(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】変圧器及び変圧器の加工プロセス
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20230417BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H01F30/10 H
H01F30/10 R
H01F41/12 E
(21)【出願番号】P 2021559672
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2020093090
(87)【国際公開番号】W WO2021098181
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】201911149325.5
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517112122
【氏名又は名称】陽光電源股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】荘 加才
(72)【発明者】
【氏名】徐 君
(72)【発明者】
【氏名】劉 威
(72)【発明者】
【氏名】蘇 金国
【審査官】森岡 俊行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-032829(JP,A)
【文献】特開平06-314626(JP,A)
【文献】実公昭40-009227(JP,Y1)
【文献】特開昭52-068918(JP,A)
【文献】特開平08-222453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された2つのコイルユニットを含む変圧器であって、前記コイルユニットは、内側コイル(6)、及び前記内側コイル(6)の外側に配置された外側コイル(4)を含み、前記外側コイル(4)の外側は外側コイル半導電性層(3)で包まれ、前記内側コイル(6)の外側は内側コイル半導電性層(5)で包まれ、前記コイルユニットには、絶縁層(2)が一体キャスティングさ
れ、
前記外側コイル半導電性層(3)の片側は、前記絶縁層(2)の外面に接していることを特徴とする変圧器。
【請求項2】
前記絶縁層(2)の外側には、外面半導電性層(1)が積層され、前記外面半導電性層(1)の端部は、前記絶縁層(2)の内部に予め埋め込まれ、且つ、前記外面半導電性層(1)の端部には、等電位体(11)が設けられ、前記等電位体(11)は、前記絶縁層(2)の内部に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項3】
前記等電位体(11)は、ラッパ口構造または曲率円構造である、ことを特徴とする請求項2に記載の変圧器。
【請求項4】
鉄心(8)をさらに含み、前記内側コイル半導電性層(5)と前記鉄心(8)との間に間隔があいて、気流通路(7)を形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項5】
前記絶縁層(2)に固定接続された等電位キャビティ(10)をさらに含み、前記等電位キャビティ(10)内には、内面半導電性層(9)が設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項6】
前記等電位キャビティ(10)と前記絶縁層(2)とは一体成形された構成である、ことを特徴とする請求項5に記載の変圧器。
【請求項7】
前記変圧器は、ソリッドステート変圧器である、ことを特徴とする請求項1に記載の変圧器。
【請求項8】
前記絶縁層(2)は、前記内側コイル半導電性層(5)の内部にキャスティングされた第1の絶縁層と、前記外側コイル半導電性層(3)の内部にキャスティングされた第2の絶縁層と、前記内側コイル半導電性層(5)の外面及び前記外側コイル半導電性層(3)の外面にキャスティングされた第3の絶縁層とを含む、ことを特徴とする請求項2または3に記載の変圧器。
【請求項9】
前記絶縁層(2)は、一体成形されたキャスティング構造であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の変圧器。
