(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】エアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2018244581
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】稲村 貴裕
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実公昭63-24145(JP,Y2)
【文献】特開2000-097011(JP,A)
【文献】実公昭58-015895(JP,Y2)
【文献】特表2003-532512(JP,A)
【文献】国際公開第2012/171840(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサによって圧縮されたエアを取り込むとともに、取り込んだエアを用いて緯入れ動作するエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置であって、
前記エアの取り込み部に設けられたエアフィルタと、
前記エアフィルタの下流側に設けられた圧力センサと、
前記エアフィルタを第1の流量でエアが流れているときに前記圧力センサが検出した第1のエア圧と、前記エアフィルタを前記第1の流量よりも多い第2の流量でエアが流れているときに前記圧力センサが検出した第2のエア圧との差に基づいて、前記エアフィルタの目詰まりを検出する目詰まり検出部と
を備えるエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置。
【請求項2】
前記第1の流量は、前記緯入れ動作を停止しているときのエア流量である
請求項1に記載のエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置。
【請求項3】
前記第2の流量は、前記緯入れ動作を実施しているときのエア流量である
請求項1または2に記載のエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置。
【請求項4】
緯入れ用ノズルと、
前記緯入れ用ノズルよりも緯糸搬送方向の下流側に配置された複数のサブノズルと
を備え、
前記第2の流量は、前記緯入れ動作を停止している状態において、前記緯入れ用ノズルおよび前記複数のサブノズルのうち少なくとも1つのノズルに対応するバルブの開放により、一定量のエアが前記エアフィルタを流れているときのエア流量である
請求項1に記載のエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置。
【請求項5】
前記目詰まり検出部が前記エアフィルタの目詰まりを検出した場合に警告処理を行う警告部を具備する
請求項1~4のいずれか一項に記載のエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機では、緯入れ用ノズルからエアを噴射させることにより、筬の長手方向に緯糸を飛走させて緯入れする。エアジェット織機には、エアコンプレッサによって圧縮されたエアを取り込むための取り込み部がある。この取り込み部にはエアフィルタが設けられる。また、エアフィルタにはエア配管が接続される。エア配管は、エアコンプレッサによって生成された圧縮エアをエアジェット織機へと供給するための配管である。エアフィルタは、エアに含まれる塵埃などを取り除くためのものである。
【0003】
エアジェット織機において、エアフィルタが目詰まりすると、エアフィルタをエアが通過するときの圧力損失が大きくなる。このため、エアフィルタの上流側のエア圧に比べて、エアフィルタの下流側のエア圧が低くなる。このように、エアフィルタの目詰まりによってエア圧が低下すると、たとえば、緯入れミスが発生したり、織物の品質が低下したりするおそれがある。
【0004】
そこで特許文献1には、エアジェット織機のエアフィルタの下流側に圧力スイッチを設け、この圧力スイッチを用いて、エアフィルタの目詰まりによる圧力低下を検出する技術が開示されている。特許文献1に開示された技術では、圧力スイッチの動作設定値を予め閾値として設定しておき、エアフィルタの目詰まりによる圧力低下によって、圧力スイッチの検出位置での圧力が閾値よりも低下した場合に、エアジェット織機の運転を自動的に停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術には、次のような課題がある。
一般に、エアジェット織機は1つの工場内に多数並べて設置される(たとえば、特許文献1の第1図を参照)。これに対して、圧縮エアの供給源となるコンプレッサは、多数のエアジェット織機によって共用される。このため、コンプレッサと各々のエアジェット織機とを接続するエア配管は、個々のエアジェット織機の設置位置にあわせて工場内に設置される。そうした場合、コンプレッサからエアジェット織機に至るまでの配管長は、工場のどの位置にエアジェット織機が設置されているかによって変わる。そして、エア配管を通してエアジェット織機に供給されるエアの圧力は、エア配管による圧力損失によって、コンプレッサからエアジェット織機に至るまでの配管長が長いほど低くなる。このため、コンプレッサによって生成される圧縮エアの圧力が同じでも、個々のエアジェット織機に供給されるエアの圧力に差が生じる。このような状況において、特許文献1に開示された技術を適用するには、圧力スイッチの動作設定値である閾値を、配管長が異なるエアジェット織機ごとに個別に設定する必要がある。ただし、エア配管による圧力損失がどの程度生じるかはエアジェット織機ごとに異なるため、工場に設置されるすべてのエアジェット織機に対して閾値を適切に設定することは困難である。また、エアコンプレッサによって生成される圧縮エアの圧力(以下、「元圧」ともいう。)は、エアコンプレッサの設定によって変化する場合がある。元圧が変化すると、各々のエアジェット織機に供給されるエアの圧力が変わるため、それに応じて圧力スイッチの動作設定値を変更する必要がある。このため、閾値の設定がますます困難なものとなる。
