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特許7263726眼科用レーザ治療装置、および眼科用レーザ制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】眼科用レーザ治療装置、および眼科用レーザ制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
A61F9/008 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018183781
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020049130
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】片岡 暁
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-339758(JP,A)
【文献】特開2012-170640(JP,A)
【文献】特開2003-172876(JP,A)
【文献】特開平03-118060(JP,A)
【文献】特開2015-100583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326003(US,A1)
【文献】特表2013-505751(JP,A)
【文献】特開2002-136539(JP,A)
【文献】特開2018-51210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者眼を治療する眼科用レーザ治療装置であって、
前記患者眼に治療光と照準光を照射するレーザ照射手段と、
前記患者眼の眼底を撮影することで眼底画像を取得する撮影光学系と、
制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記眼底画像から前記照準光を検出し、前記撮影光学系の収差によって生じる、前記眼底画像と前記照準光との位置ずれを補正することで、前記眼底画像に対する前記照準光の位置を変更することを特徴とする眼科用レーザ治療装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記レーザ照射手段と前記撮影光学系との光軸ずれによって生じる、前記眼底画像と前記照準光との位置ずれを補正することを特徴とする請求項の眼科用レーザ治療装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮影光学系の撮影に同期して前記照準光の点灯を制御し、前記照準光が点灯された状態で撮影された点灯画像と、前記照準光が消灯された状態で撮影された消灯画像との差分に基づいて、前記照準光を検出することを特徴とする請求項1または2の眼科用レーザ治療装置。
【請求項4】
患者眼を治療する眼科用レーザ治療装置において実行される眼科用レーザ制御プログラムであって、前記眼科用レーザ治療装置のプロセッサによって実行されることで、
前記患者眼に治療光と照準光を照射するレーザ照射ステップと、
撮影光学系によって前記患者眼を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて撮影された前記患者眼の眼底画像から前記照準光を検出する検出ステップと、
前記撮影光学系の収差によって生じる、前記眼底画像と前記照準光との位置ずれを補正することで、前記眼底画像に対する前記照準光の位置を変更する変更ステップと、
を前記眼科用レーザ治療装置に実行させることを特徴とする眼科用レーザ制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、患者眼の治療を行うための眼科用レーザ治療装置、および眼科用レーザ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者眼にレーザ光を照射し、患者眼の治療を行うための眼科用レーザ治療装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-006402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、眼科用レーザ治療装置において、手術顕微鏡ではなく、撮影画像で照射位置を決定することが提案されている。しかしながら、撮影するための光学系に収差があることから、治療用レーザ光とは異なる波長の光で撮影する場合、照準位置または照射位置が適切であっても、撮影した画像上ではずれて表示されることがあった。
【0005】
本開示は、上記の問題点に鑑み、撮影光と治療光で波長が異なる場合でも、照射位置を正確に設定できる眼科用レーザ治療装置、および眼科用レーザ制御プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 患者眼を治療する眼科用レーザ治療装置であって、前記患者眼に治療光と照準光を照射するレーザ照射手段と、前記患者眼の眼底を撮影することで眼底画像を取得する撮影光学系と、制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記眼底画像から前記照準光を検出し、前記撮影光学系の収差によって生じる、前記眼底画像と前記照準光との位置ずれを補正することで、前記眼底画像に対する前記照準光の位置を変更することを特徴とする。
