(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】合成固形洗剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 1/28 20060101AFI20230417BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20230417BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20230417BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20230417BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20230417BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20230417BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20230417BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20230417BHJP
C11D 3/26 20060101ALI20230417BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20230417BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/23 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230417BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C11D1/28
C11D1/14
C11D1/29
C11D3/20
C11D17/06
C11D3/04
C11D3/22
C11D3/37
C11D3/26
C11D1/68
A61Q19/10
A61K8/46
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/73
A61K8/23
A61K8/365
A61K8/42
(21)【出願番号】P 2020567851
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 MY2019050029
(87)【国際公開番号】W WO2019235911
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】PI2018702242
(32)【優先日】2018-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】517182169
【氏名又は名称】ケーエル‐ケポン オレオマス スンディリアン ブルハド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】ペトコフ,ヨルダン トドロフ
(72)【発明者】
【氏名】シイ,フイ
(72)【発明者】
【氏名】カルパヤ,カナン
(72)【発明者】
【氏名】ウン,イー ウェイ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05965508(US,A)
【文献】特開2003-096489(JP,A)
【文献】特開昭59-084995(JP,A)
【文献】特表平06-501041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
A61Q
A61K 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー、ペレット、又はフレークの形態の合成固形洗剤組成物であって、
16個から18個の炭素原子(C16~C18)の鎖長を有する脂肪酸のスルホン化メチルエステルと、
アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共界面活性剤と、
セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはセトステアリルアルコールからなる群から選択される脂肪アルコールと、
飽和脂肪酸と、
小麦デンプン、コーンスターチ、またはそれらの組み合わせであるフィラーと、
保湿剤(a humectant/moisturiser)と、
水添植物油、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせであるひび割れ防止剤と、を含み、
前記スルホン化メチルエステルが、前記組成物の重量に対して5重量%から30重量%の量で存在し、
前記スルホン化メチルエステルが、化合物の重量に対して60重量%から90重量%のC16スルホン化メチルエステルと10重量%から40重量%のC18スルホン化メチルエステルを含む化合物であり、
