(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】人の視覚挙動を検査する機器及びそのような装置を用いて眼鏡レンズの少なくとも1個の光学設計パラメータを決定する方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/113 20060101AFI20230417BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61B3/113
A61B3/103
A61B3/113 ZDM
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021168219
(22)【出願日】2021-10-13
(62)【分割の表示】P 2018519277の分割
【原出願日】2016-10-14
【審査請求日】2021-10-21
(32)【優先日】2015-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100196601
【氏名又は名称】酒井 祐市
(72)【発明者】
【氏名】ギレム エスカリエ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル プラン
(72)【発明者】
【氏名】バンジャマン ルソー
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-079127(JP,A)
【文献】特開2014-112154(JP,A)
【文献】国際公開第2006/054985(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/058244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者(1)により選択されたフレームへの取り付けを意図された眼鏡レンズを、前記被験者の視覚挙動に応じて設計するための少なくとも1個の光学パラメータを決定する方法であって、
時間経過に伴い変化し、且つ少なくとも1行(L1、L2)又は1列に整列した複数の位置(30)の少なくとも1個の視覚的に目立つ目標(20)の表示に適したアクティブディスプレイ(11)と、前記ディスプレイ(11)を制御する装置であって、前記目標(20)の連続的に表示される位置(30)が、時間経過に伴い、視線追跡プロトコルを追跡すべくプログラムされた装置と、を含む検査機器(10)を使用し、
以下のステップ、すなわち
a)被験者(1)に対し、前記
検査機器(10)の前記
アクティブディスプレイ(11)に表示されている目標(20)を見る視覚的作業を行うよう求めるステップであって、前記目標(20)の前記位置(30)は、撮像装置に設定された基準系内で予め決定されている、ステップと、
b)前記目標(20)を見ている前記被験者(1)の頭部の画像を前記撮像装置により撮像するステップであって、各画像は、前記目標(20)の所定位置(30)に対応する、ステップと、
c)前記被験者(1)の頭部の画像の少なくともいくつかに基づいて、前記撮像装置に設定された基準系における前記被験者(1)の頭部の位置、又は前記被験者(1)の頭部に設定された基準系における前記被験者の注視方向(DR)を判定するステップであって、前記被験者(1)の頭部の各位置又は注視方向は、前記被験者(1)の頭部の対応する画像が撮像された前記目標(20)の位置(30)に関連付けられている、ステップと、
d)前記求められている光学設計パラメータを、前記被験者(1)の前記頭部位置又は注視方向から推論するステップと、を含む方法。
【請求項2】
ステップd)の前に、前記目標(20)の前記位置(70)は、前記被験者(1)の頭部に設定された基準系において、前記被験者(1)の前記判定された頭部の位置又は注視方向に基づいて再現され、
ステップd)において、前記求められている光学設計パラメータは、前記被験者(1)の頭部に設定された基準系における前記目標(20)の前記位置(70)から推論される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記視線追跡プロトコルは、所与の書記法に従い読書中の前記被験者(1)の注視の変位を再現するように、前記書記法により定義されるものに合致する読取軌道を辿る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記目標(20)は、視力検査の実行中に前記目標(20)を追う被験者(1)が注視するのに適しており、
前記視線追跡プロトコルは、時間経過に伴い視覚的に目立つ目標(20)が占める一連の位置に対応し、
前記目標(20)は、目標(20)が占める特定の表示される位置(30)に各々関連付けられた複数の特定の所望の方向を連続的に見る被験者(1)に対して前記プロトコルを適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記連続的に表示される位置(30)の全ては、前記目標(20)が前記被験者(1)の視野内に留まるようなものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
被験者(1)の視覚挙動を検査する機器(10)であって、
- 時間経過に伴い変化し、且つ少なくとも1行(L1、L2)又は1列に整列した複数の位置(30)の少なくとも1個の視覚的に目立つ目標(20)の表示に適したアクティブディスプレイ(11)と、
- 前記ディスプレイ(11)を制御する装置であって、前記目標(20)の連続的に表示される位置(30)が、時間経過に伴い、視線追跡プロトコルを追跡すべくプログラムされた装置と、を含み、
前記目標(20)は、視力検査の実行中に前記目標(20)を追う被験者(1)が注視するのに適しており、
前記視線追跡プロトコルは、時間経過に伴い視覚的に目立つ目標(20)が占める一連の位置に対応し、
前記目標(20)は、目標(20)が占める特定の表示される位置(30)に各々関連付けられた複数の特定の所望の方向を連続的に見る被験者(1)に対して前記プロトコルを適用する、機器(10)。
【請求項7】
前記連続的に表示される位置(30)の全ては、前記目標(20)が前記被験者(1)の視野内に留まるようなものである、請求項6に記載の機器(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、被験者の視覚挙動を判定可能にする検査機器に関する。
【0002】
本発明はまた、上述のような装置を用いて眼鏡レンズを設計するための少なくとも1個の光学パラメータを決定する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
被験者が視力を矯正すべく装着することを意図されたフレームの眼鏡レンズをより精密に当該被験者に合わせるために、前記眼鏡レンズの実際の使用状況を表す自然な視覚条件下での当該被験者の視覚挙動に関するより多くの知識が求められている。
【0004】
従って被験者の視覚挙動のパラメータを決定することで、フレームに取り付けられた眼鏡レンズの光学設計を向上させることができる。
【0005】
特に、累進眼鏡レンズの光学設計を通じて、これらのレンズの近方視での使われかた、特に読書に際して当該被験者がとる姿勢を考慮に入れるために光学設計データを自由に入手できることが特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、被験者に対して検眼士により現在実施されている測定は、当該被験者が視力矯正手段を着用できないため、又は使用する測定装置あるいは視力検査機器が特に近方視動作に際して被験者に不自然な姿勢をとらせるため、多くの場合制約がある。
【0007】
被験者が、度が合わなくなった視力矯正手段を着用する場合も同様である。この場合、当該手段の度数矯正のプリズム効果は被験者の姿勢に影響を及ぼすため、測定値が損なわれる。
【0008】
また、近視に悩む被験者が読書距離を縮めようとし、老眼に悩む被験者はこの距離を伸ばそうとする傾向があるため、視力が弱い被験者に自然な読書姿勢をとらせることは、当人が視力矯正手段を着用していない限り困難である。
【0009】
