(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】木質壁部材の接合構造、木質壁部材、及び木質部材の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/61 20060101AFI20230418BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E04B1/61 504C
E04B1/61 504D
E04B1/10 B
(21)【出願番号】P 2017143800
(22)【出願日】2017-07-25
【審査請求日】2020-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】國府田 まりな
(72)【発明者】
【氏名】松原 由典
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃治
(72)【発明者】
【氏名】寺村 雄機
(72)【発明者】
【氏名】西村 奈緒
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-113884(JP,A)
【文献】特開昭55-042970(JP,A)
【文献】特開2010-144448(JP,A)
【文献】登録実用新案第349794(JP,Z1)
【文献】実開昭60-122403(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0252318(US,A1)
【文献】実開昭59-146604(JP,U)
【文献】特許第6443952(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3227664(JP,U)
【文献】CLT建物見学会に参加しました,山佐木材株式会社ウェブページ,2013年11月30日,https://woodist.jimdo.com/2013/11/30/%EF%BD%83%EF%BD%8C%EF%BD%94%E5%BB%BA%E7%89%A9%E8%A6%8B%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E3%81%AB%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/
【文献】スギを大量に使ったCLT製の社員寮が現る,日経クロステックウェブページ,2014年01月16日,https://xtech.nikkei.com/kn/article/building/news/20140115/647829/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/10
F16B 35/04-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質壁部材と、線材が貫通する取付孔を有する被接合部材と、を前記線材を介して接合する木質壁部材の接合構造であって、
前記木質壁部材は、
開口部が形成された木質壁部材本体と、
前記木質壁部材本体の表面に形成され、前記開口部から前記木質壁部材本体の端部に亘るとともに
、前記被接合部材の
前記取付孔から突出する前記線材の突出部分が配置される通路部と、
を備え、
前記開口部は、前記木質壁部材本体を厚み方向に貫通するとともに、前記線材の端部を前記木質壁部材本体に固定するナットを収容する収容部とされる、
木質壁部材
の接合構造。
【請求項2】
第一開口部及び第二開口部が形成された木質壁部材本体と、
前記木質壁部材本体の表面に形成され、前記第一開口部から前記木質壁部材本体の上下方向の端部に亘るとともに、前記木質壁部材本体が接合される被接合部材から突出する第一線材が配置される第一通路部と、
前記木質壁部材本体の裏面に形成され、前記第二開口部から前記木質壁部材本体の前記端部に亘るとともに、前記被接合部材から突出する第二線材が配置される第二通路部と、
を備え、
前記第一開口部は、前記木質壁部材本体を厚み方向に貫通するとともに、前記木質壁部材本体の中央部に対して幅方向の一方側に配置され、前記第一線材の端部を前記木質壁部材本体に固定するナットを収容する収容部とされ、
前記第二開口部は、前記木質壁部材本体を厚み方向に貫通するとともに、前記木質壁部材本体の中央部に対して幅方向の他方側に配置され、前記第二線材の端部を前記木質壁部材本体に固定するナットを収容する収容部とされる、
木質壁部材。
【請求項3】