前記脂肪アルコールが、前記組成物の重量に対して5重量%から20重量%の量で存在する、合成固形洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記共界面活性剤が、前記組成物の重量に対して1重量%から40重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルキルスルホコハク酸塩がスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アルキル硫酸塩が、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせである、請求項1から3のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項5】
前記アルキルエーテル硫酸塩がラウリルエーテル硫酸ナトリウムである、請求項1から4のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項6】
前記飽和脂肪酸が前記組成物の重量に対して1重量%から30重量%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項7】
前記飽和脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである、請求項1から6のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項8】
前記フィラーが前記組成物の重量に対して1重量%から40重量%の量で存在する、請求項1から7のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項9】
前記保湿剤(a humectant/moisturiser)が前記組成物の重量に対して1重量%から10重量%の量で存在する、請求項1から
8のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項10】
前記保湿剤(a humectant/moisturiser)が、グリセリン、水、尿素、乳酸ナトリウム、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである、請求項1から
9のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項11】
前記ひび割れ防止剤が、前記組成物の重量に対して1重量%から15重量%の量
で存在する、請求項1から
10のいずれか一つに記載の組成物。
【請求項12】
前記共界面活性剤の群にアルキルポリグリコシドが選択のためにさらに含まれる、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成固形洗剤(合成固形洗浄剤)組成物に関する。より具体的には、本発明は、天然由来のスルホン化メチルエステルを含む合成固形洗剤組成物に関し、これは、身体用の固形クリーニング剤や洗濯用の固形剤として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
石鹸は、紀元前2500年のメソポタミア文明で存在または発明されて以来、身体の衛生状態において重要な役割を果たしている。身体の衛生状態とは別に、石鹸は、今日、多くの家庭用および工業用のクリーニング処理でも使用されている。現在の技術では、固形石鹸(bar soaps)は、トリグリセリドの連続した鹸化または脂肪酸のアルカリによる中和によって工業的に製造されている。
【0003】
ここ数十年で、石鹸の役割は時間とともに進化し、クレンジングの目的だけでなく、スキンケアの目的で使用されている。石鹸は、クリーミーな泡を豊富に生成することが期待されており、これにより、優れたクレンジング効果を提供する。同時に、消費者はまた、石鹸が保湿または保水効果(a moisturizing or hydrating effect)を提供し、クレンジング後の皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚に有害な外的影響から皮膚を保護することを期待している。したがって、固形石鹸の製造者は、消費者からの増大するこれらの要求と期待を満たす新しい成分を常に探している。
【0004】
脂肪酸塩のみを含み、任意で遊離脂肪酸を含んでいる、市場で入手可能な高いpHのアルカリ石鹸は、期待されるスキンケアとクレンジング特性を提供することができない。これらは化学的に過酷(高pH)であるため、消費者の肌に刺激やひび割れの影響を与える可能性がある。したがって、刺激を最小限に抑えながらクレンジング効果を最大化するために、別のタイプの固形石鹸、すなわち、コンビネーション固形剤(combination bars)やコンボ石鹸(combo soaps)が業界に導入されている。コンボ石鹸は、脂肪酸塩に加えて、ココイルイセチオン酸ナトリウムやスルホコハク酸塩などの合成界面活性剤の組み合わせを使用して、肌のマイルドさ(mildness)を促進する。コンボ石鹸には脂肪酸塩が含まれており、従来の石鹸よりも刺激が少ないが、合成固形洗剤(syndet bar)よりもマイルドではない。
【0005】
