(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物、それを含む光重合開始剤、及びフォトレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20230417BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20230417BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230417BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C07D209/86 CSP
G03F7/031
G02B5/20 101
C08F2/50
(21)【出願番号】P 2021538079
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2019018657
(87)【国際公開番号】W WO2020139042
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】10-2018-0171703
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】514266091
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ ケミカル テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウォンジュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドゥクラク
(72)【発明者】
【氏名】オ,チョンリム
(72)【発明者】
【氏名】シン,スンリム
(72)【発明者】
【氏名】チョン,グン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ギョンリョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ファルギ
【審査官】大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-020998(JP,A)
【文献】特開2010-150215(JP,A)
【文献】特開2005-220297(JP,A)
【文献】特表2017-512886(JP,A)
【文献】特開2017-167399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物:
【化1】
化学式1において、
Aは、酸素または硫黄であり;
R
1は、(C1-C12)アルキルであり;
R
2及びR’
2は、それぞれ独立して、(C1-C12)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルコキシ(C1-C12)アルキルまたは(C3-C8)シクロアルキルであり;
R
3は、(C1-C12)アルキル、(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル、(C3-C20)シクロアルキルまたは(C3-C20)シクロアルキル(C1-C20)アルキルである。
【請求項2】
前記Aが、酸素または硫黄であり;
前記R
1が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシルまたはi-ヘキシルであり;
前記R
2及びR’
2が、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、i-デシル、n-ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、インデニル、フェナントリル、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシn-プロピル、ヒドロキシn-ブチル、ヒドロキシi-ブチル、ヒドロキシn-ペンチル、ヒドロキシi-ペンチル、ヒドロキシn-ヘキシル、ヒドロキシi-ヘキシル、ヒドロキシメトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピル、ヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、ヒドロキシエトキシエチル、ヒドロキシエトキシプロピル、ヒドロキシエトキシブチル、ヒドロキシエトキシペンチルまたはヒドロキシエトキシヘキシルであり;
前記R
3が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである、請求項1に記載のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物。
【請求項3】
前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物が、下記化学式2-1~2-14で表される化合物から選択される一つ以上である、請求項1に記載のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物。
【化2】
【化3】
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を含む光重合開始剤。
【請求項5】
(a)アルカリ可溶性樹脂;
(b)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物;及び
(c)請求項1から3のうちいずれか一項に記載のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を含む光重合開始剤を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物が、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.01~10重量%で含まれる、請求項5に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤が、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシムエステル系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される1種または2種以上をさらに含む、請求項5に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
前記フォトレジスト組成物が色材をさらに含む、請求項5に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
前記フォトレジスト組成物が色材をさらに含む、請求項7に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項10】
請求項5に記載のフォトレジスト組成物の硬化物を含む成形物。
【請求項11】
前記成形物が、アレイ平坦化膜、絶縁膜、カラーフィルタ、カラムスペーサ、オーバーコート、ブラックカラムスペーサまたはブラックマトリクスである、請求項10に記載の成形物。
【請求項12】
請求項10に記載の成形物を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物、それを含む光重合開始剤、及びフォトレジスト組成物に関し、より詳しくは、感度、耐熱性、耐化学性、及び硬化性に優れたカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物、これを含む光重合開始剤、及びフォトレジスト組成物に関する。