被接合部材から突出する線材に対して木質部材を移動させ、前記木質部材に形成されて前記木質部材を厚み方向に貫通する開口部内に、前記線材の端部を前記木質部材の表面側から挿入するとともに、前記木質部材の表面に形成されて前記開口部から前記木質部材の端部に亘る通路部内に前記線材を前記木質部材の前記表面側から挿入し、
前記開口部内において、前記線材の前記端部にナットを締め込み、前記端部を前記木質部材に固定することにより、前記木質部材と前記被接合部材とを接合する、
木質部材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質壁部材の接合構造、木質壁部材、及び木質部材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質部材の接合構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-212717号公報
【文献】特開平7-032193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
木質部材の接合構造としては、例えば、引きボルト接合が知られている。引きボルト接合では、木質部材に、開口部が形成されている。また、木質部材の端部には、開口部に通じる取付孔が形成されている。この取付孔に引きボルトを挿入することにより、引きボルトの端部が開口部に露出される。そして、開口部内において、引きボルトの端部にナットを締め込むことにより、木質部材に引きボルトの一端部が固定される。
【0005】
しかしながら、上記の引きボルト接合では、木質部材の取付孔に引きボルト等の線材の端部を挿入しなければならず、木質部材の接合作業に手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、木質部材の接合作業の手間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る木質部材は、開口部が形成された木質部材本体と、前記木質部材本体の表面に形成され、前記開口部から前記木質部材本体の端部に亘るとともに線材が配置される通路部と、を備える。
【0008】
第1態様に係る木質部材によれば、木質部材本体には、開口部が形成される。また、木質部材本体の表面には、開口部から木質部材本体の端部に亘る通路部が形成される。この通路部には、線材が配置される。
【0009】
ここで、通路部は、木質部材本体の表面に形成される。そのため、木質部材本体の表面側から、通路部に線材を容易に挿入(横入れ)することができる。したがって、木質部材の接合作業の手間が低減される。
【0010】
第2態様に係る木質壁部材は、幅方向に間隔を空けて配置される第一開口部及び第二開口部が形成された木質壁部材本体と、前記木質壁部材本体の表面に形成され、前記第一開口部から前記木質壁部材本体の上下方向の端部に亘るとともに第一線材が配置される第一通路部と、前記木質壁部材本体の裏面に形成され、前記第二開口部から前記木質壁部材本体の前記端部に亘るとともに第二線材が配置される第二通路部と、を備える。
【0011】
第2態様に係る木質部材によれば、木質壁部材本体には、第一開口部及び第二開口部が形成される。第一開口部及び第二開口部は、木質壁部材本体の幅方向に間隔を空けて配置される。また、木質壁部材本体の表面には、第一通路部が形成される。第一通路部は、第一開口部から木質壁部材本体の上下方向の端部に亘る。この第一通路部には、第一線材が配置される。
【0012】
また、木質壁部材本体の裏面には、第二通路部が形成される。第二通路部には、第二開口部から木質壁部材本体の端部に亘る。この第二通路部には、第二線材が配置される。
【0013】
ここで、木質壁部材本体の表面には、第一通路部が形成され、木質壁部材本体の裏面には、第二通路部が形成される。これにより、木質壁部材本体を所定方向に回転させることにより、第一通路部に第一線材を挿入(横入れ)しつつ、第二通路部に第二線材を挿入(横入れ)することができる。したがって、木質部材の接合作業の手間が低減される。
【0014】
第3態様に係る木質部材の施工方法は、被接合部材から突出する線材に対して木質部材を横方向に移動させ、該木質部材の表面に形成された通路部内に前記線材を挿入するとともに、該線材の端部を前記木質部材に形成された開口部内に挿入し、前記開口部内において、前記線材の前記端部にナットを締め込む。
【0015】
第3態様に係る木質部材の施工方法によれば、被接合部材から突出する線材に対して木質部材を横方向に移動させることにより、木質部材の表面の通路部に線材を挿入(横入れ)することができるとともに、木質部材の開口部に線材の端部を挿入(横入れ)することができる。したがって、木質部材の接合作業の手間が低減される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る木質部材、木質壁部材、及び木質部材の施工方法によれば、木質部材の接合作業の手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施形態に係る上側木質壁部材を備える構造物を示す立面図である。