合成固形洗剤(syndet bar)や合成固形洗浄剤(synthetic detergent bars)は、洗浄性を備えた異なる界面活性剤または張力活性剤(tensioactive agents)の組み合わせにより作られる、せっけん成分を含まない(soap-free)新しいタイプの固形クレンジング剤(cleansing bars)である。不純物は別として、合成固形洗剤(syndet bar)も脂肪酸塩を含まず、合成界面活性剤のみを含んでいる。合成界面活性剤は、一般に天然由来の鉱油、植物油、または動物性脂肪に由来するため、製造される合成固形洗剤はマイルドで、身体用の固形クレンジング剤または固形皮膚剤(dermatological bars)として有益であることが知られている。さらに、合成固形洗剤はしばしば皮膚の刺激を防ぐ中性のpHを有している。
【0006】
業界で入手可能な合成固形洗剤は、一般にココイルイセチオン酸ナトリウムで作れている。合成固形洗剤の製造でココイルイセチオン酸ナトリウムが広く使用されているため、この成分の価格も業界で法外に高くなっている。ココイルイセチオン酸ナトリウムで作られた合成固形洗剤組成物に関し、多くの技術が当技術分野に存在している。例えば、米国特許第5691287号は、固形クレンジング剤の重量に対して20重量%から35重量%の量のココイルイセチオン酸ナトリウムを含む低刺激性の固形クレンジング剤組成物を開示している。この組成物はまた、比較的少量の脂肪酸とともに脂肪アルコールを含んでいる。この文献には、低刺激効果に加えて、その洗浄または軟化効果(its detergency or softening effect)を考慮した固形クレンジング剤組成物の性能に関する開示がない。ココイルイセチオン酸ナトリウムを主成分として使用しているため、この固形クレンジング剤の製造コストは比較的高くなる。その上、ココイルイセチオン酸ナトリウムもマイルドな界面活性剤と考えられており、所望の洗浄力を生じさせない可能性がある。
【0007】
α-スルホ脂肪酸メチルエステルまたはメチルエステルスルホン酸塩(MES)としても知られているSMEは、近年、界面活性剤としてますます使用されている。SMEは、洗濯洗浄剤や食器用洗浄剤など、さまざまな産業用途への適用に適したアニオン性界面活性剤のクラスに属している。SMEsは、パーム油などの天然の再生可能な資源に由来するため、生分解性であることが知られており、環境に優しい代替界面活性剤と考えられている。そのような再生可能性のために、それらは、界面活性剤として特定の合成洗剤配合物(certain synthetic detergent formulas)に含まれるためのより魅力的な選択肢になりつつある。したがって、限られた数の固形石鹸の製造技術が、固形剤組成物(bar composition)の主成分としてココイルイセチオン酸ナトリウムの代わりにSMEsを使用し始めている。
【0008】
一例として、米国特許出願公開第2007004611号は、第1界面活性剤としてSMEを含む、「ソープヌードル(soap noodle)」としても知られる、身体用のクリーニングまたは固形洗剤石鹸(detergent soap bar)での使用に適した組成物を開示している。この組成物はまた、スルホコハク酸塩およびアルキル硫酸塩などの第2界面活性剤を含む。しかしながら、開示される組成物は、主成分として石鹸、好ましくは獣脂および/またはココナッツ石鹸を含んでいる。この公報には、組成物が、硬度が改善され、耐傷性が改善され、摩耗率が低下され、消費者が使用している間に形成されるマッシュが減少された前駆クリーニング剤(precursor cleaning)又は洗濯用固形剤(laundry bar)であるとも記載されている。この公報は、改善された保湿または軟化効果を一切開示しない。この獣脂および/またはココナッツ石鹸を含む固形石鹸組成物は、固形コンボ石鹸組成物(combo bar composition)と見なされる。また、この公報には、合成固形洗剤がしばしば物理的特性が低く、製造が困難なマイルドな界面活性剤で作られていると述べられている。
【0009】
改善された軟化効果と同等のクレンジング性能を有する合成固形洗剤を生じさせることができる長炭素鎖SMEを必須成分として含む特定の合成固形洗剤組成物が開示される先行技術はない。したがって、改善されたSMEベースの合成固形洗剤組成物が望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的の1つは、身体用のクリーニング、洗濯または食器洗いのためのクレンジングおよびスキンケア製品として有用である、改善された軟化効果を有する自然でマイルドなクレンジング製品を提供するにあたって、必須成分としてSMEを含む合成固形洗剤組成物を提供することである。
【0011】
