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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】モノリシックの計量セル
(51)【国際特許分類】
   G01G 21/02 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
G01G21/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020533820
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084858
(87)【国際公開番号】W WO2019121350
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】17209294.2
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト,ハンス-ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ブリッシュ,アルネ
(72)【発明者】
【氏名】バルティスベルガー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ロハー,ウルス
(72)【発明者】
【氏名】メッツガー,アンドレアス
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-298463(JP,A)
【文献】特開平05-196492(JP,A)
【文献】特開平09-089643(JP,A)
【文献】特開平02-124433(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00945717(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00518202(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 1/00-23/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行なガイド(105)を有する力伝達デバイス(100)であって、前記平行なガイド(105)が、
移動可能な平行な脚部(101)と、
固定の平行な脚部(102)と、
第1の平行な誘導要素(103)と、
第2の平行な誘導要素(104)と
を備え、
前記平行な脚部(101、102)および前記平行な誘導要素(103、104)が薄肉部の可撓性ベアリング(200)により互いに接続され、
前記移動可能な平行な脚部(101)が前記固定の平行な脚部(102)上で前記平行な誘導要素(103、104)によって誘導され、
前記力伝達デバイス(100)が、前記固定の平行な脚部(102)上に配置される力伝達レバー(401)をさらに有し、前記力伝達レバー(401)が、
レバーベアリング(400)と、
第1のレバーアーム(402)と
を備え、
前記力伝達レバー(401)が前記レバーベアリング(400)上に枢動可能に設置され、その前記第1のレバーアーム(402)が力伝達可能な形で前記移動可能な平行な脚部(101)に接続され、
力伝達可能な接続が、少なくとも1つの別の薄肉部の可撓性ベアリング(300)を有する結合要素(301)によって形成され、
前記力伝達デバイス(100)または前記力伝達デバイス(100)の少なくとも1つの機能領域がモノリシックに形成され、
前記力伝達デバイス(100)の機能領域が、各々の場合において、
前記第1の平行な誘導要素(103)から、
前記第2の平行な誘導要素(104)から、ならびに/あるいは、
前記力伝達レバー(401)から、および/または前記結合要素(301)から、
さらに、各々の場合において、隣接するベアリング部(200、300、400)から、
構成される、
力伝達デバイス(100)において、
前記力伝達デバイス(100)または前記機能領域のうちの少なくとも1つの機能領域が少なくとも1つの第1の材料から構成されること、および前記力伝達デバイス(100)の前記ベアリング(200、300、400)のうちの少なくとも1つのベアリング部が第2の材料から構成されること、を特徴とする、
力伝達デバイス(100)。
【請求項2】
請求項1に記載の力伝達デバイスであって、
前記第2の材料が、前記第1の材料から形成される前記力伝達デバイス(100)または前記機能領域の中に少なくとも部分的に埋設される、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の力伝達デバイスであって、
少なくとも1つの別のベアリング(200、300、400)が別の材料から構成される、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項4】
請求項に記載の力伝達デバイスであって、
前記第1の平行な誘導要素(103)および/または前記第2の平行な誘導要素(104)が前記第1の材料から構成され、前記薄肉部の可撓性ベアリング(200)が前記第2の材料または前記別の材料から構成される、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項5】
請求項3または4に記載の力伝達デバイスであって、
前記力伝達レバー(401)および/または前記結合要素(301)が前記第1の材料から構成されること、ならびに前記レバーベアリング部(400)および/または前記結合要素(301)の前記別の薄肉部の可撓性ベアリングが前記第2の材料または前記別の材料から構成されること、を特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項6】
請求項から5のいずれか一項に記載の力伝達デバイスであって、
前記第2の材料および/または前記別の材料が非結晶金属であり、有利には、ジルコニウム-チタン・ベースの化合物の非結晶金属である、力伝達デバイス。
【請求項7】
請求項から6のいずれか一項に記載の力伝達デバイスであって、
部(210、310、410)の外形が、前記第2の材料または前記別の材料で作られる前記ベアリング部(200、300、400)を、フォームフィットにより、前記第1の材料の中に固定して配置することになるように、設計される、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項8】
請求項に記載の力伝達デバイスであって、
前記凹部(210、310、410)の形状が、平行に延在する少なくとも3つの重なり合うボアホール(211、212、213、311、312、313、411、412、413、414)に相当する、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項9】
