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特許7263453自由空間光通信システム、装置、及びそれらの方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】自由空間光通信システム、装置、及びそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/11 20130101AFI20230417BHJP
【FI】
H04B10/11
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021134325
(22)【出願日】2021-08-19
(62)【分割の表示】P 2018521725の分割
【原出願日】2016-07-15
(65)【公開番号】P2021184640
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】2153/DEL/2015
(32)【優先日】2015-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】518015572
【氏名又は名称】ザ セクレタリー,デパートメント オブ エレクトロニクス アンド インフォメーション テクノロジー(ディーイーアイティーワイ)
(73)【特許権者】
【識別番号】518015837
【氏名又は名称】インディアン インスティチュート オブ テクノロジー グワーハーティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ボルア ボサンタ ランジャン
(72)【発明者】
【氏名】コンワー サンタヌ
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-036471(JP,A)
【文献】特表2014-530362(JP,A)
【文献】国際公開第2014/196447(WO,A1)
【文献】特開2005-006063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通信システムにおいて、少なくとも1つのユーザデータを少なくとも1つの送信機から少なくとも1つの受信機へ通信するための方法であって、当該方法は、
前記送信内のレーザ生成手段により、少なくとも1つの入射レーザビームを生成することと、
2つ以上のコリメーティングレンズにより、前記入射レーザビームをコリメートすることと、
前記入射レーザビームを少なくとも1つの光変調器に入射させることと、
少なくとも1つのホログラムを表示する前記光変調器により、複数の直交収差モードを有する少なくとも1つの回折レーザビームを生成することと、
前記光変調器により、前記入射レーザビームの前記回折レーザビームを、連続する瞬間において、前記ユーザデータのデジタル次数で符号化すること、それにより、少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成することであって、前記ユーザデータは前記直交収差モードにおける振幅を示す、ことと、
大気若しくは自由空間の光路、又は、前記大気若しくは自由空間の光路内に位置付けられる少なくとも2つのレンズを通じて、前記データ符号化されたレーザビームを前記受信機へ送信することと、
前記受信機内の波面センサにより、前記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力ビームとして受信することと、
前記波面センサにより、前記入力ビーム内の収差の存在を検出することと、
前記波面センサ内のマルチプレックスホログラムにより、モーダル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する少なくとも1つの第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成することと、
少なくとも1つの通信手段により、前記第1及び第2の収差センサ出力信号又は前記収差センサ出力信号を、前記波面センサから、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信することと、
前記データ処理ユニットにおいて、前記第1及び第2の収差センサ出力信号又は前記収差センサ出力信号を受信することと、それにより、前記直交収差モードの前記振幅を求めることと、
前記直交収差モードの前記振幅により、前記ユーザデータを復号することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記入射レーザビームから2つの+1次回折レーザビームを生成して、互いに小さな角度をとって進行する少なくとも2つの同一のレーザビームを得るように構成されるマルチプレックスホログラムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通信手段は、光ファイバケーブル及び光電子増倍管、又はデジタルカメラ、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
光通信システムにおいて、少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成するための方法であって、当該方法は、
送信ユニット内のレーザ生成手段により、少なくとも1つの入射レーザビームを生成することと、
2つ以上のコリメーティングレンズにより、前記入射レーザビームをコリメートすることと、
前記入射レーザビームを少なくとも1つの光変調器に入射させることと、前記光変調器上に提供される少なくとも1つのホログラムにより、ユーザ定義の位相プロファイルを保持する少なくとも1次の回折ビームを生成することであって、前記回折ビームは複数の直交収差モードを含む、ことと、
前記光変調器により、少なくとも1つのユーザデータ、シフトさせた3進数であるデジタル次数を、連続する瞬間において、前記レーザビームの前記回折ビームで符号化することと、
