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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】ルーバー装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20230418BHJP
   E04F 10/08 20060101ALI20230418BHJP
   F24H 1/00 20220101ALI20230418BHJP
   F24S 10/70 20180101ALI20230418BHJP
   F24S 20/63 20180101ALI20230418BHJP
   F24S 23/74 20180101ALI20230418BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20230418BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E04B1/76 100E
E04F10/08
F24H1/00 621E
F24S10/70
F24S20/63
F24S23/74
E06B9/24 Z
G02B5/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020151040
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045440
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592131663
【氏名又は名称】井上商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 繁
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-108082(JP,U)
【文献】特開2015-40654(JP,A)
【文献】特開2002-22283(JP,A)
【文献】特開昭54-134835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04F 10/00 - 10/10
F24D 18/00
F24H 1/00
F24H 1/18 - 1/20
F24H 4/00 - 4/06
G02B 5/00 - 5/136
E06B 9/24
F24S 10/00 - 90/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダブルスキン構造のガラスカーテンウォールの外部ガラスと内部ガラスとの間に形成された空気層内に設置されるルーバー装置であって、熱媒体が通る集熱管と、集熱管に対向して反射面が形成され、集熱管周りに回転可能とされた遮光板とを備え、集熱管はカーテンウォールの構造部材に支持材を介して取り付けられ、遮光板は支持材に回転可能に支持され、遮光板の反射面が外部ガラス側に向いているとき、太陽光が反射面で集熱管に向かって反射して、集熱管で太陽光の集熱が行われ、遮光板の反射面が内部ガラス側に向いているとき、集熱管から放射された熱が反射面で反射されて、屋内に向かって放射されることを特徴とするルーバー装置。
【請求項2】
集熱管の一側および他側が筒状の支持材に嵌め込まれ、一側の支持材にベアリングの内輪が取り付けられ、遮光板は、ベアリングの外輪に取り付けられて、一側の支持材に回転可能に支持され、遮光板の他側に設けられた端板に差込孔が形成され、差込孔に他側の支持材が差し込まれ、遮光板の他側がフリーな状態で支持材に取り付けられることを特徴とする請求項1記載のルーバー装置。
【請求項3】
遮光板および集熱管は、金属製の押出形材からなり、集熱管は、接続管を介して左右の集熱管に連結される、あるいは上下の集熱管に連結されることを特徴とする請求項1または2記載のルーバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルスキン構造のガラスカーテンウォールの外部ガラスと内部ガラスとの間に形成された空気層内に設置されるルーバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルスキン構造のガラスカーテンウォールを備えた建物において、夏場の日射遮蔽と冬場の日射取得のためにガラスカーテンウォールの空気層内にルーバー装置を設けて、日射取得量のコントロールが行われている。
【0003】