【0007】
こうした課題を解消する手段としては、エアフィルタの上流側と下流側の両方に圧力センサを設け、上流側の圧力センサの検出値と下流側の圧力センサの検出値との差に基づいて、エアフィルタの目詰まりを検出することが考えられる。この場合、配管長によるエア圧の違いや元圧の変化は、上流側の圧力センサの検出値と下流側の圧力センサの検出値の両方に影響を与えるが、それらの圧力差にはほとんど影響を与えない。このため、エアジェット織機ごとに閾値を個別に設定しなくても、エアフィルタの目詰まりを適切に検出することが可能となる。ただし、1台のエアジェット織機に必要とされる圧力センサの個数が増えるため、コストアップを招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、エアフィルタの目詰まりを検出するための閾値の設定が容易であるとともに、1つの圧力センサであってもエアフィルタの目詰まりを適切に検出することができる、エアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コンプレッサによって圧縮されたエアを取り込むとともに、取り込んだエアを用いて緯入れ動作するエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置であって、エアの取り込み部に設けられたエアフィルタと、エアフィルタの下流側に設けられた圧力センサと、エアフィルタを第1の流量でエアが流れているときに圧力センサが検出した第1のエア圧と、エアフィルタを第1の流量よりも多い第2の流量でエアが流れているときに圧力センサが検出した第2のエア圧との差に基づいて、エアフィルタの目詰まりを検出する目詰まり検出部とを備える。
【0010】
本発明に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置において、第1の流量は、緯入れ動作を停止しているときのエア流量であってもよい。
【0011】
本発明に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置において、第2の流量は、緯入れ動作を実施しているときのエア流量であってもよい。
【0012】
本発明に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置は、緯入れ用ノズルと、緯入れ用ノズルよりも緯糸搬送方向の下流側に配置された複数のサブノズルとを備え、第2の流量は、緯入れ動作を停止している状態において、緯入れ用ノズルおよび複数のサブノズルのうち少なくとも1つのノズルに対応するバルブの開放により、一定量のエアがエアフィルタを流れているときのエア流量であってもよい。
【0013】
本発明に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置は、前記目詰まり検出部が前記エアフィルタの目詰まりを検出した場合に警告処理を行う警告部を具備してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアフィルタの目詰まりを検出するための閾値の設定が容易であるとともに、1つの圧力センサであってもエアフィルタの目詰まりを適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエアジェット織機の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1のエアジェット織機が備えるエアフィルタと圧力センサの配置を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<エアジェット織機>
図1は、本発明の第1実施形態に係るエアジェット織機の構成を示す概略図である。
図1において、コンプレッサ101は、複数のエアジェット織機1によって共用されるものである。複数のエアジェット織機1は1つの工場内に並べて設置される。1つのコンプレッサ101にはエア配管102を介して複数のエアジェット織機1が接続されている。コンプレッサ101は、エアジェット織機1で使用される圧縮エアを生成するものである。エア配管102は、コンプレッサ101によって圧縮されたエアを複数のエアジェット織機1に分配して供給するものである。このため、エア配管102は、複数のエアジェット織機1の設置位置に応じて分岐している。なお、
図1においては、複数のエアジェット織機1のうちの1つを拡大して表示しているが、各々のエアジェット織機1の構成は共通である。
【0017】