本出願は、2018年12月28日出願の韓国特許出願第10-2018-0171703号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物に使用される光重合開始剤の一般的な例としては、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、トリアジン誘導体、ビイミダゾール誘導体、アシルホスフィンオキシド誘導体、及びオキシムエステル誘導体など多くの種類が知られている。そのうちオキシムエステル誘導体は、紫外線を吸収しても色をほとんど呈さず、ラジカル発生効率が高く、フォトレジスト組成物材料との相溶性、及び安定性に優れるという利点を有している。しかし、従来のオキシム誘導体化合物は、光開始効率が低く、特にパターン露光工程時の感度が低いため、露光量または使用量を増やさなければならず、それにより生産量が低下するという問題がある。また、熱に対する安定性が低いため、ハードベーク(hard-bake)時にガス抜け(outgassing)が発生するという問題がある。
【0003】
したがって、光感度と耐熱性に優れた光重合開始剤が開発されれば、少量の光重合開始剤でも十分な感度を有するのでコストを節減でき、優れた感度のため露光量の低減と生産量の向上が可能になり、ガス抜けによる汚染を減少させることができる。
【0004】
しかし、従来の光重合開始剤を用いてパターンを形成する場合、パターン形成のための露光工程の際、光重合開始剤の光感度が低いことから光重合開始剤の使用量を増やすか又は露光量を増やさなければならず、それにより露光工程でマスクを汚染させ、また、高温架橋の際、光重合開始剤が分解した後に発生する副産物により歩留まりが低下するという欠点がある。さらに、露光量の増加によって露光工程の時間が長くなって生産量が低下し、ガス抜けによる汚染の問題などがあり、それらを解決するための努力が依然として求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第02/100903号パンフレット(2002.12.19)
【文献】特開2005-025169号公報(2005.01.27)
【文献】国際公開第07/071497号パンフレット(2007.06.28)
【文献】韓国特許公開2013-0124215号公報(2013.11.13)
【文献】韓国特許公開2013-0115272号公報(2013.10.21)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、感度、耐熱性、耐化学性、及び硬化性に優れたカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物、それを含む光重合開始剤、及びフォトレジスト組成物を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、前記フォトレジスト組成物の硬化物を含む成形物を提供することである。
また、本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記成形物を含むディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するための本発明の一態様によれば、下記具体例のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物が提供される。
【0008】
第1具体例は、下記化学式1で表されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物に関する。
【0009】
【0010】
化学式1において、
Aは、酸素または硫黄であり;
R1は、(C1-C12)アルキルであり;
R2及びR’2は、それぞれ独立して、(C1-C12)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルコキシ(C1-C12)アルキルまたは(C3-C8)シクロアルキルであり;
R3は、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキルまたは(C3-C20)シクロアルキル(C1-C20)アルキルである。
【0011】
第2具体例は、第1例において、
前記R1が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシルまたはi-ヘキシルであり;
前記R2及びR’2が、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、i-デシル、n-ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、インデニル、フェナントリル、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシn-プロピル、ヒドロキシn-ブチル、ヒドロキシi-ブチル、ヒドロキシn-ペンチル、ヒドロキシi-ペンチル、ヒドロキシn-ヘキシル、ヒドロキシi-ヘキシル、ヒドロキシメトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピル、ヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、ヒドロキシエトキシエチル、ヒドロキシエトキシプロピル、ヒドロキシエトキシブチル、ヒドロキシエトキシペンチルまたはヒドロキシエトキシヘキシルであり;
前記R3が、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物に関する。
【0012】
第3具体例は、第1具体例または第2具体例において、
前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物が、下記化学式2-1~2-14で表される化合物から選択されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物に関する。
【0013】
【0014】
【0015】
本発明の他の態様によれば、下記具体例の光重合開始剤が提供される。
第4具体例は、第1具体例~第3具体例のうちいずれか一例のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を含む光重合開始剤に関する。
本発明のさらに他の態様によれば、下記具体例のフォトレジスト組成物が提供される。
【0016】
第5具体例は、
(a)アルカリ可溶性樹脂;
(b)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物;及び
(c)上述した第1例~第3例のうちいずれか一例のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を含む光重合開始剤を含有するフォトレジスト組成物に関する。
【0017】
第6具体例は、第5具体例において、
前記フォトレジスト組成物100重量%に対し、前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物が0.01~10重量%で含まれるフォトレジスト組成物に関する。
【0018】
第7具体例は、第5具体例または第6具体例において、
前記光重合開始剤が、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシムエステル系化合物及びチオール系化合物からなる群より選択される1種または2種以上の化合物をさらに含むフォトレジスト組成物に関する。
【0019】
第8具体例は、第5具体例~第7具体例のうちいずれか一具体例において、
前記フォトレジスト組成物が色材をさらに含むフォトレジスト組成物に関する。
本発明のさらに他の態様によれば、下記具体例の成形物、及びそれを含むディスプレイ装置が提供される。
【0020】
第9具体例は、第5具体例~第8具体例のうちいずれか一具体例のフォトレジスト組成物の硬化物を含む成形物に関する。
【0021】
第10具体例は、第9具体例において、
前記成形物が、アレイ平坦化膜、絶縁膜、カラーフィルタ、カラムスペーサ、ブラックカラムスペーサまたはブラックマトリクスである成形物に関する。
【0022】
