(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】外科用電動工具用交換式バッテリーユニット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/16 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A61B17/16
(21)【出願番号】P 2020559013
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 EP2019050313
(87)【国際公開番号】W WO2019141536
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-12-28
(32)【優先日】2018-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516312682
【氏名又は名称】デピュイ・アイルランド・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】DEPUY IRELAND UNLIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】Loughbeg Industrial Estate, Ringaskiddy, County Cork, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ハント・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】レンベール・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング・ダンカン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05207697(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361449(US,A1)
【文献】特表2013-516335(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0166323(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットであって、前記交換可能なバッテリーユニットは、
ハウジングであって、
1つ以上の電池セルと、
運動センサユニットと、
コントローラであって、
前記運動センサユニットの出力から、前記外科用電動工具のキックバック事象を示す前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定し、
前記判定に応答して、前記交換可能なバッテリーユニットから前記外科用電動工具への電力を切断するように動作可能なコントローラと、を収容するハウジングを備える、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項2】
前記交換可能なバッテリーユニットが、前記外科用電動工具のモータへの電流の流れを感知するための電流センサを更に含み、前記コントローラは、前記運動センサユニットの出力及び前記電流センサの出力から、前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きが前記外科用電動工具のキックバック事象を示すかどうかを判定するように更に動作可能である、請求項1に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項3】
前記コントローラは、前記電流センサによって感知された電流の増加から、前記運動センサユニットによって感知された前記交換可能なバッテリーユニットの同時に起こる急な動きが前記外科用電動工具のキックバック事象を示すことを判定するように動作可能である、請求項2に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項4】
前記運動センサユニットが、
ジャイロスコープ、
加速度計、又は、
磁力計、のうちの少なくとも1つを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項5】
前記運動センサユニットが、慣性測定ユニット(IMU)を備える、請求項4に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項6】
前記外科用電動工具のキックバック事象を示す前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きの前記判定に応答する、前記外科用電動工具のモータの短絡巻線の制動装置を更に備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項7】
前記交換可能なバッテリーユニットの前記急な動きが回転運動を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項8】
前記1つ以上の電池セルが再充電可能である、請求項1~7のいずれか一項に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の交換可能なバッテリーユニットを含む、外科用電動工具。
【請求項10】
前記外科用電動工具が、
本体部分と、
前記本体部分から外側に延在するハンドルと、を含み、
前記交換可能なバッテリーユニットが、前記ハンドルに取り付けられるか、又は少なくとも部分的に前記ハンドルの内部に収容されている、請求項9に記載の外科用電動工具。
【請求項11】
前記交換可能なバッテリーユニットが、前記本体部分の遠位の前記ハンドルの端部に取り付けられるか、又は少なくとも部分的にその内部に収容されている、請求項10に記載の外科用電動工具。
【請求項12】
前記外科用電動工具が、回転電動工具を備える、請求項9~11のいずれか一項に記載の外科用電動工具。
【請求項13】
外科用キットであって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の1つ以上の交換可能なバッテリーユニットと、