エアジェット織機1は、緯糸チーズ2と、緯糸貯留装置4と、緯糸張力補正装置5と、タンデムノズル6と、メインノズル7と、複数のサブノズル8と、筬打ち用の筬9と、緯糸フィーラ10と、を備えている。また、エアジェット織機1は、メインバルブ12と、タンデムバルブ14と、メインタンク16と、メイン圧力計17と、メインレギュレータ18と、複数のサブバルブ22と、サブタンク23と、サブレギュレータ24と、サブ圧力計25と、エアフィルタ26と、圧力センサ27と、制御部31と、ファンクションパネル32と、を備えている。
【0018】
緯糸チーズ2は、緯入れに使用する緯糸11を緯糸貯留装置4に供給するものである。緯糸貯留装置4は、緯入れ前の緯糸を貯留するものである。緯糸貯留装置4は、測長ドラム41と、係止ピン42とを有する。緯糸貯留装置4は、緯糸チーズ2から緯糸貯留装置4へと供給される緯糸11を測長ドラム41に巻き付けて貯留する。係止ピン42は、緯入れに使用する緯糸11を係止可能なピンである。係止ピン42は、電磁ソレノイド43の駆動により、測長ドラム41の外周面に対して接近または離間する方向に動作する。電磁ソレノイド43の駆動は制御部31が制御する。係止ピン42は、測長ドラム41の外周面に接近する方向に動作することで、緯糸11を把持する。また、係止ピン42は、測長ドラム41の外周面から離間する方向に動作することで、緯糸11の把持を解除する。
【0019】
緯糸張力補正装置5は、緯糸11に過大な張力が加わらないよう、緯糸11に加わる張力を補正する装置である。タンデムノズル6およびメインノズル7は、緯入れ用ノズルを構成するものである。タンデムノズル6およびメインノズル7は、筬9よりも緯糸搬送方向の上流側に配置されている。複数のサブノズル8は、メインノズル7よりも緯糸搬送方向の下流側に配置されている。また、複数のサブノズル8は、筬9の長手方向に沿って配列されている。
【0020】
メインノズル7は、メインバルブ12を介してメインタンク16に接続され、タンデムバルブ14は、タンデムバルブ14を介してメインタンク16に接続されている。また、メインタンク16にはメイン圧力計17とメインレギュレータ18とが接続されている。メインレギュレータ18は、エアフィルタ26を通してエアジェット織機1に取り込まれた圧縮エア(以下、単に「エア」ともいう。)の圧力を調整するものである。メイン圧力計17は、メインレギュレータ18によって調整されたエアの圧力を測定するものである。メインタンク16は、メインレギュレータ18によって圧力が調整されたエアを貯留するものである。メインタンク16に貯留されたエアは、メインバルブ12を介してメインノズル7に供給されるとともに、タンデムバルブ14を介してタンデムノズル6に供給される。
【0021】
タンデムノズル6は、タンデムバルブ14の開閉状態に応じてエアを噴射または停止する。メインノズル7は、メインバルブ12の開閉状態に応じてエアを噴射または停止する。メインバルブ12とタンデムバルブ14は、それぞれ制御部31に電気的に接続されている。制御部31は、メインバルブ12の開閉動作とタンデムバルブ14の開閉動作をそれぞれ制御する。
【0022】
複数のサブノズル8は、タンデムノズル6およびメインノズル7からのエアの噴射によって筬9の長手方向に飛走する緯糸の飛走路に沿って並べられている。各々のサブノズル8は、タンデムノズル6およびメインノズル7からのエアの噴射によって搬送される緯糸11に対し、エアの噴射によって搬送力を付与するものである。筬9は、緯糸11が1ピック緯入れされるたびに1回ずつ筬打ち動作する。筬打ち動作は、筬9の揺動動作によって行われる。
【0023】
複数のサブノズル8は、筬9の長手方向で隣り合うサブノズル8を1つの組として設けられている。なお、サブノズル8の組数は織幅によって異なる。各組のサブノズル8は、それぞれに対応するサブバルブ22を介してサブタンク23に接続されている。サブタンク23にはサブレギュレータ24とサブ圧力計25とが接続されている。メインレギュレータ18およびサブレギュレータ24は、エアの圧力を調整するものである。サブ圧力計25は、サブレギュレータ24によって調整されたエアの圧力を測定するものである。サブタンク23は、サブレギュレータ24によって圧力が調整されたエアを貯留するものである。サブタンク23に貯留されたエアは、各々のサブバルブ22の開放により、各組のサブノズル8に分配して供給される。各々のサブバルブ22は、制御部31に電気的に接続される。制御部31は、各々のサブバルブ22の開閉動作を制御する。各組のサブノズル8は、それぞれに対応するサブバルブ22の開閉状態に応じてエアを噴射または停止する。
【0024】
緯糸フィーラ10は、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8からそれぞれエアを噴射して緯糸11を緯入れする際に、この緯糸11が予め設定された所定の位置に到達したか否かを検知するものである。所定の位置は、筬9の長手方向において、メインノズル7から遠い側となる緯入れ終端側に、織布の織幅に合わせて設定される。
【0025】
エアフィルタ26および圧力センサ27は、
図2に示すように、エアの取り込み部20に配置される。取り込み部20は、コンプレッサ101によって圧縮され、かつ、エア配管102を介して供給されるエアを取り込む部分である。取り込み部20に設けられたエアフィルタ26には、継手21を用いてエア配管102の一端が接続されている。エアフィルタ26は、コンプレッサ101からエア配管102を介して供給されるエアに含まれる塵埃などを取り除くためのものである。圧力センサ27は、エアフィルタ26の下流側に設けられている。具体的には、