(2) 患者眼を治療する眼科用レーザ治療装置において実行される眼科用レーザ制御プログラムであって、前記眼科用レーザ治療装置のプロセッサによって実行されることで、前記患者眼に治療光と照準光を照射するレーザ照射ステップと、撮影光学系によって前記患者眼を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップにおいて撮影された前記患者眼の眼底画像から前記照準光を検出する検出ステップと、前記撮影光学系の収差によって生じる、前記眼底画像と前記照準光との位置ずれを補正することで、前記眼底画像に対する前記照準光の位置を変更する変更ステップと、を前記眼科用レーザ治療装置に実行させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施例の内部構成を示す概略図である。
図2】観察画像と照準光とのずれを示す図である。
図3】受光素子の分光感度を示す図である。
図4】照準光の位置ずれ補正の流れについて示すブロック図である。
図5】照準光の検出方法について示す図である。
図6】観察画像の取得方法について示す図である。
図7】制御動作を示すフローチャートである。
図8】第1実施例の変容例を示すブロック図である。
図9】第2実施例の内部構成を示す概略図である。
図10】第2実施例の処理の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
本開示に係る実施形態について説明する。実施形態の眼科用レーザ治療装置(例えば、レーザ治療装置1)は、患者眼を治療する。眼科用レーザ治療装置は、レーザ照射部(例えば、レーザ照射部10)と、撮影光学系(例えば、観察光学系20)と、制御部(例えば、制御部70)を備える。レーザ照射部は、例えば、患者眼に治療光と照準光を照射する。撮影光学系は、例えば、患者眼の眼底を撮影することで眼底画像を取得する。制御部は、眼底画像から照準光を検出し、眼底画像に対する照準光の位置を変更する。これによって、眼科用レーザ治療装置は、治療光を適切な位置に照射することができる。例えば、制御部は、撮影光学系の収差によって生じる眼底画像と照準光との位置ずれを補正してもよい。また、制御部は、レーザ照射部と撮影光学系との光軸ずれによって生じる眼底画像と照準光との位置ずれを補正してもよい。なお、眼底画像に対する照準光の位置を変更する場合、眼底画像と照準光のどちらの位置を基準としてもよい。つまり、制御部は、眼底画像と照準光の相対位置を変更すればよい。
【0010】
なお、制御部は、照準光の位置を変更した眼底画像を表示部(例えば、表示部74)に表示させてもよい。つまり、眼底画像に対する照準光の表示位置を変更してもよい。これによって、制御部は、照射位置を設定するために適した情報を術者に提示することができる。なお、制御部は、眼底画像に対する照準光の表示位置を変更する場合、照準光の像の位置を変更して表示させてもよいし、照準光の変更後の位置を電子的に表示させてもよい。例えば、制御部は、照準光の変更後の位置に電子的なマークを表示させてもよい。
【0011】
なお、撮影光学系は、2種類以上の分光感度を有する受光素子(例えば、受光素子29)を備えてもよい。例えば、受光素子は、RGBカラーセンサ等であってもよい。例えば、受光素子は、複数のチャネルごとに画像を取得してもよい。この場合、制御部は、第1の分光感度において取得された第1眼底画像(例えば、第1チャネル画像)と、第2の分光感度において取得された第2眼底画像(例えば、第2チャネル画像)との差分に基づいて、照準光を検出してもよい。例えば、Rチャネル画像と、Gチャネル画像との差分を取ってもよい。なお、受光素子は、赤、緑、青、および赤外の光に対応する波長領域に感度を有してもよい。
【0012】
なお、眼科用レーザ治療装置は、複数の受光素子を備え、波長分離部材(例えば、ダイクロイックミラーなど)によって波長を分離させた光をそれぞれ受光素子に受光させてもよい。
【0013】
撮影光学系は、1種類の分光感度を有する受光素子を備えてもよい。この場合、制御部は、撮影光学系の撮影に同期して照準光の点灯を制御し、照準光が点灯された状態で撮影された点灯画像と、照準光が消灯された状態で撮影された消灯画像との差分に基づいて、照準光を検出してもよい。
【0014】
なお、治療光と照準光は、同一の波長であってもよい。この場合、レーザ照射部の収差による照準光と治療光との照射位置のずれが軽減される。
【0015】
なお、制御部は、第1画像領域において照準光の検出を行ってもよい。第1画像領域は、例えば、予め指定された治療光の照射位置を含む一部の画像領域である。また、制御部は、第2画像領域において照準光の位置ずれを補正してもよい。第2画像領域は、例えば、照準光の検出位置を含む一部の画像領域である。
【0016】
