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特許7263605情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-14
(45)【発行日】2023-04-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/00 20060101AFI20230417BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230417BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230417BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230417BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20230417BHJP
   B64C 27/04 20060101ALI20230417BHJP
   B64F 1/12 20060101ALI20230417BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20230417BHJP
【FI】
G08G5/00 A
G08G1/09 F
G05D1/00 Z
G05D1/02 H
G05D1/10
B64C27/04
B64F1/12
B64F1/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022130830
(22)【出願日】2022-08-19
【審査請求日】2022-09-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、Beyond 5G研究開発促進事業「スマートモビリティプラットフォームの実現に向けたドローン・自動運転車の協調制御プラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
(72)【発明者】
【氏名】樫原 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉田 博司
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-196697(JP,A)
【文献】特開2018-179631(JP,A)
【文献】特開2022-002961(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106125765(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G05D 1/00
G05D 1/02
G05D 1/10
B64C 27/04
B64F 1/12
B64F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の動作制御と位置管理とを実行する飛行体管理部と、
前記飛行体を着陸させるための着陸設備が設けられた被牽引車両を牽引する車両の動作制御と位置管理とを実行する車両管理部と、
前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する取得部と、
前記被牽引車両の構造に関する情報を記憶する構造情報記憶部と、を備え、
前記車両管理部は、
前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信した後、前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機し、
前記車両が前記車両移動完了状態となることを契機として前記構造情報記憶部を参照することにより、前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報を特定し、
前記構造情報記憶部を参照して取得した前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報に基づいて、前記車両が現在位置に存在する場合における前記被牽引車両の位置座標である被牽引車位置座標を特定し
前記飛行体管理部は、
前記被牽引車位置座標の上空に設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信した後、前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機し、
前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記車両管理部は、前記車両と前記被牽引車両の連結部に備えられた角度センサの出力値に基づいて取得した前記車両と前記被牽引車両とがなす角度に基づいて、前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報を特定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記車両管理部は、前記車両の現在位置を前記車両から受信し、
前記飛行体管理部は、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となった後に、前記車両の現在位置に基づいて設定される新たな待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記車両管理部は、前記車両の位置精度を示す車両位置信頼度をさらに受信し、
前記飛行体管理部は、
前記飛行体の位置精度を示す飛行体位置信頼度をさらに受信し、
