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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】エキスパンションジョイント装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
E04B1/68 100A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019210140
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021080770
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592131663
【氏名又は名称】井上商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 繁
(72)【発明者】
【氏名】正津 弘喜
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-007287(JP,A)
【文献】特開平11-324136(JP,A)
【文献】特開2004-324087(JP,A)
【文献】特開2016-132932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物のエキスパンションジョイント部に装備されるエキスパンションジョイント装置であって、
前記エキスパンションジョイント部のクリアランスのうちの少なくとも中央部を覆うジョイントカバーを備え、該ジョイントカバーは、ジョイント伸縮方向における両端部をジョイント伸縮方向にスライド可能に支持されると共に、前記クリアランスが狭まる際に両側から挟まれて上向きに移動可能とされ、
前記ジョイントカバーよりも下方で、前記クリアランスを挟んで両側部位に伸縮自在な複数のリンク機構が架け渡されると共に、該複数のリンク機構に横材が架け渡され、
前記横材に、ジョイントカバーから下向きに突設されて水平方向に位置決めする位置決め軸が上下方向にスライド自在に保持されたことを特徴とするエキスパンションジョイント装置。
【請求項2】
複数の前記位置決め軸が設けられたことを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションジョイント装置。
【請求項3】
前記ジョイントカバーよりもジョイント伸縮方向で両外側に、前記クリアランスの端部を覆う端カバーが設けられ、前記リンク機構に、ジョイントカバー及び端カバーの端部をスライド可能に支持する支持プレートが保持されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエキスパンションジョイント装置。
【請求項4】
前記複数のリンク機構に、上下二段の前記横材が架け渡されたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のエキスパンションジョイント装置。
【請求項5】
前記位置決め軸は、その下端が固定部位に支持されたことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のエキスパンションジョイント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば免震構造の建築物のエキスパンションジョイントに用いるエキスパンションジョイント装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、免震構造や複雑な構造の建築物などでは、その周囲に外溝を構成して地面と分離したり、建築物自体を複数のブロックに分割したりすると共に、これらをエキスパンションジョイントによって接続し、地震や気温の変化、不同沈下などの影響をエキスパンションジョイント部で吸収することが多い。特に、免震構造の建築物では、地震時に、建築物と地面との間やブロック間に大きな相対変位が生じやすく、この大きな相対変位をエキスパンションジョイント部で吸収するようにしている。
【0003】
エキスパンションジョイントは、建築物と地面とを、あるいはブロック同士をその相対変位に追従可能に接続する接続手法であり、建築物と地面との間やブロック間に、相対変位を吸収可能な大きさのクリアランスを形成すると共に、床面などに露出するクリアランスをその両側部位の相対変位に追従可能なエキスパンションジョイント装置で覆うようにしている。
【0004】
