(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】光学効果層の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20230418BHJP
B41F 15/12 20060101ALI20230418BHJP
B42D 25/369 20140101ALI20230418BHJP
【FI】
B41M3/14
B41F15/12
B42D25/369
(21)【出願番号】P 2020538961
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085031
(87)【国際公開番号】W WO2019141453
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100154656
【氏名又は名称】鈴木 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ロギノフ, エフゲニー
(72)【発明者】
【氏名】デスプラント, クロード‐アラン
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/165037(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0162344(US,A1)
【文献】特表2010-519080(JP,A)
【文献】特表2017-506575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B41F 15/12
B42D 25/369
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(x10)に光学効果層(OEL)を製造するプロセスであって、
a)前記基材(x10)にコーティング層(x20)を形成するように、前記基材(x10)の表面に板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を塗布するステップであって、前記コーティング組成物が第1の状態である、ステップと、
b)前記コーティング層(x20)を担持した前記基材(x10)を、第1の磁場ベクトル成分を提供する第1の磁場発生装置(x30)に配置するステップであって、前記第1の磁場発生装置(x30)が転写装置(TD)に取り付けられ、以て前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に前記第1の磁場ベクトル成分を受けさせる、ステップと、
コーティング層(x20)を担持した前記基材(x10)と前記第1の磁場発生装置(x30)を同時に、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動させるステップであって、前記第2の磁場発生装置(x40)が第2の磁場ベクトル成分を提供し、前記第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と前記第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率が、約4.0未
満である、ステップと、
以て、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部が二軸方向に配向されるように、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に、前記第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される時間依存性の合成磁場を受けさせる、ステップと、
c)前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するように、前記コーティング組成物を第2の状態に硬化させるステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記転写装置(TD)が回転磁気シリンダ(RMC)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記コーティング組成物を前記基材(x10)に塗布する前記ステップが、凹版印刷、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷及びフレキソ印刷からなる群から選択される印刷プロセスによって実施される、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記コーティング組成物が、UV-Vis硬化性組成物であり、前記硬化させるステップが、UV-Vis硬化によって実行される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記コーティング組成物を硬化させる前記ステップc)が、前記ステップb)と部分的に同時に実行される、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1の磁場発生装置(x30)が、双極磁石、四極磁石及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記第2の磁場発生装置(x40)が、a)千鳥状に線形配置された少なくとも3個の磁石であって、前記3個の磁石のそれぞれが、前記基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、フィードパスの同じ側にある前記少なくとも3個の磁石が、前記フィードパスの反対側の磁石の極性とは反対である、同じ極性を有する、少なくとも3個の磁石、b)線形永久磁石ハルバッハアレイ、c)2つの棒双極磁石の1つ又は複数の対であって、前記2つの棒双極磁石のそれぞれが、前記基材(x10)の表面に実質的に平行な磁気軸を有し、前記2つの棒双極磁石が、反対の磁気方向を有する、2つの棒双極磁石の1つ又は複数の対、d)2つの棒双極磁石(x41a、x41b)の1つ又は複数の対であって、前記2つの棒双極磁石のそれぞれが、前記基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、前記2つの棒双極磁石が、反対の磁気方向を有する、2つの棒双極磁石(x41a、x41b)の1つ又は複数の対、又はe)U字型磁石、を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が、板状の磁性薄膜干渉顔料粒子、板状の磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む板状の干渉コーティング顔料粒子、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される板状の光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記基材が、紙又はその他の繊維性材料、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック又はポリマー、複合材料及び混合物又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
転写装置(TD)、
第1の磁場ベクトル成分を提供する少なくとも1つ
の第1の磁場発生装置(x30)、及び
第2の磁場ベクトル成分を提供する少なくとも1つ
の第2の磁場発生装置(x40)、を備える印刷装置であって、
前記少なくとも1つの前記第1の磁場発生装置(x30)が、前記転写装置(TD
)に取り付けら
れ、
前記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)に配置された基材(x10)であって、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物によって形成されるコーティング層(x20)を担持した基材(x10)と前記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)とが同時に、静止した前記少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動して、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部が二軸方向に配向されるように、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に、前記第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される時間依存性の合成磁場を受けさせることができるように、前記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)及び前記少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)が構成され、前記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と前記少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率が、約4.0未満である、印刷装置。
【請求項11】
基材誘導システムをさらに備える、請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体の製造方法であって、
a)セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体を用意するステップと、
b)請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセスに従って光学効果層を用意して、前記光学効果層が、セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体に含まれるようにするステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、磁気的に配向された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含む光学効果層(OEL)を製造するためのプロセス及び印刷装置の分野に関する。特に、本発明は、OELを製造するためにコーティング層中の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を磁気的に配向し、上記OELをセキュリティ文書又はセキュリティ物品の偽造防止手段として、また装飾目的として使用するためのプロセス及び印刷装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
[002]例えばセキュリティ文書の分野において、セキュリティ要素の製造のために、配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子、特に光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むインク、組成物、コーティング又は層を使用することが当技術分野で知られている。配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング又は層は、例えば、米国特許第2,570,856号、米国特許第3,676,273号、米国特許第3,791,864号、米国特許第5,630,877号及び米国特許第5,364,689号に開示されている。セキュリティ文書の保護に有用な、特に魅力的な光学効果をもたらす、配向された磁性色シフト顔料粒子を含むコーティング又は層は、国際公開第2002/09002A2号及び国際公開第2005/002866A1号に開示されている。
【0003】
[003]例えば、セキュリティ文書のためのセキュリティ特徴は、一般に、一方で「潜在的」セキュリティ特徴、他方で「顕在的」セキュリティ特徴に分類することができる。潜在的セキュリティ特徴によってもたらされる保護は、そのような特徴は見つけるのが難しく、一般に見つけるために専用の装置及び知識が必要とされるという原理に依存するのに対して、「顕在的」セキュリティ特徴は、人間の感覚だけで容易に見つけることができ、例えば、そのような特徴は、目に見える及び/又は触覚により見つけることができてもよいが、依然として生成及び/又は複製するのが難しい。しかしながら、顕在的セキュリティ特徴の有効性は、セキュリティ特徴として容易に認知されるものであるかに依存する。
【0004】
[004]印刷インク又はコーティング中の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、対応する構造化された磁場を印加して、まだ硬化していない(すなわち、湿潤の)コーティング中で磁性又は磁化可能な顔料粒子を局所的に配向させ、その後でコーティングを固めることにより磁気誘導された画像、デザイン及び/又はパターンの生成を可能にする。その結果、固定された安定した磁気的に誘導された画像、デザイン又はパターンが得られる。コーティング組成物中の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向のための材料及び技術については、米国特許第2,418,479号、米国特許第2,570,856号、米国特許第3,791,864号、ドイツ特許出願公開第2006848-A号、米国特許第3,676,273号、米国特許第5,364,689号、米国特許第6,103,361号、欧州特許第0 406 667B1号、米国特許出願公開第2002/0160194号、米国特許出願公開第2004/0009308号、欧州特許出願公開第0 710 508A1号、国際公開第2002/09002A2号、国際公開第2003/000801A2号、国際公開第2005/002866A1号、国際公開第2006/061301A1号に開示されている。そのような方法で、偽造するのに極めて妨げになる磁気誘導されたパターンを生成することができる。問題となっているセキュリティ要素は、磁性若しくは磁化可能な顔料粒子又は対応するインクと、上記インクを印刷し、印刷されたインク中の上記顔料を配向させるために利用される特有の技術の両方がある場合にしか生成することができない。
【0005】
[005]本明細書に記載の方法及び装置は、板状の磁性顔料粒子を単軸配向させるために磁気アセンブリを使用する。磁性顔料粒子の単軸配向は、隣接する粒子が、互いに平行で磁場に平行な主軸を有し、顔料粒子の平面内の小軸が、適用された磁場によって制約されないか、又ははるかに制約され難い。
【0006】
[006]二軸配向した磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング又は層を製造する目的で、十分な強度の時間依存性の方向可変磁場を発生させる方法が開発されており、それにより磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向を可能にしている。
【0007】
[007]国際公開第2015/086257A1は、基材に光学効果層(OEL)を製造するための改良された方法を開示しており、上記プロセスは、2つの磁気配向ステップを含み、上記ステップは、i)板状の磁性又は磁気可能な顔料粒子の少なくとも一部を二軸配向させるように、板状の磁性又は磁気可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を、動的な、すなわち方向を変える第1の磁場発生装置の磁場に曝すステップと、ii)コーティング組成物を第2の磁場発生装置の静止した磁場に曝すステップとからなり、以て、上記第2の磁場発生装置によって転写されたデザインに従って、板状の磁性又は磁気可能な顔料粒子の少なくとも一部を一軸方向に再配向する。国際公開第2015/086257A1号に開示された方法が、従来技術と比較して改善された明るさ及びコントラストを示す光学効果層の製造を可能にするのに対し、上記プロセスは、2つの独立したステップを必要とし、第1のステップでは、磁性又は磁化可能な顔料粒子の事前整列のための追加のスペースを必要とする。この要件は、現在の印刷装置では容易にアクセスできない追加のスペースを必要とするため、高速の産業用印刷装置で実施するのは面倒であり、したがって、現在利用可能な使用済みの装置を適応させることになり、コストが高くなる。
【0008】
[008]したがって、光学効果層(OEL)を製造するための改良されたプロセスの必要性が残っており、上記方法は、上記装置の煩雑で面倒で高価な改造に頼ることなく、機械的に堅牢であり、産業用高速印刷装置、特に回転磁気配向シリンダを用いて実施することが容易である。上記必要性は、特に、目を引く動的効果を示す光学効果層(OEL)を生成して、高解像度及び高コントラストを組み合わせて提供するための改善されたプロセスに対して依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
[009]したがって、従来技術の欠点を克服することが本発明の目的である。これは、基材(x10)上に光学効果層(OEL)を製造するためのプロセスを提供することによって達成され、上記プロセスは、
a)上記基材(x10)にコーティング層(x20)を形成するように、上記基材(x10)の表面に板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を塗布するステップであって、上記コーティング組成物が第1の状態である、ステップと、
b)上記コーティング層(x20)を担持した上記基材(x10)を、第1の磁場ベクトル成分を提供する第1の磁場発生装置(x30)に配置するステップであって、上記第1の磁場発生装置(x30)が転写装置(TD)に取り付けられ、以て上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に上記第1の磁場ベクトル成分を受けさせる、ステップと、
コーティング層(x20)を担持した上記基材(x10)と上記第1の磁場発生装置(x30)を同時に、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動させるステップであって、上記第2の磁場発生装置(x40)が第2の磁場ベクトル成分を提供し、第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率が、約4.0未満、好ましくは約1.9未満、より好ましくは約1.5と約0.5との間である、ステップと、
以て、上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部が二軸方向に配向されるように、上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に、上記第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される時間依存性の合成磁場を受けさせる、ステップと、
c)上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するように、上記コーティング組成物を第2の状態に硬化させるステップと、
を含む。
【0010】
[010]また、本明細書には、本明細書に記載のプロセスによって製造される光学効果層(OEL)、及びセキュリティ文書、並びに本明細書に記載の1つ又は複数の光学OELを含む装飾的な要素及び物体が記載されている。
【0011】
