(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】親水性着色食品濃縮物を含む組成物及び得られるハードカプセル
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230417BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20230417BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230417BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20230417BHJP
A23L 5/43 20160101ALI20230417BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20230417BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20230417BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20230417BHJP
A61P 3/02 20060101ALN20230417BHJP
A61K 35/748 20150101ALN20230417BHJP
A61K 36/23 20060101ALN20230417BHJP
A61K 36/39 20060101ALN20230417BHJP
A61K 36/286 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
A23L5/00 C
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/42
A61K47/36
A61K47/46
A23L5/43
A23L29/262
A23L29/269
A23L29/281
A61P3/02
A61K35/748
A61K36/23
A61K36/39
A61K36/286
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021152887
(22)【出願日】2021-09-21
(62)【分割の表示】P 2018537776の分割
【原出願日】2016-12-30
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511291027
【氏名又は名称】カプスゲル・ベルギウム・ナムローゼ・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Capsugel Belgium NV
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ストローブ ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンクイッケンボーン ステファーン ヤーク
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-321619(JP,A)
【文献】特開平04-193825(JP,A)
【文献】特表2009-524573(JP,A)
【文献】特表2010-523594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103509369(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形成カプセル基材と1種以上の着色剤とを含有する、浸漬成形された食用に適するハードカプセルを製造するための水性組成物であって、
各前記着色剤が親水性着色濃縮物からなることを特徴とし、
前記濃縮物は、原材料からの濃縮物であって、6未満の富化係数を有し、
前記原材料が、紫ニンジン、ヤム、ダイコン、サツマイモ、クロフサスグリ、ブドウ、ウイト、スピルリナ、及びこれらの混合物、からなる群から選択される、
水性組成物。
【請求項2】
前記組成物が有機溶媒を含まない、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項3】
前記フィルム形成カプセル基材が、1種以上のセルロース、ゼラチン、プルラン及びこれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の水性組成物。
【請求項4】
前記フィルム形成カプセル基材が、1種以上のセルロースから選択される、請求項3に記載の水性組成物。
【請求項5】
前記フィルム形成カプセル基材が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)から選択される、請求項4に記載の水性組成物。
【請求項6】
前記原材料が、紫ニンジン、サツマイモ
、スピルリナ及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の水性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物からできている2ピースハードカプセルであって、前記カプセルがフィルム形成カプセル基材と1種以上の着色剤とを含み、各前記着色剤が親水性着色濃縮物からなることを特徴とし、
前記濃縮物は、原材料からの濃縮物であって、6未満の富化係数を有し、
前記原材料は、紫ニンジン、ヤム、ダイコン、サツマイモ、クロフサスグリ、ブドウ、ウイト、スピルリナ、及びこれらの混合物からなる群から選択される、
2ピースハードカプセル。
【請求項8】
室温
、常時照明で5週間保存した後に、16未満、15未満または12未満の色安定性、ΔE
2000を有する、請求項7に記載の2ピースハードカプセル。
【請求項9】
室温
、常時照明で5週間保存した後に、1~11または2~10の色安定性、ΔE
2000を有する、請求項8に記載の2ピースハードカプセル。
【請求項10】
2ピースハードカプセルを製造するための浸漬成形方法であって、以下のステップ:
フィルム形成カプセル基材を含む水性組成物を準備するステップと、
それぞれが親水性着色濃縮物からなる1種以上の着色剤を前記水性組成物と直接混合して、浸漬組成物を準備するステップと、
前記浸漬組成物に1つ以上のモールドピンを浸漬するステップと、
前記1つ以上のモールドピンを前記浸漬組成物から取り出して、前記ピンの上にフィルムを形成するステップと、
前記フィルムを乾燥させて、カプセルシェルを得るステップと、を含み、
ここで、前記濃縮物は、原材料からの濃縮物であって、6未満の富化係数を有し、
前記原材料が、紫ニンジン、ヤム、ダイコン、サツマイモ、クロフサスグリ、ブドウ、ウイト、スピルリナ、及びこれらの混合物、からなる群から選択される、
浸漬成形方法。
【請求項11】
前記フィルム形成カプセル基材が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる、請求項10に記載の浸漬成形方法。
【請求項12】
前記水性組成物が、25℃~45℃または30℃~40℃の温度で維持される、請求項10又は11に記載の浸漬成形方法。
【請求項13】
前記水性組成物及び前記浸漬組成物が、6未満または5未満のpHを有する、請求項10~12のいずれか一項に記載の浸漬成形方法。
【請求項14】
前記水性組成物及び前記浸漬組成物が、3~4.9、3.5~4.8、または4.0~4.7のpHを有する、請求項13に記載の浸漬成形方法。
【請求項15】
ハードカプセルにおける1種以上の着色剤の使用であって、
前記着色剤はそれぞれ親水性着色濃縮物からなり、
前記濃縮物は、原材料からの濃縮物であって、6未満の富化係数を有し、
前記原材料が、紫ニンジン、ヤム、ダイコン、サツマイモ、クロフサスグリ、ブドウ、ウイト、スピルリナ、及びこれらの混合物、からなる群から選択される、
着色剤の使用。
【請求項16】
請求項15に記載の着色剤の使用であって、前記着色剤は、前記カプセルに色及び機能的属性をもたらし、前記機能的属性が、芳香、美味又は栄養からなる群から選択される、着色剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象に1種以上の薬物/医薬品(又は健康栄養物質)を経口、膣内、直腸又はその他の投与を介して送達するための組成物及び得られる剤形物品に関する。より具体的には、剤形物品は、食用であり、対象、好ましくはヒト又は動物から選択される対象による同化に適している。
【0002】
1種以上の着色剤を含む組成物及び得られるカプセルは、それぞれ、親水性着色食品濃縮物からなる。
【背景技術】
【0003】
入れ物の技術、特にカプセル技術は、開発及び改善され続け、方法及び機材を含めたその製造も同様である。薬剤又はその他の粉末、顆粒若しくは液体物質用の標準容器(一般的に、テレスコープタイプ又は2ピースカプセルと称される)は、その基本的な形態において、管状及び/又は円筒形状の第1の部、すなわちキャップ部分を備え、これは、一端が閉じており、反対側の他方の端は開いている。しっかり係合する類似形状の第2部分、すなわち本体部分は、キャップ部分よりも直径が小さく、典型的には入れ子式にその中に係合され、剤形全体又は2ピースカプセルを形成する。同様のカプセル技術を使用して、多重コンパートメントカプセルを生成することができる。