前記1つ以上の交換可能なバッテリーユニットを収容するように構成された1つ以上の外科用電動工具と、を含む外科用キット。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つの外科用電動工具を含む外科用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットに関する。本発明はまた、交換可能なバッテリーユニット、又は交換可能なバッテリーユニットを含む外科用電動工具を含む外科用キットにも関する。本発明は更に、交換可能なバッテリーユニットを含む外科用電動工具を作動させる方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
外科用電動工具を使用する外科医は、寛骨臼のリーミングなどの処置中にキックバックによって引き起こされる手首の張りから負傷する場合がある。電動工具にトルクリミッターを含めることが知られているが、これらは、手術作業の流れを妨げる場合があり、そのためユーザーによって無効にされる傾向がある。
【0003】
米国特許出願公開第2014/0166323(A1)号は、電動手持ち式工具などの突然の、予期せぬ動き又は危険な動きから操作者を保護するための装置及び方法を記載している。工具の安全な動作のための一連のパラメータが設けられており、このパラメータは、工具を作動させるやり方に基づいて調整又は選択されてもよい。電動工具には、作動中に複数の軸内で工具の加速度を感知するように動作する加速度計を含むセンサが装着されている。加速度計の出力は、工具の加速度が安全な動作パラメータ内にあるかどうかを判定する計算回路に結合される。工具の加速度が安全な動作パラメータのうちの1つ以上を超えるとき、工具の動きを防止又は抑制し、これにより操作者を保護するために、工具のモータへの電力が制限されるか、あるいはそうでない別の方法で調整される。
【0004】
米国特許第5,984,020(A)号は、慣性応答要素を含む工具を記載している。電動工具は、ハウジングと、ハウジングによって支持され、電源に接続されるように適合されたモータと、ハウジングによって支持され、モータに選択的に連結され、モータが運動を付与する出力要素と、ハウジングの動きが所定の閾値を超えた場合、出力要素を電源から切断するための慣性応答要素と、を備える。電動工具は、ハンドルを有する手持ち式電動工具であってよく、慣性応答要素は、ハンドルが所定の比率を超える比率で動いたならば、出力要素を電源から切断する。電動工具は、ドリルプレスなどの固定式電動工具であってもよい。固定式電動工具のハウジングは、加工対象物上に固定式電動工具を支持するための基部を含む。基部は、基部が加工対象物に接続されるとき、ハウジングが加工対象物に対して実質的に固定されるように加工対象物に選択的に接続可能である。慣性応答要素は、ハウジングが所定の比率を超える比率で加工対象物に対して動くとき、出力要素を電源から切断する。
【0005】
米国特許出願公開第2011/0114345(A1)号は、制御されていない遮断状況に介入する少なくとも1つの安全機構を有し、またセンサユニットを有する手持ち式電動工具装置を記載している。センサユニットは、手持ち式電動工具の少なくとも1つの配向パラメータを直接検出するために設けられている。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0084613(A1)号は、電動工具で使用するために提供される制御システムを記載している。制御システムは、共振質量体を有する回転速度センサと、回転速度センサに電気的に接続されたコントローラと、を含む。回転速度センサは、共振質量体の横方向の変位を検出し、検出された横方向の変位を示す信号を生成するため、横方向の変位は、電動工具が回転シャフトの軸を中心に回転する回転速度に正比例する。生成された信号に基づいて、コントローラは、電力工具の更なる望ましくない回転を回避するために保護動作を開始する。コントローラは、シャフトに印加されるトルクを、操作者が工具の制御を取り戻すことを可能にする非ゼロ値まで低減するように命令することができる。
【0007】
欧州特許第2 205 395(B1)号は、ハウジングと、ハウジング内のモータアセンブリと、を含む電動工具を記載している。モータアセンブリは、出力部材と、出力部材を並進させるためのモータと、を含むことができる。キックバックセンサは、モータを通る連続する電流周期をサンプリングし、それに応答して出力を生成することができる。防キックバック制御装置は、キックバックセンサの出力に応答して、出力部材からエネルギーを取り除くことができる。スイッチは、第1の設定及び第2の設定を有することができる。第1の設定は、防キックバック制御装置の第1の動作条件に対応することができる。第2の設定は、防キックバック制御装置の第2の動作条件に対応することができる。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0321930(A1)号は、少なくとも1つの操作部材を含むハンドツール操作ユニットと、操作部材の位置を確認するように構成された位置センサを有する電子操作ユニットとを記載している。ハンドツール操作ユニットは、少なくとも1つの特徴的な変数を確認するように構成された少なくとも1つの別のセンサを追加で含む。
【0009】
米国特許第6,479,958(B1)号は、モータ電流の急速な増加(所定の閾値を超えるdi/dt)により、モータ制御システムが、モータの電流が急速にパルス式にオン及びオフにされるパルスモード動作に入ることで、さもなければモータの失速につながるであろう加工対象物の妨害を取り除く、又は拘束状態から外れることを記載している。加工対象物の妨害又は拘束がなくなると、モータは通常の動作を再開する。
【0010】
米国特許出願公開第2013/0105189(A1)号は、ハウジングと、ハウジング内に配設されたモータと、ハウジング内に配設され、モータに連結された伝達機構と、伝達機構に連結された出力エンドエフェクタと、電源からモータへの電力送達を制御するための制御回路と、伝達機構の実質的に静止した要素に結合された力センサを含む力感知電子クラッチと、含む電動工具を記載している。力センサは、エンドエフェクタから、伝達機構の少なくとも一部に伝達される反応トルクを感知する。センサは、反応トルクの量に対応する第1の電子信号を生成するように構成されている。制御回路は、第1の電子信号を、所望の閾値トルク値に対応する第2の電子信号と比較し、第1の電子信号の値が、反応トルクが所望の閾値トルク値を超えたことを示すとき、保護動作を開始する。
【0011】
米国特許第4,871,033(A)号は、ドリルなどのモータ駆動ハンドツールにおいて、慣性質量体が、ハウジング内に回転可能に支持され、ハウジング内に取り付けられた駆動シャフトを取り囲むバネによってハウジングに接続されることを記載している。駆動シャフトは、シャフトに固定されたドリルビットを回転させるように配置される。駆動シャフトの回転が防止され、ハウジングがシャフトに対して回転する場合、バネは、駆動シャフトの周りできつく締まり、駆動シャフトを把持し、それに対して制動トルクを及ぼす。制動トルクは、工具の操作者に要求される反応トルクを低減し、駆動シャフトに作用する過負荷クラッチのより迅速な解放をもたらす。過負荷クラッチは、カラー、ギアホイール、カップばね及び調節可能なリングナットによって形成され、これらは全て駆動シャフト上に位置する。
【0012】
欧州特許第2 612 733(A2)号は、被駆動要素、すなわちドリルビットを回転駆動するための電気モータを有する工具を記載している。制動ブロックが、モータを制動するために使用され、検出ユニット、すなわちジャイロセンサが、モータの制動ブロックを制御するために工具の回転駆動を検出する。モータは、モータを電気供給装置から隔離し、モータを、電流がモータの逆極性に再注入される電流発生器に変換するように構成されたコンタクタ、すなわち電気機械コンタクタを含む。
【0013】
米国特許出願公開第2013/096539(A1)号は、電子機器と、電力を貯蔵し、電子機器に電力を送達するための容量性電源と、を含む手持ち式デバイスを記載している。容量性電源は、少なくとも1つのコンデンサと、コンデンサからの電圧を、電子機器によって使用するためのより高い電圧に昇圧するように動作可能な電子回路と、を含む。容量性電源は、急速に再充電することができる。いくつかの構成は、手持ち式デバイスが動きを検出し、検出された動きに応答して様々な動作を実行することを可能にする加速度計を含む。二重充電ステーションも開示されている。
【0014】
米国特許出願公開第2017/202607(A1)号は、ボタンの変位又は強度が第1の閾値を上回るが、第1の閾値より高い第2の閾値を下回るとき、RF又は超音波エネルギーの印加を低レベルに制御し、変位又は強度が第2の閾値を超えるとき、RF又は超音波エネルギーの印加を高レベルに制御するように構成されたコントローラを備える外科用器具を記載している。第1の位置で組織特性を測定するように構成された第1のセンサと、第2の位置で組織特性を測定するように構成された第2のセンサと、第1の位置及び第2の位置で測定された組織特性に少なくともある程度基づいて、RF又は超音波エネルギーの印加を制御するように構成されたコントローラと、を備える外科用器具も記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に記載される。従属請求項からの特徴の組み合わせは、独立請求項の特徴と適宜組み合わせることができ、かつ請求項に明示的に記載されるものだけに限定されない。
【0016】
本発明の一態様によって、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットであって、交換可能なバッテリーユニットは、ハウジングであって、
1つ以上の電池セルと、
運動センサユニットと、
コントローラであって、
運動センサユニットの出力から、外科用電動工具のキックバック事象を示す、交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定し、
判定に応答して、交換可能なバッテリーユニットから外科用電動工具への電力を切断するように動作可能なコントローラと、を収容するハウジングを備える、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットが提供される。
【0017】
外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットに運動センサユニットと、コントローラを含めることにより、既存の外科用電動工具がキックバック事象に対する保護を遡及的に備えることを可能にするようなやり方でキックバックを検出することを可能にし得る。外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニット内に運動センサユニットと、コントローラを含むことの別の利益は、これらの機構を形成するいかなる電子機器も滅菌する必要がないことである。これらの機構を収容する交換可能なバッテリーユニットは、無菌移送を使用して外科的処置の前に外科用電動工具に装填されるだけでよい。
【0018】
外科用電動工具におけるキックバックは、電動工具の急な動きを生じさせる場合もあるが、外科用工具のモータへの電流の流れに変化を生じさせる場合もある。例えば、このような電流の流れの変化は、電動工具に取り付けられた回転リーマーなどの器具が骨表面に食い込み、それを捕らえたとき、モータによって印加されるトルクの変化と関連付けることができる。交換可能なバッテリーユニットは、外科用電動工具のモータへの電流の流れを感知するための電流センサを更に含んでもよい。コントローラは、運動センサユニットの出力から、及び電流センサの出力から、交換可能なバッテリーユニットの急な動きが外科用電動工具のキックバック事象を示すかどうかを判定するように更に動作可能であってもよい。このようにして、コントローラは、実際のキックバックと、キックバックの結果ではない電動工具の動きに関連する誤判定とを区別することができる。例えば、コントローラは、電流センサによって感知された電流の増加から、運動センサユニットによって感知された交換可能なバッテリーユニットの同時に起こる急な動きが外科用電動工具のキックバック事象を示すことを判定するように動作可能であってもよい。電流の増加は、モータによって印加される上記に挙げたトルクの変化に関連付けられてもよい。
【0019】
運動センサユニットは、
ジャイロスコープ、
加速度計、又は
磁力計のうちの少なくとも1つを備える。
【0020】
運動センサユニットは、慣性測定ユニット(IMU)であってもよい。
【0021】
一実施形態では、交換可能なバッテリーユニットは、外科用電動工具のキックバック事象を示す交換可能なバッテリーユニットの急な動きの当該判定に応答する、外科用電動工具のモータの短絡巻線の制動装置を含んでもよい。これにより、モータの迅速な制動を可能にすることができる。
【0022】
