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  • 特許-真空断熱材用外装材及び真空断熱材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】真空断熱材用外装材及び真空断熱材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20190101AFI20230418BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230418BHJP
   B32B 27/06 20060101ALI20230418BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20230418BHJP
   B32B 9/04 20060101ALI20230418BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B32B7/02
B32B15/08 E
B32B27/06
B32B9/00 A
B32B9/04
F16L59/065
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002467
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2020110956
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 花奈子
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351405(JP,A)
【文献】特開2014-126098(JP,A)
【文献】特開2016-017557(JP,A)
【文献】特開2003-262296(JP,A)
【文献】特開2001-018340(JP,A)
【文献】特開2011-168315(JP,A)
【文献】特開2018-058366(JP,A)
【文献】特開2016-043949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
F16L59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア層とシーラント層とをその層構成中に含み、かつ、JIS K7125に規定されるループスティフネスが、MD方向(製膜時の樹脂の流れ方向)とTD方向(MD方向に直交する方向)の両者について、70mN/15mm以下であることを特徴とする真空断熱材用外装材。
【請求項2】
前記ガスバリア層が、金属を蒸着した樹脂フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外装材。
【請求項3】
前記ガスバリア層が、無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外装材。
【請求項4】
前記請求項1~3のいずれかに記載の真空断熱材用外装材により、コア材を真空包装して成ることを特徴とする真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫や低温コンテナあるいは住居の外壁材などに取り付けられる真空断熱材の真空断熱材用外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫や低温コンテナあるいは住居の外壁材などには、従来から種々の断熱材が用いられており、特に、断熱性能の優れた断熱材として、コア材2を外装材1内に封入し、内部を真空排気して外装材1をヒートシールすることにより密封した構成の真空断熱材Aが使用されている(図2参照)。
【0003】
この外装材1は、外部からのガスの侵入を防ぎ、内部を長期間真空状態に保持するために、ガスバリア性に優れたものである必要がある。そこで、従来、高いガスバリア性を持たすために、外装材1のガスバリア層として7~15μm程度の厚さの金属アルミニウム箔や金属又は無機物を蒸着した蒸着フィルムを含む積層フィルムが主として用いられてきた。
【0004】
このように断熱材Aはコア材2を外装材1で真空包装して構成されるため、外装材1はコア材2の外形に沿って変形する。このため、図2に示すように、外装材1には微細な凹凸が多数形成され、この凹凸によって屈曲される。外装材1中の金属アルミニウム箔や蒸着層は、この微細な多数の屈曲によりクラックやピンホールが発生し、ガスバリア性が著しく低下するという問題があり、長期間に亘って断熱材Aの内部を真空状態に保っておくことが難しかった。
【0005】
このクラックやピンホールの発生の低減化をはかり、外装材1の内部の真空状態を長期に渡って維持する試みが行われている。例えば、層構成が、外側から順に、第1の延伸ナイロンフィルム、第2の延伸ナイロンフィルム、金属箔等からなるガスバリア層、熱溶着層であり、前記第1、第2の延伸ナイロンフィルム間に接着層が設けられている外装材1があった(特許文献1)。これら延伸ナイロンフィルムは強靭であるため、前述のような微細な屈曲によってもクラックやピンホールを発生することがないのである。
【0006】
しかしながら、断熱材Aを長期間使用した際にその断熱性が低下する原因はこれだけではなく、例えば、この長期間の間の温度や湿度の変動によってガスバリア層にクラックやピンホールを発生することがある。このような長期間の使用に伴って発生するクラックやピンホールを原因として、その断熱性が低下することがあるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3482408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、コア材を外装材で真空包装する工程はもちろん、こうして製造した断熱材を長期間使用した際にも、その断熱性を維持することができる真空断熱材用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、ガスバリア層とシーラント層とをその層構成中に含み、かつ、JIS K7125に規定されるループスティフネスが、MD方向(製膜時の樹脂の流れ方向)とTD方向(MD方向に直交する方向)の両者について、70mN/15mm以下であることを特徴とする真空断熱材用外装材である。