【請求項10】
変圧器の加工プロセスであって、
内側コイル(6)の外側を内側コイル半導電性層(5)で包むステップA1と、
外側コイル(4)の外側を外側コイル半導電性層(3)で包み、前記外側コイル(4)を前記内側コイル半導電性層(5)の外側に配置して、コイルユニットを形成するステップA2と、
並設された2つのコイルユニットを配置し、コイルユニットに絶縁媒体をキャスティングして、絶縁層(2)を形成するステップA3
であって、前記外側コイル半導電性層(3)の片側は、前記絶縁層(2)の外面に接しているステップA3と、
鉄心(8)を前記コイルユニットに取り付け、前記鉄心(8)と前記内側コイル半導電性層(5)の間に間隔をあけて、気流通路(7)を形成するステップA4と、を含む、ことを特徴とする変圧器の加工プロセス。
【請求項11】
前記ステップA3は、
前記内側コイルの前記内側コイル半導電性層で包まれた位置に、第1の絶縁媒体をキャスティングし、前記外側コイルの前記外側コイル半導電性層で包まれた位置に、第2の絶縁媒体をキャスティングするステップA31と、
前記内側コイル半導電性層の外面と前記外側コイル半導電性層の外面に、第3の絶縁媒体をキャスティングするステップA32とを含み、
前記第1の絶縁媒体、前記第2の絶縁媒体及び前記第3の絶縁媒体は、前記絶縁層を形成する、ことを特徴とする請求項10に記載の変圧器の加工プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年11月21日に中国特許庁に提出された、出願番号が201911149325.5であり、発明の名称が「変圧器及び変圧器の加工プロセス」である中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容を引用により本出願に組み込む。
【0002】
本発明は、電化製品加工の技術分野に関し、特に、エポキシキャスト変圧器に関する。本発明はさらに、変圧器の加工プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の配電網において、高圧電力は、配電用変圧器によって降圧された後、使用するように各負荷に供給される。配電用変圧器は、その非常に重要な部品である。伝統的な配電用変圧器には、例えば、体積が大きい、重量が重い、無負荷損失が大きい、故障を自動に隔離できない、出力が配電網に干渉されやすいなど多くの欠点が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変圧器の加工過程では、鉄心、巻線、絶縁パッドなどを、いずれもキャスティング材料に組み込む必要がある。各種材料の熱膨張係数の差が大きいため、応用の過程において、熱衝撃によってキャスティング材料の割れが生じ、絶縁不良になる恐れがある。鉄心は、一般に、剛性構造であるため、キャスティング材料で確実に硬化することが困難であり、応用において、同様に、キャスティング材料の割れを生じさせる恐れがある。
【0005】
その同時に、変圧器において、1次側及び2次側は高電圧に耐えられることを保証するために、空気中の電界強度がその破壊電圧よりも小さなければならず、そのため、1次側と2次側との間の距離が大きくなり、システムの電力密度にある程度影響する。同時に、1次側と2次側との間の距離が大きすぎると、磁束漏れが大きくなりすぎて、損失がひどくなり、不規則なコイル構造によって、局所電界強度が高くなりすぎて、変圧器の使用の安全性が低くなる。
【0006】
従って、如何に変圧器の使用の安全性を高めるかということは、当業者によって緊急に解決されるべき技術的問題である。
【0007】
本発明の目的は、使用の安全性が高められた変圧器を提供することである。本発明の別の目的は、変圧器の加工プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、並設された2つのコイルユニットを含む変圧器を提供し、前記コイルユニットは、内側コイル、及び前記内側コイルの外側に配置された外側コイルを含み、前記外側コイルの外側は、外側コイル半導電性層で包まれ、前記内側コイルの外側は、内側コイル半導電性層で包まれ、前記コイルユニットには、絶縁層が一体キャスティングされる。
