(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物及び加硫成形体
(51)【国際特許分類】
C08L 11/02 20060101AFI20230417BHJP
C08K 5/38 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C08L11/02
C08K5/38
(21)【出願番号】P 2020555563
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043563
(87)【国際公開番号】W WO2020095967
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018210657
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】大貫 俊
(72)【発明者】
【氏名】西野 渉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦典
(72)【発明者】
【氏名】石垣 雄平
(72)【発明者】
【氏名】小林 直紀
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-3120(JP,A)
【文献】特開2003-147125(JP,A)
【文献】特表2013-534555(JP,A)
【文献】特開2001-11201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ニトリル単量体由来の構造単位3~20質量%を有するクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体100質量部と、キサントゲン化合物0.05~2.0質量部と、を含有する、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物。
【請求項2】
前記キサントゲン化合物が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表す。]
【請求項3】
前記クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体100質量部に対して0.5~5質量部の硫黄系加硫促進剤を更に含有する、請求項1又は2に記載のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物。
【請求項4】
前記硫黄系加硫促進剤が、3-メチルチアゾリジン-2-チオン、1,1,3-トリメチルチオウレア、及び、エチレンチオウレアから選ばれる少なくとも一種の化合物を含む、請求項3に記載のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物及び加硫成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレンゴムは、機械的特性、難燃性等に優れているため工業用ゴム製品の材料として広く用いられている。しかしながら、クロロプレンゴムは、耐油性が十分ではなく、エンジン周辺等、油性環境下では用いることができないという課題があった。クロロプレンゴムの耐油性を向上させる手段として、不飽和ニトリル単量体を共重合させたクロロプレン共重合体の製造方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。この共重合体は、加硫成形して伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー等の製品に好適に用いられている(例えば、下記特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭55-145715号公報
【文献】特開2012-82289号公報
【文献】国際公開2013/015043号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、高温での圧縮永久ひずみ及び耐油性に優れた加硫成形体が得られるクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を提供することを課題とする。本発明の他の一側面は、前記クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位3~20質量%を有するクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体100質量部と、キサントゲン化合物0.05~2.0質量部と、を含有する、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を提供する。
【0006】
本発明の他の一側面は、上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫成形体を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、高温での圧縮永久ひずみ及び耐油性に優れた加硫成形体が得られるクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、前記クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫成形体を提供することができる。上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物、並びに、その加硫物及び加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、シール材(パッキン、ガスケット等)、ロール、空気バネ、防振材、接着剤、ブーツ、ゴム引布、スポンジ、ゴムライニングなどに用いられるゴム製品の材料として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
<クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物>
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体と、キサントゲン化合物と、を含有する。本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物によれば、高温(例えば130℃)での圧縮永久ひずみ及び耐油性に優れた加硫物及び加硫成形体を得ることができる。本実施形態に係る加硫物は、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫物であり、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を加硫して得ることができる。
【0011】
また、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物によれば、スコーチタイム、及び、高温での圧縮永久ひずみを損なわずに、耐油性に優れた加硫物及び加硫成形体を得ることができる。本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物によれば、優れた耐寒性(脆化温度)を得つつ、高温での圧縮永久ひずみ及び耐油性に優れた加硫物及び加硫成形体を得ることもできる。
【0012】
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体)
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、クロロプレン単量体由来の構造単位(クロロプレン単量体単位)と不飽和ニトリル単量体由来の構造単位(不飽和ニトリル単量体単位)とを有する。クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体とを共重合させて得ることができる。クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体を構成する構造単位の全量を基準として、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位を3~20質量%有する。クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、その主鎖に不飽和ニトリル単量体由来の構造単位を3~20質量%有してよい。
【0013】
不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル等が挙げられる。不飽和ニトリル単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。不飽和ニトリル単量体は、優れた製造容易性及び耐油性が得られやすい観点から、アクリロニトリルを含むことが好ましい。
