(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】ドッキングステーション
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230417BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230417BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 303
B41J2/01 301
B41J2/165 207
B41J3/36 Z
(21)【出願番号】P 2020570900
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2019066829
(87)【国際公開番号】W WO2020002328
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520494932
【氏名又は名称】コロップ デジタル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】アレックス ブレトン
(72)【発明者】
【氏名】フランツ フォルクル
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0076045(US,A1)
【文献】特開2002-361897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0069620(US,A1)
【文献】特表2019-500207(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0236493(US,A1)
【文献】特開2001-179999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷ヘッドを有する電子ハンドスタンプのドッキングステーション(1)であって、
電子ハンドスタンプ(40)の実質的に平坦な底面を受け止める載置表面(4)と、
前記載置表面(4)を少なくとも部分的に縁取る縁部(5)と、を有する本体(2)を備え、
前記ドッキングステーション(1)は、前記本体(2)に接続され前記本体(2)から一方側に突出するワイパー要素(3)であって、インクジェット印刷ヘッドの手動清掃に供されるワイパーブレード(17)を備えた、少なくとも1つのワイパー要素(3)を備え、
前記ワイパー要素(3)は、前記本体(2)に対して移動可能に支持されており、前記本体(2)内に引き込み可能であることを特徴とするドッキングステーション(1)。
【請求項2】
前記ワイパー要素(3)は、前記載置表面(4)に本質的に平行に、かつ引き込み位置と延出位置との間で移動可能であり、前記ワイパー要素(3)を、前記引き込み位置または前記延出位置で係止することができることを特徴とする請求項1に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項3】
前記ドッキングステーション(1)は、キャップ(10)を備え、前記キャップ(10)は、前記本体(2)に接続され、かつ開口部(11)を有し、開口部(11)は、前記縁部(5)の内側に配置され前記本体(2)の前記載置表面(4)に本質的に平行であることを特徴とする請求項1または2に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項4】
前記キャップ(10)は、エラストマーまたはゴム材料で作製されていることを特徴とする請求項3に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項5】
前記キャップ(10)は、熱可塑性エラストマーで作製されていることを特徴とする請求項4に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項6】
前記エラストマーまたはゴム材料は、40~60ショアAのショア硬さを有することを特徴とする請求項4または5に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項7】
前記キャップ(10)は、前記載置表面(4)に対して前記載置表面(4)に本質的に垂直な方向に変位可能に支持されており、かつ前記載置表面(4)に対して前記本体(2)から外側へ向かう方向に付勢されることを特徴とする請求項
3から6のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項8】
前記キャップ(10)は、前記載置表面(4)に対して前記本体(2)から外側へ向かう方向にバネ仕掛けで付勢されることを特徴とする請求項7に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項9】