前記車両が前記車両移動完了状態となった後に受信した前記車両位置信頼度と、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となった後に受信した前記飛行体位置信頼度と、のそれぞれが所定の信頼度以上であることをさらに条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための着陸指示を前記飛行体に送信する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記車両が前記着陸希望位置まで移動している間に前記車両管理部が前記車両から受信した前記車両位置信頼度の履歴を、受信時における前記車両の位置座標と紐づけて記憶する位置履歴記憶部をさらに備え、
前記車両管理部は、前記車両が前記車両移動完了状態となった後に受信した前記車両位置信頼度が前記所定の信頼度に満たない場合、前記位置履歴記憶部を参照して前記車両位置信頼度が前記所定の信頼度以上となる位置座標である着陸許可座標を特定し、前記着陸許可座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信し、
前記飛行体管理部は、前記着陸許可座標の上空に新たに設定した待機位置まで前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記飛行体管理部は、前記待機位置から着陸設備まで前記飛行体を段階的に移動しながら前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信する、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記飛行体は、中山間地域への荷物の配送に用いられる飛行体であり、
前記車両管理部は、前記荷物の配送先がある山間部まで前記車両を移動させ、
前記飛行体管理部は、前記車両によって運搬された前記着陸設備から前記飛行体を離陸させるとともに、前記荷物の配送後、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させる、
請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項8】
飛行体を着陸させるための着陸設備が設けられた被牽引車両を牽引する車両に前記飛行体を着陸させるための処理を実行するコンピュータのプロセッサが、
前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得するステップと、
前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信するステップと、
前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機するステップと、
前記車両が前記車両移動完了状態となることを契機として、前記被牽引車両の構造に関する情報を記憶する構造情報記憶部を参照することにより、前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報を特定するステップと、
前記構造情報記憶部を参照して取得した前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報に基づいて、前記車両が現在位置に存在する場合における前記被牽引車両の位置座標である被牽引車位置座標を特定するステップと、
前記被牽引車位置座標の上空に設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信するステップと、
前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機するステップと、
前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信するステップと、を実行する、
情報処理方法。
【請求項9】
飛行体を着陸させるための着陸設備が設けられた被牽引車両を牽引する車両に前記飛行体を着陸させるための処理を実行するコンピュータに、
前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する機能と、
前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信する機能と、
前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機する機能と、
前記車両が前記車両移動完了状態となることを契機として、前記被牽引車両の構造に関する情報を記憶する構造情報記憶部を参照することにより、前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報を特定する機能と、
前記構造情報記憶部を参照して取得した前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報に基づいて、前記車両が現在位置に存在する場合における前記被牽引車両の位置座標である被牽引車位置座標を特定する機能と、
前記被牽引車位置座標の上空に設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信する機能と、
前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機する機能と、
前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信する機能と、を実現させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関し、特に自律的に動作する車両と飛行体とを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローン等の飛行体と自動車等の車両とを連携させ、車両にドローンを着陸させる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、飛行体と車両とが直接通信し、飛行体が車両から受信した位置情報に基づいて飛行体が車両に着陸する技術が開示されている。また、特許文献2には、飛行体がカメラを備えており、飛行体がカメラで撮像した画像を解析して車両の位置を特定し、その車両に着陸する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/116495号