【
図2】開口部及び通路部を示す
図1の一部拡大立面図である。
【
図4】
図1に示される上側木質壁部材が揚重された状態を横から見た側面図である。
【
図5】第一実施形態に係る上側木質壁部材の変形例を横から見た側面図である。
【
図6】第二実施形態に係る上側木質壁部材の下部を示す立面図である。
【
図8】第三実施形態に係る一対の木質壁部材を示す立面図である。
【
図9】第四実施形態に係る一対の木質床部材を示す断面図である。
【
図10】第一実施形態に係る木質壁部材の変形例を示す
図3に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0019】
図1には、本実施形態に係る上側木質壁部材20Xを備えた構造物10が示されている。構造物10は、例えば、木造の壁式構造とされている。この構造物10は、木質床部材12と、木質床部材12の上に配置された上側木質壁部材20Xと、木質床部材12の下に配置された下側木質壁部材20Yとを備えている。
【0020】
木質床部材12は、構造物10の所定階の床を形成している。また、上側木質壁部材20Xは、構造物10の所定階の壁を形成している。さらに、上側木質壁部材20Xは、構造物10の所定階の下階の壁を形成している。これらの木質床部材12、上側木質壁部材20X、及び下側木質壁部材20Yは、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)やLVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、合板等の木質面材(木質パネル材)によって矩形の板状に形成される。
【0021】
上側木質壁部材20Xは、木質床部材12を介して下側木質壁部材20Yの上に載置されている。この上側木質壁部材20Xは、引きボルト40及びナット42によって、木質床部材12及び下側木質壁部材20Yと接合されている。
【0022】
なお、上側木質壁部材20Xは、木質壁部材及び木質部材の一例である。また、木質床部材12及び下側木質壁部材20Yは、被接合部材の一例である。また、本実施形態では、上側木質壁部材20Xと下側木質壁部材20Yとが、同じ構成とされている。
【0023】
下側木質壁部材20Yは、木質壁部材本体22を有している。
図2に示されるように、木質壁部材本体22の上部には、複数の開口部24及び複数の取付孔26が形成されている。複数の開口部24は、木質壁部材本体22の幅方向に間隔を空けて配置されている。なお、本実施形態の木質壁部材本体22は、上側木質壁部材20Xと同義である。また、木質壁部材本体22は、木質部材本体の一例である。
【0024】
複数の取付孔26は、木質壁部材本体22の上端部22Uの端面に形成されている。また、取付孔26は、開口部24に通じる貫通孔とされている。この取付孔26には、引きボルト40の下部が挿入されている。
【0025】
引きボルト40の下端部は、開口部24に露出されている。この引きボルト40の下端部に、座金等を介してナット42を締め込むことにより、引きボルト40の下端部が下側木質壁部材20Yに固定されている。
【0026】
引きボルト40の上部は、下側木質壁部材20Yの上端部22Uの端面から上方へ延出している。また、引きボルト40の上部は、木質床部材12に形成された取付孔を上下方向(矢印H方向)に貫通し、木質床部材12の表面(上面)12Aから上方へ延出されている。この引きボルト40の上端部に、上側木質壁部材20Xが固定されている。
【0027】
図1に示されるように、上側木質壁部材20Xは、木質壁部材本体22を有している。木質壁部材本体22の下部の表面22Aには、複数の開口部34及び複数の通路部36が形成されている。
【0028】
複数の開口部34は、引きボルト40の上端部を木質壁部材本体22に固定するナット42を収容する収容部とされている。また、複数の開口部34は、木質壁部材本体22の幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0029】
図2及び
図3に示されるように、各開口部34は、矩形状に形成されている。また、各開口部34は、木質壁部材本体22を厚み方向(
図3の矢印T方向)に貫通する貫通孔とされている。この開口部34の下側(木質床部材12側)の内面は、引きボルト40の上端部(一端部)が固定される固定面34Mとされている。
【0030】