【0009】
好ましくは、前記絶縁層の外側には、外面半導電性層が積層され、前記外面半導電性層の端部は、前記絶縁層の内部に予め埋め込まれ、且つ、前記外面半導電性層の端部には、等電位体が設けられ、前記等電位体は、前記絶縁層の内部に位置する。
【0010】
好ましくは、前記等電位体は、ラッパ口構造、または曲率円構造である。
【0011】
好ましくは、鉄心をさらに含み、前記内側コイル半導電性層と前記鉄心との間に間隔があいて、気流通路を形成する。
【0012】
好ましくは、前記絶縁層に固定接続された等電位キャビティをさらに含み、前記等電位キャビティ内には、内面半導電性層が設けられる。
【0013】
好ましくは、前記等電位キャビティと前記絶縁層とは、一体成形された構成である。
【0014】
好ましくは、前記変圧器は、ソリッドステート変圧器である。
【0015】
好ましくは、前記絶縁層は、前記内側コイル半導電性層の内部にキャスティングされた第1の絶縁層と、前記外側コイル半導電性層の内部にキャスティングされた第2の絶縁層と、前記内側コイル半導電性層の外面及び前記外側コイル半導電性層の外面にキャスティングされた第3の絶縁層とを含む。
【0016】
好ましくは、前記絶縁層は、一体成形されたキャスティング構造である。
【0017】
変圧器の加工プロセスであって、
内側コイルの外側を内側コイル半導電性層で包むステップA1と、
外側コイルの外側を外側コイル半導電性層で包み、外側コイルを前記内側コイル半導電性層の外側に配置して、コイルユニットを形成するステップA2と、
並設された2つのコイルユニットを配置して、コイルユニットに絶縁媒体をキャスティングして、絶縁層を形成するステップA3と、
鉄心を前記コイルユニットに取り付け、前記鉄心と前記内側コイル半導電性層との間に間隔をあけて、気流通路を形成するステップA4と、を含む。
【0018】
好ましくは、前記ステップA3は、
前記内側コイルの前記内側コイル半導電性層で包まれた位置に、第1の絶縁媒体をキャスティングし、前記外側コイルの前記外側コイル半導電性層で包まれた位置に、第2の絶縁媒体をキャスティングするステップA31と、
前記内側コイル半導電性層の外面と前記外側コイル半導電性層の外面に、第3の絶縁媒体をキャスティングするステップA32とを、含み、
前記第1の絶縁媒体、前記第2の絶縁媒体及び前記第3の絶縁媒体は、前記絶縁層を形成する。
【0019】
上記の技術案において、本発明によって提供された変圧器は、並設された2つのコイルユニットを含み、コイルユニットは、内側コイル、及び内側コイルの外側に配置された外側コイルを含み、外側コイルの外側は、外側コイル半導電性層で包まれ、内側コイルの外側は、内側コイル半導電性層で包まれ、コイルユニットには、絶縁層が一体キャスティングされる。
【0020】
以上の説明から分かるように、本出願によって提供された変圧器において、外側コイル半導電性層と内側コイル半導電性層を配置することで、不規則なコイル構造に起因する、局所電界強度が高すぎるという問題を効果的に改善することができる。従って、本出願によって提供された変圧器の安全性は高められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の実施例または従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下では、実施例または従来技術の記載に使用する必要のある図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の記載の図面は、本発明の実施例のみであり、当業者にとって、創造的な作業なしに、提供された図面に基づいて、他の図面を取得することができる。
【
図1】本発明の実施例によって提供された変圧器の構成模式図である。
【
図5】本発明の実施例によって提供される、別の変圧器の構成模式図である。
【
図9】本発明の実施例によって提供される、さらに別の変圧器の構成模式図である。
【
図12】本発明の実施例によって提供される、等電位体の取り付け位置図である。
【
図13】本発明の実施例によって提供される、別の等電位体の取り付け位置図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、変圧器を提供することを核心とし、本出願によって提供された変圧器の使用の安全性は高められる。本発明は、変圧器の加工プロセスを提供することを、別の核心とする。