図1に示すように、エアフィルタ26とメインレギュレータ18とを接続する配管28に圧力センサ27が設けられている。圧力センサ27は、エアフィルタ26の下流側でエアの圧力を検出するものである。
【0026】
制御部31は、エアジェット織機1の動作を制御するものである。制御部31は、たとえば、中央演算処理装置、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。ファンクションパネル32は、緯入れに関する各種の情報の入出力用として制御部31に接続されている。
【0027】
図3は、本発明の第1実施形態に係るエアジェット織機のフィルタ目詰まり検出装置の構成を示す概略図である。
図3に示すように、制御部31は、機台状態検知部51と、目詰まり検出部52と、警告部53とを備えている。また、ファンクションパネル32は、表示部61と、入力部62とを備えている。表示部61は、エアジェット織機1の使用者または管理者に対して各種の情報を表示するためのものである。入力部62は、エアジェット織機1の使用者または管理者が各種の情報を入力するためのものである。
【0028】
機台状態検知部51は、エアジェット織機1の機台の状態を検知するものである。機台状態検知部51は、エアジェット織機1の機台の状態として、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているか否かを検知する。機台状態検知部51の検知結果は、目詰まり検出部52に通知される。
【0029】
エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときとは、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8が、それぞれ筬9の揺動動作にあわせてエアの噴射と停止を繰り返しているときである。これに対して、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施していないときとは、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときである。制御部31は、たとえば緯糸切れが発生した場合に、エアジェット織機1の緯入れ動作を停止する。エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときは、筬9の揺動動作が停止状態に保持されるとともに、メインバルブ12、タンデムバルブ14およびサブバルブ22がそれぞれ閉じた状態に保持される。このため、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8は、いずれもエアの噴射を継続的に停止した状態に保持される。ただし、メインノズル7には図示しない微風回路が接続され、この微風回路により、緯入れ動作の停止中でもメインノズル7から微風が流れ続ける場合がある。微風回路は、緯糸11の姿勢を維持する目的で設けられるものである。
【0030】
目詰まり検出部52は、圧力センサ27の検出結果に基づいて、エアフィルタ26の目詰まりを検出するものである。ここで、エアフィルタ26を第1の流量でエアが流れているときに圧力センサ27が検出した第1のエア圧をP1とし、エアフィルタ26を第1の流量よりも多い第2の流量でエアが流れているときに圧力センサ27が検出した第2のエア圧をP2とする。そうした場合、目詰まり検出部52は、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2との差に基づいて、エアフィルタ26の目詰まりを検出する。目詰まり検出部52には、エアフィルタ26に目詰まりが発生したか否かを判断するための閾値が予め設定されている。この閾値は、エアジェット織機1の運転条件に応じて設定される。
【0031】
警告部53は、目詰まり検出部52がエアフィルタ26の目詰まりを検出した場合に所定の警告処理を行うものである。警告部53が行う警告処理としては、たとえば、ファンクションパネル32の表示部61に「エアフィルタが目詰まりしています。」といった警告メッセージ、あるいは「エアフィルタの交換時期です。」といった警告メッセージを表示する処理が考えられる。警告メッセージの内容は、エアジェット織機1の使用者または管理者が、エアフィルタ26に目詰まりが発生したことを認識できる内容であれば、どのような内容であってもよい。
【0032】
続いて、本発明の第1実施形態に係るエアジェット織機の動作について説明する。
まず、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施している場合は、制御部31は、1ピックごとに、係止ピン42による緯糸11の把持を解除するとともに、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22をそれぞれ所定のタイミングで開放する。これにより、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブバルブ22から、それぞれ所定のタイミングでエアが噴射し、このエアの噴射によって緯糸11が筬9の長手方向に搬送される。そして、緯糸11の先端が緯糸フィーラ10の検知位置に到達した段階で、1ピック分の緯入れが終了する。このようにエアジェット織機1が緯入れ動作を実施している間、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブバルブ22は、それぞれ所定の周期でエアの噴射と停止を繰り返す。また、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施している状態は、たとえば制御部31の信号出力部(図示せず)が機台運転信号を出力することで、機台状態検知部51により検知され、この検知結果が機台状態検知部51から目詰まり検出部52へと通知される。