第11具体例は、第9具体例または第10具体例の成形物を含むディスプレイ装置に関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物をフォトレジスト組成物の光重合開始剤として使用すると、感度が非常に優れ、残膜率、パターン安定性、耐熱性、耐化学性、及び延性などの物性も優れるため、TFT-LCD製造工程中の露光、及びポストベーク(postbake)工程において、光重合開始剤から発生するガス抜けを最小化することで汚染を低減させることができ、それにより発生し得る不具合を最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳しく説明するが、本明細書や特許請求の範囲に使用される用語や単語は、一般的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者自身が発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に照らして、本発明の技術的思想に基づいて用語や単語の意味と概念を解釈しなければならない。
【0025】
したがって、本明細書に記載された実施例に示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想のすべてを具体化するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替可能な種々の均等物や変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0026】
本発明の一態様によるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物は、下記化学式1で表される。
【0027】
【0028】
化学式1において、
Aは、酸素または硫黄であり;
R1は、(C1-C12)アルキルであり;
R2及びR’2は、それぞれ独立して、(C1-C12)アルキル、(C6-C20)アリール、(C1-C12)アルコキシ、(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルキル、ヒドロキシ(C1-C12)アルコキシ(C1-C12)アルキルまたは(C3-C8)シクロアルキルであり;
R3は、(C1-C12)アルキル、(C6-C12)アリール、(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル、(C3-C20)シクロアルキルまたは(C3-C20)シクロアルキル(C1-C20)アルキルである。
【0029】
本明細書に記載される「アルキル」、「アルコキシ」及びその他の「アルキル」部分を含む置換体は、直鎖または分枝鎖の構造をすべて含み、「シクロアルキル」は、単環系だけでなく多環系炭化水素も含む。
【0030】
また、本明細書に記載される「アリール」は、芳香族炭化水素から一つの水素を除去することで誘導された有機基であって、単一または融合環を含み、多数のアリールが単一結合で連結されている構造も含む。
【0031】
また、本明細書に記載される「ヒドロキシアルキル」は、上述したアルキル基にヒドロキシ基が結合されたOH-アルキルを意味し、「ヒドロキシアルコキシアルキル」は前記ヒドロキシアルキル基にアルコキシ基が結合されたヒドロキシアルキル-O-アルキルを意味し、「アルケニル」はアルキルまたはアリール基が結合されたケトンを含む構造を意味する。
【0032】
また、本明細書に記載される「アリールアルキル」としてはベンジルなどが挙げられ、「シクロアルキル」としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられ、「シクロアルキルアルキル」としてはシクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロプロピルエチルなどが挙げられる。
【0033】
また、本明細書に記載される「(C1-C12)アルキル」は、炭素数1~12個のアルキルを意味し、望ましくは(C1-C10)アルキルであり、より望ましくは(C1-C6)アルキルであり得る。
【0034】
「(C6-C20)アリール」は、炭素数6~20個のアリールを意味し、望ましくは(C6-C18)アリールであり、より望ましくは(C6-C12)アリールであり得る。
【0035】
「(C1-C12)アルコキシ」は、炭素数1~12個のアルコキシを意味し、望ましくは(C1-C10)アルコキシであり、より望ましくは(C1-C4)アルコキシであり得る。
【0036】
「(C6-C12)アリール(C1-C12)アルキル」は、炭素数1~12個のアルキルのうち一つの水素が炭素数6~12個のアリール基に置換されたアルキルを意味し、望ましくは(C6-C10)アリール(C1-C10)アルキルであり、より望ましくは(C6-C8)アリール(C1-C6)アルキルであり得る。
【0037】
「ヒドロキシ(C1-C12)アルキル」は、炭素数1~12個のアルキルから一つの水素がヒドロキシに置換されたアルキルを意味し、望ましくはヒドロキシ(C1-C10)アルキルであり、より望ましくはヒドロキシ(C1-C6)アルキルであり得る。
【0038】
「ヒドロキシ(C1-C12)アルコキシ(C1-C12)アルキル」は、炭素数1~12個のアルキルから一つの水素が炭素数1~12個のアルコキシに置換され、さらに前記アルコキシから一つの水素がヒドロキシに置換された構造を意味し、望ましくはヒドロキシ(C1-C10)アルコキシ(C1-C10)アルキルであり、より望ましくはヒドロキシ(C1-C4)アルコキシ(C1-C6)アルキルであり得る。
【0039】
「(C3-C20)シクロアルキル」は、炭素数3~20個のシクロアルキルを意味し、望ましくは(C3-C10)シクロアルキル、より望ましくは(C3-C8)シクロアルキル、さらに望ましくは(C3-C6)シクロアルキルであり得る。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、化学式1において、
Aは、酸素または硫黄であり;
R1は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシルまたはi-ヘキシルであり;
R2及びR’2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、n-デシル、i-デシル、n-ドデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、インデニル、フェナントリル、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、i-プロピルオキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、t-ブトキシ、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシn-プロピル、ヒドロキシn-ブチル、ヒドロキシi-ブチル、ヒドロキシn-ペンチル、ヒドロキシi-ペンチル、ヒドロキシn-ヘキシル、ヒドロキシi-ヘキシル、ヒドロキシメトキシメチル、ヒドロキシメトキシエチル、ヒドロキシメトキシプロピル、ヒドロキシメトキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、ヒドロキシエトキシエチル、ヒドロキシエトキシプロピル、ヒドロキシエトキシブチル、ヒドロキシエトキシペンチルまたはヒドロキシエトキシヘキシルであり;
R3は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルであり得る。
【0041】
より具体的には、化学式1において、
前記Aは、酸素または硫黄であり;
R1は、メチル、エチルまたはn-プロピルであり;
R2及びR’2は、それぞれ独立して、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルであり;
R3は、メチル、エチル、n-プロピルまたはフェニルであり得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物としては、下記化学式2-1~2-14からなる群より選択される化合物が挙げられるが、下記化合物が本発明を限定することはない。