請求項8に記載の力伝達デバイスであって、
前記ボアホール(211、212、213、311、312、313、411、412、413、414)のアラインメントが、それらに対応して形成されることになる、前記平行なガイド(105)の前記薄肉部の可撓性ベアリング(200);前記力伝達デバイス(401)の前記レバーベアリング(400);および/または、前記結合要素(300);ならびに/あるいは前記結合要素(300)の前記薄肉部の可撓性ベアリング(301)、に平行にまたはそれらに対して垂直に延在する、ことを特徴とする、力伝達デバイス。
【請求項10】
モノリシックに形成される力伝達デバイス(100)、または力伝達デバイス(100)の少なくとも1つのモノリシックに形成される機能領域を製作するための方法であって、
前記力伝達デバイス(100)が平行なガイド(105)を備え、前記平行なガイド(105)が、
移動可能な平行な脚部(101)と、
固定の平行な脚部(102)と、
第1の平行な誘導要素(103)と、
第2の平行な誘導要素(104)と
を有し、
前記平行な脚部(101、102)およびお前記平行な誘導要素(103、104)が薄肉部の可撓性ベアリング(200)により互いに接続され、
前記移動可能な平行な脚部(101)が前記固定の平行な脚部(102)上で前記平行な誘導要素(103、104)によって誘導され、
前記力伝達デバイス(100)が、前記固定の平行な脚部(102)上に配置される力伝達レバー(401)をさらに備え、前記力伝達レバー(401)が、
レバーベアリング(400)と、
第1のレバーアーム(402)と
を有し、
前記力伝達レバー(401)が前記レバーベアリング(400)上に枢動可能に設置され、その前記第1のレバーアーム(402)が力伝達可能な形で前記移動可能な平行な脚部(101)に接続され、
力伝達可能な接続が、少なくとも1つの別の薄肉部の可撓性ベアリング(300)を有する結合要素(301)によって形成され、
前記力伝達デバイス(100)の機能領域が、各々の場合において、
前記第1の平行な誘導要素(103)から、
前記第2の平行な誘導要素(104)から、ならびに/あるいは
前記力伝達レバー(401)から、および/または前記結合要素(301)から、
さらに、各々の場合において、隣接するベアリング部(200、300、400)から、
構成され、
前記方法が以下のステップ:
A)第1の材料で作られるブランクを提供するステップ;
B)少なくとも、ベアリング部(200、300、400)を載置するところにおいて、提供されるブランクに凹部(210、310、410)を製作するステップ;
C)第2の材料を使用して、ステップBで製作された前記凹部(210、310、410)を充填するステップ;
D)前記第1の材料および/または前記第2の材料を機械により除去することにより、ステップCで充填された凹部(210、310、410)を備える前記ブランクを再加工するステップ;ならびに、
E)力伝達デバイス(100)を、または少なくとも、前記少なくとも1つの機能領域を、前記第1の材料で形成することになるように、および前記力伝達デバイス(100)の前記少なくとも1つのベアリング部(200、300、400)を前記第2の材料から形成することになるように、前記充填された凹部(210、310、410)のところで前記少なくとも1つのベアリング部(200、300、400)を露出するステップ
を含む、
方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
ステップBおよびCの間で、追加的に、表面処理が前記凹部(210、310、410)の領域で実施される、ことを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法であって、
ステップCにおいて、前記提供されたブランク上の前記凹部(210、310、410)が未完成の構成要素を使用して充填され、具体的には、充填することになる前記構成要素が積層造形され、特には、前記構成要素が、粉末床法のレーザビーム溶融によって製造される、ことを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の方法であって、
前記少なくとも2つの材料のうちの2つの材料の間の移行ゾーンの後処理がステップCおよびDの間で追加的に実施される、ことを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項10から13のいずれか一項に記載の方法であって、
前記凹部(210、310、410)が、ステップCで、鋳造、フォーミング、またはニーディングにより、充填される、ことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記表面処理が、表面のエッチング(酸洗い)および/またはコーティング、ならびに/あるいはミクロ組織の適用である、ことを特徴とする、方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、
前記移行ゾーンの前記後処理が、前記移行ゾーンにおいて一体的に結合される材料の接合を実現するのを保証する局所的な熱導入であること、あるいは、前記後処理が、前記第1の材料と前記第2の材料または前記別の材料との間に可能性として存在する中間的空間の中に入り込むような低粘度接着剤の塗布であること、を特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、平行なガイドを有する少なくとも部分的にモノリシックに構築される力伝達デバイスと、例えばはかりなどの、力測定デバイスのための平行なガイドを有する少なくとも部分的にモノリシックに構築される力伝達デバイスを製作するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 冒頭部分で言及した種類の既知のデバイスは例えばEP0518202A1に開示されており、このようなデバイスは、力導入部分のための平行なガイドと一体的に形成されており、この力導入部分は、力伝達レバーの連結部への、測定されるべき力の導入ために使用される。このようなデバイスは、とりわけ、一体的に形成されることで、別個に形成される湾曲箇所により個別の部品を相互に接続するためのすべての組み立て手順を省くことから、有利である。ねじ接続部の予張力による経年劣化およびそれに関連する問題もなくなる。さらに、一体的に形成されることを理由として、デバイスのすべての箇所において材料特性が等しく、したがって異なる材料特性に起因する欠陥がなくなる。
【0003】
[0003]一体的に(モノリシックに)形成される力伝達デバイスの材料により、ばね剛性、引張・圧力抵抗、弾性率、弾性率の温度係数、非弾性(クリープとしても知られる)、および直線性、などの、特性に関して、平行なガイド、連結部、および力伝達レバーの、薄肉部の可撓性ベアリング(thin-point flexional bearing)(湾曲ベアリング(bending bearing)またはベアリング部とも称される)の挙動が決まる。また、厚さおよび形状(断面)に関してのおよび(断面に対して垂直である)幅に関してのベアリング部の設計は、力伝達デバイスのために使用される材料によって決定される。したがって、ベアリング部が分析はかりのパワー特性データを実質的に決定する。
