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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】蒸気タービン及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 11/02 20060101AFI20230417BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20230417BHJP
   F01D 25/26 20060101ALI20230417BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
F01D11/02
F01D25/24 P
F01D25/26 E
F01D25/00 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021525781
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019077895
(87)【国際公開番号】W WO2020099054
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】102018219374.6
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】プライビッシュ,シュテファン
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-301604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/02
F01D 25/24
F01D 25/26
F01D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービン外部ケーシング(20)と、
第1のプロセス蒸気入口部(31)及び第1のプロセス蒸気出口部(32)を備え、プロセス蒸気を高圧内部ケーシング(30)を通して前記第1のプロセス蒸気入口部(31)から前記第1のプロセス蒸気出口部(32)へ第1のプロセス蒸気膨張方向(33)で導くための高圧内部ケーシング(30)と、
第2のプロセス蒸気入口部(41)及び第2のプロセス蒸気出口部(42)を備え、プロセス蒸気を低圧内部ケーシング(40)を通して前記第2のプロセス蒸気入口部(41)から前記第2のプロセス蒸気出口部(42)へ第2のプロセス蒸気膨張方向(43)で導くための低圧内部ケーシング(40)と、
プロセス蒸気を再熱するために設けられていて、このプロセス蒸気は前記高圧内部ケーシング(30)の下流、かつ前記低圧内部ケーシング(40)の上流で取り出すことができる、再熱器(50)と、
を有する蒸気タービン(1)であって、
前記高圧内部ケーシング(30)及び前記低圧内部ケーシング(40)は、前記蒸気タービン外部ケーシング(20)の内部に配置されており、
前記高圧内部ケーシング(30)及び前記低圧内部ケーシング(40)は、該高圧内部ケーシング(30)の前記第1の蒸気入口部(31)が該低圧内部ケーシング(40)の前記第2の蒸気入口部分(41)に対向するように配置されており、
前記高圧内部ケーシング(30)の下流に、前記第1の蒸気出口部(32)からのプロセス蒸気を前記第1の蒸気膨張方向(33)とは反対方向に、前記蒸気タービン外部ケーシング(20)の内壁と前記高圧内部ケーシング(30)の外壁との間に延びる隙間、及び、少なくとも部分的に、前記蒸気タービン外部ケーシング(20)の内壁と前記低圧内部ケーシング(40)の外壁との間に延びる隙間(70)に向けて方向転換するためのプロセス蒸気方向転換部(60)が形成されており、
前記第1のプロセス蒸気入口部(31)が形成されている前記高圧内部ケーシング(30)の上流側端部に、前記高圧内部ケーシング(30)の上流側端部を少なくとも部分的にシールするための高圧シーリングシェル(34)が形成されており、前記第2のプロセス蒸気入口部(41)が形成されている前記低圧内部ケーシング(40)の上流側端部に、前記低圧内部ケーシング(40)の上流側端部を少なくとも部分的にシールするため低圧シーリングシェル(44)が形成されており、前記高圧シーリングシェル(34)と前記低圧シーリングシェル(44)が互いに隣接して配置されている、