少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成することであって、前記ユーザデータは前記直交収差モードの振幅を示す、ことと、
大気若しくは自由空間の光路、又は、前記大気若しくは自由空間の光路内に位置付けられる少なくとも2つのレンズを通じて、前記データ符号化されたレーザビームを、前記送信ユニットと通信可能に結合された受信機ユニットへ送信することと、
を含む方法。
【請求項5】
少なくとも1つの送信ユニットと少なくとも1つの受信ユニットとを含む自由空間光通信システムであって、
前記送信ユニットは、複数の直交モードを使用して収差が付与される少なくとも1つの入射レーザビームと、少なくとも1つのユーザデータとを送信し、当該送信ユニットは、
2値ホログラムを表示する少なくとも1つの光変調器を含み、前記少なくとも1つの光変調器は、
3進数にシフトさせた、交番極性の前記ユーザデータを使用して、2つ以上の連続する瞬間において、前記入射レーザビームを符号化し、
少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成し、それにより、前記データ符号化されたレーザビームを前記受信ユニットへ送信する、ように構成され、
前記データ符号化されたレーザビーム内の前記ユーザデータは、前記直交モードの時間に対する振幅を示し、
前記送信ユニットに通信可能に結合された前記受信ユニットは、前記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力レーザビームとして受信し、
前記受信ユニットは、
少なくとも1つの波面センサを含み、前記少なくとも1つの波面センサは、
前記入力レーザビーム内の収差の存在を検出し、
モーダル波面センサのケースにおいて、各入力レーザビームに対応する第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいて、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成し、
前記第1及び第2の収差センサ出力信号又は前記収差センサ出力信号を、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信する、ように適合され、前記データ処理ユニットは、前記波面センサに動作可能に結合され、
前記第1及び第2の収差センサ出力信号間の差又は前記収差センサ出力信号を使用して、前記直交モードの前記振幅を求め、それにより、前記直交モードの前記振幅を使用して、前記ユーザデータを復号する、ように構成される、自由空間光通信システム。
【請求項6】
前記送信ユニットは、大気又は自由空間の光路を使用して、前記受信ユニットと通信可能に結合される、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項7】
前記送信ユニットは、大気又は自由空間の光路内に位置付けられる少なくとも2つのレンズを使用して、前記受信ユニットと通信可能に結合される、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項8】
前記レンズは、前記送信ユニットと前記受信ユニットとの間の距離によって決まる焦点距離を含む、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項9】
前記ユーザデータは、デジタルデータである、請求項に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項10】
前記送信ユニットは、前記入射レーザビームが前記光変調器に入射する前に前記入射レーザビームをコリメートする焦点距離を有する、少なくとも2つのコリメーティングレンズをさらに含む、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項11】
前記直交モードは、前記入射レーザビームに組み込まれるツェルニケモードである、請求項に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項12】
前記光変調器は、液晶空間光変調器(LCSLM)又は空間光変調器から選択される少なくとも1つを使用して実装される位相マスクである、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項13】
前記位相マスクは、それぞれ、少なくとも1つのホログラム又は少なくとも1つのデュプレックスホログラムを使用して、1つのデータ符号化されたレーザビーム又は2つのデータ符号化されたレーザビームを生成する、請求項12に記載の自由空間光通信システム。
【請求項14】
前記光変調器は、第1及び第2の同一のレーザビームを得るために、前記光変調器上に少なくとも1つのマルチプレックスホログラムを表示することにより、前記入射レーザビームから2つの+1次回折ビームを生じることが可能にされる、請求項に記載の自由空間光通信システム。
【請求項15】
前記波面センサは、ゾーナル波面センサ又はモーダル波面センサから選択される少なくとも1つである、請求項に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項16】
前記波面センサは、位相マスクを含む、請求項に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項17】
前記位相マスクは、液晶空間光変調器(LCSLM)又は空間光変調器から選択される少なくとも1つを含む、請求項16に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項18】
前記LCSLMは、モーダル波面センサのケースにおいては、少なくとも1つのマルチプレックスホログラムを使用して、前記データ符号化されたレーザビームを回折させることにより、前記第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、1つのみの収差センサ出力信号を生成する、請求項17に記載の自由空間光データ送信システム。