【0004】
[0004]高分解能・低荷重の分析はかりおよびマイクロスケール(microscale;微量天びんとも呼ぶ)は、可能な限り低いばね剛性を有する薄肉部の可撓性ベアリング(flexional bearing;可撓性支持部とも言う)を必要とする。その理由は伝達比が低く、したがって薄肉部の可撓性ベアリングの復元力が力の測定により大きく影響するからである。言い換えると、薄肉部の可撓性ベアリングのばね剛性が低いことで計量セルの分解能が向上する。薄肉部の可撓性ベアリングのばね剛性は材料の断面および弾性率によって決定される。特別なアルミ合金を使用してこの薄肉部の可撓性ベアリングを高い信頼性で大量生産するときの限界値は約0.07mmである。これにより、不都合なことに、製作中および組み立て中の取り扱い時にダメージから保護することが必要となる。完成したはかりを顧客のところまで移送するとき、力伝達デバイスははかりの大きいパッケージおよび移送用安全装置によって保護される。
【0005】
[0005]多部品の(多部品から構成される)力伝達デバイスとは対照的に、材料が、力伝達デバイスの一領域の機能的タスクのための必要条件に対して最適に適合され得ない。したがって、剛体部品を形成する実際のブロックのための最適な材料と、それぞれの部品を移動可能に接続する薄肉部と、の間で常に妥協点を見つける必要がある。機械によって良好に加工され得したがって製作を短縮および単純化することができるような、および、最小限の耐食性を有するようなつまり高品質の製品材料ではないような、コスト効率の高い材料がこのブロックのための理想的な材料であると考えられる。さらに、薄肉部には、理想的な材料自体に兼ね備えられる必要がある他の特性も必要となる。一方において、低い弾性率が、等しいひずみ上限値において、薄肉部の可撓性ベアリングの断面を可能な限り小さく維持するのを可能にする(引張強度が高い)ことを保証する。また、弾性率の温度係数がゼロに等しいかまたはほぼゼロであることが重要である。これは、弾性率がその温度とは無関係に特徴付けられるということを意味する。多部品の力伝達デバイス内のベアリング部のための一般的な材料は、銅-ベリリウム合金、またはVacuumschmelze GmbH&Co.KG.の商標Thermelast4002で知られている材料である。
【0006】
[0006]薄肉部の可撓性ベアリングのための対象となる1つの材料はバルク金属ガラス(BMG:bulk metallic glassと略す)(非結晶金属とも称される)であり、これはある種の金属合金であり、その微細構造が非結晶であり、非晶質である。結晶核形成および核成長が溶融合金の急速冷却によって抑制され、したがって非結晶構造が固相において準凍結(quasi-frozen)となる。BMGは、通常、従来の金属より高い硬度、強度、および耐食性を有し、同時に比較的低い弾性率を有する。
【0007】
[0007]主にジルコニウムベースのガラスを供給する会社Liquidmetal Technologiesが非結晶金属の商業利用のパイオニアである。他の供給業者としてYKKおよびAdvanced Metal Technologyがある。現在、非結晶金属は、高い抵抗性(耐摩耗性)および良好な腐食特性を必要とするようないくつかの特定分野にのみ適用されている。現在の用途の例として以下のものがある:携帯電話のハウジング部品、外科用メス、ゴルフクラブおよびテニスラケットなどのスポーツ用具、および宝石、腕時計ケース。
【0008】
[0008]非結晶金属のための加工テクノロジの分野における、また具体的には非結晶金属の熱可塑性的な形成のための方法における、最新の開発状況により、これらの材料が有利には分析はかりおよびマイクロスケールの中の多部品の荷重セルのための弾性ベアリングとして使用され得ることが現実的であると考えられるようなっている。これらの材料が計量セルで使用されることで、衝撃および過負荷に対しての抵抗を向上させること、さらには、直線性を向上させること、および荷重によるドリフト挙動を低減することが期待される。これらのベアリングは、例えばDE19845023A1に示されるような多部品で組み立てられる力伝達デバイスに従来使用された湾曲ベアリング要素の代わりとなりうるものである。非結晶材料で作られる弾性ベアリングを有する多部品の荷重セルはこれまで市場に出ていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009]本発明の1つの目的は、非結晶金属の材料特性をモノリシックの力伝達デバイスにも使用され得るようにすることである。概して、本発明の目的は、ベアリング部のところおよび「ブロック」のところの材料を互いに独立して意図される通りに適合させること、ならびに同時に、力伝達デバイスの全体または力伝達デバイスの少なくとも機能領域のいずれをモノリシックに設計しているかにかかわらず、モノリシック構造を維持すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[0010]この課題が平行なガイドを有する力伝達デバイスによって解決され、この平行なガイドが、移動可能な平行な脚部と、固定の平行な脚部と、第1の平行な誘導要素と、第2の平行な誘導要素とを備える。平行な脚部および平行な誘導要素は薄肉部の可撓性ベアリングによって互いに接続される。移動可能な平行な脚部は固定の平行な脚部上で平行な誘導要素によって誘導される。力伝達デバイスは、さらに、固定の平行な脚部上に配置される力伝達レバーを有する。力伝達レバーはレバーベアリングおよび第1のレバーアームを備える。力伝達レバーはレバーベアリング上に枢動可能に設置され、その第1のレバーアームが力伝達可能な形で移動可能な平行な脚部に接続される。ここでは、力伝達可能な接続が、別の薄肉部の可撓性ベアリングを有する結合要素によって確立される。力伝達デバイスまたは力伝達デバイスの少なくとも機能領域はモノリシックに形成される。力伝達デバイスの機能領域は、各々の場合において、第1の平行な誘導要素から、第2の平行な誘導要素から、ならびに/あるいは、力伝達レバーかおよび/または結合要素から、さらに、それぞれの隣接するベアリングポイントから、構成される。
【0011】
[0011]本発明は、力伝達デバイスまたは機能領域のうちの少なくとも1つの機能領域が少なくとも1つの第1の材料から構成されること、および力伝達デバイスのベアリング部のうちの少なくとも1つのベアリング部または少なくとも1つの機能領域が第2の材料から構成されること、という特色を有する。
【0012】
