(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】顔料分散体、およびインクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20230418BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20230418BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20230418BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20230418BHJP
【FI】
C09D17/00
C09C1/36
C09C3/06
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2018222280
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 里史
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075302(JP,A)
【文献】特開2017-114934(JP,A)
【文献】特開平03-243664(JP,A)
【文献】特開2018-158994(JP,A)
【文献】特開2016-194041(JP,A)
【文献】特開2011-225867(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141992(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002614(WO,A1)
【文献】特開2014-240386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00-3/12,
C09D 11/30,
15/00-17/00
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機顔料(A)、および1つ以上のアニオン性基を有するモノマー単位を有する重合体(B)を含む顔料分散体であって、
無機顔料(A)は、ルチル型酸化チタン表面に、シリカ、およびアルミナからなる群より選択される1種以上により被覆された第一の被覆層を有する被覆顔料であり、
無機顔料(A)の平均一次粒子径は0.1μm~0.6μmであり、
前記重合体(B)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して12質量部以上、
25質量部以下であり、
前記重合体(B)は、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸塩から選択される1種以上であ
り、
前記重合体(B)の質量平均分子量は、5,000以上である、
顔料分散体。
【請求項2】
前記重合体(B)の質量平均分子量
は、50,000以下である、請求項1記載の顔料分散体。
【請求項3】
前記重合体(B)は、スルホン酸基含有ポリアクリル酸である、請求項1または2記載の顔料分散体。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の顔料分散体を含む、インクジェット用インク。
【請求項5】
さらに疎水性基、および親水性基を含む樹脂を含む、請求項4記載のインクジェット用インク。
【請求項6】
前記疎水性基、および親水性基を含む樹脂は、スチレン(メタ)アクリル樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、および(メタ)アクリル樹脂の少なくともいずれかを含む、
請求項5記載のインクジェット用インク。
【請求項7】
前記疎水性基、および親水性基を含む樹脂の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して、20質量部~150質量部である、請求項5または6記載のインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体、塗料、捺染剤、文具用インク、印刷用インク、フレキソ印刷用インク、およびインクジェット用インク等に使用できる顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで各種印刷(グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷等)では、白地ではない記録媒体(例えば、樹脂フィルム、板紙、布地、段ボール等)に印刷する場合、白色インクを塗工した後に有彩色インクや黒インクを塗工することで印刷画像を際立たせ、視認性を高める方法が用いられる。
【0003】
インクジェット印刷方式でも、同じ目的で白色インキを使用する場合がある。白色インクは、無機顔料を使用するのが一般的である。無機顔料は、有機顔料と比較して光の屈折率が高く良好な白色度が得られる。
【0004】
しかし、無機顔料を使用した白色インクは、無機顔料の比重が重く沈降しやすい。そのため、経時後に振とうや撹拌することで無機顔料を再分散しやすい性質が求められていた。
【0005】
特許文献1には、酸化チタン、ならびにアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびスルホン酸基含有ビニルモノマーから選ばれる少なくとも1種のアニオン性基含有モノマー単位を72質量%以上含有し、質量平均分子量が3,000以上50,000以下である重合体を含み、酸化チタンに対して前記重合体を1質量%以上7質量%以下配合した顔料分散体が開示されている。