【0043】
【0044】
【0045】
本発明による前記化学式1で表されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物は、下記反応式1または反応式2に従って製造できるが、これらに限定されない。
【0046】
【0047】
【0048】
前記反応式1または2において、A及びR1~R3は前記化学式1における定義と同一であり、Xはハロゲンである。
【0049】
また、本発明の他の態様による光重合開始剤は、前記化学式1で表されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物から選択される1種以上を含む。
【0050】
また、本発明のさらに他の態様によるフォトレジスト組成物は、
(a)アルカリ可溶性樹脂;
(b)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物;及び
(c)前記化学式1のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物から選択される1種以上を含む光重合開始剤を含有する。
ここで、前記カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物は、光重合開始剤として含まれ得る。
【0051】
本発明のさらに他の態様によるフォトレジスト組成物は、パターン特性の調節に優れ、耐熱性や耐化学性などの薄膜物性に優れる。以下、本発明のフォトレジスト組成物に含まれる各成分を詳しく説明する。
【0052】
本発明において、「(メタ)アクリル」はアクリル及び/またはメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及び/またはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及び/またはメタクリル酸を意味する。
【0053】
(a)アルカリ可溶性樹脂
前記アルカリ可溶性樹脂としては、アクリル重合体または側鎖にアクリル不飽和結合を有するアクリル重合体を使用することができる。
【0054】
前記アクリル重合体は、アクリル系単量体の重合体(単独重合体または共重合体を含む)を意味し、このような単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノアルキルエステル、モノアルキルイタコネート、モノアルキルフマレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-メチルオキセタン-3-メチル(メタ)アクリレート、3-エチルオキセタン-3-メチル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
また、側鎖にアクリル不飽和結合を有するアクリル重合体は、カルボン酸を含むアクリル共重合体にエポキシ樹脂を付加反応させた共重合体であって、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルなどのカルボン酸を含むアクリルモノマーと、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどのモノマーとの2種以上を共重合して得たカルボン酸を含むアクリル共重合体に、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ樹脂を40~180℃の温度で付加反応させて得たバインダー樹脂を使用することができる。
【0056】
側鎖にアクリル不飽和結合を有するアクリル重合体のさらに他の例としては、エポキシ基を含むアクリル共重合体にカルボン酸を付加反応させた共重合体であって、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、2,3-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を含むアクリルモノマーと、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミドなどのモノマーとの2種以上を共重合して得たエポキシ基を含むアクリル共重合体に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステルなどのカルボン酸を含むアクリルモノマーを40~180℃の温度で付加反応させて得たバインダー樹脂を使用することができる。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、前記アルカリ可溶性樹脂は、パターン特性を調節し、耐熱性や耐化学性などの薄膜物性を付与するため、フォトレジスト組成物100重量%に対して3~50重量%、望ましくは5~45重量%、より望ましくは8~40重量%で使用することができる。
【0058】
前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算によって測定する)は2,000~300,000、望ましくは4,000~100,000であり得、分散度は1.0~10.0であり得る。
【0059】
(b)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、パターン形成時に光反応によって架橋されてパターンを形成する役割をし、高温加熱の際に架橋されて耐化学性や耐熱性を与える。
【0060】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.001~40重量%、望ましくは0.1~30重量%、より望ましくは1~20重量%で含むことができる。
【0061】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の添加量が多過ぎれば、架橋度が過剰に高くなってパターンの延性が低下するおそれが生じ得る。
【0062】
前記エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド基の数が2~14のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド基の数が2~14のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド基の数が2~14のプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、β-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのフタル酸ジエステル、β-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのトルエンジイソシアネート付加物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのように、多価アルコールとα,β-不飽和カルボン酸とをエステル化して得られる化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルアクリル酸付加物のような多価グリシジル化合物のアクリル酸付加物などが挙げられ、これらをそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
(c)光重合開始剤
本発明のフォトレジスト組成物においては、光重合開始剤として前記化学式1で表されるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物から選択される一つ以上を使用することができる。前記光重合開始剤は、透明性を高め、露光量を最小化するために、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.01~10重量%、望ましくは0.1~5重量%で使用することがより効果的である。
【0064】
(d)接着助剤