【0010】
次に、請求項2に記載の発明は、前記ガスバリア層が、金属を蒸着した樹脂フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外装材である。
【0011】
次に、請求項3に記載の発明は、前記ガスバリア層が、無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用外装材である。
【0012】
次に、請求項4に記載の発明は、前記請求項1~3のいずれかに記載の真空断熱材用外装材により、コア材を真空包装して成ることを特徴とする真空断熱材である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の真空断熱材用外装材はJIS K7125に規定されるループスティフネスが、いずれの方向についても、70mN/15mm以下であり、このため、長期間の使用によって温度や湿度の変動が生じたときでも、この温度・湿度変動に伴う伸縮や屈曲に柔軟に追従することができる。そして、このため、ガスバリア層にクラックやピンホールを生じることがなく、断熱材の断熱性を維持することができる。
【0014】
なお、真空断熱材用外装材のMD方向(製膜時の樹脂の流れ方向)とTD方向(MD方向に直交する方向)の両者について、そのループスティフネスが70mN/15mm以下であれば、この真空断熱材用外装材のループスティフネスはいずれの方向についても70mN/15mm以下であると理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)~(e)は、それぞれ、本発明の外装材の例を示す断面説明図である。
図2図2は断熱材の例に係り、図2(a)はその斜視説明図、図2(b)はその断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る外装材は、コア材を真空包装して断熱材を製造する際に使用するもので、完成した真空断熱材の外面を構成する。
【0017】
この外装材は、その層構成中に、ガスバリア層とシーラント層とを含む。外装材は、その層構成中に、一層のガスバリア層を含んでいてもよいが、多数層のガスバリア層を含むものであってもよい。また、この他、その他の層を含んでいてもよい。
【0018】
図1(a)は、一層のガスバリア層11とシーラント層12とで構成された外装材1aを示す断面説明図である。
【0019】
また、図1(b)は、その層構成中に、一層のガスバリア層11とシーラント層12に加えて、その他の層として基材フィルム10を含む外装材1bを示すもので、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層されている。
【0020】
また、図1(c)は、その層構成中に、二層のガスバリア層11,11とシーラント層12に加えて、その他の層として基材フィルム10を含む外装材1cを示すもので、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層されている。
【0021】
また、図1(d)は、その層構成中に、三層のガスバリア層11,11,11とシーラント層12に加えて、その他の層として基材フィルム10を含む外装材1dを示すもので、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層されている。
【0022】
また、図1(d)は、その層構成中に、二層のガスバリア層11,11とシーラント層12に加えて、その他の層として基材フィルム10を含む外装材1dを示すもので、断熱材を製造した際の外面側から、ガスバリア層11、基材フィルム10、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層されている。
【0023】
基材フィルム10としては、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリアミド系樹脂フィルム、ビニルアルコール系樹脂フィルム等を使用することができる。ポリオレフィン系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のフィルムを例示できる。ポリエステル系樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のフィルムを例示できる。ポリアミド系樹脂フィルムとしては、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-12等のフィルムを挙げることができる。また、ビニルアルコール系樹脂フィルムとしては、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のフィルムが挙げられる。
【0024】
次に、ガスバリア層11,11,11,11は、真空断熱材Aの内部に外気が侵入することを防止する機能を有するものである。このガスバリア層11,11,11,11としては、例えば、金属箔、金属又は無機酸化物を蒸着した樹脂フィルムを使用できる。
【0025】
金属箔としては、その代表例としてアルミニウム箔を例示することができる。
【0026】
樹脂フィルム上に蒸着する金属としては例えばアルミニウムを挙げることができる。また、樹脂フィルム上に蒸着する無機酸化物としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を挙げることができる。蒸着基材となる樹脂フィルムとしては、例えば、延伸ポリエステルフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを使用することができる。なお、蒸着基材と蒸着層との密着性を向上させるため、蒸着基材に金属又は無機酸化物を蒸着するに先立ち、蒸着基材の蒸着面に各種表面処理を施すことが望ましい。例えば、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理等である。
【0027】