【0004】
カプセルは、一般に、機能性ベースシェル材料(最も一般にゼラチンであるが、より最近では、セルロース又はプルランなどの代替のポリマーである)並びにゲル化剤、可塑剤及び/又は着色剤などの他の添加剤を含むか、それらでできている。
【0005】
特に、着色剤は、典型的には、色オプションの膨大なスイートをカプセルに提供するために、したがって、最終的な剤形のブランド化に結び付けられることがある美的な外観を単に提供するために、特に使用されてきた。このような着色剤は、一般に、合成由来の着色剤であるか、又は天然源から選択的に抽出された色素であり、これは、典型的には、このような材料が、時間経過に伴う退色が少なくなり、熱劣化に対する特定の抵抗性を示す傾向があるからである。
【0006】
それにもかかわらず、ハードカプセルに天然着色剤を導入する要望があるが、これには、合成に由来する又は抽出された着色剤及び色素を支持する使用を制限しているいくつかの課題がある。
【0007】
良好な物理的安定性及び色安定性並びに機能性の付加及び/又はハードカプセル製造において特に使用される水性ベースのゲル化系との適合性の改善をもたらす、真に天然の着色剤を含むハードカプセル組成物を提供することが望まれている。
【0008】
更に、これらと混合する前に更に分散させることなくカプセル化組成物に組み込むことを可能にする着色剤に対する要望がある。
【発明の概要】
【0009】
本開示の第1の態様は、各着色剤が親水性着色食品濃縮物からなる、フィルム形成カプセル基材と1種以上の着色剤とを含有する浸漬成形された食用に適するハードカプセルを製造するための水性組成物に関する。
【0010】
本開示の更なる態様は、フィルム形成カプセル基材と1種以上の着色剤とを含み、各着色剤が親水性着色食品濃縮物からなる、2ピースハードカプセルに関する。
【0011】
本開示の更なる態様は、2ピースハードカプセルを製造するための浸漬成形方法に関し、以下のステップ:フィルム形成カプセル基材を含む水性組成物を準備するステップと、それぞれが親水性着色食品濃縮物からなる1種以上の着色剤を水性組成物と直接混合して、浸漬組成物を準備するステップと、浸漬組成物に1つ以上のモールドピンを浸漬するステップと、1つ以上のモールドピンを浸漬組成物から取り出して、ピンの上にフィルムを形成するステップと、フィルムを乾燥させてカプセルシェルを得るステップと、を含む。
【0012】
本開示の更なる態様は、1種以上の着色剤の使用に関し、該着色剤はそれぞれ親水性着色食品濃縮物からなり、ハードカプセルの状態では、典型的には該カプセルに色及び機能的属性をもたらし、該機能的属性が、芳香、美味又は栄養特性からなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「a」及び/又は「an」とは、特定の要素を説明する場合、特定の要素のうちの「少なくとも1つ」を意図する。
【0014】
用語「医薬品」とは、対象に1つ以上の治療的メリットをもたらす1種以上の化合物を含む「薬物」等を意図し、用語「医薬品」及び「薬物」は、本明細書において区別なく使用してよい。
【0015】
用語「ハードシェル」又は「ハードカプセルシェル」とは、変形可能だが、変形させる力が除かれれば、変形されていない形状に実質的に戻るシェルを意図する。典型的には、そのようなシェルは、25重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは0重量%~14重量%、更により好ましくは0重量%超~14重量%未満の水を含む。
【0016】
本開示では、別段指示がない限り、「カプセル」は、本体とキャップと呼ばれる、同軸の入れ子式に結合された2つの部分からなる、ハードカプセルを意味する。
【0017】
用語「着色食品濃縮物」は、食品又は食品の特徴的な成分からなる原材料からの濃縮物であって、原材料が選択的な物理的及び/又は化学的抽出を受けない濃縮物を意図する。むしろ、原材料は、従来の粉砕/絞り、非有機溶媒添加物(例えば、水、糖、例えば、転化糖(ショ糖の非結晶性版)又はDトレハロース及びクエン酸(又は、クエン酸三ナトリウムのようなその誘導体)による希釈、それに続く、乾燥/蒸発(240℃を超えない温度で)によって、典型的に濃縮される。典型的には、そのような着色食品濃縮物は6未満の富化係数Fe(Fnとも呼ばれる)を有する。
【0018】
用語「直接混合」は、更に希釈若しくは可溶化を行わない、言及される要素(例えば、組成物)中で直接的に混合すること、又は更なる材料との他の前混合が意図される。
【0019】
用語「相対湿度」は、同一温度で空気が飽和した場合に発生すると思われる蒸気圧に対する所定温度における実際の水蒸気圧の割合を意味するように、本明細書で用いられる。当業者に知られている湿度測定器に関する多くの技術が存在し、これらのすべてが実質的に同じRH測定を提供する。
【0020】
用語「親水性」は、言及される材料が、一般的に材料の電荷分極特性及び水素結合の能力のために、相分離(又は分離相の形成)がなく、水に添加した場合に溶液を形成するという点で、水と強い親和性を有することを意図する。
【0021】
用語「炭水化物」は、モノ-及びオリゴ糖のみを意図する。
【0022】
ここで、剤形の構造、機能、製造、及び使用の原理、本明細書に開示される用途及び方法を全体的に理解するために、様々な実施形態を説明する。これらの実施形態の一つ以上の例を、添付の図面において例示する。当業者は、一つの例示的実施形態に関連して説明又は例示される特徴を、本開示からの一般論が適用されないその他の例示的実施形態の特徴と合わせることができることを即座に理解するであろう。
【0023】
組成物
ハードカプセルを製造するための本明細書の組成物は、フィルム形成カプセル基材と、1種以上の着色剤と水とを含み、好ましくはこれらから本質的になる。任意に、可塑剤、抗細菌剤及び中和剤(特にアルカリ性物質)などの1種以上の更なる添加剤が含まれてもよい。このような任意の添加剤は、好ましくは、基材が、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(hydroxypropyl methyl cellulose acetate succinate、HPMCAS)又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(hydroxypropyl methyl cellulose phthalate、HPMCP)などの腸溶性セルロース材料から選択される場合に、組成物中に含まれ得る。
【0024】
フィルム形成カプセル基材は、1つ以上のセルロース(例えば、HPMC、HPMCP、HPMCAS、MC)、ゼラチン、プルラン及びこれらの混合物から選択され得る。セルロース、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methylcellulose、HPMC)が最も好ましい。
【0025】
本明細書のメトキシHPMC及びヒドロキシプロポキシの含有量は、USP30-NF25に従って表される。20℃の水におけるHPMC2%重量溶液の粘度は、セルロース誘導体に関するUSP30-NF25法に従って測定される。
【0026】
好ましくは、水性組成物は、水性組成物の総重量に基づいて、17~23重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。適切なヒドロキシプロピルメチルセルロースは市販されている。例えば、適切なタイプは、HPMCタイプ2906についてUSP30-NF25に示される要件を満たすものすべてである。
【0027】
適切な水性組成物は、同じタイプであるが粘度グレードが異なるHPMCを配合することによって得ることができる。
【0028】
好ましい実施形態では、本明細書の水性組成物中のHPMCは、20℃の水における2重量/重量%溶液として、4.0~5.0cPsの粘度を有するHPMCである。
【0029】
HPMC水溶液の粘度は、例えばUSPに開示されるような従来の技法により、ウベローデ型の粘度計を用いて、測定することができる。
【0030】
一実施形態において、本明細書の水性組成物は、水性組成物の全重量に基づいて、0重量%~5重量%、好ましくは0重量%~2重量%の、ハードカプセルの製造に一般的に使用される追加の非動物由来のフィルム形成ポリマーを含むことができる。一実施形態では、本発明のHPMC水性組成物は、本明細書で開示されるHPMCを除いて、他のフィルム形成ポリマーを含まない。非動物由来のフィルム形成ポリマーは、例えば、ポリビニルアルコール、植物由来又は細菌由来のフィルム形成ポリマーである。典型的な植物由来のフィルム形成ポリマーは、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、本明細書で定義されるHPMC以外のセルロース誘導体及びこれらの混合物である。典型的な細菌由来のフィルム形成ポリマーはエキソ多糖類である。典型的なエキソ多糖類は、キサンタン、アセタン、ゲラン、ウェラン、ラムザン、ファーセレラン、スクシノグリカン、スクレログリカン、シゾフィラン、タマリンドガム、カードラン、プルラン、デキストラン及びこれらの混合物である。