【0014】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体に含まれる不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の全量を基準として3~20質量%である。不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量が3質量%に満たないと、得られる加硫物及び加硫成形体の耐油性が向上しない。不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量が20質量%を超えると、得られる加硫物及び加硫成形体の高温での圧縮永久ひずみ及び耐寒性が低下する。
【0015】
不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、優れた耐油性が得られやすい観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは8質量%以上であり、特に好ましくは9質量%以上であり、極めて好ましくは10質量%以上である。不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、優れた圧縮永久ひずみ及び耐寒性が得られやすい観点から、好ましくは20質量%未満であり、より好ましくは17質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下であり、特に好ましくは12質量%以下であり、極めて好ましくは11質量%未満であり、非常に好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、好ましくは5~17質量%であり、より好ましくは9~17質量%である。不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、更に優れた耐油性が得られやすい観点から、好ましくは10質量%を超えており、より好ましくは12質量%以上であり、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは18質量%以上である。不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、更に優れた圧縮永久ひずみ及び耐寒性が得られやすい観点、及び、優れたスコーチタイムが得られやすい観点から、好ましくは10質量%未満であり、より好ましくは8質量%以下であり、更に好ましくは6質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下であり、極めて好ましくは4質量%以下である。
【0016】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体に含まれる不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量は、共重合体中の窒素原子の含有量から算出することができる。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて100mgのクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体における窒素原子の含有量を測定し、不飽和ニトリル単量体由来の構造単位の量を算出できる。元素分析の測定は次の条件で行うことができる。例えば、電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2ml/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80ml/minフローする。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成できる。
【0017】
クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の全量を基準として下記の範囲が好ましい。クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、優れた圧縮永久ひずみ及び耐寒性が得られやすい観点から、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは80質量%を超えており、更に好ましくは83質量%以上であり、特に好ましくは85質量%以上であり、極めて好ましくは88質量%以上であり、非常に好ましくは89質量%を超えており、より一層好ましくは90質量%以上である。クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、優れた耐油性が得られやすい観点から、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下であり、更に好ましくは93質量%以下であり、特に好ましくは92質量%以下であり、極めて好ましくは91質量%以下であり、非常に好ましくは90質量%以下である。これらの観点から、クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、好ましくは80~97質量%である。クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、更に優れた耐油性が得られやすい観点から、好ましくは90質量%未満であり、より好ましくは88質量%以下であり、更に好ましくは85質量%以下であり、特に好ましくは82質量%以下である。クロロプレン単量体由来の構造単位の量は、更に優れた圧縮永久ひずみ及び耐寒性が得られやすい観点、及び、優れたスコーチタイムが得られやすい観点から、好ましくは90質量%を超えてよく、より好ましくは92質量%以上であり、更に好ましくは94質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、極めて好ましくは96質量%以上である。
【0018】
クロロプレン単量体と共重合可能な単量体は、不飽和ニトリル単量体に限定されるものではない。クロロプレン単量体と共重合可能な単量体としては、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、スチレン、イソプレン、ブタジエン、アクリル酸、アクリル酸のエステル類、メタクリル酸、メタクリル酸のエステル類等が挙げられる。クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体に含まれる1-クロロ-1,3-ブタジエン由来の構造単位の量は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の全量を基準として1質量%未満であってよい。
【0019】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体のポリマー構造は、特に限定されるものではなく、ブロック共重合体又は統計的共重合体であってもよい。
【0020】
クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との統計的共重合体は、例えば、重合反応開始後にクロロプレン単量体を連続添加又は10回以上間欠分添することにより製造できる。その際、重合反応開始時の時刻をt(0)とすると共にnを1以上の整数として、時刻t(n-1)と時刻t(n)との間の時間dt(n)におけるクロロプレン単量体及び不飽和ニトリル単量体の重合転換量の総量に基づいて時刻t(n)と時刻t(n+1)との間の時間dt(n+1)におけるクロロプレン単量体の添加量を決定し、未反応のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比を一定に保つことができる。
【0021】
統計的共重合体とは、J.C.Randall 「POLYMER SEQUENCE DETERMINATION, Carbon-13 NMR Method」 Academic Press, New York, 1977, 71-78ページに記述されているように、ベルヌーイの統計モデル、又は、一次若しくは二次のマルコフの統計モデルにより記述できる共重合体であることを意味する。クロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との統計的共重合体が2元系の単量体から構成される場合、下記Mayo-Lewis式(I)において重合開始時のクロロプレン単量体と不飽和ニトリル単量体との比をd[M1]/d[M2]とすると共に、クロロプレン単量体を、下記Mayo-Lewis式(I)において定義されたM1としたときの反応性比r1及びr2について、r1が0.3~3000の範囲であり、r2が10-5~3.0の範囲であることが統計的共重合体を得るのに好ましい。
【0022】