[0012]既に上で説明したように、機能領域が力伝達デバイスの機能要素から構成され、この機能要素が所定の機能を有し、例えば、固定の平行な脚部から所定の距離のところで移動可能な平行な脚部を移動可能に誘導する平行な上側誘導要素である。平行な下側誘導要素と併せて、これらの4つの要素が力伝達デバイスの平行四辺形を形成する。各機能領域がさらに、機能要素に隣接するベアリング部から構成され、これらのベアリング部が最も近い機能要素への接続を確立する。
【0013】
[0013]ベアリング部は、力伝達デバイス上に設けられる適切な名称を有する多様な枢動箇所として理解されるものである。平行四辺形を画定する枢動箇所が、しばしば、薄肉部の可撓性ベアリングと称され、力伝達レバーにより伝達比を画定するところの枢動箇所がレバーベアリングと称される。さらに、湾曲ベアリングが、移動可能な平行な脚部と力伝達レバーの第1のレバーアームとの間の力伝達箇所の中の薄肉部である。一変形形態では、ここに介在する要素(連結部とも称される)が、上記湾曲ベアリングのうちの2つの湾曲ベアリングを介して、一方において、移動可能な平行な脚部に接続され、もう一方において、力伝達レバーの第1のレバーアームに接続される。別の変形形態では、移動可能な平行な脚部が、この湾曲ベアリングを介して、力伝達レバーの第1のレバーアームに直接に接続される。
【0014】
[0014]力伝達デバイスが全体としてモノリシックに形成され得るか、または少なくとも部分的にその機能領域のところでモノリシックに形成され得る。この事例では機能領域に関して、考えられる組み合わせが非常に多様に存在し、その結果、例えば、平行な誘導要素がベアリング部と併せてモノリシックに形成され、ベアリング部がさらに例えばねじ接続により各々が平行な脚部の上に取り付けられる。別の組み合わせが、薄肉部の可撓性ベアリングを含む平行四辺形の全体をモノリシックに形成することと、多部品の力伝達デバイスの中にあるような力伝達レバーの機能領域を据え付けることと、からなる。逆も同様であり、力伝達レバーの機能領域がモノリシックに構築されて次いで多部品の力伝達デバイスの平行四辺形の中に据え付けられてもよい。
【0015】
[0015]本発明により多くの利点が得られる。一つには、同様の必要条件を満たすように、ベアリング部の断面が適合され得、および/または縮小され得、それによりばね剛性が低減される。ベアリングのばね剛性が低いことで計量セルの分解能が向上する。
【0016】
[0016]しかし、逆に断面が一様であると堅牢性が向上する。より高い安定性を有する接合部により堅牢性が向上することでまたは計量セルの衝撃に対しての抵抗が向上することで、断面が同じである場合、移送中の安定性を向上させることができ、この目的のために必要であるパッケージング費用を低減することができる。簡単に言うと、新しい種類の計量セルの開発のための設計の幅が広がる。
【0017】
[0017]本発明の一改良形態では、第2の材料が、第1の材料から形成される力伝達デバイスまたは機能領域の中に少なくとも部分的に埋設される。ここでの意味の「部分的に埋設される」は、保護される形でまたは嵌め込まれる形で第2の材料が第1の材料の中で部分的に包囲される、つまり、第2の材料が周辺部の中に位置するかまたは周辺部の中に挿入されるか、あるいはより大きい統一体に組み込まれるかまたは一体化される、ことを意味するものとして理解される。
【0018】
[0018]一改良形態では、少なくとも1つの別のベアリング部が別の材料で作られる。既に上で言及したように、本発明の目的は、ベアリング部のところのおよび力伝達デバイスの大部分のところの材料を仕様に適合させることである。したがって、すべてのベアリング部のところで最も適切な材料が使用され得る。
【0019】
[0019]1つのデザインが、第1の平行な誘導要素および/または第2の平行な誘導要素が第1の材料から構成されること、ならびに薄肉部の可撓性ベアリングが第2の材料または別の材料から構成されることを特徴とする。
【0020】
[0020]別のデザインでは、力伝達レバーおよび/または結合要素が第1の材料から構成されること、ならびにレバーベアリングおよび/または結合要素の別の薄肉部の可撓性ベアリングが第2の材料または別の材料から構成されることを特徴とする。
【0021】
[0021]一改良形態では、第2の材料および/または別の材料が非結晶金属である。非結晶金属が、有利には、ジルコニウム-チタン・ベースの化合物である。ジルコニウム-チタン・ベースの化合物が、例えば、Zr-Ti-Cu-Ni-Be、Zr-Ti-Cu-Ni-Al、またはZr-Cu-Ni-Al-Nbである。さらに、マンガンベースの、銅ベース(Cu-Ni-Co)の、鉄ベース(Fe-Co-Zr-Nb-B)の、または白金などの貴金属ベース(Pt-Cu-Ni-P)の、非結晶金属が存在する。さらに、チタンおよび硫黄(Ti-S)で作られる、つまり地球上に多く存在して工業的に良好に使用され得る元素で作られる適切な化合物が存在する。その理由は、チタンおよび硫黄で作られる非常に軽量の合金が、チタンベースの一般的な金属のほぼ2倍の強度を有するからである。ジルコニウムベース、パラジウムベース、または白金ベースの非結晶金属とは対照的に、チタンは硫黄と同様に比較的コスト効率が高く、また、これまでこのような合金で高い頻度で使用されてきたベリリウムまたはリンなどの元素のような高い毒作用を有さない。したがって、各々が異なる特性を有する非常に多くの特別な合金が存在する。また、その特性に基づいて第2の材料または別の材料として適切であるような別の合金もそのうち開発されることになると考えることができる。一般に、非結晶金属は、その直線性の範囲が大きいことと、非弾性のレベルが高いこと、およびヒステリシスのレベルが低いことを理由として、特に良好に適する。
【0022】
[0022]一改良形態では、凹部の外形が、第2の材料または別の材料で作られるベアリング部を、フォームフィット(ぴったりと嵌め合わせること)により、第2の材料または別の材料を囲む第1の材料の中に固定して配置することになるように、設計される。このようなフォームフィットは凹部のデザインによって達成され得、例えば、例として、フライス加工、鋳造、または放電加工のいずれかにより、第1の材料の中に導入される特別に形成されるポケットによって達成され得る。
【0023】
[0023]別の一改良形態では、少なくとも1つの凹部の形状が、平行に延在する少なくとも3つの重なり合うボアホール(穿孔)に相当する。
[0024]有利な一改良形態では、ボアホールのアラインメント(列)が、それらに対応して形成されることになる、平行なガイドの薄肉部の可撓性ベアリング;力伝達レバーのレバーベアリング;および/または結合要素;ならびに/あるいは結合要素の薄肉部の可撓性ベアリングに平行にまたはそれらに対して垂直に延在する。さらに、形成されることになる薄肉部の可撓性ベアリングの向きとは異なる角度で延在するか、または形成されることになる薄肉部の可撓性ベアリングの向きに対して垂直の角度で延在する、すなわち傾斜しているアラインメントを有するようなボアホールも可能である。