逆に、被験者が読書以外の視覚作業を行っている間に得られた測定値は不自然な条件下で得られたものであり、従って日常的な累進レンズの使い方を表していない。
【0010】
視力検査機器は従って不正確であり、検眼士により決定された光学設計パラメータは従って必ずしも自然な条件下での被験者の視覚挙動を表していない。
【0011】
その結果、累進レンズの光学設計は最適でなく、従って累進眼鏡レンズを着用者に合わせて調整することは困難であろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従来技術の上述の短所を克服すべく、本発明は、被験者の視覚挙動を簡単且つ精密に判定可能な被験者の視覚挙動を検査する機器を提案する。
【0013】
より具体的には、本発明によれば、被験者の視覚挙動を検査する機器を提案し、当該機器は、
- 時間経過に伴いに変化し、且つ少なくとも1行又は1列に整列した複数の位置の少なくとも1個の視覚的に目立つ目標の表示に適したアクティブディスプレイと、
- 当該ディスプレイを制御する装置であって、当該目標の連続的に表示される位置が、時間経過に伴い、視線追跡プロトコルを追跡すべくプログラムされた装置を含んでいる。
【0014】
従って、本発明による機器により、自然な条件下で読書中の被験者の視覚挙動を検査することができる。前記目標は、成人か児童かに依らず、識字能力の有無に依らず、且つ当該被験者が話す言語とは独立に、任意の被験者の視線により追跡することができる。また、当該被験者が視力矯正機器の部材を着用していない場合であっても当該目標を被験者の視線により追跡することができる。
【0015】
特に、連続的に表示された全ての位置を、当該被験者の視野内に目標が留まるように示すことができる。換言すれば、当該被験者は視力検査の実行中に目標を追跡することができる。
【0016】
従って、視覚的に目立つか否かに依らず、目標が検査機器により検出されないリスクが無い。
【0017】
これに対して、検査機器は、被験者に自身の視野で極めて特定の方向に目を向けさせ、それ以外の方向は見ないように設計されており、これは測定エラーのリスクが生じるリスクを冒すものである。
【0018】
本発明による機器により、被験者の正確な視覚挙動パラメータを決定することができる。
【0019】
本発明の特に有利な一特徴によれば、目標の前記位置は、実質的に平行な少なくとも2行又は2列に整列している。
【0020】
また、有利な態様として、前記複数の位置は、各行又は列において、前記目標の少なくとも3個の整列した位置を含んでいる。
【0021】
以下は、本発明による方法の、個別又は技術的に可能な任意の組み合わせにより実行可能な、他の非限定的且つ有利な特徴である。すなわち、
- 制御装置が前記視線追跡プロトコルの各位置において目標を所定時間にわたり表示させ、
- 前記所定時間は50ミリ秒~1秒であり、
- 前記目標は前記所定時間にわたり静止したままであり、
- 制御装置が、視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置の間で目標の表示に所定の遅滞があるようにし、
- 前記所定の遅滞が視線追跡プロトコル動作中に変化し、
- 前記所定の遅滞中、前記目標は視認不可能であり、
- 前記目標は前記所定の遅滞中、視認可能であって視線追跡プロトコルの2個の対応する連続的な位置の間を一方から他方まで移動し、
- 前記制御装置が、視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置が10センチメートル未満の間隔を空けられるようにし、
- 前記制御装置が、視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置が視線追跡プロトコル動作中絶えず変化する間隔を空けられるようにし、
- 前記制御装置が、視線追跡プロトコルの好適な垂直方向の移動及び好適な水平方向の移動をメモリに保存し、
- 視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置における前記目標の表示が、前記好適な移動方向を10回中少なくとも6回追跡し、
- 目標の所定位置が整列している前記実質的に平行な行が実質的に水平に延在し、視線追跡プロトコルの移動方向は全ての連続的な行について、最も高い行から最も低い行まで、すなわち右から左又は左から右へ向かって同一であり、
- 目標の所定位置が整列している前記実質的に平行な行は実質的に垂直に延在し、視線追跡プロトコルの移動方向は、左から右又は右から左へ向かう全ての連続的な行について、すなわち上から下又は下から上まで同一であり、
- 制御装置が、前記視線追跡プロトコルを、移動方向が対応する視線追跡プロトコルに関連付けられて記録されているローカル又はリモートデータベースに記録されている複数の視線追跡プロトコルから選択できるようにプログラムされていて、
- 視線追跡プロトコルが、所与の書記法により定義されるものに合致する読取軌道を辿ることにより、当該書記法に従い読書中の被験者の注視の変位を再現する。
【0022】
本発明はまた、被験者により選択されたフレームへの取り付けを意図された眼鏡レンズを、当該被験者の視覚挙動に応じて設計するための少なくとも1個の光学パラメータを決定する方法を提案する。
【0023】
本発明によれば、本方法は、上述の検査機器を使用し、以下のステップ、すなわち
a)被験者に対し、表示機器の前記ディスプレイに表示されている目標を、前記目標の位置が撮像装置に設定された基準系内で予め決定されている状態で見る視覚的作業を行うよう求めるステップと、
b)前記目標を見ている被験者の頭部の画像を、各画像が前記目標の所定位置に対応している状態で前記撮像装置により撮像するステップと、
c)被験者の頭部の画像の少なくともいくつかに基づいて、前記撮像装置に設定された基準系における被験者の頭部の位置、又は被験者の頭部に設定された基準系における被験者の注視方向を、被験者の頭部の各位置又は注視方向が被験者の頭部の対応する画像が撮像された前記目標の位置に関連付けられている状態で判定するステップと、
d)前記求められていた光学設計パラメータを、被験者の前記頭部位置又は注視方向から推論するステップとを含んでいる。
【0024】
本発明による方法により、被験者の視覚挙動を表す光学設計パラメータを決定することができる。
【0025】
光学設計パラメータを決定する本方法を用いることにより、眼鏡レンズの視野領域を被験者の特徴によりうまく合わせることができる。
【0026】
本発明の特に有利な一特徴によれば、ステップd)の前に、前記目標の位置が、被験者の頭部に設定された基準系において当該被験者の頭部又は注視方向の前記判定された位置に基づいて再現され、ステップd)において、求められている前記光学設計パラメータが、被験者の頭部に設定された基準系における目標の前記位置から推論される。
【0027】
以下の記述は、非限定的な例として示す添付図面を参照しながら、本発明の構成要素及び実施方法を理解しやすくするものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明による検査機器を自身の手に持つ被験者の模式図である。
【
図3】
図1の機器で用いる各種の視線追跡プロトコルを示す模式図である。
【
図4】
図1の機器を用いて光学設計パラメータを決定する方法のフロー図を示す。
【
図7】本発明による方法の調節フェーズの各種ステップにおける
図1の検査機器を示す。
【
図8】本発明による方法の調節フェーズの各種ステップにおける
図1の検査機器を示す。
【
図9】本発明による方法の調節フェーズの各種ステップにおける
図1の検査機器を示す。
【
図10】本発明による方法の調節フェーズの各種ステップにおける
図1の検査機器を示す。
【
図11】本発明による方法の調節フェーズの各種ステップにおける
図1の検査機器を示す。
【
図12】
図1の検査機器に設定された基準系を示す。
【
図13】本発明の方法の訓練フェーズにおける
図1の検査機器を示す。
【
図14】本発明の方法の測定フェーズの検証ステップにおける検査機器を示す。
【
図15】本発明の方法の測定フェーズの検証ステップにおける検査機器を示す。
【