【0031】
好ましい実施形態では、本明細書のHPMC水性組成物は、水性組成物の全重量に基づいて、0重量%~1重量%、好ましくは0重量%の、ハードカプセルの製造に従来使用されている動物由来の材料を含む。典型的な動物由来の材料はゼラチンである。
【0032】
好ましい実施形態では、本明細書の水性組成物は、ゲル化系の水性組成物の総重量に基づいて、0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0重量%(すなわち、最も好ましい実施形態では、本明細書の組成物はゲル化系を含まない)を含む。「ゲル化系」は、1種以上の陽イオン及び/又は1種以上のゲル化剤を意味する。典型的な陽イオンは、K<+>、Na<+>、Li<+>、NH4<+>、Ca<++>、Mg<++>及びこれらの混合物である。典型的なゲル化剤(複数可)は、ハイドロコロイド、例えばアルギネート、寒天ガム、グアーガム、ローカストビーンガム(イナゴマメ)、カラギーナン、タラガム、アラビアガム、ガティガム、カヤグランディフォリア(khaya grandifolia)ガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビア(アラバン)、キサンタン、ジェランガム、コンニャクマンナン、ガラクトマンナン、フノラン及びこれらの混合物である。通常、ゲル化剤は、任意に、陽イオン及び他の成分、例えば封鎖剤と組み合わせて使用することができる。
【0033】
本明細書で開示されるHPMC水性組成物は、ゲル化系を用いることなく、強力で物理的に安定なゲルをもたらすのに適しているので、本発明のHPMCカプセルの溶解性は、典型的にゲル化系、特に陽イオンに関連する欠点の影響を受けない。
【0034】
天然な状態で、すなわち、着色剤又は類似の成分を組成物に添加することなく、本明細書の水性組成物から得られるHPMCハードカプセルは、良好な清澄性及び透明性を示す。650nmのUVによって測定される、カプセル本体の(その二重シェル層を通した)透過率は、ゼラチンハードカプセルと同等の80%付近である。
【0035】
本明細書に記載される組成物で使用するための着色剤は、天然着色剤又は着色食品濃縮物である。そのような着色剤は、水性のハードカプセル組成物への混合に特に有用であり、得られるカプセルの安定性が改善されることが見出されたので、親水性であるものからなるように選択される。利点は、機能性の追加のために、酸化防止剤、保存剤、ビタミン類などの更なる材料の添加を更に必要とせず、典型的には界面活性剤、分散剤及び溶媒(例えば有機溶媒)を含むと思われる他の媒体に更に希釈/分散することなく、そのような着色剤を水性フィルム形成組成物に直接組み込むことを更に可能にすることである。
【0036】
着色剤は、液体形態でもよく、又は粉末形態でもよく、後者は、典型的は、微粒化方法によるか、又は好ましくは凍結乾燥される。粉末状態の場合は、好ましくは凍結乾燥粉末形態であり、これは、浸漬成形カプセルのための水性組成物におけるその分散能力が良好に保持されることが、好都合なことに見出されたからである。しかし、最も好ましい着色剤は液体形態である。
【0037】
一般的に、着色剤の0.01~10.0重量%、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは1重量%~7重量%、更により好ましくは2重量%~6重量%、更により好ましくは3.5重量%~5.5重量%が、水性組成物に含まれ得る。重量は、組成物の全重量に対して表される。任意に、グリセリン又はプロピレングリコールなどの適切な可塑剤を水溶液に含めることができる。過度の柔軟性を回避するために、可塑剤の含有量は低くなければならず、例えば、組成物の全重量に対して、0重量%~2重量%、より好ましくは0重量%~1重量%である。
【0038】
着色食品濃縮物は、典型的には、本明細書に記載の方法に従って測定した場合に、6未満、好ましくは5.5未満、より好ましくは5未満、更により好ましくは4.5未満、最も好ましくは1~4.4の富化係数(Fe)を含む。本実施形態の利点は、更なる機能的(特に芳香、美味又は栄養)属性を得られるカプセルに与える天然の着色剤を提供することである。更なる利点は、ハードカプセルシェルの得られる安定性を悪い方に変える可能性がある更なるいかなる材料も水性組成物の調製中に追加することなく、得られるハードカプセルシェルにそのような追加の機能性を加えることである。
【0039】
好ましい実施形態では、組成物は有機溶媒を含まず、特に少なくともエタノール又はアセトンを含まず、好ましくは、エタノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を含まない。
【0040】
着色食品濃縮物の原材料は、典型的には、紫ニンジン、カボチャ、ヤム、ダイコン、サツマイモ、ビート根及びこれらの混合物から好ましくは選択される野菜;エルダーベリー、クロフサスグリ、ブドウ、リンゴ、ウイト(huito)及びこれらの混合物から好ましくは選択される果実;ベニバナ(safflower)、コウカ(carthamus)、ハイビスカス、ノウゼンハレン、スピルリナ、クロレラ及びこれらの混合物から好ましくは選択される食用植物;藻類;菌類;並びにこれらの混合物、からなる群から選択される。このような材料は、許容される物理的及び光的に安定な着色カプセルをもたらすことが見出されている。
【0041】
最も好ましい原材料は、紫ニンジン、サツマイモ、ベニバナ、スピルリナ及びこれらの混合物からなる群から選択される。このようなものは、良好な物理的及び光的安定性を提供し、異なるカラーシェードをもたらすための混合物に非常によく適していることが見出されている。
【0042】
あまり好ましくない原材料としては、典型的には、オレンジ、ウコン、トマト及びニンジン(又は他のカロチン分散体)が挙げられる。このようなものは、典型的には、特にpH感度及び経時的な光安定性不良が原因で、ハードカプセルの製造における特定の使用にこれらをあまり適さないようにする、食品の固有の特性を有することが見出されている。
【0043】
適切でなく、そのため、本開示によって本明細書において一般に排除される着色剤としては、以下の非制限的材料リストが挙げられる:R3(エリスロシンB)、R3不透明(エリスロシンB)、Y6(サンセットイエロー)、Y6不透明(サンセットイエロー)、B2(インジゴチン)、B2不透明(インジゴチン)、Y5(タートラジン)、Y5不透明(タートラジン)、R40(アルラレッド)、R40不透明(アルラレッド)、Y10(キノレイン)、Y10不透明(キノレイン)、合成タール色素、酸化鉄、二酸化チタン又はカーボンブラック、カロチノイド系色素、アナトー染料(例えば、ビキシン、ノルビキシン)、クチナシ黄色素(例えばクロシン)、抽出ニンジン色素(例えばβ-カロチン)、抽出オレンジ色素(例えばβ-アポ-β-カロテナール)、抽出パプリカ色素(例えばカプサンチン)、抽出キノコ色素(例えば、カンタキサンチン)、抽出トマト色素(例えば、リコペン)など、抽出紫サツマイモ色素のアントシアニン系、抽出ブドウ皮色素(例えば、エノシアニン)、抽出シソ色素(例えば、シソニン)、抽出赤キャベツ色素(例えば、Le Bro brush true)、ベニバナ黄色素の抽出カルコン、抽出ソバ色素(例えば、ルチン)、抽出クロガシ皮色素(例えば、ケルセチン)、抽出ソルガム色素(例えば、アピゲニン)、抽出カカオ色素、ラッカイン酸、カルミン酸、アリザリンなど、粉末/抽出カテキュータンニン酸、抽出ターメリック、塩化メチルロザニリン、黄色酸化鉄、黄色三酸化二鉄、オレンジエッセンス、褐色酸化鉄、カーボンブラック、カーミン、カロチン液、β-カロチン、光感応性素子201号、金箔、クマザサ抽出物、黒色酸化鉄、軽質無水ケイ酸、酸化亜鉛、酸化チタン、三酸化二鉄、ジスアゾイエロー、食用青色1号及びそのアルミニウムレーキ、食用青色2号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色4号及びそのアルミニウムレーキ、食用黄色5号及びそのアルミニウムレーキ、食用緑色3号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色2号及びアルミニウムレーキ、食用赤色3号、食用赤色102号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色104号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色105号及びそのアルミニウムレーキ、食用赤色106号及びそのアルミニウムレーキ、水酸化ナトリウム、タルク、銅クロロフィルナトリウム、銅クロロフィル、ライムギ緑葉抽出物、フェノールレッド、フルオレセインナトリウム、d-ボルネオール、マラカイトグリーン、ミリスチン酸オクチルドデシル、メチレンブルー、薬用炭、酪酸リボフラビン、リボフラビン、リン酸マンガンアンモニウム、リン酸リボフラビンナトリウム、ローズオイル、ターメリック色素、クロロフィル、カルミン酸色素、食用赤色40号及びそのアルミニウムレーキ、鉄クロロフィリンナトリウム、ドナリエラカロチン、パプリカ色素、チョウセンニンジンカロチン、ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム、パーム油カロチン、抽出ビートレッド、抽出ブドウ果皮色素、抽出クロフサスグリ色素、抽出紅麹色素、抽出ベニバナ赤色素、抽出マリーゴールド色素、リン酸リボフラビンナトリウム、アカネ色素、アルカネット色素、アルミニウム、ジャガイモカロチン、抽出エビ色素、抽出オキアミ色素、抽出オレンジ色素、抽出カカオ色素、抽出カカオ炭粉色素、抽出カキ色素、抽出カニ色素、抽出イナゴマメ色素、抽出魚鱗箔、銀、抽出クサギ色素、抽出クチナシ青色素、抽出クチナシ赤色素、抽出クチナシ黄色素及びクーロー色素、クロロフィン、抽出コウリャン色素、抽出骨炭色素、抽出ササ色素、抽出シアナッツ色素、抽出ムラサキの根色素、抽出シタン色素、植物性カーボンブラック、抽出スオウ色素、抽出オニオン色素、抽出タマリンド色素、抽出トウモロコシ色素、抽出トマト色素、抽出ピーナッツ色素、抽出ファフィア色素、ペカンナッツ色素、抽出紅麹黄色、抽出ヘマトコッカス藻類色素、抽出紫サツマイモ色素、抽出紫トウモロコシ色素、抽出紫ヤム色素、植物油すす色素、ラック色素、ルチン、エンジュ抽出物、ソバ抽出物、ログウッド色素、抽出赤キャベツ色素、抽出赤米色素、抽出アズキ色素、抽出アジサイ葉抽出物、ウグイスカグラ色素、抽出エルダーベリー色素、抽出オリーブ茶色素、抽出カウベリー色素、抽出グーズベリー色素、抽出クランベリー色素、抽出サーモンベリー色素、抽出イチゴ色素、抽出ダークスウィートチェリー色素、抽出チェリー色素、抽出シンブルベリー色素、抽出デベリー色素、抽出パイナップル色素、抽出ハックルベリー色素、抽出ブドウ果汁色素、抽出クロフサスグリ色素、抽出ブラックベリー色素、抽出プラム色素、抽出ブルーベリー色素、抽出ベリー色素、抽出ボイセンベリー色素、抽出ホワートルベリー色素、抽出マルベリー色素、抽出モレロチェリー色素、抽出ラズベリー色素、抽出アカフサスグリ色素、抽出レモン果汁色素、抽出ローガンベリー色素、抽出ココア色素、抽出サフラン色素、抽出シソ色素、抽出チコリ色素、抽出レイヤー色素、抽出ハイビスカス色素、麦芽抽出物、抽出粉末パプリカ、抽出ビートレッド色素、抽出チョウセンニンジン色素など。
【0044】
一般的に、本開示によって特に排除される着色剤としては、親油性βカロチン色素、親水性フラボノイド、クロロフィル及び/又はフィコシアニン色素が挙げられる。実際、このようなものは抽出色素の例である。更に、カロチノイドは一般に親油性であり、それにより、これを水性組成物に組み込むことができる更なる種、例えば、分散剤又は界面活性剤を必要とする。
【0045】
本明細書に記載の組成物は、乳白剤(たとえば、酸化チタン)を更に含むことができるが、存在する場合には、これらは、組成物の1.5重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満、更により好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0重量%(すなわち、乳白剤を含まない)の量で存在する。
【0046】
本明細書の水性組成物によって、最適な溶解性を示す、良好な、特にHPMCのハードカプセルの製造が可能になることが注目されている。溶解プロファイルは、カプセルに含まれる物質の完全かつ再現可能な放出を得るための、療法における重要な点である。
【0047】
更に、本明細書の水性組成物によって、一旦入れ子式に結合されれば、本体及びキャップを適切に密封することができる良好なハードカプセルの製造が可能になることが注目されている。これによって、本明細書で開示されている新規のハードカプセルが、液体充填経口剤形及び吸入用粉末充填剤形の製造、又は二重盲検試験において使用されるタンパープルーフ医薬形態の製造に対する、特に良好で費用効果のある解決策になる。
【0048】
剤形物品
本明細書の剤形物品は、内部に医薬品を充填するための少なくとも1つのコンパートメントを提供するハードカプセルの形態である。このようなハードカプセルは、本体部とその上に入れ子式に取り付けられたキャップ部を典型的には含む、(2ピースハードカプセルを形成する)少なくとも2つのシェルを含む。
【0049】
好ましい実施形態では、カプセルシェルは、本明細書に開示される水性組成物及び/又は方法によって得られる。
【0050】
本明細書のハードカプセルは、フィルム形成カプセル基材及び1種以上の着色剤を含み、各着色剤は、本明細書中上記で記載された親水性着色食品濃縮物からなる。
【0051】
好ましい実施形態では、カプセルは、室温での(本明細書の試験方法で記載されるような)常時照明の保存下で5週間たった後に、16未満の、好ましくは15未満、より好ましくは12未満、更により好ましくは1~11、最も好ましくは2~10の色安定性、ΔE2000を有する。好都合なことに、そのようなパラメータを満たすカプセルは、使用製造中、貯蔵及び最終的な使用条件の下で良好な光安定性及びの最小限の経時退色を示すことが見出されている。
【0052】
好ましい実施形態では、カプセルシェルは、シェルの重量に基づいて、70~99重量%、好ましくは80~99重量%の量で、HPMCを含む。他のフィルム形成ポリマーが存在しない場合は、HPMCは、シェルの重量に基づいて、好ましくは92重量%~99重量%、より好ましくは93~98重量%、更により好ましくは94重量%~97重量%である。好ましい実施形態では、カプセルシェルは、シェルの重量に基づいて、0重量%~25重量%、好ましくは0重量%~10重量%の、上記で定義した更なる非動物由来のフィルム形成ポリマーを含む。
【0053】
好ましい実施形態では、カプセルシェルは、空のシェル重量(室温及び室圧及び約50%の相対湿度RHで測定)に基づいて、1~8重量%、好ましくは2~7重量%、より好ましくは3~6重量%の水を含む。
【0054】
好ましい実施形態では、上記の着色剤は、空のシェルの重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%の総量でカプセルに含まれる。
【0055】
一実施形態では、カプセルシェルは、空のシェルの重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%の総量で、1種以上の可塑剤を含む。
【0056】
一実施形態では、カプセルシェルは、シェルの重量に基づいて、0~2重量%、好ましくは0.001~1重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%の、1種以上の抗菌剤を含む。
【0057】
一実施形態では、カプセルシェルは、シェルの重量に基づいて、0~2重量%、好ましくは0.001~1重量%、より好ましくは0.01~0.5重量%の、1種以上の芳香剤を含む。
【0058】
好ましい実施形態では、本明細書で開示されているハードカプセルシェルは、タンパープルーフ医薬剤形の製造に使用することができる。この目的のためには、カプセルシェルが欧州特許第110500(B1)号に開示されているようなものであれば特に有利である。本発明の好ましい実施形態では、好ましくは、HPMCハードカプセルシェルは、同軸キャップ及び本体を含み、キャップ及び本体のそれぞれは、一般に円筒状の側壁、開放端部及び閉鎖端部を有し、これらの部分のそれぞれの側壁はカプセルシェルの直径よりも実質的に大きく、キャップと本体は、入れ子式の関係で結合するように適合されており、ここでは、キャップと本体が入れ子式の関係で完全に結合している場合、本体の唯一の露出部分は閉鎖端部であり、閉鎖端部は、把持されにくいような形状の外表面を有し、これによって、キャップ及び本体の分離が妨げられ、ここでは、キャップ及び本体が入れ子式の関係で完全に結合している場合、キャップの内壁は本体の外壁と実質的に完全に重なっている。換言すると、キャップ及び本体が入れ子式の関係で完全に結合している場合、キャップの側壁に本体の側壁全体が包まれる。このようにして、使用時には、本体の閉鎖端のみが露出し、キャップ内から本体の把持及び引き出しのための最小の表面を呈し、これにより、カプセルシェルの分離が阻止される。
【0059】
本体及びキャップのいずれかの閉鎖端部は、例えば、一般に、半球形状、錐体形状、円錐形状又は扁平形状を有していてもよい。
【0060】
更に安全にするために、本体及びキャップが、1つ以上の周方向に延びるリッジ及び/又は溝を有する相互ロッキング手段を更に含むことが好ましい。したがって、カプセルシェルは、場合によって、キャップ及び本体のうちの1つの側壁が、(i)キャップの側壁の内表面から半径方向に内側に、又は(ii)本体の側壁の外表面から半径方向に外側に、のいずれかで延びる、周方向に延びる1つ以上のリッジを含むロッキング手段を有するようなものでもよい。