例えば、特許文献1は、上記のようなエキスパンションジョイント装置(床用目地装置)として、クリアランス(目地部)に、ジョイント伸縮方向(左右方向)と直交する方向に間隔をあけて複数の伸縮支持リンク機構101を配置し、この伸縮支持リンク機構101に取り付けたガイド筒102に、ジョイントカバー(可動目地プレート)103に取り付けられる位置決め軸(支持バー)104を挿入した構造を開示している(図6及び図7参照)。
【0005】
上記構造のエキスパンションジョイント装置では、地震時にクリアランス(目地部)が狭まるとき、ジョイントカバー(可動目地プレート)103がその両側の端カバー(固定目地プレート)105の上面にせり上がり、その際、ガイド筒102に挿入された位置決め軸(支持バー)104により、ジョイントカバー(可動目地プレート)103のジョイント伸縮方向へのずれを防止する(図8参照)。また、地震時にクリアランス(目地部)が広がるとき、ジョイントカバー(可動目地プレート)103と端カバー(固定目地プレート)105との間にできる隙間が支持プレート(補助プレート)106で塞がれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-132932(段落番号0013、0021~0023、図2図3図8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1のエキスパンションジョイント装置では、地震時に、クリアランスがその全幅に亘って均一に狭まることによって、ジョイントカバー103が、標準位置と端カバー105の上面との間で、その水平状態を維持したまま上昇及び下降する。
【0008】
しかしながら、地震時のクリアランスの狭まりがジョイント伸縮方向と直交する方向に沿って不均一であると、水平状態のジョイントカバー103(図9(a)参照)が、クリアランスが十分に狭まった部分で大きく上昇して傾斜するおそれがある(図9(b)参照)。この場合、ジョイントカバー103に取り付けた各位置決め軸104が、間隔をあけて配置した各リンク機構101を捩じるように傾斜しながら、各ガイド筒102から異なる突出量で突出してジョイントカバー103の傾斜を許容する。
【0009】
ここで、リンク機構101は、その骨組み面内における剛性のみを大きくする構造であり、骨組面外への撓みや捩じれに対する剛性が比較的に小さくなりやすい。この剛性の相違により、リンク機構101に取り付けたガイド筒102及び位置決め軸104は、ジョイントカバー103のジョイント伸縮方向へのずれを防止するものの、ジョイントカバー103の傾斜を規制することができない。
【0010】
地震時にジョイントカバー103が傾斜することにより、上昇したジョイントカバー103が急速に下降した際、その端部だけが支持プレート106に衝突して破損したり、ジョイントカバー103の上に載っている人や物が水平方向及び上下方向に揺れながら斜めになって倒れたりするおそれがある。
【0011】
本発明は、地震時にジョイントカバーが上下動する際、そのジョイントカバーの水平状態を維持することのできるエキスパンションジョイント装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るエキスパンションジョイント装置は、建築物のエキスパンションジョイント部に装備するものであり、エキスパンションジョイント部のクリアランスのうちの少なくとも中央部を覆うジョイントカバーを備え、そのジョイントカバーを、ジョイント伸縮方向における両端部をジョイント伸縮方向にスライド可能に支持すると共に、クリアランスが狭まる際に両側から挟まれて上向きに移動可能なものとし、ジョイントカバーよりも下方で、クリアランスを挟んで両側部位に伸縮自在な複数のリンク機構を架け渡すと共に、この複数のリンク機構に横材を架け渡し、その横材で、ジョイントカバーから下向きに突設して水平方向に位置決めする位置決め軸を上下方向にスライド自在に保持したものである。
【0013】
上記構成によれば、クリアランスの両側に複数のリンク機構を架け渡し、このリンク機構に架け渡した横材で、位置決め軸を上下方向にスライド自在に保持するので、位置決め軸が傾斜するのを阻止して、ジョイントカバーの水平状態を維持することができる。
【0014】
つまり、複数のリンク機構に架け渡した横材を十分に傾斜させるには、各リンク機構を上下方向で相対的に十分に撓ませる必要がある。しかし、そのリンク機構は、骨組面外への撓みや捩じれに対する剛性が比較的に小さいものの、骨組み面内における剛性が大きく撓みにくい構造であり、横材の傾斜を十分に規制することができる。これにより、横材で上下方向にスライド自在に保持した位置決め軸の傾斜を阻止し、この位置決め軸を突設したジョイントカバーの水平状態を維持することができる。