また、本発明のフォトレジスト組成物は、必要に応じて接着助剤としてエポキシ基またはアミン基を有するシリコーン系化合物をさらに含むことができる。
【0065】
前記エポキシ基またはアミン基を有するシリコーン系化合物は、ITO電極とフォトレジスト組成物との接着力を向上させ、硬化後の耐熱特性を増大させることができる。前記エポキシ基またはアミン基を有するシリコーン系化合物としては、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシブチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらをそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0066】
前記エポキシ基またはアミン基を有するシリコーン系化合物は、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.0001~3重量%で含むことができる。上記の範囲を下回ると、添加効果が得られず、上記の範囲を超えると、非露光部の現像特性が低下して、下部基材、ITO、またはガラス基板にスカム(scum)や残渣などが残るおそれがある。
【0067】
(e)その他の添加剤
本発明のフォトレジスト組成物は、必要に応じて光増感剤、熱重合防止剤、消泡剤、及びレベリング剤から選択される一つ以上の相溶性添加剤をさらに含むことができる。
【0068】
前記その他の添加剤は、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.1~10重量%で含むことができる。上記の範囲を下回ると、添加効果が得られず、上記の範囲を超えると、泡が過剰に発生するおそれがある。
【0069】
(f)溶媒
本発明のフォトレジスト組成物は、溶媒を加えて基板上にコーティングした後、マスクを用いて紫外線を照射し、アルカリ現像液で現像する方法でパターンを形成する。
【0070】
したがって、上述したフォトレジスト組成物の他の成分の含量と合わせて総量が100重量%になるように、溶媒の含量を調節可能であるため、溶媒の含量はフォトレジスト組成物の他の成分の含量によって多様に変更され得る。例えば、フォトレジスト組成物100重量%に対して10~95重量%の溶媒を添加して、粘度を1~50cpsの範囲になるように調節することが望ましい。
【0071】
前記溶媒としては、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤、及びその他の化合物との相溶性を考慮して、エチルアセテート、ブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエチルエーテル、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート(EEP)、エチルラクテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート(PGMEP)、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールメチルアセテート、ジエチレングリコールエチルアセテート、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジグリム(diglyme)、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタンから選択される溶媒をそれぞれ単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0072】
(g)その他光重合開始剤
本発明のフォトレジスト組成物は、光重合開始剤として上述したカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を単独で使用することもでき、チオキサントン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシムエステル系化合物、及びチオール系化合物からなる群より選択される1種または2種以上をさらに使用することもできる。
【0073】
このようなさらに加えられる光重合開始剤は、フォトレジスト組成物100重量%に対して0.01~5重量%で使用することができる。
【0074】
前記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、及び2,4-ジイソプロピルチオキサントンから選択される一つ以上を使用することができるが、これらに限定されない。
【0075】
前記アシルホスフィンオキシド系化合物としては、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドまたはこれらの組合せを使用することができるが、これらに限定されない。
【0076】
前記アセトフェノン系化合物としては、例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、及び2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンから選択される一つ以上を使用することができるが、これらに限定されない。
【0077】
前記ビイミダゾール系化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール及び2,2’-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾールから選択される一つ以上を使用することができるが、これらに限定されない。
【0078】
前記トリアジン系化合物としては、例えば、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、及び2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジンから選択される一つ以上を使用することができるが、これらに限定されない。
【0079】
前記O-アシルオキシムエステル系化合物としては、例えば、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(O-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチル-4-テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、及び2-(アセトキシイミノ)-1-(9,9’-ジエチル-9H-フルオロ-2-イル)プロパン-1-オンから選択される一つ以上を使用することができるが、これらに限定されない。
【0080】
前記チオール系化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)などを使用することができるが、これらに限定されない。
【0081】
(h)色材
本発明の一実施形態によるフォトレジスト組成物は、カラーフィルタまたはブラックマトリクス形成用レジストとして使用するために含まれる色材をさらに含むことができる。
【0082】
前記色材としては、多様な顔料を使用することができ、例えば、レッド、グリーン、ブルー、減色混合系のシアン、マゼンダ、イエロー、及びブラック顔料などが挙げられ、より具体的に使用可能な顔料としては、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、83、86、93、109、110、117、125、137、139、147、148、153、154、166、168、C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、C.I.ピグメントレッド9、97、122、123、149、168、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26、C.I.ピグメントブラック7、及びチタンブラックなどが挙げられる。
【0083】
前記色材は、フォトレジスト組成物100重量%に対して5~50重量%で含むことができる。上記の範囲を下回ると、遮光性が低下し、上記の範囲を超えると、露光不良や硬化不良になるおそれがある。