【0061】
あるいは、又は更に、キャップ及び本体のもう一方の側壁は、場合によって、(i)本体の外表面から半径方向に内側に、又は(ii)キャップの内表面から半径方向に外側に、のいずれかで延びる、周方向に延びる1つ以上の溝であり、各リッジを係合させる溝を有する。
【0062】
カプセルシェルが、結合の際に、カプセル内から空気を逃がすことを可能にするための通気手段を更に含むことが好ましく、ここでは、これらの周方向に延びるリッジ、又は周方向に延びるリッジのそれぞれは、キャップ及び本体が結合する際に、カプセル内から空気を逃がすようにセグメント間の空間が通気口として作用するように2つ以上のセグメントを含む。
【0063】
キャップ及び本体のうちの1つの側壁が、場合によっては(i)キャップの側壁の内表面から半径方向に内側に、又は(ii)本体の側壁の外表面から半径方向に外側に、のいずれかで延びる、直径方向に対向する一体化されたインデントの対を有することが好ましく、インデントの直径方向の間隔は、(i)の場合は、本体の開放端の外径よりも小さく、(ii)の場合は、キャップの開放端の内径より大きく、その結果、本体がキャップに入り込むことができ、キャップと本体が結合する際にカプセル内から空気を逃がすことが可能になる。
【0064】
貯蔵及び/又は輸送のために、カプセルシェルが、充填及び最終的な結合の前に、部分的に結合したキャップ及び本体を一定の所定の相対位置に予めロックするための手段も含み得ることが好ましい。
【0065】
好ましくは、本体は、キャップ内に入れ子式に収容されているときの当接を回避するために、その開放端の部分で縮径されている。
【0066】
あるいは、又は更に、キャップは、タンパリングに対する更なる抵抗として、その開放端の部分で縮径されており、これによって、それらと本体の閉鎖端部分に隣接する本体の側壁の部分との間の係合が向上する。
【0067】
一態様では、本開示は、上記で定義したカプセルシェル及びその中に充填された1種以上の医薬品を含む、上記で定義したハードカプセルに関する。
【0068】
薬物用剤形として使用する場合、本発明のカプセルは、任意に1種以上の薬学上許容される賦形剤と混合されて、典型的には、例えば、0.001g~2.0gの活性成分を含む。
【0069】
一実施形態では、好ましくは、任意に密封された本開示のHPCMハードカプセルは、乾燥粉末吸入器(頭文字語DPIによっても一般に知られる)において使用することができる。
【0070】
医薬品
本明細書に記載の剤形物品中の使用に適した薬物(すなわち医薬品)は、どのような形態をとってもよく、対象となるヒト又は動物のあらゆる治療向けのものでよい。これは、薬剤化合物だけでなく、ビタミン、ミネラル等の栄養補助食品も含む。
【0071】
薬物は、室温及び大気圧下で、固体又は液体、好ましくは固体の状態でよく、1種以上の活性化合物を含む。
【0072】
本開示による送達に適した化合物(一般的に本明細書で用いる用語「医薬品」に包含される)には、これらに限定されないが、以下の微粒子、粉末、ワックス、液体及び/又はペレットの形態が挙げられる:
a)薬剤(薬剤有効成分とも呼ばれる)、例えばベタメタゾン、チオクト酸、ソタロール、サルブタモール、ノルフェネフリン、シリマーン(silymahn)、ジヒドロエルゴタミン、ブフロメジル、エトフィブレート、インドメタシン、オキサゼパム、アセチルジギトキシン、ピロキシカム、ハロペリドール(halopehdol)、一硝酸イソソルビド、アミトプチリン(amithptyline)、ジクロフェナク、ニフェジピン、ベラパミル、ピリチノール、ニトレンジピン、ドキシサイクリン、ブロムヘキシン、メチルプレドニゾロン、クロニジン、フェノフィブレート、アロプリノール、ピレンゼピン、レボチロキシン、タモキシフェン、メチルジゴキシン、o-(B-ヒドロキシエチル)-ルトシド、プロピシリン、一硝酸アクシロビル、パラセタモール(paracetamolol)、ナフチドロフリル、ペントキシフィリン、プロパフェノン、アセブトロール、1-チロキシン、トラマドール、ブロモクリプチン、ロペラミド、ケトフィネン(ketofinen、フェノテロール、ドベシル酸カルシウム、プロプラノロール、ミノサイクリン、ニセルゴリン、アンブロキソール、メトプロロール、B-シトステリン(B-sitosterin)、マレイン酸エナラプリル(enalaprilhydrogenmaleate)、ベザフィブレート、硝酸イソソルビド、ガロパミル、キサンチノールニコチネート、ジギトキシン、フルニトラゼパム、ベンシクラン、デクスパンテノール、ピンドロール、ロラゼパム、ジルチアゼム、ピラセタム、フェノキシメチルペニシリン、フロセミド、ブロマゼパム、フルナリジン、エリスロマイシン、メトクロプラミド、アセメタシン、ラニチジン、ビペリデン、メタミゾール、ドキセピン、クロラゼプ酸二カリウム、テトラゼパム、リン酸エストラムスチン、テルブタリン、カプトプリル、マプロチリン、プラゾシン、アテノロール、グリベンクラミド、セファクロル、エチレフリン、シメチジン、テオフィリン、ヒドロモルフォン、イブプロフェン、プリミドン、クロバザム、オキサセプロール、メドロキシプロゲステロン、フレカイニド、Mg-ピリドキサル-5-リン酸グルタミニン酸(Mg-pyhdoxal-5-phosphateglutaminate)、ヒメクロモン、エトフィリンクロフィブレート、ビンカミン、シンナリジン、ジアゼパム、ケトプロフェン、フルペンチキソール、モルシドミン、グリボルヌリド(glibornuhde)、ジメチンデン、メルペロン、ソキノロール、ジヒドロコデイン、クロメチアゾール、クレマスチン、グリソキセピド、カリジノゲナーゼ、オキシフェドリン(oxyfedhne)、バクロフェン、カルボキシメチルシスチン、チオレドキシン、ベタヒスチン、1-トリプトファン、ミルトル、ブロメライン、プレニルアミン、サラゾスルファピリジン、アステミゾール、スルピリド、ベンゼラジド(benzerazid)、ジベンゼピン、アセチルサリチル酸、ミコナゾール、ナイスタチン、ケトコナゾール、ピコ硫酸ナトリウム、コレスチラメート(colestyramate)、ゲムフィブロジル、リファンピン、フルオコルトロン、メキシレチン、アモキシシリン、テルフェナジン、ムコ多糖類ポリ硫酸(mucopolysaccharidpolysulfuric acid)、トリアゾラム、ミアンセリン、チアプロフェン酸(tiaprofensaure)、メチル硫酸アメジニウム(ameziniummethylsulfate)、メフロキン、プロブコール、キニジン、カルバマゼピン、Mg-1-アスパラギン酸、ペンブトロール、ピレタニド、アミトリプチリン、カプロテロン(caproteron)、バルプロ酸ナトリウム、メベベリン、ビサコジル、5-アミノサリチル酸、ジヒドララジン、マルガドレード(magaldrate)、フェンプロクモン、アマンタジン、ナプロキセン、カルテオロール、ファモジチン、メチルドーパ、オーラノフィン、エストリオール、ナドロール、レボメプロマジン、ドキソルビシン、メドフェノキサット(medofenoxat)、アザチオプリン、フルタミド、ノルフロキサシン、フェンジリン、酒石酸プラジュマリウム(prajmaliumbitartrate)、エシンアクロマイシン、アニパミル、ベンゾカイン、[β]-カロチン、クロラムフェニコール、クロロジアゼポキシド(chlorodiazepoxid)、酢酸クロルマジノン(chlormadinoneacetate)、クロロチアジド、シンナリジン、クロナゼパム、コデイン、デキサメタゾン、ジクマロール、ジゴキシン、ドロタベリン、グラミシジン(grami-cidine)、グリセオフルビン、ヘキソバルビタールヒドロクロロチアジド、ヒドロコルチゾン、ヒドロフルメチアジド、ケトプロフェン、ロネチル、メダゼパム、メフルシド、メタンドロステノロン、スルファペリン、ナリジクス酸、ニトラゼパム、ニトロフラントイン、エストラジオール、パパベリン、フェナセチン、フェノバルビタール、フェニルブタゾン、フェニトイン、プレドニゾン、レセルピン、スピロノラクチン(spironolactine)、ストレプトマイシン、スルファメチゾール、スルファメタジン、スルファメトキサゾール、スルファメトキシジアジノン(sulfamethoxydiazinon)、スルファチアゾール、スルフィソキサゾール、テストステロン、トラザミド、トルブタミド、トリメトプリム、チロトリシン、制酸剤、逆流抑制剤、整腸剤、抗ドーパミン剤、プロトンポンプ阻害剤、H2-受容体拮抗剤、細胞保護剤、プロスタグランジン類似体、便秘薬、鎮痙薬、下痢止め剤、肝汁酸抑制剤、オピオイド、ベータ受容体遮断剤、カルシウムチャンネル遮断剤、利尿剤、強心配糖体、抗不整脈薬、硝酸塩、抗狭心症薬、血管収縮剤、血管拡張剤、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断剤、アルファ遮断剤、抗凝血剤、ヘパリン、抗血小板薬、線維素溶解薬、抗血友