一実施形態では、交換可能なバッテリーユニットの急な動きは回転運動であってもよい。回転運動は、例えば、寛骨臼の内側表面を捕らえる寛骨臼リーマーであって、リーマーの回転軸を中心として急に回転することによって外科用電動工具をキックバックさせる寛骨臼リーマーに関連付けることができる。
【0023】
一実施形態では、交換可能なバッテリーユニットの急な動きは直線運動である場合もある。
【0024】
1つ以上の電池セルは、再充電可能であってもよい。
【0025】
本発明の別の態様によって、上記の種類の交換可能なバッテリーユニットを含む外科用電動工具が提供される。
【0026】
外科用電動工具は、本体部分を含んでもよい。外科用電動工具はまた、本体部分から外側に延在するハンドルを含んでもよい。交換可能なバッテリーユニットは、ハンドルに取り付けられてもよく、又は少なくとも部分的にハンドルの内部に収容されてもよい。運動センサユニットを有するバッテリーをハンドル上又はハンドル内に配置することによって、運動センサユニットを外科医の手に近接して据えることで、外科医を傷つける可能性がある急な動きの検出を高めることができる。
【0027】
交換可能なバッテリーユニットは、本体部分の遠位のハンドルの端部に取り付けられるか、又は少なくとも部分的にその内部に収容されてもよい。本体部分の遠位の位置において、運動センサユニットを含む交換可能なバッテリーユニットは、急な動き、特に本体部分の急な回転に関連する急な動きを検出するために最適に配置されてよい。
【0028】
外科用電動工具は、回転電動工具、例えば、回転リーマーにトルクを加えるためのドリル又は装置であってもよい。
【0029】
本発明の別の態様によって、外科用キットが提供される。外科用キットは、上記の種類の1つ以上の交換可能なバッテリーユニットを含んでもよい。外科用キットはまた、1つ以上の交換可能なバッテリーユニットを収容するように構成された1つ以上の外科用電動工具を含んでもよい。
【0030】
本発明の別の態様によって、上記の種類の少なくとも1つの外科用電動工具を含む外科用キットが提供される。
【0031】
本発明の別の態様によると、
上記に記載した種類の外科用電動工具を作動させることと、
外科用電動工具の作動中、コントローラが、
運動センサユニットの出力から、外科用電動工具のキックバック事象を示す交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定し、
判定に応答して、交換可能なバッテリーユニットから外科用電動工具への電力を切断することと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の実施形態を、あくまで実例として、添付図面を参照しながら以下に説明する。なお、図中、同様の参照符合は同様の要素を示す。
【
図1】本発明の一実施形態による交換可能なバッテリーユニットを含む外科用電動工具を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態による外科用電動工具及び交換可能なバッテリーユニットの機能的構成要素を概略的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による交換可能なバッテリーユニットの運動センサユニットによって検出され得る外科用電動工具の動きを概略的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態よる方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態を、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による交換可能なバッテリーユニット50を含む外科用電動工具10を示す。外科用電動工具10は、本体部分2を含む。外科用電動工具10はまた、ハンドル4を含み、外科医はこれを使用して外科用電動工具10を保持することができる。ハンドル4は、本体部分2から外側に延在してもよい。外科用電動工具10はまた、チャック8を含んでもよい。チャック8は、リーマー(例えば、患者の寛骨臼をリーミングするのに使用する回転リーマー、又は表面再建インプラントの場合の大腿骨頭部をリーミングするためのリーマー)、外科用ドリルビット、ピン、ねじ付きピン、穴ぐり器、及びそのようなものなどの外科用器具を外科用電動工具10に取り付けるための取り付け機構を含んでもよい。
【0035】
外科用電動工具10はモータ6も含んでおり、これは、以下に説明する交換可能なバッテリーユニット50によって給電される。モータ6は、シャフト18にトルクを印加するように動作可能であってもよく、シャフト18はチャック8に接続され得る。外科用電動工具10は、モータコントローラ14を更に含んでもよい。モータコントローラ14は、モータ6の作動を制御することができる。例えば、外科用電動工具10は、外科用電動工具10を作動させるためのボタン12を含んでもよい。モータコントローラ14は、ボタン12が押されたことを検出すると、モータ6のスイッチを入れてオンにするように動作可能であってよい。ボタン12は、ハンドル4を把持する外科医の手の指によって簡便にそれを押すことができるようにハンドル4上に配置されてよい。
【0036】
外科用電動工具10の本体部分2及びハンドル4は、モータ6、シャフト18、及びモータコントローラ14を収容し、それらを保護する外側ハウジングを備えてもよい。外側ハウジングは、例えばプラスチック材料を含んでもよい。
【0037】
図1はまた、交換可能なバッテリーユニット50も示す。交換可能なバッテリーユニット50は、外科用電動工具10のハウジングに取り付けられるか、又は少なくとも部分的にハウジングの内部に収容されてもよい。
【0038】
この実施形態では、交換可能なバッテリーユニット50は、本体部分2の遠位のハンドル4の端部に取り付けられている。交換可能なバッテリーユニット50は、少なくとも部分的にハンドル4(例えば、遠位端)の内部に収容され得ることも想定される。交換可能なバッテリーユニット50は、外科用電動工具10(例えば、ハンドル4)の内部に位置する区画内に設けられる場合もあることも更に想定される。区画は、交換可能なバッテリーユニット50にアクセスし、交換するためのハッチを含んでもよい。
【0039】
外科用電動工具10及び交換可能なバッテリーユニット50には、交換可能なバッテリーユニット50を外科用電動工具10に取り付けるための対応する接続機構を備わっていてもよい。対応する接続機構は、交換可能なバッテリーユニット50がモータ6に電力を供給できるように、外科用電動工具10と交換可能なバッテリーユニット50との間の電気的接続を完全なものにするための機構を含んでもよい。対応する接続機構はまた、交換可能なバッテリーユニット50を外科用電動工具10から取り外すことを可能にするために、ボタンによって操作される留め金などの解放機構を含んでもよい。
