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  • 特許-フレキシブルコンテナ及びその製造方法 図1A
  • 特許-フレキシブルコンテナ及びその製造方法 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】フレキシブルコンテナ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/22 20060101AFI20230418BHJP
   H05F 1/02 20060101ALI20230418BHJP
   H05F 3/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B65D88/22 A
H05F1/02 J
H05F3/02 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018238469
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100414
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】國分 彰
(72)【発明者】
【氏名】後藤 和博
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-358827(JP,A)
【文献】特開2012-250753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0270594(US,A1)
【文献】特開昭59-051076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/22
H05F 1/02
H05F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ターポリンよりなる周壁部、下蓋部及び上蓋部を接合してなるフレキシブルコンテナであって、
該導電性ターポリンは、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されており、
該導電性ターポリンは、該導電性樹脂層を該フレキシブルコンテナの内部側として配材されており、
前記下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部が前記周壁部の外周面に沿って延出し、該周壁部の外周面に接合されているフレキシブルコンテナにおいて、
該下蓋部又は上蓋部の前記外周部と周壁部との間に、導電性ターポリンよりなるアース線接続部の基部が挟み込まれて該外周部及び周壁部に対し接合されており、
該アース線接続部の導電性樹脂層は該外周部側に位置しており、
前記外周部の外周縁から前記アース線接続部に沿って延出する延出部が設けられていることを特徴とするフレキシブルコンテナ。
【請求項2】
前記アース線接続部のうち、前記基部以外は、前記外周部から延出した自由片となっており、
該自由片の延出長さは前記延出部の延出長さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項3】
前記アース線接続部の基端側の左右幅と前記延出部の左右幅とがほぼ等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載のフレキシブルコンテナ。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のフレキシブルコンテナを製造する方法であって、
前記周壁部を構成する導電性ターポリンと下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部との間に前記アース線接続部の基部を挟み、該周壁部及びアース線接続部と下蓋部又は上蓋部との各導電性ターポリン同士を高周波溶着する工程を有する
フレキシブルコンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されたターポリン同士を接合してなるフレキシブルコンテナと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
粉粒体の輸送、保管に広く用いられているフレキシブルコンテナは、収納される粉粒体の性状により、粉粒体の注入口と排出口の注排出時、輸送時の振動、衝撃などによって、粉粒体同士または粉粒体とフレキシブルコンテナ内面との摩擦によって静電気が発生することが知られている。
【0003】
静電気をアースに逃がすために、フレキシブルコンテナの基布表面を、カーボンブラックを練り混んだ導電性付与型のゴム製素材(熱可塑性樹脂からなる素材を含む)よりなる層で被覆した導電性ターポリンが用いられている。また、ターポリンの一部を延出させて舌片状のアース線接続部を設け、このアース線接続部をアース線先端のクリップで挟持可能としたフレキシブルコンテナが用いられている。
【0004】