[011]また、本明細書には、a)セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体を用意するステップと、b)本明細書に記載されているような、特に本明細書に記載されているプロセスによって得られるような光学効果層を用意して、光学効果層が、セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体に含まれるようにするステップと、を含む、セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体を製造する方法が記載されている。
【0012】
[012]また、本明細書には、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)、及び本明細書に記載の第2の磁場発生装置(x40)のうちの少なくとも1つを含む印刷装置が記載され、上記転写装置(TD)、好ましくは上記回転磁気シリンダ(RMC)が、転写装置に取り付けられ、本明細書に記載された、少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)を備える。
【0013】
[013]また、本明細書には、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を製造するための印刷装置の用途も記載されている。
【0014】
[014]本発明によって提供されるプロセスは、上記装置の煩雑で面倒で高価な改造に頼ることなく、機械的に堅牢であり、産業用高速印刷装置を用いて実施することが容易である。
【0015】
(項目1)
基材(x10)に光学効果層(OEL)を製造するプロセスであって、
a)前記基材(x10)にコーティング層(x20)を形成するように、前記基材(x10)の表面に板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を塗布するステップであって、前記コーティング組成物が第1の状態である、ステップと、
b)前記コーティング層(x20)を担持した前記基材(x10)を、第1の磁場ベクトル成分を提供する第1の磁場発生装置(x30)に配置するステップであって、前記第1の磁場発生装置(x30)が転写装置(TD)に取り付けられ、以て前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に前記第1の磁場ベクトル成分を受けさせる、ステップと、
コーティング層(x20)を担持した前記基材(x10)と前記第1の磁場発生装置(x30)を同時に、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動させるステップであって、前記第2の磁場発生装置(x40)が第2の磁場ベクトル成分を提供し、前記第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と前記第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率が、約4.0未満、好ましくは約1.9未満、より好ましくは約1.5と約0.5との間である、ステップと、
以て、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部が二軸方向に配向されるように、前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に、前記第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される時間依存性の合成磁場を受けさせる、ステップと、
c)前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するように、前記コーティング組成物を第2の状態に硬化させるステップと、
を含む、プロセス。
(項目2)
前記転写装置(TD)が回転磁気シリンダ(RMC)である、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記コーティング組成物を前記基材(x10)に塗布する前記ステップが、凹版印刷、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷及びフレキソ印刷からなる群から選択される印刷プロセスによって実施される、項目1又は2に記載のプロセス。
(項目4)
前記コーティング組成物が、UV-Vis硬化性組成物であり、前記硬化させるステップが、UV-Vis硬化によって実行される、項目1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目5)
前記コーティング組成物を硬化させる前記ステップc)が、前記ステップb)と部分的に同時に実行される、項目1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目6)
前記第1の磁場発生装置(x30)が、双極磁石、四極磁石及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目7)
前記第2の磁場発生装置(x40)が、a)千鳥状に線形配置された少なくとも3個の磁石であって、前記3個の磁石のそれぞれが、前記基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、フィードパスの同じ側にある前記少なくとも3個の磁石が、前記フィードパスの反対側の磁石の極性とは反対である、同じ極性を有する、少なくとも3個の磁石、b)線形永久磁石ハルバッハアレイ、c)2つの棒双極磁石の1つ又は複数の対であって、前記2つの棒双極磁石のそれぞれが、前記基材(x10)の表面に実質的に平行な磁気軸を有し、前記2つの棒双極磁石が、反対の磁気方向を有する、2つの棒双極磁石の1つ又は複数の対、d)2つの棒双極磁石(x41a、x41b)の1つ又は複数の対であって、前記2つの棒双極磁石のそれぞれが、前記基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、前記2つの棒双極磁石が、反対の磁気方向を有する、2つの棒双極磁石(x41a、x41b)の1つ又は複数の対、又はe)U字型磁石、を含む、項目1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目8)
前記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が、板状の磁性薄膜干渉顔料粒子、板状の磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む板状の干渉コーティング顔料粒子、及びこれらの2種以上の混合物からなる群から選択される板状の光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子である、項目1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目9)
前記基材が、紙又はその他の繊維性材料、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック又はポリマー、複合材料及び混合物又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、項目1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目10)
転写装置(TD)、好ましくは回転磁気シリンダ(RMC)、及び項目1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの前記第2の磁場発生装置(x40)、を備える印刷装置であって、
前記転写装置(TD)、好ましくは前記回転磁気シリンダ(RMC)が、前記転写装置に取り付けられた、項目1~9のいずれか一項に記載の少なくとも1つの前記第1の磁場発生装置(x30)を備える、印刷装置。
(項目11)
基材誘導システムをさらに備える、項目10に記載の印刷装置。
(項目12)
項目1~9のいずれか一項に記載のプロセスにより製造された、又は項目10又は11に記載の印刷装置を使用して製造された、光学効果層(OEL)。
(項目13)
項目12に記載の1つ又は複数の光学効果層(OEL)を含むセキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体。
(項目14)
セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体の製造方法であって、
a)セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体を用意するステップと、
b)項目1~9のいずれか一項に記載のプロセスに従って光学効果層を用意して、前記光学効果層が、セキュリティ文書又は装飾的な要素又は物体に含まれるようにするステップと、を含む、方法。
本明細書に記載された光学効果層(OEL)及びその製造は、図面及び特定の実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、コーティング層(120)を担持した基材(110)が、i)転写装置(TD)、特に回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(130)と、ii)静止した第2の磁場発生装置(140)に対して露出される様子を模式的に示しており、コーティング層(120)を担持した基材(110)は、静止した第2の磁場発生装置(140)の近傍で第1の磁場発生装置(130)と同時に移動する。コーティング層(120)は、光学効果層(OEL)が形成されるように、硬化ユニット(150)で硬化される。
【
図2】
図2は、第1の時間非依存性の磁場ベクトル成分を提供する第1の磁場発生装置(230)と、第2の磁場ベクトル成分を提供する静止した第2の磁場発生装置(240)とを含む組み合わせの上面図を模式的に示している。第1の磁場発生装置(230)は、第2の磁場発生装置(240)の近傍でコーティング層(220)(図示せず)を担持した基材(210)と同期して同時に移動する棒双極磁石である。
【
図3】
図3は、第1の時間非依存性の磁場ベクトル成分(H1)を提供する第1の磁場発生装置(330)の磁場と、第2の磁場ベクトル成分(H2)を提供する第2の磁場発生装置(340)の磁場と、第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される、すなわち、H1及びH2のベクトル付加から生じる合成磁場(H3)とを模式的に示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明にしたがって、転写装置(TD)、特に線形磁気転写装置(LMTD)を使用して、基材(410)上のコーティング層(420)に含まれる板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向のためのプロセスを概略的に示す図であり、上記プロセスは、コーティング層(420)を担持する基材(410)を、第1の磁場発生装置(430)とともに、2つの双極棒磁石(441a及び441b)を含む静止した第2の磁場発生装置(440)の近傍で同時に移動する(灰色の矢印を参照)ステップを含む。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aの第1及び第2の磁場発生装置(430、440)の断面を模式的に示す図である。第1の磁場発生装置(430)の棒双極は、ホルダ(431)内に含まれており、上記ホルダは、支持ブロック(432)及びレール(433)の上に配置されている。第2の磁場発生装置(440)の2つの双極棒磁石(441a、441b)は、フレーム(443a~c)に固定された2つのホルダ(442a、442b)に挿入される。
【
図4C】
図4Cは、
図4A~Bの第1の磁場発生装置(430)の断面を模式的に示す図である。第1の磁場発生装置(430)は、支持ブロック(432)とレール(433)によって支持されたホルダ(431)に含まれ、静止した第2の磁場発生装置の近傍で移動可能であり、コーティング層(420)を担持した基材(410)は上記ホルダ(431)の上に配置されている。
【
図5A】
図5Aは、
図4A~Cに描かれたものと同様の第1の磁場発生装置(530)及び第1の磁場発生装置(530)の磁束密度を測定するためのホールプローブ(560)の上面図を模式的に示す図である。
【
図5B】
図5Bは、
図4A~Cに描かれたものと同様の第1の磁場発生装置(530)及び第1の磁場発生装置(530)の磁束密度を測定するためのホールプローブ(560)の断面図を模式的に示す図である。
【
図5C】
図5Cは、
図4A~Cに描かれたものと同様の第1の磁場発生装置(530)及び基材(510)上のコーティング層(520)の上面図を模式的に示す図である。
【
図5D】
図5Dは、
図4A~Cに描かれたものと同様の第1の磁場発生装置(530)及び基材(510)上のコーティング層(520)の断面図を模式的に示す図である。
【
図6A】
図6Aは、
図4A~Cに描かれたものと同様の第2の磁場発生装置(640)と、第2の磁場発生装置(640)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(660)(
図6A)とを模式的に示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図4A~Cで描かれたものと同様の第2の磁場発生装置(640)、及び第2の磁場発生装置(640)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(660)の上面図を模式的に示す図である。
【
図6C】
図6Cは、
図4A~Cで描かれたものと同様の第2の磁場発生装置(640)、及び第2の磁場発生装置(640)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(660)の断面図を模式的に示す図である。
【
図7A】
図7Aは、
図7Aに示されたOELにおける反射ビーム方向を測定するために使用されるコノスコピック散乱法の動作原理を模式的に示す図である。
【
図7B】
図7Bは、OEL内の顔料粒子の配向を決定するために使用される完全反射コノスコピック散乱計のセットアップを模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、本発明に従った装置を用いて調製されたOELを、コノスコピック散乱計を用いて分析する方法を模式的に示す図である。
【
図9A】
図9Aは、高度な二軸配置で配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子で作成されたOELの焦点面(960)の結果としての反射光スポットを模式的に示す図であり、装置を用いて調製された光学効果層(OEL)を分析するためにコノスコピック散乱法の測定原理が使用された。
【
図9B】
図9Bは、低度な二軸配置で配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子で作成されたOELの焦点面(960)の結果としての反射光スポットを模式的に示す図であり、装置を用いて調製された光学効果層(OEL)を分析するためにコノスコピック散乱法の測定原理が使用された。
【
図9C】
図9Cは、高度な二軸配置で配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子で作成されたOELの方位角の分布を模式的に示す図であり、装置を用いて調製された光学効果層(OEL)を分析するためにコノスコピック散乱法の測定原理が使用された。
【
図9D】
図9Dは、低度な二軸配置で配向された磁性又は磁化可能な顔料粒子で作成されたOELの方位角の分布を模式的に示す図であり、装置を用いて調製された光学効果層(OEL)を分析するためにコノスコピック散乱法の測定原理が使用された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
[015]以下の定義は、本明細書で議論され、特許請求の範囲に記載されている用語の意味を解釈するために使用される。
【0018】
[016]本明細書で使用される不定冠詞「1つの(a)」は、1つ及び複数を示し、その指示名詞を必ずしも単数形に限定するものではない。
【0019】
[017]本明細書で使用される用語「少なくとも」は、1つ又は2つ以上、例えば1つ又は2つ又は3つを定義するものである。
【0020】
[018]本明細書中で使用される場合、「約」という用語は、問題となっている量又は値が、指定された特定の値又はその近辺のその他の値であってもよいことを意味する。一般に、特定の値を指している「約」という用語は、値の±5%以内の範囲を示すことが意図される。一例として、「約100」語句は、100±5の範囲、すなわち95~105の範囲を指す。一般に、「約」という用語が使用される場合、示した値の±5%の範囲内において本発明による同様の結果又は効果が得られることが予想できる。
【0021】
[019]本明細書中で使用される場合、「及び/又は」という用語は、前述の群の要素のすべて又は1つのみのいずれかが存在してもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、若しくはBのみ又はA及びBの両方の存在」を意味することになる。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない、すなわち「Aのみが存在しBは存在しない」可能性も含む。
【0022】
[020]本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語は、非排他的で、制約のないことが意図される。したがって、例えば、化合物Aを含むコーティング組成物は、A以外の他の化合物を含んでもよい。しかしながら、「含む」という用語は、特定の実施形態として、「本質的に~からなること」及び「からなること」のより限定的な意味も含むため、例えば、「A、B及び任意選択でCを含むコーティング組成物」が、(本質的に)A及びBからなり、又は(本質的に)A、B及びCからなる場合もある。
【0023】
[021]本明細書で使用される「光学効果層(OEL)」という用語は、配向した板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子とバインダを含むコーティング又は層を意味し、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は磁場によって配向され、配向した板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、磁気的に誘導された画像を形成するために、その配向及び位置で(すなわち、硬化/キュア後に)固定/凍結される。
【0024】
[022]「コーティング組成物」という用語は、固体基材に光学効果層(EOL)を形成することが可能であり、印刷法によって塗布することが好ましいが、それだけではない任意の組成物を指す。コーティング組成物は、本明細書に記載された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子と、本明細書に記載されたバインダとを含む。
【0025】
[023]本明細書で使用される用語「湿潤」とは、まだキュアしていないコーティング層を意味し、例えば、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が、それらに作用する外力の影響下で、それらの位置及び配向を変化させることがまだ可能であるコーティングを意味する。
【0026】
[024]本明細書で使用される用語「指標」は、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図面を含むがこれらに限定されないパターンのような不連続な層を意味する。