【請求項19】
前記第1及び第2の収差センサ出力信号又は前記収差センサ出力信号は、光ファイバケーブル及び光電子増倍管、又はデジタルカメラ、又はそれらのいずれかの組み合わせから選択される少なくとも1つを使用して、前記データ処理ユニットへ送信される、請求項に記載の自由空間光データ送信システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
ここに記載される本主題は、概して、自由空間光通信システムに関する。本発明は、特に、直交収差モードベースの自由空間光通信システム、装置、及びそれらの方法に関する。
【0002】
[背景技術]
自由空間光通信(free space optics:FSO)は、2つの地点間でデータを送信するために、自由空間内で光ビームを使用する遠隔通信技術である。データは、通信システム内で送信機から受信機へ送信され得るあらゆるユーザ情報であり得る。
【0003】
自由空間光通信システムは、ワイヤレス通信システムといった他の通信システムに優る、複数の利点を提供する。例えば、自由空間光通信システムは、より高いデータ転送レートを提供し、データの盗聴又は傍受の見込みがより少ない。さらに、FSOは、帯域幅のライセンシング及び分配を必要としない。加えて、このような通信は、送信局と受信局との間の物理的接続が困難な場合に有用であり得る。例えば、都市において、光ファイバケーブルの敷設には費用がかかり得、場合によっては、FSOをセットアップするよりも一段と複雑である恐れがある。
【0004】
しかしながら、FSOには複数の重大な欠点がある。このような欠点のいくつかが、光波が被る大気の乱流若しくは歪み、収差、又は他の擾乱の影響、及び、介在する媒体による、レーザ(光)ビームの吸収、である。光波面における、偶発的であって制御されないこのような収差は、光学系の性能を劣化させるという理由から、往々にして望ましいものではない。さらに、これらの欠点は、ビームの波面及び強度のばらつきを招き、このことは、受信局において誤りを生じる。
【0005】
ビーム内のデータコンテンツを増大させるために、レーザビームの軌道角運動量(orbital angular momentum:OAM)状態が使用され得る。しかしながら、複数個のOAM状態を保持するレーザビームは、自身がそこを通って進行する媒体における収差の存在により、重篤な影響を受ける。
【0006】
したがって、これらの欠点を克服するために、自由空間光通信の分野で多くの重要な開発が行われてきた。極めて大きな情報搬送能力を有するロバストなシステムの考案が試みられてきた。
【0007】
非特許文献である、Gibson、GrahamらによるOptics Express 12.22(2004):5448-5456を参照されたい。ここでは、自由空間通信システムが提案されており、当該システムにおいては、情報コンテンツを搬送するために、複数の軌道角運動量状態を保持する光ビームが使用される。受信局は、マルチプレックスホログラムを使用して、種々のOAM状態の存在の有無を検出する。しかしながら、この通信システムの重大な欠点は、OAMモードが、介在する媒体により導入される収差の影響を受けやすいことである。
【0008】
一出願である、米国特許第7,343,099号を参照されたい。この出願は、レーザスペックルのトラッキング及びロッキング原理を用いることにより、レーザビームにおける強度変動が最小化されるFSOを開示している。しかしながら、この方式は、レーザビームの各瞬間においてある数の動作を要し、FSOの動作速度が、トラッキング及びロッキング機構内に包含される他のコンポーネントの能力によって制限されてしまう。
【0009】
非特許文献である、Feng、Ian H.White、及びTimothy D.Wilkinsonによる、Journal of Lightwave Technology 31.12(2013):2001-2007を参照されたい。この文献は、後ろに液晶SLMが続く、2電極テーパレーザを使用する自由空間通信システムを提案している。このシステムは、大気による適応的収差補正がSLMによって容易になり、大きなデータコンテンツを可能にする。しかしながら、SLMによる収差補正レートは、液晶分子の応答時間によって制限されてしまう。
【0010】
非特許文献である、Hao HuangらによるOpt.Lett.39,197-200(2014)を参照されたい。この文献は、レーザビームの、組み合わされた、軌道角運動量、偏光、及び波長ベースの変調により可能にされる、100Tbit/sの自由空間データリンクシステムを開示している。提案されるこのシステムは、極めて大きなデータ転送レートを有するものの、なお、OAM状態ベースの他のあらゆるFSOに起因するものと同じく、収差に起因する制約を受ける。
【0011】
非特許文献である、Liu、WeiらによるOptics and Laser Technology 60(2014):116-123を参照されたい。ここでは、FSOにおけるレーザビームを収差から補正するために、ホログラフィックモーダル波面センサが開示されており、それにより、ファイバ結合の効率を改善している。しかしながら、この文献は、ビームを収差から補正するための機構についてしか記載しておらず、ビーム変調方式の改良は試みていない。さらに、このモーダル波面センサは、電荷結合素子(charge-coupled device:CCD)検出器を使用しており、よって、その速度は、CCDのフレームレートに制限されていた。
【0012】