蒸気タービンにおいて、
前記高圧内部ケーシング(30)が、前記プロセス蒸気を前記高圧内部ケーシング(30)から取り出し、前記高圧シーリングシェル(34)と前記低圧シーリングシェル(44)との間の領域(110)に導くことができるように形成されていることを特徴とする蒸気タービン(1)。
【請求項2】
前記高圧シーリングシェルが、所定の漏洩流質量流量を前記高圧シーリングシェル(34)を通して前記高圧シーリングシェル(34)と前記低圧シーリングシェル(44)との間の領域(110)に導くことができるように、形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の蒸気タービン(1)。
【請求項3】
前記高圧シーリングシェル(34)及び前記低圧シーリングシェル(44)が、互いに調整されて形成されており、前記高圧シーリングシェル(34)を通る漏洩流の質量流量が前記低圧シーリングシェル(44)を通る漏洩流の質量流量よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の蒸気タービン(1)。
【請求項4】
前記高圧シーリングシェル(34)を通る漏洩流の質量流量が前記低圧シーリングシェル(44)を通る漏洩流の質量流量より少なくとも30%大きいことを特徴とする、請求項3に記載の蒸気タービン(1)。
【請求項5】
前記低圧内部ケーシング(40)の下流側端部に、前記低圧内部ケーシング(40)の下流側端部と前記蒸気タービン外部ケーシング(20)との間の蒸気タービン領域をシールするためのシーリング枠(80)が形成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の蒸気タービン(1)。
【請求項6】
前記再熱器(50)が前記蒸気タービン外部ケーシング(20)の外側に配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の蒸気タービン(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の蒸気タービン(1)を運転する方法であって、
プロセス蒸気を、プロセス蒸気源(10)から前記第1のプロセス蒸気入口部(31)を通して前記高圧内部ケーシング(30)に導くステップと、
前記プロセス蒸気を、前記第1のプロセス蒸気入口部(31)から前記第1のプロセス蒸気出口部(32)へ導くステップと、
前記プロセス蒸気を、前記第1のプロセス蒸気出口部(32)を通って、前記高圧内部ケーシング(30)から前記プロセス蒸気方向転換部(60)および前記隙間(70)を経由して前記再熱器(50)に導くステップと、
前記プロセス蒸気の一部を前記高圧内部ケーシング(30)から取り出し、前記プロセス蒸気のこの部分を再熱パラメータ値に膨張させ、前記取り出されたプロセス蒸気を前記高圧シーリングシェル(34)と前記低圧シーリングシェル(44)との間の領域(110)に導入するステップと、
を有する方法。
【請求項8】
前記取り出されたプロセス蒸気が前記高圧シーリングシェル(34)を通って、前記高圧シーリングシェル(34)と前記低圧シーリングシェル(44)との間の前記領域(110)に導かれる漏洩蒸気であることを特徴とする、請求項7に記載の蒸気タービンを運転する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の前文による蒸気タービン、及び、独立請求項7の前文による蒸気タービン運転方法に関する。
【0002】
汽力発電所では、蒸気タービンを運転するための作動媒体として水蒸気が使用される。水蒸気は蒸気ボイラ内で加熱され、プロセス蒸気として複数の配管を経て蒸気タービンに流入する。作動媒体の前もって吸収した熱エネルギーが、蒸気タービンで運動エネルギーに変換される。この運動エネルギーによって通常は1台の発電機が駆動され、発生された機械出力をこの発電機が電力に変換する。あるいは、この運動エネルギーは、機械、例えばポンプを駆動するために使用することもできる。 膨張し冷却したプロセス蒸気は復水器に流入し、そこで熱交換器内の熱伝達により凝縮し、再び水として蒸気ボイラに戻されて加熱される。
【0003】
