(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】マニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20230418BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20230418BHJP
G02B 21/32 20060101ALI20230418BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C12M1/00 A
B25J13/08 A
G02B21/32
C12M1/26
(21)【出願番号】P 2019015016
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ハウス
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸明
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】倉持 尚史
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-524291(JP,A)
【文献】特開2005-118905(JP,A)
【文献】特開平06-109979(JP,A)
【文献】特開2007-151489(JP,A)
【文献】特開2018-068169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
B25J 13/08
G02B 21/32
C12M 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小対象物が収容される容器と、
前記容器が載置される試料ステージと、
前記微小対象物を採取する採取用ピペットと、
前記試料ステージ及び前記採取用ピペットを制御する駆動制御部と、
前記容器の底面において測定された複数の検査点を近似する平面の近似式を算出する算出部と、
前記近似式を記憶する記憶部と、
を備え、
前記駆動制御部は、前記採取用ピペットを、平面視で長手方向が所定方向に向くように配置し、前記試料ステージの載置面に平行かつ前記所定方向に直交する方向に所定の範囲で往復移動させている状態で、前記採取用ピペットを前記載置面の法線方向に移動させ、
前記記憶部は、前記採取用ピペットの先端が前記容器の底面の予め設定された
前記検査点に接触することで前記採取用ピペットの長手方向が平面視で前記所定方向から傾いた位置の座標情報に基づいて、前記検査点の法線方向の座標を記憶する
マニピュレーションシステム。
【請求項2】
前記算出部は、前記記憶部に記憶された前記近似式に基づいて、前記微小対象物の位置座標を算出する
請求項
1に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記駆動制御部が前記採取用ピペットを移動させている間に、前記採取用ピペットの先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の前記採取用ピペットの先端の座標を前記検査点の座標として記憶する
請求項1
又は2に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項4】
前記採取用ピペットは、管状の中央部と、前記中央部の一端に接続する管状の後方部と、前記中央部の他端に接続する管状の先端部と、を含み、前記中央部の長手方向と前記後方部の長手方向とは互いに交差し、前記中央部の長手方向と前記先端部の長手方向とは、互いに交差し、前記中央部の長手方向と前記後方部の長手方向とが成す鈍角の第1屈曲角度は、前記中央部の長手方向と前記先端部の長手方向とが成す鈍角の第2屈曲角度より大きく、
前記記憶部は、前記先端部の開口部を有する先端が前記容器の底面の予め設定された検査点に接触することで前記先端部の長手方向が平面視で前記所定方向から傾いた位置の座標情報に基づいて、前記検査点の法線方向の座標を記憶する
請求項1から
3のいずれか1項に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項5】
前記先端部は、長手方向が前記載置面に対して所定の傾斜角度傾いている
請求項
4に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項6】
前記先端部は、前記先端が前記載置面に接触した際に、たわむことが可能である
請求項
5に記載のマニピュレーションシステム。
【請求項7】
微小対象物が収容される容器と、
前記容器が載置される試料ステージと、
前記微小対象物を採取する採取用ピペットと、
を備えるマニピュレーションシステムの駆動方法であって、
前記採取用ピペットを、平面視で長手方向が所定方向に向くように配置するステップと、
前記試料ステージの載置面に平行かつ前記所定方向に直交する方向に所定の範囲で往復移動を開始するステップと、