通路部36は、木質壁部材本体22の表面22Aに形成されている。この通路部36は、上下方向(矢印H方向、高さ方向)に延びる直線状の溝とされている。また、通路部36の断面形状は、矩形状に形成されている。
図3に示されるように、通路部36は、溝底面36Aと、一対の溝側面36Bとを有している。また、通路部36は、木質壁部材本体22の表面22A側に開口36Cを有している。
【0031】
通路部36は、開口部34と木質壁部材本体22の下端部22Lとに亘っている。より具体的には、通路部36は、開口部34の固定面34Mと上側木質壁部材20Xの下端部22Lの端面とに亘って形成されている。この通路部36には、木質床部材12から上方へ延出する引きボルト40の上部が挿入されている。
【0032】
引きボルト40の上端部は、木質壁部材本体22の開口部34に配置されている。この引きボルト40の上端部に、座金44等を介してナット42を締め込むことにより、引きボルト40の上端部が開口部34の固定面34Mに固定されている。この引きボルト40によって、上側木質壁部材20Xと下側木質壁部材20Yとが木質床部材12を介して接合されている。また、引きボルト40は、上側木質壁部材20Xと下側木質壁部材20Yとの間で、主として曲げモーメントを伝達する。
【0033】
なお、引きボルト40は、線材の一例である。また、座金44は、適宜省略可能である。
【0034】
(木質壁部材の施工方法)
次に、第一実施形態に係る木質壁部材の施工方法の一例について説明する。
【0035】
図4には、木質床部材12の表面12Aから上方へ延出する引きボルト40が示されている。この引きボルト40の下端部は、下側木質壁部材20Yに固定されている。なお、引きボルト40は、
図4の紙面奥行方向に複数並んで配置されている。
【0036】
この状態から、先ず、図示しない揚重機によって上側木質壁部材20Xを揚重し、引きボルト40の上部に対して上側木質壁部材20Xの下部を対向させる。
【0037】
次に、引きボルト40の上部に対し、上側木質壁部材20Xを揚重しながら横方向に移動し、引きボルト40の上部に上側木質壁部材20Xの下部を接近させる。そして、引きボルト40の上部を通路部36の開口36C(
図3参照)を介して通路部36内に挿入(横入れ)する。また、引きボルト40の上端部を開口部34に挿入する。
【0038】
この際、木質床部材12の表面12Aから上方へ延出する複数の引きボルト40の上部を、上側木質壁部材20Xの複数の通路部36にそれぞれ挿入(横入れ)するとともに、複数の引きボルト40の上端部を複数の開口部34にそれぞれ挿入する。
【0039】
次に、上側木質壁部材20Xの下端部22Lの端面を木質床部材12の表面12Aに設置し、木質床部材12に対して上側木質壁部材20Xを位置決めする。この状態で、
図3に示されるように、各引きボルト40の上端部に座金44を介してナット42を締め込むことにより、各引きボルト40の上端部を開口部34の固定面34Mに固定する。これにより、上側木質壁部材20Xが、複数の引きボルト40を介して木質床部材12及び下側木質壁部材20Yに接合される。
【0040】
(効果)
次に、第一実施形態の効果について説明する。
【0041】
本実施形態に係る上側木質壁部材20Xによれば、木質壁部材本体22には、開口部34が形成されている。また、木質壁部材本体22の表面22Aには、通路部36が形成される。通路部36は、開口部34から木質壁部材本体22の下端部22Lに亘る。この通路部36には、引きボルト40が配置されている。
【0042】
ここで、比較例として、上側木質壁部材20Xの下部に、通路部36に替えて開口部34に通じる取付孔を形成し、当該取付孔に引きボルト40の上部を挿入することが考えられる。
【0043】
しかしながら、上記比較例では、上側木質壁部材20Xを揚重しながら、当該上側木質壁部材20Xの取付孔に引きボルト40の上端部を挿入するため、手間がかかる。特に、上側木質壁部材20Xの複数の取付孔に、複数の引きボルト40の上端部を同時に挿入する場合には、さらに手間がかかる。
【0044】
これに対して本実施形態の通路部36は、前述したように、木質壁部材本体22の表面22Aに形成されている。そのため、木質壁部材本体22の表面22A側から、通路部36に引きボルト40の上部を容易に挿入(横入れ)することができる。
【0045】
そのため、本実施形態では、前述した比較例と比べ、通路部36に引きボルト40の上部を容易に配置することができる。したがって、本実施形態では、上側木質壁部材20Xと、木質床部材12及び下側木質壁部材20Yとの接合作業の手間が低減される。
【0046】
なお、本実施形態では、上側木質壁部材20Xの上部に取付孔26を形成したが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、