前記本体(2)は、少なくとも1つの磁石要素(36)を備え、前記少なくとも1つの磁石要素(36)は、電子ハンドスタンプの対応する磁石要素を、前記磁石要素間の磁気の引力によって前記載置表面(4)と接触した状態に維持するように配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの磁石要素(36)は、永久磁石であることを特徴とする請求項9に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項11】
前記本体(2)は、第1のコネクタ(13)および第2のコネクタ(14)を備え、前記第1のコネクタ(13)と前記第2のコネクタ(14)とは、電気的に接続されており、前記第1のコネクタ(13)が、前記載置表面(4)の外側の前記本体(2)の側面から利用可能であり、前記第2のコネクタ(14)が、前記縁部(5)の内側に、かつ前記本体(2)の前記載置表面(4)に本質的に平行な平面内に配置された少なくとも2つの金属接点(15)を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項12】
前記第2のコネクタ(14)の前記金属接点(15)は、前記載置表面(4)に対して付勢されることを特徴とする請求項11に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項13】
前記第1のコネクタ(13)および第2のコネクタ(14)は、データ接続を与えることを特徴とする請求項11または12に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項14】
前記本体(2)は、前記載置表面(4)からの直立突出部(8)を備えることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項15】
前記本体(2)および前記載置表面(4)にアクセス開口部(6)が形成されており、前記アクセス開口部(6)は、前記載置表面(4)を前記ドッキングステーション(1)の裏面(7)と接続していることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項16】
前記ドッキングステーションの裏面(7)上に1つ以上のゴム足(24)が配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のドッキングステーション(1)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のドッキングステーションを用いて電子ハンドスタンプのインクジェット印刷ヘッドをクリーニングするための方法であって、
前記電子ハンドスタンプが前記ドッキングステーションから取り外されたときを検出することと、
この検出があると、吐液遅延の後に前記インクジェット印刷ヘッドの吐液ルーチンをトリガすることと、を含む方法。
【請求項18】
前記吐液遅延は、100ms~500msであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷ヘッドを有する電子ハンドスタンプのドッキングステーションに関し、このドッキングステーションは、電子ハンドスタンプの実質的に平坦な底面を受け止める載置表面と、載置表面を少なくとも部分的に縁取る縁部とを有する本体を備える。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷ヘッドに関連して、印刷ヘッドノズル上の乾燥が印刷の不具合をもたらし得ることが知られている。
【0003】
特に、電子ハンドスタンプなどのモバイル用途または可搬用途に関して、印刷ヘッドをクリーニングおよび保護する必要性が認識されるようになった。それらを達成するために、特許文献1は、可搬型の手持式インクジェット印刷システムのサービスステーションを開示している。サービスステーションは、シャシー印刷ヘッドハウジングを収容および把持するのに十分に大きい容器を形成している。サービスステーションは、印刷ヘッドに対して使用される場所にワイパーおよびキャップなどの様々なサービスコンポーネントを移動させるモータを備える。
【0004】
特許文献2は、手持式プリンタを収容し、かつ着脱可能に固定するように動作可能なハウジングと、解放機構とを備えるドッキングステーションを開示しており、解放機構は、手持式プリンタをハウジングから解放するように動作可能である。
【0005】
特許文献3は、表面の画像をキャプチャするための構造およびカメラを保持する流体ジェットカートリッジを含む手持式ジェット吐出機器と、ジェット吐出機器を収容する寸法を有するドッキング部分を有する本体と、に使用されるサービスステーションを開示している。
【0006】
特許文献4には、印刷装置を支持するように構成されたクレードル本体を含むクレードルが示されており、クレードル本体は、拡張電池入れと、クレードル本体から延在する通信ポートとを規定している。
【0007】
特許文献5は、手動プリンタおよびプリンタドックを含むイメージング機器を開示しており、プリンタドックは、手動プリンタがプリンタドックから分離されると手動プリンタにより促進される主印刷モードに加えて、手動プリンタがプリンタドックに装着されると補助印刷モード、例えば、封筒の印刷を促進させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6312124号明細書