ここで、太陽エネルギは、太陽光発電や太陽熱を利用した給湯、空調などに利用されている。太陽光を遮蔽するルーバー装置において、太陽光の集熱を行うことにより、太陽エネルギを有効に活用できる。特許文献1に、太陽光を集熱する集熱器で構成される軸体と、回転可能に取り付けられる遮光用の羽根部材であって、軸体に回転可能に取り付けられ、太陽光を集光する羽根部材とを備えたルーバー装置が記載されている。羽根部材は、軸体の下方側に配置され、前方に向かって延びている。太陽光が羽根部材で反射されて、軸体に集光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-40654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のルーバー装置では、羽根部材による反射光によって集熱される。軸体と羽根部材とのユニットが複数組ある場合、太陽光が羽根部材に遮られ、軸体は直接受光できず、太陽光の集熱が効率よく行われていない。また、羽根部材は軸体周りに回転するが、180度回転させたとき、ルーバー装置から熱を放射できるような構造にはなっていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑み、太陽光の集熱を効率よく行うとともに、熱を放射できるようにしたルーバー装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のルーバー装置は、ダブルスキン構造のガラスカーテンウォールの外部ガラスと内部ガラスとの間に形成された空気層内に設置され、熱媒体が通る集熱管と、集熱管に対向して反射面が形成され、集熱管周りに回転可能とされた遮光板とを備えている。集熱管はカーテンウォールの構造部材に支持材を介して取り付けられ、遮光板は支持材に回転可能に支持される。
【0008】
遮光板の反射面が外部ガラス側に向いているとき、太陽光が直接集熱管に当たるとともに、反射面で集熱管に向かって反射して、集熱管に当たり、集熱管で太陽光の集熱が行われる。遮光板の反射面が内部ガラス側に向いているとき、集熱管から放射された熱が反射面で反射されて、屋内に向かって放射される。
【0009】
集熱管の一側および他側が筒状の支持材に嵌め込まれ、一側の支持材にベアリングの内輪が取り付けられ、遮光板は、ベアリングの外輪に取り付けられて、一側の支持材に回転可能に支持され、遮光板の他側に設けられた端板に差込孔が形成され、差込孔に他側の支持材が差し込まれ、遮光板の他側がフリーな状態で支持材に取り付けられる。遮光板および集熱管は、金属製の押出形材からなり、集熱管は、接続管を介して左右の集熱管に連結される、あるいは上下の集熱管に連結される。回転する遮光板と接続管に接続されて固定の集熱管を支持材によって支持することにより、簡単な構造で集熱管と回転可能な遮光板を組み付けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、集熱管は直接光と反射光とを受けて、太陽光の集熱を効率よく行うことができる。そして、熱媒体の熱を集熱管から放射して、反射面で反射させることにより、熱放射が行われ、放射空調を行うことができ、屋内の空調負荷を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のガラスカーテンウォールに設置されたルーバー装置の断面図
図2】ルーバー装置の平面図
図3】ルーバー装置の取付構造を示す一部破断側面図
図4】ルーバー装置の取付構造および集熱管の接続を示す図
図5】(a)遮光板および集熱管の断面図、(b)集熱管下部の正面図
図6】ベアリングに取り付けた遮光板の平面図
図7】反射面が外部ガラス側を向いているときの太陽光の集熱を示す図
図8】ルーバー装置を利用した太陽光集熱装置の概略構成図
図9】反射面が内部サッシ側を向いているときの熱放射を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態のダブルスキン構造のガラスカーテンウォールに設けられたルーバー装置を図1~6に示す。ガラスカーテンウォールは、建物の外装として鉛直方向および水平方向に隣接して配置された複数のガラスによって構成され、屋外側の外部ガラス1と屋内側の内部ガラス(内部サッシ)2とによりダブルスキン構造とされる。外部ガラス1と内部サッシ2との間に空気層3が形成され、ルーバー装置は空気層3内に設置される。
【0013】