【0006】
特許文献2には、酸化チタン、ポリカルボン酸塩やポリアクリル酸塩等を含む、顔料分散体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-75302号公報
【文献】特開2018-158994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット印刷は、微細なノズルからインクの液滴を射出して印刷するため、インクの粘度変化、および粗大粒子の存在により所望の画像が形成できないことが多かった。従来の白色インクは、顔料分散体の作製後、長期間保存すると粘度が増大し、粗大粒子が増加して印刷画像が悪化する問題があった。
【0009】
本発明は、長期の保存後に、粘度変化が少なく、粗大粒子が生じ難い顔料分散体、およびインクジェット用インクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の顔料分散体は、無機顔料(A)、1つ以上のアニオン性基を有するモノマー単位を有する重合体(B)からなる顔料分散体であって、
前記重合体(B)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して7.0質量部を超え、45質量部以下であり、
前記アニオン性基を有するモノマー単位のアニオン性基が、カルボキシル基、およびスルホン酸基から選ばれる1種以上である。
【発明の効果】
【0011】
上記の本発明によれば、長期の保存後に、粘度変化が少なく、粗大粒子が生じ難い顔料分散体、およびインクジェット用インクを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本明細書の用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイルおよびメタクリロイル」である。「(メタ)アクリル」は、「アクリルおよびメタクリル」である。「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸およびメタクリル酸」である。「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレート」である。モノマーは、エチレン性不飽和基含有単量体である。また、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
【0013】
本発明の顔料分散体は、無機顔料(A)、1つ以上のアニオン性基を有するモノマー単位を有する重合体(B)からなる顔料分散体であって、
前記重合体(B)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して7.0質量部を超え、45質量部以下であり、
前記アニオン性基を有するモノマー単位のアニオン性基が、カルボキシル基、およびスルホン酸基から選ばれる1種以上である。
本発明の顔料分散体は、各種の着色用途に使用することが可能であり、例えば、樹脂成形体、一般塗料、自動車用塗料、捺染剤、文具用インク(例えば、ボールペン用、万年筆用等)、グラビア印刷用インク、フレキソ印刷用インク、インクジェット用インク等が挙げられる。これらの中でも、インクジェット用インクがより好ましい。本明細書では、顔料分散体をインクジェット用インクに適用する態様を中心に説明する。
【0014】
本発明の顔料分散体は、重合体(B)のアニオン性基が無機顔料(A)の表面に吸着する吸着基として作用する。加えて、アニオン性基の反発力により無機顔料(A)の再凝集を抑制し、粘度の経時増加、および粗大粒子の経時増加を抑制できる。これらの効果は無機顔料(A)の表面に吸着する重合体(B)を適量使用することで得られる。重合体(B)の使用量が不適切な場合、顔料分散体を作製した直後の粘度および粗大粒子の量が良好であっても、長期保存後には悪化する。
【0015】
(無機顔料(A))
本明細書で無機顔料(A)は、白色インクとして使用可能な金属化合物の粒子である。無機顔料(A)は、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物は、例えば、二酸化チタン(以降、酸化チタンと記載する)、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも高い白色度を示す屈折率、従来の印刷インクの色相を再現する観点から、酸化チタンが好ましい。酸化チタンの結晶構造には、ルチル型(正方晶)、アナターゼ型(正方晶)、ブルッカイト型(斜方晶)があるが、結晶の安定性、白色度、及び入手性の観点から、ルチル型酸化チタンが好ましい。
【0016】
無機顔料(A)は、金属化合物粒子表面に、シリカ、およびアルミナからなる群より選択される1種以上により被覆された第一の被覆層を有する被覆顔料であることが好ましい。無機顔料(A)が例えば酸化チタンである場合、光触媒活性による有機物分解性を有するため、酸化チタン粒子の表面をシリカやアルミナ等の無機酸化物で表面処理をすることが好ましい。また、無機顔料(A)が例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウムである場合、顔料分散体作製時に他の成分との親和性を向上させる面で、無機酸化物で表面処理をすることが好ましい。
【0017】