【0033】
これに対して、たとえば緯糸切れの発生にともない、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止している場合は、制御部31は、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22をそれぞれ閉じた状態に保持する。これにより、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブバルブ22は、いずれもエアの噴射を停止した状態に保持される。また、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止している状態は、たとえば制御部31の信号出力部(図示せず)が機台停止信号を出力することで、機台状態検知部51により検知され、この検知結果が機台状態検知部51から目詰まり検出部52へと通知される。
【0034】
一方、目詰まり検出部52は、機台状態検知部51の検知結果に基づいて、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときに圧力センサ27が検出した第1のエア圧P1と、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときに圧力センサ27が検出した第2のエア圧P2とを読み取る。第1のエア圧P1および第2のエア圧P2を読み取る順番は、どちらが先でもかまわない。
【0035】
ここで、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときは、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22がそれぞれ閉じた状態に保持される。このため、緯入れ動作を停止しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量はごく少量、あるいは実質的にゼロになる。このようにエアフィルタ26を流れるエアの流量が少ない状況は、エアフィルタ26を第1の流量でエアが流れているときに相当する。そして、エアフィルタ26を第1の流量でエアが流れているときは、エアフィルタ26による圧力損失の影響がきわめて小さくなる。このため、エアフィルタ26の上流側のエア圧と、エアフィルタ26の下流側のエア圧とが、ほぼ同じ圧力となる。したがって、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときに圧力センサ27が検出する第1のエア圧P1は、エアフィルタ26の上流側のエア圧と同等の圧力値を示すことになる。
【0036】
これに対して、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときは、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22から、それぞれエアが周期的に噴射される。このため、緯入れ動作を実施しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量は、緯入れ動作を停止しているときのエア流量に比べて非常に多くなる。このようにエアフィルタ26を流れるエアの流量が多い状況は、エアフィルタ26を第2の流量でエアが流れているときに相当する。そして、エアフィルタ26を第2の流量でエアが流れているときは、エアフィルタ26による圧力損失の影響が非常に大きくなる。このため、エアフィルタ26の下流側のエア圧は、エアフィルタ26による圧力損失の影響で、エアフィルタ26の上流側のエア圧よりも低くなる。したがって、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときに圧力センサ27が検出する第2のエア圧P2は、エアフィルタ26による圧力損失分だけ低下した圧力値を示すことになる。また、エアフィルタ26による圧力損失は、エアフィルタ26に目詰まりが発生した場合に大きくなる。このため、エアフィルタ26の目詰まりによって低下したエア圧を、圧力センサ27を用いて検出することができる。
【0037】
ここで、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2について更に詳しく説明する。
まず、第1のエア圧P1は、コンプレッサ101が生成する圧縮エアの圧力から、エア配管102の配管長に応じた圧力損失分を差し引いたエア圧になる。また、第1のエア圧P1は、緯入れ動作の停止によってエアフィルタ26を流れるエアの流量が少ないときに圧力センサ27によって検出されるエア圧であるため、エアフィルタ26に目詰まりが発生していても、目詰まりの影響をほとんど受けない。このため、第1のエア圧P1は、コンプレッサ101によって生成される圧縮エアの圧力や、エア配管102の配管長に応じた圧力損失によって決まる。
【0038】