通常の蒸気タービンは少なくとも1つの高圧部及び少なくとも1つの低圧部を有し、これらは高圧段及び低圧段とも呼ばれる。低圧部ではプロセス蒸気の温度が大幅に下がり、これによりプロセス蒸気の部分凝縮が生じ得る。低圧部はプロセス蒸気の湿り度に非常に敏感である。プロセス蒸気が約8~10%の湿り度で蒸気タービン低圧部に到達する場合には、低圧部に入る前にプロセス蒸気の湿り度を許容レベルまで下げる対策を取らなければならない。
【0004】
汽力発電所の効率を上げるために、プロセス蒸気は低圧部に入る前にいわゆる再熱プロセスに供給される。再熱プロセスにおいて、プロセス蒸気は湿り度が下がるように再度加熱される。この再熱プロセスでは、蒸気質量流量全部が高圧部の下流で蒸気タービンから取り出され、再熱プロセスに供給され、ほゞ生蒸気の温度にまで昇温される。引き続いて、このプロセス蒸気は低圧部に供給される。このような再熱プロセスがなければ、蒸気タービンを停止させなければならないであろう。というのは、凝縮された水滴が回転しているタービン翼に衝突する可能性があり、液滴エロージョンによるタービン翼の損傷を引き起こすからである。
【0005】
多段式蒸気タービンの場合には、1つの高圧段と1つの低圧段の他に、少なくとも1つの中圧段が使用される。この場合、個々のタービン段の間でそれぞれプロセス蒸気のこのような再熱が行われる。このことにより、過熱された水蒸気によって複数のタービン段においてより効率的なに機械エネルギーを生成させることができるので、より高い効率が得られる。
【0006】
蒸気タービンで再熱システムが実装される場合、外壁の材料は、特に個々のタービン段の間で、大きなストレスを受ける。第1のタービン段で温度が下がった水蒸気が取り出されて再熱器に送られ、加熱されたプロセス蒸気が第2のタービン段に送られる。この場合、第1のタービン段と第2のタービン段の間の移行領域の外壁に大きい温度差が生じる。低温のプロセス蒸気が取り出される第1のタービン段の終端部と、再熱器から高温のプロセス蒸気が供給される第2のタービン段の始端部とが互いに近接しているので、そこの外壁に大きい熱応力が生じる。これにより、外壁の漏れやクラックが発生する可能性がある。さらに、低温のプロセス蒸気を第1のタービン段から取り出す際に湿り蒸気パラメータが支配的となり、これにより外部ケーシングの内壁に凝縮物が生成する危険性がある。この凝縮物は外壁の内側をさらに冷却する。これは外壁の熱応力を増加させる。 過熱されたプロセス蒸気が有害な熱応力の原因にならないようにすべく、この過熱されたプロセス蒸気は熱応力を減少させるために冷却される。これは通常、上流に設置された流入室で行われる。しかしながら、これらの追加の流入室はエネルギー損失をもたらす可能性がある。
【0007】
単一シェル型の、つまり、シングルケーシング型の再熱蒸気タービンの場合、強く過熱されたプロセス蒸気は2箇所でタービンに送り込まれる。この場合、特に蒸気タービンの外部ケーシングは、そこに現れる温度及び圧力により強い熱負荷を受ける。
【0008】
しかしながら、ここで発生する必要パラメータは、しばしば、単一シェル型タービンケーシングで許容されるパラメータ値を超える。そこで、本出願人による未公開の特許文献1は、前述の欠点を大きく克服する蒸気タービン、及び、そのような蒸気タービンの運転方法を提案している。
【0009】
この蒸気タービンは1つの蒸気タービン外部ケーシングを有する。さらに、この蒸気タービンは、第1のプロセス蒸気入口部と第1のプロセス蒸気出口部とを備えた1つの高圧内部ケーシングを有し、プロセス蒸気がこの高圧内部ケーシングを通って第1のプロセス蒸気入口部から第1のプロセス蒸気出口部へ第1のプロセス蒸気膨張装置内で導かれる。さらに、この蒸気タービンは、第2のプロセス蒸気入口部と第2のプロセス蒸気出口部とを備えた1つの低圧内部ケーシングを有し、プロセス蒸気がこの低圧内部ケーシングを通って第2のプロセス蒸気入口部から第2のプロセス蒸気出口部へ第2のプロセス蒸気膨張方向で導かれる。さらに、この蒸気タービンは1つの再熱器を有し、この再熱器は高圧内部ケーシングの下流かつ低圧内部ケーシングの下流に配置されており、前記の高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングは蒸気タービン外部ケーシングの内側に配置されている。
【0010】