図5に示される変形例のように、上側木質壁部材20Xの上部には、取付孔26に替えて通路部28を形成しても良い。
【0047】
具体的には、木質壁部材本体22の上部における表面22Aには、開口部24に通じる通路部28が形成されている。この通路部28と、上側木質壁部材20Xの下部の通路部36とは、木質壁部材本体22の同じ表面22Aに形成されている。
【0048】
上側木質壁部材20Xの上には、図示しない支持部材に支持された木質床部材14が設置されている。この木質床部材14の下面からは、引きボルト50の下部が下方へ延出されている。
【0049】
ここで、
図5に示される変形例では、上下の引きボルト50,40に対して上側木質壁部材20Xを横方向へ移動させ、上下の引きボルト50,40に上側木質壁部材20Xの上部及び下部を接近させる。これにより、上側木質壁部材20Xの上部及び下部の通路部28,36に上下の引きボルト50,40をそれぞれ挿入(横入れ)することができる。したがって、上側木質壁部材20Xと、木質床部材12,14との接合作業の手間が低減される。
【0050】
また、
図5に示される変形例では、上下の引きボルト50,40から離れる方向に上側木質壁部材20Xを移動(横移動)させることにより、上側木質壁部材20Xの通路部28,36から引きボルト50,40を引き出すことができる。したがって、例えば、地震等によって上側木質壁部材20Xが損傷し、又は上側木質壁部材20Xが経年劣化等した場合に、上側木質壁部材20Xを容易に交換することができる。
【0051】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、上記第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0052】
図6には、第二実施形態に係る木質壁部材60が示されている。この木質壁部材60は、木質壁部材本体22を有している。木質壁部材本体22の下部の表面22Aには、複数の開口部34が形成されている。これらの開口部34は、木質壁部材本体22の幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0053】
なお、以下では、説明の便宜上、木質壁部材本体22の幅方向の中央部に位置する開口部34を中央開口部34Cとし、中央開口部34Cの一方側に配置される2つの開口部34を第一開口部34S1とし、中央開口部34Cの他方側に配置される2つの開口部34を第二開口部34S2とする。また、木質壁部材60は、木質部材の一例である。
【0054】
木質壁部材本体22の下端部22Lの端面における中央部には、中央開口部34Cに通じる取付孔64が形成されている。取付孔64は、上下方向に延びる貫通孔とされている。また、取付孔64には、中央引きボルト40Cが挿入される。この中央引きボルト40Cは、木質壁部材60の回転軸として機能する。また、木質壁部材本体22の下部には、複数の第一通路部36S1及び複数の第二通路部36S2が形成されている。
【0055】
第一通路部36S1は、木質壁部材本体22の表面22Aに形成されている。また、第一通路部36S1は、上下方向に延びる直線状の溝とされている。この第一通路部36S1は、第一開口部34S1と木質壁部材本体22の下端部22Lとに亘っている。この第一通路部36S1には、木質床部材12の表面12Aから上方へ延出する第一引きボルト40S1の上部が配置される。なお、第一引きボルト40S1は、第一線材の一例である。
【0056】
第二通路部36S2は、木質壁部材本体22の裏面22Bに形成されている。また、第二通路部36S2は、上下方向に延びる直線状の溝とされている。この第二通路部36S2は、第二開口部34S2と木質壁部材本体22の下端部22Lとに亘っている。この第二通路部36S2には、木質床部材12の表面12Aから上方へ延出する第二引きボルト40S2の上部が配置される。なお、第二引きボルト40S2は、第二線材の一例である。
【0057】
(木質壁部材の施工方法)
次に、第二実施形態に係る木質壁部材の施工方法の一例について説明する。
【0058】
図7に示されるように、先ず、図示しない揚重機によって木質壁部材60を揚重し、木質壁部材60の取付孔64に中央引きボルト40Cを挿入する。この際、中央引きボルト40C、第一引きボルト40S1、及び第二引きボルト40S2の配列方向(矢印K方向)に対して交差するように木質壁部材60を配置する。なお、この状態では、第一通路部36S1及び第二通路部36S2に、第一引きボルト40S1及び第二引きボルト40S2を挿入しない。
【0059】