一方、第2のエア圧P2は、緯入れ動作の実施によってエアフィルタ26を流れるエアの流量が多いときに圧力センサ27によって検出されるエア圧であるため、エアフィルタ26の目詰まりの影響を強く受ける。また、第2のエア圧P2は、エアフィルタ26の上流側のエア圧から、エアフィルタ26の圧力損失分を差し引いたエア圧になる。このため、第2のエア圧P2は、コンプレッサ101によって生成される圧縮エアの圧力や、エア配管102の配管長に応じた圧力損失だけでなく、エアフィルタ26による圧力損失、ひいてはエアフィルタ26の目詰まりの発生状況によって決まる。したがって、エアフィルタ26に目詰まりが発生している場合、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2との差は、エアフィルタ26の目詰まりによる圧力損失の度合いを示すことになる。
【0039】
そこで、目詰まり検出部52は、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときに圧力センサ27が検出した第1のエア圧P1と、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときに圧力センサ27が検出した第2のエア圧P2との差ΔPaを、ΔPa=P1-P2の演算式によって求める。さらに、目詰まり検出部52は、演算により求めた圧力差ΔPaと、予め目詰まり検出のために設定された閾値とを比較する。そして、圧力差ΔPaが閾値以上である場合に、目詰まり検出部52は、エアフィルタ26に目詰まりが発生したと判断する。目詰まり検出部52の判断結果は、警告部53に通知される。
【0040】
警告部53は、目詰まり検出部52がエアフィルタ26の目詰まりを検出した場合に警告処理を行う。これにより、ファンクションパネル32の表示部61に警告メッセージが表示される。したがって、エアジェット織機1の使用者または管理者は、表示部61に表示される警告メッセージを確認することにより、エアフィルタ26に目詰まりが発生していることや、エアフィルタ26の交換が必要であることを知ることができる。
【0041】
本発明の第1実施形態においては、緯入れ動作の停止によってエアフィルタ26に少量のエアが流れているときに圧力センサ27によって検出される第1のエア圧P1と、緯入れ動作の実施によってエアフィルタ26に多量のエアが流れているときに圧力センサ27によって検出される第2のエア圧P2とを、目詰まり検出部52が圧力センサ27から読み出す。そして、目詰まり検出部52は、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2との差ΔPaに基づいて、エアフィルタ26の目詰まりを検出する構成になっている。この構成においては、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2との差ΔPaが、エアフィルタ26の目詰まりによる圧力損失を示す。また、第1のエア圧P1および第2のエア圧P2は、コンプレッサ101によって圧縮されるエアの圧力が変わると、それに応じて共に変わる。このため、第1のエア圧P1と第2のエア圧P2との差ΔPaは、コンプレッサ101によって圧縮されるエアの圧力が変化しても、ほとんど変わらない。また、第1のエア圧P1および第2のエア圧P2は、エア配管102の配管長に応じた圧力損失を共に含む。このため、目詰まり検出のための閾値をエア配管102の配管長に応じて変える必要がない。したがって、エアフィルタ26の目詰まりを検出するための閾値の設定が容易になる。また、1つの圧力センサ27を用いてエアフィルタ26の目詰まりを適切に検出することができる。
【0042】
続いて、本発明の第2実施形態について説明する。
本発明の第2実施形態においては、上述した第1実施形態と比較して、第2のエア圧を検出するときに適用される第2のエア流量が異なる。すなわち、上記第1実施形態においては、エアジェット織機1が緯入れ動作を実施しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量を第2のエア流量としている。これに対し、第2実施形態においては、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止している状態において、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8のうち少なくとも1つのノズルに対応するバルブの開放により、一定量のエアがエアフィルタ26を流れているときのエア流量を第2のエア流量としている。以下、詳しく説明する。
【0043】
まず、第2実施形態においては、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止しているときに、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22の開閉状態を制御部31が制御することにより、エアフィルタ26を流れるエアの流量を第1の流量から第2の流量へ、または第2の流量から第1の流量へと切り替える。
【0044】
その場合、第1の流量は、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止している状態において、制御部31が、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22をそれぞれ閉じた状態に保持しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量となる。このため、第1の流量は、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8が、いずれもエアの噴射を停止しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量となる。この場合、第1の流量は、ごく少量、あるいは実質的にゼロになる。