この高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングは、高圧内部ケーシングの第1の蒸気入口部が低圧内部ケーシングの第2の蒸気入口部に対向するように配置されている。高圧内部ケーシングの第1の蒸気入口部分が低圧内部ケーシングの第2の蒸気入口部分に対向しているということは、高圧内部ケーシングの第1の蒸気入口部が低圧内部ケーシングの第2の蒸気入口部とは反対方向又はほゞ反対方向に向いている、つまり、配向されていることを意味する。これに対応して、第1のプロセス蒸気膨張方向は第2のプロセス蒸気膨張方向に対して反対方向又はほゞ反対方向を向いている。
【0011】
すなわち、高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングは、高圧内部ケーシングを通るプロセス蒸気流動方向が、低圧内部ケーシングを通るプロセス蒸気流動方向に対して反対方向に、特に180°反対方向になるように配置されている。
【0012】
このような蒸気タービンを用いて、生蒸気の形態の過熱されたプロセス蒸気を、蒸気方向とは反対方向に向けられた高圧内部ケーシングに供給し、いわゆる低温の再熱プロセスの圧力及び温度レベルにまで膨張させることができる。プロセス蒸気が高圧内部ケーシングから出た後、このプロセス蒸気を再熱器に導くことができる。再熱器から出た再熱されたプロセス蒸気は次に、主流動方向を向いている低圧内部ケーシング内に入り込むことができ、蒸気タービンの低圧内部ケーシング内で凝縮圧力まで膨張することができる。
【0013】
低圧内部ケーシングは、高圧内部ケーシング内よりも少なくとも平均的に低い圧力が支配的であるか又は存在している内部ケーシングを意味する。すなわち、低圧内部ケーシングは、特に中圧内部ケーシングをも意味する。
【0014】
プロセス蒸気は、蒸気タービンの運転中に蒸気タービンの諸構成要素を通って流れる蒸気、特に水蒸気を意味する。
【0015】
高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングのこの配置により、再熱プロセスから生じる圧力差のみが作用するので、低圧内部ケーシング内の外乱力を最小限に抑えることができる。プロセス蒸気は、更なる膨張のために次の部品、例えばもう一つの低圧内部ケーシングに直接導くことができ、予めバイパスする必要はない。
【0016】
膨張方向は、プロセス蒸気が実質的に移動する又は導かれる方向を意味する。すなわち、プロセス蒸気が蒸気タービンの一部へ、例えば左から右に、移動する場合、これは単純化して右方向への直線的な膨張方向として理解されるべきである。 さらに、本事例では、膨張方向は、高圧領域から、低圧領域すなわち高圧領域よりも低い圧力を有する圧力領域への圧力方向を意味する。これに対応して、上流側の蒸気タービン部分は、この膨張方向とは反対方向に向けて配置されている部分を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】独国特許出願公開第102017211295号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
高圧内部ケーシングが、最初に、再熱プロセスに供給される低温の蒸気で浸され、引き続き、再熱プロセスから出てくる高温の蒸気で貫流される、という事実は依然として大きな挑戦課題である。さらに、再熱プロセスに供給された低温の蒸気が再熱プロセスにおける圧力損失により低圧内部ケーシング内に吸い込まれる可能性があり、これは阻止すべきである。本発明は、従来技術のこれらの欠点を取り除くことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による蒸気タービンについての課題は独立請求項1の特徴により解決される。そのような蒸気タービンの運転方法に関する課題は独立請求項7の特徴により解決される。
【0020】
個々に、又は、互いに組み合わせて使用できる本発明のさらなる利点および構成は従属請求項の主題である。
【0021】