【文献】特開2020-138681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飛行体と車両とが直接通信するためには、当然ながら、飛行体と車両とのそれぞれが互いに通信するための通信モジュールを備えている必要がある。また、飛行体が画像解析によって車両の位置を特定するためには、例えば画像認識モジュールやそれを実行するための演算装置等の特別な装備を飛行体が備えている必要がある。このため、上述したような技術を用いて飛行体と車両とを制御するためには、飛行体と車両との少なくとも一方が専用の装備を備えている必要があるためコストがかかり、必ずしも汎用性が高いとはいえない。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両を基準として飛行体を着陸させるためのコストを抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、情報処理装置である。この装置は、飛行体の動作制御と位置管理とを実行する飛行体管理部と、前記飛行体を着陸させるための着陸設備を運搬する車両の動作制御と位置管理とを実行する車両管理部と、前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する取得部と、を備える。ここで、前記車両管理部は、前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信した後、前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機し、前記飛行体管理部は、前記着陸希望位置の位置座標及び前記着陸希望位置の高度に基づいて設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信した後、前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機し、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信する。
【0007】
前記車両管理部は、前記車両の現在位置を前記車両から受信してもよく、前記飛行体管理部は、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となった後に、前記車両の現在位置に基づいて設定される新たな待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信してもよい。
【0008】
前記車両管理部は、前記車両の位置精度を示す車両位置信頼度をさらに受信してもよく、前記飛行体管理部は、前記飛行体の位置精度を示す飛行体位置信頼度をさらに受信してもよく、前記車両が前記車両移動完了状態となった後に受信した前記車両位置信頼度と、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となった後に受信した前記飛行体位置信頼度と、のそれぞれが所定の信頼度以上であることをさらに条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための着陸指示を前記飛行体に送信してもよい。
【0009】
前記情報処理装置は、前記車両が前記着陸希望位置まで移動している間に前記車両管理部が前記車両から受信した前記車両位置信頼度の履歴を、受信時における前記車両の位置座標と紐づけて記憶する位置履歴記憶部をさらに備えてもよく、前記車両管理部は、前記車両が前記車両移動完了状態となった後に受信した前記車両位置信頼度が前記所定の信頼度に満たない場合、前記位置履歴記憶部を参照して前記車両位置信頼度が前記所定の信頼度以上となる位置座標である着陸許可座標を特定し、前記着陸許可座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信してもよく、前記飛行体管理部は、前記着陸許可座標の上空に新たに設定した待機位置まで前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信してもよい。
【0010】
前記着陸設備は前記車両に牽引される被牽引車両に設けられていてもよく、前記情報処理装置は、前記車両が前記着陸希望位置まで移動している間に前記車両管理部が前記車両から受信した前記車両の位置精度を示す車両位置信頼度の履歴を、受信時における前記車両の位置座標と紐づけて記憶する位置履歴記憶部と、前記被牽引車両の構造に関する情報を記憶する構造情報記憶部と、をさらに備えてもよく、前記車両管理部は、前記車両が前記車両移動完了状態となることを契機として前記構造情報記憶部を参照することにより、前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報を特定し、前記構造情報記憶部を参照して取得した前記車両と前記被牽引車両との位置関係の補正情報に基づいて、前記車両が現在位置に存在する場合における前記被牽引車両の位置座標である被牽引車位置座標を特定し、前記飛行体管理部は、前記被牽引車位置座標の上空に新たに設定した待機位置まで前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信してもよい。
【0011】
前記飛行体管理部は、前記待機位置から着陸設備まで前記飛行体を段階的に移動しながら前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信してもよい。
【0012】