【0024】
[0025]力伝達デバイスが、モノリシックに形成される力伝達デバイス、または力伝達デバイスの少なくとも1つのモノリシックに形成される機能領域を製作するための本発明による方法によって製作される。力伝達デバイスは平行なガイドを有し、平行なガイドが、移動可能な平行な脚部と、固定の平行な脚部と、第1の平行な誘導要素と、第2の平行な誘導要素とを備える。平行な脚部および平行な誘導要素は薄肉部の可撓性ベアリングによって互いに接続される。移動可能な平行な脚部は固定の平行な脚部上で平行な誘導要素によって誘導される。力伝達デバイスはさらに、固定の平行な脚部上に配置される力伝達レバーを備え、力伝達レバーがレバーベアリングおよび第1のレバーアームを有する。力伝達レバーがレバーベアリング上に枢動可能に設置され、その第1のレバーアームが力伝達可能な形で移動可能な平行な脚部に接続される。ここでは、力伝達可能な接続が、少なくとも1つの別の薄肉部の可撓性ベアリングを有する結合要素によって確立される。力伝達デバイスの機能領域が、各々の場合において、第1の平行な誘導要素から、第2の平行な誘導要素から、あるいは、力伝達レバーからおよび/または結合要素から、さらに、それぞれの隣接するベアリング部から、構成され、上記方法が以下のステップ:A)第1の材料で作られるブランク(半加工品)を提供するステップ;B)少なくとも、ベアリング部を載置するところにおいて、提供されるブランクに凹部を製作するステップ;C)第2の材料を使用して、ステップBで製作された凹部を完全に充填するステップ;D)第1の材料および/または第2の材料を機械により除去することにより、ステップCで充填されている凹部を備えるブランクを再加工するステップ;ならびに、E)力伝達デバイスを、または少なくとも、少なくとも1つの機能領域を、第1の材料から形成することになるように、および力伝達デバイスの少なくとも1つのベアリング部または少なくとも1つの機能領域を第2の材料から形成することになるように、充填されている凹部のところで少なくとも1つのベアリング部を露出するステップ、を含む。
【0025】
[0026]本発明の方法により、力測定デバイスのための製作プロセスが簡単になる。「ブロック」のための理想的な材料を選択することによりブロックをより迅速に機械加工できるからである。ベアリング部の堅牢性が向上することで組立体における取り扱い時のエラーを減少させることができ、それにより廃棄される製品の数を減少させることができる。
【0026】
[0027]ブランクの提供は、鋳造または押し出し成形によっても実施され得る。ステップAおよびBならびに/あるいはCは組み合わせで実行されてもよく、例えば、鋳造中に凹部がすでに製作されていてもよいか、または押し出し成形(2つの部品の押し出し成形)中に同時に第2の材料が導入されていてもよい。
【0027】
[0028]この方法の一改良形態が、凹部の領域の表面処理がステップBおよびCの間で追加的に実施されることを特徴とする。例えば、これは、鋳造したブランクの再加工、および/または表面のエッチング(ピックリング(酸洗い))もしくはコーティング、ならびに/あるいはミクロ組織の適用、であってよい。一般に、このようにして、第2の材料および/または別の材料に対して第1の材料を機械的に接合することが改善される。
【0028】
[0029]この方法の別の改良形態が、ステップCにおいて、提供されたブランク上の凹部が未完成の構成要素を使用して充填され、ここでは、塞ぐことになる構成要素が積層造形で製造され、特には粉末床法のレーザビーム溶融によって製造される、ことを特徴とする。
【0029】
[0030]この方法の別の改良形態が、少なくとも2つの材料のうちの2つの材料の間の移行(又は遷移)ゾーンの後処理がステップCおよびDの間で追加的に実施される、ことを特徴とする。これは、例えば、一体的な材料の接合を移行ゾーンにおいて実現するような局所的な熱導入(例えば、レーザによる)によって実行され得るか、あるいは、第1の材料と第2の材料または別の材料との間に可能性として存在する中間的空間の中に入り込むような低粘度接着剤(例えば、シアン化物に基づくものであるか、またはUV光による硬化に基づくものである)によって実現され得る。移行ゾーンの外側の材料の特別な特性を維持しながら接合を安定させることにより利益が得られ、つまりこの材料ではBMGのガラス温度を超えることがなく、特性が維持される。
【0030】
[0031]この方法の別の改良形態では、凹部(210、310、410)が、鋳造、フォーミング(成形)、またはニーディングにより、充填される。
[0032]同一の要素が同じ参照符号を有している以下の図に基づいて本発明による力伝達デバイスをより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1a】モノリシックの力伝達デバイスを示す側面図である。
図1b】モノリシックに形成される平行な誘導要素を示す三次元図である。
図1c】モノリシックに形成される平行四辺形を示す上面図である。
図2a】薄肉部の可撓性ベアリングに平行に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2b】薄肉部の可撓性ベアリングに平行に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2c】薄肉部の可撓性ベアリングに平行に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2d】薄肉部の可撓性ベアリングに対して垂直に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2e】薄肉部の可撓性ベアリングに対して垂直に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2f】薄肉部の可撓性ベアリングに対して垂直に延在するボアホールのアラインメントを有する、図1の力伝達デバイスの平行四辺形の薄肉部の可撓性ベアリングの領域を示す詳細図である。
図2g】ベアリング部のところの材料が置き換えられた状態の、図1bのモノリシックに形成される平行な誘導要素を示す図である。
図3図3aは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。図3bは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。図3cは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。図3dは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。図3eは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。図3fは、図1の力伝達デバイスの結合要素の領域を示す詳細図である。