ルーバー装置は、鉛直方向に配置された複数の遮光板4と、熱媒体が通る複数の集熱管5とを備えている。遮光板および集熱管は、水平方向に一列に並んでいる。各遮光板4は、左右の遮光板4と隙間をあけて配置され、この隙間が採光スリット6となる。集熱管5は、遮光板4から離れて鉛直方向に配置され、遮光板4は集熱管5周りに回転可能とされる。
【0014】
遮光板4はアルミニウム製の押出形材とされ、集熱管5に対向して反射面7が形成される。反射面7の裏側に、取付部8が突出して形成されている。図7に示すように、反射面7は断面放物線状に形成され、反射面7に向かって直進してきた光が集熱管5に向かって反射する。遮光板4の表面には、シルバー色の陽極酸化被膜が施されている、あるいは白色系の高日射反射塗料が塗布されている。集熱管5は、アルミニウム製の押出形材とされ、円筒状に形成される。集熱管5の表面には、黒色の陽極酸化被膜が施されている、あるいは黒色系の太陽光吸収塗料が塗布されている。
【0015】
集熱管5は、上下に設けられた上部支持材10および下部支持材11を介してガラスカーテンウォールの構造部材に取り付けられる。遮光板4は、下部支持材11に回転可能に取り付けられ、上部支持材10にフリーな状態で支持される。すなわち、下部支持材11は回転可能かつ熱伸縮を考慮して上下方向に移動可能に支持材に支持される。
【0016】
各集熱管5は、ガラスカーテンウォールの構造部材に取り付けられた固定材12に支持される。図1,2に示すように、この構造部材として、各外部ガラス1を支持するための支持部材13が建物のフロア14から外側に向かって突設されている。複数の支持部材13は、鉛直方向および水平方向に間隔をあけて設置され、支持部材13は空気層3内に差し渡されている。支持部材13の外端に、外部ガラス1を保持するマリオン15が取り付けられる。なお、支持部材13の上にキャットウォーク16が設けられている。
【0017】
上部支持材10および下部支持材11は円筒状に形成される。図3、4に示すように、集熱管5が上部支持材10に嵌め込まれて、集熱管5の上部が上部支持材10に取り付けられる。上部支持材10は、ガラスカーテンウォールの支持部材13に取り付けられた上側の固定材12に固定される。固定材12は、L字状の形材とされ、水平方向に配される。上側の固定材12は、支持部材13の下面にねじ止めされ、上部支持材10が上側の固定材12にねじ止めされる。
【0018】
遮光板4の上端に、平坦な上端板20が取り付けられる。上端板20には、遮光板4を覆う半円状の突出部21が形成されている。上端板20は、遮光板4の取付部8にねじ止めされる。上端板20の中央に、上部支持材10を差し込む差込孔22が形成されている。差込孔22に上部支持材10が差し込まれることにより、遮光板4の上部は上部支持材10に遊嵌され、フリーな状態で支持される。
【0019】
集熱管5の下部も下部支持材11に嵌め込まれる。下部支持材11は、支持部材13の上面にねじ止めされた下側の固定材12に固定される。図4、5に示すように、集熱管5の下部が下部支持材11に抜けないように一対の固定金具23により固定される。固定金具23は、集熱管5を挟む小径部24と下部支持材11を挟む大径部25とを有し、集熱管5および下部支持材11を挟み込んだ2つの固定金具23はボルトによって締め込まれる。これにより、集熱管5が下部支持材11に固定される。
【0020】
各遮光板4および集熱管5が支持材10,11を介して上下の固定材12に固定されることにより、ルーバー装置をガラスカーテンウォールの空気層3内で支持することができる。したがって、耐風圧強度を考慮する必要がなく、地震による変形と慣性力に対する安全性を確保するだけでよいので、支持耐力を軽減でき、部品の軽量化等によってルーバー装置のコストダウンを図れる。
【0021】
図5、6に示すように、下部支持材11には、ベアリング30が組付けられている。ベアリング30は、外輪31と内輪32を有する。内輪32に下部支持材11が嵌め込まれて一体化される。外輪31に遮光板5が取り付けられる。遮光板4の下端に下端板33が取り付けられている。下端板33は、上端板20と同じ形状とされ、遮光板5の取付部8にねじ止めされる。支持部材13に取り付けられている下部支持材11は固定されているので、内輪32が固定され、外輪31が回転する。したがって、遮光板4は集熱管5周りに回転可能となる。
【0022】
ベアリング30の外輪31には、2段の歯車34が設けられている。各歯車34には、チェーン35が掛けられ、チェーン35は隣り合う外輪31の歯車34に掛けられる。左右に並んだベアリング30の外輪31はチェーン35によって連結される。これにより、左右一列に並んだ遮光板4が同調して回転する。左右のいずれか一端に位置する遮光板4の歯車34には駆動チェーン36が掛けられ、駆動チェーン36はモータに連結された駆動歯車に掛けられる。モータの駆動により一端の遮光板4の外輪31が回転し、チェーンを通じて各外輪31に駆動力が伝達され、各遮光板4が同調して回転する。