本発明の第2の態様は情報処理方法である。この方法において、飛行体を着陸させるための着陸設備を運搬する車両に前記飛行体を着陸させるための処理を実行するコンピュータのプロセッサが、前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得するステップと、前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信するステップと、前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機するステップと、前記着陸希望位置の位置座標及び前記着陸希望位置の高度に基づいて設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信するステップと、前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機するステップと、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信するステップと、を実行する。
【0013】
本発明の第3の態様は、プログラムである。このプログラムは、飛行体を着陸させるための着陸設備を運搬する車両に前記飛行体を着陸させるための処理を実行するコンピュータに、前記飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する機能と、前記着陸希望位置の位置座標まで前記車両を移動させる指示を前記車両に送信する機能と、前記車両が前記着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機する機能と、前記着陸希望位置の位置座標及び前記着陸希望位置の高度に基づいて設定した待機位置に前記飛行体を移動させる指示を前記飛行体に送信する機能と、前記飛行体が前記待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機する機能と、前記飛行体が前記飛行体移動完了状態となり、かつ、前記車両が前記車両移動完了状態となることを条件として、前記飛行体を前記着陸設備に着陸させるための一連の指示を前記飛行体に送信する機能と、を実現させる。
【0014】
このプログラムを提供するため、あるいはプログラムの一部をアップデートするために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両を基準として飛行体を着陸させるためのコストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態に係る情報処理システムの概要を説明するための図である。
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る位置履歴記憶部のデータ構造を模式的に示す図である。
図4】実施の形態に係る構造情報記憶部のデータ構造を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係る車両管理部が実行する被牽引車位置座標の算出処理を説明するための模式図である。
図6】飛行体が実行する着陸シーケンス処理を説明するための模式図である。
図7】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
中山間地域の荷物配送手段として、ドローン等の飛行体(以下、単に「飛行体」と記載する。)の活用が注目されている。飛行体を活用することで、陸路での配送が困難な場所に対しても荷物配送が可能となる。市街地から中山間地域への荷物配送を実現する場合、起点となる市街地から配送先まですべて飛行体で配送させることも考えられる。しかしながら、市街地から配送先までの距離がある場合、飛行体が大容量のバッテリーを積載する必要がある。また、現行の法制度の下では、飛行体は市街地での飛行が制限される場合がある。
【0019】
したがって、市街地から中山間地域への荷物配送を実現する場合、自動車やトラック等の車両(以下、単に「車両」と記載する。)と飛行体とを組み合わせて荷物配送を実施することが代替手段として考えられる。この場合、飛行体は配送先に近づくまで車両で運ばれ、ある地点で離陸して荷物を配送し、再び車両に着陸することになる。
【0020】
実施の形態に係る情報処理システムは、荷物配送を担う車両と飛行体とが、ともに遠隔からの制御を受けつつ無人で動作することを前提としている。車両と飛行体とが自動運行で荷物輸送をするためには、荷物の配送を終えた飛行体が車両に着陸する際に、車両又は車両が牽引している着陸用設備の位置情報を把握する必要がある。
【0021】
実施の形態に係る情報処理システムにおいて、車両と飛行体とが直接通信したり、相互に認識し合ったりすることは要求されない。その代わり、車両と飛行体とのそれぞれと通信する情報処理装置が、車両と飛行体とのそれぞれから位置情報を取得して飛行体の着陸を制御する。これにより、実施の形態に係る情報処理システムは、車両と飛行体とが相互通信のための通信モジュールを備えたり、相手を認識する認識モジュールを備えたりしていなくても、車両を基準として飛行体を着陸させることができる。
【0022】
図1は、実施の形態に係る情報処理システムSの概要を説明するための図である。実施の形態に係る情報処理システムSは、情報処理装置1と、情報処理装置1が制御対象とする飛行体d及び車両vを含んでいる。情報処理装置1と飛行体d及び車両vは、それぞれ携帯電話通信網を介して通信可能な態様で接続している。このため、情報処理装置1は、飛行体dと車両vとのそれぞれと、基地局bを介して情報のやり取りをすることができる。なお、図1に示す例では、車両vは、飛行体dを着陸させるための着陸設備を備えた被牽引車両tを牽引しているが、車両vはルーフ又は荷台に着陸設備を備えてもよい。この場合、車両vは被牽引車両tを牽引しない。
【0023】
情報処理装置1は、あらかじめ飛行体dが車両vに着陸するために落ち合う地点である着陸希望位置rを取得している。図1に示す例では、着陸希望位置rは斜線を付した楕円領域の中心であり、山の中腹にある道沿いに存在する。車両vは着陸希望位置rに移動して、配送先である山小屋hを飛び立った飛行体dの着陸に備える。一方、飛行体dは、荷物の配送を終えた後に着陸希望位置rに向かう。
【0024】