図16】目標を表示している検査機器及びプロトコルの最終位置にある目標を見ている被験者の頭部に設定された基準系における表示を示す。
【
図17】読書プロトコル動作中に被験者の頭部に設定された座標系における目標の測定位置の例を示す。
【
図18】読書プロトコル動作中に被験者の頭部に設定された座標系における目標の測定位置の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
前置きとして、各種の図面に示されている各種の実施形態の同じ又は同様の要素は、同じ参照記号で示され、その都度説明されない点に留意されたい。
【0030】
また、以下の開示において、「上」(又は「上方)」、「下」(又は「下方」)という用語は検査機器を使用する個人に関して使用され、上記個人の頭部に向かう側を指し、下は個人の足に向かう側を指す点にも留意されたい。
【0031】
同様に、「前」という用語は、個人に向かう側を指し、「後」という用語は前側と反対側を指す。
【0032】
図1において、その視覚挙動を検査することが望まれる個人1が示されている。
【0033】
この目的のために、個人1はその手2に、ある条件下でこの視覚挙動を判断することが意図された本発明による検査機器10を持っている。
【0034】
より具体的には、ここでは、検査機器10を使って、一般的な方法で個人1の近方視、特にその人物が読書中にとる視覚挙動を分析することが望まれる。
【0035】
近方視は、個人1の眼3と検査機器10との間の70センチメートル(cm)未満の観察距離DO(
図1参照)に対応すると考える。
【0036】
他の実施形態においては、本発明による検査機器により、中間視(DOが70cm~4メートルの間)又は遠方視(DOが4mより大きい)を検査できる。
【0037】
本発明によれば、検査機器10は、
- 時間経過に伴い変化し、且つ少なくとも1行又は列に整列している複数の位置30に、視覚的に目立つ目標20を表示するアクティブディスプレイ11と、
- ディスプレイ11を制御する装置(図示せず)であって、目標20の連続的に表示される位置30が、時間経過に伴い、視線追跡プロトコルを追跡すべくプログラムされていて、全ての連続的に表示されている位置が、当該被験者の視野内に目標が留まるように示される装置を含んでいる(
図2参照)。
【0038】
検査機器のディスプレイ11は、視力検査の各時点で、単一の目標又は実際には複数の目標を同時に、各目標が当該被験者の視野内に存在する状態で表示することができる。いずれの場合も、視覚的に目立つ目標とは、被験者が注視するのに適していて、且つ視力検査の実行中に被験者が目で追う目標である。
【0039】
前記目標が当該被験者の視野内に存在しない場合、当該被験者はこれを検出できないであろう。
【0040】
被験者の視野内で複数の目標がディスプレイ11に表示されている場合、視覚的に目立つ目標は、例えば、異なる色又は形状(丸、四角、星型等)の、あるいは他よりも小さいか大きい、より明るい又はより際立った目標であっても、又は実際に他とは異なり点滅する目標であってもよい。ディスプレイより表示される各種の目標はまた、インジケータの組を含んでいても、又は実際にグレー点の格子を形成していてもよい。
【0041】
ディスプレイが1個の目標だけを表示する実施形態において、当該目標は、位置が当該被験者の視野内に留まる限り、ディスプレイ11上で複数の位置を占めることができる。これらの位置は、目標が視力検査の実行中にある位置から別の位置へ移動するという意味で「変化する」。にもかかわらず、本実施形態における目標が連続的に占める位置のシーケンスが2個の同一の位置を含んでいてよい点に注意されたい。換言すれば、目標は、視力検査中に元の位置に戻ることができる。
【0042】
視覚的に目立つ1個を含む複数の目標をディスプレイが表示する実施形態において、目標の表示位置は、被験者の視野内で、時間経過に伴いに変化し得るが、いずれの場合も、視覚的に目立つ目標は、被験者1に一連の特定の注視方向を見させるように被験者の視野内で一連の位置を占める。
【0043】
本明細書において、「視線追跡プロトコル」は従って、被験者1が受ける視力検査の実行中に視覚的に目立つ目標20が表示されるシーケンスを意味し、当該連続的に表示される位置が、被験者1の視野内に目標20が留まるように示されることを理解されたい。
【0044】
換言すれば、当該視線追跡プロトコルは、時間経過に伴い視覚的に目立つ目標が占める一連の位置に対応する。これにより、目標が占める特定の位置に各々関連付けられた複数の特定の所望の方向を連続的に見る被験者に対してプロトコルが適用される。このように、当該目標の位置が既知ならば、特定の条件下で、視力検査中の被験者の注視方向に関する情報を判定することができる。
【0045】
図2に示すように、検査機器10はタブレットコンピュータの形式をなしている。当該タブレットコンピュータは、検査機器10のディスプレイ11を構成する画面を含んでいる。当該タブレットコンピュータはまた、画面を囲むケース12、及び被験者1を視認可能な前面ビデオカメラ13をも含んでいる。機器10の制御装置自体は、タブレットの画面のディスプレイコントローラに対応しており、当該画面はケース12内に収納されている。
【0046】
ここで、標的20は、タブレットのスクリーン上に表示される発光ディスクを含み、標的は、視覚検査の条件下で個人1にとって目に見えるのに十分な大きさである。ここで、読書条件と近方視(DO<70cm)において、標的20の特徴的大きさ(例えば直径)は5ミリメートルより大きい。
【0047】
有利な方法で、標的20の特徴的大きさは、70cmで10分の0.1より高い視力で見ることができるように決定される。
【0048】
一変型例として、目標は規則的又は不規則な幾何学的パターンを含んでいてよい。好適には、被験者に理解される任意の書記法で用いられる記号以外の任意のパターンであってよい。特に、視覚的に目立つ目標は被験者にとり何ら意味を有していない。例えば、目標は被験者に理解できる単語ではない。
【0049】
本発明による検査機器10により実行され、且つ被験者1によるテキストの読取のシミュレーションを意図された各種の視線追跡プロトコルについて
図4を参照しながら以下に記述する。
【0050】
有利な態様として、検査機器10により実行される視線追跡プロトコルによる目標の表示は、被験者1が実際にテキストを読んでいる場合に行うものと同じ仕方で当該目標20を追跡することにより自身の目を動かせることを意図された、被験者1に対する視覚的刺激として作用する。
【0051】
換言すれば、ディスプレイ上での視覚的に目立つ目標の表示は、被験者が自身の注視で目標を追跡する場合、当該被験者の注視方向が、当該被験者がテキストを読むときの注視方向と全く同様の連続的な注視方向となるように制御される。
【0052】
視覚的に目立つ標的が連続的にとる表示される位置のシーケンスは、好ましくは、個人の特徴及び/又は読み書きの好みに対応する基準の文及び/又は読書モデルに応じて、事前に決定される。
【0053】
例えば、シーケンスは、校正作業の過程で別の機器によって事前にあらかじめ決定することができ、その間に、個人に対し、複数の入手可能な実際の文の中から基準の文及び/又は読書モデルを選び、それを音読するように依頼する。すると、読書速度は、標的の表示位置の決定のためのパラメータの役割を果たすことができる。
【0054】
シーケンスはまた、個人が質問票に回答した後に、個人の年齢に応じて、又は個人が申告する読書レベルに応じてあらかじめ決定することもできる。
【0055】
平均速度でテストを行い、個人に、この平均速度が速すぎるか、十分な速さではないかを尋ね、その回答に応じて速度を調整することも想定できる。
【0056】
まず、ある個人によるある文の読取が、3つの異なる動作、すなわち停留、サッカード、及び逆行サッカードを含む読書方式に従って自然に行われることが観察される。
【0057】
停留中、個人は読んでいる単語、すなわち個人の注視が停留する単語を解読する。
【0058】
変位段階、すなわち1つの単語を読むことからから次の単語へと移ることに対応するサッカード中、個人の眼は1回の停留から次へと移るために急速に動く。
【0059】