酸化チタンの表面処理は、例えば、アルミナ処理、シリカ処理、亜鉛、マグネシウム、ジルコニウム等を含有する無機水和物で被覆して、第一の被覆層を形成することが好ましい。これらの中でも、被覆後の酸化チタンの分散性が向上する面でアルミナ処理、シリカ処理、アルミナ及びシリカによる処理が好ましい。第一の被覆層が形成された酸化チタンは、インク等作製時の溶媒に対する親和性がより向上する。なお、アルミナ処理であれば分散時のpHを適切に設定すれば、粒子の表面が等電点を超え分散性が良好となる。また、シリカ処理であれば、粒子表面の等電点がより低くなるため分散性が良好となり、重合体(B)が被覆し易くなる。
【0018】
無機顔料(A)は、ポリオール等の有機化合物を使用して第一の被覆層上に第二の被覆層を形成することが好ましい。これにより無機顔料(A)を一旦、粉末化する際の乾燥凝集を抑制できるため、その後、インク等の組成物を作製する際の分散性が向上する。
【0019】
無機顔料(A)の形状は、粒状、針状など特に制限されない。無機顔料(A)の平均一次粒子径は、白色度の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。また、平均一次粒子径は、再分散性の観点から、0.6μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.4μm以下がさらに好ましい。なお、平均一次粒子径の測定方法は、走査型電子顕微鏡の拡大画像から任意の20粒子を選択して計算する平均値である。粒子画像が例えば楕円形である場合縦軸方向の長さを使用する。
【0020】
酸化チタンの市販品は、例えば、石原産業社製の商品名:タイペークR、CR、PFシリーズ、堺化学工業社製の商品名:Rシリーズ、テイカ社製の商品名:JR、MTシリーズ、チタン工業社製の商品名:KURONOS KRシリーズ、富士チタン工業社製の商品名:TRシリーズ等が挙げられる。
【0021】
(重合体(B))
本明細書で重合体(B)は、1つ以上のアニオン性基を有するモノマー単位を有し、アニオン性基を有するモノマー単位のアニオン性基が、カルボキシル基、スルホン酸基から選ばれる少なくとも1種である。
【0022】
(重合体(B)を構成するモノマー単位)
重合体(B)は1つ以上のアニオン性基を有するモノマー単位を必須とし、必要に応じてアニオン性基をもたないモノマー単位を併用できる。
【0023】
(アニオン性基を有するモノマー単位)
アニオン性基を有するモノマー単位のアニオン性基は、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましい。アニオン性基の存在により重合体(B)が無機顔料(A)に吸着し易くなり、負帯電による斥力が働くため、無機顔料(A)同士が凝集し難くなる。
アニオン性基を有するモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0024】
(アニオン性基をもたないモノマー単位)
アニオン性基をもたないモノマー単位は、例えば、ノニオン性モノマー、スチレン系モノマー、スチレン系モノマー以外の芳香族基含有モノマー、アルキル基含有モノマー等が好ましい。
ノニオン性モノマーは、例えば、アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
アルキレングリコール(メタ)アクリレートは、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート、及びオクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート;
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート 、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)(メタ)アクリレート等の芳香族環を有するアルキレングリコール(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
ノニオン性モノマーの市販品は、例えば、NKエステルM-230G、同450G、同900G(以上、新中村化学工業社製)、ブレンマーPME-1000、同4000(以上、日油社製)、ライトエステル041MA(共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0026】
疎水性モノマーは、例えば、スチレン系モノマー、スチレン系モノマー以外の芳香族基含有モノマー、アルキル基含有モノマー等が挙げられる。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、スチレンマクロマーなどが挙げられる。スチレン系モノマー以外の芳香族基含有モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ベンジ、フェノキシ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ)ブチル(メタ)アクリレート、(ターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)クリレート等が挙げられる。
【0027】
芳香族基含有モノマーは、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが挙げられる、芳香族基含有(メタ)アクリレートは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
(重合体(B)の製造)