【0023】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、例えば乳化重合により得ることができる。乳化重合する場合に用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、クロロプレン単量体の乳化重合に一般に用いられる公知の重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類などが挙げられる。
【0024】
乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、特に制限はなく、クロロプレン単量体の乳化重合に一般に用いられる公知の乳化剤を用いることができる。乳化剤としては、炭素数が6~22の飽和又は不飽和の脂肪酸のアルカリ金属塩、ロジン酸又は不均化ロジン酸のアルカリ金属塩(例えばロジン酸カリウム)、β-ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物のアルカリ金属塩(例えばナトリウム塩)等が挙げられる。
【0025】
乳化重合する場合に用いる分子量調整剤としては、特に制限はなく、クロロプレン単量体の乳化重合に一般に用いられる公知の分子量調整剤を用いることができる。分子量調整剤としては、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類;ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン化合物;ヨードホルム;ベンジル1-ピロールジチオカルバメート(別名ベンジル1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジルフェニルカルボジチオエート、1-ベンジル-N,N-ジメチル-4-アミノジチオベンゾエート、1-ベンジル-4-メトキシジチオベンゾエート、1-フェニルエチルイミダゾールジチオカルバメート(別名1-フェニルエチルイミダゾールカルボジチオエート)、ベンジル-1-(2-ピロリジノン)ジチオカルバメート(別名ベンジル-1-(2-ピロリジノン)カルボジチオエート)、ベンジルフタルイミジルジチオカルバメート(別名ベンジルフタルイミジルカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノプロプ-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、2-シアノブト-2-イル-1-ピロールジチオカルバメート(別名2-シアノブト-2-イル-1-ピロールカルボジチオエート)、ベンジル-1-イミダゾールジチオカルバメート(別名ベンジル-1-イミダゾールカルボジチオエート)、2-シアノプロプ-2-イル-N,N-ジメチルジチオカルバメート、ベンジル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、シアノメチル-1-(2-ピロリドン)ジチオカルバメート、2-(エトキシカルボニルベンジル)プロプ-2-イル-N,N-ジエチルジチオカルバメート、1-フェニルエチルジチオベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イルジチオベンゾエート、1-酢酸-1-イル-エチルジチオベンゾエート、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-イルジチオベンゾエート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾエート、t-ブチルジチオベンゾエート、2,4,4-トリメチルペンタ-2-イルジチオベンゾエート、2-(4-クロロフェニル)-プロプ-2-イルジチオベンゾエート、3-ビニルベンジルジチオベンゾエート、4-ビニルベンジルジチオベンゾエート、ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート、t-ブチルトリチオペルベンゾエート、2-フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、ナフタレン-1-カルボン酸-1-メチル-1-フェニル-エチルエステル、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸、ジベンジルテトラチオテレフタラート、カルボキシメチルジチオベンゾエート、ジチオベンゾエート末端基を持つポリ(酸化エチレン)、4-シアノ-4-メチル-4-チオベンジルスルファニル酪酸末端基を持つポリ(酸化エチレン)、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]プロパン酸、2-[(2-フェニルエタンチオイル)スルファニル]コハク酸、3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエートカリウム、シアノメチル-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル-(フェニル)ジチオカルバメート、ベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルメチル-4-クロロジチオベンゾエート、4-ニトロベンジル-4-クロロジチオベンゾエート、フェニルプロプ-2-イル-4-クロロジチオベンゾエート、1-シアノ-1-メチルエチル-4-クロロジチオベンゾエート、3-クロロ-2-ブテニル-4-クロロジチオベンゾエート、2-クロロ-2-ブテニルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、3-クロロ-2-ブテニル-1H-ピロール-1-ジチオカルボン酸、2-シアノブタン-2-イル-4-クロロ-3,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-カルボジチオエート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカルボナート、ジベンジルトリチオカルボナート、ブチルベンジルトリチオカルボナート、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、2-[[(ブチルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]コハク酸、2-[[(ドデシルチオ)チオキソメチル]チオ]-2-メチルプロピオン酸、2,2’-[カルボノチオイルビス(チオ)]ビス[2-メチルプロピオン酸]、2-アミノ-1-メチル-2-オキソエチルブチルトリチオカルボナート、ベンジル-2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-2-オキソエチルトリチオカルボナート、3-[[[(t-ブチル)チオ]チオキソメチル]チオ]プロピオン酸、シアノメチルドデシルトリチオカルボナート、ジエチルアミノベンジルトリチオカルボナート、ジブチルアミノベンジルトリチオカルボナート等のチオカルボニル化合物などが挙げられる。
【0026】
重合温度及び単量体の最終転化率は特に制限するものではないが、重合温度は、好ましくは0~50℃であり、より好ましくは20~50℃である。単量体の最終転化率が40~95質量%の範囲に入るように重合を行うことが好ましい。最終転化率を調整するためには、所望する転化率になった時に、重合反応を停止させる重合禁止剤を添加して重合を停止させればよい。
【0027】
重合禁止剤としては、特に制限はなく、クロロプレン単量体の乳化重合に一般に用いられる公知の重合禁止剤を用いることができる。重合禁止剤としては、フェノチアジン(チオジフェニルアミン)、4-ターシャリーブチルカテコール、2,2-メチレンビス-4-メチル-6-ターシャリーブチルフェノール等が挙げられる。
【0028】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、例えば、スチームストリッピング法によって未反応の単量体を除去し、その後、ラテックスのpHを調整し、常法の凍結凝固、水洗、熱風乾燥等の工程を経て得ることができる。
【0029】
クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体は、分子量調整剤の種類によりメルカプタン変性タイプ、キサントゲン変性タイプ、硫黄変性タイプ、ジチオカルボナート系タイプ、トリチオカルボナート系タイプ及びカルバメート系タイプに分類される。
【0030】
(キサントゲン化合物)
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、キサントゲン化合物を含有する。キサントゲン化合物は、上述の乳化重合時の分子量調整剤として用いてよい。また、キサントゲン化合物は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体に混合(後添加)することで、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫を促進させることができる。
