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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】受光装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/08 20060101AFI20230418BHJP
   H03F 1/42 20060101ALI20230418BHJP
   H01L 31/02 20060101ALI20230418BHJP
   H04B 10/69 20130101ALI20230418BHJP
【FI】
H03F3/08
H03F1/42
H01L31/02 B
H04B10/69
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018077427
(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公開番号】P2019186813
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 謙一
(72)【発明者】
【氏名】原 弘
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-69681(JP,A)
【文献】特開2012-142822(JP,A)
【文献】特開2007-274032(JP,A)
【文献】特開平3-229504(JP,A)
【文献】特開昭61-210646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/08
H01L21/334-21/339
H01L21/60-21/607
H01L31/02-31/024
H04B10/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子と、
前記受光素子を搭載する絶縁性のキャリアと、
基準電位である導電性の表面を有し、前記表面上に前記キャリアを搭載するベースと、
前記キャリア上に設けられ、前記受光素子のカソード電極と導電接合され、前記ベースの前記表面との間に寄生容量を有する導電膜と、
前記導電膜とボンディングワイヤを介して接続された第1端子、および前記受光素子のアノード電極と電気的に接続された第2端子を有するトランスインピーダンスアンプと、
前記ボンディングワイヤのインダクタンスよりも小さいインダクタンスを有する導体を介して前記導電膜と電気的に接続された一端、および前記ベースの前記表面と電気的に接続された他端を有するキャパシタと、
を備え
前記導体は、前記ボンディングワイヤと同一材料からなり前記ボンディングワイヤよりも太いリボン又はワイヤであり、
前記寄生容量、前記ボンディングワイヤ、前記導体、及び前記キャパシタを含む共振回路部分の共振周波数が、前記寄生容量及び前記ボンディングワイヤを含み前記導体及び前記キャパシタを含まない共振回路部分の共振周波数よりも高い、受光装置。
【請求項2】
前記キャパシタの容量値は前記寄生容量の容量値よりも大きい、請求項に記載の受光装置。
【請求項3】
前記導電膜における前記キャパシタとの接続部と、前記導電膜における前記ボンディングワイヤとの接続部との間に前記受光素子が導電接合されている、請求項1または請求項2に記載の受光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、受光素子およびトランスインピーダンスアンプを備える光受信器の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-274032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば光受信器などの受光装置においては、受光素子から出力される電気信号(一例では電流信号)が、トランスインピーダンスアンプ(TIA)によって増幅される。その場合、図11の(a)に示されるように、配線パターンを有するキャリア102上に受光素子101を実装し、キャリア102上の配線パターンとTIA103とをボンディングワイヤ104を介して接続することがある。しかしながらこのような構成では、次の課題が生じる。すなわち、キャリア102上の配線パターンとキャリア102下の導電体105との間には、寄生容量が生じる。また、近年の光通信の高速化等により、光信号の周波数は高くなる一方であり、例えば数十GHzといった周波数帯域が用いられつつある。このような周波数帯域において、上述した寄生容量とボンディングワイヤ104のインダクタンスとによる共振周波数が存在すると、信号の不透過帯域が生じ、信号波形の劣化、チャネル間クロストークといった通信品質の低下を生じさせる虞がある。
【0005】