【文献】米国特許第7500732号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0157962号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0236493号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0069620号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、費用効率を向上させたドッキングステーションを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、先述した種類のドッキングステーションを提案するものであり、ドッキングステーションは、本体に接続され本体から一方側に突出するワイパー要素であって、インクジェット印刷ヘッドの手動清掃に供されるワイパーブレードを備えた、少なくとも1つのワイパー要素を備える。特に、ワイパー要素は、縁部および載置表面によって形成された容器の外部に配置されている。ワイパー要素は、印刷ヘッドに付着して印刷ヘッドのノズルを閉塞しているインクの塊を除去することによって、および/または、例えば吐液ルーチンに由来して以前に印刷ヘッドに被着した水分を均一に引き伸ばすことによって、印刷ヘッドを手動でクリーニングすることを可能にする。クリーニング手順を実行するためのドッキングステーションのモータは、不要である。全体として、ドッキングステーションを組み立てるのに要する部品の数と、特に、モータなどの比較的高価なコンポーネントの数とが、従来技術と比較して低減される。同時に、ワイパーは、ドッキングステーションと一体化されており、吐液およびふき取りルーチンの実行に容易に利用可能である。
【0011】
「ドッキングステーション」という用語は、この装置が、電子ハンドスタンプ(の一部)を収容する容器を提供することを意味する。本来、この用語は、ドッキングステーションと電子ハンドスタンプとの間に、2つの間の機械的な接触とは別の特定の接続が確立されることを、必ずしも含意しない。電子ハンドスタンプは、電子ハンドスタンプを動作させている間に基材または印刷領域に載置されるように配置された、実質的に平坦な底面を有し得る。この動作ポジションにおいて、電子ハンドスタンプのインクジェット印刷ヘッドは、印刷領域にわたって移動させられると、印刷画像の形態でスタンプ印影を作成する。該容器を形成するために、ドッキングステーションの1つの面が、縁部によって画定されかつ境界付けられた載置表面を含む。
【0012】
本発明は、また、上述したドッキングステーションを用いて電子ハンドスタンプのインクジェット印刷ヘッドをクリーニングするための方法を提案し、この方法は、電子ハンドスタンプがドッキングステーションから取り外されたときを検出することと、この検出があると、吐液遅延の後にインクジェット印刷ヘッドの吐液ルーチンをトリガすることとを含む。吐液遅延は、電子ハンドスタンプがドッキングステーションから取り外された後の吐液時間枠内にあり得る。吐液時間枠は、インクが空中に噴霧され、かつ印刷基材を汚さないように選択されている。吐液遅延を、100ms~500ms、好ましくは200ms~400msとすることができる。
【0013】
有利には、ワイパー要素は、本体に対して移動可能に(または変位可能に)支持されており、特に、ワイパー要素は、本体内に引き込み可能である。この場合に、ワイパー要素を、延出位置または動作位置と、引き込み位置または格納位置と、の間で変位させることができ、ワイパー要素は、好ましくは、該引き込み位置または格納位置において本体の内部に完全に収容される。例えば、ワイパー要素は、延出位置または動作位置において本体から一方側に突出し、引き込み位置または格納位置において、本体の該一方側にあるスリットを通して完全に引き込められる。引き込み位置または格納位置において、ワイパー要素、特にワイパーブレードは、物理的損傷から保護される。加えて、ふき取り使用中にワイパーブレード上に堆積したインク残留物が本体によって閉囲されることにより、ドッキングステーションのユーザまたは環境を汚染することが防止される。
【0014】
特に、ワイパー要素は、載置表面に本質的に平行に、かつ引き込み(または格納)位置と延出(または動作)位置との間で移動可能であってもよく、ワイパー要素を、引き込み位置または延出位置で係止することができる。係止によって、2つの位置の間でのワイパー要素の偶発的な移動を防止することができる。具体的には、ふき取り中に(すなわち、ワイパー要素とクリーニングされる印刷ヘッドとの間にユーザによって加えられる圧力下で)、ワイパー要素が延出位置または動作位置を離れ、本体内に後退することにより、結果的に本体が印刷ヘッドノズルを引っ掻くことになることを防止することができる。
【0015】