【0040】
この例では、交換可能なバッテリーユニット50はハウジング52を有し、ハウジング52は、以下に記載される交換可能なバッテリーユニット50の機構を収容し、これらに保護を与えることができる。前述したように、交換可能なバッテリーユニット50に本明細書に記載される種類の運動センサユニット及びコントローラなどの機構を含めることの利益は、これらの機構を形成する任意の電子機器を滅菌する必要がないことである(例えば、ハウジング52によって提供されるこれらの機構の保護のおかげで)。これらの機構を収容する交換可能なバッテリーユニット50は、無菌移送を使用して外科的処置の前に外科用電動工具10に装填されるだけでよい。ハウジング52は、例えば、プラスチック材料を含んでもよい。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態による外科用電動工具10及び交換可能なバッテリーユニット50の機能的構成要素の概略図を示す。
【0042】
上述したように、外科用電動工具10は、モータ6を含んでもよい。モータ6は、モータコントローラ14に接続されている。ここで、本実施形態における交換可能なバッテリーユニット50の特徴について説明する。
【0043】
交換可能なバッテリーユニット50は、1つ以上の電池セル62を含む。電池セル62は、再充電可能であってもよい。電池セル6は、任意の好適な種類、例えば、ニッケルカドミウム(NiCd)、ニッケル金属水素化物(NiMH)、リチウムイオン(Liイオン)、リチウムイオンポリマー(Liイオンポリマー)、又はリン酸リチウム鉄(LiFePO4/LFP)であり得る。
【0044】
交換可能なバッテリーユニット50はまた、運動センサユニット70も含む。運動センサユニット70は、以下のジャイロスコープ、加速度計、又は磁力計のうちの1つ以上を含んでもよい。ジャイロスコープは、1D、2D、又は3Dジャイロスコープであってもよい。加速度計は、1D、2D、又は3D加速度計であってよい。磁力計は、1D、2D、又は3D磁力計であってもよい。運動センサユニット70は、これらのセンサの種類の組み合わせを含み得ることが想定される。運動センサユニット70は、慣性測定ユニット(IMU)であり得ることが想定される。
【0045】
運動センサユニット70は、交換可能なバッテリーユニット50の動きを検出するために使用されてよい。交換可能なバッテリーユニット50の急な動きは、外科用電動工具10のキックバック事象を示す場合がある。運動センサユニット70は、外科用電動工具10のキックバック事象に通常関連付けられる、交換可能なバッテリーユニット50の所定の方向の動き、又は(回転運動の場合には)軸の周りの動きを検出するように構成されてよい(例えば、交換可能なバッテリーユニット50の中に配向される)。
【0046】
図3は、本発明の一実施形態による交換可能なバッテリーユニット50の運動センサユニット70によって検出され得る外科用電動工具10の動きを概略的に示す。
図3では、外科用電動工具がデカルト座標の中心に位置しており、シャフト18の回転軸はx軸に沿って配向されていると想定される。また交換可能なバッテリーユニット50の運動センサユニット70は、位置92に位置すると想定される。例えば、交換可能なバッテリーユニット50は、ハンドルが負のz方向に沿って延在する状態で、上記に記載するようにハンドル4に取り付けられてよい、又は少なくとも部分的にハンドル4の内部に収容されてもよい。
【0047】
キックバック事象の間、チャック8に取り付けられたリーマー又はドリルビットなどの外科用器具は、患者の骨表面に食い込み、それを捕らえることができる。これによって、外科用電動工具10は、90で標識された
図3の矢印によって示されるように、シャフト18の回転軸(この例ではx軸)を中心に回転し始める可能性がある。位置92において、これにより、運動センサユニット70は、
図3において94で標識された矢印によって示されるように、x-y平面に向かって上向きに円弧状に運動し始める可能性がある。運動センサユニット70が動く方向(すなわち、正のy方向又は負のy方向に向かう)は、キックバック事象より前のシャフト18の回転方向に依存する。
【0048】
小さい動きの場合、又は位置92がシャフト18の回転の軸(この例ではx軸)から十分に離れている場合、運動センサユニット70の動きは、線形であると近似される場合もある(
図3の矢印96によって示されるように)。運動センサユニット70は、回転運動/又は直線運動を検出するためのセンサ装置を含んでもよい。
【0049】
運動センサユニット70による動きの効果的な検出のために、ジャイロスコープ、加速度計、及び/又は磁力計などのその機構は、動きの検出のためのそれぞれのそのままの軸/複数の軸が、キックバック事象における交換可能なバッテリーユニット50の予測される動きと一致するように位置合わせされるように、交換可能なバッテリーユニット50内に配向されてよい。例えば、1D/2D/3Dジャイロスコープの場合、ジャイロスコープの軸は、外科用電動工具10の回転の軸(例えば、前述したようなシャフト18の回転の軸)に平行に位置合わせされてよい。
図3の例では、1D/2D/3Dジャイロスコープの軸は、x軸と平行に位置合わせされてもよい。
【0050】
図2に戻ると、交換可能なバッテリーユニット50は、コントローラ60を更に含む。コントローラ60は、運動センサユニット70に接続されている。コントローラ60は、運動センサユニット70の出力を監視して、そこから、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きの検出を判定するように動作可能であり得る。交換可能なバッテリーユニット50の正常な運動を、キックバック事象に関連付けられ得る急な運動と区別するために、コントローラ60は、運動センサユニット70によって出力されたデータに特定のアルゴリズムを適用することが可能であり得る。これらのアルゴリズムは、例えば、出力データと特定の閾値の比較を含んでもよい。これらの閾値に達するか又はこれを超えた場合、コントローラ60は、キックバック事象が発生していると結論を下してもよい。
【0051】