重合体(B)は、モノマー混合物を重合して合成できる。前記重合は、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられるところ、分子量、分子量分布の制御の容易さの面で溶液重合が好ましい。
【0029】
溶液重合で用いる溶媒は、特に制限はないが、水、脂肪族アルコール、及びこれらの1以上と水との混合溶媒が挙げられる。水は、水道水等よりもイオン交換水、蒸留水、精製水が好ましい。
【0030】
重合には、重合開始剤を使用することが好ましい。重合開始剤は、アゾ化合物、過酸化物が挙げられる。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル等が挙げられる。過酸化物は、例えば、キュメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジt-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、モノマー混合物100質量部に対して、0.001~5質量部程度が好ましい。
【0031】
重合には、連鎖移動剤を使用できる。これにより重合体(B)に分子量調整が容易になる。連鎖移動剤は、例えば、メルカプタン類が挙げられる。
【0032】
本明細書で重合体(B)は、無機顔料(A)の吸着、負帯電による斥力の面から、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸塩から選択される1種以上が好ましく、ポリアクリル酸がより好ましい。なお、ポリアクリル酸は、スルホン酸基含有ポリアクリル酸が好ましい。
【0033】
重合体(B)のアニオン性基は、塩を形成することが好ましい。塩基は、例えば、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン等の有機アミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0034】
ポリアクリル酸の市販品は、例えば、アロンT-50(Mw6,000),アロンA-10SL(Mw5,000),アロンA-30SL(6,000)(いずれも東亞合成社製)、アクアリックDL、アクアリックYS(いずれも日本触媒社製)などが挙げられる。スルホン酸基含有ポリアクリル酸の市販品は、例えば、アロンA-6012(Mw10,000)(東亞合成社製)、アクアリックGL、アクアリックLS(いずれも日本触媒社製)等が挙げられる。
【0035】
重合体(B)の質量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、質量平均分子量の上限は、50,000以下が好ましく、30,000以下がより好ましく、10,000以下がさらに好ましい。適度な質量平均分子量により長期間の保存での粘度変化が少なく、粗大粒子が増加し難い。
【0036】
重合体(B)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して、7.0質量部を超え、45質量部以下である。なお、重合体(B)の含有量は、11質量部を超える量が好ましく、15質量部を超える量がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましい。適度に含有すると長期間の保存での粘度変化が少なく、粗大粒子が増加し難い。
【0037】
(顔料分散体の製造方法)
顔料分散体の製造は、例えば、無機顔料(A)、重合体(B)、水、および必要に応じて消泡剤等の添加剤を配合し、予備混合する。次いで、得られた混合物を分散機等で分散して得る。
前記予備混合は、例えば、ディスパー、プラネタリーミキサー、ニーダー等が挙げられる。予備混合は、少なくとも分散機に混合物を導入しやすい形態を得る目的で実施されるが、分散機での分散性の向上、無機顔料(A)と重合体(B)の吸着性の観点から、せん断強度を考慮した混練工程として位置付けてもよい。
【0038】
分散機は、例えば、予備混合で使用したニーダー等の混練混合装置、後ライアー、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル等が挙げられる。ビーズミルは、例えば、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等のメディアを使用することが好ましく、ビーズミルがより好ましく、ジルコニアビーズがさらに好ましい。なお、ジルコニアビーズの直径は1.2mmΦ以下が好ましく、1.0mmΦ以下がより好ましく、0.8mmΦ以下がさらに好ましい。ビーズ径が小さいほどビーズの衝突による無機顔料(A)に対する衝撃が小さくなり過分散(無機顔料(A)の1次粒子が破砕されること)を抑制し、粘度および粗大粒子が増加し難い安定な顔料分散体を得やすい。
【0039】
分散時の温度は、無機顔料(A)の分散性、ビーズ摩耗の観点から10℃以上40℃以下が好ましい。なお、より好ましくは35℃以下であり、さらに好ましくは30℃以下である。
分散時間は、顔料分散体が目的の分散粒径、粗大粒子の低減、白色度に到達するまでであるが、重合体(A)の吸着の観点と、無機顔料(A)の破砕の観点から、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上である。また、100時間以下、より好ましくは75時間以下、さらに好ましくは50時間以下である。
【0040】