【0031】
キサントゲン化合物としては、キサントゲン酸、キサントゲン酸塩、キサントゲン酸の水素原子が置換されて得られる基(「ROC(=S)S-」で表される基。Rは任意の置換基を表す)を有する化合物等が挙げられる。キサントゲン化合物としては、アルキルキサントゲン酸及びその塩、アリルキサントゲン酸及びその塩、キサントゲンジスルフィド化合物等が挙げられる。塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。キサントゲン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
アルキルキサントゲン酸としては、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、n-プロピルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、n-ブチルキサントゲン酸、sec-ブチルキサントゲン酸、n-ヘキシルキサントゲン酸、n-オクチルキサントゲン酸等が挙げられる。アリルキサントゲン酸としては、フェニルキサントゲン酸、p-トリルキサントゲン酸等が挙げられる。
【0033】
キサントゲンジスルフィド化合物は、「RaOC(=S)S-S(S=)CORb」で表される構造を有する化合物である(Ra及びRbは、それぞれ独立に、任意の置換基を表す)。キサントゲンジスルフィド化合物としては、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジプロピルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンチルキサントゲンジスルフィド、ジヘキシルキサントゲンジスルフィド、ジヘプチルキサントゲンジスルフィド、ジオクチルキサントゲンジスルフィド、ジフェニルキサントゲンジスルフィド、ジ-p-トリルキサントゲンジスルフィド等が挙げられる。
【0034】
キサントゲン化合物は、優れたスコーチタイム、高温での圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度を得やすい観点から、下記一般式(1)で表される化合物を含むことが好ましい。
【0035】
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、炭素数1~8のアルキル基を表す。アルキル基の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。]
【0036】
一般式(1)で表される化合物におけるアルキル基の炭素数は、優れたスコーチタイム、高温での圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度を得やすい観点から、好ましくは1~4であり、より好ましくは2~3である。
【0037】
一般式(1)で表される化合物としては、キサントゲンジスルフィド、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジプロピルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジブチルキサントゲンジスルフィド、ジペンチルキサントゲンジスルフィド、ジヘキシルキサントゲンジスルフィド、ジヘプチルキサントゲンジスルフィド、ジオクチルキサントゲンジスルフィド等が挙げられる。キサントゲン化合物は、優れたスコーチタイム、高温での圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度を得やすい観点から、一般式(1)においてR1及びR2が炭素数1~8のアルキル基である化合物を含むことが好ましく、ジエチルキサントゲンジスルフィド及びジイソプロピルキサントゲンジスルフィドから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことがより好ましい。一般式(1)で表される化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
キサントゲン化合物の含有量は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体100質量部に対して0.05~2.0質量部である。キサントゲン化合物の含有量が0.05質量部に満たないと、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の加硫を促進させる効果が低く、圧縮永久ひずみが向上しない場合がある。キサントゲン化合物の含有量が2.0質量部を超えてしまうと、得られる加硫物及び加硫成形体の加硫不全が発生して、圧縮永久ひずみが向上しない場合がある。
【0039】
キサントゲン化合物の含有量は、圧縮永久ひずみが向上しやすい観点、及び、優れたスコーチタイムを得やすい観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が更に好ましく、0.4質量部以上が特に好ましく、0.5質量部以上が極めて好ましい。キサントゲン化合物の含有量は、圧縮永久ひずみが向上しやすい観点から、1.75質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましく、1.25質量部以下が更に好ましく、1.0質量部以下が特に好ましく、1.0質量部未満が極めて好ましく、0.8質量部以下が非常に好ましく、0.6質量部以下がより一層好ましく、0.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、キサントゲン化合物の含有量は、0.1~2.0質量部が好ましく、0.3~1.0質量部がより好ましい。
【0040】
キサントゲン化合物の含有量は、更に優れたスコーチタイムが得られやすい観点から、0.5質量部を超えることが好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましく、1.0質量部を超えることが特に好ましく、1.2質量部以上が極めて好ましく、1.5質量部以上が非常に好ましく、1.8質量部以上がより一層好ましい。
【0041】
(硫黄系加硫促進剤)
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、硫黄系加硫促進剤(硫黄原子を含む加硫促進剤)を含有してもよい。硫黄系加硫促進剤は、例えば、上述のキサントゲン化合物との相乗効果により、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の加硫を促進させることができる。
【0042】
硫黄系加硫促進剤としては、3-メチルチアゾリジン-2-チオン、チオウレア系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤等が挙げられる。硫黄系加硫促進剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
チオウレア系加硫促進剤としては、トリエチルチオウレア(例えば1,1,3-トリメチルチオウレア)、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア、トリメチルチオウレア、N,N’-ジフェニルチオウレア等が挙げられる。チオウレア系加硫促進剤は、優れたスコーチタイム、高温での圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度を得やすい観点から、トリメチルチオウレア及びエチレンチオウレアから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。チアゾール系加硫促進剤としては、1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0044】
硫黄系加硫促進剤は、優れたスコーチタイム、高温での圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度を得やすい観点から、3-メチルチアゾリジン-2-チオン、1,1,3-トリメチルチオウレア、及び、エチレンチオウレアから選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことが好ましい。
【0045】