前記採取用ピペットを前記載置面の法線方向に移動させるステップと、
前記採取用ピペットの長手方向が平面視で前記所定方向から傾いたことで前記容器の底面に予め設定された検査点に前記採取用ピペットの先端が接触したことを確認するステップと、
前記検査点に接触した際の前記採取用ピペットの先端の座標を前記検査点の座標として記憶するステップと、
複数の前記検査点の座標に基づいて、複数の前記検査点を近似する平面の近似式を算出するステップと、
前記近似式を記憶するステップと、
を含むマニピュレーションシステムの駆動方法。
【請求項8】
前記近似式に基づいて前記微小対象物の位置座標を算出するステッ
プを含む
請求項
7に記載のマニピュレーションシステムの駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ医薬品の原料となる細胞は、単一細胞に由来していることが求められるため、培養液中から特定の細胞を選別し回収することが求められる。特許文献1には、微小対象物を1個ずつ採取することが可能なマニピュレーションシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、採取される細胞が入れられる容器として、例えば、シャーレ、ディッシュ及びウェルプレート等が知られている。このような容器は、一般的に射出成型によって製造されるため、底面を平坦形状とすることが難しい。このため、細胞を自動採取する際に、採取用器具の先端と容器の底面上の細胞との高さが一致せず、安定した自動採取が困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容器内の微小対象物を安定的に自動採取することができるマニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムは、微小対象物が収容される容器と、前記容器が載置される試料ステージと、前記微小対象物を採取する採取用ピペットと、前記試料ステージ及び前記採取用ピペットを制御する駆動制御部と、前記容器の底面において測定された複数の検査点を近似する平面の近似式を算出する算出部と、前記近似式を記憶する記憶部と、を備える。
【0007】
これによれば、近似された仮想平面は、実際の容器の底面から平均化されるので、実際の底面との間の誤差が小さくなる。このため、底面の平面度が精密な高価な容器を使用する必要がないので、追加の研削仕上げ工程及び特注品の使用によるコストの発生を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記算出部は、前記記憶部に記憶された前記近似式に基づいて、前記微小対象物の位置座標を算出する。これによれば、容器の底面に存在する微小対象物の高さに採取用ピペットの先端を好適に位置合わせできるので、容器内の微小対象物を安定的に自動採取することができる。
【0009】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記近似式は、前記採取用ピペットの先端を前記容器の底面に接触させることによって測定された前記複数の検査点の座標情報に基づいて算出される。これによれば、実際に微小対象物を採取する採取用ピペットが容器の底面に接触した位置に基づいて近似式を算出するので、微小対象物を採取する際に、より好適に採取用ピペットの先端を微小対象物に位置合わせすることができる。
【0010】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記駆動制御部は、前記採取用ピペットを前記試料ステージの載置面の法線方向に移動させ、前記記憶部は、前記採取用ピペットの先端が前記容器の底面に接触した位置の座標情報に基づいて、前記検査点の法線方向の座標を記憶する。これによれば、実際に微小対象物を採取する採取用ピペットが容器の底面に接触した位置に基づいて近似式を算出するので、微小対象物を採取する際に、より好適に採取用ピペットの先端を微小対象物に位置合わせすることができる。
【0011】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記駆動制御部は、前記採取用ピペットを前記載置面に平行な一方向に所定の範囲で往復移動させている状態で、前記採取用ピペットを前記載置面の法線方向に移動させる。これによれば、採取用ピペットが容器の底面に接触した際に、採取用ピペットの先端の挙動が変化する。このため、オペレータは、採取用ピペットの先端が容器の底面に接触したことを確認することができる。
【0012】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記記憶部は、前記駆動制御部が前記採取用ピペットを移動させている間に、前記採取用ピペットの先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の前記採取用ピペットの先端の座標を前記検査点の座標として記憶する。これによれば、実際に微小対象物を採取する採取用ピペットが容器の底面に接触した位置に基づいて近似式を算出するので、微小対象物を採取する際に、より好適に採取用ピペットの先端を微小対象物に位置合わせすることができる。