なお、受光素子101とTIA103との間のインダクタンスを低減する方式として、図11の(b)に示されるように、TIA103をキャリア102上に実装(例えばフリップチップボンディング)し、キャリア102上の配線パターンのみを介して受光素子101とTIA103とを接続することも考えられる。しかし、このような方法では、フリップチップボンディング専用のパッドを有するTIAが必要となり、汎用のTIAを用いることができず製造コストが上昇してしまう。
【0006】
本発明は、ボンディングワイヤを介して受光素子とTIAとを接続しつつ、共振による不透過帯域を高周波側へ移動することができる受光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る受光装置は、受光素子と、受光素子を搭載する絶縁性のキャリアと、基準電位である導電性の表面を有し、表面上にキャリアを搭載するベースと、キャリア上に設けられ、受光素子のカソード電極と導電接合され、ベースの表面との間に寄生容量を有する導電膜と、導電膜とボンディングワイヤを介して接続された第1端子、および受光素子のアノード電極と電気的に接続された第2端子を有するトランスインピーダンスアンプと、ボンディングワイヤのインダクタンスよりも小さいインダクタンスを有する導体を介して導電膜と電気的に接続された一端、およびベースの表面と電気的に接続された他端を有するキャパシタと、を備える。
【0008】
別の実施形態に係る受光装置は、受光素子と、受光素子を搭載する絶縁性のキャリアと、基準電位である導電性の表面を有し、表面上にキャリアを搭載するベースと、キャリア上に設けられ、受光素子のカソード電極と導電接合され、ベースの表面との間に寄生容量を有する導電膜と、導電膜とボンディングワイヤを介して接続された第1端子、および受光素子のアノード電極と電気的に接続された第2端子を有するトランスインピーダンスアンプと、導電膜の一部によって構成され、或いは導電膜と隣接する一端、およびベースの表面と電気的に接続された他端を有するキャパシタと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の受光装置によれば、ボンディングワイヤを介して受光素子とTIAとを接続しつつ、共振による不透過帯域を高周波側へ移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る受光装置1Aの構成を示す斜視図である。
図2図2は、複数の受光素子20の周辺構造を拡大して示す斜視図である。
図3図3は、キャパシタ24の周辺構造を拡大して示す斜視図である。
図4図4の(a)は、受光装置1Aの等価回路図である。図4の(b)は、図4の(a)の回路部分D1のみを抽出した等価回路図である。
図5図5の(a)は、比較例に係る受光装置の等価回路図である。図5の(b)は、図5の(a)の回路部分D2のみを抽出した等価回路図である。
図6図6は、受光装置1Aにおける挿入損失と信号周波数との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。
図7図7は、抵抗体を設けない場合の挿入損失と信号周波数との関係のシミュレーション結果を示す。
図8図8は、第1変形例に係る受光装置の一部を拡大して示す斜視図である。
図9図9は、第1変形例に係る受光装置の一部を拡大して示す側面図である。
図10図10は、第2変形例に係る受光装置の一部を拡大して示す斜視図である。
図11図11の(a)は、配線パターンを有するキャリア102上に受光素子101を実装し、キャリア102上の配線パターンとTIA103とをボンディングワイヤ104を介して接続する構成を示す図である。図11の(b)は、TIA103をキャリア102上に実装し、キャリア102上の配線パターンのみを介して受光素子101とTIA103とを接続する構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る第1の受光装置は、受光素子と、受光素子を搭載する絶縁性のキャリアと、基準電位である導電性の表面を有し、表面上にキャリアを搭載するベースと、キャリア上に設けられ、受光素子のカソード電極と導電接合され、ベースの表面との間に寄生容量を有する導電膜と、導電膜とボンディングワイヤを介して接続された第1端子、および受光素子のアノード電極と電気的に接続された第2端子を有するトランスインピーダンスアンプと、ボンディングワイヤのインダクタンスよりも小さいインダクタンスを有する導体を介して導電膜と電気的に接続された一端、およびベースの表面と電気的に接続された他端を有するキャパシタと、を備える。
【0012】