病因子、止血剤、脂質低下剤、スタチン、睡眠薬、麻酔薬、抗精神病薬、抗うつ剤(三環系抗うつ剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、リチウム塩、選択的セロトニン再摂取阻害剤を含む)、制吐薬、抗痙攣剤、抗てんかん剤、抗不安薬、バルビツール酸塩、運動障害薬、興奮剤(アンフェタミンを含む)、ベンゾジアゼピン、シクロピロロン(cyclopyrrolone)、ドーパミン拮抗剤、抗ヒスタミン剤、コリン作動薬、抗コリン作用薬、吐剤、カンナビノイド、5-HT拮抗剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、抗生剤、サルファ剤、アミノグリコシド抗生物質、フルオロキノロン類、気管支拡張剤、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、抗アレルギー薬、鎮咳剤、粘液溶解薬、充血除去剤、コルチコステロイド、ベータ受容体拮抗剤、抗コリン作用薬、ステロイド、アンドロゲン、抗アンドロゲン、ゴナドトロピン、コルチコステロイド、成長ホルモン、インシュリン、抗糖尿病薬(スルホニル尿素、ビグアニド/メトホルミン、及びチアゾリジンジオンを含む)、甲状腺ホルモン、抗甲状腺薬、カルシトニン、ジホスホン酸塩、バソプレシン類似体、避妊薬、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、ゴナドトロピン放出阻害剤、プロゲストゲン、ドーパミン作動薬、エストロゲン、プロスタグランジン、ゴナドレリン、クロミフェン、タモキシフェン、ジエチルスチルベストロール、抗マラリア剤、駆虫薬、抗アメーバ薬、抗ウイルス剤、抗原虫薬、ワクチン、免疫グロブリン、免疫抑制剤、インターフェロン、モノクローナル抗体、及びこれらの混合物、
b)ビタミン、例えば、ビタミンA、D、E及びK等の脂溶性ビタミン、並びにビタミンC、ビオチン、葉酸塩、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ビタミンB6、ビタミンB12及びこれらの混合物等の水溶性ビタミン、
c)ミネラル、例えばカルシウム、クロム、銅、フッ化物、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、セレン、ナトリウム(塩化ナトリウムを含む)、亜鉛及びこれらの混合物;
d)栄養補助食品、例えばハーブ又はその他の生薬、アミノ酸、並びに酵素、臓器組織、分泌腺、及び代謝産物等の物質の他、食事成分の濃縮物、代謝産物、構成成分、抽出物、オキアミ油等の油及びこれらの混合物;
e)ホメオパシー成分、例えば米国リビジョンサービスのホメオパシー薬局方(Homeopathic Pharmacopoeia of the United States Revision Service、HPRS)に列挙されるもの及びこれらの混合物。当然ながら、HPRSが定期的に更新されることと、本発明が、HPRSに追加され得るホメオパシー成分を含むこととを認識しなければならない。
f)プロバイオティクス及び酵母、例えば、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・イエンセン、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・ガセリ、エンテロコッカス・フェシウム等の乳酸菌(デーデルライン桿菌)からなる群から選択される細菌、又はサッカロマイセス・ブラウディ等のサッカロミセス目の群から選択される菌類。
g)ホルモン、例えば、エストロゲン(すなわち、天然エストロゲン又は天然エストロゲンの生理学的効果を模倣する合成化合物)であって、これらに限定されないが、エストラジオール(17-エストラジオール)、エストラジオールアセテート、エストラジオールベンゾエート、エストラジオールシピオネート、エストラジオールデカノエート、エストラジオールジアセテート、エストラジオールヘプタノエート、エストラジオールバレレート、17a-エストラジオール、エストリオール、エストリオールスクシナート、エストロン、エストロンアセテート、エストロンサルフェート、エストロピペート(ピペラジンエストロンサルフェート)、エチニルエストラジオール(17a-エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール、エチニルエストラジオール)、エチニルエストラジオール3-アセテート、エチニルエストラジオール3-ベンゾエート、メストラノール、キネストロール、ニトロ化エストロゲン誘導体若しくはこれらの組み合わせ;又はプロゲスチン(すなわち、プロゲステロン活性を有する天然又は合成化合物)であって、これらに限定されないが、ノルテストステロン、エチニルテストステロン、デアセチルノルゲスチメート、ヒドロキシプロゲステロン、19-ノルプロゲステロン、3P-ヒドロキシデソゲストレル、3-ケトデソゲストレル(エトノゲストレル)、アセトキシプレグネノロン、アルゲストンアセトフェニド、アリルエストレノール、アムゲストン、アナゲストンアセテート、クロルマジノン、クロルマジノンアセテート、シプロテロン、シプロテロンアセテート、デメゲストン、デソゲストレル、ジエノゲスト、ジヒドロゲステロン、ジメチステロン、ドロスピレノン、ジドロゲステロン、エチステロン(プレグネニノロン、17a-エチニルテストステロン)、エチノジオールジアセテート、フルオロゲストンアセテート、ガストリノン、ゲスタデン、ゲストデン、ゲストノロン、ゲストリノン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシメチルプロゲステロンアセテート、ヒドロキシプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロンアセテート、ヒドロキシプロゲステロンカプロエート、レボノルゲストレル(1-ノルゲストロール)、リネストレノール(リノエストレノール)、メシロゲストン、メドロゲストン、メドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロンアセテート、メゲストロール、メゲストロールアセテート、メレンゲストロール、メレンゲストロールアセテート、ネストロン、ノメゲストロール、ノルエルゲストロミン、ノルエチンドロン(ノルエチステロン)(19-又は17a-エチニルテストステロン)、ノルエチンドロンアセテート(ノルエチステロンアセテート)、ノルエチノドレル、ノルゲスチメート、ノルゲストレル(d-ノルゲストレル及びdl-ノルゲストレル)、ノルゲストリエノン、ノルメチステロン、プロゲステロン、プロメゲストン、キンゲスタノール、タナプロゲト、チボロン、トリメゲストン、又はこれらの組み合わせ。及び前述の任意の組み合わせにおける混合物。
【0073】
方法及び使用
本明細書に記載の水性組成物は、ハードカプセルの製造のための浸漬成形方法における浸漬組成物として典型的に使用される。
【0074】
本明細書の2ピースハードカプセルを製造するための浸漬成形方法は、以下のステップ:フィルム形成カプセル基材を含む水性組成物を準備するステップと、
それぞれが親水性着色食品濃縮物からなる1種以上の着色剤を水性組成物と直接混合して、浸漬組成物を準備するステップと、
浸漬組成物に1つ以上のモールドピンを浸漬するステップと、
1つ以上のモールドピンを浸漬組成物から取り出して、ピンの上にフィルムを形成するステップと、
フィルムを乾燥させて、カプセルシェルを得るステップと、を含む。
【0075】
最も好ましいフィルム形成カプセル基材は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの1種以上のセルロースを含み、好ましくはそのようなセルロースからなる。そのようなものは、選択された着色食品濃縮物の色の分解及び/又は不安定性を制限する浸漬熱ゲル化法(冷ゲル化法)中により低い組成物温度を可能にするという利点を有する。したがって、浸漬組成物がゲル化よりも低い温度で維持され、逆にモールドピンは、その中に浸される前にゲル化温度よりも高い温度で加熱される、HPMCを用いる「冷ゲル化」(熱ゲル化)法は、特に好ましく、本明細書に記載の天然着色剤(又は親水性着色食品濃縮物)を含む物理的に安定なハードカプセルを生成するために選択される。そのようなものは、(例えば食事的又は宗教的要件を有する)いくつかの特定の群の対象によるより良い忍耐容認を伴う、完全なベジタリアン剤形をもたらす一方で、例えば、本明細書に記載のカプセルに更なる機能的属性を効果的に提供するためにより高レベルのそのような着色剤を組み込むことを可能にするという、更なる利点を有する。
【0076】
好ましい実施形態では、水性組成物は、25℃~45℃、好ましくは30℃~40℃の温度で維持される。典型的には、そのような実施形態では、フィルム形成は冷ゲル化によって達成され、ピンは、それ自体、浸漬ステップの前に組成物のゲル化温度よりも高い温度に予め加熱される。
【0077】