【0023】
当業者が本発明の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面及び実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
【0025】
具体的な実施形態において、本発明の具体的な実施例によって提供された変圧器は、鉄心8、及び並設された2つのコイルユニットを含む。コイルユニットは、内側コイル6、及び内側コイル6の外側に配置された外側コイル4を含み、外側コイル4の外側は、外側コイル半導電性層3で包まれる。内側コイル6の外側は、内側コイル半導電性層5で包まれる。内側コイル半導電性層5は、内側コイル6の不規則な構造に起因する、局所電界強度が高すぎるという問題を効果的に改善することができる。好ましくは、一体型キャスティングのプロセス中の、部品の位置決め及び固定を容易にするために、外側コイル半導電性層3の片側は絶縁層2の外面に接している。
【0026】
コイルユニットには、絶縁層2が一体キャスティングされる。変圧器の高電界強度は、キャスティングされた絶縁層2内に拘束される。具体的には、絶縁層2は、一体成形されたキャスティング構造であり、即ち、内側コイル、外側コイル、外側コイル半導電性層3及び内側コイル半導電性層5は、同時に絶縁されてキャスティングされる。
【0027】
絶縁層2は、内側コイル半導電性層5の内部にキャスティングされた第1の絶縁層と、外側コイル半導電性層3の内部にキャスティングされた第2の絶縁層と、内側コイル半導電性層5の外面及び外側コイル半導電性層3の外面にキャスティングされた第3の絶縁層とを含む。即ち、内側コイルのワイヤパッケージング、外側コイルのワイヤパッケージング、及び外部絶縁構造は、それぞれキャスティングされる。好ましくは、第1の絶縁層、第2の絶縁層及び第3の絶縁層の材質は同じである。
【0028】
半導電性材料と絶縁層の絶縁性キャスティング材料は、優れた浸潤性を有するため、電界強度を絶縁層2に集中することができ、一般的なキャスティング材料の破壊電界強度はいずれも20kV/mmより大きく、1次側と2次側との間の距離を効果的に減少させ、電力密度を向上させ、磁束漏れを低減させることができる。
【0029】
具体的に、本出願によって提供された変圧器は、具体的には、ソリッドステート変圧器であってもよい。
【0030】
具体的に、
図3及び
図4に示すように、外側コイル4は、内側コイル6の外側に配置される。別の形態として、
図5~
図8に示すように、内側コイル6と外側コイル4は、上下構造であってもよく、上下構造の内側コイル6と外側コイル4は、一体的にまたは別々にキャスティングされてもよく、この実施例の図示は、別々にキャスティングされる模式図である。
【0031】
具体的な実施形態において、一体型キャスティングのプロセス中の部品の位置決め及び固定を容易にするために、
図3に示すように、2つの外側コイル半導電性層3は並設される。
【0032】
具体的に、
図2に示すように、内側コイル半導電性層5の外側コイル4に近い側、及び内側コイル半導電性層5の上下両端には、いずれも絶縁層2がキャスティングされる。具体的な実施形態において、絶縁層2の外側には、外面半導電性層1が積層される。
【0033】
内側コイル6、内側コイル半導電性層5、外側コイル4及び外側コイル半導電性層3は、一体型キャスティングによって、全体として形成される。一体型キャスティング材料は、これらの材料の周囲に充填され、一体型キャスティングの絶縁層2は、1回または複数回のキャスティングによって形成されてもよい。内側コイル半導電性層5及び外面半導電性層1は、溶射、含浸、プレエンベデッド一体型キャスティングなどの手段により、一体型キャスティングのコイルに確実に接続されることができる。
【0034】
具体的に、鉄心8は、内側コイル6と外側コイル4の製造が完了した後、取り付けられてもよい。
【0035】