好ましい実施形態において、ドッキングステーションはキャップを備え、キャップは、本体に接続されており、縁部の内側に配置されかつ本体の載置表面に本質的に平行な開口部を有する。したがって、キャップによって覆われる面積は、載置表面の面積よりも小さい。特に、キャップ、具体的にはキャップの開口部は、印刷ヘッドノズル、本質的に印刷ヘッドノズルのみを覆うように寸法設定されている。つまり、キャップはノズルを収容するのに対して、載置表面は、ノズルを備える電子ハンドスタンプの底面を受け止める。キャップの比較的小さい寸法によって、キャップと印刷ヘッドとの間に閉囲される容積は、本体と電子ハンドスタンプの底面との間に閉囲される容積よりも著しく小さい。結果として、キャップ背面の内側に閉囲される空気は、インク溶媒ですばやく飽和し、したがって、さらなる乾燥が防止される。クリーニングのための本方法に関連して、吐液遅延は、好ましくは、ノズルの空気通路がキャップの内側に凝集したインク残留物で封止されるのを回避するために、キャップの内側でのインクの凝集を回避するのに十分に長い。
【0016】
キャップは、小程度ではあるが、ワイパー要素がなくても、すなわち、乾き切ることとその後の完全なクリーニングの必要性とを回避することに有効でもあり得る。印刷ヘッド(例えば、インクカートリッジの一部としての)の交換間隔と比較して、電子ハンドスタンプの長期間の非作動が問題とならない使い方の場合、ふき取りは任意であってもよい。このような場合について本発明の範囲内で、インクジェット印刷ヘッドを有する電子ハンドスタンプのドッキングステーションを提供することができ、このドッキングステーションは、電子ハンドスタンプの実質的に平坦な底面を受け止める載置表面と、載置表面を少なくとも部分的に縁取る縁部とを有する本体を備え、ドッキングステーションはキャップを備え、キャップは、本体に接続されており、縁部の内側に配置されかつ本体の載置表面に本質的に平行な開口部を有する。
【0017】
ドッキングステーションがキャップを有することに関連して、キャップが、エラストマーまたはゴム材料、好ましくは熱可塑性エラストマーで作製されており、特に40~60ショアAのショア硬さを有することが有利である。ゴム材料は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよい。材料特性(弾性)に起因して、キャップの縁と、ノズルに隣接する印刷ヘッドの表面と、の間に、より密接でかつ隙間のない接触が達成される。それにより、比較的気密性の高い封止が達成され、キャップの容積からの溶媒の蒸発が防止される。
【0018】
特に好ましい実施形態において、キャップは、載置表面に対して載置表面に本質的に垂直な方向に変位可能に(または移動可能に)支持されており、かつ載置表面に対して本体から外側へ向かう(すなわち、離れる)方向に、特にバネ仕掛けで、付勢される。このタイプの支持によって、キャップと印刷ヘッドとの間の、明確に規定されかつ再現可能な接触圧力を達成することができる。接触圧力が、キャップにかかるスタンプの重量のみによって決まることを回避することができる。
【0019】
本体が、少なくとも1つの磁石要素、特に永久磁石を備え、少なくとも1つの磁石要素が、電子ハンドスタンプの対応する磁石要素を、磁石要素間の磁気の引力によって載置表面と接触した状態に維持するように配置されていることが有利であるとわかった。電子ハンドスタンプの対応する磁石要素は、ドッキングステーションの磁石要素に引き付けられる任意の要素であってもよい。ドッキングステーション内の磁石要素は、電子ハンドスタンプが表面から持ち上げられて離れたときに、ドッキングステーションが電子ハンドスタンプに取り付けられたままになることを保証し得る。特に、これにより、電子ハンドスタンプをドッキングステーションと共に変位させるときに、印刷ヘッドの意図しない「キャップ解除」が回避される。また、磁石要素の寸法および材料は、ドッキングステーションと、収容された電子ハンドスタンプと、の間の最小の接触圧力を規定する。単純に支持されたディスプレイおよび付勢されたキャップと組み合わせられる場合に、磁石要素は、キャップの付勢によってかかる力(すなわち、バネ力)と少なくとも釣り合うように選択され得る。
【0020】
さらに好ましい実施形態において、本体は、第1のコネクタおよび第2のコネクタを備え、第1のコネクタと第2のコネクタとは電気的に接続されており、第1のコネクタは、載置表面の外側の本体の側面から、好ましくは外部プラグの形態で、利用可能であり、第2のコネクタは、縁部の内側に、かつ本体の載置表面に本質的に平行な平面内に配置された少なくとも2つの金属接点を備える。コネクタは、ドッキングステーションに収容された電子ハンドスタンプへの充電または接続に供される使いやすいインタフェースをドッキングステーションに提供することを可能にする。例えば、第1のコネクタは、電源プラグを受け入れるソケットの形態を有してもよく、または第1のコネクタは、電源およびデータ接続、例えばUSB接続、を生成するソケットであってもよい。
【0021】