【0027】
[025]「硬化」という用語は、まだ硬化していない(すなわち、湿潤の)第1の物理的状態にあるコーティング組成物の粘度を上昇させて、第2の物理的状態、すなわち、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が現在の位置及び配向で固定/凍結され、もはや移動も回転もできない硬化状態又は固体状態に変換するプロセスを表すために使用される。
【0028】
[026]「セキュリティ文書」という用語は、通常、少なくとも1つのセキュリティ特徴によって偽造又は詐欺から保護されている文書を指す。セキュリティ文書の例としては、貴重文書及び貴重商品が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
[027]「セキュリティ特徴」という用語は、認証目的に使用できる画像、パターン、又はグラフィック要素を表すために使用される。
【0030】
[028]本明細書が「好ましい」実施形態/特徴に言及している場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせも、この「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせが技術的に意味のあるものである限り、開示されているものとする。
【0031】
[029]本発明は、基材に光学効果層(OEL)を製造するためのプロセスを提供する。本発明に従ったプロセスは、
a)上記基材(x10)に本明細書に記載のコーティング層(x20)を形成するように、本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を本明細書に記載の基材(x10)表面に塗布するステップであって、上記コーティング組成物が第1の状態にある、ステップと、
b)コーティング層(x20)を担持した基材(x10)を本明細書に記載の第1の磁場発生装置(x30)に配置し、本明細書に記載の第1の磁場ベクトル成分を提供するステップであって、上記第1の磁場発生装置(x30)が転写装置(TD)に取り付けられ、以て、板状の磁性又は磁気可能な顔料粒子に上記第1の磁場ベクトル成分を受けさせる、ステップと、
コーティング層(x20)を担持した上記基材(x10)と上記第1の磁場発生装置(x30)を同時に、本明細書に記載の静止した(すなわち、転写装置(TD)と共に移動しない)第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動させるステップであって、上記第2の磁場発生装置(x40)が本明細書に記載の第2の磁場ベクトル成分を提供し、第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率が、約4.0未満、好ましくは約1.9未満、より好ましくは約1.5と約0.5との間である、ステップと、
以て、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部が二軸方向に配向されるように、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子に、本明細書に記載された第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される時間依存性の合成磁場を受けさせる、ステップと、
c)板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を採用された位置及び配向に固定するように、コーティング組成物を第2の状態に硬化させるステップと、を含む。
【0032】
[030]本発明によれば、光学効果層(OEL)を製造するための信頼性が高く、容易に実施できるプロセスが提供される。基材上の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の磁気配向は、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(x30)上に、上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層(x20)を担持した基材(x10)を配置し、それらを静止した第2の磁場発生装置に送信することによって行われ、第1の磁場発生装置(x30)とコーティング層(x20)を担持した基材(x10)は、第1の磁場発生装置(x30)及び転写装置(TD)と同時に移動し、上記第2の磁場発生装置は静止した装置、すなわち、転写装置(TD)と一緒に移動しない装置である。
【0033】
[031]コーティング層(x20)を担持する基材(x10)は、第1の磁場発生装置(x30)と同時に移動するので、第1の磁場発生装置(x30)は、第1の時間非依存性の磁場ベクトル成分を提供し、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、第1の磁場ベクトル成分を受け、第1の磁場ベクトル成分は、コーティング層の基準フレーム内で時間非依存性であり、コーティング層の基準フレーム内に固定された平面内で時間非依存性であることが好ましい。
【0034】
[032]本発明は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層(x20)を担持した基材(x10)が、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で(すなわち、静止した第2の磁場発生装置(x40)の磁場を通って)、第1の磁場発生装置(x30)と同期して同時に移動することを利用しており、第2の磁場発生装置(x40)は、転写装置(TD)と共に移動せず、第2の磁場ベクトル成分を提供する。第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成された合成磁場は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部の二軸配向を可能にする。本明細書に記載されたプロセスの間に、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、第1及び第2の磁場ベクトル成分のベクトル和である時間依存性の合成磁場を受け、不均一な合成磁場内で移動する。「時間依存性の磁場」とは、コーティング層の個々の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子によって追跡される運動の経路に沿って、磁場が、コーティング層の基準フレーム内の方向において時間依存性(すなわち、時間変化性)、又は方向及び強度において時間依存性(すなわち、時間変化性)、好ましくは、コーティング層の基準フレーム内に固定された平面内で時間依存性(すなわち、時間変化性)であることを意味する。このようにして、コーティング層の板状の磁性又は磁化可能な粒子の少なくとも一部が整列する傾向があり、その結果、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部の二軸配向、すなわち、板状の顔料粒子の2つの最大の主軸が拘束される配向が生じる。まだ硬化していない(すなわち、湿潤の)コーティング層に所望の効果が形成されると、コーティング組成物は、OEL内の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の相対位置及び配向を永久に固定/凍結するように、部分的に又は完全に硬化される。
【0035】
[033]本明細書に記載される転写装置(TD)は、回転磁気配向シリンダ(RMC)又は例えば線形ガイドのような線形磁気転写装置(LMTD)であってもよい。本明細書に記載される転写装置(TD)は、回転磁気配向シリンダ(RMC)であることが好ましい。
【0036】
[034]
図1に示すように、本明細書に記載の第1の磁場発生装置(x30)は、本明細書に記載の回転磁気配向シリンダ(RMC)である転写装置(TD)に取り付けられており、回転磁気配向シリンダ(RMC)は、高速印刷速度で連続的に動作する回転式、枚葉式又はウェブ式の工業用印刷機の一部であり、特に、第1の磁場発生装置(x30)は、回転磁気シリンダ(RMC)の周方向の溝又は横方向の溝に取り付けられている。本明細書に記載の第1の磁場発生装置(x30)を含む回転磁気配向シリンダ(RMC)は、コーティング層内の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を配向させるように、本明細書に記載の静止した第2の磁場発生装置(x40)を含む印刷又はコーティング装置において、又はそれらと一緒に、又はそれらの一部として使用されることを目的としている。
【0037】
[035]本明細書に記載のプロセスは、a)コーティング層(x20)を形成するように、本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を、本明細書に記載の基材(x10)表面に塗布するステップを含み、コーティング組成物は、層としての塗布を可能にし、まだ硬化していない(すなわち、湿潤の)状態である第1の物理的状態にあり、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子はバインダ材料内で移動し、回転することができる。本明細書に記載のコーティング組成物は、基材(x10)表面に提供されるので、コーティング組成物は、少なくとも本明細書に記載のようなバインダ材料と、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子とを含み、コーティング組成物は、所望の印刷又はコーティング装置での処理を可能にする形態である。ステップa)は、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷及び凹版印刷(当技術分野では彫刻銅板印刷及び彫刻鋼型印刷とも呼ばれる)からなる群、より好ましくは、凹版印刷、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷及びフレキソ印刷からなる群、さらに好ましくは、凹版印刷、スクリーン印刷、輪転グラビア印刷及びフレキソ印刷からなる群から選択される印刷プロセスによって行われることが好ましい。
【0038】
[036]スクリーン印刷(当技術分野では、シルクスクリーン印刷とも呼ばれる)は、ステンシルプロセスであり、例えばポリアミドやポリエステルなどの合成繊維からなる絹、モノフィラメント又はマルチフィラメント、又は例えば木材又は金属(例えばアルミニウム又はステンレス鋼)で作られたフレーム上にしっかりと張られた金属糸などの細かい布製のメッシュによって支持されたステンシルを通してインクは表面に転写される。或いは、スクリーン印刷用メッシュは、化学的にエッチングされたもの、レーザーエッチングされたもの、又はガルバニックに形成された多孔質金属箔、例えばステンレス鋼箔であってもよい。メッシュの細孔は、非画像領域では閉塞され、画像領域では開放されたままであり、像担持体はスクリーンと呼ばれる。スクリーン印刷は、フラットベッド又はロータリータイプの場合がある。スクリーン印刷は、例えばThe Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、58~62頁、及びPrinting Technology、J.M.Adams及びP.A.Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、293~328頁に、さらに記載されている。
【0039】
[037]輪転グラビア(当技術分野では、グラビアとも呼ばれる。)は、画像要素がシリンダの表面に刻まれる印刷プロセスである。非画像領域は、一定の当初のレベルにある。印刷前に、印刷版全体(非印刷及び印刷要素)にインクを付け、インクで満たす。インクを、印刷前にワイパ又はブレードにより非画像から除去し、したがってインクはセル内にのみ残される。画像を、典型的には2~4バールの範囲の圧力、及び基材とインクとの間の接着力によって、セルから基材に転写する。輪転グラビアという用語は、例えば異なるタイプのインクに依拠する凹版印刷プロセス(当技術分野では、彫刻鋼製ダイ又は銅版印刷プロセスとも呼ばれる。)を包含しない。さらなる詳細は、「Handbook of print media」、Helmut Kipphan, Springer Edition、48頁と、The Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、42~51頁とに提示されている。
【0040】
[038]フレキソ印刷は、ドクターブレード、好ましくはチャンバ付きドクターブレード、アニロックスローラ、及び版胴を備えたユニットを使用することが好ましい。アニロックスローラは、その体積及び/又は密度がインク付着速度を決定する小さいセルを有することが有利である。ドクターブレードは、アニロックスローラに当てた状態で配置され、同時に過剰なインクを擦り落とす。アニロックスローラは、インクを版胴に転写し、この版胴が最終的にインクを基材に転写する。特定のデザインは、デザイン付きフォトポリマー版を使用して実現されてもよい。版胴は、ポリマー又はエラストマー材料から作製することができる。ポリマーは、版状のフォトポリマーとして、時にはスリーブ上のシームレスコーティングとして、主に使用される。フォトポリマー版は、紫外(UV)光によって硬化される感光性ポリマーから作製される。フォトポリマー版は、必要とされるサイズに切断され、UV露光ユニット内に配置される。版の片面はUV光に完全に露光されて、版の基部を硬化し又はキュアする。次いで版を裏返し、ジョブの陰画を、キュアされていない面に載置し、版をさらにUV光で露光する。この操作は、画像領域の版を硬化する。次いで版を加工して、未硬化のフォトポリマーを非画像領域から除去し、これらの非画像領域で版面を低下させる。加工後、版を乾燥し、UV光の後露光線量を与えて版全体をキュアする。フレキソ印刷用の版胴の作製は、Printing Technology、J.M.Adams及びP.A.Dolin、Delmar Thomson Learning、第5版、359~360頁と、The Printing ink manual、R.H.Leach及びR.J.Pierce、Springer Edition、第5版、33~42頁とに記載されている。
【0041】
[039]本明細書に記載のコーティング組成物及び本明細書に記載のコーティング層(x20)は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含む。本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、約5重量%~約40重量%、より好ましくは約10重量%~約30重量%の量で存在することが好ましく、その重量パーセントは、コーティング組成物の全重量に基づく。
【0042】
[040]準一次元粒子と考えることができる針状顔料粒子とは対照的に、板状の顔料粒子は、寸法のアスペクト比が大きいため、準二次元粒子である。板状の顔料粒子は、二次元構造と考えることができ、寸法X及び寸法Yが寸法Zよりも実質的に大きい。板状の顔料粒子はまた、当技術分野では、扁平粒子又はフレークと呼ばれている。このような顔料粒子は、顔料粒子を横切る最長寸法に対応する主軸Xと、Xに垂直で顔料粒子を横切る第2の軸Yとを備えて記述されてもよい。言い換えれば、XY平面は、顔料粒子の第1及び第2の最長寸法によって形成される平面を概略的に定義し、Z寸法は無視される。
【0043】
[041]本明細書に記載された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、その非球状の形状により、硬化/キュアしたバインダ材料が少なくとも部分的に透明である入射電磁放射に関して非等方性反射率を有する。本明細書で使用されるように、用語「非等方性反射率」は、粒子によって特定の(視聴)方向(第2の角度)に反射される第1の角度からの入射放射線の割合が、粒子の配向の関数であること、すなわち、第1の角度に関する粒子の配向の変化が、視聴方向への反射の異なる大きさをもたらし得ることを意味する。
【0044】
[042]本明細書に記載のOELは、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含み、顔料粒子は、顔料粒子の形状によって非等方性反射率を有する。本明細書に記載のOELにおいて、本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向を固定する硬化したバインダ材料を含むコーティング組成物中に分散されている。バインダ材料は、少なくともその硬化状態又は固体状態(本明細書では第2の状態とも呼ばれる)において、少なくとも部分的に、200nmから2500nmの間に含まれる波長範囲、すなわち、典型的には「光スペクトル」と呼ばれ、電磁スペクトルの赤外、可視、及びUV部分を含む波長範囲内の電磁放射に対して透明である。したがって、硬化状態又は固体状態のバインダ材料に含まれる粒子及びその配向依存性反射率は、この範囲内のいくつかの波長でバインダ材料を通して知覚することができる。硬化したバインダ材料は、200nmから800nmの間、より好ましくは400nmから700nmの間に含まれる波長範囲の電磁放射に対して少なくとも部分的に透明であることが好ましい。本明細書において、「透明」という用語は、OELに存在するような20μmの硬化したバインダ材料の層(板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含まないが、そのような構成要素が存在する場合にはOELの他のすべての任意の構成要素を含む)を通る電磁放射の透過率が、当該波長において少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%であることを意味する。これは、例えば、確立された試験方法、例えばDIN5036-3(1979-11)に従って、硬化したバインダ材料(板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含まない)の試験片の透過率を測定することによって決定することができる。OELが潜在的セキュリティ特徴として機能する場合、選択された非可視波長を含むそれぞれの照明条件の下でOELによって生成された(完全な)光学効果を検出するために、典型的な技術的手段が必要とされる、この検出は、入射放射線の波長が可視範囲外、例えば近紫外範囲で選択されることを必要とする。
【0045】
[043]本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の適切な例としては、以下に限定されないが、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)からなる群から選択される磁性金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル若しくはそれらの2つ以上の混合物の磁性合金、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル若しくはそれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物、又はそれらの2つ以上の混合物を含む顔料粒子が挙げられる。金属、合金及び酸化物に関連する「磁性」という用語は、強磁性又はフェリ磁性金属、合金及び酸化物を対象とする。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル又はそれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物は、純粋な酸化物又は混合酸化物であってよい。磁性酸化物の例としては、以下に限定されないが、酸化鉄、例えば、赤鉄鉱(Fe2O3)、磁鉄鉱(Fe3O4)、二酸化クロム(CrO2)、磁性フェライト(MFe2O4)、磁性スピネル(MR2O4)、磁性ヘキサフェライト(MFe12O19)、磁性オルトフェライト(RFeO3)、磁性ガーネットM3R2(AO4)3が挙げられ、Mは二価金属を表し、Rは三価金属を表し、Aは四価金属を表す。