【0015】
また、複数の位置決め軸を設けるようにしてもよい。
【0016】
この構成によると、位置決め軸の本数を多くする分、その全体としての強度及び剛性を高めて、ジョイントカバーの水平状態を確実に維持することができる。しかも、複数の位置決め軸を設けることにより、位置決め軸として断面円形の部材を採用したとしても、ジョイントカバーが鉛直軸周りに回転移動するのを防止することができる。なお、1本の位置決め軸を採用する場合には、位置決め軸として円形を除く断面形状の部材を採用して、ジョイントカバーの鉛直軸周りの回転移動を阻止すればよい。
【0017】
また、ジョイントカバーよりもジョイント伸縮方向で両外側に、クリアランスの端部を覆う端カバーを設け、リンク機構で、ジョイントカバー及び端カバーの端部をスライド可能に支持する支持プレートを保持するようにしてもよい。
【0018】
この構成によると、クリアランスの範囲内にあるリンク機構で支持プレートを保持し、この支持プレートで、ジョイントカバーとその両外側の端カバーの端部をスライド可能に支持するので、エキスパンションジョイント装置をそのジョイント伸縮方向に小さくすることができる。なお、端カバー及び支持プレートを設ける構成に限定する必要はなく、クリアランスを挟んで両側部位で、ジョイントカバーの両端部をスライド自在に支持するようにしてもよい。
【0019】
また、複数のリンク機構に上下二段の横材を架け渡すようにしてもよい。
【0020】
この構成によると、二段の横材を架け渡すので、リンク機構の骨組面外への撓みや捩じれに対する剛性を高めることができる。しかも、上下二段の横材で、位置決め軸を上下方向にスライド自在に保持することにより、横材に対する位置決め軸の傾斜を確実に阻止することができる。
【0021】
また、位置決め軸について、その下端を固定部位で支持するようにしてもよい。
【0022】
この構成によると、ジョイントカバーから下向きに突設した位置決め軸を固定部位で支持するので、ジョイントカバーをその両端部に加えて中間部でも支持することができ、ジョイントカバーの撓みを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のとおり、本発明によると、クリアランスの両側に複数のリンク機構を架け渡し、さらに、リンク機構に横材を架け渡して、この横材で、ジョイントカバーに突設した位置決め軸を上下方向にスライド自在に保持するようにしている。
【0024】
これにより、地震時にクリアランスの大きさが変動して、ジョイントカバーが上下動する際、そのクリアランスの狭まりがジョイント伸縮方向と直交する方向に沿って不均一であったとしても、位置決め軸で、ジョイントカバーのジョイント伸縮方向へのずれを防止しつつ、ジョイントカバーの水平状態を維持することができる。
【0025】
その結果、ジョイントカバーの傾斜を阻止することができ、上昇したジョイントカバーが急速に下降したとしても、その端部だけが支持プレートに衝突して破損したり、ジョイントカバーの上に載っている人や物が揺れながら斜めになって倒れたりするのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るエキスパンションジョイント装置の平面図
図2図1のA-A断面図
図3図1のB-B断面図
図4】クリアランスが変動したときの様子を示す図
図5】エキスパンションジョイント装置の別の形態の平面図で、ジョイントカバー、端カバー及び目地カバーを省略して、その支持構造を示す図
図6】従来のエキスパンションジョイント装置の断面図
図7図6と直交する方向における断面図
図8図6におけるクリアランスが狭まった状態を示す図
図9図7におけるジョイントカバーが傾斜する様子を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るエキスパンションジョイント装置を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0028】
図1図3に示すように、エキスパンションジョイント装置1は、例えば、免震構造の建築物の周囲に、外溝を形成してエキスパンションジョイント部2を設定した上で、その外溝で構成されるクリアランス3を覆うものであり、クリアランス3の中央部を覆うジョイントカバー4と、クリアランス3の両端部を覆う二枚の端カバー5と、ジョイントカバー4の両端部及び端カバー5の内端部をジョイント伸縮方向にスライド可能に支持する二枚の支持プレート6と、を備え、地震時にクリアランス3が狭まる際に、両側の端カバー5で挟まれたジョイントカバー4を上向きに移動させるようにしたものである。