【0045】
一方、第2の流量は、エアジェット織機1が緯入れ動作を停止している状態において、制御部31が、メインバルブ12、タンデムバルブ14および複数のサブバルブ22のうち少なくとも1つのバルブを開放しているときにエアフィルタ26を流れるエアの流量となる。このため、第2の流量は、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8のうち少なくとも1つのノズルからのエアの噴射により、一定量のエアがエアフィルタ26を流れているときのエア流量となる。この場合、第2の流量は、第1の流量よりも多く、かつ、緯入れ動作時よりも少ない一定のエア流量となる。また、第2の流量は、第1の流量よりも多くなる。
【0046】
エアフィルタ26に第2の流量でエアを流すための好ましい例として、本第2実施形態においては、制御部31が、メインバルブ12およびタンデムバルブ14を共に閉じ状態とし、かつ、複数のサブバルブ22のうち一部のサブバルブ22のみを開放する。たとえば、
図1に示す6つのサブバルブ22のうち、3つのサブバルブ22のみを開放する。これにより、開放したサブバルブ22に対応するサブノズル8からのみエアが噴射され、このエアの噴射によって、緯入れ動作時よりも少ない一定量のエアがエアフィルタ26を流れる。なお、ここでは3つのサブバルブ22のみを開放するとしたが、これに限らず、1つ、2つ、または4つ以上のサブバルブ22を開放してもよい。また、メインバルブ12のみ、または、サブバルブ22のみを開放してもよい。また、開放するバルブの開度を緯入れ動作時よりも小さくなるように調整してもよい。
【0047】
一方、目詰まり検出部52は、機台状態検知部51が緯入れ動作の停止を検知している間に、エアフィルタ26を第1の流量でエアが流れているときに圧力センサ27が検出した第1のエア圧P11と、エアフィルタ26を第2の流量でエアが流れているときに圧力センサ27が検出した第2のエア圧P12とを読み取る。このとき、目詰まり検出部52が読み取る第1のエア圧P11は、エアフィルタ26をごく少量のエアが流れているとき、あるいはエアフィルタ26をほとんどエアが流れていないときに、圧力センサ27によって検出されるエア圧となる。また、目詰まり検出部52が読み取る第2のエア圧P12は、緯入れ動作時よりも少ない一定量のエアがエアフィルタ26を流れているときに、圧力センサ27によって検出されるエア圧となる。
【0048】
次に、目詰まり検出部52は、上述のように読み取った第1のエア圧P11と第2のエア圧P12との差ΔPbを、ΔPb=P11-P12の演算式によって求める。さらに、目詰まり検出部52は、演算により求めた圧力差ΔPbと、予め目詰まり検出のために設定された閾値とを比較する。そして、圧力差ΔPbが閾値以上である場合に、目詰まり検出部52は、エアフィルタ26に目詰まりが発生したと判断する。一方、警告部53は、目詰まり検出部52がエアフィルタ26の目詰まりを検出した場合に警告処理を行う。
【0049】
本発明の第2実施形態においては、タンデムノズル6、メインノズル7および複数のサブノズル8のうち少なくとも1つのノズルに対応するバルブの開放により、一定量のエアがエアフィルタ26を流れているときのエア流量を第2のエア流量としている。そして、エアフィルタ26を第2のエア流量でエアが流れているときに圧力センサ27が検出した第2のエア圧P12を適用して、エアフィルタ26の目詰まりを検出する構成を採用している。この構成においては、エアジェット織機1の運転条件の違いによらず、一定量のエアがエアフィルタ26を流れているときに第2のエア圧P12を検出する。このため、エアジェット織機1の運転条件の影響を受けることなく、エアフィルタ26の目詰まりを検出することができる。
【0050】
<変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0051】
たとえば、上記実施形態においては、警告部53が行う警告処理として、ファンクションパネル32の表示部61に警告メッセージを表示する処理を例示したが、これに限らず、たとえば、警告メッセージを音声によって出力してもよいし、警告メッセージの表示と音声出力を並行して行ってもよい。また、エアジェット織機1の使用者または管理者が携帯する携帯機器に警告メッセージをメール送信によって出力する処理を適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては、緯糸切れが発生した場合に緯入れ動作を停止する例を挙げたが、緯入れ動作を停止するきっかけは緯糸切れに限らず、他の要因(例えば、経糸切れや経糸ビーム交換時など)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 エアジェット織機、6 タンデムノズル(緯入れ用ノズル)、7 メインノズル(緯入れ用ノズル)、8 サブノズル、12 メインバルブ、14 タンデムバルブ、20 取り込み部、22 サブバルブ、26 エアフィルタ、27 圧力センサ、52 目詰まり検出部、53 警告部。