硫黄系加硫促進剤の含有量は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の加硫が効果的に促進する観点、得られる加硫物及び加硫成形体の加硫不全を抑制して圧縮永久ひずみを向上させる効果を得やすい観点、及び、優れたスコーチタイムを得やすい観点から、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体100質量部に対して下記の範囲が好ましい。硫黄系加硫促進剤の含有量は、0.5質量部以上が好ましく、0.75質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が更に好ましい。硫黄系加硫促進剤の含有量は、5.0質量部以下が好ましく、4.5質量部以下がより好ましく、4.0質量部以下が更に好ましく、3.5質量部以下が特に好ましく、3.0質量部以下が極めて好ましく、2.5質量部以下が非常に好ましく、2.0質量部以下がより一層好ましく、1.5質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、硫黄系加硫促進剤の含有量は、0.5~5質量部が好ましく、0.75~3.0質量部がより好ましく、1.0~2.0質量部が更に好ましい。
【0046】
(その他の成分)
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体、キサントゲン化合物及び硫黄系加硫促進剤以外の他の成分を含有してよい。他の成分としては、加硫剤、加硫促進剤(硫黄系加硫促進剤を除く)、加硫速度調整剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤、加工助剤等が挙げられる。
【0047】
加硫剤としては、イオウ;モルホリン化合物(ジチオジモルホリン等);チオウレア化合物;チウラム化合物;チアゾール化合物;グアニジン化合物;ベリリウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、バリウム、ゲルマニウム、チタニウム、錫、ジルコニウム、アンチモン、バナジウム、ビスマス、モリブデン、タングステン、テルル、セレン、鉄、ニッケル、コバルト、オスミウム等の金属の単体、酸化物(例えば酸化亜鉛)及び水酸化物;1,4-ビス[(t-ブチルパーオキシ)イソプロピル]ベンゼン、3-メチルチアゾリジンチオン-2-チアゾールとフェニレンジマレイミドとの混合物、ジメチルアンモニウムハイドロジエンイソフタレート、1,2-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール誘導体などが挙げられる。
硫黄系加硫促進剤以外の加硫促進剤としては、クロロプレンゴムの加硫に一般に用いられる加硫促進剤を用いることができる。加硫促進剤としては、グアニジン系加硫促進剤、ジメチルアンモニウムハイドロジェンイソフタレート等が挙げられる。
加硫速度調整剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
可塑剤としては、ナタネ油、アマニ油、ヒマシ油、ヤシ油等の植物油;フタレート系可塑剤、DUP(フタル酸ジウンデシル)、DOS(セバシン酸ジオクチル)、DOA(アジピン酸ジオクチル)、エステル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤、チオエーテル系可塑剤、アロマオイル、ナフテンオイル、潤滑油、石油系プロセスオイル、パラフィン(パラフィンワックス)、流動パラフィン、ワセリン、石油アスファルト等の石油系可塑剤などが挙げられる。
老化防止剤としては、オゾン老化防止剤、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、アクリレート系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、カルバミン酸金属塩、ワックス、アルキル化ジフェニルアミン(例えばオクチル化ジフェニルアミン)等が挙げられる。
充填剤としては、酸化マグネシウム、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム等が挙げられる。
加工助剤としては、ステアリン酸等が挙げられる。
【0048】
<成形体及び加硫成形体>
本実施形態に係る成形体は、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の成形体であり、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を、目的に応じた形状に成形加工して得ることができる。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物の加硫成形体である。本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を、目的に応じた形状に成形加工し、成形時又は成形後に加硫して得ることが可能であり、本実施形態の加硫物を、目的に応じた形状に成形加工することにより得ることもできる。
【0049】
成形方法は、特に限定されるものではない。例えば、成形体が伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、シール材(ガスケット、パッキン等)、ロールなどである場合は、プレス成形、射出成形、押出成形等により形成することができる。
【0050】
本実施形態に係る加硫成形体は、本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物を使用しているため、スコーチタイム、及び、高温での圧縮永久ひずみを損なわずに、優れた耐油性を得ることができる。また、本実施形態に係る加硫成形体は、優れた耐寒性(脆化温度)を得つつ、高温での優れた圧縮永久ひずみ及び優れた耐油性を得ることができる。本実施形態に係る加硫成形体は、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、シール材(パッキン、ガスケット等)、ロール、空気バネ、防振材、接着剤、ブーツ、ゴム引布、スポンジ、ゴムライニング等として用いることができる。本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、これらの用途に用いられる加硫成形体を得るために用いることができる。
【0051】
(伝動ベルト及びコンベアベルト)
伝動ベルト及びコンベアベルトは、巻掛け伝動装置に使われる機械要素であり、原動車から従動車に動力を伝達する部品である。伝動ベルト及びコンベアベルトは、軸にセットされたプーリーにかけて用いられることが多い。伝動ベルト及びコンベアベルトは、軽量性、静音性、軸角度の自由度等に優れるため、自動車、一般産業用ベルト、各種コンベアベルト等の機械全般に幅広く使用されている。ベルトの種類は多様化しており、平ベルト、タイミングベルト、Vベルト、リブベルト、丸ベルト等の伝動ベルト;コンベアベルトなどが機械の用途に応じて使い分けられている。効率的に動力を伝達するため、高い張力でかけられたベルトが回転変形を繰り返すことから、従来の伝動ベルト及びコンベアベルトでは、NR(天然ゴム)、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、CR、NBR(ニトリルゴム)、HNBR(水素化ニトリルゴム)等のエラストマー材料が使用されている。建築現場で使用される工作機器のベルト等は、飛散した油にさらされる環境で使用されることもあり、耐油性の改良が求められる。
【0052】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、伝動ベルト及びコンベアベルトの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、飛散した油にさらされる環境等においても使用可能なベルトを製造することができる。
【0053】
(ホース)
ホースは、屈曲可能な管であり、自由に屈曲して、可搬性及び移動性を必要とする作業(水まき等)に用いられる。また、ホースは、硬質な管(金属パイプ等)と比較して、変形による疲労破壊を起こしにくいことから、振動を伴う部位の配管(自動車の配管等)に使用される。中でも、最も一般的であるのがゴムホースである。ゴムホースは、NR、CR、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)、SBR、NBR、ACM(アクリルゴム)、AEM(エチレン・アクリルゴム)、HNBR、ECO(エピクロルヒドリンゴム)、FKM(フッ素ゴム)等で作られ、送水用ホース、送油用ホース、送気用ホース、蒸気用ホース、油圧用高圧ホース、油圧用低圧ホース等が挙げられる。CRは、高圧の流体の圧力に耐え得る良好な機械的強度を理由として、主として油圧用高圧ホースに使用されているが、耐油性の不足を理由として、内層はNBRとするのが一般的である。しかしながら、化学構造の大きく異なるCR及びNBRを接着させることは困難であり、接着が不十分であると、界面で剥離するという課題がある。このため、良好な耐油性を有する材料が切望されている。また、非極性液体と直接接するホースとして、CRの耐油性は不十分であり、改良が不可欠であった。
【0054】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、非極性液体と直接接するホースを製造することができる。