図5は、市販のフレキシブルコンテナの概略的な側面図(左半分を切断してある。)、図6図5のVI部分の拡大図である。また、図7はアース線接続部が劣化した状態を示す図6と同一部分の断面である。
【0005】
このフレキシブルコンテナ1は、略円筒状の周壁部2と、該周壁部2の上端側を覆う上蓋部3と、該周壁部2の下端側を覆う下蓋部4と、該上蓋部3に設けられた注入口5と、該下蓋部4に設けられた排出口6と、該フレキシブルコンテナ1の外面に設けられたアース線接続部7’等を備えている。注入口5及び排出口6は、それぞれ、周壁部2よりも小径の略円筒状となっており、該注入口5は上蓋部3の中央から上方に延出し、排出口6は下蓋部4の中央から下方に延出している。周壁部2の下部外周面にアース線接続部7’が配設されている。
【0006】
フレキシブルコンテナ1の各部は、それぞれ導電性ターポリンにより構成されている。導電性ターポリンは、図示の通り、基布の一方の面に導電性樹脂層11を形成し、他方の面に非導電性樹脂層を形成してなるものである。この導電性ターポリンは、該導電性樹脂層をフレキシブルコンテナ1の内部側として配材されている。なお、図5~7では、基布及び非導電性樹脂層を一体的に図示し、符号10を付してある。
【0007】
図6の通り、下蓋部4を構成する導電性ターポリンの外周部4aは、周壁部2の下部外周面に回り込み、該下部外周面に高周波溶着等により接合されている。
【0008】
アース線接続部7’は、この導電性ターポリンの外周部4aから延出した舌状片よりなる。フレキシブルコンテナ1内に粉粒体を収容する場合は、アース線先端のアースクリップ(図4参照。図5,6では図示略)で該アース線接続部7’を挟み、アースをとる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-250753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
アース線接続部7’は、本来、上記のようにアース線先端のアースクリップで挟んでフレキシブルコンテナ1のアースをとるためのものである。しかしながら、実際の作業時には、作業者がフレキシブルコンテナ1を移動させようとしてアース線接続部7’を掴んで図6の矢印F方向等にアース線接続部7’を引っ張ることがある。このようにアース線接続部7’を引っ張ると、導電性樹脂層11に強い引張力が負荷され、図7のように、アース線接続部7’の付け根付近で導電性樹脂層11に亀裂Cが生じ、アース線接続部7’の導電性樹脂層11とフレキシブルコンテナ1の導電性樹脂層11との間の電気抵抗が増大するおそれがある。なお、アース端子からの接地間抵抗はJIS C 61340-4-4で1×10Ω未満と規定されている。
【0011】
本発明は、アース線接続部の導電性樹脂層の耐久性に優れたフレキシブルコンテナ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフレキシブルコンテナは、導電性ターポリンよりなる周壁部、下蓋部及び上蓋部を接合してなるフレキシブルコンテナであって、該導電性ターポリンは、前面に非導電性樹脂層が形成され、裏面に導電性樹脂層が形成されており、該導電性ターポリンは、該導電性樹脂層を該フレキシブルコンテナの内部側として配材されており、前記下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部が前記周壁部の外周面に沿って延出し、該周壁部の外周面に接合されているフレキシブルコンテナにおいて、該下蓋部又は上蓋部の前記外周部と周壁部との間に、導電性ターポリンよりなるアース線接続部の基部が挟み込まれて該外周部及び周壁部に対し接合されており、該アース線接続部の導電性樹脂層は該外周部側に位置していることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の一態様では、前記外周部の外周縁から前記アース線接続部に沿って延出する延出部が設けられている。
【0014】
本発明の一態様では、前記アース線接続部のうち、前記下部以外は、前記外周部から延出した自由片となっており、該自由片の延出長さは前記延出部の延出長さよりも大きい。
【0015】
本発明の一態様では、前記アース線接続部の基端側の左右幅と前記延出部の左右幅とがほぼ等しい。
【0016】
本発明のフレキシブルコンテナの製造方法は、本発明のフレキシブルコンテナを製造する方法であって、前記周壁部を構成する導電性ターポリンと下蓋部又は上蓋部を構成する導電性ターポリンの外周部との間に前記アース線接続部の基部を挟み、該周壁部及びアース線接続部と下蓋部又は上蓋部との各導電性ターポリン同士を高周波溶着する工程を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって提供されるフレキシブルコンテナにあっては、アース線接続部における導電性樹脂層が外周部側となるように配置されることにより、アース線接続部の基端部付近において、アース線接続部の導電性樹脂層と、上蓋部または下蓋部の導電性樹脂層との合計の厚みを有した導電層が構成される。これにより、導電層の引張強度が大きくなり、アース線接続部を引っ張った時に、該導電層に亀裂が生じることが抑制され、十分なアースをとることができる。