図4図4aは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4bは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4cは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4dは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4eは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4fは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4gは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4hは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。図4iは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリングの領域を示す詳細図である。
図5図5aは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリング/結合要素/薄肉部の可撓性ベアリングの、領域を示す詳細図である。図5bは、図1の力伝達デバイスのレバーベアリング/結合要素/薄肉部の可撓性ベアリングの、領域を示す詳細図である。
図6図6aは、凹部を塞ぐための射出デバイスを示す図である。図6bは、凹部を塞ぐための射出デバイスを示す図である。
図7図7aは、塞がれた凹部を示す断面図である。図7bは、塞がれた凹部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0033]図1aが、移動可能な平行な脚部101と、固定の平行な脚部102とを有する既知の力伝達デバイス100を示す。2つの平行な脚部101、102が第1の平行な誘導要素103および第2の平行な誘導要素104によって互いに接続され、薄肉部の可撓性ベアリング200によって移動可能に誘導される。同じ材料の一部片で作られる力伝達デバイス100のこのようにして形成される平行なガイド105(平行四辺形とも称される)もモノリシック構造であることが分かる。
【0033】
[0034]力伝達デバイス100の別の要素も同じ材料のブロックの中にモノリシックに形成され、これらの別の要素は例えば、結合要素301およびその薄肉部の可撓性ベアリング300、さらには、レバーベアリング400および力伝達レバー401である。ここでは、これらの要素のすべてが、図1aでは、適合する形で選択されるワイヤによる誘導により、ワイヤ腐食(または、浸食)法(wire erosion method)によって形成されている。これらの要素の形成はフライス加工または放電加工によっても実施され得る。ここでは結合要素300の領域におけるような追加の成形手順106が、力伝達デバイス100の幅を狭めるのを実施する。このような成形手順が、特定の機械的利点を得ることを目的として、レバーベアリング400および平行なガイド105の薄肉部の可撓性ベアリング200の分野で知られており、これらの特定の機械的利点は、成形自体の寸法決定のみに起因する所定の質量によって決定される。
【0034】
[0035]材料に関しての機械的利点も得ることを目的として、これらのところの材料を、力伝達デバイス100の第1の材料とは異なる第2の材料から構成することが提案される。
【0035】
[0036]冒頭で説明したように、非結晶金属は、それらの材料特性を理由として、この目的に特に良好に適する。多部品の力伝達デバイスでは、別個の構成要素であることから、薄肉部の可撓性ベアリングにこれまで使われていた材料を非結晶金属に置き換えることが比較的簡単である。この点に関しては一体の構造(またはさらに、モノリシック構造)は大幅に複雑となり、少なくとも2つの異なる材料を用いて本発明による力伝達デバイス100の実装は製作において高価となる。
【0036】
[0037]図1bが、モノリシックに形成される機能領域として平行な誘導要素103(平行な誘導要素104であってもよい)を示す。薄肉部の可撓性ベアリング200が、各々の場合において、平行な誘導要素103上の上側端部および下側端部のところに配置される。機能領域が各々の側で、固定用孔107により、移動可能な平行な脚部101および固定の平行な脚部102(外形が破線によって示される)にそれぞれ接続される。
【0037】
[0038]図1cでは、モノリシックに設計される平行なガイド105が、平行な脚部101および102と、平行な誘導要素103および104と、薄肉部の可撓性ベアリング200とによって形成される機能領域として示される。
【0038】
[0039]モノリシックの力伝達デバイス100を製作するための方法を図2aから2cに基づいて説明する。半完成品(blank;ブランク)が提供され、そのようなものから最終的に完成の力伝達デバイス100が作り出される。つまり、適切なサイズとなるように切削されるか、フライス加工されるか、あるいは必要である可能性のある余剰部分(excess;ゆとり)を備えた外形寸法に鋳造される。また、上で言及した形状106はこのステップで仕上げられるか、例えばダイカスト法により製作されるブランクの場合と同様に余剰部分を備えて作り上げてもよい。
【0039】
[0040]図2aに示されるように、最初に、ここでは特には、少なくとも、平行なガイド105の薄肉部の可撓性ベアリング200を載置するところにおいて、凹部210が形成される。図2aでは、この凹部210が、一直線上に配置される3つの重なり合うボアホール211、212、213によって形成される。
【0040】
[0041]次いで、すでに形成された凹部210が第2の材料を使用して充填される。凹部210を塞ぐための1つの考えられる方法が図6aおよび6bに関連して後で説明される。凹部210の中の完全に導入された第2の材料が図2bではハッチングによって強調されて示される。
【0041】
[0042]ここでは、平行なガイド105の薄肉部の可撓性ベアリング200の領域内の、一体の構造であることを特徴とする接続部(またはさらに、材料ブリッジ)が、充填を完了した後で、加工される。薄肉部の可撓性ベアリング200の接合部の形成(露出とも称される)が、ワイヤ腐食(erosion;浸食とも言う)、放電加工、ECM(Electro Chemical Machining(電解加工))、あるいはフライス加工および/または高速フライス加工によって実行され得る。図2cでは、薄肉部の可撓性ベアリング200が、分離用の切断箇所221、222のところで認識され得るように、ワイヤ腐食によって形成されている。これらの分離用の切断箇所は図2aおよび2bでは破線によって示される。凹部210自体の周りにある、凹部210を製作するのに必要となる材料も除去され得る。
【0042】