【0029】
さらに、エキスパンションジョイント装置1は、ジョイントカバー4及び端カバー5よりも下方で、クリアランス3を挟んで両側部位7、8に、ジョイント伸縮方向に伸縮自在な複数のリンク機構9を架け渡し、これらのリンク機構9で二枚の支持プレート6を保持すると共に、複数のリンク機構9のジョイント伸縮方向で中央に上下二段の横材10、11を架け渡し、横材10、11で、ジョイントカバー4から下向きに突出する複数の位置決め軸12を上下方向にスライド自在に保持して、ジョイントカバー4を水平方向に位置決めしつつ、ジョイントカバー4の水平状態を維持するようにしたものである。
【0030】
ジョイントカバー4は、例えば上面が開口した箱状で金属製の枠にモルタルなどの充填材を充填した構造の版状とされ、その両端部に、標準状態で端カバー5との隙間を覆う目地カバー13が揺動自在に取り付けられている。このジョイントカバー4は、標準状態で両側の端カバー5の間のスペースに納まると共に、地震によってクリアランス3が広がった状態でも両側の支持プレート6に跨ることが可能な大きさに設定されている。
【0031】
端カバー5は、例えば上面が開口した箱状で金属製の枠にモルタルなどの充填材を充填した構造の版状とされて、ジョイントカバーの両外側に配置され、外端部を両側部位7、8に固定されると共に、内端部を支持プレート6にスライド自在に支持されている。端カバー5の内端部には、斜め上向きのテーパー14が形成され、中央のジョイントカバー4をジョイント伸縮方向で両側から挟んで上向きに移動させるようになっている。
【0032】
端カバー5の大きさは、地震によってクリアランス3が狭まった状態で、その内端同士が衝突することがなく、地震によってクリアランス3が広がった状態でも、それぞれの内端部が支持プレート6に支持されるように設定されている。
【0033】
支持プレート6は、例えば金属板を組み立ててなる版状とされ、中央部を挟んで両側に位置するよう、支持材15a、15b、15cを介してリンク機構9に保持され、ジョイントカバー4及び端カバー5の端部を載置してスライド可能に支持すると共に、両者の隙間を下側から覆っている。この支持プレート6は、地震によってクリアランス3が狭まった状態で、その内端同士が衝突することがなく、地震によってクリアランス3が広がった状態でも、ジョイントカバー4及び端カバー5の端部を支持可能な大きさに設定されている。
【0034】
リンク機構9は、例えば、それぞれが複数枚の長尺金属板16aで構成された複数のリンク16をピン17で回転可能に接続することにより、ジョイント伸縮方向に伸縮自在なパンタグラフ状とされ、ジョイントカバー4及び端カバー5の下方に配置される。このリンク機構9は、クリアランス3を挟む両側部位7、8に固定されたリンク取付部18に取り付けることにより、ジョイント伸縮方向と直交する方向に間隔をあけて複数個所に架け渡される。
【0035】
間隔をあけて配置された複数のリンク機構9には、ジョイント伸縮方向で中央を挟んで両側部分に、例えば金属製の角パイプからなるそれぞれ3本の支持材15a、15b、15cが架け渡され、各支持材15a、15b、15cがリンク機構9の上縁部のピン17に取付金具19を介して取り付けられている。
【0036】
支持材15a、15b、15cのうちの中央の支持材15bには、その上面に支持プレート6が固定され、この支持プレート6が両側の支持材15a、15cにスライド自在に載置されることにより、二組の支持材15a、15b、15cに合計二枚の支持プレート6が保持されている。支持材15a、15b、15cは、リンク機構9の伸縮に伴ってその間隔を変化させながらジョイント伸縮方向に移動し、その際、支持プレート6は、両側の支持材15a、15cに対してスライドしつつ、中央の支持材15bと一体的に移動する。
【0037】
上側の横材10は、例えば金属製の角パイプとされ、間隔をあけて配置された複数のリンク機構9のうちのジョイント伸縮方向で中央に架け渡され、リンク機構9の上縁部のピン17に取付金具20を介して取り付けられている。
【0038】
下側の横材11は、例えば金属製の角パイプとされ、間隔をあけて配置された複数のリンク機構9のうちのジョイント伸縮方向で中央に架け渡され、リンク機構9の下縁部のピン17に取付金具21を介して取り付けられている。
【0039】
上下二段の横材10、11には、各リンク機構9をジョイント伸縮方向と直交する方向に挟む位置に保持穴22、23が形成され、この保持穴22、23に位置決め軸12を挿通して、上下方向にスライド自在に保持している。
【0040】