好ましくは、巻線ユニットは、いずれも材質が比較的柔軟である材料を採用し、具体的に、内側コイル半導電性層5と外側コイル半導電性層3は、半導電性テープ高分子材料であってもよく、内側コイル6と外側コイル4は、銅線などであってもよく、キャスティング材料との浸潤性が優れ、発熱の過程では、熱による膨張収縮によって過大な機械的応力集中を生じさせて、製品の割れを引き起こすことがなく、従来の直接キャスティング製品の適用中に機械的応力が高すぎることによって引き起こされる割れの問題をよく解決することができる。
【0036】
上記の説明から分かるように、本出願の具体的な実施例によって提供された変圧器において、コイルと半導電性材料は、一体キャスティングされ、鉄心8は、絶縁層2に取り付けられ、剛性材料が鋳造体内で発熱することに起因するワイヤパッケージングの割れという状況を解決する。巻線は一体的にキャスティングされ、機械的応力が小さく、割れ防止性能が大幅に向上しているため、本出願において提供された変圧器の安全性は高められる。
【0037】
具体的な実施形態において、外面半導電性層1の端部は、絶縁層2の内部に予め埋め込まれ、且つ、外面半導電性層1の端部には、等電位体11が設けられ、等電位体11は絶縁層2の内部に位置する。埋め込み型半導電性端部の構造は、端部の電界強度の分布を改善する。ワイヤパッケージング及び変圧器構造は、端部接地カットオフポイント構造を有するように一体的にキャスティングされ、具体的に、等電位体11は、ラッパ口構造、または曲率円構造であり、これにより、局所電界強度の集中を避ける。
【0038】
具体的な実施形態において、内側コイル半導電性層5と鉄心8との間に間隔があいて、気流通路7を形成する。鉄心8の周囲の気流通路7は、ちょうど変圧器の内部を貫通し、コイルユニット及び鉄心8に対して全体的な放熱を可能にする。同時に、内側コイル半導電性層5の存在により、当該部分の気流通路7は、高電界強度を受けることがない。
【0039】
上記の各方案に基づいて、好ましくは、当該変圧器はさらに、絶縁層2に固定接続された等電位キャビティ10を含む。好ましくは、等電位キャビティ10と絶縁層2は、一体成形された構造であり、両方は一体的にキャスティング成形される。等電位キャビティ10の構造は一体的に成形され、等電位キャビティ10内には内面半導電性層9が設けられる。等電位キャビティ10を配置することで、空間利用率、及び電力密度を効果的に向上させることができる。等電位キャビティ10を配置することで、従来の変圧器が高電圧リード端子の方式で絶縁間隔の要求を実現するときに、当該空間内に他の物品を配置できないことを変更する。本技術案を採用すると、等電位キャビティ10内に、同じ側の関連する電子素子を配置することができ、電界強度が大きすぎることによって部品絶縁が無効になることがない。
【0040】
具体的な実施形態において、鉄心8、隙間7、内側コイル6、内側コイル半導電性層5及び外面半導電性層1は、絶縁層2の一方側に位置し、外側コイル4、外側コイル半導電性層3、内面半導電性層9、及び等電位キャビティ10は、絶縁層2の他方側に位置する。
【0041】
本出願によって提供された変圧器の加工プロセスは、以下のステップを含み、
ステップA1:内側コイル6の外側を内側コイル半導電性層5で包む。
ステップA2:外側コイル4の外側を外側コイル半導電性層3で包み、外側コイル4を内側コイル半導電性層5の外側に配置して、コイルユニットを形成する。
【0042】
外側コイル半導電性層3と内側コイル半導電性層5とを配置することで、不規則なコイル構造に起因する、局所電界強度が高すぎるという問題を効果的に改善し、剛性材料が鋳造体内で発熱することに起因する、ワイヤパッケージングの割れという状況を解決することができるため、変圧器の安全性は高められる。
【0043】
ステップA3:並設された2つのコイルユニットを配置し、コイルユニットに絶縁媒体をキャスティングして、絶縁層2を形成する。内側コイル6、外側コイル4、外側コイル半導電性層3及び内側コイル半導電性層5には、統一に絶縁媒体がキャスティングされる。
【0044】
具体的に、ステップA3は以下のステップを含み、
ステップA31:内側コイル6の内側コイル半導電性層5で包まれた位置に、第1の絶縁媒体をキャスティングし、外側コイル4の外側コイル半導電性層3で包まれた位置に、第2の絶縁媒体をキャスティングし、即ち、内側コイル6と外側コイルとは、別々にキャスティングされる。