[0043]力伝達デバイスを使用するときに生じる影響に耐えることが可能である限りにおいて、つまり、第2の材料が十分な強度で定位置で保持される限りにおいて、凹部210は多様な形状で形成されてよい。
【0043】
[0044]薄肉部の可撓性ベアリング200のための凹部を形成するための別の選択肢および/または配置が図2dから2fに示される。図2aから2cでは3つのボアホール211、212、213が分離用の切断箇所221および222に平行に延在するが、図2cから2fのボアホール211’、212’、213’が分離用の切断箇所221、222に対して垂直に延在する。3つの図2dから2fの各々が、2つの部分図(上面図および側面図)から構成される。この選択肢では、凹部210’が力伝達デバイス100の第1の材料によって周囲全体にわたって包囲されるようにするために、薄肉部の可撓性ベアリング200の位置には、余剰部分230が必要とされる。充填した後、露出中にこの余剰部分230が除去され、薄肉部の可撓性ベアリング200にその最終的な形状が備わる。
【0044】
[0045]諸材料を組み合わせる場合、材料境界のところで、融解、混合、または接合が行われず、つまり材料の接合(一体的な接合)が実現されないことがあり、その結果、充填材料が極めて速くに剥離することがある。この場合、凹部210、210’の形状が定まっていることから、フォームフィット(form fit;ぴったりとはまっている状態)が実現される。第2の材料または別の材料に置き換えたところの領域内に生じる力の作用方向に応じて、凹部のアラインメントが決定される。ボアホール211、212、213、211’、212’、213’の方向が適性に影響することに加えて、ねじ切りされたボアホールを有する別の実施形態が有利である場合もある。その理由は、ねじ切りされたボアホールは拡大した接触面を提供するからである。また、ここでは、その表面自体の上にあるミクロ組織も接触面を拡大するのに適することに留意されたい。
【0045】
[0046]ベアリング部200(ハッチングされた部分)のところに置き換えられた材料を有する図1bのモノリシックに形成される平行な誘導要素103が図2gに示されている。平行な誘導要素103の第1の材料とベアリング部200の第2のまたは別の材料との間の材料境界のところに特別な外形を有することにより、フォームフィットが実現される。この機能領域は、例えば、第1のステップで、ブランクとして平行な誘導要素103の厚さに対応するプレートを提供することにより、製作され得る。次いで、凹部がプレート内に製作され、この凹部が、任意の前処理の後で、第2のまたは別の材料を使用して充填される。最後に、平行な誘導要素103の最終形状が、切り欠かれ得るか、打ち抜かれ得るか、またはフライス加工され得る。
【0046】
[0047]図3aから3cおよび3dから3fでは、モノリシックの力伝達デバイス100を製作するための上述のステップが、結合要素301の位置および結合要素301の別の薄肉部の可撓性ベアリング300の位置で示される。凹部310の配置の2つの選択肢が示される:一方の選択肢では、図3aから3cで、ボアホール311、312、313のアラインメントが分離用の切断箇所321および322に対して垂直に延在し、もう一方の選択肢では、図3dから3fで、ボアホール311、312、312のアラインメントが、分離用の切断箇所321、322に平行に延在する。
【0047】
[0048]図4aから4c、4dから4f、および4gから4iでは、モノリシックの力伝達デバイス100を製作するための上述のステップがレバーベアリング400の位置で示される。分離用の切断箇所421、422に関しての別の位置の例示はこの事例では省略する。図2aから2fおよび3aから3fに関連した上記の説明を参照されたい。これらの図面はレバーベアリング400の位置についても当てはまるからである。加えて、4つのボアホール411、412、413、414を有する凹部410の形成がレバーベアリング400の実施例に基づいて示される。ボアホールの位置は、可能な限り最適なフォームフィットを実現するように、選択される。
【0048】
[0049]一箇所だけで第1の材料を置き換えるだけでなく、複数のベアリング部200、300、400を組み合せることが明らかであり、それにより、多様な考えられる組み合わせが実現される。モノリシックの力伝達デバイス100のための必要なプロフィールに応じて、例えば、平行なガイド105の薄肉部の可撓性ベアリング200などのための第1の材料のみが置き換えられるか、または力伝達レバー401のレバーベアリング400などの第1の材料のみが置き換えられるか、あるいはすべてのベアリング部200、300、400の第1の材料が置き換えられる。
【0049】
[0050]図5aおよび5bの各々は凹部510を示し、この凹部510は、1つの凹部の中で、第1の材料を置き換えるために複数の箇所を互いに同時に接続する。レバーベアリング400の領域、結合要素301の湾曲箇所300の領域、および平行な上側誘導要素103の薄肉部の可撓性ベアリング200の領域では、互いまでの距離が比較的短く、ベアリング部200、300、400のための単一の凹部510が、充填すべく少なくとも第2の材料を必要とする。凹部510の最適な外形を有する形状および/または輪郭が固着を改善することを実現し、つまりより良好なフォームフィットを実現する。
【0050】
[0051]測定される重量(weight force)の減少比(step-down ratio)が大きい場合、レバーベアリング400および結合要素301の薄肉部の可撓性ベアリング300を互いに接近させるか、または複数のレバーのシステムが使用され、つまり別の力伝達レバーが第2のレバーアーム403(図1aに示される)のところに用いられる。したがって、これらの箇所で第1の材料を置き換えること、および可能である場合のこれらを他の箇所と組み合わせることも考えられる。
【0051】
[0052]図6aおよび6bが、誘導シリンジ601により凹部210、310、410、510を充填するための考えられる方法を示す。凹部610がここではボアホール611として設けた後、誘導シリンジ601のカニューレ602が凹部610の中に導入される。充填すべく材料604が誘導コイル603により誘導温度で維持される。次いで、図6bに示されるように、第2の材料を注入し、それと同時にカニューレ602を引き抜くことにより、充填を行う。充填すべき材料604が周囲と反応を引き起こしてしまうことを回避するために、例えばリング状の開口部605を通して保護ガスが追加的に吹き込まれ得る。特定の状況下で、保護ガスの雰囲気下でまたは部分的なまたは完全な真空下で手順全体が実施されることが望ましい可能性がある。
【0052】