【0018】
アース線接続部が延出部に重なり、アース線接続部の導電性樹脂層と延出部の導電性樹脂層とが重なって電気的に導通した状態となる。そのため、作業者がアース線接続部を引っ張ることが度重なり、アース線接続部の基端側においてその導電性樹脂層に亀裂が生じたとしても、アース線接続部の導電性樹脂層は延出部の導電性樹脂層を介してフレキシブルコンテナ全体の導電性樹脂層に低抵抗にて導通するようになるので、十分なアースをとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】実施の形態に係るフレキシブルコンテナのアース線接続部付近の断面斜視図である。
図1B】実施の形態に係るフレキシブルコンテナのアース線接続部付近の断面斜視図である。
図2A図1AのIIA-IIA線断面図である。
図2B図1BのIIA-IIA線断面図である。
図3図1A,1BのIII-III線断面図である。
図4】アース線接続部にアースクリップを接続した状態を示す図2と同一部分の断面図である。
図5】従来のフレキシブルコンテナの側面図である。
図6図5のVI部分の拡大図である。
図7】導電性樹脂層の劣化状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1A図4を参照して実施の形態について説明する。なお、図1A及び図2Aは延出部8が設けられていない実施の形態を示しており、図1B及び図2Bは延出部8が設けられた実施の形態を示している。
【0021】
図1A図2A及び図1B図2Bの実施の形態に係るフレキシブルコンテナも、前記図5のフレキシブルコンテナ1と同様に、周壁部2、上蓋部3、下蓋部4、注入口5、排出口6及びアース線接続部7を有している(上蓋部3、注入口5、排出口6は、図1~4では図示略。)。下蓋部4の外周部4aは、周壁部2の外周面に沿って立ち上がり、該周壁部2の外周面に高周波溶着等によって接合されている。なお、高周波溶着以外の接合法を採用してもよい。
【0022】
これらの実施の形態でも、周壁部2、上蓋部3及び下蓋部4はいずれも導電性ターポリンよりなる。周壁部2の導電性樹脂層11は、フレキシブルコンテナの内面側に位置し、上蓋部3の導電性樹脂層11は上蓋部3の下面側に位置し、下蓋部4の導電性樹脂層11は下蓋部4の上面側に位置している。
【0023】
これらの実施の形態では、アース線接続部7は、周壁部2及び下蓋部4を構成する各導電性ターポリンとは別個に形成された導電性ターポリンよりなる。
【0024】
アース線接続部7を構成する導電性ターポリンは、例えば左右幅20~200mm、上下長さ30~100mm程度の略方形であるが、その形状及び寸法はこれに限定されない。アース線接続部7を構成する導電性ターポリンは、導電性樹脂層11が外周部4a側となり、非導電性樹脂層10が周壁部2側となるように配置されている。
【0025】
アース線接続部7の下部(基部)は、下蓋部4の外周部4aと、周壁部2の下部との間に挟み込まれ、高周波溶着等によって外周部4aと周壁部2との双方に接合されている。
【0026】
アース線接続部7の該下部以外は、外周部4aから上方へ延出した自由片状となっている。該アース線接続部7の該自由片部分は、周壁部2に接合されていない。さらに、後述の延出部8にも接合されていない。
【0027】
図1A図2Aでは、延出部8は設けられていない。図1B図2Bでは、下蓋部4を構成する導電性ターポリンの外周部4aの外周縁のうち、アース線接続部7と重なる部分から延出部8が延出している。該延出部8の左右幅はアース線接続部7の左右幅と略同一となっているが、それよりも若干長くてもよい。延出部8の延出長さは3~50mm特に5~20mm程度が好適であるが、これに限定されない。
【0028】
図1A図2A及び図1B図2Bのフレキシブルコンテナのその他の構成は前記図5~7に示したフレキシブルコンテナ1と同一である。
【0029】
これらの実施の形態に係るフレキシブルコンテナにおいても、アース線接続部7の自由片部分を挟むようにアース線先端のアースクリップ9(図4)が装着されることにより、アースが取られる。
【0030】
これらの実施の形態においても、作業者がアース線接続部7を引っ張ることがありうる。作業者がアース線接続部7を引っ張ることが度重なると、図7と同様に、アース線接続部7の基端側においてその導電性樹脂層11に亀裂が入る可能性がある。
【0031】
図1A図2A及び図1B図2Bの実施の形態では、アース線接続部7における導電性樹脂層11が外周部4a側となるように配置されることにより、アース線接続部7の基端部付近において、アース線接続部7の導電性樹脂層11と上蓋部3または下蓋部4の導電性樹脂層11との合計の厚みを有した導電層が構成される。これにより、導電層の引張強度が大きくなり、アース線接続部7を引っ張った時に、該導電層に亀裂が生じることが抑制される。このため、アースクリップがアース線接続部7のみを挟んだ場合でも、十分なアースをとることができる。
【0032】