好ましくは、第2のコネクタの金属接点は、載置表面に対して付勢される。金属接点を付勢することにより、電子ハンドスタンプの底面上の対応する接点との接触圧力を規定することが可能になり、該接触圧力がキャップの接触圧力とは独立であり得る。本体が1つ以上の磁石要素を備える場合に、磁石要素の配置は、電子ハンドスタンプが第2のコネクタとは反対側の電子ハンドスタンプの接点と位置合わせされるようにすることができる。
【0022】
特に、第1のコネクタおよび第2のコネクタは、データ接続を与えてもよい。例えば、ドッキングステーションは、USB接続のパススルーとして機能してもよい。これにより、USB接続を生成することが容易になり、USBソケットとUSBプラグとを手動で位置合わせしかつ係合させる必要性が回避される。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、本体は、載置表面からの直立突出部を備える。直立突出部は、載置表面から、載置表面上で受け止められた電子ハンドスタンプの底面に向かって延在するピンまたは隆起であってもよい。直立突出部は、電子ハンドスタンプの内部の開/閉センサと相互作用する機械的手段として使用され得る。例えば、電子ハンドスタンプのハウジングの内部の電気接点を遮断するためにピンが使用され、それにより、ドッキングステーションの存在および係合をシグナルし、かつドッキングステーションから電子ハンドスタンプが持ち上げられたときにキャップ解除時間を測定するためのタイマを始動させるトリガとして機能してもよい。このようなタイマは、印刷ヘッドノズルの長期の露出と潜在的な乾燥とを通知する手段として使用されてもよい。
【0024】
また、本体および載置表面にアクセス開口部が形成されていてもよく、アクセス開口部は、載置表面をドッキングステーションの裏面に接続している。アクセス開口部は、ドッキングステーションの底面からアクセス開口部を通して、該ドッキングステーションに収容された電子ハンドスタンプの底面へのアクセスを与えることができる。具体的には、アクセス開口部を、電子ハンドスタンプの底面上のボタン(例えば、電源ボタン)と位置整合させることにより、ユーザは、印刷ヘッドをキャップ解除することなく該ボタンを押す(例えば、電子ハンドスタンプを電源オンまたは電源オフする)ことが可能になる。例えば、電子ハンドスタンプがドッキングステーションから持ち上げられる前に、スタンプ画像を構成およびプログラムするために電子ハンドスタンプの電源を投入することができる。
【0025】
さらに任意での実施形態において、電子ハンドスタンプは、ドッキングステーションの裏面上に配置された1つ以上のゴム足を備える。ゴム足は、例えば、テーブル上に位置するときに、ドッキングステーションの滑りを防止する。
【0026】
ここで図面を参照するが、図面は本発明を例示する目的のものであり、本発明を限定する目的のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明によるドッキングステーションの好ましい実施形態の投影図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1によるドッキングステーションの分解図を概略的に示す。
【
図3】
図3は、ワイパー要素が延出位置にある、
図1によるドッキングステーションの底面を概略的に示す。
【
図4】
図4は、ワイパー要素が引き込み位置にある、
図1によるドッキングステーションの底面を概略的に示す。
【
図5】
図5は、電子ハンドスタンプが収容された、
図1によるドッキングステーションを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、電子ハンドスタンプ(不図示)のドッキングステーション1を示す。ドッキングステーション1は、本体2およびワイパー要素3を備える。本体は、載置表面4および縁部5を有する。縁部5は、載置表面4を閉囲することによって、載置表面4を縁取っている。つまり、縁部5は、載置表面4の周縁を画定する。載置表面4の上方の縁部5の高さは、電子ハンドスタンプの形状に応じて、特に、電子ハンドスタンプのフットプリントと、電子ハンドスタンプの底面付近の最側方の突出部と、を乗り越え得る。載置表面4は、実質的に平坦な領域であり、電子ハンドスタンプの実質的に平坦な底面を受け止めることに寄与する。本体2および載置表面4に、アクセス開口部6が形成されている。アクセス開口部6は、載置表面4をドッキングステーション1の裏面7(
図3を参照)に接続する。また、本体は、載置表面4からの直立突出部8を備える。直立突出部8は、一定の高さの隆起の形態を有する。
【0029】
直立突出部8に隣接して、載置表面4には、キャップ10を収容する凹部9が設けられている。キャップ10は、本体2に接続されており、開口部11を有する。開口部11は、縁部5の内側にかつ本体2の載置表面4に本質的に平行に配置されている。キャップ10は、好ましくは約50ショアのショア硬さを有する、熱可塑性エラストマーで作製されている。キャップ10の内側に配置されかつキャップ10によって閉囲されているのは、底部カバー12である。
図2から明らかであるように、キャップ10は、載置表面4に対して、載置表面4に本質的に垂直な方向に変位可能または移動可能に支持されている。
【0030】