【0013】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムにおいて、前記採取用ピペットは、長手方向が前記試料ステージの載置面に対して所定の傾斜角度傾いている先端部を含む。これによれば、採取用ピペットが容器の底面に接触した際に、採取用ピペットの先端がたわみ、近似された仮想平面と実際の底面との間の誤差を許容することができる。
【0014】
本発明の一態様に係るマニピュレーションシステムの駆動方法は、微小対象物が収容される容器と、前記容器が載置される試料ステージと、前記微小対象物を採取する採取用ピペットと、を備えるマニピュレーションシステムの駆動方法であって、前記容器の底面に予め設定された複数の検査点にそれぞれ前記採取用ピペットの先端を接触させるステップと、前記複数の検査点にそれぞれ接触した際の前記採取用ピペットの先端の座標を前記検査点の座標として記憶するステップと、前記複数の検査点の座標に基づいて、複数の検査点を近似する平面の近似式を算出するステップと、前記近似式に基づいて前記微小対象物の位置座標を算出するステップと、を含む。
【0015】
これによれば、近似された仮想平面は、実際の容器の底面から平均化されるので、実際の底面との間の誤差が小さくなる。このため、微小対象物を採取する際に、容器の底面に存在する微小対象物の高さに位置合わせできるよう、採取用ピペットの先端の位置を好適に制御できる。したがって、容器内の微小対象物を安定的に自動採取することができる。また、底面の平面度が精密な高価な容器を使用する必要がないので、追加の研削仕上げ工程及び特注品の使用によるコストの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器内の微小対象物を安定的に自動採取するマニピュレーションシステム及びマニピュレーションシステムの駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すマニピュレーションシステムの一部を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、検出部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、記憶部の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、表示部の画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る採取用ピペットの構成例を示す側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る採取用ピペットの先端部を拡大して示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る採取用ピペットの先端部を拡大して示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る容器の一例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施形態の採取用ピペットの動作を説明する説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態の採取用ピペットの動作を説明する説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態の動作の一例を示すフローチャート図である。
【
図15】
図15は、実施形態の動作の一例を示すフローチャート図である。
【
図16】
図16は、実施形態のウェル底面の形状の一部を拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すマニピュレーションシステムの一部を拡大して示す斜視図である。
図3は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示す模式図である。
図1から
図3に示すマニピュレーションシステム100は、容器38に収容された複数個の微小対象物のうちから、所望の微小対象物を1個ずつ分取する装置である。微小対象物は、例えば、細胞である。
【0020】
図1から
図3に示すように、マニピュレーションシステム100は、基台1と、採取用ピペット10と、ピペット保持部15と、マニピュレータ20と、試料ステージ30と、第1撮像装置45を含む第1顕微鏡ユニット40と、コントローラ50と、第2撮像装置65を含む第2顕微鏡ユニット60と、第3撮像装置75と、ジョイスティック57と、入力部58と、表示部80と、を備える。実施形態において、X軸方向は、試料ステージ30の載置面30aに平行な一方向である。実施形態において、Y軸方向は、載置面30aに平行で、かつ、X軸方向と直交する方向である。実施形態において、Z軸方向は、載置面30aの法線方向である。基台1の配置は、例えば、載置面30aが鉛直方向と直交する水平面となるように調整されている。