【0046】
[044]本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の例としては、以下に限定されないが、コバルト(Co)、鉄(Fe)、又はニッケル(Ni)などの1つ又は複数の磁性金属、及び鉄、コバルト又はニッケルの磁性合金でできている磁性層Mを含む顔料粒子が挙げられ、磁性又は磁化可能な顔料粒子は、1つ又は複数の付加的な層を含む多層構造であってもよい。1つ又は複数の付加的な層は、独立してフッ化マグネシウム(MgF2)などの金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)及び酸化アルミニウム(Al2O3)からなる群から選択される1つ若しくは複数、より好ましくは、二酸化ケイ素(SiO2)でできている層A、又は独立して金属及び金属合金からなる群から選択される1つ若しくは複数、好ましくは、反射性金属及び反射性金属合金からなる群から選択される1つ若しくは複数、より好ましくは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)及びニッケル(Ni)からなる群から選択される1つ若しくは複数、さらにより好ましくは、アルミニウム(Al)でできている層B、或いは上記のものなどの1つ又は複数の層A及び上記のものなどの1つ又は複数の層Bの組み合わせであることが好ましい。上記の多層構造である板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の典型的な例としては、以下に限定されないが、A/M多層構造、A/M/A多層構造、A/M/B多層構造、A/B/M/A多層構造、A/B/M/B多層構造、A/B/M/B/A/多層構造、B/M多層構造、B/M/B多層構造、B/A/M/A多層構造、B/A/M/B多層構造、B/A/M/B/A/多層構造が挙げられ、層A、磁性層M及び層Bは上記のものから選択される。
【0047】
[045]本明細書に記載のコーティング組成物は、板状の光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子、及び/又は光学的に可変な性質を有しない板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含み得る。本明細書に記載された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部は、板状の光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子によって構成されるのが好ましい。本明細書に記載の光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むインク、コーティング組成物、又はコーティング層を担持している物品又はセキュリティ文書を人間の感覚だけで潜在的な偽造品から容易に検出、認識及び/又は識別することを可能にする、光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子のカラーシフト特性によってもたらされる顕在的セキュリティに加えて、光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子の光学的特性がOELの認識ための機械読取り可能な手段として使用されてもよい。したがって、光学的に可変な磁性又は磁化可能な顔料粒子の光学的特性は、認証プロセスにおける潜在的又は半潜在的セキュリティ特徴として同時に使用されてもよく、顔料粒子の光学的(例えば、スペクトル)特性が分析される。
【0048】
[046]OELを製造するためのコーティング層における光学的に可変な板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の使用は、セキュリティ文書用途におけるセキュリティ特徴としてのOELの重要性を高める。その理由は、そのような材料は、セキュリティ文書印刷産業が確保しており、一般に商業的に入手できないからである。
【0049】
[047]上述の通り、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部は、光学的に可変な板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子によって構成されるのが好ましい。これらは、磁性薄膜干渉顔料粒子、磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む干渉コーティング顔料粒子及びそれら2つの以上の組み合わせからなる群から選択されるのが好ましい。
【0050】
[048]磁性薄膜干渉顔料粒子は当業者に知られており、例えば、米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250A2号、欧州特許第0686675B1号、国際公開第2003/000801A2号、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833A1号、欧州特許出願公開第2402401A1号及びそれらの公報で挙げられた文献において開示されている。磁性薄膜干渉顔料粒子は、5層のファブリーペロー型多層構造を有する顔料粒子及び/又は6層のファブリーペロー型多層構造を有する顔料粒子及び/又は7層のファブリーペロー型多層構造を有する顔料粒子を含むのが好ましい。
【0051】
[049]5層のファブリーペロー型多層構造は、吸収層/誘電層/反射層/誘電層/吸収層の多層構造からなるのが好ましく、反射層及び/又は吸収層も磁性層であり、反射層及び/又は吸収層は、ニッケル、鉄及び/若しくはコバルト、並びに/又はニッケル、鉄及び/若しくはコバルトを含む磁性合金並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁性層であるのが好ましい。
【0052】
[050]6層のファブリーペロー型多層構造は、吸収層/誘電層/反射層/磁性層/誘電層/吸収層の多層構造からなるのが好ましい。
【0053】
[051]7層のファブリーペロー型多層構造は、吸収層/誘電層/反射層/磁性層/反射層/誘電層/吸収層の多層構造からなるのが好ましく、例えば、米国特許第4,838,648号に開示されている。
【0054】
[052]本明細書に記載の反射層は、独立して金属及び金属合金からなる群から選択される1つ又は複数、好ましくは、反射性金属及び反射性金属合金からなる群から選択される1つ又は複数、より好ましくは、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びそれらの合金からなる群から選択される1つ又は複数、さらにより好ましくは、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)及びそれらの合金からなる群から選択される1つ又は複数、さらにより好ましくは、アルミニウム(Al)でできているのが好ましい。誘電層は、独立してフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化ナトリウムアルミニウム(例えば、Na3AlF6)、フッ化ネオジム(NdF3)、フッ化サマリウム(SmF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)などの金属フッ化物、及び酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)などの金属酸化物からなる群から選択される1つ又は複数、より好ましくは、フッ化マグネシウム(MgF2)及び二酸化ケイ素(SiO2)からなる群から選択される1つ又は複数、さらにより好ましくは、フッ化マグネシウム(MgF2)でできているのが好ましい。吸収層は、独立してアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)スズ(Sn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、それらの金属酸化物、それらの金属硫化物、それらの金属炭化物、及びそれらの金属合金からなる群から選択される1つ又は複数、より好ましくは、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、それらの金属酸化物、及びそれらの金属合金からなる群から選択される1つ又は複数、さらにより好ましくは、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びそれらの金属合金からなる群から選択される1つ又は複数でできているのが好ましい。磁性層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含むのが好ましい。7層のファブリーペロー型構造を含む磁性薄膜干渉顔料粒子が好適な場合、磁性薄膜干渉顔料粒子がCr/MgF2/Al/Ni/Al/MgF2/Cr多層構造からなる7層の吸収層/誘電層/反射層/磁性層/反射層/誘電層/吸収層のファブリー-ペロー型多層構造を含むことが特に好適である。
【0055】
[053]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は、ヒトの健康及び環境に対して安全であると考えられ、例えば、5層のファブリーペロー型多層構造、6層のファブリーペロー型多層構造及び7層のファブリーペロー型多層構造に基づく多層顔料粒子であってもよく、上記顔料粒子は、鉄を約40重量%~約90重量%、クロムを約10重量%~約50重量%及びアルミニウムを約0重量%~約30重量%含み、実質的にニッケルを含まない組成物を有する磁性合金を含む1つ又は複数の磁性層を含む。ヒトの健康及び環境に対して安全であると考えられる多層の顔料粒子の典型的な例は、欧州特許出願公開第2402401A1号に見出すことができ、この文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込んだものとする。
【0056】
[054]本明細書に記載される磁性薄膜干渉顔料粒子は、ウェブ上への種々の必要とされる層の、従来の堆積技法によって、典型的には製造される。例えば物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)、又は電解析出による、所望の数の層の堆積後、剥離層を好適な溶媒に溶解することによって又は材料をウェブから剥がすことによって、層の積層体をウェブから取り外す。次いでそのように得られた材料を破壊して薄片にし、これらの薄片を、研削、ミリング(例えば、ジェットミリングプロセスなど)、又は必要とされるサイズの顔料粒子が得られるような任意の好適な方法によって、さらに加工しなければならない。得られた生成物は、破断された縁部、不規則な形状、及び種々のアスペクト比を有する平らな薄片からなる。好適な磁性薄膜干渉顔料粒子の調製に関するさらなる情報は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第1710756A1号及び欧州特許出願公開第1666546A1号に見出すことができる。
【0057】
[055]光学的に可変な特性を示す、好適な磁性コレステリック液晶顔料粒子としては、磁性単層化コレステリック液晶顔料粒子及び磁性多層化コレステリック液晶顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。そのような顔料粒子は、例えば国際公開第2006/063926A1号、米国特許第6,582,781号、及び米国特許第6,531,221号に開示されている。国際公開第2006/063926A1号は、磁化可能性などの追加の特定の特性と共に高輝度及びカラーシフト特性を備える、単層及びこの単層から得られた顔料粒子を開示している。開示された単層と、上記単層を粉砕することによって得られた顔料粒子は、3次元架橋コレステリック液晶混合物及び磁性ナノ粒子を含む。米国特許第6,582,781号及び米国特許第6,410,130号は、配列A1/B/A2を含む板状のコレステリック多層顔料粒子を開示しており、A1及びA2は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれが少なくとも1つのコレステリック層を含み、Bは、層A1及びA2を透過した光のすべて又は一部を吸収し且つ磁気特性を与える中間層である。米国特許第6,531,221号は、配列A/B及び任意選択でCを含む板状のコレステリック多層顔料粒子を開示しており、A及びCは、磁気特性を与える顔料粒子を含む吸収層であり、Bはコレステリック層である。
【0058】
[056]1種又は複数種の磁性材料を含む好適な干渉コーティング顔料には、1つ又は複数の層でコーティングされたコアからなる群から選択される基材からなる構造が含まれるがこれらに限定されず、コア又は1つ若しくは複数の層の少なくとも1つは、磁気特性を有する。例えば、好適な干渉コーティング顔料は、上述のような磁性材料で作製されたコアであって、1種又は複数種の金属酸化物で作製された1つ又は複数の層でコーティングされたコアを含み、或いは、合成又は天然の雲母、層状化ケイ酸塩(例えば、タルク、カオリン、及び絹雲母)、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、黒鉛、及びこれらの2種以上の混合物で作製されたコアからなる構造を有する。さらに、着色層などの1つ又は複数の追加の層が存在していてもよい。
【0059】
本明細書に記載される磁性又は磁化可能顔料粒子は、これらの粒子の、コーティング組成物及びコーティング層に生じ得る任意の劣化からの保護、及び/又はこれらの粒子の、上記コーティング組成物及びコーティング層への組込みの促進がなされるように、表面処理されていてもよく、典型的には腐食防止剤の材料及び/又は湿潤剤を使用してもよい。
【0060】
[057]さらに、コーティング層を形成するように本明細書に記載のコーティング組成物を本明細書に記載の基材表面に塗布すること(ステップa)に続いて、コーティング層を担持する基材は、本明細書に記載の転写装置(TD)に、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられている第1の磁場発生装置(x30)の上に配置される。コーティング層(x20)を担持する基材(x10)は、第1の磁場発生装置(x30)の上に直接配置されてもよく、すなわち、基材は、第1の磁場発生装置(x30)と直接接触しているか、又は、基材(x10)と第1の磁場発生装置(x30)との間に隙間が存在してもよい。
【0061】
[058]一実施形態によれば、
図4A~Cに示すように、コーティング層(x20)を担持した基材(x10)は、基材(x10)と第1の磁場発生装置(x30)との間に隙間を有して第1の磁場発生装置(x30)の上に配置され、上記隙間は、1つ又は複数のホルダ、1つ又は複数のプレート、又は1つ又は複数のスペーサ(x31)を使用することによって得られてもよい。ホルダ、プレート又は1つ又は複数のスペーサ(x31)は、独立して、低導電性材料、非導電性材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1つ又は複数の非磁性材料、例えばエンジニアリングプラスチック及びポリマー、チタン、チタン合金、及びオーステナイト鋼(すなわち非磁性鋼)でできているのが好ましい。エンジニアリングプラスチック及びポリマーとしては、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)及びその誘導体、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、コポリエーテルエステル、ポリイミド、ポリエーテルイミド、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)コポリマー、フッ素化及びパーフルオロポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、並びに液晶ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい材料は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、POM(ポリオキシメチレン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ナイロン(登録商標)(ポリアミド)、及びPPSである。ホルダ、プレート、又は1つ又は複数のスペーサ(x31)は、優れた機械的安定性と低い電気伝導性の利点を有するため、1つ又は複数のチタンベースの材料から独立して作られるのが好ましい。ホルダ、プレート又は1つ又は複数のスペーサ(x31)はまた、加工が容易であるという利点を有するアルミニウム又はアルミニウム合金で作られていてもよい。
【0062】
[059]コーティング層(x20)を担持した基材(x10)が第1の磁場発生装置(x30)の上にある間、上記コーティング層(x20)は、静止した第2の磁場発生装置(x40)の磁界に曝される。
【0063】
[060]本明細書に記載のプロセスは、採用された位置及び配向において、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を固定/凍結するように、第1の状態のコーティング層(x20)を第2の状態に硬化させるステップを含む。硬化ステップは、硬化ユニット(x50)を用いて行われる。したがって、本明細書に記載されたコーティング組成物は、注目すべきことに、コーティング組成物中に分散された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が磁場に曝されたときに自由に移動可能、回転可能、及び配向可能であるように、コーティング組成物がまだ硬化しておらず、十分に湿っているか又は柔らかい第1の状態、すなわち液体又はペースト状の状態、及び、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子がそれぞれの位置及び配向において固定又は凍結されている第2の硬化した(例えば固体又は固体のような)状態を有していなければならない。
【0064】
[061]このような第1の状態及び第2の状態は、好ましくは、ある種のコーティング組成物を使用することによって提供される。例えば、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子以外のコーティング組成物の成分は、例えば、セキュリティ用途、例えば紙幣印刷のために使用されるようなインク又はコーティング組成物の形態をとることができる。上述の第1の状態及び第2の状態は、例えば温度変化又は電磁放射への曝露などの刺激に反応して粘度の増加を示す材料を用いることにより提供することができる。すなわち、流体バインダ材料が硬化又は固化されると、上記バインダ材料は、第2の状態、すなわち、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が現在の位置及び配向に固定され、バインダ材料内でもはや移動も回転もできない硬化又は固化した状態に変換される。当業者に知られているように、基材のような表面に塗布されるインク又はコーティング組成物中に含まれる成分、及び上記インク又はコーティング組成物の物理的性質は、インク又はコーティング組成物を基材表面に転写するために使用されるプロセスの要件を満たさなければならない。したがって、本明細書に記載されたコーティング組成物中に含まれるバインダ材料は、典型的には、当技術分野で知られているものの中から選択され、インク又はコーティング組成物を塗布するために使用されるコーティング又は印刷プロセス、及び選択された硬化プロセスに依存する。