情報処理装置1は、飛行体dと車両vとのそれぞれからそれらの現在位置を定期的に取得しつつ、飛行体dと車両vそれぞれが着陸希望位置rに移動するまで待機する。情報処理装置1は、飛行体dと車両vとがともに集合位置に移動した後に、飛行体dを着陸させるための一連の制御情報を飛行体dに送信して飛行体dを着陸設備に着陸させる。その後、車両vは飛行体dを都市部等にある保管所まで運送する。
【0025】
このように、実施の形態に係る情報処理装置1は、飛行体dと車両vとを仲介し、飛行体dが車両v又は車両vが牽引する被牽引車両tに着陸するための動作を制御する。車両vと飛行体dとが相互通信のための通信モジュールを備えたり、相手を認識する認識モジュールを備えたりしていなくてもよいので、情報処理装置1は、車両vを基準として飛行体dを着陸させるためのコストを抑制することができる。
【0026】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、記憶部10、通信部11、及び制御部12を備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0027】
記憶部10は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される位置履歴及び構造情報を含む種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。記憶部10は、位置履歴記憶部100と構造情報記憶部101と含んでいる。
【0028】
通信部11は既知の通信モジュールで実現されており、情報処理装置1が飛行体dや飛行体d等の外部の装置と情報をやり取りする。以下、情報処理装置1の各部が外部の装置との間で情報をやり取りする場合、通信部11を介することを前提として通信部11の記載を省略することがある。
【0029】
制御部12は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部10に記憶されたプログラムを実行することによって飛行体管理部120、車両管理部121、及び取得部122として機能する。
【0030】
なお、図2は、情報処理装置1が単一の装置で構成されている場合の例を示している。しかしながら、情報処理装置1は、例えばクラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。この場合、制御部12を構成する各部は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。あるいは、飛行体管理部120と車両管理部121とはそれぞれ異なる装置で実現されていてもよく、この場合、情報処理装置1、飛行体管理部120を実現する装置、及び車両管理部121を実現する装置がそれぞれ通信ネットワークを介して連係して動作すればよい。
【0031】
飛行体管理部120は飛行体dの制御機能を担い、飛行体dの動作制御と位置管理とを実行する。飛行体dは、飛行体管理部120から受信したウェイポイントに沿って自動航行する。また、飛行体管理部120は航行中の飛行体dから定期的に位置情報を受信し、飛行体dの現愛位置を把握する。
【0032】
車両管理部121は車両vの制御機能を担い、車両vの動作制御と位置管理とを実行する。車両vは、飛行体dを着陸させるための着陸設備を運搬する車両であり、車両管理部121の制御の下、指定された地点まで自動で走行する。上述したとおり、着陸設備は車両vが牽引する被牽引車両tに備えられている場合もあるし、車両vのルーフ上や荷台に設けられる場合もある。
【0033】
取得部122は、飛行体dの着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する。具体的には、取得部122は、飛行体dと車両vとを用いる運送会社のサーバから着陸希望位置rの位置座標及び高度を受信して取得する。あるいは、取得部122は、あらかじめ定められた複数の着陸希望位置r及び高度の候補の中から、運送会社のサーバから取得した配送先に近接する場所を選択して取得してもよい。
【0034】
車両管理部121は、取得部122が取得した着陸希望位置の位置座標まで車両vを移動させる指示を車両vに送信する。その後、車両管理部121は、車両vが着陸希望位置rを含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機する。なお、図1に示す例では、着陸希望位置rを含む所定の領域は、斜線を付した楕円領域で示されている。
【0035】
飛行体管理部120は、着陸希望位置rの位置座標及び着陸希望位置rの高度に基づいて設定した待機位置に飛行体dを移動させる指示を飛行体dに送信する。その後、飛行体管理部120は、飛行体dが待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機する。なお、待機位置は、着陸希望位置rの位置座標及び着陸希望位置rの高度から所定の高さ上空に設定される位置であり、一例としては着陸希望位置rの高度の10メートル上空である。
【0036】
飛行体管理部120は、飛行体dが飛行体移動完了状態となり、かつ、車両vが車両移動完了状態となることを条件として、飛行体dを着陸設備に着陸させるための一連の指示を飛行体dに送信する。このように、車両vと飛行体dとのそれぞれが着陸希望位置r付近に移動したことを情報処理装置1が確認してから飛行体dを着陸させるための制御をすることにより、車両vと飛行体dとの少なくとも一方が他方の位置を確認するための特別な機能を有していなくても飛行体dを着陸させることができる。これにより、情報処理装置1は、車両vを基準として飛行体dを着陸させる際のコストを抑制することができる。
【0037】
ここで、取得部122が取得した着陸希望位置rに、例えば他の駐車車両があったり、倒木や落石が存在したり、路肩が崩れていたりする等の理由で、車両vが近づけない場合もあり得る。そこで、車両管理部121は、車両vが着陸希望位置rを含む所定の領域内に入ることで車両移動完了状態となると判断する。このため、車両vが車両移動完了状態となったとしても。車両vが着陸希望位置rから少しずれた位置にあることも起こりうる。