【0021】
採取用ピペット10は、細胞を採取するための管状器具である。採取用ピペット10は、例えば、針状である。採取用ピペット10の材質は、例えば、ガラスである。採取用ピペット10の先端には、細胞を採取するための開口部103aが設けられている。採取用ピペット10の詳細は、後述にて
図8、
図9及び
図10を参照して説明する。
【0022】
ピペット保持部15は、採取用ピペット10を保持するための管状器具である。ピペット保持部15の材質は、例えば、ガラス又は金属である。ピペット保持部15の一端は、採取用ピペット10に連結している。ピペット保持部15の他端は、マニピュレータ20の電動マイクロポンプ29に接続されている。ピペット保持部15及び採取用ピペット10の内部圧力は、電動マイクロポンプ29から供給される圧力Pにより減圧又は増圧される。採取用ピペット10の内部圧力が常圧よりも低いとき、採取用ピペット10は先端の開口部103a(
図9参照)から細胞を吸引して採取することができる。採取用ピペット10の内部圧力が常圧よりも高いとき、採取用ピペット10は、採取した細胞を採取用ピペット10の先端の開口部103aから外部へ吐出(放出)することができる。ピペット保持部15は、後述の連結部28を介してマニピュレータ20に連結されている。
【0023】
マニピュレータ20は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に動作することによって、ピペット保持部15及び採取用ピペット10を動作させることができる。マニピュレータ20は、X軸テーブル21と、Y軸テーブル22と、Z軸テーブル23と、駆動装置26、27(例えばモータ)と、連結部28、71と、電動マイクロポンプ29と、を備える。X軸テーブル21は、駆動装置26が駆動することによって、X軸方向に移動する。Y軸テーブル22は、駆動装置26が駆動することによって、Y軸方向に移動する。Z軸テーブル23は、駆動装置27が駆動することによって、Z軸方向に移動する。駆動装置26、27と、電動マイクロポンプ29は、コントローラ50に接続されている。
【0024】
連結部28は、ピペット保持部15をマニピュレータ20に連結している。連結部71は、第1顕微鏡ユニット40の鏡筒411をマニピュレータ20に連結している。連結部28、71は、例えば金属製である。
【0025】
マニピュレータ20において、Z軸テーブル23はY軸テーブル22上に取り付けられている。これにより、ピペット保持部15及び採取用ピペット10は、Y軸テーブル22の移動にしたがって、Y軸テーブル22と同じ距離だけY軸方向に移動することができる。さらに、Y軸テーブル22はX軸テーブル21上に取り付けられている。これにより、ピペット保持部15及び採取用ピペット10は、X軸テーブル21の移動にしたがって、X軸テーブル21と同じ距離だけX軸方向に移動することができる。また、ピペット保持部15及び採取用ピペット10は、Z軸テーブル23の移動にしたがって、Z軸テーブル23と同じ距離だけZ軸方向に移動することができる。
【0026】
試料ステージ30は、容器38を支持する。例えば、試料ステージ30の載置面30aに容器38が載置される。容器38は、実施形態において、ウェルプレートである。試料ステージ30は、X軸ステージ31と、Y軸ステージ32と、駆動装置36と、を備える。X軸ステージ31は、駆動装置36が駆動することによって、X軸方向に移動する。Y軸ステージ32は、駆動装置36が駆動することによって、Y軸方向に移動する。X軸ステージ31はY軸ステージ32上に取り付けられている。駆動装置36は、コントローラ50に接続されている。
【0027】
実施形態においては、試料ステージ30上に1個の容器38が載置されている場合を示しているが、試料ステージ30上に載置される容器38の数は1個に限定されず複数個でもよい。試料ステージ30は、実施形態において、平面視による形状(以下、平面形状)が矩形であるが、矩形でなくてもよく、例えば、円形でもよい。容器38は、実施形態において、平面形状が矩形であるが、矩形でなくてもよく、例えば、円形でもよい。容器38は、シャーレ又はディッシュでもよい。
【0028】
第1顕微鏡ユニット40は、試料ステージ30の上方に配置されている。第1顕微鏡ユニット40は、第1顕微鏡41と、第1撮像装置45と、試料ステージ30の載置面30aに向けて光を照射する光源と、を含む。第1顕微鏡41は、鏡筒411と、対物レンズ412と、駆動装置414と、を含む。第1顕微鏡41は、対物レンズ412が容器38の上方に位置する実体顕微鏡である。第1顕微鏡ユニット40の鏡筒411は、駆動装置414が駆動することによって、Z軸方向に移動する。これにより、第1顕微鏡41は、焦点位置を調節することができる。対物レンズ412は、所望の倍率に合わせて複数種類が用意されていてもよい。第1撮像装置45は、例えば、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等の固体撮像素子を含む。第1撮像装置45は、第1顕微鏡41を介して、採取用ピペット10の先端をZ軸方向から撮像することができる。第1顕微鏡ユニット40は、接眼レンズを備えてもよい。