なお、制御部は、記憶部(例えば、記憶部75)に記憶された眼科用レーザ制御プログラムを実行してもよい。眼科用レーザ制御プログラムは、例えば、患者眼を治療する眼科用レーザ治療装置において実行される。眼科用レーザ治療装置は、例えば、レーザ照射ステップと、撮影ステップと、検出ステップと、変更ステップとを含む。レーザ照射ステップは、例えば、患者眼に治療光と照準光を照射するステップである。撮影ステップは、例えば、患者眼を撮影するステップである。検出ステップは、撮影ステップにおいて撮影された患者眼の眼底画像から照準光を検出するステップである。変更ステップは、眼底画像に対する照準光の位置を変更するステップである。
【0017】
<実施例>
本開示に係る第1実施例について説明する。第1実施例は、患者眼にレーザ光を照射するレーザ治療装置1である。例えば、レーザ照射部10と、観察光学系20と、制御部70を主に備える。
【0018】
<レーザ照射部>
レーザ照射部10は、例えば、治療用レーザ光を発振し、レーザ光を患者眼Eに照射する。例えば、レーザ照射部10は、レーザ光源11、照準光源12、ビームスプリッタ13(コンバイナ)、およびレンズ14、駆動部15、走査部16などを備える。レーザ光源11は、治療用レーザ光を出射する。レーザ光源11の波長は、例えば、577nmである。照準光源12は、可視の照準光(エイミング光)を出射する。照準光源12の波長は、例えば、635nmである。ビームスプリッタ13は、治療レーザ光とエイミング光を合波する。ビームスプリッタ13は、治療レーザ光の大部分を反射して照準光の一部を透過する。レンズ14は、駆動部15によって移動されることでレーザ光のフォーカスを調整する。走査部16は、例えば、ミラー16aと、駆動部16bなどを備える。駆動部16bは、ミラー16aの反射面の角度を変更する。
【0019】
ビームスプリッタ13で合波されたレーザ光と照準光は、レンズ14を介して、走査部16およびダイクロイックミラー40で反射され、対物レンズ41を介して眼底Efに集光される。このとき、走査部16によって眼底Ef上におけるレーザ光の照射位置が変更される。
【0020】
なお、レーザ光源11とビームスプリッタ13の間には、治療レーザ光を遮断するシャッター17が設けられている。シャッター17は、レーザ光の照射と遮断を行うために用いられてもよい。レーザ光または照準光が導光される光路にはシャッター18が設けられている。シャッター18は、異常時に閉じられる安全シャッターである。シャッター18は、照準光が走査されるときに、エイミング光の照射と遮断を行うために使用されてもよい。各シャッターを、光路を切換える機能を有するガルバノミラーに置き換えてもよい。
【0021】
<観察光学系>
観察光学系20は、患者眼の観察画像を取得する。観察画像は、例えば、眼底Efの正面画像である。本実施例の観察光学系20は、いわゆる走査型レーザ検眼鏡(SLO)である。例えば、観察光学系20は、例えば、光源21、レンズ22、駆動部23、走査部24、レンズ25等を備える。光源21は、高コヒーレントな撮影光を発するレーザダイオード光源である。光源21の波長は、例えば、785nmである。つまり、光源21は、赤外光源である。レンズ22は、患者眼の屈折誤差に合わせて光軸方向に移動可能である。走査部24は、ミラー24aと、駆動部24bを備える。ミラー24aは、眼底上でXY方向に測定光を高速で走査させることが可能なガルバノミラーとポリゴンミラーとの組み合せからなる。駆動部24bは、ミラー24aを駆動させる。レンズ25は、走査部24によって反射した測定光を対物レンズ41までリレーする。
【0022】
光源21とレンズ22との間には、ビームスプリッタ26が配置されている。ビームスプリッタ26の反射方向には、レンズ27と、眼底に共役な位置に置かれる共焦点開口28と、受光素子29が設けられている。本実施例の受光素子29には、2種類以上の分光感度特性を有するセンサが用いられる。受光素子29は、例えば、一般的なRGBカラーセンサである。この場合、受光素子29は、3種類の分光感度特性を有する。
【0023】
光源21から発せられたレーザ光(測定光)は、ビームスプリッタ26を透過した後、レンズ22を介して、走査部24に達し、ミラー24aにより反射方向が変えられる。そして、走査部24で反射されたレーザ光は、レンズ25を介して、ダイクロイックミラー42を透過した後、対物レンズ41を介して、患者眼眼底に集光される。
【0024】
眼底で反射したレーザ光は、対物レンズ41、レンズ25、走査部24、レンズ22を経て、ビームスプリッタ26にて反射される。その後、レンズ27にて集光された後、共焦点開口28を介して、受光素子29によって検出される。そして、受光素子29にて検出された受光信号は制御部70へと入力される。制御部70は受光素子29にて得られた受光信号に基づいて患者眼眼底の正面画像を取得する。取得された正面画像は記憶部75に記憶される。なお、SLO画像の取得は、走査部24に設けられたガルバノミラーによるレーザ光の縦方向の走査(副走査)とポリゴンミラーによるレーザ光の横方向の走査(主走査)によって行われる。
【0025】
<固視標投影部>
固視標投影部30は、患者眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。固視標投影部30は、例えば、患者眼Eに固視標を呈示する。固視標投影部30は、例えば、可視光を発する可視光源を有する。固視標投影部30は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。