シーラント層12としては、各種のポリエチレン系の樹脂やポリプロピレンなどが使用することができる。特に、密度が0.935g/cm以下の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。厚みは30~80μmが好ましい。密度が0.935g/cmより高く、例えば、密度が0.94g/cmと高ければ、耐屈曲性が悪くなり、好ましくない。
【0028】
そして、これら基材フィルム10、ガスバリア層11,11,11,11、シーラント層13は、公知のウレタン系接着剤を使用してドライラミネートすることにより、積層一体化して、本発明の外装材1を製造することができる。
【0029】
図1(a)~(e)に示したように、本発明の外装材1は種々の層構成を採ることができるが、いずれの場合であっても、JIS K7125に規定されるループスティフネスが、そのいずれの方向についても、70mN/15mm以下である必要がある。すなわち、本発明の外装材1は、MD方向(製膜時の樹脂の流れ方向)のループスティフネスが70mN/15mm以下であり、しかも、TD方向(MD方向に直交する方向)のループスティフネスも70mN/15mm以下である必要がある。
【0030】
後述する実施例から分かるように、いずれの方向についてもループスティフネスを70mN/15mm以下とすることにより、コア材を外装材1で真空包装する工程はもちろん、こうして製造した断熱材を長期間使用した際にも、その断熱性を維持することができる。なお、MD方向のループスティフネスとTD方向のループスティフネスのうち、その一方がこれより大きい場合には、断熱材を長期間使用するに伴ってその断熱性が低下する。
【0031】
この外装材1を使用して袋を製袋し、その開口部からコア材2を収納した後、袋内部を真空吸引しながら、開口部をヒートシールして密封することにより、真空断熱材Aを製造することができる。コア材2としてはガラス繊維などの無機系繊維やポリスチレン繊維などの有機系繊維を用いることができる。また、粉末を固めてボード化したものや、発泡樹脂を用いることもできる。また、発泡パーライト等の粉末を用いてもよい。
【0032】
なお、この真空断熱材Aの内部の真空度は5Pa以下とすることが望ましい。真空断熱材A内部の空気の対流を防止して、断熱性能を向上させることができるからである。
【0033】
また、この真空断熱材Aの熱伝導率は、25℃環境下で10mW/m・K以下であることが望ましい。さらに望ましくは、5mW/m・K以下、あるいは3mW/m・K以下である。
【実施例
【0034】
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
【0035】
(実施例1)
この例は、図1(c)に示すように、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1cの例である。
【0036】
すなわち、基材フィルム10として、厚さ25μmのポリアミドフィルムを使用した。ガスバリア層11及びガスバリア層11は、いずれも、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである。また、シーラント層12としては、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。
【0037】
この外装材1cを使用して、370mm×320mmの大きさの袋を製袋し、その開口部からコア材2を収納した後、袋内部を真空吸引しながら、開口部をヒートシールして密封することにより、真空断熱材Aを製造した。コア材2は、290mm×250mmのガラス繊維である。また、真空断熱材Aは厚さ5mm、縦200mm、横200mmの大きさである。
【0038】
(実施例2)
この例も、実施例1と同様に、図1(c)に示すように、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1cの例である。実施例1との相違は、ガスバリア層11が、厚さ15μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである点であり、これ以外は実施例1と同様である。
【0039】
(実施例3)
この例は、図1(d)に示すように、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1dの例である。
【0040】
基材フィルム10として、厚さ25μmのポリアミドフィルムを使用した。ガスバリア層11,11,11は、いずれも、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである。また、シーラント層12としては、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。
【0041】
その他の点については、実施例1と同様である。
【0042】
(実施例4)
この例は、図1(e)に示すように、断熱材を製造した際の外面側から、ガスバリア層11、基材フィルム10、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1dの例である。
【0043】
ガスバリア層11としては、二軸延伸ポリエステルフィルムを蒸着基材として、このフィルム上に酸化アルミニウムを蒸着した無機酸化物蒸着フィルムである。また、基材フィルム10として、厚さ25μmのポリアミドフィルムを使用した。ガスバリア層11は、厚さ15μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである。また、シーラント層12は、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムである。
【0044】
その他の点については、実施例1と同様である。
【0045】
(比較例1)
この例は、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1dの例である。
【0046】