これらのサッカードは、視覚的スパンに、すなわちある停留時に解読可能な文字(アルファベット文字、記号、表意文字等)の数に関する。これらにより、読者はある文のすべての文字を解読できる。
【0060】
サッカードは一般に、文を読む方向に発生する。しかしながら、眼はまた、1回の停留から次へと移るために、読む方向と反対方向に非常に高速な「逆行サッカード」も実行する。この運動は、動眼筋のエラーにより、又はその文をうまく読み、理解できないことにより誘発される。
【0061】
本発明の検査機器10の利点の1つは、個人の読書方式にできるだけ近くなるような視線追跡プロトコルを提案することである。
【0062】
したがって、検査機器10により、ある文の読取を簡単にシミュレートし、近方視で読書するときに自分がとるであろうものに近い自然な姿勢をとるような状況にその個人を置くことができる。
【0063】
これらの条件下での被験者の視覚挙動の判定は従ってより精密になり、被験者を対象とする眼鏡レンズの光学設計は、当該眼鏡レンズの設計が視力矯正に関して被験者のニーズを満たすように改良することができる。
【0064】
好適には、目標20の位置は、実質的に平行な少なくとも2行L1、L2(
図3の行L2の場合は位置35、36、37、38及び39)に整列している。より厳密には、図示する実施形態において、ディスプレイ11を制御する装置は、目標20の連続的に表示される位置30が5行に整列されるようにプログラムされている。
【0065】
代替的に、目標の位置は少なくとも2列に整列していてよい。
【0066】
一般に、目標20の位置は、特に被験者1に対して実質的に水平又は垂直な任意の方向の平行なラインに整列していてよい。
【0067】
また好適には、各行L1、L2、又は各列は、前記目標の少なくとも3個の整列した位置(
図3の行L2の場合は位置35、36、37、38及び39)を含んでいる。
【0068】
視線追跡プロトコルが、着用者がなるべく読み易い仕方を表すように、有利な態様として、当該書記法に従って読む際に被験者の注視が移動する仕方を再現すべく、所与の書記法により定義されたものに合致する読取軌道を視線追跡プロトコルが記述するようにする。
【0069】
読取軌道は、ここでは、ディスプレイ11上で、視覚的に目立つ標的20がとる位置30のシーケンスを注視するときの個人1の注視方向によりスキャンされる経路と定義することができる。
【0070】
個人が採用する読取方式は、その文の性質又は特定の特性だけでなく、書記の各種類の具体的な特徴にも関する。
【0071】
さらに、書記の様々なタイプは、機能により(アルファベット、音節、又は表語文字表記法)、及び方向により(水平及び垂直書記及び/又は読取方向)分類できることに留意されたい。
【0072】
従って、制御装置の検査機器が、視線追跡プロトコルの好適な垂直SV及び水平SH方向の移動(
図3参照)をメモリに保存するようにする。
【0073】
この、好ましい垂直及び水平移動方向は、好ましくは、その個人の特性、特にある書記体系に従って文を読むその能力に応じて事前に決定される。
【0074】
例えば、検査機器が、右から左及び上から下に読むフランス人により使用される場合、制御ユニットにより保存される水平移動方向は、スクリーン11の左からスクリーン11の右に進む移動方向であり、制御ユニットにより保存される垂直移動方向は、スクリーン11の上からスクリーン11の下へと進む移動方向である。
【0075】
したがって、一つの好ましい実施形態において、標的20の位置35、36、37、38、39がそれに沿って整列される実質的に平行な行L1、L2は実質的に水平に延び、視視線追跡プロトコルの移動方向はすべての行について同じであり、一番上から一番下、左から右に(又は、アラビア語やヘブライ語のように右から左に書く場合は右から左に)連続的にたどられる。
【0076】
同様に、検査機器が、上から下、右から左に読むモンゴル人により使用される場合、制御ユニットにより保存される垂直移動方向は、スクリーン11の上からスクリーン11の下へと進む移動方向であり、制御ユニットにより保存される水平移動方向は、スクリーン11の右からスクリーン11の左へと進む移動方向である。
【0077】
したがって、この書記体系に適した実施形態において、それに沿って標的の所定の位置が整列される実質的に平行な線は実質的に垂直に延び、視線追跡プロトコルの移動方向はすべての線ついて、上から下、又は下から上へと同じであり、右から左に連続的にたどられる。
【0078】
有利な方法で、検査機器10の制御ユニットは、視線追跡プロトコルを、移動方向がそれに対応する視線追跡プロトコルに関連付けて記録されるローカル又はリモートデータベースの中に記録された複数の視線追跡プロトコルの中から選択できるようにプログラムされる。
【0079】
それゆえ、個人は、自分自身の読む、及び/又は書く特性に応じて、自分に対応する視覚プロトコルを選択でき、それによって視覚検査を行っている間に自然な読書時のような条件下に置かれることになる。すると、確実に自分の読書メカニズムと戦略が実現され、その近方視力の使用を最もよく表す姿勢が回復される。
【0080】
停留、サッカード、及び逆行サッカードを伴う上述のような読書方式を再現するために、ディスプレイ11の制御ユニットは、好ましい視線追跡プロトコルに従って標的20を表示するようになされる。
【0081】
従って、制御装置に、視線追跡プロトコルの各位置で、目標20が所定時間だけ表示させる。これは、被験者1が強制的に自身の注視を目標20に固定させられる(被験者1の読書軌跡への固定に対応する)ように、目標20を画面に表示し続ける(
図3の位置34の場合)ことを意味することを意図されている。
【0082】
有利には、標的は所定の持続時間にわたって固定され、すなわち、標的20の位置がこの所定の持続時間中に変化せず、その後、読取軌道の次の位置へと移動する。
【0083】
好ましくは、この所定の持続時間は50ミリ秒~1秒であり、それゆえ、典型的に標準的停留時間に対応する。
【0084】
所定の持続時間はまた、読取軌道の途中で変化させることもでき、これは、実際の読書中にある単語上に個人1の注視が停留することは、単語(大きさ、長さ)に、及び理解レベル(あまり知らない、もしくは全く知らない単語、ほぼ解読不能な単語もしくは文字、綴りに誤りがある単語等)に依存しているかもしれないという事実による。
【0085】
同様に有利には、制御ユニットが、視野追跡プロトコルの2つの連続する位置31、32(
図2を参照)における標的20の表示間に所定の遅滞を付与するようになされる。
【0086】
このようにして、検査機器10により、個人1の読取軌道に沿って存在するサッカード又は逆行サッカードをシミュレートすることが可能である。前述のように、制御ユニットが視線追跡プロトコルの過程で所定の遅滞を変化させるようになされてもよい。
【0087】
これにより、個人1の読書速度が文を読む過程で変化するかもしれないという事実が起こりうることになる。
【0088】
これによって、例えば
図3の位置51から位置52へのケースのように、個人の注視方向が1本の線から次へと移動するケースを想定することが可能となり、その線に戻るには、個人の注視方向の変化がより大きいかぎり、より多くの時間が必要となる。
【0089】
すると、所定の遅滞中に標的について2つのケースを提供することが可能である。
【0090】
1つの実施形態において、所定の遅滞中に標的を見えない状態にするようになされてもよい。これは
図3の位置31及び32のケースに対応し、標的20は位置31から次の位置32に「ジャンプする」(ジャンプは、破線40により示されている)。この実施形態により、文を読んでいる間に個人の注視が単語から単語へとジャンプできるようにすることが可能となる。
【0091】
代替的実施形態において、標的が所定の遅滞中に見える状態で、視線追跡プロトコルの、それに対応する2つの連続する位置間で一方からもう一方へと移動するようになされてもよい。これは位置53、54のケースに対応している。目標が視認可能(目標21、22参照)な状態で、プロトコルの第4行の第1の位置に対応する位置53から、ここではプロトコルの第4行の第2の位置に対応する位置54まで移動中(移動を破線矢印49で表す)である。この他方の実施形態自体により、被験者が読書中に、次の単語に視線を移す前に全体を注視する単語をモデル化することができる。