ステップA32:内側コイル半導電性層5の外面と外側コイル半導電性層3の外面に第3の絶縁媒体をキャスティングし、第1の絶縁媒体、第2の絶縁媒体及び第3の絶縁媒体は、絶縁層を形成する。好ましくは、第1の絶縁媒体、第2の絶縁媒体及び第3の絶縁媒体は、同じ絶縁媒体である。
好ましくは、一体型キャスティングのプロセス中の部品の位置決め及び固定を容易にするために、外半導電性層3の一方側は、絶縁層2の外面に接している。
【0045】
ステップA4:鉄心8をコイルユニットに取り付け、鉄心8と内側コイル半導電性層5との間に間隔をあけて、気流通路7を形成する。鉄心8の周囲の気流通路7は、ちょうど変圧器の内部を貫通し、コイルユニット及び鉄心8に対して全体的な放熱を可能にする。同時に、内側コイル半導電性層5の存在により、当該部分の気流通路7は、高電界強度を受けることがない。
【0046】
具体的な実施形態において、絶縁層2の外側には、外面半導電性層1が積層される。具体的な実施形態において、外面半導電性層1の端部は、絶縁層2の内部に埋め込まれ、且つ、外面半導電性層1の端部には、等電位体11が設けられ、等電位体11は絶縁層2の内部に位置する。埋め込み型半導電性端部の構造は、端部の電界強度の分布を改善する。ワイヤパッケージング及び変圧器構造は、端部接地カットオフポイント構造を有するように一体キャスティングされ、具体的に、等電位体11は、ラッパ口構造、または曲率円構造であり、これにより、局所電界強度の集中を避ける。
【0047】
上記の各方案に基づいて、好ましくは、当該変圧器はさらに、絶縁層2に固定接続された等電位キャビティ10を含み、好ましくは、等電位キャビティ10と絶縁層2は、一体成形された構造であり、両方は一体的にキャスティング成形される。等電位キャビティ10の構造は一体的に成形され、等電位キャビティ10内には内面半導電性層9が設けられる。等電位キャビティ10を配置することで、空間利用率、及び電力密度を効果的に向上させることができる。従来の変圧器は、等電位キャビティ10を配置することで、高電圧リード端子の方式を採用して絶縁間隔の要件を満たすことを変更し、この空間内に他の物品を配置できない。しかしながら、本技術案を採用すると、等電位キャビティ10内に、同じ側の関連する電子素子を配置することができ、電界強度が大きすぎることによって部品の絶縁不良を生じさせることがない。
【0048】
具体的な実施形態において、鉄心8、隙間7、内側コイル6、内側コイル半導電性層5及び外面半導電性層1は、絶縁層2の一側に位置し、外側コイル4、外側コイル半導電性層3、内面半導電性層9、及び等電位キャビティ10は絶縁層2の他方側に位置する。
【0049】
好ましくは、巻線ユニットは、いずれも材質が比較的柔軟である材料を採用し、具体的に、内側コイル半導電性層5と外側コイル半導電性層3は、半導電性テープ高分子材料であってもよく、内側コイル6と外側コイル4は、銅線などであってもよく、キャスティング材料との浸潤性が優れ、発熱の過程では、熱による膨張収縮によって過大な機械的応力集中を生じさせて、製品の割れを引き起こすことがなく、従来の直接キャスティング製品の適用中に機械的応力が高すぎることによって引き起こされる割れの問題をよく解決することができる。
【0050】
本明細書における各実施例は、漸進的に説明されており、各実施例はいずれも、他の実施例との相違点を主に説明し、各実施例の間の同じまたは類似の部分について、互いに参照すればよい。
【0051】
開示された実施例に対する上記の説明によって、当業者は本発明を実現または使用することができる。これらの実施例に対する様々な補正は、当業者には明らかであり、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、他の実施例で実現することができる。従って、本発明は、本明細書に示されるこれらの実施例に限定されず、本明細書に開示された原理及び新規性特点と一致する最も広い範囲に従う。
【符号の説明】
【0052】
1 ・・・外面半導電性層;
2 ・・・絶縁層;
3 ・・・外側コイル半導電性層;
4 ・・・外側コイル;
5 ・・・内側コイル半導電性層;
6 ・・・内側コイル;
7 ・・・気流通路;
8 ・・・鉄心;
9 ・・・内面半導電性層;
10 ・・・等電位キャビティ;
11 ・・・等電位体。