本発明は、ココイルイセチオン酸ナトリウムベースの合成固形洗剤と比較して、改善された軟化効果と同等のクレンジング性能を提供するSMEベースの合成固形洗剤組成物を提供することを目的とする。SMEベースの合成固形洗剤組成物は、製造コストが低く、消費者にとって費用効果が高くあるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的の少なくとも1つは、全体的または部分的に、本発明によって満たされる。本発明の一実施形態は、合成固形洗剤又は合成固形洗浄剤組成物であって、16個から18個の炭素原子(C16~C18)の鎖長を有する脂肪酸のSMEと、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共界面活性剤と、セチルアルコール、ステアリルアルコールまたはセトステアリルアルコールからなる群から選択される脂肪アルコールと、飽和脂肪酸と、フィラーと、保湿剤(a humectant/moisturiser)と、を含み、前記SMEが、前記組成物の重量に対して5重量%から30重量%の量で存在する、合成固形洗剤又は合成固形洗浄剤組成物である。
【0013】
本明細書において、以下の用語は、アニオン性界面活性剤としてそれらに割り当てられた以下の意味を有する。
【0014】
「アルキルスルホコハク酸塩」は、式M+(O3SCH(CO2R1)CH2CO2R2)-を有するスルホコハク酸エステルを含むスルホコハク酸塩型(sulfosuccinate-type)のアニオン性界面活性剤であり、M+はナトリウムNa+などのアルカリ金属カチオンを含むカチオンであり、R1が水素HでありR2がアルキルであるか、または、R1およびR2が両方ともアルキルである。
【0015】
「アルキル硫酸塩」は、官能基構造(functional group structure)R-O-SO3
-を有する有機硫酸塩であり、Rは、アルキルを含む有機残基(organic residue)である。
【0016】
「アルキルエーテル硫酸塩」(AES)は、一般式RO(CH2CH2O)nSO3Mを有するアルキル硫酸塩の特定のグループ(specific group of alkyl sulfate)であり、Rは8~18個の炭素原子を有するアルキル基を表し、nは約2~10などの平均付加モル数を表し、Mは水溶性塩を生成するカチオンを表し、これには、ラウレス硫酸ナトリウム(SLES)、容認された収縮(an accepted contraction)のラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、デシルエーテル硫酸アンモニウム(ammonium decyl ether sulfate)などの化粧品原料国際命名法(INCI)による名称で知られている化合物が含まれる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、SMEは、化合物の重量に対して55重量%から99重量%のC16SMEと45重量%から1重量%のC18SMEを含有する化合物である。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、共界面活性剤は、組成物の重量に対して1重量%から40重量%の量で存在する。特定の実施形態によれば、共界面活性剤は、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸塩や、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリル硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせなどのアルキル硫酸塩や、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)などのアルキルエーテル硫酸塩であり得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、脂肪アルコールが、組成物の重量に対して1重量%から30重量%の量で存在することを開示する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態は、飽和脂肪酸が、組成物の重量に対して1重量%から30重量%の量で存在することを開示する。好ましくは、飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。
【0021】
本発明の別の実施形態は、フィラーが、組成物の重量に対して1重量%から40重量%の量で存在することを開示する。特定の実施形態において、フィラーは、小麦デンプン、コーンスターチ、米デンプン、大麦デンプン、オート麦、タピオカ、タルカム、硫酸ナトリウム、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。
【0022】
本発明の実施形態によれば、保湿剤(humectant/moisturiser)は、組成物の重量に対して1重量%から10重量%の量で存在する。好ましくは、保湿剤は、グリセリン、水、尿素、乳酸ナトリウム、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。便宜上、水はここでグループ化されているが、それはむしろ溶媒であり、処方を100%にするために添加される。
【0023】