【0026】
<制御部>
例えば、制御部70は、一般的なCPU(Central Processing Unit)71、ROM72、RAM73等で実現される。制御部70のROM72には、観察画像を処理するための画像処理プログラム、レーザ治療装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM73は、各種情報を一時的に記憶する。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0027】
制御部70には、図1に示すように、例えば、表示部74、記憶部(例えば、不揮発性メモリ)75、および操作部76等が電気的に接続されている。表示部74は、装置本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、表示部74は、タッチパネルであってもよい。
【0028】
記憶部75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ等を記憶部75として使用することができる。操作部76には、検者による各種操作指示が入力される。操作部76は、入力された操作指示に応じた信号をCPU71に出力する。操作部76には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかのユーザーインターフェイスを用いればよい。表示部74がタッチパネルである場合、表示部74が操作部76として機能する。
【0029】
<照準光の位置補正>
続いて、観察画像に写る照準光の位置を補正する方法について説明する。互いに波長の異なる撮影光と照準光を患者眼に照射した場合、眼底上の同じ位置で反射した光であっても、患者眼から受光素子29までの光学系の収差(例えば、色収差など)によって、受光素子29上では異なる位置に受光される。例えば、図2に示すように、眼底上の照射目標Tと照準光Aが実際の眼底上では一致していても、観察画像P上ではずれて記録されてしまう。
【0030】
そこで、制御部70は、観察画像Pから照準光Aを検出し、その位置を補正する。例えば、制御部70は、受光素子29の分光感度特性を利用して照準光の情報を取得する。図3は、受光素子29に用いられるRGBカラーセンサの分光感度特性を示している。照準光の波長は635nmであるのでRチャネルの応答が大きくなり、他のチャネルの応答は小さい。撮影光の波長は785nmであるのでRGB各チャネルの応答差が比較的小さい。この関係を利用して、制御部70は、撮影光と照準光を分離する。
【0031】
例えば、制御部70は、図4のブロック図で示すように、Rチャネルの値からGチャネルの値を差し引く。例えば、図5(a)に示すように、Rチャネルの観察画像P1には、眼底Efと照準光Aが写る。一方、図5(b)に示すように、Gチャネルの観察画像P2には、眼底Efが写るが、照準光Aは写らない。したがって、Rチャネルの値からGチャネルの値を差し引くと、図5(c)に示すように、照準光Aが抽出された差分画像P3が生成される。
【0032】
このように異なるチャネル画像の差分を取ることによって照準光Aが抽出されると、制御部70は、差分画像P3に基づいて照準光Aを検出する。例えば、制御部70は、輝度値が閾値以上の部分を照準光Aとして検出する。もちろん、他の画像処理方法、または信号処理方法によって照準光Aを検出してもよい。
【0033】
次に、制御部70は、検出した照準光Aに対して位置ずれを補正する。例えば、制御部70は、予め実験的に求められた、眼底上の各位置と観察画像上の各位置との対応関係に基づいて、照準光Aの位置ずれを補正する。図6(a)は、位置ずれが補正された照準光A0の写る差分画像P4を示す。なお、光学系の収差情報が取得されている場合は波長ごとのずれが分かるため、制御部70は、計算によって照準光Aの位置ずれを補正してもよい。また、位置ずれ補正の処理は、照準光Aが検出された領域のみに対して行ってもよいし、差分画像P3全体に対して行ってもよい。
【0034】
続いて、制御部70は、位置ずれを補正した差分画像P4と、GチャネルおよびBチャネルから得られる観察画像P5(図6(b)参照)と合成する。これによって、受光系の収差を補正した状態の照準光A0を示した観察画像P6を得ることができる(図6(c)参照)。
【0035】
<制御動作>
以上のようなレーザ治療装置1の制御動作を図7のフローチャートに基づいて簡単に説明する。まず、ステップS1において、制御部70は、図示無き駆動部によって患者眼に対するレーザ治療装置1の位置関係を調整(アライメント)する。ステップS2において、制御部70は、観察光学系20によって患者眼の眼底を撮影する。ステップS3において、制御部70は、レーザ照射部10によって患者眼に照準光を照射する。ステップS4において、制御部70は、図4の方法によって観察画像に写る照準光の位置ずれを補正する。ステップS5において、制御部70は、照準光の位置ずれ補正を行った観察画像を表示部74に表示させる。術者は、表示部74に表示された観察画像の照準光A0を確認しながら操作部76を操作する。ステップS6において、制御部70は、術者の操作に基づいて、走査部16を駆動させ、照射位置を移動させる。術者は、表示された照準光A0に基づいて照射位置を決定すると、操作部76を操作し、治療光の照射を開始させる。ステップS7において、制御部70は、設定された眼底上の照射位置に対して治療光を照射する。