【0092】
有利な態様として、本発明の検査機器10は、制御装置により、視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置35、36、37、38、39が10センチメートル未満距離EM1、EM2、EM3、EM4だけ離されるようにする。このように、被験者1は視力検査中に、一般に読書中の場合のように自身の注視方向を変化させる必要がない。
【0093】
好適には、制御装置により、注視追跡プロトコルの2個の連続的な位置35、36、37、38、39を隔てる距離EM1、EM2、EM3、EM4が視線追跡プロトコル動作中絶えず変化させるようにする。これにより、所与の書記法において単語の平均幅に応じて表示される目標20間の距離を適応させることが可能になる。
【0094】
別の実施形態において、制御装置は、視線追跡プロトコルの2個の連続的な位置における目標20の表示が、好適な水平及び/又は垂直方向の移動を10回中少なくとも6回追跡するようにプログラムされている。この状況を、視線追跡プロトコルにおける移動方向を表す
図3に示しており、これらの移動方向を、好適な水平移動方向SHのように左から右へではなく右から左へ移動する破線矢印43、45、48で表している。
【0095】
それゆえ、この結果、個人1が文を読んでいる間の前述の逆行サッカード運動をシミュレートすることが可能となる。実際に、ここでは10回のうち4回、連続する2つの位置間で注視の標的20を追う個人1の眼3の運動は、好ましい移動方向と反対方向に起こる。
【0096】
上で詳しく述べたサッカード運動と同様に、標的20は1つの位置から次の位置へと、一方の位置から他方へとジャンプする(見えない標的)ことにより、又は一方から他方へと移動する(見える標的)ことにより、好ましい移動方向と反対の移動方向に移ることができる。
【0097】
自身の視覚挙動に応じて被験者により選択されたフレームへの取り付けを意図された眼鏡レンズを設計するための少なくとも1個の光学パラメータを決定する方法であって、上述の検査機器を用いる方法について以下に
図4~18を参照しながら記述する。
【0098】
本発明によれば、本決定方法は、以下のステップ、すなわち
a)表示機器の前記ディスプレイに表示されている目標を、前記目標の位置が撮像装置に設定された基準系内で予め決定されている状態で、見る視覚的作業を行うよう被験者に求めるステップと、
b)前記目標を見ている被験者の頭部の画像を、各画像が前記目標の所定位置に対応している状態で、前記撮像装置により撮像するステップと、
c)被験者の頭部の画像の少なくともいくつかに基づいて、前記撮像装置に設定された基準系における被験者の頭部の位置、又は被験者の頭部に設定された基準系における被験者の注視方向を、被験者の頭部の各位置又は注視方向が対応する被験者の頭部の画像が撮像された前記目標の位置に関連付けられている状態で判定するステップと、
d)前記求められていた光学設計パラメータを、被験者の前記頭部位置又は注視方向から推論するステップを含んでいる。
【0099】
図4に、有利な態様として本発明の決定方法で実行できる各種のステップのフロー図を示す。これら各種のステップは、各々が特定の1ステップを表す1個以上のサブブロックを含む6個のブロック100、110、120、130、140及び150にグループ分けすることができる。
【0100】
実際には、後述のステップを実現すべく、タブレット10、あるいはローカル又はリモートコンピュータがプログラムされている。
【0101】
ブロック100
図4のブロック100で表す初期識別ステップにおいて、被験者は自身の氏名を提供することが求められる。本ステップは、例えば被験者10が記入すべき欄をタブレット10の画面11に表示することにより、タブレット自体により実行することができる。
【0102】
本識別ステップにおいて、被験者はまた、自身の読書特徴又は嗜好に応じて、自身が好む水平及び垂直移動方向、すなわち左から右又は右から左、及び上から下又は下から上、を指定すべく初期書記法を選択するよう求められる。
【0103】
最後に、被験者の読書速度がメモリに保存される。当該読書速度は、被験者に対し、例えば画面に表示すアイコンをクリックすることにより、自身の読書速度が遅いか、普通か、又は実際に速いかを示すよう求めることにより評価することができる。当該読書速度に応じて、目標の所定の表示継続期間を調整することができる(以下のブロック113、118を参照)。
【0104】
一変型例として、上述の読書速度は、当該読書速度が全てのテキストを読む平均速度に対応することを充分に保証できる長さの実際のテキストを読むことに基づいて評価することができる。有利な態様として、読まれたテキストを用いて視線追跡プロトコル(下記参照)の視覚的に目立つ目標の表示位置を判定することができる。
【0105】
平均速度で訓練動作を行い、当該平均速度が速すぎるか又は充分速くないかを被験者に尋ねて、当該被験者の応答に従い速度を調整することも考えられる。
【0106】
これらの被験者データの全てはまた、被験者の氏名、及び任意選択的に年齢、住所等、その他の被験者データのデータベースサーバへの送信に続いて、データベースから自動的に取り込むことができる。
【0107】
ブロック110
図4のブロック110でグループ化されたステップの目的は、被験者1の頭部4に設定された座標系を構築することであり、当該座標系は「FV姿勢座標系」又は「基準系CRO」と呼ばれる。被験者1の頭部4は、当該系における向き及び位置、並びに好適には原点及び3本の互いに独立な軸が関連付けられた正規直交座標系である座標系が設定されている。
【0108】
図5及び6は、基準フレームCROの構築方法を示す。
【0109】
特に、
図5は垂直面PVを示し、これは個人1の頭部4の、個人1の左右の2つの眼、すなわち右眼OD、左眼OGの垂直二分線を通る垂直面である矢状面に対応する。
【0110】
眼OD、OGのこの垂直二分線は、右眼ODの回旋点(以下、CRODと呼ぶ)と左眼の回旋点(以下、CROGと呼ぶ)により画定される線分の中央を通り、個人1の頭部4の耳眼面に水平な軸である。
【0111】
個人の頭部の耳眼面は、個人1の下側眼窩点と個人1の一部分を通る平面と定義され、その部分とは頭蓋骨の外耳の最も高い点であり、これは耳の耳珠点に対応する。耳眼面を判断するために、個人は、ほとんど力を入れない起立位にあると考えられる。この姿勢は自然な姿勢に対応し、以下、「FV姿勢」と呼ばれる。
【0112】
この自然な位置において、個人の注視方向はすると、主要注視方向、すなわちまっすぐ前を注視することになる。その時、耳眼面は一般に水平である。
【0113】
更に、一方で被験者1の頭部4のフランクフルト平面に平行であり、他方で被験者1の眼球OD、OGの回転中心CROD、CROGを含む水平面PHが画定される。
【0114】
被験者1のFV姿勢、すなわちフランクフルト平面の向き、及び被験者1の眼球OD、OGの回転中心CROD、CROGの知識に基づいて、
- 被験者1の右眼OD又は左眼OGの回転中心CROD、CROG、又は当該回転中心CROD、CROG)の重心の一方である原点、
- 原点及び左右の回転中心CROD、CROGを通る第1軸と、
- 原点を通過し、且つ被験者1の基準注視方向に平行な第2軸と、
- 原点を通過し、且つ第1及び第2軸に直交する第3軸(当該第3軸は、第2軸と第1軸の「ベクトル積」に対応する)とを選択することにより、以下にRCROで示す被験者1の頭部4に設定された基準系CROを構築することができる。
【0115】
ここに詳述する特定の実施形態において、基準系RCROの原点は、被験者1の右眼ODの回転中心CRODと左眼OGの回転中心CROGを結ぶ線分の中央に位置する点であるように選択されている。換言すれば、以下に「単眼CRO」と呼ばれCROCと表記する当該原点位置は、被験者1の眼球OD、OGの回転中心CROD、CROGの重心に対応している。
【0116】
基準系R
CROの3本の軸X
H、Y
H、Z
Hも
図6に示している。
【0117】
軸XH(第1軸)は、左回転中心CROGから右回転中心CRODの方を向いている。軸XHは従って、フランクフルト平面に平行な水平面PHに含まれている。逆向きもできる。