特許出願である、CN102288305Bを参照されたい。ここでは、自己適応的光学系の波面センサと、その検出方法とが開示されている。この発明は、2値直交収差モードのフィルタリング及び検出原理に基づいて、2値光強度変調器、集束レンズ、シングルモード光ファイバ、非アレイ型光検出器、及びコンピュータコンポーネントから成る適応的光学波面センサを提供する。しかしながら、この先行技術は、入射ビーム内に存在する収差を検出するために、ツェルニケモードといった直交収差モードの使用を開示しており、ユーザ情報を符号化する手段としての、このような直交収差モードの存在の有無の使用を記載していない。そのうえ、上記の先行技術は、ツェルニケモード自体の2値化バージョンである2値光パターンを利用しており、ツェルニケモードに傾きが加えられていなかった。さらに、各ツェルニケモードについて、1つの位置における光強度しか考慮されていない。
【0013】
特許出願である、US5120128Aを参照されたい。ここでは、波面収差センサが、ビームスプリッタと、1つ以上の収差センサモジュールと、総光パワーを検知するための光検出器と、を含む。収差センサモジュールの各々は、一対の光検出器から2つの電圧出力を提供する。電圧対の差は、総光パワーで正規化されて、入力光ビーム内に存在する位相収差の、符号付き収差振幅を表す。これらの収差振幅は、デジタルコンピュータにおいて組み合わされて、再構築された波面を提供し得る。しかしながら、この先行技術は、入射ビームを2つのビームに分割することにより、並びに、当該2つのビームから等量の収差を加算及び減算することにより、所与の収差の存在の有無を測定する方法を開示しているものの、本発明において行われているように、2値ホログラムを利用して、2つの回折ビーム内の正の量及び負の量の収差を用いて単一ビームの2つのコピーを実現していない。さらに、上記の先行技術は、ユーザ情報を符号化する手段として、直交収差モードの存在の有無について教示していない。
【0014】
よって、上で論じたような既存の自由空間光通信システムを鑑みて、通信システムの能力に関する限り、着実な進歩が存在することは確認されている。しかしながら、大気により導入される波面歪み及び強度変動といった外乱の影響を本質的により受けにくく、大気により導入される歪みがたとえ存在しても、より良好且つ迅速なデータ通信を自由空間においてもたらす、FSO通信システムに対する必要性が存在する。
【0015】
[概要]
以下の内容は、この発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、この発明の簡略化された概要を提示する。この概要は、請求項に記載された主題の必須の特徴を識別することが意図されておらず、また、請求項に記載された主題の範囲を決定又は限定する際に使用することも意図されていない。この概要の唯一の目的は、後に提示されるこの発明の、より詳細な説明に対する前章として、この発明のいくつかの概念を簡略化された形式で提示することである。
【0016】
本発明の主な目的は、大気により導入される外乱及び強度変動の影響を本質的により受けにくい、FSO通信システムを提供することである。
本発明の別の目的は、直交系の収差モードに基づく自由空間光通信システムを提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、入射レーザビームにおける複数の直交収差モードを使用してユーザデータを通信するための自由空間光通信システムを提供することである。
したがって、第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの送信ユニットと少なくとも1つの受信ユニットとを含む自由空間光通信システムを提供する。ここで、上記送信ユニットは、複数の直交モードを使用して収差が付与される少なくとも1つの入射レーザビームと、少なくとも1つのユーザデータとを有し、上記送信ユニットは、
2値ホログラムを表示する少なくとも1つの光変調器を含み、上記少なくとも1つの光変調器は、
3進数にシフトさせた、交番極性の上記ユーザデータを使用して、2つ以上の連続する瞬間において、上記入射レーザビームを符号化し、
少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成し、それにより、上記データ符号化されたレーザビームを上記受信ユニットへ送信する、ように構成され、
上記データ符号化されたレーザビーム内の上記ユーザデータは、上記直交モードの時間に対する振幅を示し、
上記送信ユニットと通信可能に結合された上記受信ユニットは、上記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力レーザビームとして受信し、上記受信ユニットは、
少なくとも1つの波面センサを含み、上記少なくとも1つの波面センサは、
上記入力レーザビーム内の収差の存在を検出し、
モーダル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成し、
上記第1及び第2の収差センサ出力信号又は上記収差センサ出力信号を、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信する、ように適合され、
上記データ処理ユニットは、上記波面センサに動作可能に結合され、
上記第1及び第2の収差センサ出力信号間の差又は収差センサ出力信号を使用して、上記直交モードの上記振幅を求め、それにより、
上記直交モードの上記振幅を使用して、上記ユーザデータを復号する、ように構成される。
【0018】
第2の態様において、本発明は、光通信システムにおいて、複数の直交収差モードを有する、少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを送信するための装置を提供する。当該装置は、
上記レーザビームをコリメートするために、少なくとも2つのコリメーティングレンズと、
少なくとも1つの光変調器ユニットと、を含み、上記少なくとも1つの光変調器ユニットは、
上記コリメーティングレンズにより送信される上記レーザビームを受信し、
1つ以上のホログラムを使用して、ユーザ定義の位相プロファイルを保持する少なくとも1次の回折ビームを生成し、
2つ以上の連続する瞬間において、上記レーザビームの、上記次数の回折ビームを、上記ユーザデータのデジタル次数で変調し、