位置決め軸12は、例えば金属製の丸棒とされ、横材10、11の保持穴22、23に挿通するよう位置を合わせて配置されて、その上端をジョイントカバー4のジョイント伸縮方向で中央に固定されている。位置決め軸12は、下端をクリアランス3の内部にある固定部位24に当接させて支持され、この位置決め軸12を介してジョイントカバー4の中央を支持し、ジョイントカバー4の撓みを規制するようになっている。
【0041】
次に、図4を参照し、地震によってクリアランス3の大きさが変動する際の様子を説明する。
【0042】
まず、図4(b)に示すように、地震が発生していない標準状態では、ジョイントカバー4の両端部が支持プレート6に載置されて水平状態で支持されると共に、ジョイントカバー4及び端カバー5の端部が接近し、ジョイントカバー4と端カバー5との隙間を目地カバー13が覆っている。
【0043】
図4(a)に示すように、地震によってクリアランス3が狭まった状態では、ジョイントカバー4が両側の端カバー5で挟まれて押し上げられ、端カバー5の上面に載置される。ジョイントカバー4が押し上げられるのに伴い、両側の支持プレート6の間に残された隙間を通ってジョイントカバー4から下方に延びる位置決め軸12の下端が固定部位24から離間する。
【0044】
地震により、クリアランス3がジョイント伸縮方向と直交する方向において不均一に狭まる場合、ジョイントカバー4を不均一に押し上げて、ジョイント伸縮方向と直交する方向においてジョイントカバー4を傾斜させようとする力が作用する。これに対し、位置決め軸12が、リンク機構9に架け渡されて水平状態に維持される上下二段の横材10、11に、上下方向のスライドのみを許容するように保持されているので(図3参照)、位置決め軸12の上端を固定されたジョイントカバー4の水平状態が維持される。
【0045】
ジョイントカバー4が上下動する際に水平状態を維持されることにより、ジョイントカバー4が急速に下降したとしても、ジョイント伸縮方向と直交する方向における端部だけが支持プレート6に強く衝突するということがなく、ジョイントカバー4や支持プレート6の破損が防止される。しかも、上下動するジョイントカバー4の水平状態が維持されるので、ジョイントカバー4に人や物が載っている場合にも、その上の人や物が倒れやすくなるのが防止される。
【0046】
図4(c)に示すように、地震によってクリアランス3が広がった状態では、ジョイントカバー4の水平状態を維持したまま、ジョイントカバー4及び端カバー5の端部が支持プレート6の上面をスライドして離間し、目地カバー13に覆われていたジョイントカバー4と端カバー5との隙間が大きくなる。この状態では、ジョイントカバー4と端カバー5との隙間から支持プレート6が露出し、ジョイントカバー4及び端カバー5に載っているものが隙間を通って落下するのを阻止する。
【0047】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、適宜変更を加えることができる。例えば、図5に示すように、コーナー部におけるクリアランス3の形状を考慮して、リンク機構9をジョイント伸縮方向に対して斜め45°に傾斜させるようにしてもよい。
【0048】
また、位置決め軸12は、下端をクリアランス3の内部にある固定部位24に当接させて支持する必要はなく、例えば、ジョイントカバー4が撓みにくい構造の場合には、固定部位24を省略すると共に、位置決め軸12を短くすることができる。
【0049】
また、上下二段の横材10、11は、そのいずれか一方のみで位置決め軸12の傾斜を阻止するようにして、他方を省略することもできる。また、クリアランス3を跨ぐようジョイントカバー4の大きさを設定して、ジョイントカバー4を両側部位7、8に架け渡すことにより、端カバー5及び支持プレート6を省略することもできる。また、1本の位置決め軸12だけを設けるようにしてもよく、この場合、位置決め軸12を非円形断面とすることにより、位置決め軸12を中心としてジョイントカバー4が鉛直軸回りに回転するのを阻止するようにすればよい。
【符号の説明】
【0050】
1 エキスパンションジョイント装置
2 エキスパンションジョイント部
3 クリアランス
4 ジョイントカバー
5 端カバー
6 支持プレート
7、8 両側部位
9 リンク機構
10 横材(上側)
11 横材(下側)
12 位置決め軸
13 目地カバー
14 テーパー
15a、15b、15c 支持材
16 リンク
16a 長尺金属板
17 ピン
18 リンク取付部
19、20、21 取付金具
22、23 保持穴
24 固定部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9