次に、中央引きボルト40Cを中心として木質壁部材60を矢印R方向に回転させ、木質壁部材60の表面22Aを第一引きボルト40S1に接近させるとともに、木質壁部材60の裏面22Bを第二引きボルト40S2に接近させる。そして、木質壁部材60の第一通路部36S1に第一引きボルト40S1をそれぞれ挿入(横入れ)するとともに、第一引きボルト40S1の上端部を第一開口部34S1にそれぞれ挿入する。また、木質壁部材60の第二通路部36S2に第二引きボルト40S2をそれぞれ挿入(横入れ)するとともに、木質壁部材60の第二開口部34S2に第二引きボルト40S2の上端部をそれぞれ挿入する。
【0060】
次に、中央開口部34C、第一開口部34S1、及び第二開口部34S2の各々において、中央引きボルト40C、第一引きボルト40S1、及び第二引きボルト40S2の上端部に座金等を介してナットを締め込む。これにより、木質壁部材60が木質床部材12に接合される。
【0061】
(効果)
次に、第二実施形態の効果について説明する。
【0062】
本実施形態に係る木質壁部材60によれば、木質壁部材本体22の表面22Aには、第一通路部36S1が形成され、木質壁部材本体22の裏面22Bには、第二通路部36S2が形成されている。
【0063】
これにより、例えば、
図7に示される矢印R方向に、木質壁部材60を回転させることにより、第一通路部36S1に第一引きボルト40S1を挿入(横入れ)しつつ、第二通路部36S2に第二引きボルト40S2を挿入(横入れ)することができる。したがって、木質壁部材60の接合作業の手間と労力が低減される。
【0064】
また、木質壁部材60の下端部22Lの端面における中央部には、取付孔64が形成されている。この取付孔64に中央引きボルト40Cを挿入することにより、木質床部材12に対して木質壁部材60を位置決めすることができる。
【0065】
さらに、中央引きボルト40Cを中心として木質壁部材60を所定方向(矢印R方向)に回転させることにより、第一通路部36S1及び第二通路部36S2に第一引きボルト40S1及び第二引きボルト40S2を容易に挿入することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、木質壁部材60に取付孔64を形成したが、取付孔64に替えて、通路部を形成しても良い。この場合、通路部に挿入された中央引きボルト40Cを中心として木質壁部材60を回転させても良い。また、回転中心となる引きボルトが挿入される取付孔を、木質壁部材60の中央部から一端側へずらすことで、回転中心を木質壁部材60の一端側へずらすことも可能である。
【0067】
また、例えば、取付孔64及び中央引きボルト40を省略し、回転軸がない状態で木質壁部材60を所定方向(矢印R方向)に回転させても良い。
【0068】
さらに、中央開口部34C、第一開口部34S1、及び第二開口部34S2の数や配置は適宜変更可能であり、また、取付孔64、第一通路部36S1、第二通路部36S2の数や配置も、適宜変更可能である。
【0069】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、第三実施形態において、上記第一実施形態及び第二実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0070】
図8には、第三実施形態に係る左右一対の木質壁部材70L,70Rが示されている。一対の木質壁部材70L,70Rは、各々の幅方向(矢印W方向)に配列されている。この一対の木質壁部材70L,70Rは、引きボルト80及びナット82を介して互いに接合されている。なお、木質壁部材70L,70Rは、木質部材の一例である。
【0071】
具体的には、一対の木質壁部材70L,70Rは、木質壁部材本体22をそれぞれ有している。この一対の木質壁部材70L,70Rは、木質壁部材本体22の側端部(幅方向の端部)22Sの端面同士を接触させた状態で配置されている。
【0072】
木質壁部材本体22の幅方向の一方側の表面22Aには、複数の開口部74が形成されている。複数の開口部74は、上下方向(矢印H方向)に間隔を空けて配置されている。また、木質壁部材本体22の表面22Aには、通路部76が形成されている。通路部76は、木質壁部材本体22の幅方向(矢印W方向)に延びる直線状の溝とされている。
【0073】
また、通路部76は、開口部74と木質壁部材本体22の側端部22Sとに亘っている。より具体的には、通路部76は、開口部74の固定面74Mと木質壁部材本体22の側端部22Sの端面に亘って形成されている。
【0074】