運動センサユニット70が2つ以上の種類の検出デバイス(例えば、ジャイロスコープと加速度計、ジャイロスコープと磁力計、加速度計と磁力計、又はジャイロスコープと加速度計と磁力計)を含む実施形態では、コントローラ60は、それぞれから受信したデータを比較するように動作可能であり得る。このようにして、誤判定を低減することができる(例えば、運動センサユニット70の検知装置の全て又は大部分からのデータが急な動きを示した場合のみ、キックバック事象が判定され得る)。以下に説明するように、コントローラ60はまた、キックバック事象が起きているかどうかを判定するとき、モータ6への電流の流れなどの他の要因を考慮するように動作可能であってもよい。
【0052】
コントローラ60は、運動センサユニット70の出力が、外科用電動工具10のキックバック事象を示す、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きと一致していると判断すると、交換可能なバッテリーユニットから外科用電動工具10への電力を切断するように動作可能である。外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニット50に運動センサユニット70と、コントローラ60を含めることにより、既存の外科用電動工具がキックバック事象に対する保護を遡及的に備えるようなやり方でキックバックを検出することを可能にし得る。更に、交換可能なバッテリーユニット50が外科用電動工具10の先端部に取り付けられるか、又は少なくとも部分的に先端部に収容される実施形態では、運動センサユニット70は、シャフト18の回転軸から離れて位置付けられてよい。これにより、シャフト18の回転軸の周りでの外科用電動工具10の急な動きを引き起こすキックバック事象を検出する運動センサユニット70の感度を高めることができる。例えば、
図1に関して説明したように、交換可能なバッテリーユニット50は、モータ6及びシャフト18を収容する本体部分2の遠位のハンドル4の端部に取り付けられてもよい、又は少なくとも部分的にその中に収容されてもよい。この位置において、運動センサユニット70は、シャフト18の回転軸の周りでの外科用電動工具10の急な動きを検出するために最適に配置されてよく、その一方で交換可能なバッテリーユニット50のハンドル4内又はハンドル4上の簡便な設置を可能にする。運動センサユニット70を有する交換可能なバッテリーユニット50をハンドル4上又はハンドル4内に配置することによって、運動センサユニット70を外科医の手に近接して据えることで、外科医を傷つける可能性がある急な動きの検出を高めることができることにも留意されたい。
【0053】
交換可能なバッテリーユニット50はまた、トランジスタなどの電源スイッチ66を含んでもよい。コントローラ60は、電源スイッチ66の制御端子に接続され得る。コントローラ60は、電源スイッチ66を使用して、交換可能なバッテリーユニット50から外科用電動工具10に電力を接続し、また(例えば、本明細書に記載されるようなキックバック事象の間)交換可能なバッテリーユニット50から外科用電動工具10への電力を切断するように動作可能であってよい。
【0054】
交換可能なバッテリーユニット50はまた、電源ユニット68を含んでもよい。電源ユニット68は、コントローラ60及び運動センサユニット70など、交換可能なバッテリーユニット50の他の構成要素に電力を供給するために、1つ以上の電池セル62から電力を引き出すことができる。電源ユニット68は、電圧コンバータを備えてもよい。電源ユニット68は、低電力待機モード(>1uA)を有してもよい。一実施形態では、電源ユニット68は、交換可能なバッテリーユニット50の外科用電動工具10への取り付け/挿入を検出し、コントローラ60の電源を入れる、また任意選択的に、運動センサユニット70などの別の構成要素の電源を入れるウェイクアップ機能を有してもよい。一実施形態では、コントローラ60は、交換可能なバッテリーユニット50の電源を切断するように動作可能であってもよい(例えば、交換可能なバッテリーユニット50の外科用電動工具10からの取り外しが検出された場合、又はタイムアウト状態が満たされたとき(すなわち、外科用電動工具10がある程度の時間、使用されていないと判定される))。
【0055】
本明細書に記載されるように、外科用電動工具10におけるキックバックは、外科用電動工具10の急な動きを生じさせる場合がある。しかしながら、キックバックは、モータ6への電流の流れに変化をもたらす場合もある。これは、外科用電動工具10に取り付けられた回転リーマーなどの器具が骨表面に食い込み、それを捕らえたとき、モータ6によって印加されるトルクの変化と関連付けることができる。本発明の一実施形態によれば、これらの電流の変化を検出し、キックバック事象が起きていることの別のインジケータとして使用することができる。
【0056】
図2に示すように、交換可能なバッテリーユニット50は、電流センサ64を更に含んでもよい。コントローラ60は、電流センサ64に接続されて、外科用電動工具10のモータ6への電流の流れを示す電流センサ64の出力を受信してもよい。コントローラ60は、運動センサユニット70の出力及び電流センサ64の出力から、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きが外科用電動工具10のキックバック事象を示すかどうかを判定するように動作可能であり得る。
【0057】
このようにして、コントローラは、実際のキックバックと、キックバックの結果ではない外科用電動工具10の動きに関連する誤判定とを区別することができる。例えば、コントローラ60は、電流センサ64の出力に、同時に起こる変化が生じていない場合、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きはキックバック事象に関連していないと判定するように動作可能であってよい。
【0058】
一実施形態では、運動センサユニット70によって感知された、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きと同時に起こる、電流センサ64によって感知されるモータ6への電流の増加は、本物のキックバック事象を示すものとしてコントローラ60によって解釈されてよい。電流自体の増加は、上述のように、外科用器具が骨表面に食い込み、それを捕らえたとき、モータ6によって印加されるトルクの増加と関連付けられてよい。
【0059】