また、図1B図2Bの実施の形態では、図4の通り、アース線接続部7の自由片部分はアースクリップ9が接続された状態では下方に垂れ下がり、延出部8に重なり、アース線接続部7の導電性樹脂層11と延出部8の導電性樹脂層11とが重なって電気的に導通した状態となっている。そのため、アース線接続部7の自由片部分の基端側において、導電性樹脂層11に亀裂が生じたとしても、アース線接続部7の導電性樹脂層11は延出部8の導電性樹脂層11を介してフレキシブルコンテナ全体の導電性樹脂層11に低抵抗にて導通し、十分なアースをとることができる。
【0033】
なお、導電性ターポリンの導電性樹脂層11の厚みは0.01~1mm、特に0.02~0.1mmであることが好ましく、非導電性樹脂層12の厚みは0.1~3mm、特に0.2~1mmであることが好ましい。
【0034】
[材質等]
フレキシブルコンテナ1の各部を構成する導電性ターポリンの材質の一例として次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
導電性ターポリンの基布としては、木綿及び麻などの天然繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維及びビニロン繊維などの合成繊維製の織布が挙げられる。基布は、これらの繊維を単独でまたは2種以上を組み合わせて構成したフィラメントまたはスティーブルであってもよい。なお、織布とは、これらの繊維を平織、綾織、朱子織などに織った織物や編み物を意味し、編織物の種類や構造は、導電性ターポリンのフレキシビリティを阻害しないものであれば、特に制限はない。
【0036】
基布を構成する織布としては、繊維の太さが500~1000デニールであり、打ち込み本数が15~30本/インチの平織物が好適である。ポリエステル繊維又はポリアミド繊維よりなる織布を用いる場合には、この織布としては、繊維の太さが750デニールであり、打ち込み本数20本×20本/インチの平織物が好適である。このような織布は、厚さが0.2~2mmであり、幅が0.5~3m程度のものが一般である。
【0037】
非導電性樹脂層は、熱可塑性樹脂組成物よりなることが好ましく、特にエチレンと酢酸ビニルとの共重合体層を含む樹脂層によって構成されていることが好ましい。エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層を含む樹脂層とは、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層の単層よりなる樹脂層のほか、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体層と他の樹脂層とが積層された多層の樹脂層であってもよい。他の樹脂層を形成する樹脂としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルを主成分とした塩化ビニル系共重合体などのポリ塩化ビニル系樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのエチレン-アクリル酸系共重合体、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0038】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルの成分重合比が90:10~70:30のものが好適である。酢酸ビニルの割合が10質量%未満であると高周波溶着加工が困難となり、また30質量%を超えると耐熱性が悪くなり、いずれも好ましくない。エチレンと酢酸ビニルの成分重合比の特に好ましい範囲は、85:15~75:25である。エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、JIS K7210に準拠して温度190℃、荷重21.28N(2.16kgf)の条件で測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~5.0の範囲のものが好ましく、中でも0.5~2.0の範囲のものが特に好ましい。
【0039】
導電性樹脂層11は、導電性カーボンブラックを含む熱可塑性樹脂組成物よりなることが好ましく、特に導電性カーボンブラックおよび主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層を含む樹脂層により構成されていることが好ましい。導電性カーボンブラックおよび主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層を含む樹脂層とは、導電性カーボンブラックを含む主成分としてエチレン-酢酸ビニル共重合体層(ポリオレフィン系樹脂層)の単層よりなる樹脂層のほか、この層に他の樹脂層が積層された多層の樹脂層であってもよい。他の樹脂層樹脂層を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、塩素化ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体などのエチレン-アクリル系共重合体などが挙げられる。その他、他の樹脂層は、導電性カーボンブラックを特定量配合した熱可塑性樹脂層を含むものであってもよい。
【0040】