本発明の第一の側面により、蒸気タービンが提供される。この蒸気タービンは1つの蒸気タービン外部ケーシングを有する。さらに、この蒸気タービンは、第1のプロセス蒸気入口部と第1のプロセス蒸気出口部とを備えた1つの高圧内部ケーシングを有し、プロセス蒸気がこの高圧内部ケーシングを通って第1のプロセス蒸気入口部から第1のプロセス蒸気出口部へ第1のプロセス膨張装置内で導かれる。さらに、この蒸気タービンは、第2のプロセス蒸気入口部と第2のプロセス蒸気出口部とを備えた1つの低圧内部ケーシングを有し、プロセス蒸気がこの低圧内部ケーシングを通って第2のプロセス蒸気入口部から第2のプロセス蒸気出口部へ第2のプロセス蒸気膨張装置内で導かれる。さらに、この蒸気タービンはプロセス蒸気を再熱するための1つの再熱器を有し、このプロセス蒸気は高圧内部ケーシングの下流、及び、低圧内部ケーシングの上流で取り出すことができる。この場合、高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングは蒸気タービン外部ケーシングの内側に配置されていて、この高圧内部ケーシング及び低圧内部ケーシングは、高圧内部ケーシングの第1のプロセス蒸気入口部が低圧内部ケーシングの第2のプロセス蒸気入口部に対向するように配置されており、さらに、高圧内部ケーシングの下流にプロセス蒸気方向転換部が形成されており、このプロセス蒸気方向転換部は第1のプロセス蒸気出口部からのプロセス蒸気を第1のプロセス蒸気膨張装置とは反対方向に、蒸気タービン外部ケーシングの内壁と高圧内部ケーシングの外壁との間に延びる隙間、及び、少なくとも部分的に、蒸気タービン外部ケーシングの内壁と低圧内部ケーシングの外壁との間に延びる隙間に向けて方向転換する。そして、この場合、第1のプロセス蒸気入口部が形成されている高圧内部ケーシングの上流側端部に、この高圧内部ケーシングの上流側端部を少なくとも部分的にシールするための高圧シーリングシェルが配置され、さらに、第2のプロセス蒸気端部が形成されている低圧内部ケーシングの上流側端部に、この低圧内部ケーシングの上流側端部を少なくとも部分的にシールするための低圧シーリングシェルが配置されており、これらの高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとは互いに隣接して配置されている。この場合、本発明によれば、この高圧内部ケーシングはプロセス蒸気を高圧内部ケーシングから取り出して、高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に導くことができるように形成されている。高圧内部ケーシングから取り出されたプロセス蒸気は、仕事をすることなく、直接に再熱パラメータ値にまで絞られる。その結果、この蒸気は、第1の蒸気膨張装置内で(膨張されたプロセス蒸気よりも著しく高温になる。この取り出されたプロセス蒸気は、こうして高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に導くために使用することができ、その結果、この領域、および、特に第2の内部ケーシングを局所的に加熱することができる。これにより、ロータで、及び、低圧内部ケーシングの第2の蒸気入口部の領域で、いわゆる低温スポットが発生することが防止される。これにより、ロータの機械的にもロータ動力学的にもプラスの温度分布が得られる。熱に起因して生じる低圧内部ケーシングでの変形が小さいので、蒸気タービンのロータと内部ケーシングとの間のクリアランスをより小さく設定できる。これにより、蒸気タービンの効率が高まる。さらに、この与えられた温度場により、再熱プロセスのより大きい絶対温度差も実現でき、これはさらに設備全体のプロセス効率を増加させる。これにより、単一ケーシング再熱タービン、すなわち、単一の外部ケーシングを有するタービンの適用分野が広がる。これは、複数の外部ケーシングが使用されるマルチケーシングタービンと比較して、大きなコスト上の利点を有する。このことは、よりコスト競争力のあるタービンをより広い出力範囲で提供できることを意味する。
【0022】
本発明の一実施形態では、高圧シーリングシェルが、所定の漏洩流質量流量をその高圧シーリングシェルを介して高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に導くことができるように構成されている。この高圧シーリングシェルは高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に十分に大きな蒸気質量流量(漏洩流量)を導くことができるように形成されているので、それに応じて2つのシーリングシェル間の空間を加熱することができ、その結果、温度に関するロータの機械的特性及びロータの動的力学特性がプラスの影響を受けるので、ロータに低温スポットが生じず、第2のプロセス蒸気入口部の領域がそれに応じて予熱される。したがって、第1の膨張装置内に配管及び開口部を追加設置する必要がなく、これにより、構造が大幅に簡単になる。原理的に、高圧シーリングシェル自身に備わっている漏洩流が加熱のために用いられ、この場合、この高圧シーリングシェルは、技術的に必要とされるよりもその漏洩流の質量流量が大きくなるように設計されなければならない。この漏洩流の質量流量は、シーリングシェルとロータとの間のギャップを適切に拡大することによって、容易に決定又は調節することができる。