ここで、隣り合う一対の木質壁部材70L,70Rのうち、一方の木質壁部材70L,70Rの通路部76には、木質壁部材本体22の表面22A側から引きボルト80の一端側が挿入(横入れ)されている。また、隣り合う一対の木質壁部材70L,70Rのうち、他方の木質壁部材70Rの通路部76には、木質壁部材本体22の表面22A側から引きボルト80の他端側が挿入(横入れ)されている。
【0075】
また、引きボルト80の両端部には、座金等を介してナット82が締め込まれている。これにより、一対の木質壁部材70L,70Rが、引きボルト80を介して接合されている。
【0076】
なお、一対の木質壁部材70L,70Rは、引きボルト80とは別に、スプラインプレートを介して接合しても良い。
【0077】
(木質壁部材の施工方法)
次に、第三実施形態に係る木質壁部材の施工方法の一例について説明する。
【0078】
先ず、一対の木質壁部材70L,70Rを、各々の幅方向に並べて配置する。そして、一対の木質壁部材70L,70Rの側端部22Sの端面同士を接触させるとともに、一対の木質壁部材70L,70Rの通路部76同士を接続する。
【0079】
次に、一対の木質壁部材70L,70Rの表面22A側から、一対の木質壁部材70L,70Rの通路部76に引きボルト80の両端側をそれぞれ挿入(横入れ)するととともに、一対の木質壁部材70L,70Rの開口部74に引きボルト80の両端部をそれぞれ挿入(横入れ)する。
【0080】
次に、一対の木質壁部材70L,70Rの開口部74において、引きボルト80の両端部に、座金等を介してナット82を締め込む。これにより、一対の木質壁部材70L,70Rが、引きボルト80を介して接合されている。また、突き合わされた一対の木質壁部材70L,70Rの端面間には、引きボルト80に導入された初期張力によって摩擦力が発生する。この摩擦力によって、一対の木質壁部材70L,70Rのずれが抑制されるため、一対の木質壁部材70L,70Rを一体のパネル部材(壁部材)と見なすことができる。
【0081】
(効果)
次に、第三実施形態の効果について説明する。
【0082】
本実施形態に係る一対の木質壁部材70L,70Rによれば、各木質壁部材本体22の表面22Aに通路部76が形成されている。これにより、一対の木質壁部材70L,70Rの通路部76に、木質壁部材本体22の表面22A側から引きボルト80をそれぞれ挿入することができる。
【0083】
したがって、一対の木質壁部材70L,70Rを設置した後に、一対の木質壁部材70L,70Rの通路部76に引きボルト80をそれぞれ配置することができる。したがって、一対の木質壁部材70L,70Rの接合作業の手間が低減される。
【0084】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について説明する。なお、第四実施形態において、上記第一実施形態~第三実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0085】
図9には、第四実施形態に係る一対の木質床部材90L,90Rが示されている。一対の木質床部材90L,90Rは、横方向(水平方向)に並んで配置されている。この一対の木質床部材90L,90Rは、引きボルト100及びナット102を介して互いに接合されている。
【0086】
具体的には、一対の木質床部材90L,90Rは、木質床部材本体92をそれぞれ有している。この一対の木質床部材90L,90Rは、木質床部材本体92の端部92Eの端面同士を接触させた状態で配置されている。なお、一対の木質床部材90L,90Rは、木質部材の一例である。また、木質床部材本体92は、木質部材本体の一例である。
【0087】
木質床部材本体92の一端側の表面(上面)92Aには、底部94A付きの開口部94が形成されている。なお、底部94Aは、木質床部材本体92と一体に形成しても良いし、木質床部材本体92と別体で形成し、開口部94に嵌め込んでも良い。また、木質床部材本体92の表面92Aには、通路部96が形成されている。通路部96は、開口部94と木質床部材本体92の端部92Eとに亘っている。より具体的には、通路部96は、開口部94の固定面94Mと木質床部材本体92の端部92Eの端面とに亘って形成されている。
【0088】
ここで、隣り合う一対の木質床部材90L,90Rのうち、一方の木質床部材90Lの通路部96には、木質床部材本体92の表面92A側から引きボルト100の一端側が挿入(横入れ)されている。また、隣り合う一対の木質床部材90L,90Rのうち、他方の木質床部材90Rの通路部96には、木質床部材本体92の表面92A側から引きボルト100の他端側が挿入(横入れ)されている。
【0089】
また、引きボルト100の両端部には、座金104等を介してナット102が締め込まれている。これにより、一対の木質床部材90L,90Rが、引きボルト100を介して接合されている。