好ましい実施形態では、水性組成物及び浸漬組成物は、6未満、好ましくは5未満、より好ましくは3~4.9、更により好ましくは3.5~4.8、最も好ましくは4.0~4.7のpHを有する。そのようなpH範囲は、上記の特定の天然着色剤の分解を回避するのに、及び、それ自体、組成物及び得られるカプセルの安定性を向上させるのに特に有益であることが見出された。
【0078】
乾燥ステップは、65℃未満、好ましくは60℃未満、更により好ましくは40℃~55℃の温度で、好ましくは行われる。好都合なことに、このような温度は、天然着色剤を分解することなく、ハードカプセルの効果的な乾燥を依然として可能にする。
【0079】
一実施形態では、本明細書の水性組成物は、カプセルベースフィルム形成材料(例えば、HPMC)及び他の任意の成分を水中に分散させることによって調製することができる。水性溶媒は、室温より高い温度、好ましくは60℃未満、より好ましくは50℃未満であり得る。脱泡後の好ましい実施形態では、分散液は室温未満、好ましくは15℃未満に冷却されて、セルロース(例えばHPMC)の可溶化が達成される。
【0080】
水性組成物のゲル化温度は、組成物を徐々に加熱することで粘度を測定することによって、決定することができる。粘度が急激に増大し始める温度は、ゲル化温度と考えられる。一例として、水中で約19重量/重量%の濃度については、HPMCタイプ2906のUSP定義を満たす本発明のいかなるHPMCも、約30~40℃のゲル化温度を有する。別の例として、水中で15~25重量/重量%の濃度については、約6%のヒドロキシプロポキシ含有量を有する、HPMCのUSP定義を満たす本発明のHPMCは、約30~40℃のゲル化温度を有する。
【0081】
一態様において、本開示は、浸漬コーティング法によるヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルの製造方法に関し、以下のステップ:(a)27.0~30.0%(重量/重量)のメトキシ含有量、4.0~7.5%(重量/重量)のヒドロキシプロポキシ含有量、及び20℃における2重量%水溶液として3.5~6.0cPsの粘度を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースの水性組成物を準備するステップであって、水性組成物中のヒドロキシプロピルメチルセルロースの濃度が、水性組成物のゲル化温度より10℃~1.0℃低い温度で測定した場合、1000~3000cPs、好ましくは1200~2500cPs、より好ましくは1600~2000cPsの水性組成物の粘度を得るように選ばれるステップと、(b)水性組成物をそれぞれ親水性着色食品濃縮物からなる1種以上の着色剤と混合するステップと、(c)水性組成物に浸漬したときに55~95℃になるように浸漬ピンを予め加熱するステップと、(d)予め加熱された浸漬ピンを、そのゲル化温度以下の1℃~10℃の温度で維持された水性組成物に浸漬するステップと、(e)水性組成物から浸漬ピンを取り出し、浸漬ピン上にフィルムを得るステップと、(f)浸漬ピン上のフィルムを水性組成物のゲル化温度より高い温度で乾燥させて、ピン上に成形されたカプセルシェルを得るステップと、を含むことを特徴とする。ステップ(a)、(b)、(d)~(f)は、典型的には、それらが提示される順序で行われる。
【0082】
ステップ(a)では、本発明の水性組成物を使用することができる。上記の粘度範囲を満たすように、HPMCの濃度を任意に調整することができる。
【0083】
ステップ(c)では、予め加熱されたピンの温度範囲は55~95℃であり、これは、ピンが浸漬される際に、これがピン温度であることを意味する。好ましくは、温度は、60~90℃、より好ましく60~85℃、より好ましくは65~85℃、更により好ましくは70~80℃である。このような温度は、所望のカプセルサイズに応じて選択されるのが好ましい。「カプセルサイズに応じて」は、ピン寸法が小さいほど温度が高くなることを意味する。例えば、HPMCタイプ2906(USP分類)に関して、及び水性組成物について上記で定めたHPMC重量範囲内で、カプセルサイズ00(一般に、大型のカプセルサイズと考えられる)については、ピン温度は、好ましくは70~80であり、カプセルサイズ1(一般に、中型のカプセルサイズと考えられる)については、ピン温度は、好ましくは80~90であり、カプセルサイズ4(一般に、小型のカプセルサイズと考えられる)については、ピン温度は、好ましくは85~95である。
【0084】
ステップ(d)では、浸漬組成物は、そのゲル化温度より10℃~1.0℃、好ましくは6℃~2.0℃低い温度で維持される。例えば、浸漬組成物が約36.0℃のゲル化温度を有する場合、例えば約34.0℃の温度でこれを維持することができる。
【0085】
浸漬組成物から引き出した後、従来のカプセル成形方法に従って、「トップ-ダウン」浸漬位置から「トップ-アップ」乾燥位置に、ピンを回転させることができる。このステップでは、ステップ(d)の浸漬位置に対して約180度の水平軸を中心にピンを回転させる。
【0086】
ステップ(f)で乾燥させることにより、ピン上のカプセルシェル内の水含有量を低減させることが目的である。一般的に、成形されたカプセルシェルの水含有量は、成形されたカプセルシェルの総重量に基づいて、おおよそ80重量%からおおよそ7重量%に低減する。ステップ(f)は、典型的には、30~60分の間、好ましくは上記の特定の温度を超えないように行われる。
【0087】
通常、キャップ及び本体は、側壁、開放端及び閉鎖端を有する。これらの部分のそれぞれの側壁の長さは、一般的に、カプセルの直径よりも長い。したがって、本開示のハードカプセルは、ハードカプセルの従来の定義と構造的に離れていない。「カプセル」は、空のカプセルと充填されたカプセルの両方を指す。
【0088】
上記の成形されたカプセルシェルは、一般に、モールドピンの形状に応じて、本体とキャップの両方を指す。したがって、ステップ(e)の後に、従来のステップに従って、浸漬ピン上の乾燥カプセルシェルを処理することができる。これは、一般的に、ステップ(e)の後に、カプセルシェル(本体及びキャップ)がピンから剥がされることを意味する。このステップに続いて、剥がされたシェルを所望の長さに切断することができる。
【0089】
典型的には、ハードカプセルの浸漬成形製造方法は、ピンからカプセルシェルを剥がしやすくするために、ピンを潤滑する更なるステップを包含する。潤滑は、通常、ピン表面に離型剤を塗布することにより達成される。
【0090】
一旦充填されたら、結合を永久的なものにするために、ハードカプセルの分野で従来使用されている任意の溶液を使用して、カプセルをタンパープルーフにすることができる。バンディング又は密封は、適切な技法である。密封は、ハードシェルカプセルの分野において周知の技法である。この目的のために、様々な代替技法が現在使用されている。適切な手順は、例えば米国特許第4,539,060号及び米国特許第4,656,066号に開示されている。密封手順の多くの改良されたものが、現在利用可能である。
【0091】
既知の密封方法によれば、カプセルを、(i)密封流体と接触させ、(ii)過剰な密封流体を表面から除去し、(iii)カプセルを乾燥させて、硬化を誘導し、密封を永久のものにする。
【0092】
例えば、例えばエタノール/水混合物のようなアルコール/水混合物を密封流体として使用することができる。得られた良好な密封の質によって、本開示の密封されたカプセルは、特に液体形態の物質の投与で使用するための漏れのない剤形の製造に特に適するものになる。「密封の質」は、視覚的質及び/又は接着強度のいずれかを意味する。
【0093】
上記の水性組成物及び方法は、従来のゼラチンカプセルに匹敵する速度で溶解するHPMCハードカプセルの製造に特に適している。このようなカプセルは、ゼラチンカプセルに匹敵する処理速度で、工業的規模で製造することができる。これらは特に極めて乾燥した雰囲気下で脆性が低いので、これらの機械的特性は従来のゼラチンカプセルのものよりも優れている。これらの視覚的外観は、ゼラチンカプセルのものに類似している。
【0094】
本開示の好ましい態様は、1種以上の着色剤の使用からなり、該着色剤はそれぞれ親水性着色食品濃縮物(一般に上記の通り)からなり、ハードカプセルの状態では、典型的には該カプセルに色及び機能的属性をもたらし、該機能的属性が、芳香、美味又は栄養特性からなる群から選択される。このような親水性着色食品濃縮物は、好ましくは、ニンジン、紫ニンジン、カボチャ、ヤム、ダイコン、サツマイモ、ビート根、エルダーベリー、クロフサスグリ、ブドウ、リンゴ、ウイト、ベニバナ、コウカ、ハイビスカス、ノウゼンハレン、スピルリナ、クロレラ及びこれらの混合物、好ましくは紫ニンジン、サツマイモ、ベニバナ、スピルリナ及びこれらの混合物の濃縮物から選択される。
【0095】
本発明の範囲は以下の実施例を参照することでより良く理解することができ、その目的は本発明の利点を説明することである。別段の指定がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量基準である。組成物の粘度は、ブルッカフィールド粘度計によって測定した。