少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成し、それにより、上記データ符号化されたレーザビームを受信ユニットへ送信する、ように適合され、
上記受信ユニットは、上記装置と通信可能に結合され、
上記データ符号化されたレーザビーム内の上記ユーザデータは、上記直交収差モードの時間に対する振幅を示す。
【0019】
第3の態様において、本発明は、光通信システムにおいて、複数の直交収差モードを有する少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームから、少なくとも1つのユーザデータを復号するための装置を提供する。ここで、上記ユーザデータは、上記直交収差モードの振幅を示し、上記装置は、
少なくとも1つの波面センサを含み、上記少なくとも1つの波面センサは、
上記装置と通信可能に結合された送信ユニットから、上記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力レーザビームとして受信し、
上記入力レーザビーム内の収差の存在を検出し、
モーダル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する少なくとも第1及び第2のセンサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成し、
上記第1及び第2のセンサ出力信号又は上記センサ出力信号を、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信する、ように適合され、
上記波面センサに動作可能に結合された上記データ処理ユニットは、
上記第1及び第2の収差センサ出力信号間の差又は上記収差センサ出力信号を使用して、上記直交収差モードの振幅を求め、
上記直交収差モードの上記振幅を使用して、上記ユーザデータを復号する、ように構成される。
【0020】
第4の態様において、本発明は、光通信システムにおいて、少なくとも1つのユーザデータを少なくとも1つの送信機から少なくとも1つの受信機へ通信するための方法を提供する。当該方法は、
上記送信ユニット内のレーザ生成手段により、少なくとも1つの入射レーザビームを生成することと、
2つ以上のコリメーティングレンズにより、上記入射レーザビームをコリメートすることと、
上記入射レーザビームを少なくとも1つの光変調器に入射させることと、
少なくとも1つのホログラムを表示する上記光変調器により、複数の直交収差モードを有する、レーザビームの少なくとも1つの回折ビームを生成することと、
上記光変調器により、上記入射レーザビームの上記回折ビームを、連続する瞬間において、上記ユーザデータのデジタル次数で符号化すること、それにより、少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成することであって、上記ユーザデータは上記直交収差モードの振幅を示す、ことと、
大気若しくは自由空間の光路、又は、上記大気若しくは自由空間の光路内に位置付けられる少なくとも2つのレンズを通じて、上記データ符号化されたレーザビームを上記受信機ユニットへ送信することと、
上記受信機ユニット内の波面センサにより、上記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力ビームとして受信することと、
上記波面センサにより、上記入力ビーム内の収差の存在を検出することと、
上記波面センサ内のマルチプレックスホログラムにより、モーダル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する少なくとも1つの第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成することと、
少なくとも1つの通信手段により、上記第1及び第2のセンサ出力信号又は上記センサ出力信号を、上記波面センサから、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信することと、
上記データ処理ユニットにおいて、上記第1及び第2のセンサ出力信号又は上記センサ出力信号を受信すること、それにより、上記直交収差モードの上記振幅を求めることと、
上記直交モードの上記振幅により、上記ユーザデータを復号することと、を含む。
【0021】
第5の態様において、本発明は、光通信システムにおいて、少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成するための方法を提供する。当該方法は、
送信ユニット内のレーザ生成手段により、少なくとも1つの入射レーザビームを生成することと、
2つ以上のコリメーティングレンズにより、上記入射レーザビームをコリメートすることと、
上記入射レーザビームを少なくとも1つの光変調器に入射させること、上記光変調器上に提供される少なくとも1つのホログラムにより、ユーザ定義の位相プロファイルを保持する少なくとも1次の回折ビームを生成することであって、上記回折ビームは複数の直交収差モードを含む、ことと、
上記光変調器により、少なくとも1つのユーザデータの、シフトさせた3進数であるデジタル次数を、連続する瞬間において、上記レーザビームの上記回折ビームで符号化することと、
少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームを生成することであって、上記ユーザデータは上記直交収差モードの振幅を示す、ことと、
大気若しくは自由空間の光路、又は、上記大気若しくは自由空間の光路内に位置付けられる少なくとも2つのレンズを通じて、上記データ符号化されたレーザビームを、上記送信ユニットと通信可能に結合された受信機ユニットへ送信することと、を含む。
【0022】
第6の態様において、本発明は、光通信システムにおいて、少なくとも1つのユーザデータを少なくとも1つのデータ符号化されたレーザビームから復号するための方法を提供する。当該方法は、