基材フィルム10としては、厚さ25μmのポリアミドフィルムを使用した。ガスバリア層11,11,11は、いずれも、厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである。また、シーラント層12としては、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。
【0047】
その他の点については、実施例1と同様である。
【0048】
(比較例2)
この例も、断熱材を製造した際の外面側から、基材フィルム10、ガスバリア層11、ガスバリア層11、ガスバリア層11、シーラント層12の順に積層した外装材1dの例である。
【0049】
基材フィルム10としては、厚さ25μmのポリアミドフィルムを使用した。ガスバリア層11,11,11は、いずれも、厚さ18μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを蒸着基材として、このフィルム上に金属アルミニウムを蒸着した金属蒸着フィルムである。また、シーラント層12としては、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを使用した。
【0050】
その他の点については、実施例1と同様である。
【0051】
(評価)
実施例1~4及び比較例1~2の各外装材について、JIS K7125に規定されるループスティフネス(mN/15mm)を測定した。また、各外装材について、屈曲試験前後の酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定した。そして、これら各外装材を使用した真空断熱材の熱伝導率(W/m・K)を経時的に測定し、外装材のループスティフネスと酸素透過度及び真空断熱材の熱伝導率との相関関係を考察した。なお、各測定方法は次のとおりである。
【0052】
<ループスティフネスの測定方法>
各外装材を幅15mmのテープ状に切断し、このテープ状外装材の端部同士を接合してループ状とした。ループ長は100mmである。そして、測定装置として、(株)東洋精機製作所のLoop Stiffness Tester DAを使用して、JIS K7125に規定されるループスティフネス(mN/15mm)を測定した。
【0053】
なお、この測定は、各外装材のMD方向(製膜時の樹脂の流れ方向)とTD方向(MD方向に直交する方向)の両者について行った。
【0054】
<酸素透過度の測定方法>
30℃、70%RH.の条件で、測定装置としてMOCON社のOX-TRANを使用して、屈曲試験前の酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定した。
【0055】
また、ゲルボフレックステスターを使用して、常温で200回屈曲試験を施した後、同様にMOCON社のOX-TRANを使用して、屈曲試験後の酸素透過度(cc/m・day・atm)を測定した。
【0056】
<熱伝導率の測定方法>
各真空断熱材を90℃で保存し、経時的にその熱伝導率(W/m・K)を測定した。湿度は成り行きに任せて変動させた。なお、測定装置は英弘精機(株)のHC-074で、測定条件はJIS A 1412-3に従った。
【0057】
(測定結果及び考察)
測定結果は表1のとおりである。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1~4の外装材は、そのループスティフネスが、MD方向とTD方向のいずれについても、70mN/15mm以下である。
【0060】
これに対し、比較例1の外装材においては、そのMD方向のループスティフネスは70mN/15mm以下であるが、TD方向のループスティフネスは70mN/15mmを超えている。
【0061】
また、比較例2の外装材は、そのループスティフネスが、MD方向とTD方向のいずれについても、70mN/15mmを超えている。
【0062】
そこで、このようにループスティフネスが互いに異なる実施例1~4,比較例1~2の外装材について、まず、その酸素透過度を相互に比較すると、屈曲試験前の酸素透過度については、これら実施例1~4,比較例1~2の外装材の間に有意な相違が見られないの
にも拘らず、屈曲試験前の酸素透過度については、MD方向とTD方向のループスティフネスがいずれも70mN/15mm以下の実施例1~4の外装材の酸素透過度は微増しているに過ぎないのに対し、比較例1~2の酸素透過度は大きく増大している。
【0063】
このことから、MD方向とTD方向のループスティフネスがいずれも70mN/15mm以下の外装材は、屈曲によるガスバリア性の低下がわずかであり、そのガスバリア性を維持できることが理解できる。
【0064】
次に、実施例1~4,比較例1~2の真空断熱材の熱伝導率を相互に比較すると、保存開始時(初期)の熱伝導率はいずれの真空断熱材でも優れているが、比較例1~2の真空断熱材の熱伝導率は、保存期間の経過に伴って増大しており、1ヶ月経過後には保存開始時(初期)の4~5倍に達している。一方、実施例1~4の真空断熱材の熱伝導率は、1ヶ月の保存期間を通じてほとんど変化しない。
【0065】
この結果から、MD方向とTD方向のループスティフネスがいずれも70mN/15mm以下の外装材は、長期間の使用によっても、その断熱性を維持できることが理解できる。
【0066】
なお、屈曲試験前後の酸素透過度の結果と熱伝導率の結果とは相互に技術的関係を有するものと推測できる。すなわち、真空断熱材の保存にあたって、その湿度を成り行きに任せて変動させたため、この湿度変化に伴って各外装材は屈曲する。MD方向とTD方向のループスティフネスのうち一方又は双方が70mN/15mm以下の外装材(比較例1~2)は屈曲によってガスバリア性が低下するため、保存期間が長くなるほどガスバリア性が低下して真空断熱材の断熱性が低下する。一方、MD方向とTD方向のループスティフネスがいずれも70mN/15mm以下の外装材(実施例1~4)は、屈曲によってもガスバリア性が低下しないため、保存期間が長くなっても真空断熱材がその断熱性を維持できるのである。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,1b,1c,1d,1e:外装材
10:基材フィルム
11,11,11,11:ガスバリア層
12:シーラント層
2:コア材
A:真空断熱材
図1
図2