【0090】
なお、一対の木質床部材90L,90Rは、引きボルト100とは別に、スプラインプレートを介して接合しても良い。
【0091】
(木質壁部材の施工方法)
次に、第四実施形態に係る木質壁部材の施工方法の一例について説明する。
【0092】
先ず、一対の木質床部材90L,90Rを、横(横方向)に並べて配置する。そして、一対の木質床部材90L,90Rの端部92Eの端面同士を接触させるとともに、一対の木質床部材90L,90Rの通路部96同士を接続する。
【0093】
次に、一対の木質床部材90L,90Rの通路部96に、木質床部材本体92の表面92A側から引きボルト100の両端側をそれぞれ挿入(横入れ)するととともに、一対の木質床部材90L,90Rの開口部94に、引きボルト100の両端部をそれぞれ挿入(横入れ)する。
【0094】
次に、一対の木質床部材90L,90Rの開口部94において、引きボルト100の両端部に座金等を介してナット102を締め込む。これにより、一対の木質床部材90L,90Rが、引きボルト100を介して接合されている。また、突き合わされた一対の木質床部材90L,90Rの端面間には、引きボルト100に導入された初期張力によって摩擦力が発生する。この摩擦力によって、一対の木質床部材90L,90Rのずれが抑制されるため、一対の木質床部材90L,90Rを一体のパネル部材(床部材)と見なすことができる。
【0095】
また、一対の木質床部材90L,90Rの端面間に発生する摩擦力が大きい場合には、一対の木質床部材90L,90Rを接合するスプラインプレート等をなくし、若しくはスプラインプレート等の数を低減することができる。
【0096】
(効果)
次に、第四実施形態の効果について説明する。
【0097】
本実施形態に係る一対の木質床部材90L,90Rによれば、木質床部材本体92の表面92Aに通路部96が形成されている。これにより、一対の木質床部材90L,90Rの通路部96に、木質床部材本体92の表面92A側から引きボルト100を挿入することができる。
【0098】
したがって、一対の木質床部材90L,90Rを設置した後に、一対の木質床部材90L,90Rの通路部96に引きボルト100を配置することができる。したがって、一対の木質床部材90L,90Rの接合作業の手間が低減される。
【0099】
(変形例)
次に、上記第一実施形態~第四実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は上記第二実施形態~第四実施形態にも適宜適用可能である。
【0100】
図10に示されるように、上記第一実施形態における開口部34及び通路部36には、塞ぎ材110を設けても良い。塞ぎ材110としては、例えば、遮音材(吸音材)、断熱材、耐火材、又は埋め木が挙げられる。この塞ぎ材110によって開口部34及び通路部36を塞ぐことにより、塞ぎ材110の種類に応じて、上側木質壁部材20Xの遮音性能、断熱性能、耐火性能、又は意匠性を高めることができる。
【0101】
なお、塞ぎ材は、開口部34及び通路部36の少なくとも一方に設けることができる。
【0102】
また、上記第一実施形態では、上側木質壁部材20Xの通路部36に線材としての引きボルト40を挿入したが、上記実施形態はこれに限らない。線材としては、例えば、PC鋼棒や、PC鋼線等を用いても良い。
【0103】
また、上記第一実施形態は、木質壁部材同士の接合に限らず、例えば、木質壁部材、木質床部材、木質梁、木質柱の接合に適宜適用可能である。
【0104】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0105】
20X 上側木質壁部材(木質壁部材、木質部材)
22 木質壁部材本体(木質部材本体)
22A 表面(木質壁部材本体の表面)
22B 裏面(木質壁部材本体の裏面)
22L 下端部(木質壁部材本体の端部)
22S 側端部(木質壁部材本体の端部)
22U 上端部(木質壁部材本体の端部)
24 開口部
28 通路部
34 開口部
34S1 第一開口部
34S2 第二開口部
36 通路部
36S1 第一通路部
36S2 第二通路部
40 引きボルト(線材)
40S1 第一引きボルト(第一線材)
40S2 第二引きボルト(第二線材)
50 引きボルト(線材)
60 木質壁部材(木質部材)
70L 木質壁部材(木質部材)
70R 木質壁部材(木質部材)
74 開口部
76 通路部
80 引きボルト(線材)
90 木質床部材(木質部材)
92 木質床部材本体(木質部材本体)
92A 表面(木質部材本体の表面)
92E 端部(木質部材本体の端部)
94 開口部
96 通路部
100 引きボルト(線材)