受信機ユニット内の波面センサにより、上記データ符号化されたレーザビームを1つ以上の入力ビームとして受信することと、
上記波面センサにより、上記入力ビーム内の収差の存在を検出することと、
上記波面センサ内のマルチプレックスホログラムにより、モーダル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する少なくとも1つの第1及び第2の収差センサ出力信号を生成し、又は、ゾーナル波面センサのケースにおいては、各入力レーザビームに対応する1つのみの収差センサ出力信号を生成することと、
少なくとも1つの通信手段により、上記第1及び第2のセンサ出力信号又は上記センサ出力信号を、上記波面センサから、以降の処理のためにデータ処理ユニットへ送信することと、
上記データ処理ユニットにより、上記第1及び第2のセンサ出力信号又は上記センサ出力信号を受信することと、
上記直交収差モードの上記振幅を求めることと、
上記直交収差モードの上記振幅により、上記ユーザデータを復号することと、を含む。
【0023】
この発明の他の態様、利点、及び顕著な特徴は、添えられた図面と共に用いられて、この発明の例示的な実施形態を開示している以下の詳細な説明から、当業者に明らかになるであろう。
【0024】
本発明のある例示的な実施形態の、上記の及び他の態様、特徴、及び利点は、以下の図を含む添付の図面と共に用いられる以下の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本開示の主題による、モーダル波面センサを使用する、提案される通信システムのブロック図の例示である。
図2図2は、本開示による自由空間光通信システムの一実施形態の例示である
図3図3は、本開示による自由空間光通信システムの別の実施形態の例示である。
図4図4は、本開示による自由空間光通信システムのさらに別の実施形態の例示である。
図5図5は、本開示の実施形態に従った、ゾーナル波面センサを使用する、提案される通信システムのブロック図の例示である。
図6図6は、本開示の実施形態に従った、ユーザデータを送信局から受信局へ通信するための方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者は、図の要素が、簡略及び明瞭にするために例示されており、縮尺通りに描かれていないことがあり得る旨を認識するであろう。本開示の種々の例示的実施形態の理解を改善することを助けるために、例えば、図における要素のうちのいくつかの寸法が、他の要素に対して誇張されていることがあり得る。図面の全体にわたり、留意されるべきこととして、同じ又は類似する要素、特徴、及び構造を描写するために、同じ参照番号が使用されている。
【0027】
[発明の詳細な説明]
添付の図面を参照する以下の説明は、この発明の例示的な実施形態の総合的な理解を補助するために提供される。以下の説明は、当該理解を補助するために種々の具体的詳細を含むが、これらは、単に例示的なものとみなされるべきである。
【0028】
したがって、当業者は、この発明の範囲から逸脱することなく、ここに記載される実施形態の種々の変更及び改良を行うことができる旨を認めるであろう。加えて、よく知られている機能及び構築物の説明は、明瞭及び簡潔にするために、省略されている。
【0029】
以下の説明及び請求項において使用される用語及び単語は、書誌学的意味に限定されず、むしろ、この発明の、明瞭であって且つ整合性のある理解を可能にするために、発明者により単に使用されているに過ぎない。したがって、当業者にとって明らかであるべきこととして、本発明の例示的な実施形態の以下の説明は、例示の目的のためだけに提供されており、添付される請求項及びそれらの均等物によって定義されるようにこの発明を限定する目的のために提供されていない。
【0030】
理解されるべきこととして、単数形である「a」、「an」、及び「the」は、文脈が特段、明らかに定めていない限り、複数の指示対象を含む。
「実質的に」という用語は、記載される特質、パラメータ、又は値の厳密な達成が必要とされず、むしろ、例えば公差、測定誤差、測定精度の限界、及び当業者に知られている他の因子を含む、偏差又はばらつきが、当該特質により提供されることが意図されている効果を妨げない量において生じるかもしれないことを意味する。
【0031】
一実施形態に関して記載される及び/又は例示される特徴は、1つ以上の他の実施形態において同じやり方若しくは類似するやり方で、及び/又は、他の実施形態の特徴と組み合わせて、若しくは当該特徴の代わりに、使用されてよい。
【0032】
強調されるべきこととして、「含む(comprises)/含んでいる(comprising)」という用語は、この明細書で使用されると、述べられた特徴、整数、ステップ、又はコンポーネントの存在を明記するために採用されているが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、コンポーネント、又はそれらのグループの存在又は追加を排除しない。
【0033】
本発明の目的、利点、及び他の新規の特徴は、添付の図面と共に読まれると、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
一実装例では、双方向通信について、送信局及び受信局の対が存在し得る。しかしながら、本発明は、単方向通信のみに対応する自由空間通信システムについて説明する。
【0034】
図1を参照されたい。ここでは、モーダル波面センサを使用する、提案される通信システムのブロック図が例示される。
図2を参照されたい。ここでは、自由空間光通信システムの一実施形態が例示される。
【0035】
図3を参照されたい。ここでは、自由空間光通信システムの別の実施形態が例示される。
図4を参照されたい。ここでは、自由空間光通信システムのさらに別の実施形態が例示される。
【0036】