この第1の受光装置では、キャリア上の導電膜とベースの表面との間に形成される寄生容量とは別に、キャパシタが導電膜とベースの表面との間に設けられている。そして、導電膜とキャパシタとを接続する導体のインダクタンスは、ボンディングワイヤのインダクタンスよりも小さい。このような構成によれば、インダクタンスと容量とが直列に接続された回路を導電膜とベースの表面との間に増設するとともに、その共振周波数を、導電膜及びボンディングワイヤによる共振周波数よりも高くすることができる。従って、回路全体としての共振周波数を高くすることができ、共振による不透過帯域を高周波側へ移動することができる。
【0013】
上述した第1の受光装置において、導体は、ボンディングワイヤと同一材料からなりボンディングワイヤよりも太い線状導体であってもよい。例えばこのような構成によって、導体のインダクタンスをボンディングワイヤのインダクタンスよりも容易に小さくすることができる。
【0014】
一実施形態に係る第2の受光装置は、受光素子と、受光素子を搭載する絶縁性のキャリアと、基準電位である導電性の表面を有し、表面上にキャリアを搭載するベースと、キャリア上に設けられ、受光素子のカソード電極と導電接合され、ベースの表面との間に寄生容量を有する導電膜と、導電膜とボンディングワイヤを介して接続された第1端子、および受光素子のアノード電極と電気的に接続された第2端子を有するトランスインピーダンスアンプと、導電膜の一部によって構成され、或いは導電膜と隣接する一端、およびベースの表面と電気的に接続された他端を有するキャパシタと、を備える。
【0015】
この第2の受光装置においても、キャリア上の導電膜とベースの表面との間に形成される寄生容量とは別に、キャパシタが導電膜とベースの表面との間に設けられている。そして、キャパシタの一端は、導電膜の一部によって構成されるか、或いは導電膜と隣接している。このような構成によれば、導電膜とキャパシタとの間のインダクタンスがゼロに近づく(若しくはほぼゼロになる)ので、導電膜とベースの表面との間の共振周波数を、導電膜及びボンディングワイヤによる共振周波数よりも格段に高くすることができる。従って、回路全体としての共振周波数を高くすることができ、共振による不透過帯域を高周波側へ移動することができる。
【0016】
上述した第2の受光装置において、キャパシタは薄型シリコンコンデンサであってもよい。例えばこのような構成によって、キャパシタを簡易に実現するとともに、キャパシタの一端を、導電膜の一部によって構成するか、或いは導電膜と隣接させることができる。
【0017】
上述した第1及び第2の受光装置において、キャパシタの容量値は寄生容量の容量値よりも大きくてもよい。これにより、数十MHzといった高周波帯域での信号伝達特性に対するキャパシタの影響を小さくすることができる。
【0018】
上述した第1及び第2の受光装置において、導電膜におけるキャパシタとの接続部と、導電膜におけるボンディングワイヤとの接続部との間に受光素子が導電接合されていてもよい。例えばこのような構成によって、ボンディングワイヤの設置を妨げることなくキャパシタを配置することができる。
【0019】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の実施形態に係る受光装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る受光装置1Aの構成を示す斜視図である。図1は、説明を容易にするために、パッケージの蓋部を外し、パッケージの側壁の一部を破断した状態で示している。受光装置1Aは、光トランシーバのROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)として用いられる。図1に示されるように、本実施形態の受光装置1Aは、レセプタクル2、本体部3および図示しない2枚のフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits;FPC)を備えている。
【0021】
本体部3は、パッケージ11を備えている。パッケージ11は、略直方体状の中空容器であって、金属製の側壁11aと、金属製の底板11bとを有する。底板11bは、長方形状の平板であって、方向A1及び方向A1と交差(例えば直交)する方向A2によって規定される平面に沿って延びている。底板11bの構成材料には、銅モリブテンや銅タングステンといった金属を用いることができ、また、熱伝導性のよい材料を用いることにより放熱性を高めることができる。側壁11aは、長方形の枠状を呈しており、底板11bの周縁部に沿って配置されている。側壁11aは、方向A1と交差する面に沿って延びる一対の側壁11aa及び11abを含む。一対の側壁11aa及び11abは、方向A1に沿って並んでいる。側壁11aの底板11bとは反対側の開口は、図示しない蓋部によって密閉される。
【0022】
レセプタクル2は、方向A1に沿って延びる略円筒状の部材であって、一方の側壁11aaに配置されている。レセプタクル2の先端部には、信号光を伝搬する光ファイバが接続される。具体的には、レセプタクル2は、光コネクタのフェルールが挿入されるスリーブ4と、本体部3に固定されるホルダ6とを有する。スリーブ4及びホルダ6は、方向A1に沿って延びる円筒状を呈しており、方向A1に沿ってこの順に並んでいる。