【0023】
図4に示すように、複数の集熱管5が鉛直方向および水平方向に並べて配置され、集熱管5は左右方向に隣接する集熱管5に連結される。左右に隣り合う集熱管5の上端に継手40を介してU字管41を接続して、左右の集熱管5を連結する。同様に左右の集熱管5の下端を継手40を介してU字管41で接続する。
【0024】
図8に示すにように、左右に並んだ複数の集熱管5が一体化される。ここで、集熱管5を通る熱媒体として、水が使用される。左右のいずれか一側の集熱管5の上端にポリエチレン製などの接続管42が継手40を介して接続され、他側の集熱管5の下端にポリエチレン製などの接続管42が継手40を介して接続される。上側の接続管42が貯水タンク43に接続され、下側の接続管42が貯湯タンク44に接続される。これによって、ルーバー装置を利用した太陽光集熱装置が構成される。なお、接続管42には、高温になった熱媒体の熱が逃げないように保温断熱材45が巻かれている。貯水タンク43は建物の屋上に設置され、貯水タンク43から集熱管5に給水される。集熱管5を流れる熱媒体の流量は流量制御弁46などによって調整される。
【0025】
ガラスカーテンウォールの空気層3内に上記のルーバー装置が設置され、遮光板4の反射面7が外部ガラス1側を向いているとき、外部ガラス1を通して太陽光Sが照射される。図7に示すように、太陽光Sは採光スリット6を通り抜け、内部サッシ2を透過する透過光Tとなり、屋内に光が差し込む。採光スリット6の幅によって屋内への採光量が調整される。一方、太陽光Sが集熱管5や遮光板4に当たると、光が反射面7で反射されるとともに、集熱管5に吸収される。これにより、適切に日射取得を抑えることができ、夏季の太陽光Sによる建物の蓄熱を抑制でき、空調の効率を高めることができる。
【0026】
集熱管5に当たった直接光Dは集熱管5に吸収され、熱となって、集熱管5を流れる水を加熱する。太陽光Sが遮光板4に当たると、反射光Rは集熱管5に当たって吸収され、内部の水を加熱する。集熱管5に当たらなかった反射光Rは外部ガラス1を透過して屋外に放出される。なお、太陽の動きに応じて遮光板4を回転させると、反射面7が太陽を追尾して、常に太陽光Sが反射面7に正対して当たる。遮光板4が断面放物線状であり、集熱管5をその焦点に配置することにより、太陽光Sを有効的に活用でき、効率よく集熱することができる。
【0027】
集熱された水は温水となって、貯湯タンク44に貯められる。温水として直接利用する、あるいは貯湯タンク44の熱を吸収式冷凍機等により間接的に空調に利用することもできる。このように、集熱管5は常に直接光Dと反射光Rを受けて、効率よく太陽光Sから集熱することができる。また、集熱管5は遮光板4から離れて配置されているので、集熱管5の熱は遮光板4に伝導せず、熱損失を減らすことができる。
【0028】
また、図9に示すように、遮光板4を回転させて、反射面7を内部サッシ2側に向けたとき、遮光板4に当たった太陽光は外部ガラス1側に反射され、遮光される。このとき、集熱管5に熱媒体を流すと、集熱管5から放射された熱が反射面7で反射され、拡散することなく屋内に向かって放射される。これによって、熱媒体を利用した放射空調を行うことができ、屋内の空調負荷を低減することができる。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。遮光板4および集熱管5は、垂直方向に設けられているが、水平方向に設けてもよい。また、上下に隣接する集熱管5同士を連結してもよい。集熱管5の上端に継手40を介して接続管42を接続して、上側の集熱管5に連結する。また、熱媒体として、水以外に油、空気、二酸化炭素などを使用してもよい。
【0030】
ベアリング30の外輪31をピニオンにして、ピニオンに噛み合うラックを設けてもよい。ラックをモータによってスライドさせると、ピニオンが回転して、各遮光板4が回転する。
【符号の説明】
【0031】
1 外部ガラス
2 内部サッシ
3 空気層
4 遮光板
5 集熱管
6 採光スリット
7 反射面
10 上部支持材
11 下部支持材
12 固定材
13 支持部材
20 上端板
22 差込孔
23 固定金具
30 ベアリング
31 外輪
32 内輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9