【0118】
軸ZH(第2軸)は、被験者1の頭部4の垂直面PVに位置し、且つフランクフルト平面に平行である。従って、被験者1が自然な位置にあるとき、すなわちFV姿勢をとるとき、基準注視方向に平行である。軸ZHはここでは、個人1の頭部4から(後方に向かって)離れる方向に延びる。
【0119】
軸YH(第三の軸)は、それ自体、個人1の頭部4の垂直矢状面PVの中に延び、耳眼面に垂直である。軸YHはしたがって、実際には軸XHと軸ZHに垂直である。これはここでは上向きであるため、基準フレームRcroは右側にある。
【0120】
基準フレームRcroは個人1の頭部4に結び付けられ、したがって、この基準フレームRcroは個人1の頭部4と共にシフトし、この基準フレームRcroの位置と方位は、個人1の頭部4の運動に応じて、絶対フレーム又は、個人1の頭部4に頭部に結び付けられない基準フレームに関して変化することに留意されたい。
【0121】
上述のように、ブロック110は、被験者1から提供されたデータから、又は実際に被験者1に対して行われた測定から基準系RCROを構築すべく意図されている。
【0122】
従って、サブブロック111で表すステップにおいて、予め識別された(ブロック100参照)被験者1に対して、回転中心CROD、CROG及びFV姿勢の位置が利用可能であるか否かが確認される。
【0123】
これらのデータが利用可能である場合、サブブロック112で表す上述のFV姿勢座標系を構築するステップに進む。当該データはローカルに利用可能、すなわちタブレット10のメモリに記録されているか、又は実際に遠隔利用可能、すなわち前記データの取り込みを要求できるデータベースに記録されている。
【0124】
これらのデータが利用不可能な場合、一方で被験者1の眼球OD、OGの回転中心CROD、CROGの各位置を判定(サブブロック113)し、他方で被験者1のFV姿勢を判定(サブブロック114)することが必要である。
【0125】
回転中心CROD、CROGの位置は、基本的に公知であって文献FR2914173(等価な英語版は文献US2010/0128220)に開示されている原理に従い判定することができる。
【0126】
回転中心CROD、CROGを判定するステップ(サブブロック113)において、被験者1は、被験者1の頭部4の撮像中に検出可能な測位要素(マーカー)を含む測位システム(計測座標系)又は「クリップ」を自身の頭部4に着用して、自身の頭部4に固定する。
【0127】
要約すれば、被験者1の頭部4の少なくとも2個の画像、すなわち
- 被験者が、遠距離に向かってまっすぐ注視している状態(FV姿勢)で、正面に向けられた撮像装置を注視しているときの第1の画像、及び
- 被験者が、四分の三正面に向けられた撮像装置を注視しているときの第2の画像が撮像装置により撮像される。
【0128】
タブレット10が背面ビデオカメラを備えている場合、当該カメラは有利な態様として撮像装置として機能することができる。一方、タブレットから独立した撮像装置が提供されてもよい。
【0129】
2個の撮影画像の処理(文献FR2914173参照)に基づいて、回転中心CROD、CROGの位置は測位システムに設定された座標系において推論される。
【0130】
次いで、以下に「単眼」回転中心又は「単眼CRO」と呼ばれCROcと表記する特定の点、すなわち予め決定された2個の回転中心CROD、CROGの等圧中心を判定することができる。
【0131】
FV姿勢を判定する、サブブロック114で表す以下のステップにおいて、回転中心CROD、CROGの位置、及び正面向きの第1の撮影画像が用いて被験者1のFV姿勢を判定する。また、後続の判定を実行中にタブレット10の傾きを補償することもできる(例えば文献US8231220及びUS7950800参照)。
【0132】
従って、サブブロック113、114で表すステップの終了時点において、FV姿勢座標系の構築に使用できるデータが利用可能であり、サブブロック112に関して上で述べたステップを実行することができる。
【0133】
ブロック120
次に、ブロック120で表すステップの組において、被験者1の頭部4の位置又は被験者1の注視方向の測定の精度及び信頼性向上を図るべく好適にはタブレット10の調整が行われる。
【0134】
従って、
図7に示すサブブロック121で表すステップにおいて、クリップのマーカーの位置が、タブレット10の上方に向けられた前面ビデオカメラ13の視野内で判定される。
【0135】
このため、ここでは丸印23である要素が画面11の中央に表示され、自身の手でタブレット10を持っている被験者1が当該丸印23を見るよう求められる。
【0136】
一変型例として、当該要素は目標の第1の表示位置(
図3の位置31参照)に表示されてもよい。
【0137】
以下のステップ(サブブロック122)において、タブレット10の前面ビデオカメラ13は、使用する測位システムを予め装着した被験者1の頭部4の画像を取得するよう指示され、取得した画像の処理に基づいて、
i)クリップのマーカーの位置が所定時間ビデオカメラ13の視野の上位3分の2の範囲に留まったか否か、
ii)クリップのマーカーの位置が所定時間ビデオカメラ13の視野の下位三分の一の範囲に留まったか否か、又は
iii)クリップのマーカーの位置が制限時間に判定可能でなかったこと、が判定される。
【0138】
ケースi)の場合、ブロック130で表す訓練フェーズのサブブロック131で表すステップに進むことができる。
【0139】
上のケースiii)の場合、本方法はサブブロック123で表すステップに進み、ここでは×印24(
図8参照)である図形が画面11に表示され、当該×印はビデオカメラ13の視野に関して測定エラーが検出された旨を被験者1に示している。
【0140】
次にケースiii)、又は実際にはケースii)の場合、ここでは円弧状(
図9参照)の矢印25である図形が画面11に表示され、当該図形は、正面ビデオカメラ13を下に向けるべく被験者1にタブレット10を傾けるように指示している。
【0141】
好適には、本ステップにおいて、タブレット10が実際に被験者1により裏返されたことを確認する(
図10参照)。有利な態様として、この確認は、タブレット10の向きを検出可能なセンサ、例えばジャイロメーターにより行われてもよい。
【0142】
確認が実行されたならば、本方法は
図11に示すサブブロック124で表すステップに進み、当該ステップでクリップのマーカーの位置が、タブレット10の前面ビデオカメラ13が下を向いている状態で前面ビデオカメラ13の視野内にあると判定される。
【0143】
次いでここでは丸印26である要素が画面11の中央に表示され、自身の手でタブレット10を持っている被験者1が当該丸印26を見るよう求められる。
【0144】
一変型例として、当該要素は目標の第1の表示位置(
図3の位置31参照)に表示されてもよい。
【0145】
以下のステップ(サブブロック125)において、タブレット10の前面ビデオカメラ13は、使用する測位システムを予め装着した被験者1の頭部4の画像を、当該被験者が自身の手2でタブレットを持っている間、取得するよう指示される。
【0146】
取得した画像の処理に基づいて、
i)クリップのマーカーの位置が所定時間ビデオカメラ13の視野内に間留まったか否か、又は、
ii)クリップのマーカーの位置が制限時間内に判定可能でなかったこと、が判定される。
【0147】
ケースi)の場合、ブロック130で表す訓練フェーズのサブブロック131で表すステップに進むことができる。
【0148】
上のケースii)の場合、本方法はサブブロック126で表すステップに進み、記号27(
図11参照)が画面11に表示され、当該記号はクリップが検出されなかった、又はコンピューティングエラーが発生したことを被験者1に知らせる。
【0149】
タブレット10は次いでメッセージを表示して、中途ステップの再開(ボタン29参照)又は検査の終了(ボタン28参照)を要求する。
【0150】
また、適性実施の要点を想起させる絵文字(図示しないが
図11の空ボックス99に配置されよう)が表示される。
【0151】
例えば、これらの絵文字は被験者1に、
- 眩しい光の発生源(例えば天井灯、被験者の背後の大きな窓)であり得る不快な照明の存在に注意を払うこと、