【0023】
方向A1におけるホルダ6の一端は、側壁11aaの開口に設けられたブッシュ7を介して側壁11aaに固定される。ホルダ6の他端には、スリーブ4が固定される。スリーブ4内には、光ファイバのフェルールと当接するスタブが配置される。ホルダ6内には、スタブから出射された信号光を平行化(コリメート)するレンズが配置される。ブッシュ7内には、光学窓が配置される。光ファイバから出射された信号光は、スタブを通ってレンズに達し、レンズによって平行化されたのち、光学窓を透過してパッケージ11の内部に取り込まれる。
【0024】
本体部3は、フィードスルー13、キャリア部材15及び16、光分波器17、反射器18、レンズアレイ19、トランスインピーダンスアンプ(TIA)22、及びベース23を有する。これらのうちフィードスルー13を除く各部品は、パッケージ11内に収容されている。
【0025】
フィードスルー13は、側壁11abに配置され、外部回路との電気接続を行う。フィードスルー13は、例えば、複数のセラミック基板を積層して形成され、側壁11abの開口に嵌め込むような形態で組み付けられている。側壁11abの外側に位置するフィードスルー13の部分には、外部回路との電気的な接続を行うための複数の端子13aが設けられている。これらの端子13aには、FPCが例えばはんだ等によって導電接合される。また、側壁11abの内側に位置するフィードスルー13の部分には、TIA22と電気的な接続を行うための複数の端子が設けられている。側壁11abの内側の複数の端子と、側壁11abの外側の複数の端子13aとは、フィードスルー13の内部に埋め込まれた配線によって互いに短絡している。
【0026】
光分波器17は、ホルダ6内のレンズ及びブッシュ7内の光学窓を介して光ファイバと光学的に結合される。光分波器17は、光ファイバから出力された波長多重の信号光を、互いに波長が異なる複数の信号光成分に分波する。光分波器17は、キャリア部材16に支持されている。より詳細には、キャリア部材16は、方向A1及びA2により規定される平面に沿って延びる平板状の部材であって、パッケージ11の底面と対向する平坦な裏面と、該裏面の反対側に位置する平坦な表面とを有する。光分波器17は、キャリア部材16の裏面に接着剤を介して固定されている。キャリア部材16は、例えば酸化アルミ(アルミナ)といったセラミックにより構成されている。
【0027】
キャリア部材16は、キャリア部材15上に配置されている。キャリア部材15は、パッケージ11の底板11bとキャリア部材16との間に設けられ、キャリア部材16の裏面を支持する。キャリア部材15は、キャリア部材16の方向A1に沿った両側縁を支持する一対の支柱部15a,15bを有する。一対の支柱部15a,15bは、光分波器17を互いの間に挟んで、方向A1に沿ってそれぞれ延びている。これらの一対の支柱部15a,15bによって、キャリア部材16の裏面とキャリア部材15との間に、光分波器17を配置するための空間が設けられる。キャリア部材15は、キャリア部材16と線膨張係数が近い酸化アルミ、窒化アルミ、銅モリブデン、或いは銅タングステンといった材料により構成される。
【0028】
反射器18は、キャリア部材16の裏面に接着剤を介して固定されている。反射器18は、光分波器17から出力された複数の信号光成分それぞれを反射して、後述する複数の受光素子20(図2を参照)それぞれに導く。反射器18は、例えばプリズムによって構成される。レンズアレイ19は、反射器18と複数の受光素子20との間の光路上に配置されている。レンズアレイ19は、複数の凸レンズを有しており、複数の信号光成分それぞれを複数の受光素子20それぞれに向けて集光する。レンズアレイ19は、サブマウント28、キャリア21、及びベース23を介して底板11b上に配置される。
【0029】
ベース23は、パッケージ11内においてフィードスルー13寄りに配置された板状部材である。少なくともベース23の表面は導電性を有し、該表面は基準電位とされる。一実施例では、ベース23は金属製である。ベース23は、その表面をパッケージ11の底板11bとは反対側に向けて、底板11b上に配置されている。
【0030】
図2は、複数の受光素子20の周辺構造を拡大して示す斜視図である。本実施形態の受光装置1Aは、複数の受光素子20を更に備える。複数の受光素子20は、ベース23の表面上に設けられたキャリア21上に搭載され、反射器18(図1を参照)に対して方向A1及びA2の双方と交差する方向(すなわちパッケージ11の底面の法線方向)に配置されている。キャリア21は方向A2に沿って延びる直方体状を呈しており、複数の受光素子20は、キャリア21上において方向A2に沿って並んでいる。一例として、図2には4つの受光素子20が示されているが、受光素子20の数はこれに限られるものではなく、1以上の任意の個数であってよい。