【0023】
本発明の別の実施形態では、高圧シーリングシェル及び低圧シーリングシェルが、高圧シーリングシェルを通る漏洩流の質量流量が低圧シーリングシェルを通る漏洩流の質量流量よりも大きくなるように形成され、互いに調整されている。この場合、高圧シーリングシェルを通る漏洩流の質量流量は低圧シーリングシェルを通る漏洩流の質量流量より少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%大きい。この質量流量の差が阻止質量流量をもたらし、この阻止質量流量は、低温の再熱蒸気が低圧シーリングシェル内に侵入し、その結果、第2の膨張装置内に侵入するのを防ぐ。第1の膨張装置からの高温の漏洩流の質量流量は、第1のシーリングシェルと第2のシーリングシェルとの間のロータの予熱と、特に第2の膨張装置における第2のプロセス蒸気入口部分の予熱を確実にする。
【0024】
本発明の別の実施形態では、低圧内部ケーシングの下流側端部に、低圧内部ケーシングの下流側端部と蒸気タービン外部ケーシングとの間の蒸気タービン領域をシールするためのシーリング枠が形成されている。本事例の蒸気タービンでは、低圧内部ケーシングは運転中にプロセス蒸気が通過する。一方、高圧内部ケーシングはシーリング枠によって低圧内部ケーシングから分離されており、このシーリング枠は、好適には、低圧内部ケーシングの下流側端部で一体化されたシーリング枠として作られている。このシーリング枠を使用することにより、低圧内部ケーシングの下流側端部の内側シーリングシェルを省くことができる。このシーリング枠の構造は、シーリングシェルよりも明らかに簡単である。この時点で以下のことに言及しておく。すなわち、本事例におけるシーリングシェルは従来技術において一般的に使用されているシーリングシェルであり、従って、ここでは詳細には説明しない。
【0025】
本発明の別の実施形態では、再熱器が蒸気タービン外部ケーシングの外側に配置されている。このことは、特に、組立、分解、保守及び修理に関して有利である。
【0026】
本発明の別の側面により、上記に詳述した蒸気タービンの運転方法が提供される。したがって、本発明による方法は、本発明による蒸気タービンに関して詳細に説明したのと同じ利点をもたらす。本方法は、
プロセス蒸気を、プロセス蒸気源から第1のプロセス蒸気入口部を通して高圧内部ケーシングに導くステップと、
そのプロセス蒸気を、第1のプロセス蒸気入口部から第1のプロセス蒸気出口部へ導くステップと、
そのプロセス蒸気を、第1のプロセス蒸気出口部を通って、高圧内部ケーシングからプロセス蒸気方向転換部および隙間を経由して再熱器に導くステップと、
そのプロセス蒸気の一部を高圧内部ケーシングから取り出し、プロセス蒸気のこの部分を再熱パラメータ値まで膨張させ、この取り出されたプロセス蒸気を高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に導入するステップと、
を有する。
【0027】
この方法により、ロータの機械的およびロータの動力学的なプラスの温度分布が得られる。この与えられた温度場により、再熱プロセスのより大きい絶対温度差を実現することができ、その結果、全体効率が向上する。
【0028】
本方法の一実施形態では、取り出されたプロセス蒸気(漏洩蒸気)が高圧シーリングシェルを通って、高圧シーリングシェルと低圧シーリングシェルとの間の領域に導かれる。その結果、本発明による方法は構造的な複雑さを伴わず、従って、安価に実現することができる。既設の蒸気タービンの、本明細書に記載されているプロセスへの転換は簡単な手段で実行することができる。
【0029】
本発明を改善する更なる方策は、図面に模式的に示されている本発明の様々な実施例についての以下の説明から得られる。特許請求の範囲、本明細書又は図面に由来する全ての特徴及び/又は利点は、構造的な詳細及び空間的配置を含めて、単独でも様々な組合せにおいても、本発明にとって本質的なものである。:
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による蒸気タービンの原理的な構成を示す図である。
図2】本発明による方法を詳細に説明する詳細部Zを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本発明による蒸気タービン1の原理的な構成を示す。蒸気タービン1は1つの蒸気タービン外部ケーシング20を有し、この蒸気タービン外部ケーシングの内側に、1つの高圧内部ケーシング30、中圧内部ケーシングの形態の1つの低圧内部ケーシング40、及び、もう1つの低圧内部ケーシング90が配置されている。高圧内部ケーシング30の上流に、プロセス蒸気を高圧内部ケーシング30に供給するための生蒸気源又はプロセス蒸気源10が配置されている。高圧内部ケーシング30は、プロセス蒸気をこの高圧内部ケーシング30を通して第1のプロセス蒸気入口部31から第1のプロセス蒸気出口部32へ第1のプロセス蒸気膨張装置33内で導くための第1のプロセス蒸気入口部31及び第1のプロセス蒸気出口部32を有している。低圧内部ケーシング40は、プロセス蒸気をこの低圧内部ケーシング40を通して第2のプロセス蒸気入口部41から第2のプロセス蒸気出口部42へ第2のプロセス蒸気膨張装置43内で導くための第2のプロセス蒸気入口部41及び第2のプロセス蒸気出口部42を有している。さらに、蒸気タービン1は1つの再熱器50を有し、この再熱器は高圧内部ケーシング30の下流かつ低圧内部ケーシング40の上流に配置されている。この場合、この配置は、空間的な配置ではなく、流体技術的な配置である。
【0032】
図1に示すように、高圧内部ケーシング30及び低圧内部ケーシング40は、高圧内部ケーシング30の第1の蒸気入口部31が低圧内部ケーシング40の第2の蒸気入口部41に対向するように配置されている。
【0033】
この蒸気タービン1は、高圧内部ケーシング30の下流に、第1の蒸気出口部32からのプロセス蒸気を第1の蒸気膨張装置33とは反対の方向に方向転換して蒸気タービン1の隙間70に入れるためのプロセス蒸気方向転換部60を有する。この隙間70は、蒸気タービン外部ケーシング20と高圧内部ケーシング30との間、及び、蒸気タービンケーシング20低圧内部ケーシング40との間の少なくとも一部分に延在する。低圧内部ケーシング40の下流側端部に、低圧内部ケーシング40の下流側端部と蒸気タービン外部ケーシング20との間の蒸気タービン領域をシールするためのシーリング枠80が形成されている。再熱器50は蒸気タービン外部ケーシング20の外側に配置されている。高圧内部ケーシング30及び低圧内部ケーシング40は、1つの共通の蒸気タービン外部ケーシング20内に別々の構成要素として設けられている。
【0034】
第1のプロセス蒸気入口部31が形成されている高圧内部ケーシング30の上流側端部には、高圧内部ケーシング30の下流側端部を部分的にシールするための高圧シーリングシェル34が配置されている。さらに、第2のプロセス蒸気入口部41が形成されている低圧内部ケーシング40の上流側端部には、低圧内部ケーシング40の上流側端部を部分的にシールするための低圧シーリングシェル44が配置されている。高圧シーリングシェル34及び低圧シーリングシェル44は、互いに隣接して配置されている。第1のプロセス蒸気出口部32が形成されている高圧内部ケーシング30の下流側端部には、高圧内部ケーシング30の下流側端部を少なくとも部分的にシールするための別の高圧シーリングシェル35が配置されている。高圧シーリングシェル34は、それを通って所定の漏洩流質量流量が流出し、この漏洩流質量流量を高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間の領域110に導くことができるように設計、製造されている。所定の蒸気圧力及び蒸気温度の場合には、このシーリングシェルないしシールギャップは、所定の漏洩流質量流量がそのシーリングシェルを通って流出するように設計することができる。高圧シーリングシェル34及び低圧シーリングシェル44は、高圧シーリングシェル34を通る漏洩流の質量流量が低圧シーリングシェル44を通る漏洩流の質量流量よりも大きくなるように、互いに調整されている。高圧シーリングシェル34を通る漏洩流の質量流量は、低圧シーリングシェル44を通る漏洩流の質量流量より少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%大きい。