- 手の指又は実際に着用している衣類の一部により塞がれ得る前面ビデオカメラ13の視野を空けることを想起させる。
【0152】
ブロック120(調節フェーズ)のステップの終了時点で、タブレット10の前面ビデオカメラ13は、視線追跡プロトコル動作中に被験者1が自身の姿勢又はタブレット10を調整する必要無しに測定を受けられるようにする点に関して最適な条件下に置かれている。
【0153】
ブロック130
好適には、訓練フェーズに対応するブロック130のステップ131、132、133、134、135が、実際の測定フェーズ(ブロック140の各ステップ、
図4参照)の前に実行される。
【0154】
訓練フェーズの第1ステップにおいて、アクセス可能な視線追跡プロトコルの組から無作為に選択された訓練視線追跡プロトコルが計算されるか、又はこの目的のため制御装置に設けられたメモリにロードされる。
【0155】
当該アクセス可能な視線追跡プロトコルの組は、初期化ステップ(ブロック100、上記参照)で被験者により指示された好適な読書方向に応じて決定される。当該組は、タブレット10のメモリで直接利用可能であっても、又は実際にリモートサーバからダウンロードされてもよい。
【0156】
視線追跡プロトコルは、タブレット10の画面11に表示される視覚的に目立つ目標20の位置を表すデータを含んでいる。
【0157】
これらの表現データは、
- 目標20の位置の指標(自然数)と、
- 視線追跡プロトコルの開始から数秒以内に識別及び表現される目標20の表示時間座標と、
- 画面11上での目標20の表示位置の2個の座標を含み、当該座標は、以下でR
SCRと表記する画面基準系に関して表されており、原点として、画面11の左上隅90(
図12参照)を有し、互いに垂直であって画面11の列及び行方向に伸びる2本の軸91、92を含んでいる。
【0158】
換言すれば、各時点で、目標20の位置は撮像装置13に設定された画面基準系RSCR内で既知である。
【0159】
視線追跡プロトコルがロードされたならば、所定時間(サブブロック132)、目標20は最初に、タブレット10の画面11上の、視線追跡プロトコルの第1の位置(指数=0)に表示される。タブレット10の音声インジケータ又は振動により視線追跡プロトコルの開始を通知させてもよい。
【0160】
次に(サブブロック133)、選択された訓練視線追跡プロトコルに応じて、視覚的に目立つ目標20が各々の連続的な位置に表示される。プロトコルの移動速度は、被験者1の読書速度を考慮して初期化フェーズ(ブロック100)で提供された情報に応じて調整されてよい。
【0161】
当該ステップにおいて、ユーザー1は、ロードされた訓練視線追跡プロトコルの所定の表示位置の全てを順次辿る視覚的に目立つ目標20を注視しながら追跡することに慣れる。
【0162】
上で説明したように、目標20の表示位置は、被験者1がテキストを読む状況をシミュレートすべく適合されている。従って、訓練フェーズ(ブロック130)において、ユーザー1は次第に、疑似的な読書状況において自身の自然な態度に対応する姿勢をとることになる。
【0163】
先行ステップ(サブブロック133)が終了したならば、サイクルの終了を示す図形を画面11に表示することが好適に可能である(
図13、サブブロック134参照)。音声インジケータ又は振動もまたサイクルの終了を示すことができる。
【0164】
当該ステップ(サブブロック134)において、表示された図形、ここでは上方を指す矢印81が、被験者に遠方を見るように促すインジケータを表している。
【0165】
図81は、消える前に所定定時間画面11に表示されたままである。タブレット10は次いで、画面11には何も表示せずに所定時間待機する。
【0166】
上述の待機後、学習フェーズの進行状態が確認される(サブブロック135)。特に、ユーザーが一回しか視線追跡プロトコルを実行していない場合、ステップ133、134は好適には再開されて二回目の実行が行われる。さもなければ、実際の測定フェーズ(ブロック140)の第1ステップ(サブブロック141)に進む。
【0167】
ブロック140
訓練フェーズ(ブロック130)の第1ステップ131と同様の第1ステップ141において、アクセス可能な視線追跡プロトコルの予め決定された組から無作為に選択された測定視線追跡プロトコルが、計算されるか、又はこの目的のため制御装置に設けられたメモリにロードされる。
【0168】
当該視線追跡プロトコルは、測定フェーズにおけるタブレット10の画面11上の視覚的に目立つ目標20の表示位置を表す同様のデータを含んでいる。
【0169】
上述のデータは特に、視覚的に目立つ目標20の表示位置を含み、当該表示位置は予め決定されていて、検査機器(タブレット10)の撮像装置(前面ビデオカメラ13)に設定された基準系RSCR内で既知である。
【0170】
図4のサブブロック142、143で表す本発明の決定方法のステップa)において、被験者1は、タブレット10の画面11に表示された目標20を見るという視覚的作業を行うよう求められる(
図16参照)。当該目標20の表示位置30は、前面ビデオカメラ13に設定された基準系R
SCR(
図3の原点90及び軸91、92参照)内で予め決定されている。
【0171】
より厳密には、目標20は最初、タブレット10の画面11上で、測定用にロードされた視線追跡プロトコルの第1の位置31(指数=0)に所定時間表示される(サブブロック142)。
【0172】
タブレット10の音声インジケータ又は振動により視線追跡プロトコルの開始を通知させてもよい。
【0173】
次に(サブブロック143)、測定視線追跡プロトコルに応じて、視覚的に目立つ目標20が各々の連続的な位置30に表示される。プロトコルの移動速度は、被験者1の読書速度を考慮して初期化フェーズ(ブロック100)で提供された情報に応じて調整されてよい。
【0174】
ステップa)において、ユーザーは、ロードされた視線追跡プロトコルの所定の表示位置30の全てを順次辿る視覚的に目立つ目標20を注視しながら追跡する(目標20が視線追跡プロトコルの最終位置に表示されている
図16参照)。
【0175】
サブブロック144で表す決定方法のステップb)において、ロードされた視線追跡プロトコルに応じて画面11上を移動する目標20を見ている被験者1の頭部4の画像が、被験者1の頭部4に向けられたタブレット10の前面ビデオカメラ13により撮像される。
【0176】
有利な点として、正面ビデオカメラ13は、個人1の頭部4の画像捕捉を、標的20がスクリーン11上で視線追跡プロトコルの所定の位置20で表示される瞬間に関する捕捉オフセットでトリガする。このオフセットは、ゼロ又は、好ましくは例えば200ミリ秒未満のように小さくすることができる。これによって、スクリーン11上での標的20の位置30の変化中の個人1の眼3の反応時間と変位時間を考慮に入れることが可能となる。
【0177】
ある変形型によれば、正面ビデオカメラはまた、連続的ビデオシーケンスを、例えば毎秒20画像の速度で実行し、このビデオシーケンスの中から、対応する標的位置における標的の表示中のその個人の視覚挙動に関する最善の情報を提供する最善の画像を選択することもできる。
【0178】
タブレット10の前面ビデオカメラ13により撮像された各画像は従って、撮像装置13に設定された基準系R
SCRにおける位置30が完全に既知である視覚的に目立つ目標20の所定位置に対応している(上のサブブロック141及び
図16参照)。
【0179】
次いで、本発明による決定方法のステップc)において、被験者1の頭部4の画像の少なくともいくつかに基づいて、前面ビデオカメラ13に設定された座標系RSCRにおける被験者1の頭部4の位置、又は被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける被験者1の注視方向のいずれかが判定され、被験者1の頭部4の各位置又は注視方向が、被験者1の頭部4の対応する画像が撮像された目標20の位置30に関連付けられている。
【0180】
この目的のため、タブレット10に、例えばタブレット10のプロセッサからなる画像処理機器が設けられていて、被験者1の頭部4の撮影画像内で、被験者1が自身の頭部4に装着したクリップのマーカーを検出する。