【0031】
各受光素子20は、対応する信号光成分を電気信号に変換する半導体素子である。各受光素子20は、レンズアレイ19及び反射器18を介して、光分波器17と光学的に結合されている。また、各受光素子20は、TIA22と電気的に接続されている。TIA22は、複数の受光素子20とフィードスルー13との間に配置され、各受光素子20からの電流信号を電圧信号に変換する。TIA22は、図示しないボンディングワイヤを介してフィードスルー13の配線と電気的に接続されている。TIA22から出力された電圧信号は、フィードスルー13を介して受光装置1Aの外部に出力される。
【0032】
本実施形態の受光装置1Aは、複数のキャパシタ24を更に備える。これらのキャパシタ24は、ベース23上に搭載されている。複数のキャパシタ24は、ベース23上において方向A2に沿って並んでいる。各キャパシタ24の一端は、それぞれ対応する受光素子20と電気的に接続されている。各キャパシタ24の他端は、導電性のベース23の表面と電気的に接続されている。各キャパシタ24は、方向A1において、対応する受光素子20を挟んでTIA22とは反対側に配置されている。換言すると、底板11bの板面の法線方向から見て、キャパシタ24とTIA22との間に受光素子20が配置されている。
【0033】
図3は、1つのキャパシタ24の周辺構造を拡大して示す斜視図である。便宜上、図3においてキャリア21はそれぞれ1つの受光素子20及び1つのキャパシタ24に対応する部分のみ示されている。他のキャパシタ24の周辺構造も図3と同様である。受光素子20を搭載するキャリア21は、誘電体からなり絶縁性を有する。キャリア21は、直方体状を呈しており、主面21a、裏面21bおよび側面21cを有する。裏面21bは、ベース23の表面と対向しており、接着剤等を介してベース23に接合されている。
【0034】
主面21a上には、導電膜26,27が設けられている。導電膜26は、主面21aに固着した金属膜であって、受光素子20の裏面(受光面とは反対側の面)に設けられたカソード電極と、はんだ等の導電性接着剤を介して導電接合されている。導電膜26は、受光素子20の直下に位置する部分と、受光素子20からTIA22へ向けて延びる一対の部分26a,26bと、受光素子20からキャパシタ24へ向けて延びる部分26cとを含む。また、導電膜26は、ベース23の表面との間に寄生容量を形成する。
【0035】
導電膜26の部分26aは、ボンディングワイヤ41を介して、TIA22のバイアス端子22a(第1端子)と電気的に接続されている。すなわち、ボンディングワイヤ41の一端は導電膜26の部分26aに接合しており、ボンディングワイヤ41の他端はTIA22のバイアス端子22aに接合している。同様に、導電膜26の部分26bは、ボンディングワイヤ42を介して、TIA22のバイアス端子22bと電気的に接続されている。すなわち、ボンディングワイヤ42の一端は導電膜26の部分26bに接合しており、ボンディングワイヤ42の他端はTIA22のバイアス端子22bに接合している。導電膜26には、TIA22のバイアス端子22a,22bからボンディングワイヤ41,42を介して電源(バイアス)電圧が入力される。TIA22はベース23の表面上に搭載され、TIA22のグランド電位(基準電位)はベース23の表面の電位と一致している。
【0036】
キャパシタ24は、例えばチップコンデンサといった容量素子である。キャパシタ24の容量値は、導電膜26とベース23の表面との間の寄生容量の容量値よりも大きい。一例では、導電膜26とベース23の表面との間の寄生容量は10fF~100fFの範囲内であり、キャパシタ24の容量値は1pF以上である。キャパシタ24は、ベース23の表面の法線方向に並ぶ一対の端面を有し、一方の端面には一方の電極24aが形成され、他方の端面には他方の電極24bが形成されている。導電膜26の部分26cは、導体43を介して、キャパシタ24の一端(一方の電極24a)と電気的に接続されている。すなわち、導体43の一端は導電膜26の部分26cに接合しており、導体43の他端はキャパシタ24の電極24aに接合している。従って、受光素子20は、導電膜26におけるキャパシタ24との接続部と、導電膜26におけるボンディングワイヤ41,42との接続部との間において導電接合されることとなる。導体43は、例えば金リボン或いはボンディングワイヤといった線状導体である。なお、図では2本の導体43が示されているが、導体43の本数は1以上の任意の本数とすることができる。全ての導体43を総合したインダクタンスは、ボンディングワイヤ41,42を総合したインダクタンスよりも小さい。従って、導体43の構成材料とボンディングワイヤ41,42の構成材料とが同じであるとき、導体43としてはボンディングワイヤ41,42よりも太いものが用いられる。キャパシタ24の他端(他方の電極24b)は、例えばはんだ等の導電性接着剤を介してベース23の表面と導電接合している。
