、さらなる、好ましくは実現されうる態様がある。こうして、温度Tへの加熱フェーズの高温段階を実現するために、多様な可能性を考慮に入れることができる:
一方では、これは、エネルギー伝達媒体、例えば蒸気又は伝熱油が導かれる第2の循環路により実現することができる。その金型構造は、ここでは多様な実現化可能性、例えば該金型キャビティのシェル状構成、該成形品とは反対側の金型面への配管のはんだ付け又は生産的方法、例えば選択的レーザー焼結の使用が知られている。
【0030】
さらに、誘導加熱可能である、挿入物又は内層を該金型内で使用することができる。双方の可能性の利点は、その目標温度への迅速かつ制御された加熱が保証されることである。
【0031】
任意に、付加的に双方の変型において、該表面を迅速に冷却するためのさらなる循環路を付け加えることができる。
【0032】
均質で緻密なカバー層を形成することができるように、フォームから緻密なポリマーへの転移により制約される体積低下は補償されるべきである。確かに、該方法をそのような補償なしで実施することも可能である。しかし、補償を考慮する場合に、質的により価値の高い結果となる。このためにも、異なる可能性がある。
【0033】
任意に、該体積低下は、該金型を閉じることにより実現することができ、それにより、該金型のキャビティ体積は低下される。このことは、該金型の設計の際に考慮されるべきである。当業者は、これに関して、いわゆる“通気性金型”と呼ぶ。
【0034】
しかしながら、より良好かつより単純な変型例は、該フォーム粒子の自己膨張の助けを借りて見ることができる。この自己膨張は、該フォームセル中に含まれる発泡剤により行われる。したがって、該高温ポリマーの粒子が、該金型内で該HTフォーム成形品を形成しながら、140~180℃の焼結温度Tで、該金型キャビティの温度のTへの加熱の際に、当初に使用された発泡剤少なくとも5質量%がなお該材料中に存在するように、発泡されることによる、本発明による方法の実施態様が好ましい。
【0035】
すでに上記で説明したように、本発明によれば、本方法において、予備発泡された粒子も使用することができる。したがって、それから、異なるが同様に好ましい2つの方法変型が明らかになる:
これらのうち第1の方法変型は、該金型が、0.5~5.0mmの粒度を有する予備発泡されていないHTポリマー粒子で、該発泡前に充填されることによって特徴付けられている。
【0036】
これらのうち第2の方法変型は、該金型が、1.0~10mmの最大粒度及び30~200kg/mのかさ密度を有する予備発泡されたHTポリマー粒子で、該発泡前に充填されることによって特徴付けられている。
【0037】
好ましくは、本発明によるフォームは、未発泡の材料に比べてその密度の減少が1~98%、好ましくは50~97%、特に好ましくは70~95%になる発泡度を有する。好ましくは、該フォームは、20~1000kg/m、好ましくは40~250kg/m、殊に好ましくは50~150kg/mの密度を有する。
【0038】
好ましくは、該高温ポリマーの発泡されうる組成物は、該ポリマー自体に加えて、発泡剤0.5~10質量%、好ましくは1~9質量%を有する。さらにまた、とりわけ0~10質量%、好ましくは1~5質量%の添加剤が含まれていてよい。
【0039】
該添加剤は、殊に、難燃添加剤、可塑剤、顔料、帯電防止剤、UV安定剤、造核剤、耐衝撃性改良剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、鎖延長剤、繊維及び/又はナノ粒子であってよい。
【0040】
難燃添加剤として、通例、リン化合物、殊にホスフェート、ホスフィン又はホスフィットが使用される。適したUV安定剤及び/又はUV吸収剤は、当業者に一般に公知である。通例、そのためには、HALS化合物、Tinuvin類又はトリアゾール類が使用される。耐衝撃性改良剤として、通例、エラストマー相及び/又は軟質相を有するポリマー粒子が使用される。それらは、しばしば、コア-(シェル-)シェル粒子であって、それ自体として最大でも弱く架橋されており、かつ純粋なポリマーとして、該PEIと少なくとも最小限の混和性を有するであろう外側シェルを有する。顔料として、原則的に、公知のあらゆる顔料を使用することができる。殊により大量の場合に、もちろん、その発泡過程への影響は―例えば、0.1質量%を上回るより大量で使用される他の全ての添加剤の場合に―調査すべきである。これは、当業者には比較的僅かなコストで実施可能である。
【0041】
適した可塑剤、レオロジー調整剤及び鎖延長剤は、当業者には、一般に、HTポリマー又はHTポリマーを含有するブレンドからのシーティング、膜又は成形品の製造から公知であり、かつ相応して僅かなコストで、本発明による組成物からのフォームの製造に転用することができる。
【0042】
任意に添加される該繊維は通例、ポリマー組成物に添加することができる、公知の繊維材料である。本発明の特に適した実施態様において、該繊維は、PEI繊維、PES繊維、PPSU繊維又はブレンド繊維であり、後者は挙げたポリマーの選択したものからなる。
【0043】