【0055】
(ワイパー)
自動車、電車、航空機、船舶、建設機械等のフロントガラス、リアガラス等には、表面に付着した雨水、泥水、油汚れ、海水、氷、雪、埃等を払拭又は除去して視界を良くすることにより運転の安全を確保するために通常ワイパーが設けられている。このワイパーのガラス面と接触する部分にはワイパーブレードが取り付けられており、従来のワイパーブレードの材料としては、NR、CR等が用いられている。CRは、繰り返し変形に耐える機械的強度及び耐久疲労性を有し、払拭性等に優れるため自動車用ワイパーに使用されている。しかしながら、CRは、耐油性が不十分であるため、油汚れによりゴム材料が膨潤すると、払拭性が低下してしまう問題がある。このため、油汚れが多い環境下においては、耐油性に優れたワイパーブレードが要求されている。
【0056】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、ワイパーの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油汚れが多い環境下でも使用できるワイパーを製造することができる。
【0057】
(シール材)
シール材は、機械において、液体又は気体の漏れを防ぐと共に、雨水、埃等のごみ又は異物が内部に侵入するのを防ぐ部品であり、機械の性能維持に重要な役割を果たしている。シール材としては、固定用途に使われるガスケット、運動部分・可動部分に使用されるパッキン等が挙げられる。シール部分がボルト等で固定されているガスケットでは、Oリング、ゴムシート等のソフトガスケットの材料として、目的に応じた各種エラストマーが使用されている。また、パッキンは、ポンプ又はモーターの軸、バルブの可動部等のような回転部分、ピストンのような往復運動部分、カプラーの接続部、水道蛇口の止水部などに使われる。比較的低い圧力の油圧機器、又は、潤滑油の密閉に使われるオイルシールは、エラストマーの弾性で密閉性を確保している。これらエラストマーのシール材において、CRは、良好な機械的強度を有し、極性の気体又は液体のシール材に使用されている。一方、エンジンオイル又はギアーオイルのような非極性液体のシール材に使用するためには、CRの耐油性は不十分であり、改良が不可欠であった。
【0058】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、シール材の耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、エンジンオイル又はギアーオイルのような非極性液体のシール材を製造することができる。
【0059】
シール材としては、エンジンヘッドカバーガスケット、オイルパンガスケット、オイルシール、リップシールパッキン、O-リング、トランスミッションシールガスケット、クランクシャフト、カムシャフトシールガスケット、バルブステム、パワーステアリングシールベルトカバーシール、等速ジョイント用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ材、ダイヤフラム等が挙げられる。
【0060】
(ロール)
ロールは、鉄芯等の金属製の芯をゴムで接着被覆することによって製造されるものであり、一般に金属鉄芯にゴムシートを渦巻き状に巻き付けて製造される。ロールには、製紙、各種金属製造、印刷、一般産業用、籾摺り等の農機具用、食品加工用などの種々の用途の要求特性に応じてNBR、EPDM、CR等のゴム材料が用いられている。CRは、搬送する物体の摩擦に耐え得る良好な機械的強度を有していることから、ロールにおける幅広い用途に使用されている。一方で、製鉄用又は製紙用の工業用材料、製品等の製造時など、油が付着する環境下で用いられるロールとしては耐油性が不十分であり、改良が求められる。
【0061】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、ロールの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油が付着する環境下で用いられるロールを製造することができる。
【0062】
(空気バネ)
空気バネは、圧縮空気の弾力性を利用したバネ装置である。自動車、バス、トラック等のエアサスペンションなどに利用される。空気バネとしては、ベローズ型及びスリーブ型(ダイヤフラム型の一種)が挙げられ、いずれもピストンを空気室内に侵入させて空気圧を高めることができる。飛散した油にさらされる環境で使用される場合もあり、耐油性の改良が求められる。
【0063】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、空気バネの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油汚れが多い環境下でも使用できる空気バネを製造することができる。
【0064】
(防振材)
防振材とは、振動の伝達波及を防止するゴムのことであり、例えば、防音又は衝撃の緩衝の用途、機械から発生する振動が外部に波及することを防ぐ用途等に用いられる。例えば自動車又は各種車両では、エンジン駆動時の振動を吸収して騒音を防止するために、トーショナルダンパー、エンジンマウント、マフラーハンガー等の構成材料に防振材が用いられている。防振材には、防振特性に優れた天然ゴムが広く使用されているが、建設重機用等、油の飛散する環境で使用される防振材にはCRが使用されている。防振材に油が付着することで膨潤すると、機械的な強度が低下し、早期に破壊するという問題があるため、改良が求められる。
【0065】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、防振材の耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油の飛散する環境でも使用できる防振材(防振ゴム)を製造することができる。
【0066】
(接着剤)
CRは、コンタクト性を有し、初期接着強度に優れることから、土木建築、合板、家具、靴、ウェットスーツ、自動車内装材等の幅広い材料の接着剤として利用されている。これらの中でも、CRの初期接着強度及び耐熱接着強度が優れることから、家具又は自動車内装材の素材として汎用されるポリウレタンフォーム用の一液型接着剤としての需要が大幅に拡大している。自動車の内装には、高い審美性が求められるが、CRの耐油性が不十分なため、自動車等に用いる各種オイル類又は燃料類の飛沫が被着体に付着すると、界面で剥離したり、被着体の表面が湾曲したりすることがある。このため、高い耐油性を有する接着剤材料が切望されている。
【0067】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、接着剤の耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRよりも優れた接着剤を製造することができる。
【0068】
(ブーツ)
ブーツとは、一端から他端に向けて外径が次第に大きくなる蛇腹状をなす部材であり、自動車駆動系等の駆動部を保護するための等速ジョイントカバー用ブーツ、ボールジョイントカバー用ブーツ(ダストカバーブーツ)、ラックアンドピニオンギア用ブーツなどがある。ブーツでは、大変形に耐えられる物理的強度が要求されるため、CRが多く使用されている。近年、車の軽量コンパクト化技術の進展に伴ってブーツの稼動空間が狭まっているため、除熱効率が低下し熱環境が過酷さを増している。このため、高温雰囲気下において、ブーツ内部に含有する油、グリース等の非極性液体に対する信頼性の向上が求められる。
【0069】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、ブーツの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRよりも、内部に含有する油、グリース等の非極性液体に対する信頼性に優れたブーツを製造することができる。
【0070】
(ゴム引布)
ゴム引布は、ゴムを布に貼り合わせた、ゴムと布織物(繊維)の複合材料であり、ゴムシートに比べて強度が強く、耐水性、気密性等に優れている。これらの特徴を活かし、ゴムボート、テント材料、雨合羽等の衣類、建築防水用シート、緩衝材などの用途に広く用いられている。ゴム引布に使用されるゴム材料としては、一般的には、CR、NBR、EPDM等が用いられている。中でも、CRは、優れた機械的強度及び耐候性を有することから、ゴムボート等の屋外で使用される引布に広く使用されている。一方で、自動車、建築現場等のような、油が飛散する環境下で使用されるゴム引布シート材に使用するためには耐油性が不十分であり、改良が求められる。
【0071】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、ゴム引布の耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油が飛散する環境下でも使用できるゴム引布を製造することができる。