上記導電性樹脂層に配合される導電性カーボンブラックには特に制限はないが、導電性カーボンブラックの平均表面積が比較的小さい場合には、該導電性カーボンブラックの使用量が多量となり、これにより熱可塑性樹脂をフィルム化する際の流動性が悪化したり、フィルムの強度が極端に低下したりするなどの欠点が顕著になる。導電性カーボンブラックとしては、物性上の観点から、平均表面積30m/g以上のものが好ましく、中でも平均表面積100m/g以上のものが特に好適である。
【0041】
熱可塑性樹脂、好ましくはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含む樹脂に対する導電性カーボンブラックの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.1~25質量部であることが好ましい。導電性カーボンブラックの配合量が0.1質量部未満であると、導電性樹脂層11の表面固有抵抗が大きくなり、導電性が改良されにくいため、好ましくない。導電性カーボンブラックの配合量が25質量部を越えると、導電性樹脂層11の表面固有抵抗が小さくなり、導電性は改良されるが、ターポリンの柔軟性が損なわれたり、高周波溶着加工する際にスパークが発生するおそれが高まったりするので、好ましくない。熱可塑性樹脂100質量部に対する導電性カーボンブラックの特に好ましい配合量は、3~15質量部である。
【0042】
本発明のフレキシブルコンテナを製造するには、周壁部2の導電性ターポリンと下蓋部4の導電性ターポリンの外周部4aとを高周波溶着するに際し、外周部4aの上部と周壁部2との間にアース線接続部7の下部を挟んで該周壁部2、アース線接続部7の下部及び外周部4aを高周波溶着すればよい。
【0043】
なお、このようにアース線接続部7の下部を周壁部2と外周部4aとの間で挟んで高周波溶着すると、アース線接続部7を挟んだ部分では厚さ(周壁部2の内面から外周部4aの外面までの厚み)が大きくなる。そして、図3に示されるように、このアース線接続部7を挟んだ部分と、その周囲との間に段差が生じる。この段差を小さくするために、アース線接続部7を構成するターポリンの厚さを、周壁部2及び下蓋部4を構成するターポリンの厚さよりも小さくすることが好ましい。
【0044】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、上記実施の形態では、アース線接続部7は略長方形状となっているが、自由片部分の先端側ほど幅が小さくなる台形等の形状とされてもよい。本発明では、アース線接続部7の接地間抵抗が大きくなった場合、アース線接続部7と延出部8とを重ねて高周波溶着する補修を行ってもよい。
【0045】
上記実施の形態では、アース線接続部7は下蓋部4と周壁部2との間に配置されているが、アース線接続部を上蓋部3と周壁部2との間に配置してもよい。この場合の構成は、図1,2において上下対称のものとなる。
【実施例
【0046】
[実施例1]
周壁部2及び下蓋部4を厚さ0.80mmのターポリン製とし、アース線接続部7を厚さ0.60mmのターポリン製とした図1~3に示すフレキシブルコンテナを製造した。アース線接続部7は一辺が50mmの正方形であり、基端側10mmの範囲を外周部4aと周壁部2との間に挟み込んで高周波溶着した。
【0047】
延出部8は、左右幅50mm、高さ10mmとした。
【0048】
このアース線接続部7を外周部4aと直角方向(図5のF方向)に294N(30kg)又は392N(40kg)で10回引っ張った(500N/minのスピードで荷重をかけ、294N、392Nに達したところで1回の引っ張りを終了した)。引っ張り前後に、アース線接続部7にアースクリップを装着して接地間抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2]
実施例1と同一のフレキシブルコンテナを製造し、引っ張り試験時の引っ張り方向をアース線接続部7及び延出部8が外周部4aに沿うように180°折り返される方向(図2において鉛直下向き方向)として引っ張り試験を行い、接地間抵抗を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例1]
アース線接続部を図6の構成(幅50mm、突出長さ40mm)としたこと以外は実施例2とそれぞれ同一の引っ張り試験を行った。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[考察]
表1の通り、実施例1,2では、アース線接続部を繰り返し引っ張っても接地間抵抗は全く又は殆ど増加しない。これに対し、比較例1では、引っ張りにより接地間抵抗が増大し、特にアース線接続部の折り返し角度が大きくなると接地間抵抗の増大することが認められる。
【符号の説明】
【0053】
1 フレキシブルコンテナ
2 周壁部
3 上蓋部
4 下蓋部
5 投入口
6 排出口
7,7’ アース線接続部
8 延出部
9 アースクリップ
10 基布及び非導電性樹脂層
11 導電性樹脂層
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7