【0037】
導電膜27は、主面21aに固着した金属膜であって、受光素子20の裏面に設けられたアノード電極と、はんだ等の導電性接着剤を介して導電接合されている。導電膜27は、受光素子20の直下からTIA22へ向けて延びている。導電膜27は、ボンディングワイヤ44を介して、TIA22の信号端子22c(第2端子)と電気的に接続される。すなわち、ボンディングワイヤ44の一端は導電膜27に接合しており、ボンディングワイヤ44の他端はTIA22の信号端子22cに接合している。受光素子20において入射光量に応じて生成された電流信号は、ボンディングワイヤ44を介してTIA22の信号端子22cに送られる。TIA22は、この電流信号を電圧信号に変換する。
【0038】
受光装置1Aの数値例を以下に示す。
ボンディングワイヤ41,42の長さ:0.2mm
ボンディングワイヤ41,42のインダクタンス:0.3nH
導体43の長さ:0.2mm
導体43のインダクタンス:0.2nH
キャリア21の厚さ:0.4mm
キャリア21の方向A1における長さ:1.1mm
キャパシタ24の平面寸法:0.38mm
キャパシタ24の容量値:330pF
導電膜26とベース23の表面との間の寄生容量:50fF
【0039】
以上に説明した、本実施形態の受光装置1Aによって得られる効果について、比較例の受光装置が有する課題とともに説明する。図4の(a)は、本実施形態の受光装置1Aの等価回路図である。図4の(a)に示されるように、本実施形態の受光装置1Aでは、受光素子20のカソードが、ボンディングワイヤ41,42(図中にはインダクタンスとして示す)を介してTIA22のバイアス端子22a,22bに接続されている。受光素子20のアノードは、ボンディングワイヤ44及びTIA22の信号端子22cを介して、TIA22の増幅回路22eに接続されている。TIA22のGND端子22dはベース23(図中には基準電位線(GND線)として示す)に接続されている。そして、受光素子20とボンディングワイヤ41,42との間の導電膜26とベース23との間には、寄生容量C1が存在している。また、互いに直列に接続された導体43及びキャパシタ24が、寄生容量C1と並列に、導電膜26とベース23との間に接続されている。
【0040】
図4の(b)は、図4の(a)の回路部分D1のみを抽出した等価回路図である。同図に示されるように、回路部分D1は、導体43及びキャパシタ24からなる直列回路と、寄生容量C1と、ボンディングワイヤ41,42の合成インダクタンスとが、ノードN1とノードN2との間に互いに並列に接続された構成を有する。ノードN1は受光素子20のカソードに接続され、ノードN2はベース23(すなわち基準電位)に接続されている。
【0041】
一方、図5の(a)は、比較例に係る受光装置の等価回路図である。この比較例と本実施形態の受光装置1A(図4の(a)を参照)との相違点は、導体43及びキャパシタ24からなる直列回路が設けられていない点である。従って、図5の(a)の回路部分D2のみを抽出すると、図5の(b)に示されるように、寄生容量C1と、ボンディングワイヤ41,42の合成インダクタンスとが、ノードN1とノードN2との間に互いに並列に接続された回路構成となる。
【0042】
回路部分D1,D2は、LC共振回路を構成する。そして、このLC共振回路の共振周波数が信号周波数に近づくと、TIA22の増幅回路22eから受光素子20への戻り電流Iaが減少する。このとき、受光素子20から増幅回路22eへ電流信号の流れが阻害され、信号不透過となる。ここで、寄生容量C1の容量値をCt、ボンディングワイヤ41,42の合成インダクタンスをLwireとすると、図5の(b)に示された比較例のLC共振回路のアドミタンスは
【数1】

となり、Y=0すなわち共振周波数は
【数2】

となる。一方、図4の(b)に示された本実施形態のLC共振回路において、キャパシタ24の容量値が十分に大きいので高周波に対して短絡(ショート)するものと見なし、導体43のインダクタンスをLbとすると、アドミタンスは
【数3】

となり、Y=0すなわち共振周波数は
【数4】

となる。インダクタンスLbがインダクタンスLwireよりも十分に小さいとすると、上の数式(4)は
【数5】

となる。すなわち、比較例のLC共振回路においては数式(2)に示されるようにインダクタンスLwireが共振周波数fに主に影響するが、本実施形態のLC共振回路においてはインダクタンスLbが共振周波数fに主に影響する。上述したように、インダクタンスLbはインダクタンスLwireよりも小さいので、本実施形態の共振周波数fは、比較例の共振周波数fよりも高くなる。このように、本実施形態の受光装置1Aによれば、寄生容量C1とボンディングワイヤ41,42とを含むLC共振回路の共振周波数を高くすることができるので、共振による信号の不透過帯域を高周波側へ移動することができる。故に、信号波形の劣化、チャネル間クロストークといった通信品質の低下を抑制することができる。