【0035】
図2は、図1に基づく詳細部Zを示す。本発明による蒸気タービンを運転するための本発明による方法を、図2に基づき、図1及びその説明を参照して以下に説明する。
【0036】
軸100と高圧内部ケーシング30の上流側端部との間のギャップをシールするために、高圧内部ケーシング30のこの端部に高圧シーリングシェル34が配置されている。低圧内部ケーシング40の上流側端部と軸100との間のギャップをシールするために、低圧シーリングシェル44が配置されている。高圧シーリングシェル34及び低圧シーリングシェル44は、互いに隣接して配置されている。蒸気タービンの運転時には、最初に、プロセス蒸気がプロセス蒸気源10から第1のプロセス蒸気入口部31を通って高圧内部ケーシング30に導かれる。次いで、このプロセス蒸気は、第1のプロセス蒸気入口部31から第1のプロセス蒸気出口部32に導かれ、その後、第1のプロセス蒸気出口部32を通って高圧内部ケーシング30から出て、プロセス蒸気方向転換部60を経て隙間70に入り、再熱器50に送られる。ここで、プロセス蒸気は、蒸気タービン外部ケーシング20ないし蒸気タービン1を冷却するために、高圧内部ケーシング30及び低圧内部ケーシング40に沿って、隙間70を通って導かれる。プロセス蒸気が再熱器50内で、同一圧力下で、予め定められた温度まで加熱された後、この加熱された又は過熱されたプロセス蒸気は、再熱器50から第2のプロセス蒸気入口部41を通って低圧又は中圧の内部ケーシングに導かれる。そこから、プロセス蒸気は、同じ膨張方向のまま、もう一つの低圧内部ケーシング90に導かれる。そこで、プロセス蒸気はさらに膨張することができ、最終的に凝縮することができる。再熱器50に供給される冷却された蒸気が再熱プロセスにおける圧力損失により高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間のギャップに、及び、低圧内部ケーシング40に吸い込まれるのを防止するために、蒸気は第1の高圧内部ケーシング30から取り出され、仕事をすることなく、直接に再熱パラメータ値まで絞られ、この蒸気は直接、高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間のギャップに導かれる。
【0037】
その結果、低圧内部ケーシング40、及び、高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間にある軸100の領域110をそれぞれ局所的に加熱することができる。高圧内部ケーシング30から高温の蒸気を取り出すために、高圧内部ケーシング30内に開口部及びこれに対応するパイプを設けることができる。しかしながら、この蒸気は、特に簡単に、構造的な追加の努力なしに、この内部ケーシングから高圧シーリングシェル34を介して取り出すことができる。この目的のために、高圧シーリングシェル34のギャップはこれに対応して設計されなければならない。その場合、この高温の蒸気は、高圧内部ケーシング30から、第1の高圧シーリングシェル34と第2の低圧シーリングシェル44との間の中間空間に直接達することができる。高圧シーリングシェル34を介して流出するこの蒸気はほゞ生蒸気のパラメータを有するので、高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間の領域110を加熱するために使用することができる。これにより、ロータ動力学的に及びロータの機械的にプラスの温度分布が得られる。低圧内部ケーシング40の外側の圧力は、内側よりも高い。その理由は、再熱器50に至る隙間における圧力損失である。高圧内部ケーシング30から取り出され、高圧シーリングシェル34と低圧シーリングシェル44との間の領域110に導かれるプロセス蒸気は、こうして、低圧内部ケーシング40に吸い込まれ、低圧内部ケーシング40の加熱に役立つ。高圧シーリングシェル34及び低圧シーリングシェル44は、高圧シーリングシェル34を通って流出するプロセス蒸気が、低圧シーリングシェル44を通る漏洩流の質量流量より少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%大きいように、互いに調整される。この質量流量の差により、再熱器50に流入する低温の蒸気が高圧シーリングシェル34に侵入するのを妨げる阻止質量流量が生成される。
図1
図2