【0036】
以上のように、本実施例のレーザ治療装置1は、撮影光と照準光の波長が異なる場合であっても、受光系(例えば、対物レンズ41から受光素子29まで)の収差に起因する照準光の位置ずれを補正することによって、観察画像上で照準光の位置を正確に表示させることができる。これによって、術者は、治療光の照射位置を適正に設定することができる。また、本実施例のレーザ治療装置1は、撮影光に赤外光などの不可視光線を用いることによって、患者の眩しさを低減させ、負担を軽減させることができる。
【0037】
<変容例>
次に、第1実施例の変容例について説明する。変容例のレーザ治療装置1では、観察画像に写る照準光の位置を補正する方法が第1実施例と異なる。図8は、変容例の補正処理の流れを示すブロック図である。本変容例において、制御部70は、R画像(Rチャネルの観察画像)を複数の領域に分割する。例えば、制御部70は、R画像およびG画像を格子状、同心円状などに分割する。照準光の領域は、予め指定されており、照射光も十分小さいため、R画像およびG画像から予め照準光の領域を分離し、照準光近傍のみに補正処理を行う。これによって、余分な計算処理が減り、処理の高速化を図ることができる。また、分割したR画像のうち照準光以外の領域をG画像(Gチャネルの観察画像)、B画像(Bチャネルの観察画像)と共に合成することによって、IR画像(赤外観察画像)の高画質化を図ることができる。
【0038】
なお、第1実施例および変容例において、受光素子29にはRGBカラーセンサを用いたが、2種類の分光感度を持つセンサを用いてもよいし、4種類以上の分光感度を持つセンサを用いてもよい。受光素子29は、例えば、撮影光と照準光を分光できればよい。
【0039】
なお、第1実施例および変容例において、図4または図8に示すように、照準光を検出する際にRチャネルの値からGチャネルの値を差し引いたが、チャネルの組み合わせはこれに限らず、他の組み合わせであってもよい。制御部70は、照準光の波長に感度を持つチャネルの値から、照準光の波長に感度を持たないチャネルの値を差し引けばよい。例えば、Rチャネルの値からBチャネルの値を差し引くことで照準光を検出してもよい。
【0040】
<第2実施例>
第2実施例について説明する。第2実施例のレーザ治療装置2は、図9に示すように、観察光学系20に用いられる受光素子が異なる。なお、その他の構成は、第1実施例と同様であるため、同符号を付して説明は省略する。
【0041】
レーザ治療装置2の受光素子29aは、1種類の画素を有する。つまり、第2実施例では、分光感度特性によって撮影光と照準光を分光することはできない。したがって、レーザ治療装置2の制御部70は、図10のブロック図に示すように、撮影光と照準光を共に点灯した状態で撮影した点灯画像と、照準光を消灯して撮影光のみ点灯した状態で撮影した消灯画像との差分を取ることで、照準光の情報を取得する。そして、制御部70は、第1実施例と同様に照準光の位置ずれを補正し、補正した照準光を撮影光のみで撮影した消灯画像(観察画像)に合成することによって、収差が補正された状態の照準位置を示す観察画像を得ることができる。
【0042】
なお、制御部70は、照準光付近の領域のみで点灯画像と消灯画像の差分を取り、照準光の情報を取得してもよい。これによって、処理の高速化を図ることができる。この場合、差分を取る点灯画像と消灯画像は、眼底全体を撮影したものであってもよいし、眼底全体を撮影してから切り出したものであってもよい。また、点灯画像と消灯画像のどちらか一方は、照準光付近のみを撮影したものであってもよい。
【0043】
なお、治療光を照射するための観察画像はリアルタイムであることが好ましい。したがって、制御部70は、照準光を点滅させながら観察画像を撮影し、順次、点灯画像と消灯画像の差分を取り、照準光の位置ずれ補正を行った観察画像を表示部74に表示させてもよい。
【0044】
なお、第1および第2実施例において、各光源の波長は、上記の実施例に限られるものではなく、異なる波長の光源が用いられてもよい。
【0045】
なお、第1および第2実施例において、レーザ光源11と照準光源12とは波長の異なるものを用いたが、同じ波長の光源を用いてもよい。第2実施例においては、観察光学系20の光源21も同じ波長の光源を用いてもよい。
【0046】
なお、第1および第2実施例において、制御部70は、患者眼から受光素子29までの光学系の収差による観察画像と照準光との位置ずれを補正するものとしたが、これに限らない。例えば、制御部70は、収差以外の光学系のずれ(例えば、光軸ずれなど)による観察画像と照準光との位置ずれを補正してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 レーザ治療装置
10 レーザ照射部
20 観察光学系
30 固視標投影部
70 制御部
71 CPU
72 ROM
73 RAM
74 表示部
75 メモリ
76 操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10