【0043】
図6は、本実施形態の受光装置1Aにおける挿入損失(単位:dB)と信号周波数(単位:GHz)との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。現在の光通信システムにおいては、支線系及びデータセンター内、並びに支線系とデータセンターとの間で100G伝送が主流になりつつあり、また今後、400G伝送といった更なる高速化が予定されている。これらの伝送速度においては、伝送クロック周波数は25GHz~56GHzとなる。これに対し本実施形態では、図6に示されるように共振周波数fが60GHzを超えており、上述したような伝送クロック周波数においても共振を回避することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、受光素子20のカソードと導体43との間には導電膜26のみが介在しているが、受光素子20のカソードと導体43との間(例えば、導電膜26のうち受光素子20のカソードに接続された部分と、部分26cとの間)に抵抗体が介在してもよい。図7は、このような抵抗体を設けない場合の挿入損失と信号周波数との関係のシミュレーション結果を示す。図7に示されるように、抵抗体を設けない場合、1GHz程度の低周波数帯域において共振が生じる(図中のB2)。これに対し、抵抗体を設けた場合、図6に示されるように、低周波数帯域における上記の共振が効果的に抑制される(図中のB1)。
【0045】
本実施形態のように、導体43は、ボンディングワイヤ41,42と同一材料からなりボンディングワイヤ41,42よりも太い線状導体(例えば金リボン)であってもよい。例えばこのような構成によって、導体43の断面積の合計をボンディングワイヤ41,42の断面積の合計よりも大きくして、導体43のインダクタンスをボンディングワイヤ41,42のインダクタンスよりも小さくすることが容易にできる。
【0046】
本実施形態のように、キャパシタ24の容量値は導電膜26とベース23の表面との間の寄生容量の容量値よりも大きくてもよい。これにより、数十MHzといった高周波帯域での信号伝達特性に対するキャパシタ24の影響を小さくすることができる。
【0047】
本実施形態のように、導電膜26におけるキャパシタ24との接続部(部分26c)と、導電膜26におけるボンディングワイヤ41,42との接続部(部分26a,26b)との間の部分に受光素子20が導電接合されていてもよい。例えばこのような構成によって、ボンディングワイヤ41,42の設置を妨げることなく(長くすることなく)キャパシタ24を配置することができる。従って、高周波帯域での信号伝達特性を良好に保つことができる。
【0048】
(第1変形例)
図8は、上記実施形態の第1変形例に係る受光装置の一部を拡大して示す斜視図であり、図9はその側面図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、キャパシタの構成である。本変形例のキャパシタは、上記実施形態のキャパシタ24のようなチップコンデンサではなく、キャリア21の表面に形成された導電膜によって構成される。具体的には、キャリア21の主面21a上に設けられた導電膜26の部分26cが、方向A1における主面21aの一対の縁のうちTIA22とは反対側の縁の近傍まで延びている。そして、部分26cの縁26dは、主面21aの当該縁に沿って(例えば平行に)延びている。一方、方向A1において互いに対向するキャリア21の一対の側面のうちTIA22とは反対側の側面21c上には、導電膜29が設けられている。導電膜29は、側面21cに固着した金属膜である。キャリア21の厚さ方向における導電膜29の一対の縁29a,29bのうちベース23とは反対側の縁29aは、同方向における側面21cの上縁に沿って(例えば平行に)延びている。すなわち、導電膜29の縁29aは、導電膜26の縁26dとの間に一定の間隔を空けつつ、縁26dに沿って(例えば平行に)延びている。導電膜29の縁29bは、導電性接着材(例えば銀ペースト)を介してベース23の表面と接合しており、ベース23の表面と電気的に接続(短絡)されている。本変形例において、キャパシタは、導電膜29の縁29aと導電膜26の縁26dとの間に形成される寄生容量である。すなわち、キャパシタは、導電膜26の一部によって構成される一端と、ベース23の表面に電気的に接続された他端とを有する。この寄生容量の容量値は、例えば1pFである。
【0049】