例えばチューブ、小板、ロッド、球として又は公知のその他の形状で存在していてよい、ナノ粒子は、通例、無機材料である。これらは、完成したフォーム中で同時に多様な機能をすることができる。例えば、これらの粒子は部分的に、発泡する際に造核剤として作用する。さらに、該粒子は、その機械的性質、例えば、該フォームの(ガス)拡散特性にも、影響を及ぼすことができる。さらに、該粒子は付加的に、難燃焼性に寄与する。
【0044】
挙げたナノ粒子に加えて、ミクロ粒子又はあまり混和性ではない相分離ポリマーが造核剤として添加されていてもよい。その際に、記載されるポリマーは、その組成を考慮しながら、他の造核剤とは別個に見るべきである、それというのも、他の造核剤は主に、該フォームの機械的性質、該組成物の溶融粘度、ひいては該発泡条件への影響力を及ぼすからである。造核剤としての相分離ポリマーの付加的な作用は、この成分の付加的な所望の効果であるが、しかしながらこの場合に主な効果ではない。この理由から、これらの付加的なポリマーは全体のバランスで、さらに上記で、その他の添加剤とは別個に挙げられる。
【0045】
該添加剤中に、任意に、その物理的性質の調節のためのさらなるポリマー成分9質量%までが含まれていてもよい。前記の付加的なポリマーは、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、殊にPP、ポリエステル、殊にPET、その他のHTポリマー、その中でも殊に硫黄をベースとするポリマー、例えばPSU、PPSU、PESU又はポリ(メタ)アクリルイミドであってよい。
【0046】
該発泡剤の選択は、比較的自由であり、かつ殊に選択された発泡方法、該ポリマーへの溶解度及び発泡温度により、当業者に決定される。適しているのは、例えば、アルコール、例えばイソプロパノール又はブタノール、ケトン、例えばアセトン又はメチルエチルケトン、アルカン、例えばイソ-又はn-ブタン、もしくはイソ-又はn-ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はオクタン、アルケン、例えばペンテン、ヘキセン、ヘプテン又はオクテン、CO、N、水、エーテル、例えばジエチルエーテル、アルデヒド、例えばホルムアルデヒド又はプロパナール、ハイドロ(クロロ)フルオロカーボン、化学発泡剤又はこれらの物質の複数からなる混合物である。
【0047】
該化学発泡剤は、その発泡条件下で化学的に分解され、その際に本来の発泡剤を形成する、あまり揮発性ではないか又は不揮発性の物質である。それらの極めて単純な例は、tert-ブタノールであり、これは発泡条件下でイソブテン及び水を形成する。さらなる例は、NaHCO、クエン酸もしくはそれらの誘導体、アゾジカルボンアミド(ADC)、もしくはそれらから出発する化合物、トルエンスルホニルヒドラジン(TSH)、オキシビス(ベンゾスルホヒドロアジド)(OBSH)又は5-フェニルテトラゾール(5-PT)である。
【0048】
好ましくは、本発明によるパーティクルフォームは、0.4MPaより大きいISO1926による引張強さ、5~15%のISO1926による破断伸び、6MPaより大きい室温でのASTM C273によるせん断弾性率、0.35MPaより大きい室温でのASTM C273によるせん断抵抗、10MPaより大きい室温でのISO 844による圧縮弾性率及び0.3MPaより大きいISO 844による室温での圧縮強さを有する。さらに以下に記載される、該パーティクルフォームを製造する方法の使用の際に、本発明によるガラス転移温度及びセルサイズを維持しながら、これらの機械的性質を遵守することは当業者には容易である。驚くべきことに、さらにまた、本発明によるパーティクルフォームが、航空産業において、殊に航空車両の内部空間における使用のために、重要な、FAR 25.852による防火法規もしくは燃焼特性のもとで適用可能であることも見出された。
【0049】
本発明により製造されるHTフォームは、記載されたように、フォーム成形品もしくはフォームコア複合材料へとさらに加工することができる。これらのフォーム成形品もしくはフォームコア複合材料は、殊に、大量生産において、例えば車体製造のため又は自動車工業における内部被覆のため、鉄道車両製造又は船舶建造における内装部材のため、航空宇宙産業において、機械工学において、スポーツ用具の製造の際、家具製造の際又は風力発電機の建造の際に、使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】従来技術によるパーティクルフォーム成形品の特徴的な表面
図2】従来技術による金型内での多孔質焼結金属の使用による、均質で比較的閉じているが、しかしながら部分的に開いたパーティクルフォーム表面
図3】従来技術によるパーティクルフォーム成形品と、本発明により変更され、それ以外は類似の方法において製造されたパーティクルフォーム成形品との特徴的な表面の比較
【実施例
【0051】
実験を、ポリスルホン(PESU及びPPSU)をベースとするポリマーフォームビーズ及びポリエーテルイミド(PEI)をベースとするポリマーフォームビーズを用いて実施した。該フォームビーズの加工は、Teubert Maschinenbau GmbH社の自動成形装置、型式TVZ162/100を用いて行った。
【0052】
PESUをベースとするパーティクルフォームを、145~165℃の温度範囲内で発泡させ、成形品へと焼結させた。該表面のスキン化を、185~235℃の温度範囲内で行った。
図1
図2
図3