【0065】
[062]硬化ステップは、一般に、基材に付着した実質的に固体の材料が形成されるように、コーティング組成物の粘度を増加させる任意のステップであってもよい。硬化ステップは、溶媒などの揮発性成分の蒸発、及び/又は水の蒸発(すなわち物理的乾燥)に基づく物理的プロセスを含んでもよい。ここで、熱風、赤外線、又は熱風と赤外線の組み合わせが使用されてもよい。或いは、硬化プロセスは、バインダと、コーティング組成物中に含まれる任意の開始剤化合物及び/又は任意の架橋化合物との硬化、重合又は架橋などの化学反応を含んでいてもよい。このような化学反応は、物理的硬化プロセスについて上述したように、熱又は赤外線照射によって開始されてもよいが、紫外線-可視光照射硬化(以下、UV-Vis硬化という)及び電子線照射硬化(Eビーム硬化)、酸化重合(典型的には、酸素と、コバルト含有触媒、バナジウム含有触媒、ジルコニウム含有触媒、ビスマス含有触媒及びマンガン含有触媒からなる群から好ましくは選択される1つ又は複数の触媒との共同作用によって誘導される酸化網状物)、架橋反応又はそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない放射線機構による化学反応の開始を含むのが好ましい。
【0066】
[063]本明細書に記載の硬化ステップ(ステップc)は、例えば、コーティング組成物が高分子バインダ材料と溶媒とを含み、高温で塗布される場合には、純粋に物理的な性質のものであってもよい。次に、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、磁場の印加によって高温で配向され、溶媒が蒸発され、次いでコーティング組成物の冷却が行われる。これにより、コーティング組成物は硬化し、顔料粒子の配向は固定される。
【0067】
[064]或いは、コーティング組成物の硬化は、例えば、硬化による化学反応を伴うのが好ましく、これは、セキュリティ文書の典型的な使用中に起こり得る単純な温度上昇(例えば、80℃まで)では逆転しない。用語「硬化」又は「硬化性」とは、出発物質よりも大きな分子量を有する重合体に変わるような方法で、適用されるコーティング組成物中の少なくとも1つの成分の化学反応、架橋又は重合を含むプロセスを指す。硬化は、安定した三次元ポリマーネットワークの形成を引き起こすのが好ましい。このような硬化は、一般に、コーティング組成物に外部刺激を加えることによって誘導される。コーティング組成物は、放射線硬化性組成物、熱乾燥性組成物、酸化乾燥性組成物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるのが好ましい。
【0068】
[065]放射線硬化が特に好ましく、UV-Vis光放射線硬化がさらに好ましい。これらの技術は、非常に速い硬化プロセスをもたらし、それゆえに、本明細書に記載されたOELを含む任意の物品の準備時間を大幅に減少させて有利であるからである。さらに、放射線硬化は、硬化放射線に曝露した後、コーティング組成物の粘度をほぼ瞬間的に増加させるという利点があり、したがって、粒子のそれ以上の動きを最小限に抑えることができる。その結果、磁気配向ステップの後の配向のいかなる損失も本質的に回避することができる。特に、電磁スペクトルのUV又は青色部分(典型的には200nm~650nm、より好ましくは200nm~420nm)の波長成分を有するアクチン光の影響下で、光重合による放射線硬化を行うのが好ましい。紫外線可視化硬化のための装置は、アクチン放射の源として、高出力発光ダイオード(LED)ランプ、又は中圧水銀アーク(MPMA)又は金属蒸気アークランプのようなアーク放電ランプを含み得る。したがって、放射線硬化性組成物からなる群から選択されるコーティング組成物が特に好ましい。放射線硬化、特にUV-Vis硬化は、照射に曝された後のコーティング組成物の粘度の瞬間的な増加をもたらし、それにより、顔料粒子のさらなる移動を防止し、その結果、磁気配向ステップ後の情報の損失を防止するので有利である。硬化ステップ(ステップc))は、UV-可視光の照射(すなわちUV-Vis光放射線硬化)又はEビーム(すなわちEビーム放射線硬化)によって、より好ましくはUV-Vis光の照射によって実施されるのが好ましい。
【0069】
[066]したがって、本発明の好適なコーティング組成物は、UV-可視光照射(以下、UV-Vis硬化性と称する)又はEビーム照射(以下、EBと称する)によってキュアされ得る放射線硬化性組成物を含む。本発明の特に好ましい一実施形態によれば、本明細書に記載のコーティング組成物は、UV-Vis硬化性コーティング組成物である。UV-Vis硬化は、非常に速い硬化プロセスを可能にするのが有利であり、それゆえに、本明細書に記載されたOEL、及び上記OELに含まれる物品及び文書の準備時間を大幅に減少させる。
【0070】
[067]UV-Vis硬化性コーティング組成物は、ラジカル硬化性化合物及びカチオン硬化性化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含むのが好ましい。本明細書に記載のUV-Vis硬化性コーティング組成物は、ハイブリッド系であってもよく、1種以上のカチオン硬化性化合物と1種以上のラジカル硬化性化合物との混合物を含む。カチオン硬化性化合物は、典型的には、酸などのカチオン性種を遊離させる1つ又は複数の光開始剤の放射線による活性化を含むカチオン性機構によってキュアされ、それによってモノマー及び/又はオリゴマーを反応させ、及び/又は架橋させ、それによってコーティング組成物を硬化させるように硬化を開始する。ラジカル硬化性化合物は、典型的には、1つ又は複数の光開始剤の放射線による活性化を含むフリーラジカル機構によってキュアされ、それによってラジカルが発生し、それによってコーティング組成物を硬化させるように重合を開始する。本明細書に記載のUV-Vis硬化性コーティング組成物に含まれるバインダを調製するために使用されるモノマー、オリゴマー又はプレポリマーに応じて、異なる光開始剤が使用され得る。フリーラジカル光開始剤の好適な例は、当業者には知られており、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、α-ヒドロキシケトン、酸化ホスフィン、及び酸化ホスフィン誘導体、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。カチオン光開始剤の好適な例としては、当業者に知られており、オニウム塩、例えば有機ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、オキソニウム(例えば、トリアリールオキソニウム塩)、及びスルホニウム塩(例えば、トリアリールスルホニウム塩)、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。有用な光開始剤のその他の例は、標準的な教本に見出すことができる。効率的な硬化を実現するために、1種又は複数種の光開始剤と併せて増感剤を含むことが有利であり得る。好適な光増感剤の典型的な例としては、イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。UV-Vis硬化性コーティング組成物に含まれる1種又は複数種の光開始剤は、約0.1重量%~約20重量%の総量で存在することが好ましく、約1重量%~約15重量%の量で存在することがより好ましく、この重量パーセントは、UV-Vis硬化性コーティング組成物の全重量に基づく。
【0071】
[068]或いは、ポリマー熱可塑性バインダ材料又は熱硬化性樹脂を採用してもよい。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂とは異なり、加熱及び冷却によって、特性に重大な変化を来すことなく、繰り返し溶融及び凝固可能である。熱可塑性樹脂又はポリマーの典型的な例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレン系樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物)、ポリスルホン、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
[069]本明細書に記載のOELを製造するためのプロセスは、ステップb)と部分的に同時に、又はステップb)に続いて、好ましくは部分的に同時に、コーティング組成物を硬化させるステップ(ステップc)を含む。コーティング組成物を硬化させるステップは、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を、OELを形成するための所望のパターンにおいて採用された位置及び配向に固定することを可能にし、それによってコーティング組成物を本明細書に記載された第2の状態に変化させる。しかしながら、ステップb)の終了からステップc)の開始までの時間は、任意の脱配向及び情報の損失を避けるために、比較的短いのが好ましい。典型的には、ステップc)の終了からステップc)の開始までの時間は、1分未満、好ましくは20秒未満、さらに好ましくは5秒未満である。配向ステップb)の終了と硬化ステップc)の開始との間に本質的に時間差がないことが特に好ましく、すなわち、ステップc)がステップb)の直後に続くか、又はステップb)がまだ進行中である間に(部分的に同時に)すでに開始されていることが好ましい。「部分的に同時に」ということは、両方のステップが部分的に同時に実行されること、すなわち、各ステップの実行時間が部分的に重なることを意味する。本明細書に記載された文脈において、硬化がステップb)と部分的に同時に行われる場合、特に、本明細書に記載された第1及び第2の磁場ベクトル成分(すなわち、H1及びH2のベクトル付加から生じる)によって形成される合成磁場(H3)がゼロよりも大きく、好ましくは50mTよりも大きい場合に、硬化は、OELの完全又は部分的な硬化の前に、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が配向するように配向プロセスが開始された後に有効になることを理解しなければならない。本明細書に記載されているように、硬化ステップ(ステップc)は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子をも含むコーティング組成物に含まれるバインダ材料に応じて、異なる手段又はプロセスを用いて実施することができる。
【0073】
[070]本明細書に記載のコーティング組成物は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、及び有機色素からなる群から選択される1つ又は複数の着色成分並びに/又は1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。後者としては、粘度(例えば、溶媒、増粘剤、及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス、オイル)、紫外線安定性(光安定剤)、密着性、帯電防止特性、保存性(重合防止剤)等のコーティング組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、その添加剤の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である、いわゆるナノ材料を含む、当技術分野において知られている量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0074】
[071]本明細書に記載のコーティング組成物は、粘度(例えば、溶媒及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス)、紫外線反応性及び安定性(光増感剤及び光安定剤)、及び密着性等の組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるがこれらに限定されない1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。本明細書に記載の添加剤は、粒子の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である、いわゆるナノ材料の形態を含む、当技術分野において知られている量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0075】
[072]本明細書に記載のコーティング組成物は、1つ又は複数のマーカ物質若しくはタガント並びに/又は磁性材料(本明細書に記載の磁性又は磁化可能な顔料粒子とは異なる)、発光材料、導電材料、及び赤外線吸収材料からなる群から選択される1つ又は複数の機械可読材料をさらに含むことができる。本明細書で使用されるとき、用語「機械可読材料」は、装置又は機械により検出可能な少なくとも1つの特有の特性を示し、コーティングに含まれることによって、検出及び/又は認証用の特定の機器の使用により上記コーティング又は上記コーティングを含む物品を認証する方法を提供する材料を表す。
【0076】
[073]本明細書に記載のコーティング組成物を、本明細書に記載の磁性又は磁化可能な顔料粒子、及び本明細書に記載のバインダ材料がある場合に存在すれば1つ又は複数の添加剤を分散又は混合することにより調製して、液体組成物を形成することができる。1つ又は複数の光開始剤が存在する場合、これを分散又は他のすべての成分の混合ステップ中に組成物に添加しても、後の段階で、すなわち液体コーティング組成物の形成後に添加してもよい。
【0077】
[074]コーティング層(x20)を担持した基材(x10)が第1の磁場発生装置(x30と同時に移動している間、本明細書に記載のプロセスは、本明細書に記載の静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍でそれらを移動させるステップを含み、コーティング層(x20)を担持した基材(x10)は、第1の磁場発生装置(x30)の上に配置される。
図2及び
図3に示すように、第1の磁場発生装置(x30)は、コーティング層の基準フレーム内で時間非依存性、好ましくはコーティング層(x20)の基準フレーム内に固定された平面内で時間非依存性である第1の磁場ベクトル成分を提供する。
【0078】
[075]コーティング層(x20)は、上記第2の静止した磁場発生装置(x40)の近傍を移動しているので、本明細書に記載のコーティング層(x20)を担持する基材(x10)と、第1の磁場発生装置(x30)とは、同期して同時に、コーティング層(x20)の基準フレーム内で時間依存性の、好ましくはコーティング層(x20)の基準フレーム内に固定された平面内で時間依存性の第2の磁場ベクトル成分を提供する静止した(すなわち、転写装置(TD)と共に移動しない)第2の磁場発生装置(x40)の近傍で(すなわち、本明細書に記載された転写装置(TD)と一緒に移動しない静止した第2の磁場発生装置(x40)磁界を介して)移動する。以て、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成された合成磁場を受け/暴露され、上記合成磁場は、方向において時間依存性(時間変化性)であるか、又は方向及び強度において時間依存性(時間変化性)である(
図3参照)ので、コーティング組成物がまだ湿潤の(すなわち、まだ硬化していない)状態にある間に、上記板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の少なくとも一部を二軸方向に配向される。
【0079】
[076]
図3に示すように、第1の磁場発生装置(330)の第1の磁場ベクトル成分(H1)は、コーティング層の基準フレーム内で時間にわたって一定であり、第2の磁場発生装置の基準フレーム内でコーティング層(x20)を担持する基材(x10)と同時に同期して(
図3の一連の矢印によって示されるように)移動している。第2の磁場発生装置(340)の第2の磁場ベクトル成分(H2)は、第1の磁場発生装置(330)の第1の磁場ベクトル成分(H1)に対して実質的に非平行であり、第1の磁場発生装置(330)の第1の磁場ベクトル成分(H1)に対して実質的に垂直であることが好ましい。第2の磁場発生装置(340)の第2の磁場ベクトル成分(H2)は、空間にわたって強度が変化し(交互に強度と方向が変化し)、最大強度(H2
max)は、
図2に描かれた2つの双極棒磁石の中心にある(
図2の241a及び241b)。このように、第2の磁場発生装置(x40)の近傍を移動するコーティング層(x20)を担持した基材(x10)には、当該基材の移動に伴って、タイムリーな変動強度(H2)が付与されることになる。また、コーティング層(x20)を担持した基材(x10)と第1の磁場発生装置(330)とが第2の磁場発生装置(340)の近傍を同時に移動すると、コーティング層(x20)に含まれる板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、第1の磁場ベクトル成分と第2の磁場ベクトル成分とによって形成される、すなわちH1及びH2のベクトル付加から生じる不均一な合成磁場(H3)を受けることになる、すなわち、コーティング層の基準フレーム内で少なくとも方向において変化するか、又は方向及び強度において変化する、好ましくはコーティング層の基準フレーム内に固定された平面内で時間依存性である時間依存性の磁場(
図3参照)を受け、したがって、上記コーティング層(x20)の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を二軸方向に配向させる。
【0080】
[077]装飾用途及びセキュリティ用途のための多種多様な光学効果層(OEL)は、本明細書に記載されたプロセスを用いて製造されてもよい。板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の単軸配向を可能にする当技術分野で知られている磁場発生装置は、例えば双極磁石、四極磁石及びそれらの組み合わせを含む第1の磁場発生装置(x30)として使用されてもよい。本明細書に記載のコーティング層(x20)を担持した基材(x10)は、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(x30)と同時に、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で、したがって上記第2の磁場発生装置(x40)の磁界を通って移動し、上記第1の磁場発生装置(x30)は、それ自体が回転磁石ではない。好適な第1の磁場発生装置(x30)の典型的な例としては、本明細書に記載された装置が含まれる。
【0081】
[078]フリップフロップ効果(当技術分野ではスイッチング効果とも呼ばれる)として知られるOELが生成されてもよい。フリップフロップ効果は、遷移によって区切られた第1の印刷部分と第2の印刷部分を含み、第1の部分では顔料粒子が第1の平面に平行に配列され、第2の部分のフレークが第2の平面に平行に配列されている。フリップフロップ効果を生成するための方法及び磁石は、例えば、米国特許出願第2005/0106367号及び欧州特許第1819525B1号に開示されている。
【0082】