顔料分散体の無機顔料(A)の分散時の体積平均粒度分布(d50)は、100nm以上600nm以下が好ましく、200nm以上400nm以下がより好ましく、240nm以上380nm以下がさらに好ましい。適度な粒度分布(d50)により、白色インクの白色度と顔料分散体の長期の保存での安定性がより向上する。
【0041】
顔料分散体の作製には、溶媒を使用できる。溶媒は、水、または、脂肪族アルコールの1つ以上と水との混合溶媒が挙げられる。水は、水道水等よりもイオン交換水、蒸留水、精製水が好ましい。
【0042】
(インクジェット用インク)
本明細書のインクジェット用インクは、顔料分散体を含む。また、インクジェット用インクは、顔料分散体に加え、樹脂、塩基性物質、水、水溶性溶剤、界面活性剤、および架橋剤等から選択される材料を適宜追加して作製できる。
【0043】
樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂、セルロース類、ロジン類、天然ゴム等が挙げられる。
【0044】
本明細書のインクジェット用インクは、さらに疎水性基、および親水性基を含む樹脂(以下、樹脂(X)という)を含むことが好ましい。樹脂(X)を含有するとインクジェット用インクを印刷して形成する被膜の耐水性がより向上する。樹脂(X)は、例えば疎水性記含有モノマーおよび親水性基含有モノマーを重合して作製できる。
【0045】
樹脂(X)は、モノマー混合物を重合して合成できる。前記重合は、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。
【0046】
前記疎水性基は、芳香族基、アルキル基等が挙げられる。これらの中でも芳香族基が好ましい。樹脂(X)に疎水性基を付与するモノマーは、例えば、スチレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート等が挙げられる。また、マクロモノマーなどの疎水性のオリゴマー、ポリマーなどを側鎖に有するビニル化合物が挙げられる。市販品は、例えば、スチレンマクロマー(例えば、AS-6(東亞合成社製))、疎水性のアクリル樹脂を側鎖に有するビニル化合物(例えば、AA-6(東亞合成社製))、疎水性のウレタン樹脂を側鎖に有するビニル化合物、疎水性のエステル樹脂を側鎖に有するビニル化合物、疎水性のエーテル樹脂を側鎖に有するビニル化合物等が挙げられる。
【0047】
前記親水性基は、塩を形成する基であり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、アミノ基等、ノニオン性基(例えばヒドロキシル基、アルキレンオキサイド基)が挙げられる。これらの中でもカルボキシル基が好ましい。また、樹脂(X)に親水性基を付与するモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マイレン酸、イタコン酸、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等である。また、親水性のアルキレンオキサイドの重合体が結合したビニルモノマー(例えばブレンマーPME-1000、同4000(日油社製))が挙げられる。
【0048】
樹脂(X)はインクジェット用インクとして使用する場合、形成する被膜の耐水性がより向上する面で、モノマー混合物中に疎水性基含有モノマーを50mol%を超えて含むことが好ましい。
【0049】
樹脂(X)の市販品は、例えば、スチレン(メタ)アクリル樹脂であればJoccryl690、67等に代表されるJoncrylシリーズ(BASF社製)、X-1(星光PMC社製)、スチレン(無水)マレイン酸樹脂であればSMA1440、SMA2625、SMA3840等に代表されるSMAレジンシリーズ(CrayValley社製)、(メタ)アクリル樹脂であればVS-1057、X-310、TS-1316(星光PMC社製)等が挙げられる。
【0050】
樹脂(X)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して、20質量部~150質量部が好ましい。より好ましくは35質量部~135質量部、さらに好ましくは50質量部~120質量部である。
【0051】
塩基性物質は、無機塩基、有機塩基が挙げられる。無機塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。有機塩基は、例えば、1級~3級のアミンを用いることができる。例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン。アミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等のノニオン性基を有するアミン等が挙げられる。
【0052】
水溶性溶剤は、インクの乾燥を防止や、分散安定性向上に作用する。また、インクジェット印刷後の基材への浸透性、濡れ広がり性がより向上する。
水溶性溶剤は、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
【0053】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0054】
架橋剤は、印刷後の被膜の強度が向上する。架橋剤は、例えば、グリシジル系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系の架橋剤等を使用することができる。
【0055】
(インクジェット用インクの作製方法)
インクジェットインクの作製法の一例を説明する。