一実施形態では、運動センサユニット70は、1Dジャイロスコープを含む場合もある。ジャイロスコープは、外科用電動工具10の回転の軸(例えば、前述したようなシャフト18の回転軸)に関する角速度の変化を検出するように配向されてよい。この種の運動センサユニット70はまた、上述の種類の電流センサ64と併せて使用されてもよく、これにより、コントローラ60が、外科用電動工具10の急な動きが、モータ6によって印加されるトルクの増加に関連するモータ6への電流の増加と同時に起こっているかどうかを判定することによって、コントローラ60が誤判定を低減することを可能にし得る。
【0060】
本明細書に記載されるように、運動センサユニット70は、2つ以上の方向成分を有する、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きを判定するように動作可能な機構を含んでもよい。例えば、運動センサユニット70は、以下により詳細に記載されるように、2D/3Dジャイロスコープ、2D/3D加速度計、及び/又は2D/3D磁力計を含んでもよい。これにより、運動センサユニット70が、例えば、1Dジャイロスコープ、1D加速度計、又は1D磁力計を使用する実施形態と比較して、交換可能なバッテリーユニット50によって検出される誤判定の数を低減することを可能にし得る。例えば、2D/3Dジャイロスコープ、2D/3D加速度計、及び/又は2D/3D磁力計を使用することにより、運動センサユニット70と外科用電動工具10の回転の軸との位置合わせ不良に対して修正を行うことを可能にすることができる。本明細書に記載されるような2つ以上の方向成分を有する、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きを判定するように動作可能な機構の使用はまた、例えば、キックバック事象が2つ以上の軸に対する動きとしてそれ自体を全体的に表すことが知られている場合、キックバック事象のより正確な特徴付けを可能にすることもできる。本明細書に記載される機能(すなわち、2つ以上の方向成分を有する交換可能なバッテリーユニット50の急な動きの判定)はまた、2つ以上のセンサ(例えば、1D/2D/3D加速度計と組み合わされた1Dジャイロスコープ)の組み合わせを使用することによって達成される場合もあることが想定される。
【0061】
較正工程が、外科用電動工具10の使用前に実行される場合もあることが想定されており、これによって、運動センサユニット70の座標系で取得された読み取り値を、外科用電動工具10の実際の回転の軸に基づいた座標系に変換/分解することができるこれにより、上述した外科用電動工具10の回転の軸に対する運動センサユニット70の位置合わせ不良を補正することを可能にすることができる。
【0062】
一実施形態では、運動センサユニット70は、3Dジャイロスコープを含む場合もある。3Dジャイロスコープは、外科用電動工具10の角速度の変化を検出することができる。このような変化は、外科用電動工具10の回転の通常の軸(例えば、前述したようなシャフト18の回転の軸)の周りの変化であり得るが、他の軸の周りの角速度の変化も含む場合もある。上述のように、これにより、運動センサユニット70は、交換可能なバッテリーユニット50によって検出される誤判定の数を低減すること、及び/又は1Dジャイロスコープを使用する実施形態と比較してキックバック事象のより正確な特徴付けを可能にすることができる。
【0063】
更なる実施形態では、運動センサユニット70は加速度計を含んでもよい。加速度計は、1D、2D、又は3D加速度計であってよい。このような実施形態では、コントローラ60は、加速度計及び/又はその導関数によって提供される加速度信号から、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きを判定するように動作可能であってもよい。一実施形態では、コントローラ60は、加速度信号及び/又はその導関数を、典型的なキックバック事象に関連する加速度プロファイルと比較するアルゴリズムを適用するように動作可能であってもよい。1D、2D、又は3D加速度計の代わりに、1D、2D、又は3D磁力計が使用される場合もあることも想定される。1D、2D、若しくは3D加速度計、又は1D、2D、若しくは3D磁力計を含む運動センサユニット70が、上述の種類の電流センサ64と共に使用されることで、外科用電動工具10の急な動きが、モータ6によって印加されるトルクの増加に関連するモータ6への電流の増加と同時に起こっているかどうかを判定することによって、コントローラ60が誤検出を低減することを可能にする場合もある。
【0064】
別の実施形態では、運動センサユニット70は、3D加速度計、3D磁力計、3Dジャイロスコープ、及び電流センサ64を含む場合もある。運動センサユニット70の各3Dセンサデバイスの出力に対するキックバック事象の判定に基づくことと、それをモータ6を流れる電流の検出と組み合わせることによって、少ない数の誤判定のキックバックのロバストな検出が達成され得ることが想定される。
【0065】
交換可能なバッテリーユニット50はまた、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きが外科用電動工具10のキックバック事象を示すという判定に応答する、外科用電動工具10のモータ6の短絡巻線のための制動装置72を含んでもよい。これにより、モータ6の迅速な制動を可能にすることができる。
【0066】
一実施形態では、本明細書に記載される種類の1つ以上の交換可能なバッテリーユニット50を含む外科用キットが提供されてもよい。外科用キットはまた、1つ以上の交換可能なバッテリーユニット50を収容するように構成された1つ以上の外科用電動工具10を含んでもよい。一実施形態では、本明細書に記載される種類の少なくとも1つの外科用電動工具10を含む外科用キットが提供されてもよく、各外科用電動工具10は、取り付けられた交換可能なバッテリーユニット50を有する。
【0067】
図4は、本発明の一実施形態による、方法80におけるいくつかの工程を示す。
【0068】
第1の工程82において、方法80は、上述の種類の外科用電動工具10を作動させることを含む。工程82は、様々な異なる種類の外科手術の一部を形成してもよい。一実施例では、工程82は、外科用電動工具10の(例えば、チャック8)に取り付けられた外科用ドリルビットを使用して骨にドリルで穴あけすることを含む。別の例では、工程82は、股関節置換手技中に寛骨臼の内面をリーマーで加工するために、外科用電動工具10に取り付けられた回転リーマー(例えば、チャック8)を使用することを含む。工程82は一般に、モータ6が外科用電動工具10に取り付けられた外科用器具にトルクを印加しながら、外科医が外科用電動工具10を保持する(例えば、ハンドル4)ことを含んでもよい。