【0181】
次いで前面ビデオカメラ13に設定された基準系RSCRにおけるクリップの位置及び向きが各々の撮影画像に対して、すなわち視線追跡プロトコルの目標20の各位置30に対して、例えば文献FR2914173(等価な英語版は文献US8360580)に記述されている方法を用いて判定される。
【0182】
クリップに対する被験者1の眼球の回転中心CROD、CROGの位置が既知である(サブブロック111、114参照)ため、既知である被験者1の頭部4に設定された基準系RCROの位置(空間座標)及び向き(角座標)もまた既知である。
【0183】
これを更に
図16に示しており、基準系R
CROを、原点が単眼回転中心CRO
C(回転中心CROD、CROGの重心)及び軸X
H、Y
H、Z
Hと共に示している。
【0184】
従って、基準系を変化させることで、視線追跡プロトコルの目標20の各位置30に対して、タブレット10の前面ビデオカメラ13に設定された基準系RSCRにおける被験者1の頭部4の位置及び向きを判定することができる。
【0185】
また、視線追跡プロトコルの目標20の各位置30に対して、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける被験者1の注視方向DRを判定することも可能であり、ここでは当該注視方向DRが、単眼回転中心CROC、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROの原点と目標20を結ぶ。
【0186】
また、各々右回転中心CROD及び左回転中心CROGに対する注視方向DRD、DRG(
図16参照)を判定することもできる。
【0187】
好適な一実施形態において、ステップd)の前に、頭部4の位置又は向き、あるいは被験者1の注視方向DRに基づいて、目標20の位置70を、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおいて差異表現する。
【0188】
これを
図17に示しており、被験者1の頭部4に設定された基準系R
CROの軸X
H、Y
H、Z
Hに対する当該基準系R
CROにおける目標20の位置70を示している。
【0189】
視力検査プロトコル動作中に、撮像装置13に設定された基準系RSCRに対する被験者1の頭部4の位置及び向きが変化するだけでなく、被験者1が視力検査実行中にタブレット10の位置及び向きも変更するという事実を考慮すれば、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の相対位置70が被験者1の視覚挙動に関する、特にテキストを読む際に頭部4又は眼球3を動かす癖に関する情報を提供することが理解されよう。
【0190】
具体的には、被験者1が注視方向DRを大幅に変えながら視線追跡プロトコルを追跡する場合、被験者1の頭部4に設定された基準系R
CROにおける目標20の相対位置70は、前面ビデオカメラ13に設定された基準系R
SCRにおける目標20の相対位置30と同様である。これが
図17のケースである。
【0191】
逆に、被験者1が注視方向DRを殆ど静止させたまま視線追跡プロトコルを追跡する場合、被験者1の頭部4に設定された基準系R
CROにおける目標20の位置70はグループ化される。これが
図18のケースである。
【0192】
更に、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の当該位置70に、サブブロック141に関して上で述べた指標及び時間座標を関連付けることができる。
【0193】
ここではサブブロック146で表す本決定方法のステップd)において、求められている光学設計パラメータは、被験者の頭部4の位置又は被験者の注視方向DRから推論される。
【0194】
上述の特定の実施形態において、求められている光学設計パラメータはここでは、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の位置70から推論される。
【0195】
当該光学設計パラメータは例えば、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の位置70の重心71の座標のデータを含んでいてよい。当該重心71は、単眼回転中心CROCと前記重心71を結ぶ被験者1の平均注視方向を画定するものである。
【0196】
当該平均注視方向は、被験者1の読書状況における近方視視覚挙動を表す。
【0197】
被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける重心71の座標のデータは従って、被験者1により選択された眼鏡フレームへの取り付けを意図された眼鏡レンズ、特に累進眼鏡レンズの設計に利用できる。
【0198】
仏国特許第3012952号明細書に記述されているように、例えば、重心71及び平均注視方向に関する知識に基づいて、眼鏡レンズ上での近方視基準点(NV中心点)の位置を精密に合わせると共に、眼鏡レンズの表面及び裏面の設計を最適化して当該レンズを被験者1により適切に合わせることができる。
【0199】
被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の位置70により、読書作業中に被験者1が頭部4及び/又は眼球3を動かす傾向を考慮に入れる光学設計パラメータを推論することもできる。
【0200】
図19、20を参照しながら上で述べたように、当該光学設計パラメータは、被験者1の頭部4に設定された基準系R
CROにおける目標20の位置70のばらつきを表すデータに対応していてよい。
【0201】
上述のばらつきは、各位置70に対して、位置70と、既に画定された重心71の位置との間の距離を計算することにより決定することができる。
【0202】
ここでは目標20の位置30が水平及び垂直に分散しているため、水平方向のばらつき係数及び垂直方向のばらつき係数をも決定することができる。水平方向のばらつき係数は、視線追跡プロトコル動作中の被験者1の眼球3の左から右(又は右から左)への動きを定量化する。垂直方向のばらつき係数は視線追跡プロトコル動作中の被験者1の眼球3の上から下(又は下から上)への動きを定量化する。
【0203】
無論、被験者の視覚挙動を表す他の光学設計パラメータも決定することができる。
【0204】
ここではサブブロック147で表す以下のステップにおいて、光学設計パラメータの決定が成功したことが確認される。
【0205】
例えば、当該光学設計パラメータが、被験者1の頭部4に設定された基準系における目標の位置70の重心71の座標のデータを含んでいる(
図17参照)場合、当該重心71の座標が、タブレットの基準系R
SCRにおける目標20の位置30及び被験者1の頭部4の動きの最小及び/又は最大振幅に依存する特定の範囲を含むことを確認することができる。
【0206】
上述の限度から外れて決定されたいかなる値もエラーを生じさせる。従って2通りのケースが可能である。すなわち、
- 1回目の測定が行われた場合、エラーは維持され、エラー信号(ここでは十字形83、
図15参照)がタブレット10の画面11に表示される(サブブロック148が、また、サブブロック126参照)、
- 2回目の測定であって、且つエラーが通知された場合、エラーは取り消されて全ての値が最下限に設定される。このケースは異常値として検出されて相応に管理される。
【0207】
先行の確認が適正に行われた場合、成功を示す記号(
図14のV字記号82参照)が画面に表示されて、本方法は、各種の推論された光学設計パラメータを所定のフォーマットに符号化するサブブロック149で表す以下のステップに進む。
【0208】
例えば、被験者1の頭部4に設定された基準系RCROにおける目標20の位置70の重心71の各々の座標を1バイト以上、好適には2バイトの16進数に符号化することができる。
【0209】
ブロック150
転送フェーズ(ブロック150)において、光学設計パラメータは、被験者の視覚挙動、ここでは近方視における読書挙動に特に良く適合された眼鏡レンズの光学設計を目的として前記パラメータを利用することを意図されたローカル又はリモートプロセッサに送信される。