【0084】
本発明の一実施形態によるフォトレジスト組成物は、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬などの公知の手段で、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、金属、紙、プラスチックなどの支持体上に適用することができる。また、まずはフィルムなどの支持体上に適用した後、他の支持体上に転写することができ、その適用方法に制限はない。
【0085】
本発明のさらに他の態様によれば、上述したフォトレジスト組成物の硬化物を含む成形物が提供される。
【0086】
前記成形物としては、アレイ平坦化膜、絶縁膜、カラーフィルタ、カラムスペーサ、オーバーコート、ブラックカラムスペーサまたはブラックマトリクスなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0087】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前記成形物を含む液晶表示素子、OLEDなどの多様なディスプレイが提供される。
【実施例】
【0088】
以下、本発明の理解を助けるため、本発明の代表化合物を実施例および比較例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は他の多くの形態に変形でき、本発明の範囲は後述する実施例に限定されない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより詳細に説明するために提供されるものである。
【0089】
<カルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物の製造>
実施例1
【化9】
【0090】
第1段階: 9-(4-メトキシフェニル)-カルバゾールの合成
反応器に、トリエチレングリコールジメチルエーテル(40ml)を入れ、そこにカルバゾール(30g,170.5mmol)、4-ヨードアニソール(49.8g,204.3mmol)、粉末状の銅(11.34g,180mmol)、及び炭酸カリウム(58.8g,423.2mmol)を添加した後、200℃で20時間撹拌した。反応完了後、常温に冷却してエチルアセテート(300ml)を添加した後、30分間撹拌して結晶化した。該溶液を濾過して収得した固体を再びアセトン(300ml)と塩化メチレン(300ml)でそれぞれ30分間撹拌してから濾過した後、水で洗浄した。
得られた固体は不純物であるため捨て、濾液を採取して、濾液中の有機溶媒を40℃で減圧蒸留し、生成物を一日冷蔵保管して生成物を沈澱させた。その後、石油エーテル(約200ml)を添加して濾過し、生成された固体をアセトンを用いて再結晶して目的化合物である9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール(40.7g,87.4%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):3.93(3H,s),7.12(2H,d),7.28(2H,t),7.33(2H,d),7.41(2H,t),7.46(2H,d),8.15(2H,d)
MS(m/e): 273
【0091】
第2段階: 1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)の合成
塩化アルミニウム(13.17g,98.01mmol)を塩化メチレン(100ml)に入れ、-10℃以下に冷却して10分間撹拌した後、前記第1段階で収得した9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール(10.0g,36.3mmol)を入れて30分間撹拌した。塩化プロピオニル(8.7ml,98.01mmol)を塩化メチレン(25ml)に溶かした溶液を50分間滴加した後、30分間撹拌した。反応溶液を氷(300g)と水(300ml)からなる氷水中で30分間撹拌してから放置して、水層を除去し、有機層は重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留して目的化合物である1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)(9.7g,94.3%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):1.31(6H,t),3.17(4H,q),3.93(3H,s),7.15(2H,d),7.33(2H,d),7.43(2H,d),8.11(2H,d),8.85(2H,d)
MS(m/e): 385
【0092】
第3段階: 1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)-2,2’-ビスオキシムの合成
前記第2段階で収得した1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)(6.0g,18.2mmol)、テトラヒドロフラン(120ml)、及び35%の濃塩酸(1.4ml)を反応器に入れて30分間撹拌した。亜硝酸イソペンチル(7.37ml,72.8mmol)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶かした溶液を30分間滴加した後、50分間撹拌した。その後、反応物をエチルアセテートで抽出し、重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。抽出した有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留して不純物を含んだ生成物を収得した。得られた不純物を含んだ生成物を塩化メチレンを用いて3回洗浄し、生成物をカラム(MC:アセトン=100:1)で分離して目的化合物である1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)-2,2’-ビスオキシム(1.81g,26.3%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):2.26(6H,s),3.93(3H,s),7.14(2H,d),7.32(2H,d),7.41(2H,d),8.1(2H,d),8.85(2H,d)
MS(m/e): 443
【0093】
第4段階: 1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)2,2’-ビスオキシム(O-アセテート)の合成
前記第3段階で収得した1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)-2,2’-ビスオキシム(0.5g,1.4mmol)をエチルアセテートに入れて-10℃以下に冷却した後、トリエチルアミン(0.31ml,2.8mmol)を滴加して10分間撹拌した。続いて、塩化アセチル(0.16ml,2.8mmol)をエチルアセテート(1ml)に溶かした溶液を10分間滴加し、30分間撹拌した。反応溶液を塩化メチレンで抽出し、重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。抽出した有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留し、生成物をカラム(MC:アセトン200:1)で分離して目的化合物である1,1’-(9-(4-メトキシフェニル)-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(プロパン-1-オン)-2,2’-ビスオキシム(O-アセテート)(0.16g,28.1%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):2.31(6H,s),2.38(6H,s),3.94(3H,s),7.15(2H,d),7.35(2H,d),7.42(2H,d),8.24(2H,d),9.00(2H,d)