本発明のさらなる実施形態は、合成固形洗剤組成物が、組成物の重量に対して1重量%から15重量%の量のひび割れ防止剤をさらに含むことを開示する。例えば、ひび割れ防止剤は、水添植物油、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面で十分に説明または図示され、添付の特許請求の範囲で特に指摘される、新規の特徴および構成の組み合わせからなり、細部における様々な変更は、本発明の範囲から逸脱したり、本発明の利点のいずれかを犠牲にしたりすることなく、当業者によってもたらされ得ることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明は、本発明の好ましい実施形態に従い、添付の説明および図面を参照して説明する。しかしながら、説明を本発明の好ましい実施形態および図面に限定することは、単に本発明の議論を容易にすることであり、当業者が、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な修正を考え出せることが想定されていることを理解されたい。
【0026】
本発明は、16個から18個の炭素原子(C16~C18)の鎖長を有する脂肪酸のSMEと、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される共界面活性剤(co-surfactant)と、セチルアルコール、ステアリルアルコールまたはセトステアリルアルコールからなる群から選択される脂肪アルコールと、飽和脂肪酸と、フィラーと、保湿剤(humectant/moisturiser)を含む固形洗浄剤組成物を開示する。ここで、SMEは、組成物の重量に対して5重量%から30重量%の量で存在する。
【0027】
SMEは、洗浄力だけでなく、皮膚に有益な効果、たとえば自然、マイルド及び軟化効果を提供する界面活性剤として合成固形洗剤組成物に使用される。ここで、「界面活性剤」または「界面活性剤システム」という用語は、液体と気体の間、または2つの液体の間、または液体と固体の間の表面張力(surface tension)または界面張力(interfacial tension)を低下させることができる1つまたは複数の化合物を指す。したがって、界面活性剤は、湿潤剤(wetting agents)、乳化剤、または洗剤として有用である。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、合成固形洗剤組成物に使用されるSMEは、16個から18個の炭素原子(すなわち、C16-C18SME)の鎖長を有する脂肪酸の長炭素鎖SMEである。C16SMEおよびC18SMEは、それぞれ、以下の式(I)および式(II)に示す分子構造を有している。
【0029】
C16とC18SMEはどちらも、パーム油を含む、植物油(plant oils)(植物油(vegetable oils))や動物性脂肪などの天然資源に由来することができる。具体的には、C16SMEはパルミチン酸から取得できる。一方、C18SMEはパーム油のステアリン酸から取得できる。これらのSMEsは両方とも、メチルエステルのスルホン化によって得られた。
【0030】
前述の説明で述べたように、SMEは、組成物の重量に対して、約5重量%から30重量%の量で合成固形洗剤組成物中に存在する。例えば、それは、組成物の重量に対して、5重量%から25重量%、または10重量%から25重量%、または15重量%から20重量%の量で存在することができる。
【0031】
特定の実施形態では、合成固形洗剤組成物で使用されるSMEは、特定の組み合わせ比のC16SMEおよびC18SMEを含む化合物(ブレンドまたは混合物)である。好ましくは、本発明のSME化合物は、化合物の重量に対して、約55重量%から99重量%のC16SMEと、約1重量%から45重量%のC18SMEを含むことができる。例えば、SME化合物は、60重量%から90重量%のC16SMEと10重量%から40重量%のC18SMEのブレンド、または65重量%から85重量%のC16SMEと15重量%から35重量%のC18SMEのブレンドにすることができる。あるいは、SME化合物は、90重量%から99重量%のC16SMEと1重量%から10重量%のC18SMEのブレンドにすることもできる。
【0032】
主要な界面活性剤としてSMEを有することに加えて、本発明の合成固形洗剤組成物はまた、組成物の重量に対して約1重量%から40重量%の量で存在することができる共界面活性剤(co-surfactant)を含んでいる。特定の実施形態において、共界面活性剤は、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムなどのアルキルスルホコハク酸、若しくは、SLS、ラウリル硫酸カリウム、またはそれらの組み合わせなどのアルキル硫酸塩、若しくは、SLESなどのアルキルエーテル硫酸塩、若しくは、アルキルポリグリコシドであり得る。理論に拘束されることを望まないが、共界面活性剤の存在下で、SMEは合成固形洗剤の洗浄力について相乗効果を生み出すことが期待される。製造される合成固形洗剤の望ましくない特性を防止するために、SLESを添加する場合には、少量(たとえば、組成物の重量に対して2~3重量%)で使用するべきであることを理解されたい。ここで、固形洗浄剤の望ましくない特性を防止するとは、例えば、固形剤(bar)を使用したときの油っぽさやべたつきを抑制することである。
【0033】