【0096】
試験方法
色安定性
色安定性は、温度調節並びに白色蛍光ランプ及び近紫外線蛍光ランプからなる2光源を有する光気候試験キャビネットを介して、ICH harmonised tripartite guideline,stability testing:photostability testing of new drug substances and products Q1B,6 November 1996(参照によりその全内容が本明細書に含まれる)に概説されている手順に従って、加速拘束(accelerated constraining)試験条件下で行う。試験は、120万ルクス・時間閾値(例えば、FirlaboのBCR 240インキュベータでの、5週間の強力な/加速された露光/保存後)に到達するように設定される。
【0097】
A.光源
下記の光源を光安定性試験に使用する。温度を制御して、局所的な温度変化の影響を最小限し、暗所コントロールを同一の環境に含む。
【0098】
同じ試料を白色蛍光ランプと近紫外線ランプの両方に暴露する。1.ISO10977(1993)で指定されるものと同様の出力を生成するように設計された白色蛍光ランプ;及び2.350nm~370nmの最大エネルギー放出を伴う320nm~400nmのスペクトル分布を有する近紫外線蛍光ランプ;かなりの割合の紫外線が320~360nmと360~400nmの両帯域中になければならない。
【0099】
B.手順
試料を、約120万ルクス時間の全体的な照明及び約200ワット時間/平方メートルの統合した近紫外エネルギーをもたらす光に暴露する。
【0100】
特定の露光が確実に得られるように、検証された化学光量測定システムを用いて、又は校正された線量計/ルクス計を使用して状態がモニターされている場合は、適切な期間にわたって、試料を並行して暴露する。
【0101】
暗所コントロールについては、試料をアルミニウム箔で包み、残りの試料と一緒に置く。
【0102】
色安定性試験のための試料を生成するために、本明細書で記載される浸漬成形方法に従って、いくつかの異なる着色剤を含むHPMCカプセルを作製する。実施例1の配合を異なる着色材料について繰り返して、各カプセルタイプの試料(n=5)を生成する。唯一変化するものは着色物質の変化である。上記の手順に従って(5週間の同等期間にわたって)、各着色カプセルについて少なくとも1つの試料を上記の光条件試験下に置き、同一のコントロール試料を1つ暗条件に置く。
【0103】
C.ΔE2000の測定
試料のそれぞれについて、ソフトウェアColor iQCを伴う、GretagMacBethのColor Eye XTH分光比色計を用いて、ISOの基準n°ISO/CIE 11664-6:2014(CIE S 014-6/E:2013)に従って、ΔE2000(CIEDE2000とも呼ばれる)を測定する。球体計器(緑、白、黒のタイルによる標準校正、発光体D65-10、DE2000に従う色方程式)。
【0104】
表1、2に結果を示す。
【表1】
*すべての上記の試験について、全組成物の1重量%の指定の着色剤を実施例1の組成物に加えた(他のすべての成分は同等に保った)。
**非均質組成物が、受け入れられない視覚的外観を伴って生じた。
【表2】
*すべての上記の試験について、全組成物の2重量%の指定の着色剤を実施例1の組成物に加えた(他のすべての成分は同等に保った)。
【0105】
上記の表から確認することができるように、下記の供給源由来の着色濃縮物は、本明細書に記載されるハードカプセルには受け入れられないことが分かる:ウコン、ニンジン、ルテイン、トマト、ウコン及び藻類カロチノイド。特に、藻類カロチノイド濃縮物は、均質性の問題を示す。
【0106】
富化係数濃縮
本明細書で使用される富化係数は、着色物質(又は着色剤/濃縮物)を最初に分析して、着色物質全体の、各炭水化物、繊維、タンパク質、脂質及び色素のそれぞれの合計重量%を特定し、これを、着色物質を得るために使用した原材料について繰り返すことによって、計算される。
【0107】
例えば、一般に、強酸(硫酸)による食品「消化」(これによって、窒素が放出され、次にこれを滴定する)[§64 LFGB,(Nx6.25)に従う]に基づく、Kjeldahl法のような当技術分野の通常の方法により、タンパク質の量を測定し、NMR分光法のような当技術分野の通常の方法[§64 LFGB,Weilbull-Stoldt、及び飽和についてはDGF C VI 10a,11d mod.;GC/FIDに従う]により、脂質を測定し、アルコール抽出(例えば、試料を乾燥、粉砕、溶媒抽出によって脱脂し、次いで、残留物をアルコール溶液(例えば、エタノール、メタノール及び混合液)で煮沸し、濾過する)のような当技術分野の通常の方法[IC、HPLC]によって、炭水化物を測定する。濾液をイオン交換樹脂で処理して清澄化し、次いで、最終的にモノ及びオリゴ糖類をクロマトグラフィー(HPLC)により同定及び定量し、重量測定[§64 LFGB,enzymat.-gravimetric SOP M 1010 nach ASU L 00.00-18に従う]のような当技術分野の通常の方法によって、繊維を測定する。
【0108】
次いで、下記式(式1)を使用して富化係数を算出する。
式1:
Fe=(Cp÷Np)/(Cs÷Ns)
式中、
Fe=「富化係数」
Cp=着色剤試料中の「色素(複数可)含有量(重量%)」
Cs=原材料中の「色素含有量(複数可)(重量%)」
Np=着色剤試料中の「栄養成分含有量(重量%)」[すなわち、試料中の総炭水化物、繊維、タンパク質及び脂質の合計重量%]
Ns=原材料中の「栄養成分含有量(重量%)」[すなわち、原材料中の総炭水化物、繊維、タンパク質及び脂質の合計重量%]
【0109】
以下は、所与の着色剤について富化係数がどのように算出されるかを例示する。
【表3】
ニンジン着色剤A[ニンジン濃縮物]:
Fe=0.3÷(45+5+12+5)/0.1÷(40+10+10+2)≒3
ニンジン着色剤B[ニンジン抽出色素]:
Fe=4÷(14+20)/0.1÷(40+10+10+2)≒73
【実施例】
【0110】
実施例1:スピルリナの親水性着色食品濃縮物を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルを製造するための水性組成物
2%濃度(重量/重量)で4.4cPsの粘度の18.8%HPMCタイプ2906(メトキシ含有量28.7%、ヒドロキシプロポキシ含有量5.4%)の5kgの組成物を次のようにして調製した:
HPMCの粉末を攪拌しながら75℃の熱水に分散させる。泡の形成が観察される。粉末が完全に分散した後、分散液の消泡のために、非常に緩やかな攪拌下で温度を75℃に維持する。次いで、HPMCを溶解させるために、分散液を緩やかな攪拌下で10℃に冷却する。組成物を10℃で30分間より長く維持した後、温度を約25℃に上げ、次いで、この時点で、スピルリナ(1重量/重量%)の親水性着色食品濃縮物[約4.5のFeを有する]をHPMC水性組成物に直接加え、カプセル製造に使用できる状態である浸漬組成物を得る。
【0111】
次いで、本明細書に記載の浸漬成形方法が続き、予め加熱したモールドピン(約60℃の温度)を浸漬組成物中に浸漬することによってハードカプセルを生成する。
【0112】
HPMC組成物のゲル化温度を、組成物を徐々に加熱することによる粘度測定により決定する。ゲル化温度は約34℃である。
【0113】
実施例2:紫ニンジンの親水性着色食品濃縮物を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルを製造するための水性組成物。
実施例1を繰り返すが、今回は、1重量/重量%のスピルリナを紫ニンジン濃縮物[約3のFeを有する]と置き換える。
【0114】
実施例3:ベニバナの親水性着色食品濃縮物を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルを製造するための水性組成物
実施例1を繰り返すが、今回は、1重量/重量%のスピルリナをベニバナ濃縮物[約5のFeを有する]と置き換える。
【0115】
実施例4:サツマイモの親水性着色食品濃縮物を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースハードカプセルを製造するための水性組成物
実施例1を繰り返すが、今回は、1重量/重量%のスピルリナをサツマイモ濃縮物[約4のFeを有する]と置き換える。
【0116】
本明細書で開示する寸法及び値は、列挙する正確な数値に厳しく限定されるものではないことを理解すべきである。むしろ、別段の指定がない限り、それぞれの該寸法は、列挙した値と、その値の周囲の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図する。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」(すなわち、40mmに近い実用的範囲にあるすべての値)を意味することを意図する。