MS(m/e): 527
分解点: 261.4℃
【0094】
【0095】
第1段階: 9-(4-メチルチオフェノール)-カルバゾールの合成
反応器に、窒素雰囲気下でトリエチレングリコールジメチルエーテル(40ml)を入れ、そこにカルバゾール(30g,170.5mmol)、4-ヨードチオアニソール(53.8g,204.3mmol)、粉末状の銅(11.34g,180mmol)、及び炭酸カリウム(58.8g,423.2mmol)を添加した後、90℃で4日間還流反応させた。反応終了後、常温に冷却した。続いて、反応溶液をビーカーに移し、水(300ml)と塩化メチレン(300ml)をビーカーに入れた後、1時間撹拌した。大きさ2~3cmのシリカゲル(40~400メッシュ)が入った濾過器で前記ビーカー溶液を濾過して溶解されていない不純物を除去した。その後、濾過液を塩化メチレン(300ml)で3回抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥して濾過し、それを減圧蒸留した後、再結晶(塩化メチレン:ヘキサン=1:1)して目的化合物である9-(4-メチルチオフェノール)-カルバゾール(10.3g,66.4%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):1.31(6H,t),3.12(6H,q),3.89(3H,s),7.13(2H,d),7.34(2H,d),7.46(2H,d),8.12(2H,d),8.88(2H,d)
MS(m/e): 289
【0096】
第2段階~第3段階: 1-(9-(4-(メチルチオ)フェニル)-6-プロピオニル-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オンの合成
塩化アルミニウム(6.85g,49.00mmol)を塩化メチレン(100ml)に入れ、-10℃以下に冷却して10分間撹拌した後、前記第1段階で収得した9-(4-メチルチオフェノール)-カルバゾール(10.0g,36.3mmol)を入れて30分間撹拌した。塩化プロピオニル(4.47ml,49.00mmol)を塩化メチレン(25ml)に溶かした溶液を50分間滴加した後、30分間撹拌した。再び塩化アルミニウム(6.85g,49.00mmol)を入れて10分間撹拌した後、塩化ペンタノイル(6.07ml,49.00mmol)を塩化メチレン(25ml)に溶かした溶液を50分間滴加し、30分間撹拌した。反応溶液を氷(300g)と水(300ml)からなる氷水中で30分間撹拌してから放置して、水層を除去し、有機層は重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。その後、有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留して目的化合物である1-(9-(4-(メチルチオ)フェニル)-6-プロピオニル-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オン(7.9g,72.6%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):2.62(6H,s),3.97(3H,s),7.13(2H,d),7.35(2H,d),7.43(2H,d),7.43(2H,d),8.01(2H,d),8.8(2H,d)
MS(m/e): 429
【0097】
第4段階: 2-(ヒドロキシイミノ)-1-(6-(2-(ヒドロキシイミノ)プロパノイル)-9-(4-(メチルチオ)フェニル)-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オンの合成
前記第2段階~第3段階で収得した1-(9-(4-(メチルチオ)フェニル)-6-プロピオニル-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オン(6.0g,18.2mmol)、テトラヒドロフラン(120ml)、及び35%の濃塩酸(1.4ml)を反応器に入れて30分間撹拌した。亜硝酸イソペンチル(7.37ml,72.8mmol)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶かした溶液を30分間滴加した後、50分間撹拌した。続いて、反応物をエチルアセテートで抽出し、重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。抽出した有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留して不純物を含んだ生成物を収得した。得られた不純物を含んだ生成物を塩化メチレンを用いて3回洗浄し、生成物をカラム(MC:アセトン=100:1)で分離して目的化合物である2-(ヒドロキシイミノ)-1-(6-(2-(ヒドロキシイミノ)プロパノイル)-9-(4-(メチルチオ)フェニル)-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オン(1.68g,24.8%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):2.26(6H,s),3.90(6H,s),7.18(2H,d),7.22(2H,d),7.46(2H,d),8.01(2H,d),8.85(2H,d)
MS(m/e): 487
【0098】
第5段階: 2-(アセトキシイミノ)-1-(6-(2-(アセトキシイミノ)プロパノイル)-9-(4-(メチルチオ)フェニル)-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オンの合成
前記第4段階で収得した2-(ヒドロキシイミノ)-1-(6-(2-(ヒドロキシイミノ)プロパノイル)-9-(4-(メチルチオ)フェニル)-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オン(0.5g,1.4mmol)をエチルアセテートに入れて-10℃以下に冷却した後、トリエチルアミン(0.31ml,2.8mmol)を滴加して10分間撹拌した。続いて、塩化アセチル(0.16ml,2.8mmol)をエチルアセテート(1ml)に溶かした溶液を10分間滴加し、30分間撹拌した。反応溶液を塩化メチレンで抽出し、重炭酸ナトリウム水溶液で十分に洗浄した。抽出した有機層を無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、濾過した後、減圧蒸留して、生成物をカラム(MC:アセトン200:1)で分離して目的化合物である2-(アセトキシイミノ)-1-(6-(2-(アセトキシイミノ)プロパノイル)-9-(4-(メチルチオ)フェニル)-カルバゾール-3-イル)ペンタン-1-オン(0.15g,26.1%)を収得した。
1H NMR(δppm,CDCl3,500MHz):2.31(6H,s),2.38(6H,s),3.94(3H,s),7.04(2H,d),7.33(2H,d),7.42(2H,d),9.0062H,d)
MS(m/e): 571
分解点:268.3℃
【0099】
実施例3~実施例14
実施例1または実施例2と同じ条件で、それぞれ下記表1および表2に記載された組成のカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物を合成した。
【0100】
【0101】
【0102】
<アルカリ可溶性樹脂の製造>
製造例1: アクリル重合体(a-1)の製造
500mLの重合容器にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)200mLとアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.5gを添加した後、メタクリル酸、グリシジルメタクリル酸、メチルメタクリル酸、及びジシクロペンタニルアクリル酸をそれぞれ20:20:40:20のモル比で、アクリルモノマーの固形分が40重量%となるように添加した後、窒素雰囲気下、70℃で5時間撹拌して重合させてアクリル重合体(a-1)を製造した。このようにして製造された重合体(a-1)の重量平均分子量は25,000、分散度は1.8であった。