最後に、本体は、第1のコネクタ13および第2のコネクタ14を備える。第1のコネクタ13と第2のコネクタ14とは、電気的に接続されている。第1のコネクタ13は、載置表面4の外側の本体2の側面から利用可能である。本実施形態において、第1のコネクタ13は、電源ケーブルのプラグを受け入れるソケットである。第2のコネクタ14は、それぞれの接点支持体16上に対をなして配置された6つの金属接点15を備える。金属接点15は、縁部5の内側で、本体2の載置表面4に本質的に平行な共通の平面内に配置されている。第2のコネクタ14の金属接点15は、接触圧力下で座屈し、それにより載置表面4に対して付勢される角度の付いた接触ピンによって形成されている。本実施形態において、第1のコネクタ13および第2のコネクタ14によって与えられる接続は、3極の電源または充電の接続である。当業者であれば容易に理解するように、接続部13、14を、例えばUSB接続などのデータ接続用の追加の接続ピン(4~24ピン)を供給するように拡張することができる。
【0031】
ワイパー要素3は、本体2に対して載置表面に本質的に平行に、かつ、
図1に示された延出位置と、ワイパー要素3が本体2に収納される
図4に示された引き込み位置との間で、移動可能に支持されている。ワイパー要素3は、印刷ヘッドの平坦な裏面をふき取るための少なくとも1つの直線状の端面18を画定するワイパーブレード17を備える。ワイパーブレード17は、ワイパー要素3の薄肉部19によって支持されている。薄肉部19は、薄肉部19の延在元である全強度部20に対して弾性力が低下している。低弾性により、ユーザは、ふき取りルーチン中に加えられる圧力を制限して、印刷ヘッドまたは印刷ヘッドのノズルを損傷させることを避けることができる。
【0032】
図2は、
図1に示されたドッキングステーション1の分解図を示す。この分解図からわかるように、本体2は、第1の本体部分21および第2の本体部分22を備える。本体部分21、22は、4つのネジ23によって接続されている。組み立てられた状態において、ネジ23は、それぞれゴム足24によって覆われている。ワイパー要素3は、ハンドル26を有するスライド25上に支持されている。組み立てられた状態でのスライド25は、第1の本体部分21内に形成された2つのガイドレール27の間に収容されており、スライド25をガイドレール27に平行に移動させることができるようになっている。キャップ10は、キャリア28上に支持されており、底部カバー12のピン29によってキャップ10がキャリア28に取り付けられており、ピン29は、キャップ10の孔を通ってキャリア28内へと延在する。キャリア28は、第1の本体部分21に形成されたキャップフレーム32のそれぞれの凹部31に収容および支持される3つの横方向ピン30を有する。ドッキングステーション1が組み立てられた状態で、キャリア28と第2の本体部分22との間にバネ33が収容され、その結果、キャップ10が、第2の本体部分22から離れかつ第1の本体部分21を通る方向に付勢される。第1のコネクタ13および第2のコネクタ14は、それぞれのピン間の電気的接続を与えかつ本体2に組み込まれたプリント回路基板34上に配置されている。第1の本体部分21は、さらに、各々が磁石要素36を収容する3つの環状リテーナー35を備える。磁石要素36は、本質的にキャップ10の周辺に配置される。
【0033】
図3は、ドッキングステーション1の底面図、すなわちドッキングステーション1の底面7上を見た図を示す。アクセス開口部6に隣接して、ワイパー要素3を保持するスライド25のハンドル26を露出させるために、第2の本体部分22に開口部37が設けられている。
図3に示された延出位置において、ハンドル26からワイパー要素3とは反対側へと指し示す矢印38が見える。ハンドル26を矢印37によって示される方向に移動させることによって、ユーザは、ワイパー要素を露出位置から引き込み位置へと移動させることができる。
【0034】
図4は、このような動作の結果を示し、ワイパー要素3は、本体2に完全に引き込まれている。ハンドル26は、ここでは開口部37の反対側の端部に位置する。ここでは、ハンドル26から(収納された)ワイパー要素3の方向へと指し示す矢印39が見える。ハンドル26を矢印39によって示される方向に押すことによって、ドッキングステーション1のユーザは、ワイパー要素を、
図4に示された引き込み位置から、
図3に示された延出位置へと移動させて、電子ハンドスタンプの印刷ヘッドをクリーニングするふき取りルーチンのためにワイパー要素を準備できる。
【0035】
図5において、ドッキングステーション1のワイパー要素3は、引き込み位置にある。電子ハンドスタンプ40が、電子ハンドスタンプ40の平坦な底面を載置表面4に載置して、載置表面4上に受け止められている。電子ハンドスタンプ40がドッキングステーション1から持ち上げられると、直立突出部8が電子ハンドスタンプ40から引き抜かれ、このことが電子ハンドスタンプ40によって検出されて、該検出から約300msの吐液遅延の後に、電子ハンドスタンプ40のインクジェット印刷ヘッドの吐液ルーチンがトリガされる。これにより、ドッキングステーション1の上方の空中に微量のインクが噴霧される。