【0038】
そこで、車両管理部121は、車両vの現在位置を車両vから定期的に受信する。また、飛行体管理部120は、飛行体dが飛行体移動完了状態となった後に、車両vの現在位置に基づいて設定される新たな待機位置に飛行体dを移動させる指示を飛行体dに送信する。これにより、情報処理装置1は、飛行体dと車両vとが直接通信できなくても、着陸希望位置rと実際に車両vが待機している場所とのずれを修正して飛行体dを着陸させることができる。
【0039】
実施の形態に係る情報処理システムSにおいて、飛行体d及び車両vそれぞれの位置情報は、精密単独測位型RTK(Precise Point Positioning Real Time Kinematic;PPP-RTK)と呼ばれる測位方法を採用している。既知の技術であるため詳細な説明は省略するが、PPP-RTKはあらかじめ基準局の測定情報をサーバに蓄積しておき、初回起動時のみサーバに位置情報を送信し、以降はサーバから送信される補正情報をもとに位置測位を行う方式である。PPP-RTKにおいては、サーバから片方向に送信される補正情報をもとに位置測位を行うため、測位対象が高速で移動しても誤差を小さく抑えられる特長があり、自動車やドローンの位置測位に適した測位方式といえる。PPP-RTKにおいては、測位情報とともに位置精度を示す信頼度も出力される。
【0040】
上述したとおり、実施の形態に係る情報処理システムSにおいては、飛行体dと車両vトが直接通信したり、一方が他方を撮像して認識したりすることはない。そのため、実施の形態に係る情報処理システムSにおいて、車両vを基準として飛行体dを着陸させるためには、飛行体d及び車両vそれぞれの現在位置を示す位置情報の精度が重要となる。
【0041】
そこで、車両管理部121は、車両vの現在位置とともにその精度を示す車両位置信頼度をさらに受信する。飛行体管理部120も、飛行体dの現在位置とともにその位置精度を示す飛行体位置信頼度をさらに受信する。飛行体管理部120は、車両vが車両移動完了状態となった後に受信した車両位置信頼度と、飛行体dが飛行体移動完了状態となった後に受信した飛行体位置信頼度と、のそれぞれが所定の信頼度以上であることをさらに条件として、飛行体dを着陸設備に着陸させるための着陸指示を飛行体dに送信する。
【0042】
ここで「所定の閾値」は、飛行体管理部120が飛行体dを着陸シーケンスに移行させるか否かを判定する際に参照する「着陸移行判定用閾値」である。所定の閾値の具体的な値は出力される信頼度の様式及び飛行体dの着陸時に求められる安全性等を考慮して実験により定めればよいが、例えば信頼度が百分率(数字が高いほど信頼度が高い)で表される場合は80%である。これにより、飛行体位置信頼度と車両位置信頼度とが十分高いとき、すなわち、飛行体dと車両vとの現在地が十分信頼できるときに飛行体dの着陸の指示を出せるため、情報処理装置1は飛行体dの着陸時の安全性を高めることができる。
【0043】
一方で、移動が完了した車両vの位置における車両位置信頼度が低い場合、飛行体dの着陸時の安全性が十分でない場合もあり得る。その場合、情報処理装置1は、車両位置信頼度が高い位置まで車両vを移動させてから飛行体dに着陸の指示を出した方がよい。
【0044】
そこで、位置履歴記憶部100は、車両vが着陸希望位置まで移動している間に車両管理部121が車両vから受信した車両位置信頼度の履歴を、受信時における車両vの位置座標と紐づけて記憶している。
【0045】
図3は、実施の形態に係る位置履歴記憶部100のデータ構造を模式的に示す図である。図3に示すように、位置履歴記憶部100は、車両vを特定するために各車両vに一意に割り当てられた車両識別子毎に、車両の位置を示す経度及び緯度と、位置を取得した時刻、及びそのときの車両位置信頼度を紐づけて格納している。図3に示す位置履歴記憶部100の例では、車両識別子がVID0001である車両vは、2022年8月1日の午前10時12分15秒に存在した位置が東経137度51分0.6秒、北緯35度45分41.25秒の位置であることの信頼性が80%であることを示している。同様に、2022年8月1日の午前10時17分42秒に存在した位置が東経137度50分31.1秒、北緯35度47分16.6秒の位置であることの信頼性が46%であることを示している。
【0046】
図3に示す位置履歴記憶部100において、VID0001の車両が10時17分42秒に到着した地点が着陸希望位置r付近であり、着陸希望位置rにおける車両位置信頼度が所定の信頼度に満たないとする。この場合、着陸希望位置rで飛行体dを着陸させるのは安全性が十分でない場合もある。
【0047】
そこで、車両管理部121は、車両vが車両移動完了状態となった後に受信した車両位置信頼度が所定の信頼度に満たない場合、位置履歴記憶部100を参照して車両位置信頼度が所定の信頼度以上となる位置座標である着陸許可座標を特定し、着陸許可座標まで車両vを移動させる指示を車両vに送信する。また、飛行体管理部120は、車両管理部121が特定した着陸許可座標の上空に新たに設定した待機位置まで飛行体dを移動させる指示を飛行体dに送信する。図3に示す位置履歴記憶部100の例では、車両管理部121は、例えば車両vが10時12分15秒に存在した位置の座標を着陸許可座標として設定する。着陸許可座標の車両位置信頼度は80%であるため、情報処理装置1は、十分な信頼度をもって車両vを着陸許可座標に移動させることができる。
【0048】
ところで、飛行体dを着陸させるための着陸設備が車両v自体に備えられている場合、車両vの位置座標と着陸設備の位置座標とのずれは少ないといえる。しかしながら、着陸設備が車両vによって牽引されている被牽引車両tに設けられている場合、車両vの位置座標と着陸設備の位置座標とはメートルのオーダーで乖離することも起こり得る。
【0049】
そのため構造情報記憶部101は、被牽引車両tの構造に関する情報を記憶している。図4は、実施の形態に係る構造情報記憶部101のデータ構造を模式的に示す図である。図4に示す構造情報記憶部101の例では、車両識別子がVID0001の車両vは牽引識別子がTID0001である被牽引車両tを牽引していることを示している。