[079]米国特許出願第2005/0106367号に開示されているようなローリングバー効果として知られている光学的効果も生成することができる。「ローリングバー」効果は、コーティングを横切る曲面を模した顔料粒子の配向に基づいている。観察者は、画像が傾いているときに観察者に遠ざかったり、観察者に向かって移動したりする鏡面反射ゾーンを見る。顔料粒子は、凸曲率(当技術分野では負の曲面配向とも呼ばれる)又は凹曲率(当技術分野では正の曲面配向とも呼ばれる)に沿って、湾曲した形で配置される。ローリングバー効果を生成するための方法及び磁石は、例えば、欧州特許公開第2263806A1号、欧州特許第1674282B1号、欧州特許公開第2263807A1号、国際公開第2004/007095A2号、国際公開第2012/104098A1号、及び国際公開第2014/198905A2号に開示されている。
【0083】
[080]ベネチアンブラインド効果として知られる光学効果もまた、生成され得る。ベネチアンブラインド効果は、観察の特定の方向に沿って下地の基材表面に可視性を与えるように、基材表面上又は基材表面内に存在する指標又は他の特徴が観察者に明らかになる一方で、観察の別の方向に沿って可視性を阻害するように配向された顔料粒子を含む。ベネチアンブラインド効果を生成するための方法は、例えば、米国特許第8,025,952号及び欧州特許第1819525B1号に開示されている。
【0084】
[081]移動リング効果は、上記光学効果層の傾斜角に応じて任意のx-y方向に移動するように見える、漏斗、コーン、ボウル、円、長円、及び半球などの物体の、光学的に示される画像からなる。移動リング効果をもたらすための方法及び磁石は、例えば欧州特許出願公開第1710756A1号、米国特許第8,343,615号、欧州特許出願公開第2306222A1号、欧州特許出願公開第2325677A2号、国際公開第2011/092502A2号、及び米国特許出願公開第2013/084411号に開示されている。
【0085】
[082]前述の効果を傾斜させたときに明るい領域と暗い領域が動くパターンの光学的印象を提供する光学的効果もまた、生成することができる。このような光学効果を生成するための方法と磁石は、例えば国際公開第2013/167425A1号に開示されている。
【0086】
[083]前述の効果を傾けると変化する大きさを有するループ状の本体の光学的印象を提供する光学的効果を生成することもできる。このような光学効果を作り出すための方法と磁石は、例えば、同時係属中の欧州特許第15189955.6号、欧州特許第15193837.0号、及び欧州特許第16157815.8号に開示されている。
【0087】
[084]光学効果層を傾けると変化する形状を有する1つ又は複数のループ状の本体の光学的印象を提供する光学効果もまた、生成され得る。これらの光学効果を生成するための方法及び磁石は、例えば、同時係属中の欧州特許第16190044.4号に開示されている。
【0088】
[085]本明細書に記載された第1の磁場発生装置(x30)は、1つ又は複数のレリーフ、彫刻、又は切り欠きを有する磁気プレートを含み得る。国際公開第2005/002866A1号及び国際公開第2008/046702A1号は、このような彫刻された磁気プレートの例である。
【0089】
[086]板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が、主軸のみが磁場ベクトル成分によって拘束されるように配向される単軸配向とは反対に、二軸配向を行うことは、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が、2つの主軸X及びYの両方が拘束されるように配向されるようにすることを意味する。このような二軸配向は、本発明によれば、本明細書に記載された第1の磁場発生装置(x30)とともにコーティング層(x20)を担持した基材(x10)を、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で(すなわち、静止した第2の磁場発生装置(x40)の磁場を介して)露光/被着させ、移動させることによって達成される。したがって、上記第2の磁場発生装置(x40)は、コーティング層の個々の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が後に続く運動の経路に沿って、第2の磁場ベクトル成分が、コーティング層(x20)の基準フレーム内で、好ましくはコーティング層(x20)の基準フレーム内に固定された平面内で、少なくとも方向において、又は方向及び強度において変化するように構成されなければならない。二軸配向は、上記平面が局所的に実質的に互いに平行に配向されるように、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の平面を整列させる。
【0090】
[087]板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向は、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(x30)とともにコーティング層(x20)を担持する基材(x10)を、欧州特許公開第2157141A1号に記載のような静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で適切な速度で同時に移動させることによって実施されてもよい。このような装置は、上記装置の近傍で板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が移動する間にその方向を変える磁場を提供し、X軸及びY軸の両方の主軸が安定するまで、すなわち板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が上記2次元においてそれぞれのX軸及びY軸が平面化された安定したシート状の形成に達するまで、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が急速に揺動するように強制する。欧州特許第2157141号の
図5に示すように、本明細書に記載された磁場発生装置は、千鳥状に又はジグザグ状に線形配置された少なくとも3個の磁石を含み、上記3個の磁石のそれぞれは、基材(x10)表面に実質的に垂直な磁気軸を有し、フィードパスの同じ側にある少なくとも3個の磁石は、フィードパスの同じ側において同じ極性を有し、これは千鳥配置においてフィードパスの反対側にある磁石の極性と反対である(
図5に示すように、フィードパスの同じ側にある上記少なくとも3個の磁石は同じ極性を有し、フィードパスの反対側においてフィードパスの同じ側の磁石は、千鳥配置におけるフィードパスの反対側にある磁石の極性と反対の同じ極性を有する)。少なくとも3個の磁石の配置は、コーティング組成物中の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子が磁石を通過すると(移動方向:矢印)、磁場方向の所定の変化を提供する。一実施形態によれば、第2の磁場発生装置(x40)は、a)フィードパスの第1の側にある第1の磁石及び第3の磁石と、b)フィードパスの第2の反対側にある第1の磁石と第3の磁石との間にある第2の磁石と、を含み、第1の磁石と第3の磁石は同じ極性を有し、第2の磁石は第1の磁石と第3の磁石に相補的な極性を有し、上記3個の磁石の各々は、磁気軸が基材(x10)の表面に対して実質的に垂直である。別の実施形態によれば、第2の磁場発生装置(x40)はさらに、第2の磁石と同じフィードパスの側にある第4の磁石を含み、第2の磁石の極性を有し、第3の磁石の極性と相補的な極性を有し、第2の磁石は第1及び第3の磁石と相補的な極性を有し、上記4個の磁石の各々は基材(x10)の表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有する。欧州特許公開第2157141A1号に記載されているように、上記磁場発生装置は、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含む層の下にあってもよいし、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含む層の上及び下にあってもよい。
【0091】
[088]板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向を実施することは、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(x30)とともにコーティング層(x20)を担持した基材(x10)を、線形永久磁石ハルバッハアレイである静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で、又は適切に配置された2つ以上のハルバッハアレイの配列を介して、適切な速度で移動させることによって実施されてもよい。線形永久磁石ハルバッハアレイは、異なる磁化方向を有する複数の磁石を含むアセンブリからなる。ハルバッハ永久磁石の詳細な説明は、Z.Q.Zhu et D.Howe(ハルバッハ永久磁石マシン及びアプリケーション:レビュー、IEE.Proc.Electric Power Appl.2001、148、頁299~308)に与えられている。このような線形永久磁石ハルバッハアレイによって生成される磁場は、一方の側に集中する一方で、もう一方の側でほとんどゼロに弱まるという特性がある。典型的には、線形永久磁石ハルバッハアレイは、例えば木材又はプラスチック、特にポリアセタール(ポリオキシメチレン、POMとも呼ばれる)樹脂のような良好な自己潤滑性と耐摩耗性を示すことが知られているプラスチック、及びネオジム-鉄-ボロン(NdFeB)のような高保磁力磁性材料で作られた磁石で作られた1つ又は複数の非磁性ブロックを含む。
【0092】
[089]板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向を実施することは、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)に取り付けられた第1の磁場発生装置(x30)とともにコーティング層(x20)を担持した基材(x10)を、欧州特許第1519794B1号に記載されているような静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で適切な速度で移動させることによって行われてもよい。好適な装置は、磁場線が基材(x10)表面に実質的に平行になるように、上にコーティング層(x20)を担持する基材(x10)の両側に配置される永久磁石を含む。一実施形態によれば、第2の磁場発生装置(x40)は、2つの棒双極磁石の1つ又は複数の対を含み、上記2つの棒双極磁石の各々は、基材(x10)の表面に実質的に平行な磁気軸を有し、2つの棒双極磁石は、反対の磁気方向を有する。別の実施形態によれば、
図4A~Bに描かれているように、第2の磁場発生装置(x40)は、2つの棒双極磁石(x41a、x41b)の1つ又は複数の対を含み、上記2つの棒双極磁石の各々は、基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、2つの棒双極磁石は、反対の磁気方向を有する。別の実施形態によれば、上記2つの棒双極磁石の各々が基材(x10)表面に対して実質的に垂直な磁気軸を有し、2つの棒双極磁石が反対の磁気方向を有する、2個の棒双極磁石の1つ又は複数の対を含む代わりに、第2の磁場発生装置(x40)は、磁石の開放端において同一平面内に配置されたN極とS極の両方を有するU字型磁石(当技術分野では馬蹄形磁石とも呼ばれる)を含む。U字型磁石は、単一のピースであってもよいし、2つの別個のピースから構成されていてもよく、上記2つの別個のピースは、直接接触していてもよいし、間隔をあけて非磁性ベースで一緒に接続されていてもよい。
【0093】
[090]第2の磁場発生装置(x40)は、1つ又は複数のホルダ(x42)内に含まれていてもよい。本明細書に記載の1つ又は複数のホルダ(x42)は、本明細書に記載の1つ又は複数のホルダ、1つ又は複数のプレート、又は1つ又は複数のスペーサ(x31)のために、本明細書に記載の1つ又は複数の非磁性材料から形成されるのが好ましい。
【0094】
[091]上述のように、そのように配向した板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、光学効果層(OEL)を形成するように、その配向及び位置(すなわち、硬化後)で固定/凍結される。
図1Aに示すように、本明細書に記載の硬化ステップ(ステップc)は、本明細書に記載のコーティング層(x20)を担持した基材(x10)がまだ第1の磁場発生装置(x30)の上にあり、本明細書に記載のコーティング層(x20)を担持した基材(x10)がそれ以上静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で移動していない間に、硬化ユニット(x50)を用いて実施されるのが好ましい、すなわち、本明細書に記載の硬化ステップは、本明細書に記載の(すなわち、H1及びH2のベクトル付加から生じる)第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成される合成磁場(H3)がゼロよりも大きく、好ましくは50mTよりも大きい場合に、ステップb)と部分的に同時に実施される。
【0095】
[092]
図4A~Cは、本発明に従った線形磁気転写装置(LMTD)である転写装置(TD)を使用して、基材(x10)上のコーティング層(x20)に含まれた板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を配向させるためのプロセスの一実施形態を模式的に示している。第1の磁場発生装置(x30)を回転磁気配向シリンダ(RMC)に取り付ける代わりに、上記第1の磁場発生装置(x30)は、静止した第2の磁場発生装置(x40)の近傍で、例えばレール(x33)の助けを借りて移動可能である(矢印を参照)。
図4A~Cに示すように、本明細書に記載されたプロセスは、本明細書に記載されたような可動式の第1の磁場発生装置(430)と、静止した第2の磁場発生装置(440)とを使用する。
【0096】
[093]
図4A~Cに示す実施形態では、第1の磁場発生装置(430)は、基材(410)の表面に実質的に平行なSN磁気軸を有し、第2の磁場発生装置(440)に向けられたそのN極を有し、非磁性ホルダ(431)内に配置されている棒双極磁石からなる。第1の磁場発生装置(430)を含む非磁性ホルダ(431)は、移動可能なように、支持ブロック(432)及びレール(433)に配置される。
【0097】
[094]
図4A~Cに示す実施形態では、第2の磁場発生装置(440)は、2つの棒双極磁石(441a、441b)からなり、上記2つの棒双極磁石(441a、441b)は、非磁性フレーム(443)に固定された非磁性ホルダ(442a、442b)内に独立して挿入され、上記2つの棒双極磁石(441a、441b)は、SN磁場方向が互いに対向しており、一方の棒双極磁石(441a)は、S極が基材(410)の表面に対向し、他方の棒双極磁石(441b)は、N極が基材(410)の表面に対向しており、上記2つの棒双極磁石(441a、441b)の各々は、そのSN磁気軸が基材(410)表面に対して垂直であり(すなわち、SN磁気軸が第1の磁場発生装置(430)の表面のSN磁気軸に対して実質的に垂直であり)、上記2つの棒双極磁石(441a、441b)は、距離A1だけ間隔をあけて配置されている。
【0098】
[095]コーティング層(420)を担持する基材(410)の表面は、2つの棒双極磁石(441a、441b)の底面と面一であることが好ましい。コーティング層(420)の中心は、第1の磁場発生装置(430)の中心上に配置されるのが好ましく、第2の磁場発生装置(440)の2つの棒双極磁石(441a、441b)の間の等距離、すなわち各棒双極磁石(441a、441b)からの距離1/2A1の位置に配置される。
【0099】
[096]
図4Aに示すように、本明細書に記載の硬化ステップは、本明細書に記載のコーティング組成物(420)を担持した基材(410)が第1の磁場発生装置(430)の上にまだある間、及び基材(410)及び第1の磁場発生装置(430)が静止した第2の磁場発生装置(440)から移動方向に距離(X)だけ離れて移動している間に実施されるのが好ましい。
【0100】
[097]第1の磁場発生装置(x30)及び第2の磁場発生装置(x40)のそれぞれは、Wb/m2(テスラ)の単位を有する比磁束密度を有し、上記第1の磁場発生装置(x30)の磁束密度と上記第2の磁場発生装置(x40)の磁束密度との比率は約4.0未満、好ましくは約1.9未満、より好ましくは約1.5~約0.5の間である。
【0101】
[098]磁束密度は、本発明に従ったプロセス中に、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層(x20)を担持した基材(x10)が配置されるのと同じ位置に、ガウスメーターに接続されたホールプローブ(x60)を配置することによって測定されてもよい。
【0102】
[099]
図5A~Bは、
図4A~Cに描かれた第1の磁場発生装置(530)、及び第1の磁場発生装置(530)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(560)の上面図(
図5A)及び断面図(
図5B)を模式的に示している。
図5C~Dは、
図4A~Cで描かれた第1の磁場発生装置(530)と基材(510)上のコーティング層(520)の上面図(
図5C)及び断面図(
図5D)を模式的に示し、本発明に従ったプロセスの間に、ホールプローブ(560)が、板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層(520)を担持する基材(510)と同じ位置に配置されることを示している。
図5に示す実施形態によれば、第1の磁場発生装置(530)は、使用時に基材(510)の表面に実質的に平行なS-N磁気軸を有し、長さ(L2)、幅(L1)及び厚さ(L3)を有する棒状双極磁石で構成される。
図5A~Bに図示されているように、ホールプローブ(560)は、長さ(L2)及び幅(L1)に関連して第1の磁場発生装置(530)の中心上にホールプローブ(560)の中心が配置された状態で、第1の磁場発生装置(530)の上の、上記第1の磁場発生装置(530)の上面から距離A2の位置に配置される。
図5Bに図示されているように、ホールプローブ(560)の位置は、本発明のプロセス中にコーティング層(520)を担持する基材(510)の上面の位置に対応する。
【0103】
[0100]
図6は、
図4A~Cに描かれた第2の磁場発生装置(640)と、第2の磁場発生装置(640)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(660)とを模式的に示している。第2の磁場発生装置(640)は、距離A1だけ離間して配置され、長さ(L4)、幅(L5)、厚さ(L6)を有する2つの棒状双極磁石(641a、641b)から構成されている。
図6に図示されているように、ホールプローブ(660)は、第2の磁場発生装置(640)の近傍で移動可能(矢印参照)である。
【0104】
[0101]
図6A~Cは、
図4A~Cに描かれた第2の磁場発生装置(640)と、第2の磁場発生装置(640)の磁束密度を測定するために使用されるホールプローブ(660)とを模式的に示している。
図6Aに図示されているように、ホールプローブ(660)は、第2の磁場発生装置(640)の近傍で移動可能(矢印参照)である。
【0105】
[0102]