【0103】
製造例2: アクリル重合体(a-2)の製造
500mLの重合容器にPGMEA 200mLとAIBN 1.0gを添加した後、メタクリル酸、スチレン、メチルメタクリル酸、及びシクロヘキシルメタクリル酸をそれぞれ40:20:20:20のモル比で、アクリルモノマーの固形分が40重量%となるように添加した後、窒素雰囲気下、70℃で5時間撹拌して重合させて共重合体を合成した。続いて、反応器にN,N-ジメチルアニリン0.3g、及び全体単量体の固形分100モルを基準に20モルになるようにグリシジルメタクリル酸を添加した後、100℃で10時間撹拌して側鎖にアクリル不飽和結合を有するアクリル重合体(a-2)を製造した。このようにして製造されたアクリル重合体(a-2)の重量平均分子量は20,000、分散度は2.0であった。
【0104】
製造例3: アクリル重合体(a-3)の製造
500mLの重合容器にPGMEA 200mLとAIBN 1.0gを添加した後、グリシジルメタクリル酸、スチレン、メチルメタクリル酸、及びシクロヘキシルメタクリル酸をそれぞれ40:20:20:20のモル比で、アクリルモノマーの固形分が40重量%となるように添加した後、窒素雰囲気下、70℃で5時間撹拌して重合させて共重合体を合成した。続いて、反応器にN,N-ジメチルアニリン0.3g、及び全体単量体の固形分100モルを基準に20モルになるようにアクリル酸を添加した後、100℃で10時間撹拌して側鎖にアクリル不飽和結合を有するアクリル重合体(a-3)を製造した。このようにして製造されたアクリル重合体(a-3)の重量平均分子量は18,000、分散度は1.9であった。
【0105】
<フォトレジスト組成物の製造>
実施例15~実施例30: フォトレジスト組成物の製造
紫外線遮断膜と撹拌機を備える反応混合槽に下記表3に記載された成分と含量に従って、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、本発明の光重合開始剤、及びFC-430(3M社製のレベリング剤)を順次に添加し、常温(23℃)で撹拌した後、組成物が総100重量%になるように溶媒としてPGMEAを加えて実施例15~実施例30のフォトレジスト組成物を製造した。
【0106】
<着色フォトレジスト組成物の製造>
実施例31~実施例32: 着色フォトレジスト組成物の製造
下記表3に記載されたように、固形分25重量%でPGMEAに分散したカーボンブラック分散液50重量%を加えたことを除き、実施例15と同じ方法で実施例31の着色フォトレジスト組成物を製造した。また、固形分25重量%でPGMEAに分散したピグメントレッド177(P.R.177)の分散液50重量%を加えたことを除き、実施例15と同じ方法で実施例32の着色フォトレジスト組成物を製造した。
【0107】
実施例33
下記表3に記載されたように、光重合開始剤として、実施例1の化合物とともに下記化学式3で表される化合物を混合使用したことを除き、実施例15と同じ方法でフォトレジスト組成物を製造した。
【0108】
【0109】
<成分>
(a)アルカリ可溶性樹脂: 製造例1~3のアクリル重合体(a-1)~(a-3)
(b)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物
b-1: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
b-2: ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
b-3: ペンタエリスリトールトリアクリレート
b-4: ペンタエリスリトールトリメタクリレート
b-5: トリメチロールプロパントリアクリレート
b-6: エチレングリコールジアクリレート
b-7: ビスフェノール-Aジグリシジルエーテルアクリル酸付加物
b-8: トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルアクリル酸付加物
(c)光重合開始剤: 実施例1~実施例14で製造されたカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物
(e)レベリング剤: FC-430(3M社製のレベリング剤)
(h)色材
h-1: カーボンブラック(固形分25重量%)
h-2: ピグメントレッド177(P.R.177)(固形分25重量%)
【0110】
【0111】
比較例1
光重合開始剤として実施例1の化学式2-1で表される化合物の代りに下記化学式4で表される化合物を使用したことを除き、実施例15と同じ方法でフォトレジスト組成物を製造した。
【0112】
【0113】
比較例2
光重合開始剤として実施例1の化学式2-1で表される化合物の代りに下記化学式5で表される化合物を使用したことを除き、実施例15と同じ方法でフォトレジスト組成物を製造した。
【0114】
【0115】
<フォトレジスト組成物の評価>
実施例15~実施例33、比較例1、及び比較例2で製造したフォトレジスト組成物の評価はガラス基板上で行い、フォトレジスト組成物の感度、残膜率、パターン安定性、耐化学性、及び延性などの性能を測定して、その結果を下記表4に示した。
1)感度
ガラス基板上にフォトレジストをスピンコーティングして100℃で1分間ホットプレートで乾燥した後、ステップマスクを用いて露光し、0.04%KOH水溶液で現像した。ステップマスクパターンが初期厚さに対して80%の厚さを維持する露光量を、感度として評価した。
【0116】
2)残膜率
フォトレジスト組成物を基板上にスピンコーターで塗布した後、100℃で1分間プリベーク(prebake)し、365nmで露光させた後、230℃で20分間ポストベーク(postbake)して、レジスト膜のポストベーク前後の厚さの比率(%)を測定した。
【0117】
3)パターン安定性
フォトレジストパターンを形成したシリコンウェハーをホールパターンの垂直方向から切断し、パターンの断面方向を電子顕微鏡で観察した。パターンの側壁が基板に対して55度以上の角度で起立し、レジスト膜が減少しなかったものを「良好」とし、レジスト膜の減少が認められたものを「膜減」と判定した。
【0118】
4)耐化学性
フォトレジスト組成物を基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、プリベークやポストベークなどの工程を経て形成されたレジスト膜を、ストリッパー(stripper)溶液に40℃で10分間浸漬し、レジスト膜の透過率、及び厚さの変化の有無を観察した。透過率および厚さの変化が2%以下の場合を「良好」とし、透過率および厚さの変化が2%を超えれば「不良」と判定した。
【0119】
5)延性
フォトレジスト組成物を基板上にスピンコーティングした後、100℃で1分間プリベークし、フォトレジストの感度で露光させた後、KOH水溶液で現像して20μm×20μmのパターンを形成した。形成されたパターンを230℃で20分間ポストベークして架橋させ、該パターンの延性をナノインデンター(nano indentor)を用いて測定した。ナノインデンターでの測定は5gfの負荷で行い、総変位量が500nm以上であれば「良好」、500nm未満であれば「不良」と判定した。
【0120】
【0121】
表3および表4より、本発明によるカルバゾールマルチβ-オキシムエステル誘導体化合物は、分解点がほとんど240℃以上と熱安定性が高く、フォトレジスト組成物の光重合開始剤として使用する際、少量でも感度が格段に優れ、残膜率、パターン安定性、耐化学性、及び延性などの物性にも優れることが確認できた。したがって、TFT-LCD製造工程中の露光およびポストベーク工程において、光重合開始剤から発生するガス抜けを最小限にすることで汚染を低減させることができ、それにより発生し得る不具合を最小化することができる。