【0050】
車両管理部121は、車両vが車両移動完了状態となることを契機として構造情報記憶部101を参照することにより、車両vと被牽引車両tとの位置関係の補正情報を特定する。続いて、車両管理部121は、構造情報記憶部101を参照して取得した車両vと被牽引車両tとの位置関係の補正情報に基づいて、車両vが現在位置に存在する場合における被牽引車両tの位置座標である被牽引車位置座標を特定する。図4に示す構造情報記憶部101の例では、牽引識別子がTID0001である被牽引車両tに関する位置関係の補正情報は、幅方向がx[cm]、長さ方向がy[cm]、高さ方向がz[cm]である。車両管理部121は、車両vの現在位置の位置座標を起点として幅方向にx[cm]、長さ方向にy[cm]、高さ方向にz[cm]ずれた位置を被牽引車位置座標として特定する。
【0051】
図5は、実施の形態に係る車両管理部121が実行する被牽引車位置座標の算出処理を説明するための模式図である。車両v及び被牽引車両tは大きさがあるため、車両vの位置座標及び被牽引車両tの位置座標は、それぞれ車両v及び被牽引車両tに設けられた位置基準点の座標として表される。図5に示す例では、車両vの位置基準点は符号Pvで表される位置であり、車両vのルーフ中央部に設定されている。また、被牽引車両tの位置基準点は符号Ptで表されており、被牽引車両tの荷台部分の中央に設定されている。なお、図5に示す車両vの位置基準点Pv及び被牽引車両tの位置基準点Ptは一例であり、他の位置に設定されていてもよい。
【0052】
図5に示すように、被牽引車両tの位置基準点Ptは車両vの位置基準点Pvの進行方向に対して後方x[cm]、重力方向にz[cm]の位置にある。図5は車両vが直線道路に停車している場合の例を示しており、図5には図示していないが、被牽引車両tの位置基準点Ptと車両vの位置基準点Pvとの幅方向の際は0[cm]である。なお、車両vがカーブしている道路に停車している場合、被牽引車両tの位置基準点Ptと車両vの位置基準点Pvとの位置関係は、車両vが直線道路に停車している場合と比較して、道路の曲率に応じて補正する必要がある。
【0053】
車両vと被牽引車両tとの連結部cに角度センサ(不図示)が備えられている場合、車両管理部121は、角度センサの出力値に基づいて車両vと被牽引車両tとがなす角度を取得し、位置関係の補正情報に基づいて被牽引車両tの位置基準点Ptの位置をさらに精度よく求めることができる。連結部cが角度センサを備えていない場合、車両管理部121は、位置履歴記憶部100を参照して車両vの走行軌跡を取得して車両vが停車したときの車両vと被牽引車両tとがなす角度を推定すればよい。
【0054】
飛行体管理部120は、被牽引車位置座標である位置基準点Ptの上空に新たに設定した待機位置wまで飛行体dを移動させる指示を飛行体dに送信する。これにより、情報処理装置1は、車両vの位置と着率設備の位置とにずれがある場合であっても、飛行体dを着陸設備の上空に移動させることができる。
【0055】
図6(a)-(b)は、飛行体dが実行する着陸シーケンス処理を説明するための模式図である。上述したように、実施の形態に係る情報処理システムSにおいて、飛行体dが着陸設備を直接認識したり、飛行体dと車両vとが通信によって互いの位置を知らせたりすることはない。このため、飛行体管理部120は、待機位置から着陸設備まで飛行体dを段階的に移動しながら着陸設備に着陸させるための一連の指示を飛行体dに送信する。飛行体dは、情報処理装置1の飛行体管理部120から送信された一連の指示にしたがって着陸設備に着陸する。
【0056】
煩雑となるためすべてに符号を付してはいないが、図6(a)において符号Pwを付した黒丸と同じ形状の黒丸は、飛行体管理部120が飛行体dに送信した一連の指示に含まれるウェイポイントPwを示している。ウェイポイントPwは飛行体dの通過点として設定される空間上の位置座標であり、図6(a)に示す例では、待機位置wから着陸設備に至るまでの間に複数のウェイポイントPwが設定されている。飛行体dは、飛行体管理部120が指示した複数のウェイポイントPwを通過しながら飛行することにより、待機位置を認識していなくても着陸設備に着陸することができる。
【0057】
図6(b)は、図6(a)とは異なるウェイポイントPwの設定例を示す図である。図6(b)においては、0から3のうちのいずれかの数字が記載された白丸がウェイポイントPwを示しており、その数字はウェイポイントPwの設定の順番を示している。以下、説明の便宜のため、数字が記載されたウェイポイントPwをその数字とともに記載することにする。例えば、「2」が記載されたウェイポイントPwをウェイポイントPw2と記載する。
【0058】
図6(b)において、ウェイポイントPw0は、飛行体dの待機位置wに相当するウェイポイントPwであり、飛行体管理部120が飛行体dに送信した一連の指示における初期位置である。また、ウェイポイントPw1は、飛行体dが着陸設備に着陸したときの位置であり、いわば飛行体dの最終目的地である。飛行体管理部120は、まず、待機位置の高さと被牽引車位置座標である位置基準点Ptとに基づいて、ウェイポイントPw1を設定する。
【0059】
ここで、N番目のウェイポイントPwNとM番目のウェイポイントPwMとの距離をH(N,M)と記載する。例えば、H(0,1)は、飛行体dが待機位置wにいるときの着陸設備までの距離、すなわち高さを表す。飛行体管理部120は、H(0,1)の半分の高さの位置に次のウェイポイントPw2を設定し、ウェイポイントPw2まで降下することの指示を飛行体dに送信する。
【0060】