図6A~Cは、第2の磁場発生装置(640)及びホールプローブ(660)の側面図(
図6A)、上面図(
図6B)及び別の側面図(
図6C)を模式的に示している。
図6A~Cに描かれた第2の磁場発生装置(640)は、
図4A~Bの第2の磁場発生装置(640)に対応し、すなわち、互いに距離(A1)を置いて配置された2つの棒状双極磁石(641a、641b)を含む。
図6A~Cは、第2の磁場発生装置(640)の磁場を測定するために使用されるホールプローブ(660)の位置を示している。
図6A~Cに図示されているように、ホールプローブ(660)は、第2の磁場発生装置(540)の2つの双極棒磁石(641a、641b)の間を移動する。ホールプローブ(660)の中心は、各双極棒磁石(641a、641b)から半分の距離(1/2A1)で、且つ、第2の磁場発生装置(640)の底面のレベルに配置され、磁場(H2)を測定する。ホールプローブ(660)の位置は、本発明のプロセス中に基材(610)によって担持されるコーティング層(620)の基材(610)の上面の位置に対応している。第2の磁場発生装置(640)に沿ったホールプローブ(660)の位置及び動きは、本発明に従った配向プロセスの間に基材に担持された磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層の位置及び動きに対応する。
【0106】
[0103]
図6A~Cに関して上述したように、基材(610)が2つの棒状双極磁石(641a、641b)の底面と面一であるために、ホールプローブ(660)の中心は、2つの棒状双極磁石(641a、641b)の底面と面一であることが好ましい。
図6A~Cに関して上述したように、コーティング層(620)の中心は、第2の磁場発生装置(640)の2つの棒状双極磁石(641a、641b)の間の等距離に、すなわち、各棒状双極磁石(641a、641b)からの距離1/2A1の位置に配置されるのが好ましく、ホールプローブ(660)の中心は、第2の磁場発生装置(640)の2つの棒状双極磁石(641a、641b)の間の等距離に、すなわち、各棒状双極磁石(641a、641b)からの距離1/2A1の位置に配置されるのが好ましい。ホールプローブ(660)の位置は、本発明のプロセス中に基材(610)に担持されるコーティング層(620)の上面の位置に対応する。
【0107】
[0104]本明細書に記載されたプロセスは、目を引く動的効果を表示する光学効果層(OEL)を製造することを可能にし、高解像度及び高コントラストを組み合わせて提供する。
【0108】
[0105]コノスコピック散乱計(Eckhartd Optics LLC, 5430Jefferson Ct, White Bear Lake, MN 55110; http://eckop.comから入手)を、本明細書に記載されたプロセスによって得られた板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向及びOELの明るさを特徴付けるために使用した。
【0109】
[0106]
図7Aは、レンズの前焦点面(770)の入射光線方向(χ1、χ2、χ3)を、レンズの後焦点面(772)のスポット(x1、x2、x3)にマッピングする、レンズ又はレンズシステムによる、焦点面間(772~770)((770)は、レンズから距離fに位置するレンズの前焦点面であり、(772)は、レンズからの距離f´に位置するレンズの後焦点面である)変換イメージング(すなわち、フーリエ変換イメージング)に依存するコノスコピック散乱法の原理を模式的に示している。
図7Bは、顔料粒子の二軸配向及びOELの明るさを測定するために本発明で使用されるような、コノスコピック散乱法の原理の別の説明図である。
図7Bは、上記焦点面から焦点面への変換イメージングを実行するフロントエンド光学系(771)、光源(780)、及び光学系を介して照明するための半透明のカップリングミラー(790)、直交入射下で平行光のビーム(773)を有する基材(710)のOEL(720)の小さなスポット、及びフロントエンド光学系の後焦点面(772)に存在するスポットパターンの画像を記録するためのカメラセンサ(796)を含むバックエンド光学系(795)、を含む、完全な背面反射型のコノスコピック散乱計のセットアップを模式的に示している。直交入射ビームを2つの異なる光線方向に反射させるために、2つの異なる板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向(721、722)が示されており、これらは、フロントエンド光学系によって、後焦点面(772)の2つの別個のスポットx1、x3に集束される。これらのスポットの画像位置は、バックエンド光学系(795)及びカメラセンサ(796)によって記録される。
【0110】
[0107]その反射特性を測定するために、配向された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むOELを、直径1mmの平行光(LED、520nm)を直交入射下で1mm毎に評価し、各点での後方反射光の画像を撮影した。これらの画像から、各地点のコノスコピック散乱計の後焦点面で収集した画像データに2次元ガウス分布を当てはめて、後方反射光スポットの対応する偏向角(χ、ψ)の分布を求め、平均値(χ,ψ)はガウス分布の中心に対応する。
【0111】
[0108]照明ビーム(773)の直径内の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子は、球状の極性座標における偏向角(χ、ψ)で光学系に光を反射して戻す。各顔料粒子の反射ビーム偏向角(χ、ψ)は、レンズ(771)によって焦点面(772)の位置(X,Y)に移される。サンプリングビーム(773)内の異なる位置にある2つの顔料粒子が同じ方向を向いている場合、これら2つの顔料からの反射光は、同じ位置(X,Y)でセンサ表面に当たることになる。
【0112】
[0109]
図8は、照明光源(880)及び焦点面(872)を含むコノスコピック散乱計を用いて、OELを形成し、コーティング層(820)に含まれる板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向を測定する別の例を模式的に示している。
図8では、OELは、コーティング層(820)の断面によって図示されており、センサのX方向に沿った凸曲率に従う顔料粒子の配向が表示されている。凸曲率に従うサンプリングビーム照明スポット(873)内の顔料粒子の配向は、コノスコピック散乱計の焦点面(872)の(X,Y)位置に移される。
【0113】
[0110]
図9A~Bは、(
図8に図示されているように)ローリングバー効果に従って配向された顔料粒子を含むOELのコノスコピック散乱計の焦点面の反射光ビームスポットを模式的に示している。
図9Aは、高度な二軸配向を有するOELの例を示しており、これにより、反射照明ビームの光散乱が小さく、すなわち、コノスコピック散乱計レンズの焦点面における反射照明ビームの位置(X,Y)の狭い分布が得られる。そのため、二軸配向度の高い顔料粒子(
図9A)を含むOELでは反射光ビームスポットは比較的小さくなり、(
図9Bに示すように)二軸配向度の低い顔料粒子を含むOELでは反射光ビームスポットは比較的大きくなる。これに加え、反射光ビームのスポットの明るさは、反射光ビームが比較的小さなスポットに集光される結果、顔料粒子の二軸配向の程度に正比例する。
図9C~Dは、
図9A~Bの反射光ビームの方位角(ψ)のガウス分布をそれぞれ模式的に示している。
図9Cでは、
図9Dに比べて分布が狭いため、
図9Dより
図9Cの方がガウス関数の振幅が大きくなっている。ガウス関数の振幅は、本質的に反射光ビームスポットの明るさに比例する。したがって、反射光ビームスポットの明るさを測定することは、OELの板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の二軸配向の程度を反映する。いくつかのOELの配向の程度を比較するために、強度は、各OELの等価な位置、すなわち、平均角度(χ、ψ)が異なるサンプルについて同一であるところで測定される。簡単にするために、サンプルは、平均偏向角度(χ、ψ)がともに表面に対して法線である位置で、サンプルの中央部で測定されるのが好ましい。
【0114】
[0111]本発明は、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を製造するための印刷装置及びその用途をさらに提供する。本明細書に記載の印刷装置は、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)と、少なくとも1つの本明細書に記載の第2の磁場発生装置(x40)とを含み、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)は、少なくとも1つの本明細書に記載の第1の磁場発生装置(x30)を含み、上記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)は、本明細書に記載の上記転写装置(TD)に取り付けられる。本明細書に記載の印刷装置は、本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)と、本明細書に記載の少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)とを含むのが好ましく、本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)を含み、本明細書に記載の上記少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)は、回転磁気シリンダ(RMC)の周方向の溝又は横方向の溝に取り付けられるのが好ましい。一実施形態では、回転磁気シリンダ(RMC)は、連続的に高速印刷速度で動作する回転式、枚葉式又はウェブ式の工業用印刷機の一部である。
【0115】
[0112]好ましくは回転磁気シリンダ(RMC)である転写装置(TD)は、転写装置に取り付けられた少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)、及び本明細書に記載された少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)を含み、印刷装置又はコーティング装置の一部として使用されるか、又はそれと組み合わせて使用されることが意図されている。一実施形態では、転写装置(TD)は、本明細書に記載のような回転磁気シリンダ(RMC)であり、上記回転磁気シリンダ(RMC)は、連続的に高速印刷速度で動作する回転式、枚葉式、又はウェブ式の工業用印刷機の一部であることが好ましい。
【0116】
[0113]本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)を含む印刷装置は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)及び本明細書に記載の少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)を含み、第1の磁場発生装置(x30)と第2の磁場発生装置(x40)が、顔料粒子に作用する合成磁場を発生させて、顔料粒子を配向させて光学効果層(OEL)を形成するように、本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の層を上に有する本明細書に記載のような基材を供給するための基材供給装置を含んでいてもよい。本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)を含む印刷装置の一実施形態では、基材はシート又はウェブの形態で基材供給装置によって供給される。
【0117】
[0114]本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)を含む印刷装置は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)及び本明細書に記載の少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)を含み、基材誘導システムを含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「基材誘導システム」とは、コーティング層(x10)を担持した基材(x10)を、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)、及び第1の磁場発生装置(x30)と密接に接触した状態で保持するセットアップを意味する。基材誘導システムは、グリッパ及び/又は真空システムであってもよい。特に、グリッパは、(x10)のリーディングエッジを保持して、基材(x10)を印刷機のある部分から次の部分に転写することを可能にする目的を果たしてもよく、真空システムは、(x10)の表面を、本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)、及び第1の磁場発生装置(x30)の表面に対して引き寄せて、それらとしっかりと整列させて維持する目的を果たしてもよい。基材誘導システムは、グリッパ及び/又は真空システムに加えて、又はその代わりに、ローラ又はローラのセット、ブラシ又はブラシのセット、ベルト及び/又はベルトのセット、ブレード又はブレードのセット、又はスプリング又はスプリングのセットを含むがこれらに限定されない基材誘導装置の他の部分を含み得る。
【0118】
[0115]本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)を含む印刷装置は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)及び本明細書に記載の少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)を含み、本明細書に記載のコーティング層(x20)を形成するように、本明細書に記載の板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング組成物を本明細書に記載の基材(x10)に塗布するためのコーティング又は印刷ユニットを含み得る。
【0119】
[0116]本明細書に記載の転写装置(TD)、好ましくは本明細書に記載の回転磁気シリンダ(RMC)を含む印刷装置は、本明細書に記載の少なくとも1つの第1の磁場発生装置(x30)及び本明細書に記載の少なくとも1つの第2の磁場発生装置(x40)を含み、本明細書に記載の第1及び第2の磁場発生装置(x30及びx40)の第1及び第2の磁場ベクトル成分によって形成された合成磁場によって磁気的に配向された板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子を含むコーティング層(x20)を少なくとも部分的に硬化させ、以て、光学効果層(OEL)を生成するために板状の磁性又は磁化可能な顔料粒子の配向及び位置を固定するための硬化ユニット(x50)、好ましくは硬化ユニットを含んでいてもよい。
【0120】
[0117]本発明は、本明細書に記載された基材(x10)に光学効果層(OEL)を生成するための、本明細書に記載されたプロセス及び本明細書に記載された印刷装置を提供する。本明細書に記載の基材(x10)は、紙若しくはセルロースなどの(織布及び不織布繊維性材料を含む)その他の繊維性材料、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック及びポリマー、金属化プラスチック若しくはポリマー、複合材料及び混合物又はそれら2つの以上の組み合わせからなる群から選択されるのが好ましい。一般的な紙、紙様又はその他の繊維性材料は、以下に限定されないが、マニラアサ、綿、リネン、木材パルプ及びそれらのブレンドなどのさまざまな繊維でできている。当業者によく知られている通り、綿及び綿/リネンブレンドが銀行券に好適である一方で、銀行券でないセキュリティ文書には木材パルプが一般的に使用される。プラスチック及びポリマーの典型的な例としては、ポリオレフィン、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)を含むポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)、ポリアミド、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタラート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)(PBT)、ポリ(エチレン2,6-ナフトアート)(PEN)及びポリ塩化ビニル(PVC)が挙げられる。商標名ティヴェック(Tyvek)(登録商標)として販売されているものなどのスパンボンド式オレフィン繊維が基材として使用されてもよい。金属化プラスチック又はポリマーの典型的な例としては、表面に連続的又は不連続的に配置された金属を有する上記のプラスチック又はポリマー材料が挙げられる。金属の典型的な例としては、以下に限定されないが、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、それらの合金及び上記の金属の2つ以上の組み合わせが挙げられる。上記のプラスチック又はポリマー材料の金属化は、電着プロセス、高真空コーティングプロセス又はスパッタリングプロセスによって行われてもよい。複合材料の典型的な例としては、以下に限定されないが、紙と、上記のものなどの少なくとも1つのプラスチック若しくはポリマー材料の多層構造又は積層物並びに上記のものなどの紙様又は繊維性材料に混ぜ込まれたプラスチック及び/又はポリマー繊維が挙げられる。当然、基材は、当業者に知られている、充填剤、サイズ剤、漂白剤、加工助剤、補強剤又は湿潤紙力増強剤などの添加物をさらに含んでもよい。本発明に従って製造されたOELが、例えば爪ラッカーを含む装飾又は化粧品目的で使用される場合、上記OELは、爪、人工爪、又は動物若しくは人間の他の部分を含む他のタイプの基材に製造されてもよい。
【0121】
[0118]本発明に従って製造されたOELがセキュリティ文書上にある場合、セキュリティ文書のセキュリティレベル並びに偽造及び不正な複製に対する抵抗力をさらに高めることを目的として、基材は、印刷された、コーティングされた又はレーザーマーキングされた若しくはレーザー穴あけ加工された指標、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、ウィンドウ、ホイル、デカール及びそれらの組み合わせを含んでもよい。同じくセキュリティ文書のセキュリティレベル及び偽造及び不正な複製に対する抵抗力をさらに高めることを目的として、基材は、1つ又は複数のマーカ物質若しくはタガント及び/或いは機械読取り可能な物質(例えば、発光性物質、UV/可視/IR線吸収物質、磁性物質及びそれらの2つ以上の組み合わせ)を含んでもよい。
【0122】
[0119]所望により、ステップa)の前に、プライマー層を基材に塗布してもよい。これは、本明細書に記載された光学効果層(OEL)の品質を高める可能性があり、又は接着を促進し得る。そのようなプライマー層の例は、国際公開第2010/058026A2号に見出し得る。
【0123】