共界面活性剤は、良好な洗浄力および泡立ちを提供するために組成物に添加される。特定の実施形態において、主要な界面活性剤と共界面活性剤の組み合わせはまた、皮膚の刺激を低減することができる。たとえば、アルキルポリグリコシド(APG)などの環境に優しい界面活性剤(green surfactant)を直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)に添加すると、LASの刺激を減らすことができる。あるいは、特定の比率でのAPGとSLESの組み合わせも、SLESの刺激を軽減することができる。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、合成固形洗剤組成物はまた、組成物の重量に対して約1重量%から30重量%の量で存在する脂肪アルコールを含んでいる。例えば、脂肪アルコールは、組成物の重量に対して、5重量%から20重量%の量で存在することができる。前述の説明で述べたように、本発明で使用される脂肪アルコールは、セチルアルコール、ステアリルアルコール、またはセトステアリルアルコール(すなわち、セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物)であり得る。脂肪アルコールは、合成固形洗剤組成物において構造化剤(structurant)および皮膚軟化剤(emollient)の役割を果たす。脂肪アルコールはひび割れ防止剤としても機能するため、脂肪アルコール(セトステアリルアルコールなど)とSMEの組み合わせは、合成固形洗剤に対して改善された軟化効果とひび割れ防止効果を提供することができる。
【0035】
脂肪アルコールとは別に、本発明の合成固形洗剤組成物はまた、飽和脂肪酸を含み、これはまた、脂肪アルコールの役割を増強する構造化剤および皮膚軟化剤として機能する。特定の実施形態において、長鎖脂肪酸の含有はまた、合成固形洗剤を硬化するのを助けることができる。好ましくは、飽和脂肪酸は、組成物の重量に対し、約1重量%から30重量%の量で存在する。本発明の一実施形態によれば、飽和脂肪酸は、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせであり得る。合成固形洗剤組成物に使用できる好ましい飽和脂肪酸の1つは、トリプルプレスドステアリン酸(triple pressed stearic acid)である。特定の実施形態において、トリプルプレスドステアリン酸は、組成物の重量に対し、5重量%から20重量%の量で存在することができる。
【0036】
本発明の別の実施形態によれば、合成固形洗剤組成物はまた、フィラーを含む。フィラーは、組成物の重量に対し、約1重量%から40重量%の量で存在することができる。具体的には、フィラーは、組成物の重量に対し、10重量%から30重量%の量で存在することができる。特定の実施形態では、フィラーは、小麦デンプン(wheat starch)、コーンスターチ、米デンプン、大麦デンプン(barley starch)、オート麦(oat)、タピオカ、タルカム、硫酸ナトリウム、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、保湿剤(humectant/moisturiser)は、組成物の重量に対して、約1重量%から10重量%の量で存在する。例えば、保湿剤は、組成物の重量に対して、約1重量%から10重量%の量で存在することができる。好ましくは、保湿剤は、グリセリン、水、尿素、乳酸ナトリウム、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせである。グリセリンや水などの保湿剤もバインダーとして機能し、合成固形洗剤組成物の構成成分を凝集結合(cohesively bind)して固形石鹸(soap bar)を形成する。
【0038】
本発明のさらなる実施形態は、合成固形洗剤組成物が、組成物の重量に対して、1重量%から15重量%の量のひび割れ防止剤をさらに含むことを開示する。例えば、ひび割れ防止剤は、水添植物油(hydrogenated vegetable oil)、ポリエチレングリコール、またはそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、ひび割れ防止剤は、水添ヒマシ油であり得る。合成固形洗剤は成形が難しい場合がある。さまざまな用途のために合成固形洗剤の硬度を上げるには、水添植物油の重量パーセントを増やすことができる。
【0039】
成分の組み合わせは、二塩(di-salt)の含有量の調整を必要としないが、特定の処方と成分の特定のブレンドにより、硬い固形石鹸(hard bar soap)を提供することができる。本発明の合成固形洗剤は、実質的に石鹸成分を含まず、マイルドであり、クリーミーな泡を生成する。したがって、消費者が身体用の固形クレンジング剤として使用するのに適している。また、pHが低く、肌にマイルドであるため、動物(ペットなど)用のクレンジング剤としても使用できる。特定の実施形態では、抗菌剤およびシステインなどの追加の成分を動物用のクレンジング製品に加えることができる。また、工業用または家庭用で、洗濯、食器洗い、または硬化表面のクリーニング(hard surface cleaning)に使用できる。
【0040】