飛行体dがウェイポイントPw2まで移動すると、飛行体管理部120は、H(2,1)の半分の高さの位置にウェイポイントPw3を設定するとともに、ウェイポイントPw3まで降下することの指示を飛行体dに送信する。このように、飛行体管理部120は、待機位置wから着陸設備に至るまで飛行体dの高度が段階的に下がるようにウェイポイントPwを設定しながら、飛行体dを降下させるための一連の指示を送信する。なお、飛行体管理部120は、飛行体dが各ウェイポイントPwに至るまでの間に飛行体dから現在位置を取得し、飛行体dが降下目標とするウェイポイントPwから外れる場合は都度軌道を修正するための指示を飛行体dに送信する。これにより、飛行体管理部120は、飛行体dを着陸設備に着陸させるための精度を向上することができる。
【0061】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図7は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、例えば情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0062】
取得部122は、飛行体dの着陸希望位置rの位置座標及び高度を取得する(S2)。車両管理部121は、着陸希望位置rの位置座標まで車両vを移動させる指示を車両vに送信する(S4)。その後、車両管理部121は、車両vが着陸希望位置rを含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまでの間(S6のNo)待機する。車両vが着陸希望位置rを含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となると(S6のYes)、車両管理部121は待機を終了する。
【0063】
車両管理部121が着陸希望位置rの位置座標まで車両vを移動させる指示を車両vに送信することと並行して、飛行体管理部120は、着陸希望位置の位置座標及び着陸希望位置の高度に基づいて設定した待機位置に飛行体dを移動させる指示を飛行体dに送信する(S8)。その後、飛行体管理部120は、飛行体dが待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまでの間(S10のNo)待機する。飛行体dが待機位置に到着する飛行体移動完了状態となると(S10のYes)、飛行体管理部120は待機を終了する。
【0064】
飛行体移動完了状態となった後、まだ車両移動完了状態となっていない場合(S12のNo)、飛行体管理部120は、飛行体dにその場でホバリングさせる指示を送信する(S14)。飛行体dが飛行体移動完了状態となり、かつ、車両vが車両移動完了状態となることを条件として(S12のYes)、飛行体管理部120は、飛行体dを着陸設備に着陸させるための一連の指示を飛行体dに送信する(S16)。飛行体管理部120が一連の指示を飛行体dに送信すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0065】
なお、図7に示すフローチャート中のステップS8において飛行体管理部120から飛行体dに送信される待機位置への移動指示に、待機位置到着後に飛行体dがどのように動作すべきかを示す動作指示を含めるようにしてもよい。具体的には、待機位置に到着するとその場でホバリングするよう指示する動作指示を含めた移動指示を送信してもよい。この場合、ステップS14の処理は省略されることとなる。
【0066】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係る情報処理装置1によれば、車両vを基準として飛行体を着陸させるためのコストを抑制することができる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【0068】
<変形例>
上記では、車両管理部121が、車両vが着陸希望位置rを含む所定の領域内に入ることで車両移動完了状態となると判定する場合について説明した。この場合、車両管理部121は、車両vから定期的に受信する現在位置が、着陸希望位置rを含む所定の領域内に入るか否かを判定することで、車両vが車両移動完了状態となるか否かを判定する。飛行体管理部120も同様であり、飛行体dから定期的に受信する飛行体dの現在位置が待機位置を含む所定の領域内に入るか否かを判断することで、飛行体dが飛行体移動完了状態なるかを判定する。
【0069】
これに替えて、あるいはこれに加えて、車両v自身が車両移動完了状態となるか否かを判定してもよい。この場合、車両vはあらかじめ情報処理装置1から着陸希望位置rを取得しておき、車両vが備えるGPS(Global Positioning System)モジュールやPPP-RTK受信装置等の既知の位置取得装置から取得した位置が着陸希望位置rの近傍であるかを判定し、情報処理装置1に送信すればよい。飛行体管理部120も同様であり、飛行体管理部120自身が飛行体移動完了状態となるかを判定してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1・・・情報処理装置
10・・・記憶部
100・・・位置履歴記憶部
101・・・構造情報記憶部
11・・・通信部
12・・・制御部
120・・・飛行体管理部
121・・・車両管理部
122・・・取得部
d・・・飛行体
v・・・車両
S・・・情報処理システム
【要約】
【課題】車両を基準として飛行体を着陸させるためのコストを抑制する。
【解決手段】取得部122は、飛行体の着陸希望位置の位置座標及び高度を取得する。車両管理部121は、着陸希望位置の位置座標まで車両を移動させる指示を車両に送信した後、車両が着陸希望位置を含む所定の領域内に入る車両移動完了状態となるまで待機する。飛行体管理部120は、着陸希望位置の位置座標及び着陸希望位置の高度に基づいて設定した待機位置に飛行体を移動させる指示を飛行体に送信した後、飛行体が待機位置に到着する飛行体移動完了状態となるまで待機する。飛行体管理部120は、飛行体が飛行体移動完了状態となり、かつ、車両が車両移動完了状態となることを条件として、飛行体を着陸設備に着陸させるための一連の指示を飛行体に送信する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7