図5を参照されたい。ここでは、ゾーナル波面センサを使用する、提案される通信システムのブロック図が例示される。
図6を参照されたい。ここでは、ユーザデータを送信局から受信局へ通信するための方法を例示する詳細なフローチャートが示される。
【0037】
一実装例において、自由空間通信システムが提案され、図1には、対応する略図が例示される。ユーザ情報(103)を符号化するための手段として、レーザビーム(104)内の収差の直交モードが使用される。このシステムは、ユーザ定義の情報を、送信ビーム内に存在する、ある直交収差モードの振幅に換算して送信する送信局(101)を含む。このビーム(108)は次いで、大気又は自由空間を通って進行し、その後、受信局(102)に到達する。受信局は、光ビームの高速波面センサ(106)を含む。波面センサは、異なる瞬間において入射ビーム内に存在する種々の直交収差モードの振幅を測定する。ある一定の時間間隔における直交モードの振幅は、次いで、ユーザ情報(107)を復号するために使用される。
【0038】
一実装例において、回折レーザビームには、ツェルニケモードといった、1個以上の直交モードで収差を付与することができる。モードの極性を含む、このような各モードの存在の有無は、他の収差モードの存在によって影響を受けることなく、モーダル波面センサを使用して測定することができる。ユーザによる情報は、数字1、0、及び-1を使用してデジタル形式に変換することができ、対応する数字は、異なる瞬間においてビーム内に存在するツェルニケモードの組み合わせの大きさを定義するために使用することができる。よって、図1に例示されるような自由空間光通信システムは、送信局(101)を含み、当該送信局(101)において、ユーザ情報は、動的であってプログラマブルな位相マスクを使用して、回折レーザビームの位相プロファイルを変調するために使用される。この情報を搬送する変調ビーム(108)は、大気又は自由空間を進行し、その後、受信局(102)に到達する。受信局は、モーダル波面センサ(106)を含む。モーダル波面センサの速度は、異なる瞬間における入射レーザ位相プロファイル変調を分解できる程充分に高い。受信局(102)は、ユーザ情報を、時間の関数として収差モードの振幅から復号するデータ処理ユニットを含む。
【0039】
図2に例示されるような、提案されるシステムの第1の実施形態において、送信局はレーザビームを含み、当該レーザビームは、2つのコリメーティングレンズL1及びL2の組み合わせを使用することによってコリメートされ、次いで、液晶空間光変調器(liquid crystal spatial light modulator:LCSLM)を使用して実装されるプログラマブルな位相マスクに当たることが可能にされる。一方で、当該LCSLMは、インターフェイスを使用してその送信特性を制御することが可能な、2次元アレイの液晶画素を含む。ホログラムを生成するための命令のセットが、コンピュータインターフェイスを使用して、LCSLMへ送信される。
【0040】
第1の実施形態の一実装例において、受信局内の高速モーダル波面センサは、入射レーザビーム内の特定の直交モードの存在の有無を、その極性と共に測定するように適合される。モーダル波面センサは、LCSLMを使用して実装されるプログラマブルな位相マスクを含み、このLCSLMの後ろには、当該LCSLMからのある回折次数を1つ又は2つのアイリス絞り上に集束させる集束レンズが続く。図2、3、及び4に例示されるような、アイリス絞りID2、又はID2及びID3は又は、所望されない回折次数から、必要とされる回折次数を単離するために使用される。アイリス絞りにより送信される回折次数は、(単数又は複数の)顕微鏡対物レンズによって拡大され、光ファイバケーブル(optical fiber cable:OFC)の束の一方端上に集束される。OFCの他方端は、複数の光電子増倍管(photomultiplier tube:PMT)上に位置付けられる。PMT出力は、高速データ収集カードの助けにより、PCによって読み取られる。
【0041】
第1の実施形態において、モーダル波面センサ出力は、容認可能な最少信号対雑音比の限度まで、レーザ強度のばらつきから独立している。よって、提案されるシステムは、大気内の擾乱に起因する強度の変動によって影響を受けない。
【0042】
第1の実施形態では、FSO通信システムを、波面歪みの及ばない状態にするか、又は波面歪みの影響をより受けにくくするために、送信局内のプログラマブルな位相マスクは、互いに続く2つの異なる時間スロットにおいてレーザビームを変調する。レーザビームは、一方の時間スロットにおいては、ユーザデータを表す数字で符号化され、一方、他方の時間スロットにおいては、負符号を有する同じ数字で符号化される。大気擾乱が、2つの時間スロットの持続時間よりも大きな時間スケールで存在する場合、2つの時間スロットにおける信号間の、受信局におけるセンサ出力の差は、一段と、大気により誘導される波面歪みの及ばない状態になるであろう。
【0043】
図2に例示されるような第1の実施形態において、ホログラムは、例えばN個(ここで、Nは整数である)の直交収差モードの線形結合の位相プロファイルを保持する1つの+1次回折ビームを、レンズL3の焦点面において生成するように構成される。アイリス絞り(ID1)は、他の次数から+1次を単離するために使用される。ID1を通過する+1次ビームは、次いで、レンズL4を使用してコリメートされ、受信機局へ送信される。
【0044】
第1の実施形態において、ユーザ情報は、デジタル化されて、3進法(即ち、3を底とする数体系)に変換される。次いで、各3進数を下位側に1桁シフトさせると、0、1、2が-1、0、1になる。1つおきのクロックサイクルの各々について、N個のこのような数字を使用して、送信局から到来する+1次ビームをN個のツェルニケモードで符号化する。このクロックサイクルの直ぐ後ろに別のクロックサイクルが続き、この別のクロックサイクルにおいて、この+1次は、シフトさせた同じ3進数の数字であって、異符号を有する3進数の数字を使用して符号化される。受信局内のLCSLMは、マルチプレックスホログラムを表示する。このマルチプレックスホログラムは、特定のツェルニケモードを検知するために、符号化において使用されたN個のツェルニケモードの各々について2つの+1次を生成するように構成される。第1の実施形態のケースにおいて、ユーザ指定のN個の数字の各々は、異符号を有する、シフトさせた3進数の数字が符号化の間に使用される2つのクロックサイクルに対応するセンサ出力間の差を取ることにより、受信局において復号される。