[0053]さらに、図7aおよび7bが、第1の材料と第2の材料および/または別の材料との間の堅固な接合が、特定の措置を施すことで改善され得る、ことを示している。一方で、充填の前に、例えばエッチング(ピックリング(酸洗い))により、または、コーティング若しくはミクロ組織(microstructure)を施すことにより、2つの材料の間の接触面を処理することの可能性もある。結果として、2つの材料の間に移行ゾーン606が得られる。一方で、接触面の拡大は、特定の成形手段、例えばボアホール611の中にねじ部607を設けることにより達成することができる。
【0053】
[0054]例えば図2gに示されるような凹部210を充填するための別の考えられる方法は、ニーディング(kneading;混錬とも言う)により第2の材料または別の材料を形成することである。この場合、最初にブランクが、特定の材料特性を損なうことはないが力を加えることにより変形を可能にするような温度まで、加熱される。加熱されたブランクが、例えば第1の材料で作られたブランクの中にある凹部である、空洞に配置され、スタンピング(stamp;打ち込み)によりその空洞の中に押し込まれ、それによりブランクがタンブリング運動し空洞の方に移動する。通常、この目的のためにはオービタルフォーミングプレス(orbital forming press;揺動プレスとも言う)が使用される。このような形成プロセスは特定の状況下で有利である。なぜなら、材料がブランクとして容易に提供され得ること、ガラス遷移温度未満で非結晶材料を使用した加工が可能であること、および大きい加工力により確実に2つの材料を互いにぴったりと合うように接続できる。
【0054】
[0055] 凹部210、310、410、510、610を充填するための別の考えられる方法が例えば、図2a、2d、3a、3d、4a、4d、4g、5a、5b、および6aに示されており、この方法は、未完成の構成要素を使用する。ここでは、充填すべく構成要素が、例えば、レーザビームによる粉末床溶融を用いて、積層造形により製造される。
【0055】
[0056]積層(additive)または生成的(generative)は、積層(layered buildup)によって金属、ポリマー、または特殊な材料から構成要素を層ごとに製作する製造プロセスを指す。いわゆる粉末床による方法の場合、一般的な10~100μmの粒径を有する粉末の層が造形プラットフォームに備えられ、製作されるべき構成要素の断面がレーザ(選択的レーザ溶融)または電子ビーム(選択的電子ビーム溶融)によって溶融して、その下に位置する構成要素の層に溶接される。このようにして、非常に複雑な構造が、多様な材料から層ごとに製作され得る。ここでは、典型的な製造方法のための製造に適するデザインの制約条件が適用されない。その理由は、移行部分、アンダーカット、および空洞が工具なしでも製作され得るからである。
【0056】
[0057]薄い粉末層が融解することにより、必然的に、冷却速度が高くなり、それにより金属ガラスを製作するために必要となる冷却速度が保証される。文献で、4×10K/sから5×10K/sの達成可能な冷却速度が報告されている。最新の特別の開発されたガラス形成合金システムは、10K/s未満の冷却速度において既に非結晶的に凝固している。さらに、最新のレーザシステムの高い出力密度により、また同時に小さい焦点径により、粉末層または構成要素表面の迅速かつ正確な溶融が可能となる。このようにして、鋳造では不可能な複雑で薄肉の構成要素を製作することができる
[0058]さらに、薄い構成要素すなわちわずか数ミリメートルのサイズの構成要素が個々の層の積層造形により製作され得ることに加えて、鋳造方法により製作され得る構成要素サイズを超えるような寸法を有する肉眼的(巨視的)により大きい構成要素も製作され得る。しかし、金属ガラスを製作するための従来の製作方法と比較した場合における上で言及した利点の他に、3Dプリンティングでの特定の方法に関連する課題を克服することも必要である。1つの例は、材料に熱を導入することである。非結晶構造状態を保証するために、レーザ/電子ビームによって導入される熱を効果的に消散させることが必要である。これは主として、層状構造であることを理由として構成要素自体を介して行われ、つまり、その下に位置するすでに製作された層に沿う形で行われる。したがって、構成要素の製作の過程で、個々の層には蓄積的な熱が導入されることになり、それにより結晶化を引き起こすことができ、それにより非結晶状態において特徴的である特性が失われることになる。
【0057】
[0059]したがって、非結晶の構成要素の製作には、合金の熱物理特性についての知識が必要であり、また材料の熱的安定性に対してプロセス制御を適合させることが必要である。さらに、粉末特性に対しての要求も厳しい。滑らかで高密度の粉末層を製作することは粉末の一定程度の流動性を前提としており、この粉末の一定程度の流動性は、例えば、湿度などの影響に加えて、粒子の形状・サイズの分布によって実質的に与えられる。粉末床の品質は得られる材料特性(例えば、空隙率)を決定するものであり、したがって構成要素の機械的特性に影響する。
【0058】
[0060]本発明と併せてここで示される図は、主として、MFRの力伝達デバイスを示しているが、当然、ひずみゲージのテクノロジを利用する力伝達デバイスにも適用される。また、本発明は1つの力伝達レバーを有する力伝達デバイスのみに限定されず、計量されるべき重量のさらなる低減のために2つ以上の力伝達レバーを有するようなデバイスも本発明のデザインの変形形態である。
【符号の説明】
【0059】
[0061]100 力伝達デバイス
[0062]101 移動可能な平行な脚部
[0063]102 固定の平行な脚部
[0064]103 第1の平行な誘導要素
[0065]104 第2の平行な誘導要素
[0066]105 平行なガイド
[0067]106 追加の成形手順
[0068]107 固定用孔
[0069]200、300、400 ベアリング部
[0070]200 薄肉部の可撓性ベアリング
[0071]210、310、410、510、610 凹部
[0072]211、212、213、311、312、313、411、412、413、414、611 ボアホール
[0073]221、222、321、322、421、422 分離用の切断箇所
[0074]230 凹部
[0075]300 結合要素の薄肉部の可撓性ベアリング
[0076]301 結合要素
[0077]400 レバーベアリング
[0078]401 力伝達レバー
[0079]402 第1のレバーアーム
[0080]403 第2のレバーアーム
[0081]601 誘導シリンジ
[0082]602 カニューレ
[0083]603 誘導コイル
[0084]604 充填すべき材料
[0085]605 リング状の開口部
[0086]606 移行ゾーン
[0087]607 ねじ部
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図3f
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
図4h
図4i
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b