[0120]本明細書に記載のプロセスによって得られた光学効果層(OEL)を含む物品、セキュリティ文書、又は装飾的な要素又は物体の耐汚染性又は耐薬品性、及び清浄性を介した耐久性、ひいては循環寿命を向上させる目的で、又は美的外観(例えば、光学光沢)を改変する目的で、1つ又は複数の保護層を光学効果層(OEL)の上に適用してもよい。存在する場合、1つ又は複数の保護層は、典型的には保護ワニスで作られる。保護ワニスは、放射線硬化性組成物、熱乾燥性組成物、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。1つ又は複数の保護層は、放射線硬化性組成物であることが好ましく、UV-Vis硬化性組成物であることがより好ましい。保護層は、典型的には、光学効果層(OEL)の形成後に塗布される。
【0124】
[0121]本発明は、本明細書に記載されたプロセスにより、及び/又は本明細書に記載された印刷装置を使用して製造された光学効果層(OEL)をさらに提供する。
【0125】
[0122]本明細書に記載の光学効果層(OEL)は、(例えば、紙幣用途のためなど)光学効果層が永久に残り得る基材上に直接提供されてもよい。或いは、光学効果層(OEL)は、製造目的のために一時的な基材上に提供されてもよく、この基材上からOELはその後除去される。これは、例えば、特にバインダ材料がまだ流体状態にある間に、光学効果層(OEL)の製造を容易にすることができる。その後、光学効果層(OEL)の製造のためのコーティング組成物を硬化させた後、一時的な基材をOELから除去してもよい。
【0126】
[0123]或いは、別の実施形態では、接着剤層は、光学効果層(OEL)上に存在してもよく、又はOELを含む基材上に存在してもよく、上記接着剤層は、OELが設けられている側とは反対側の基材の側にあるか、又はOELと同じ側にあり、OELの上にある。したがって、接着剤層は、光学効果層(OEL)又は基材に塗布されてもよく、上記接着剤層は、硬化ステップが完了した後に塗布される。このような物品は、印刷又は機械を含む他のプロセス及びかなり高い労力を必要とすることなく、あらゆる種類の文書又は他の物品又はアイテムに取り付けられてもよい。或いは、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を含む本明細書に記載の基材は、転写箔の形態であってもよく、この転写箔は、別個の転写ステップで文書又は物品に適用することができる。この目的のために、基材は、本明細書に記載されているように光学効果層(OEL)が製造されるリリースコーティングを備えている。1つ又は複数の接着剤層は、そのように生成された光学効果層(OEL)の上に適用されてもよい。
【0127】
[0124]本明細書に記載されている方法で得られた複数の、すなわち2つ、3つ、4つなどの光学効果層(OEL)を含む基材も本明細書に記載されている。
【0128】
[0125]本発明に従って製造された光学効果層(OEL)を含む物品、特にセキュリティ文書、装飾的な要素又は物体も本明細書に記載されている。物品、特にセキュリティ文書、装飾的な要素又は物体は、本発明に従って製造された複数(例えば、2個、3個など)のOELを含み得る。
【0129】
[0126]上述したように、本発明に従って製造された光学効果層(OEL)は、セキュリティ文書の保護及び認証のためだけでなく、装飾目的のために使用されてもよい。
【0130】
[0127]装飾的な要素又は物品の典型的な例としては、高級品、化粧品パッケージ、自動車部品、電子/電気機器、家具、及び指の爪の物品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0131】
[0128]セキュリティ文書としては、以下に限定されないが、貴重文書及び貴重商品が挙げられる。貴重文書の典型的な例としては、以下に限定されないが、銀行券、権利書、切符、小切手、保証書、収入印紙及びタックスラベル、契約書及び同様のもの、身分証明文書、例えば、パスポート、IDカード、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、トランザクションカード、入場許可文書又はカード、入場券、公共輸送機関の切符又は学位書又はタイトル及び同様のものが挙げられ、好ましくは、銀行券、身分証明文書、権利付与文書、運転免許証及びクレジットカードである。「貴重商品」という用語は、包装材料、特に、化粧品、機能性食品、医薬品、アルコール、タバコ商品、飲料又は食品、電気/電子商品、織物或いは宝石、すなわち、パッケージの中身を保証するために偽造及び/又は不正な複製から保護されることになる、例えば、本物の薬物のような物品を指す。こうした包装材料の例としては、以下に限定されないが、本物であることを証明するブランドラベル、不正開封防止ラベル及びシールなどのラベルが挙げられる。開示された基材、貴重文書及び貴重商品は、例示する目的で、本発明の範囲を制限することなく排他的に示されることを指摘する。
【0132】
[0129]或いは、OELは、例えば、セキュリティスレッド、セキュリティストライプ、ホイル、デカール、ウィンドウ又はラベルなどの補助的な基材に生成され、したがって、別個のステップにおいてセキュリティ文書に転写されてもよい。
【0133】
[0130]当業者は、本発明の趣旨から逸脱することなく、上記の特定の実施形態に対するいくつかの変更を予測することができる。そのような変更は、本発明に包含される。
【0134】
[0131]さらに、本明細書全体を通して、言及されたすべての文書は、本明細書にすべてが記載されるようにその全体を参照により本明細書に組み込んだものとする。
【0135】
例
[0132]実施例は、表1に与えられた式のUV硬化性スクリーン印刷インクと、以下に記載された第1及び第2の磁場発生装置を用いて実施された。
【表1】
【0136】
第1の磁場発生装置(
図4A~C、縮尺なし)
[0133]第1の磁場発生装置として、NdFeB N40からなる棒双極磁石(430)を用いた。棒双極磁石(430)は、30mm(L1)×18mm(L2)×6mm(L3)の寸法を有していた。
図4B~Cに示すように、棒双極磁石(430)は、高密度ポリエチレン(HDPE)製の非磁性ホルダ(431)に埋め込まれ、40mm(L7)×40mm(L8)×25mm(L9)の寸法を有していた。棒双極磁石(430)の上面は、非磁性ホルダ(431)の上面から約15mmの距離(A2)に配置した。
【0137】
[0134]
図4B~Cに示すように、非磁性ホルダ(431)に埋め込まれた棒双極磁石(430)は、支持ブロック(432)及びレール(433)の助けを借りて、静止した第2の磁場発生装置(440)の近傍(すなわち、第2の磁場発生装置(440)の磁場を介して)で移動可能であり、上記レール(433)はフレーム(443)に固定されていた。
【0138】
[0135]レール(433)(ThorLabs製)は、陽極酸化アルミニウム製であり、448mm(L13)×40mm(L14)×10mm(L15)の寸法を有していた。
【0139】
[0136]支持ブロック(432)は、第1のピース(432a)と第2のピース(432b)とを含んでいた。第1のピース(432a)は、陽極酸化アルミニウム(ThorLabs製のアルミニウムブレッドボード)で作られ、112mm(L16)×65mm(L17)×13mm(L18)の寸法を有しており、第2のピース(432b)に接着されていた。第2のピース(432b)は、高密度ポリエチレン(HDPE)製であり、112mm(L16)×65mm(L17)×37mm(L19)の寸法を有しており、レール(433)に第2のピース(432b)を配置するのに適した凹部を含み、65mm(L17)×40mm(L14)×5mm(L20)の寸法を有していた。
【0140】
[0137]2つのピース(432a~b)からなる支持ブロック(432)は、その長さに沿って上記レール(433)上を滑って移動可能であるように、レール(433)に配置されていた(
図4A参照)。
【0141】
第2の磁場発生装置(
図4A~4B、縮尺なし)
[0138]第2の磁場発生装置(440)として、一対の棒双極磁石(441a、441b)を用いた。2つの棒双極磁石(441a、441b)のそれぞれは、48mm(L4)×24mm(L5)×10mm(L6)の寸法を有しており、NdFeB N40を用いた。2つの棒双極磁石(441a、441b)のそれぞれの磁気軸は、上記磁石の長さ(L4)に対して実質的に平行であり(すなわち、基材(410)表面に対して実質的に垂直であり)、上記2つの棒双極磁石(441a)の第1の磁気方向は、上記2つの棒双極磁石(441b)の第2の磁気方向とは反対であった。2つの棒双極磁石(441a、441b)は、互いに距離(A1=48mm)を置いて配置され、ポリオキシメチレン(POM)製の一対の非磁性ホルダ(442a、442b)に独立して埋め込まれていた。
【0142】
[0139]
図4Bに示すように、一対の非磁性ホルダは、それぞれ52mm(L10)×30mm(L11)×12mm(L12)の寸法を有する2つのブロック(442a、442b)を含み、それぞれが2つの棒双極磁石(441a、441b)を独立して挿入するための凹部を含む。2つの棒双極磁石(441a、441b)のそれぞれは、そのそれぞれの非磁性ホルダ(442a、442b)の表面から約1mmの距離(A3)で他の棒双極磁石に対向し、それぞれの非磁性ホルダ(442a、442b)の最下面から約2mmの距離(A4)に配置されていた。
【0143】
[0140]
図4Bに示すように、2つの非磁性ホルダ(442a及び442b)は、陽極酸化アルミニウム製で、2つのフレームブレッドボード(443a及び443c)(Thorlabs Inc.製のアルミニウムブレッドボード)及び陽極酸化アルミニウム製のフレーム柱(443b)(Thorlabs Inc.製のラージライトアングルブラケットAP90/RL)を含むフレーム(443)で一緒に接続されていた。
【0144】
[0141]フレームブレッドボード(443a)は、450mm(L21)×300mm(L22)×13mm(L23)の寸法を有していた。フレーム柱(443b)は、176mm(L24)×125mm(L26)×30mm(L25)の寸法を有していた。フレームブレッドボード(443c)は、385mm(L28)×100mm(L27)×13mm(L23)の寸法を有していた。
【0145】
[0142]フレーム(443)は、64mm(L29)×8mm(L30)×75mm(L31)×8mm(L32)×8mm(L33)×70mm(L34)×34mm(L35)の寸法を有する3つの直角板(443d)を含んでいた。
【0146】
サンプル1-1~1-4(
図4)
[0143]25mm×25mmの正方形の複数のサンプルを、約20μmの厚さを有するコーティング層(420)を形成するように、T90スクリーンを使用した実験室用スクリーン印刷装置で、表1のUV硬化性スクリーン印刷インクを用いて、黒紙基材(GascogneLaminates M-cote 120)(410)に独立に印刷した。
【0147】
[0144]コーティング層(420)がまだ湿潤でまだ硬化していない状態である間に、基材(410)を第1の磁場発生装置(430)、特に非磁性ホルダ(431)の上に、上記コーティング層(420)の中心が第1の磁場発生装置(430)の中心に位置するように配置した。コーティング層(420)を担持する基材(410)は、上記第1の磁場発生装置(430)の上面から約2~約15mm(表2に示される値)の距離(A2)に配置され、すなわち、基材(410)は、アセンブリを形成するように、ホルダ(431)と直接接触するように配置されている。上記第1の磁場発生装置(430)の棒双極磁石の磁気軸は、第2の磁場発生装置(440)の棒状磁石(441a、441b)の対向する2つの磁気軸に対して実質的に垂直な方向にN極を指して、基材(410)の表面に実質的に平行であった。
【0148】
[0145]
図4Aに示すように、支持ブロック(432)及びトラック(433)の助けを借りて、コーティング層(420)を担持する基材(410)及び第1の磁場発生装置(430)を含む非磁性ホルダ(431)は、同時に、第2の磁場発生装置(440)の近傍で約10cm/秒の線速度で8回前後に移動した。コーティング層(420)を担持する基材(410)及び第1の磁場発生装置(430)を含むホルダ(431)は、同時に、第2の磁場発生装置(440)の近傍で移動し、第1の磁場発生装置(430)(コーティング層(420)の中心、即ちローリングバー特徴の中心にも対応する)は、各棒双極磁石(441a及び441b)から約25mmの距離(1/2A1)に配置され、基材(410)の表面は、双極棒磁石(441a及び441b)の底面と面一である。上記第2の磁場発生装置(440)の2つの棒双極磁石(441a及び44ab)のそれぞれは、基材(410)表面に垂直な磁気軸を有し、2つの棒双極磁石(441a及び441b)は反対の磁気方向を有していた、すなわち、上記2つの棒双極磁石の一方(441a)は、S極が基材(410)表面を指し、他方(441b)は、N極が基材(410)表面を指している。
【0149】
[0146]コーティング層(420)を担持した基材(410)が第1の磁場発生装置(430)を含む非磁性ホルダ(431)と接触したままで、コーティング層(420)を担持した基材(410)と第1の磁場発生装置(430)を含む非磁性ホルダ(431)が、第2の磁場発生装置(440)から移動方向に約50mm離れた距離(X)で同時に移動している間(
図4Aでは矢印として示されている)、コーティング層(420)は、OELを形成するように、コーティング層(420)を担持した基材(410)の上面から約30mmの距離に配置されたPhoseon(Type FireFlex50×75mm、395nm、8W/cm
2)からのUV-LEDランプ(450)に約0.5秒間露光されて硬化した。
【0150】
サンプル2-1~2-4
[0147]複数の比較サンプル2-1~2-4は、以下のステップを含む従来技術国際公開第2015/086257A1号に従った一般的な手順に従って独立して調製した。
ステップi)約20μmの厚さを有するコーティング層を形成するように、25mm×25mmの正方形のサンプルを黒紙基材(Gascogne Laminates M-cote 120)に、T90スクリーンを用いた実験室用スクリーン印刷装置を用いて、表1のUV硬化性スクリーン印刷インクを用いて印刷する。
ステップii)コーティング層がまだ湿潤でまだ硬化していない状態である間に、基材を、サンプル1-1~1-4について説明したが、第1の磁場発生装置を欠いている非磁性ホルダに置き、上記コーティング層(420)の中心を非磁性ホルダの中心上に置く。上述の支持ブロック(432)とトラック(433)の助けを借りて、コーティング層を上述の第2の磁場発生装置の磁場に曝し、サンプル1-1~1-4に記載の第2の磁場発生装置の近傍を約10cm/sの線速度で8回前後に移動させ、非磁性ホルダの中心を各棒双極磁石から約24mmの距離に配置し、基材の最下面を双極棒磁石の最下面と面一にする。
ステップiii)コーティング層を担持した基材を第2の磁場発生装置の磁場から除去し、上述の第1の磁場発生装置の磁場に曝露する。コーティング層を担持した基材は、上記第1の磁場発生装置の上面から約2~約15mm(表2に示す値)の距離(A2)に配置される。
ステップiv)ステップiii)と部分的に同時に、コーティング層は、OELを形成するように、コーティング層を担持した基材の上面から約30mmの距離に配置されたPhoseon製のUV-LEDランプ(Type FireFlex 50×75mm、395nm,8W/cm2)に約0.5秒間露光されて硬化した。
【0151】
第1及び第2の磁場装置(
図5A~B及び6A~C)の磁束密度の測定
[0148]サンプル1-1~1-4及びサンプル2-1~2-4の第1の磁場発生装置(530)の磁束密度(mT、ミリテスラ)は、ガウスメーターGM-08(Hirst MAGNETIC Instruments Ltd)に接続されたホールプローブ(560)(Hirst Magnetic Instruments Ltd.横方向プローブTp002)を、長さ(L2)と幅(L1)に関連して中心が第1の磁場発生装置(530)の中心に配置された状態で、第1の磁場発生装置(530)の上面から約2mm~約15mm(表2に記載の値)の間の距離(A2)に配置して独立して測定された。
【0152】
[0149]サンプル1-1~1-4及びサンプル2-1~2-4の第2の磁場発生装置(640)の磁束密度(mT、ミリテスラ)は、磁場発生装置(640)の各双極棒磁石(641a及び641b)から距離1/2A1(すなわち24mm)で磁場発生装置(640)に沿ってホールプローブ(660)を移動させることにより、独立して測定された。ホールプローブ(660)の中心は、2つの棒状双極磁石(641a、641b)の底面と面一になっていた。最大磁束密度は、移動経路(
図6の矢印参照)に沿って第2の磁場発生装置(640)の中心で、棒状双極磁石(641a、641b)のそれぞれから距離1/2L5の位置で測定された。
【0153】
[0150]サンプル経路に沿った第1の磁場発生装置(x30)の最大磁束密度と第2の磁場発生装置(x40)の最大磁束密度との比率は、測定値を除算することによって算出され、表2に示される。
サンプル1-1~1-4及びサンプル2-1~2-4のOELの明るさの測定
【0154】
[0151]サンプル1-1~1-4及びサンプル2-1~2-4のOELの明るさは、Eckhartd Optics LLC(Eckhardt Optics LLC, 5430 Jefferson Ct, White Bear Lake, Mn 55110; http://eckop.com)のコノスコピック散乱計を用いたコノスコピック散乱計によって独立して測定された。
【0155】
[0152]コーティング層(x20)を担持した基材(x10)は、コノスコピック散乱計の前焦点面の手動のxyテーブルに独立して配置された。xyテーブルは、両軸で0~26mmの間で調節可能であった。OELを有する基材(x10)を担持するxyテーブルは、印刷領域の中心が光学系の中心に対向するように、光学系において手動で調整された。
【0156】
[0153]配向された顔料フレークを含むコーティング層(x20)は、約1mmの直径を有する平行緑色光(520nm)のペンシルビームでOELの中心において照射され、サンプルの中心が発見され上記光のビームの下に位置されるまで、1mm毎に測定された。
【0157】
[0154]照明ビームの直径内にある板状の光学的に可変な磁性顔料粒子は、偏向角(χ、ψ)でコノスコピック散乱計レンズの焦点面に光を反射して戻した。偏向角(χ、ψ)について得られた値は、2次元ガウス関数を適用して平均化した。偏向角(χ、ψ)のガウス関数振幅を測定することにより、OELの中心におけるサンプルの明るさの値が得られた。各サンプルを4回測定し、明るさの平均値は表2に示される。
【0158】
[0155]明るさ測定は、板状の光学的に可変な磁性顔料粒子の二軸配向の程度を反映している。より大きな値は、より良い二軸配向を反映している。サンプル1-1~1-4及びサンプル2-1~2-4の明るさ値は、表2に示されている。
【表2】
【0159】
[0156]表2に示すように、約1.0以下の比率H1/H2を有する第1及び第2の磁場発生装置(すなわち、サンプル1-1及び1-2)を使用することにより、従来技術に従って調製されたサンプル(サンプル2-1及び2-2)よりも有意に高い明るさを示すOELを製造することができた。1.9以上3.48以下の比率H1/H2を有する第1及び第2の磁場発生装置を使用することにより、従来技術に従って調製された比較サンプルと同等の明るさを示すOELを製造することができた(サンプル1-3及び1-4対サンプル2-3及び2-4参照)。
【0160】
[0157]本明細書に記載された第1及び第2の磁場発生装置を使用する本発明に従ったプロセスは、機械的に堅牢で、産業高速印刷装置の方法で容易に実施できる光学効果層(OEL)の製造を可能にし、目を引く動的効果だけでなく、高解像度及び高コントラストを示す光学効果層(OEL)の製造を可能にした。