顔料分散体に対して、樹脂、塩基性物質、水、水溶性溶剤、さらに必要に応じてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、pH調整剤等及びその他の成分を添加して作製する。
顔料分散体を撹拌下、所望の成分を添加し、十分撹拌して作製する。撹拌の際、必要に応じて加温できる。
【0056】
撹拌装置は、例えば、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミル、アニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を具備する分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に特に限定されない。なお、実施例中、「部」は「質量部」であり、「%」は「質量%」を表す。
【0058】
以下、実施例で使用した材料を記載する。
(無機顔料(A))
タイペーク CR-58(石原産業社製)
二酸化チタン(ルチル型)
平均一次粒子径:0.28μm
第一の被覆層を形成した化合物:アルミナ
タイペーク CR-80(石原産業社製)
二酸化チタン(ルチル型)
平均一次粒子径:0.25μm
第一の被覆層を形成した化合物:アルミナ、シリカ
【0059】
(重合体(B))
・アニオン性基としてカルボキシル基を有する重合体
アロン A-10SL(東亞合成社製)
ポリアクリル酸
Mw5,000
不揮発分40%
・アニオン性基としてカルボキシル基、およびスルホン酸基を有する重合体のナトリウム塩
アロン A-6012(東亞合成社製)
ポリアクリル酸スルホン酸系共重合体ナトリウム
Mw10,000
不揮発分40%
【0060】
・疎水性基として芳香族基、親水性基としてカルボキシル基を有する樹脂(X)
Joncryl 690(BASF)
スチレンアクリル樹脂
Mw16,500
不揮発分 98.5%
【0061】
(水溶性溶剤)
ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル
プロピレングリコール
【0062】
(界面活性剤)
・ノニオン性界面活性剤
サーフィノールDF110D(EVONIK社製)
【0063】
(防腐剤)
プロキセルGXL(ロンザ社製)
【0064】
顔料分散体及びインクの評価方法を以下に示す。
【0065】
(アロンA-10SL NaOH水溶液の作製)
水酸化ナトリウム50.0部をイオン交換水50.0部に溶解し、50.0%水酸化ナトリウム水溶液を作製した。200mlガラス瓶にアロンA-10SL(不揮発分40%)を69.5部はかり取り、これに50%水酸化ナトリウム水溶液を30.0部添加した。この際、ガラス瓶容器を氷冷して50℃以下を維持しながら50%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。50%水酸化ナトリウム水溶液の添加後、混合液のpHを確認し、さらに50%水酸化ナトリウム水溶液を0.5部追加して撹拌しpHが9.2~9.5の範囲となるよう調整し、アロンA-10SLの濃度が28.1%のアロンA-10SL NaOH水溶液を得た。
【0066】
(Joncryl690 NaOH水溶液の作製)
水酸化ナトリウム50.0部をイオン交換水50.0部に溶解し、50.0%水酸化ナトリウム水溶液を作製した。200mlガラス瓶に粉砕したJoncryl690を20.0部はかり取り、これにイオン交換水を73.2部を加えディスパーで撹拌しながら液温が50℃となるように加温した。これに、50%水酸化ナトリウム水溶液を6.8部添加し、Joncryl690が溶解するまで撹拌し、Joncryl690の濃度が20%のJoncryl690 NaOH水溶液を得た。
【0067】
(作製例1 顔料分散体(1)の作製)
225mlのガラス瓶に、アロンA-10SL NaOH水溶液を9.3部と、イオン交換水を55.7部を加えてよく撹拌し、0.8mmジルコニアビーズ160部を添加し、最後にタイペークCR-80を35.0部を添加して、シェーカー(サカタインクスエンジニアリング株式会社製オートマチックシェーカーSK450)に設置して6時間分散した。分散後ビーズを除去し顔料分散体(1)を得た。顔料分散体の粒度分布(d50)はNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した。体積平均粒径のd50の値を用いた。
【0068】
(作製例2~19 顔料分散体(2)~(19)の作製)
表1に記載の無機顔料(A)、重合体(B)、使用量に変更した以外は作製例1と同様の方法で顔料分散体(2)~(19)を作製した。また、作製例1と同様の方法で粒度分布を測定した。評価結果は表1に記載した通りである。
【0069】
【0070】
(実施例1)
作製例1で製造した顔料分散体(1)を使用してインクジェット用インク(1)を作製した。
顔料分散体(1)以外のインク成分(インク成分液)をあらかじめ混合し、これを撹拌下、顔料分散体(1)へ添加し作製した。
顔料分散体以外のインク成分の作製は、100mlのガラス容器に、イオン交換水24.7部、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル7.0部、プロピレングリコール23.0部、サーフィノールDF110D1.5部、プロキセルGXL0.2部、疎水性基と親水性基からなる樹脂としてJoncyrl690 NaOH水溶液15.0部をはかり取りディスパーで混合しインク成分液を作製した。