【0072】
(スポンジ)
スポンジは、内部に細かい孔が無数に空いた多孔質の物質である。孔は、連続泡及び独立泡の形態のいずれも取り得る。孔が十分大きく、連続している場合、スポンジは、液体にひたすと、孔内の空気と置換される形で液体を吸い取り、また、外部から力を加えると、容易に液体を放出する特性を有する。また、孔が小さい場合は、優れた緩衝材又は断熱材として使用することができる。CRは、優れた機械的強度及びゴム弾性を有するため、スポンジに幅広く使用されており、防振部材、スポンジシール部品、ウェットスーツ、靴等に用いられる。何れの用途においても、油による膨潤変形、変色等を防ぐため耐油性の改良が求められる。
【0073】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、スポンジの耐油性を高めることができる。これにより、従来のCRでは達成が困難であった、油による膨潤変形、変色等を起こしにくいスポンジを製造することができる。
【0074】
(ゴムライニング)
ゴムライニングとは、配管、タンク等の金属面にゴムシートを接着させて金属の防食目的で使われるものである。また、ゴムライニングは、耐電気又は耐摩耗が必要とされる箇所にも使われる。従来のゴムライニングとしては、NR、CR、EPDM、SBR等が使用されるが、耐油性が不足する場合があり、耐油性を向上させることが求められる。
【0075】
本実施形態に係るクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物は、ゴムライニングとしての耐油性を高めることができる。これにより、従来のゴム材料では困難であった、油による配管又はタンクの防食が可能である。
【実施例】
【0076】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0077】
<クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体の製造>
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体1(アクリロニトリル単量体由来の構造単位量:10%))
加熱冷却ジャケット及び攪拌機を備えた内容積3リットルの重合缶に、クロロプレン単量体37質量部、アクリロニトリル単量体37質量部、ジエチルキサントゲンジスルフィド0.5質量部、純水200質量部、ロジン酸カリウム(ハリマ化成株式会社製)5.00質量部、水酸化ナトリウム0.40質量部、及び、β-ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王株式会社製)2.0質量部を添加した。次に、重合開始剤として過硫酸カリウム0.1質量部を添加した後、重合温度40℃にて窒素気流下で乳化重合を行った。クロロプレン単量体の分添は、重合開始20秒後から開始し、重合開始からの10秒間の冷媒の熱量変化を元に分添流量を電磁弁で調整し、以降10秒毎に流量を再調節することで連続的に行った。クロロプレン単量体及びアクリロニトリル単量体の合計量に対する重合率が50%となった時点で、重合禁止剤であるフェノチアジンを加えて重合を停止させた。その後、減圧下で反応溶液中の未反応単量体を除去することでクロロプレン・アクリロニトリル共重合体ラテックスを得た。
【0078】
クロロプレン・アクリロニトリル共重合体ラテックスの重合率は、クロロプレン・アクリロニトリル共重合体ラテックスを風乾した乾燥質量から算出した。具体的には、下記式(II)より計算した。式中、固形分濃度とは、サンプリングしたクロロプレン・アクリロニトリル共重合体ラテックス2gを130℃で加熱して、溶媒(水)、揮発性薬品、原料等の揮発成分を除いた固形分の濃度[質量%]である。総仕込み量とは、重合開始から、ある時刻までに重合缶に仕込んだ原料、試薬及び溶媒(水)の総量である。蒸発残分とは、重合開始から、ある時刻までに仕込んだ薬品及び原料のうち、130℃の条件下で揮発せずにポリマーと共に固形分として残留する薬品の質量である。単量体仕込み量は、重合缶に初期に仕込んだ単量体、及び、重合開始から、ある時刻までに分添した単量体の量の合計である。なお、ここでいう「単量体」とはクロロプレン単量体とアクリロニトリル単量体の合計量である。
重合率[%]={(総仕込み量[g]×固形分濃度[質量%]/100)-(蒸発残分[g])}/単量体仕込み量[g]×100 ・・・(II)
【0079】
上述のクロロプレン・アクリロニトリル共重合体ラテックスをpH7.0に調整し、-20℃に冷やした金属板上で凍結凝固させることで乳化破壊することによりシートを得た。このシートを水洗した後、130℃で15分間乾燥させることにより固形状のクロロプレン・アクリロニトリル共重合体1(重合体1)を得た。
【0080】
クロロプレン・アクリロニトリル共重合体に含まれるアクリロニトリル単量体由来の構造単位量は、クロロプレン・アクリロニトリル共重合体中の窒素原子の含有量から算出した。具体的には、元素分析装置(スミグラフ220F:株式会社住化分析センター製)を用いて100mgのクロロプレン・アクリロニトリル共重合体における窒素原子の含有量を測定し、アクリロニトリル単量体由来の構造単位量を算出した。元素分析の測定は次の条件で行った。電気炉温度として反応炉900℃、還元炉600℃、カラム温度70℃、検出器温度100℃に設定し、燃焼用ガスとして酸素を0.2ml/min、キャリアーガスとしてヘリウムを80ml/minフローした。検量線は、窒素含有量が既知のアスパラギン酸(10.52%)を標準物質として用いて作成した。クロロプレン・アクリロニトリル共重合体1中のアクリロニトリル単量体由来の構造単位量は10質量%であった。
【0081】
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体2(アクリロニトリル単量体由来の構造単位量:3%))
クロロプレン単量体の使用量を47質量部に変更し、アクリロニトリル単量体の使用量を20質量部に変更したこと以外は上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体1と同一の手順でクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体2を製造した。上述の手順と同一の手順でクロロプレン・アクリロニトリル共重合体2中のアクリロニトリル単量体由来の構造単位量を測定したところ、3質量%であった。
【0082】
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体3(アクリロニトリル単量体由来の構造単位量:20%))
クロロプレン単量体の使用量を17質量部に変更し、アクリロニトリル単量体の使用量を50質量部に変更したこと以外は上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体1と同一の手順でクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体3を製造した。上述の手順と同一の手順でクロロプレン・アクリロニトリル共重合体3中のアクリロニトリル単量体由来の構造単位量を測定したところ、20質量%であった。
【0083】
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体4(アクリロニトリル単量体由来の構造単位量:2%))
クロロプレン単量体の使用量を50質量部に変更し、アクリロニトリル単量体の使用量を17質量部に変更したこと以外は上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体1と同一の手順でクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体4を製造した。上述の手順と同一の手順でクロロプレン・アクリロニトリル共重合体4中のアクリロニトリル単量体由来の構造単位量を測定したところ、2質量%であった。
【0084】
(クロロプレン・不飽和ニトリル共重合体5(アクリロニトリル単量体由来の構造単位量:25%))
クロロプレン単量体の使用量を10質量部に変更し、アクリロニトリル単量体の使用量を57質量部に変更したこと以外は上述のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体1と同一の手順でクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体5を製造した。上述の手順と同一の手順でクロロプレン・アクリロニトリル共重合体5中のアクリロニトリル単量体由来の構造単位量を測定したところ、25質量%であった。
【0085】
<実験A:クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物の評価>
(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物の製造)