本変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、キャパシタを簡易に実現することができる。また、キャパシタのための部品をキャリア21とは別に設ける必要がないので、受光装置の小型化に寄与できる。また、本変形例では、上記実施形態の導体43を省くことができ、キャパシタと受光素子20のカソードとを導電膜26のみを介して接続することができる。従って、キャパシタと受光素子20のカソードとの間のインダクタンスは極めて小さくなり、ゼロに近づくか、若しくはほぼゼロになる。故に、上記実施形態と比較して、導電膜26とベース23の表面との間の共振周波数を、導電膜26及びボンディングワイヤ41,42のみに起因する共振周波数よりも格段に高くすることができる。従って、回路全体としての共振周波数をより高くすることができ、共振による不透過帯域を更に高周波側へ移動することができる。
【0050】
(第2変形例)
図10は、上記実施形態の第2変形例に係る受光装置の一部を拡大して示す斜視図である。本変形例と上記実施形態との相違点は、キャパシタの構成である。すなわち、本変形例のキャリア21はシリコンからなる。そして、キャパシタは、キャリア21の主面21a上に形成された薄型シリコンコンデンサ31によって実現される。薄型シリコンコンデンサ31は、シリコンからなるキャリア21の主面21aに一又は複数の溝を形成し、該溝を埋め込むようにして導電膜を成膜したものである。薄型シリコンコンデンサ31の一端(一方の電極)は、導電膜26の部分26cと隣接しており、部分26cに接続されている。薄型シリコンコンデンサ31の他端(他方の電極)は、キャリア21の主面21a上から側面21c上にわたって設けられた導電膜30の主面21a上の一端に接続されている。導電膜30の他端は、側面21c上に設けられ、導電性接着材(例えば銀ペースト)を介してベース23の表面と接合しており、ベース23の表面と電気的に接続(短絡)されている。なお、導電膜30に代えて、或いは導電膜30とともに、キャリア21を厚さ方向に貫通するビアを介して、薄型シリコンコンデンサ31の他端とベース23の表面とが互いに接続されてもよい。また、薄型シリコンコンデンサ31は、シリコンに代えて他の誘電体材料を用いて構成されてもよい。
【0051】
本変形例のような構成であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例においても、第1変形例と同様に、上記実施形態の導体43を省くことができ、キャパシタと受光素子20のカソードとを導電膜26のみを介して接続することができる。従って、キャパシタと受光素子20のカソードとの間のインダクタンスは極めて小さくなり、ゼロに近づくか、若しくはほぼゼロになる。故に、上記実施形態と比較して、導電膜26とベース23の表面との間の共振周波数を、導電膜26及びボンディングワイヤ41,42のみに起因する共振周波数よりも格段に高くすることができる。従って、回路全体としての共振周波数をより高くすることができ、共振による不透過帯域を更に高周波側へ移動することができる。
【0052】
また、本変形例のように、キャパシタは薄型シリコンコンデンサ31によって構成されてもよい。これにより、キャパシタを簡易に実現することができる。また、比較的大きな容量のキャパシタを小型に構成することができるとともに、キャパシタのための部品をキャリア21とは別に設ける必要がないので、受光装置の小型化に寄与できる。
【0053】
本発明による光受信モジュールは、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、本発明のキャパシタは、上記実施形態及び各変形例のような形態に限られず、容量を得ることができる様々な形態を適用することができる。また、上記実施形態及び各変形例ではキャパシタとTIAとの間に受光素子が位置するようにキャパシタが配置されているが、キャパシタの配置はこれに限られず、受光素子周辺の様々な位置に配置可能である。
【符号の説明】
【0054】
1A…受光装置、2…レセプタクル、3…本体部、4…スリーブ、6…ホルダ、7…ブッシュ、11…パッケージ、11a,11aa,11ab…側壁、11b…底板、13…フィードスルー、15…キャリア部材、15a,15b…支柱部、16…キャリア部材、17…光分波器、18…反射器、19…レンズアレイ、20…受光素子、21…キャリア、21a…主面、21b…裏面、21c…側面、22a,22b…バイアス端子、22c…信号端子、22d…GND端子、22e…増幅回路、23…ベース、24…キャパシタ、24a,24b…電極、26,27…導電膜、26a~26c…(導電膜の)部分、26d…縁、28…サブマウント、29,30…導電膜、29a,29b…縁、31…薄型シリコンコンデンサ、41,42,44…ボンディングワイヤ、43…導体、A1,A2…方向、C1…寄生容量、D1,D2…回路部分、Ia…戻り電流、N1,N2…ノード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11