【0045】
図3に例示されるような、提案されるシステムの第2の実施形態において、送信局内のプログラマブルな位相マスクは、入射レーザビームを2つのビームに分割し、各々は、それぞれ正符号及び負符号を有する、ユーザデータのデジタル形式を使用して変調される。受信局は、同時に2つのレーザビームを受信し、これらのレーザビームは次いで、同じモーダル波面センサに入射する。2つのビームが大気内の同じ擾乱を通って進行し、異極性の直交モードを使用して情報を搬送しているため、受信局における2つのビーム間のセンサ出力の差は、大気乱流の影響をより受けにくい。
【0046】
第2の実施形態において、送信局内のLCSLMにおけるデュプレックスホログラムは、図3に例示されるように、互いに小さな角度をとって進行する2つの+1次ビームを生成する。これらの2つのビームは、大気又は自由空間を進行した後、受信局内のLCSLMに入射する。2つの+1次ビーム間の角度は、受信局内でこれらの2つのビームが互いに隣接して入射するようなやり方で調節される。2つの+1次ビームが入射する受信局内のLCSLMの2つの領域内には、2つのマルチプレックスホログラムが書き込まれる。送信局において、一方の+1次ビームは、N/2個の、シフトさせた3進数の数字が使用されて符号化され、一方、他方の+1次ビームは、N/2個の、シフトさせた同じ3進数の数字であって、負符号を有する3進数の数字を使用して符号化される。よって、2つの+1次ビームは、異極性のツェルニケモードを保持して、同じ媒体を通って進行する。受信局において、ユーザ指定のN/2個の数字の各々は、2つの+1次ビームに対応するセンサ出力差を取ることにより、復号される。この実装例では、各クロックサイクルにおいて、新たなユーザデータが送信される。
【0047】
図4に例示されるような、提案されるシステムの第3の実施形態では、やはり、2つのレーザビームが、第2の実施形態に類似する、異極性の収差モードを使用して符号化される。しかしながら、2つのレーザビームは、4f光学リレーシステムを介して受信局へ進行する。4fリレーを使用することにより、受信局では、2つのビームがモーダル波面センサの共通のエリアに入射することが確保され、これは、大気乱流に対して提供される耐性を上回るものである。
【0048】
第3の実施形態において、送信局は、第2の実施形態の送信局に極めて類似する。しかしながら、ここでは、送信局内のLCSLMの平面が、4fリレー光学装置の助けにより、受信局内のLCSLM上に投影される。レンズL5及びL6は、2つの局間の、必要とされる距離をカバーするために、長い焦点距離を有するべきである。2つのLCSLMが共役平面上に存在するため、2つの+1次ビームは、受信局内のLCSLM上の同じエリアに入射する。よって、1つのマルチプレックスホログラムのみが、その上に書き込まれることしか必要とされない。第3の実施形態についてのデータ符号化及び復号プロトコルは、第2の実施形態と同じである。よって、第3の実施形態もまた、1クロックサイクル当たりN/2個の、ユーザ指定の数字の送信を可能にする。第3の実施形態は、送信局内のLCSLM平面を受信局内のLCSLM平面上に投影するために、1つよりも多くの4fリレー光学装置を有してもよい。
【0049】
全ての実装例において、LCSLMは、プログラマブルな位相マスクを実装するために使用される。しかしながら、このことは、他の類似するデバイス又は空間光変調器などを使用することによって行われてよい。加えて、受信局におけるモーダル波面センサは、マルチチャンネルPMTの代わりにデジタルカメラを含んでよい。さらに、通信システムの3つの全ての実施形態において、モーダル波面センサは、必要なフレームレートを有するゾーナル波面センサに置き換えられてもよい。
【0050】
図5に例示されるような一実装例において、提案される自由空間光通信システムは、受信局において直交収差モードを検出するために、ゾーナル波面センサを使用して実装されてよい。
【0051】
一実装例において、光通信システムにおいて、少なくとも1つのユーザデータを少なくとも1つの送信機から少なくとも1つの受信機へ通信するための方法は、図6に例示される通りである。
【0052】
本発明の必須の特徴のうちのいくつかは、以下のものを含む。
1. モードの極性を含む、レーザビーム内の各直交収差モードの存在の有無は、他の収差モードの存在によって有意に影響を受けることなく、モーダル波面センサを使用して測定することができる。
【0053】
2. ユーザによる情報は、数字1、0、及び-1を使用してデジタル形式に変換することができ、対応する数字は、異なる瞬間においてビーム内に存在するツェルニケモードの組み合わせの大きさを定義するために使用することができる。
【0054】
3. モーダル波面センサの速度は、異なる瞬間における入射レーザ位相プロファイル変調を分解できる程充分に高い。
4. 提案されるシステムは、大気内の擾乱に起因する強度の変動により影響を受けないか、又は、影響をより受けにくい。
【0055】
自由空間光通信システム、装置、及びそれらの方法についての実装例を、構造的な特徴及び/又は方法に固有の言語によって説明してきたが、理解されるべきこととして、添付される請求項は、記載される具体的な特徴又は方法に必ずしも限定される訳ではない。むしろ、具体的な特徴及び方法は、自由空間光通信システム、装置、及びそれらの方法についての実装例の例として開示されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6