200mlのガラス容器に顔料分散体(1)を28.6部をはかり取り、液温25℃下、ディスパーで撹拌しながら、インク成分液71.4部を添加し、30分間撹拌しインクジェット用インク(1)を得た。得られたインクの組成を表3に記載する。
【0071】
(実施例2~17、比較例1~2)
実施例1の材料を表3~4に記載された材料および使用量に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~17、比較例1~2のインクジェット用インク(2)~(19)をそれぞれ作製した。
ただし、実施例1、5~7、11~13、16、および17は参考例である。
【0072】
(インクジェット用インクの評価)
インクジェット用インクの長期の保存後の分散状態の評価は、インクジェット用インクを70℃で4週間経時する促進評価を行った。結果を表3~4に示す。
【0073】
(粘度の測定方法)
インクジェット用インク作製直後と70℃4週間後の粘度の変化率を評価した。
粘度はE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、ローター(名称1°34‘×R24)、25℃ において回転数20rpmで測定し、3分後の値を粘度として評価した。なお、粘度計は粘度計校正用標準液 JS10(日本グリース社製)を用いて校正した。
評価基準は以下の通りである。
○:70℃4週間保存後の粘度変化率が±10%未満(良好)
△:70℃4週間保存後の粘度変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:70℃4週間保存後の粘度変化率が±20%以上(実用不可)
【0074】
(粒度分布(d50))
インクジェット用インク作製直後と70℃4週間後の粒度分布(d50)の変化率を評価した。
粒度分布(d50)はNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した。体積平均粒径のd50の値を用いた。
評価基準は以下の通りである。
○:70℃4週間保存後のd50の変化率が±10%未満(良好)
△:70℃4週間保存後のd50の変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:70℃4週間保存後のd50の変化率が±20%以上(実用不可)
【0075】
(粗大粒子)
インクジェット用インク作製直後と70℃4週間後の粗大粒子を評価した。
粗大粒子の変化は、25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B 目開き1.0μm GEヘルスケアライフサイエンス社製)を使用した減圧濾過時のインクの通過時間で評価した。粗大粒子が多い、または保存経時後に増加している場合は、フィルターが目詰まりをおこし通過時間が長くなる。また、粗大粒子が過剰になるとフィルターが閉塞しインクを全量ろ過することができない。一般にインクジェットヘッドへインクを供給する経路に使用されるフィルターは1μmより大きく、本試験方法によりろ過を通過すれば十分といえる。
(評価条件)
評価インクは、顔料分散体中の無機顔料の不揮発分が10%となるように、実施例1記載の方法で作製した。コックを経由して減圧ポンプを付属したサクションベッセル(ADVANTEC社製 VT-500 0.5L)に15mlの目盛のついたファンネルと25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B GEヘルスケアライフサイエンス社製)をのせた直径25mmフィルターホルダー(ADVANTEC社製)をのせた。サクションベッセル内が減圧されないようにコックを使用して減圧ポンプ(東京理化学器械社製 アスピレーター A-1000S)を稼働し、インク15mlをファンネルのメモリを使用してはかり取った。次いで、ポンプとサクションベッセルの開圧をスタートとしインク全量がフィルターを通過する時間を計測した。60秒以内にろ過フィルターが閉塞し顔料分散体が通過しない場合はファンネル内に残留したインクの量を計測した。評価基準は以下の通りである。
○:インク通過時間が35秒未満(良好)
△:インク通過時間が35秒以上60秒未満(実用上問題なし)
×:インク通過時間が60秒以上(実用不可)
【0076】
(白色度)
インクジェット用インク作製直後の白色度を目視とL*値で評価した。透明のフィルム(TAC50 125×300m2 R1 エム・ビー・エス社製)を塗工台(K101コ
ントロールコーター RK Print Coat Instruments)にセットし、メータバー K101 ウェット12μm(RK Print Coat Instruments)を用いて、スピード6にてインクを塗工後、80℃で3分間乾燥した。乾燥したフィルムを均一濃度板(濃度2.0 半光沢タイプ 富士フイルム社製)の上にのせ、X-rite i1(ビデオジェット・エックスライト社製)を用いてL*値を測
定し白色度とした。測定条件は、観測光源:D50、観測視野:2°、濃度:DIN,白色基準:Abs、フィルター:No、Mファクター:M0 とした。CIELabLabを測定した時のL*値を使用した。評価基準は以下の通りである。
○:L*値及び目視のいずれもが十分である(良好)
△:L*値または目視のいずれかが不十分である(問題なし)
×:L*値及び目視のいずれもが不十分である(不良)
【0077】
【0078】
【0079】
表2~3の結果から、重合体(B)の含有量は、無機顔料(A)100質量部に対して7.0質量部を超え、45質量部以下において、粘度および粗大粒子の増大が抑制された、かつ良好な白色度を得られることがわかる。