本発明の特定の実施形態では、合成固形洗剤組成物は、さらに、防腐剤、安定剤、加香剤、着色剤、またはそれらの任意の2つ以上の組み合わせを含むことができる。スキンケア効果も提供する身体用固形クレンジング剤として、合成固形洗剤組成物は、皮膚コンディショニング剤、皮膚保湿剤(skin moisturizing agent)、皮膚保水剤(skin hydrating agent)、油制御剤(oil-controlling agent)、スージング剤(soothing agent)または美白剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、合成固形洗剤組成物は、洗浄効果に起因する乾燥から皮膚を保護する、ビタミンおよびミネラル、天然由来のエッセンシャルオイル、バイオフラボノイドおよび抗酸化剤などの栄養成分をさらに含むことができ、これにより、皮膚に保護層を残すことにより外部損傷から皮膚を保護したり、皮膚の全体的な衛生状態と健康を改善したりすることができる。例えば、ビタミンおよびミネラルは、ビタミンE(トコトリエノール、トコフェロール、またはそれらの組み合わせ)、ビタミンA、シリカ、マグネシウム、カルシウム、カリウム、亜鉛、銅、セレン、クロムおよび硫黄であり得る。特定の実施形態では、二酸化チタンを添加して、合成固形洗剤の白色度を高め、固形剤に均一な色の外観を提供することができる。
【0042】
合成固形洗剤組成物は、固い固形石鹸(solid bar soaps)の形態、または石鹸ペレットや石鹸フレークなどの他の適切な固形形態で調製することができる。このSMEベースの合成固形洗剤の例示的な処方は、実施例でさらに詳述する。合成固形洗剤は、粉末成分と液体成分を簡単に混合することで、さまざまな成分から製造できる。このプロセスは、低温プロセス(cold process)で液体成分を混合するステップを含む。液体成分には、保湿剤(グリセリンや水など)とポリエチレングリコールが含まれる。これに続いて、SME、共界面活性剤、脂肪アルコール、飽和脂肪酸、フィラーを含む固形成分を高温で溶融する。溶融成分の高温液体と低温プロセスからの低温液体を、高温で、スクリューミキシングユニットで混合してペーストを形成し、これを低温ドラムでフレーキングプロセスにかけることができる。得られたフレークを詰めて固形石鹸を形成することができる。
【0043】
SMEベースの合成固形洗剤の性能は、市販の合成固形洗剤またはコンボ石鹸(combo soaps)と比較するテストを行うことができる。比較テストの例、すなわち、固形石鹸の性能に関するF検定とT検定については、実施例2でさらに詳述する。表4と5の比較データに示すように、SMEベースの合成固形洗剤は、市販の合成固形洗剤や市販のラウロイルイセチオン酸ナトリウムベースのコンボ石鹸と同等のクレンジング性でありながら、これらの市販の固形石鹸と比較して改善された軟化効果をもたらす。実験データにより、本発明の合成固形洗剤がマイルドで低刺激であることを示すことができる。合成固形洗剤の使用後や洗浄後に皮膚の乾燥感がなく、角質層(皮膚の最上層)は無傷である。理論に縛られることを望まないが、合成固形洗剤の有効成分の組み合わせは、角質層が水分を保持するのを助け、したがって皮膚の軟化効果を示すことができると考えられる。
【実施例】
【0044】
実施例1 固形洗浄剤の処方
SMEベースの固形洗浄剤は、表1~3に示す処方に基づいて調製できる。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
実施例2 合成固形洗剤処方(syndet bar formulation)のF検定とT検定
F検定とT検定を含む統計的検定を実施し、SMEベースの合成固形洗剤組成物の性能を評価した。表1の処方に基づいて調製したSME合成固形洗剤を、市販の合成固形洗剤(スルホコハク酸ラウリル二ナトリウムを主成分とする)およびコンボ石鹸(ラウロイルイセチオン酸ナトリウムを主成分とする)と比較する試験サンプルとして使用した。市販の合成固形洗剤もコンボ石鹸もSMEを含んでいない。これらの試験サンプルは、すすぎ性、滑らかさ(smoothness)、軟化性(softening)、潤滑性(lubricity)、泡立ちなどの石鹸性能パラメーターに基づいて評価された。具体的には、すべての被験者(つまり、パネルテストに参加した参加者)は、これらすべての性能パラメーターをアンケートに記入することが要求され、さまざまなサンプルを定量的に評価するように求められた。SMEベースの合成固形洗剤と市販の合成固形洗剤の間のF検定とT検定の比較データを表4に示し、SMEベースの合成固形洗剤と市販のコンボ石鹸の間のそれを表5に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
F検定は、サンプルデータの分散分析にフォーカスするが、T検定は、サンプルのセットに有意差があるか(significantly different)どうかを評価するための標本平均の仮説をテストすることを指す。表4および5に示す試験結果に基づいて、SMEベースの合成固形洗剤は、市販のコンボ石鹸と同等の性能を発揮する一方で、市販の合成固形洗剤と比較して改善された軟化効果を提供することが実証された。このような軟化効果の改善は、T検定の結果によって有意であることが示された。