【0069】
工程84は、外科用電動工具10の作動中に実行される。工程84は、コントローラ60が、運動センサユニット70の出力から、交換可能なバッテリーユニット50の急な動きが外科用電動工具のキックバック事象を示すことを判定することを含む。ステップ84は、運動センサユニット70の出力に上述した種類のアルゴリズムを適用することを含んでもよい。工程84はまた、上述のように、電流センサ64の出力を監視して、運動センサユニット70によって示される交換可能なバッテリーユニット50の急な動きがモータ6への電流の変化と同時に起こっているかどうかをチェックすることを含んでもよい。
【0070】
ステップ86において、キックバック事象の判定に応答して、コントローラは交換可能なバッテリーユニット50から外科用電動工具10への電力を切断する。これは、コントローラ60が電源スイッチ66に制御信号を適用して電力を切断することを含んでもよい。ステップ86はまた、モータ6の迅速な制動のために制動装置72を作動させることを含んでもよい。
【0071】
したがって、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニット、及び交換可能なバッテリーユニットを含む外科用電動工具を作動させる方法が記載されている。交換可能なバッテリーユニットは、1つ以上の電池セルと、運動センサユニットと、コントローラと、を収容するハウジングを含む。コントローラは、運動センサユニットの出力から、外科用電動工具のキックバック事象を示す交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定するように動作可能である。コントローラはまた、判定に応答して、交換可能なバッテリーユニットから外科用電動工具への電力を切断するように動作可能である。
【0072】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、特許請求される発明の範囲内で多くの変更/追加、及び/又は置換を行い得ることが理解されよう。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) 外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニットであって、前記交換可能なバッテリーユニットは、
ハウジングであって、
1つ以上の電池セルと、
運動センサユニットと、
コントローラであって、
前記運動センサユニットの出力から、前記外科用電動工具のキックバック事象を示す前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定し、
前記判定に応答して、前記交換可能なバッテリーユニットから前記外科用電動工具への電力を切断するように動作可能なコントローラと、を収容するハウジングを備える、外科用電動工具用の交換可能なバッテリーユニット。
(2) 前記交換可能なバッテリーユニットが、前記外科用電動工具のモータへの電流の流れを感知するための電流センサを更に含み、前記コントローラは、前記運動センサユニットの出力及び前記電流センサの出力から、前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きが前記外科用電動工具のキックバック事象を示すかどうかを判定するように更に動作可能である、実施態様1に記載の交換可能なバッテリーユニット。
(3) 前記コントローラは、前記電流センサによって感知された電流の増加から、前記運動センサユニットによって感知された前記交換可能なバッテリーユニットの同時に起こる急な動きが前記外科用電動工具のキックバック事象を示すことを判定するように動作可能である、実施態様2に記載の交換可能なバッテリーユニット。
(4) 前記運動センサユニットが、
ジャイロスコープ、
加速度計、又は、
磁力計、のうちの少なくとも1つを備える、実施態様1~3のいずれかに記載の交換可能なバッテリーユニット。
(5) 前記運動センサユニットが、慣性測定ユニット(IMU)を備える、実施態様4に記載の交換可能なバッテリーユニット。
【0074】
(6) 前記外科用電動工具のキックバック事象を示す前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きの前記判定に応答する、前記外科用電動工具のモータの短絡巻線の制動装置を更に備える、実施態様1~5のいずれかに記載の交換可能なバッテリーユニット。
(7) 前記交換可能なバッテリーユニットの前記急な動きが回転運動を含む、実施態様1~6のいずれかに記載の交換可能なバッテリーユニット。
(8) 前記1つ以上の電池セルが再充電可能である、実施態様1~7のいずれかに記載の交換可能なバッテリーユニット。
(9) 実施態様1~8のいずれかに記載の交換可能なバッテリーユニットを含む、外科用電動工具。
(10) 前記外科用電動工具が、
本体部分と、
前記本体部分から外側に延在するハンドルと、を含み、
前記交換可能なバッテリーユニットが、前記ハンドルに取り付けられるか、又は少なくとも部分的に前記ハンドルの内部に収容されている、実施態様9に記載の外科用電動工具。
【0075】
(11) 前記交換可能なバッテリーユニットが、前記本体部分の遠位の前記ハンドルの端部に取り付けられるか、又は少なくとも部分的にその内部に収容されている、実施態様10に記載の外科用電動工具。
(12) 前記外科用電動工具が、回転電動工具を備える、実施態様9~11のいずれかに記載の外科用電動工具。
(13) 外科用キットであって、
実施態様1~8のいずれかに記載の1つ以上の交換可能なバッテリーユニットと、
前記1つ以上の交換可能なバッテリーユニットを収容するように構成された1つ以上の外科用電動工具と、を含む外科用キット。
(14) 実施態様9~12のいずれかに記載の少なくとも1つの外科用電動工具を含む外科用キット。
(15) 方法であって、
実施態様9~12のいずれかに記載の外科用電動工具を作動させることと、
前記外科用電動工具の前記作動中、前記コントローラが、
前記運動センサユニットの出力から、前記外科用電動工具のキックバック事象を示す前記交換可能なバッテリーユニットの急な動きを判定し、
前記判定に応答して、前記交換可能なバッテリーユニットから前記外科用電動工具への電力を切断することと、を含む、方法。