表1に示すクロロプレン・アクリロニトリル共重合体及び各化合物を8インチオープンロールにおいて混練し、クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物を得た。表中、「phr」は「質量部」を意味する。表1に示した酸化亜鉛の使用量は、2種の酸化亜鉛の合計量である。
【0086】
表1に示す主な化合物は以下のとおりである。
ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド:三新化学工業株式会社製、サンビットDIX
ジエチルキサントゲンジスルフィド:Sigma-Aldrich社製、O,O-ジエチルジチオビス-(チオホルメート)
3-メチルチアゾリジン-2-チオン:ランクセス社製、レノグランMTT-80
1,1,3-トリメチルチオウレア:大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTMU
エチレンチオウレア:川口化学工業株式会社製、アクセル22S
パーブチルP-40:日本油脂株式会社製、パーブチルP-40
ステアリン酸:新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S
耐熱老化防止剤(Octamine):大内新興化学工業株式会社製、ノクラックAD-F
耐熱老化防止剤(TNP):大内新興化学工業株式会社製、ノクラックTNP
耐熱老化防止剤(6C):大内新興化学工業株式会社製、ノクラック6C
酸化マグネシウム(#150):協和化学工業株式会社製、キョーワマグ(登録商標)150
カーボンブラック(ASTM N550):旭カーボン株式会社製、旭#65
カーボンブラック(ASTM N990):Abbey Chemical社製、Unithermal MT-N990
ナフテンオイル:新日本理化株式会社製、NP-24
ナタネ油:平和飼糧株式会社製、ナタネ油
特殊ワックス:大内新興化学工業株式会社製、サンノック
酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種
テトラメチルチウラムジスルフィド:大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTET
【0087】
(加硫成形体の製造)
上述のクロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物を170℃×20分の条件でプレス加硫して厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。
【0088】
(加硫成形体の評価)
上述の加硫成形体について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0089】
(1)スコーチタイム
JIS K6300-1に準拠して、125℃におけるムーニースコーチ試験を行って「スコーチタイムt5」を測定した。実際の製品使用を考慮して「スコーチタイムt5」は、35分以上である場合を「A」と評価し、25分以上35分未満である場合を「B」と評価し、15分以上25分未満である場合を「C」と評価し、15分未満である場合を「D」と評価した。A、B又はCを合格であると評価した。「スコーチタイムt5」とは、スコーチタイムを測定した際に、クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物の粘度が最低粘度から5%まで上昇するまでにかかる時間(分)を表す。
【0090】
(2)圧縮永久ひずみ
JIS K6262に準拠して、130℃、72時間における圧縮永久ひずみの評価を行った。圧縮永久ひずみが30%未満である場合を「A」と評価し、30%以上35%未満である場合を「B」と評価し、35%以上40%未満である場合を「C」と評価し、40%以上である場合を「D」と評価した。A、B又はCを合格であると評価した。
【0091】
(3)耐油性
ASTM No.3オイル(日本サン石油株式会社製、IRM903)に100℃で72時間浸漬した後に、JIS K6258に準拠して浸漬試験を行い、耐油性試験(質量変化率の測定)を行った。質量変化率が20%未満である場合を「A」と評価し、20%以上35%未満である場合を「B」と評価し、35%以上50%未満である場合を「C」と評価し、50%以上である場合を「D」と評価した。A、B又はCを合格であると評価した。
【0092】
(4)耐寒性(脆化温度)
脆化温度は、低温特性の指標となる値であり、JIS K6261に準拠して測定した。具体的には、脆化温度は、一定温度の試験槽に入れた片持ばりの短冊状試験片に所定の打撃を与えて、その破壊個数を各温度で測定し、その値を所定計算式に代入して算出した。その結果、脆化温度が-30℃未満である場合を「A」と評価し、-30℃以上-20℃未満である場合を「B」と評価し、-20℃以上-10℃未満である場合を「C」と評価し、-10℃以上である場合を「D」と評価した。A、B又はCを合格であると評価した。
【0093】
【0094】
表1に示した結果から、実施例のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物によれば、優れた脆化温度を得つつ、スコーチタイム、及び、高温での圧縮永久ひずみを損なわずに、耐油性に優れた加硫物及び加硫成形体を得ることができることがわかった。当該加硫成形体は、これらの性質を有するため、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、シール材(パッキン、ガスケット等)、ロール、空気バネ、防振材、接着剤、ブーツ、ゴム引布、スポンジ、ゴムライニングなどの成形品として好適に使用できる。
【0095】
<実験B:クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物の評価>
(クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物の製造)
表2に示すクロロプレン・アクリロニトリル共重合体及び各化合物を8インチオープンロールにおいて混練し、クロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物を得た。表中、「phr」は「質量部」を意味する。表2に示した酸化亜鉛の使用量は、2種の酸化亜鉛の合計量である。
【0096】
表2に示す主な化合物は以下のとおりである。
ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド:三新化学工業株式会社製、サンビットDIX
ジエチルキサントゲンジスルフィド:Sigma-Aldrich社製、O,O-ジエチルジチオビス-(チオホルメート)
3-メチルチアゾリジン-2-チオン:ランクセス社製、レノグランMTT-80
1,1,3-トリメチルチオウレア:大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTMU
エチレンチオウレア:川口化学工業株式会社製、アクセル22S
パーブチルP-40:日本油脂株式会社製、パーブチルP-40
ステアリン酸:新日本理化株式会社製、ステアリン酸50S
老化防止剤PA:大内新興化学工業株式会社製、ノクラックPA
カーボンブラック(ASTM N762):旭カーボン株式会社製、旭#50U
カーボンブラック(ASTM N550):旭カーボン株式会社製、旭#65
石油系プロセスオイル:出光興産株式会社製、ダイアナプロセスオイル
パラフィンワックス:日本精蝋株式会社製、パラフィン130°F
ワセリン:Sonneborn社製、White protopet 1S
酸化マグネシウム:協和化学工業株式会社製、キョーワマグ(登録商標)150
酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛2種
テトラメチルチウラムジスルフィド:大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーTET
【0097】
(加硫成形体の製造と評価)
上述のクロロプレン・アクリロニトリル共重合体組成物を160℃×20分の条件でプレス加硫して、厚さ2mmのシート状の加硫成形体を作製した。この加硫成形体について、上述のスコーチタイム、圧縮永久ひずみ、耐油性及び脆化温度の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0098】
【0099】
表2に示した結果から、実施例のクロロプレン・不飽和ニトリル共重合体組成物によれば、優れた脆化温度を得つつ、スコーチタイム、及び、高温での圧縮永久ひずみを損なわずに、耐油性に優れた加硫物及び加硫成形体を得ることができることがわかった。当該加硫成形体は、これらの性質を有するため、伝動ベルト、コンベアベルト、ホース、ワイパー、シール材(パッキン、ガスケット等)、ロール、空気バネ、防振材、接着剤、ブーツ、ゴム引布、スポンジ、ゴムライニングなどの成形品として好適に使用できる。