【0029】
第1顕微鏡ユニット40は、駆動装置414が駆動することによって、Z軸方向に動作する。駆動装置414は、後述の駆動制御部55によって駆動される。鏡筒411は、連結部71によってマニピュレータ20に連結されている。これにより、マニピュレータ20、ピペット保持部15及び採取用ピペット10は、第1顕微鏡ユニット40の動作に連動してZ軸方向に移動する。
【0030】
第2顕微鏡ユニット60は、試料ステージ30の側方に配置されている。第2顕微鏡ユニット60は、第2顕微鏡61と、第2撮像装置65と、を含む。第2顕微鏡61は、鏡筒611と、対物レンズ612と、駆動装置613と、を含む。対物レンズ612は、駆動装置613が駆動することによって、Y軸方向に移動する。これにより、第2顕微鏡61は、焦点位置を調節することができる。第2撮像装置65は、例えば、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等の固体撮像素子を含む。第2撮像装置65は、第2顕微鏡61を介して、採取用ピペット10の先端をY軸方向から撮像することができる。第2顕微鏡ユニット60は、固定具3を介して基台1に固定されている。
【0031】
第3撮像装置75は、固定具4を介して基台1に固定されている。固定具4は、X軸方向及びY軸方向に動くことができ、Z軸方向に延伸することができる。これにより、第3撮像装置75は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向とそれぞれ交差する、試料ステージ30の斜め上方向から、試料ステージ30側を撮像することができる。
【0032】
入力部58は、キーボード又はタッチパネル等である。ジョイスティック57及び入力部58は、コントローラ50に接続されている。オペレータは、ジョイスティック57及び入力部58を介して、コントローラ50にコマンドを入力することができる。オペレータがジョイスティック57を操作することによって、ジョイスティック57からコントローラ50に制御信号Vsig1が出力される。オペレータが入力部58を操作することによって、入力部58からコントローラ50に制御信号Vsig2が出力される。
【0033】
次に、コントローラ50の機能について、
図4を参照して説明する。
図4は、実施形態に係るマニピュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。コントローラ50は、演算手段としてのCPU(中央演算処理装置)及び記憶手段としてのハードディスク、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のハードウェア資源を備える。
【0034】
図4に示すように、コントローラ50は、その機能として、画像入力部51aと、画像出力部51bと、画像処理部52と、検出部53と、画像編集部54と、駆動制御部55と、記憶部56と、算出部59と、を含む。画像入力部51a、画像出力部51b、画像処理部52、検出部53、画像編集部54、駆動制御部55及び算出部59は、上記の演算手段により実現される。記憶部56は、上記の記憶手段により実現される。コントローラ50は、記憶部56に格納されたプログラムに基づいて各種の演算を行い、演算結果にしたがって駆動制御部55が各種の制御を行うように駆動信号を出力する。
【0035】
駆動制御部55は、第1顕微鏡ユニット40の駆動装置414と、マニピュレータ20の駆動装置26、27及び電動マイクロポンプ29と、試料ステージ30の駆動装置36と、第2顕微鏡ユニット60の駆動装置613とを制御する。駆動制御部55は、駆動装置414、26、27、36、613に駆動信号Vz1、Vxy2、Vz2、Vxy3、Vy4(
図3参照)をそれぞれ供給する。駆動制御部55は、電動マイクロポンプ29に駆動信号Vmp(
図3参照)を供給する。駆動制御部55は、必要に応じて設けられたドライバやアンプ等を介して、駆動信号Vz1、Vxy2、Vz2、Vxy3、Vy4、Vmpをそれぞれ供給してもよい。
【0036】
第1撮像装置45から出力される第1画像信号Vpix1(
図3参照)と、第2撮像装置65から出力される第2画像信号Vpix2(
図3参照)と、第3撮像装置75から出力される第3画像信号Vpix3(
図3参照)は、画像入力部51aにそれぞれ入力される。画像処理部52は、画像入力部51aから第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3を受け取って、画像処理を行う。画像出力部51bは、画像処理部52で画像処理された画像情報を記憶部56及び表示部80へ出力する。
【0037】
例えば、第1画像信号Vpix1には、第1顕微鏡41を通して第1撮像装置45が撮像した第1画像と、その撮像時刻とが含まれている。第1画像は動画である。同様に、第2画像信号Vpix2には、第2顕微鏡61を通して第2撮像装置65が撮像した第2画像と、その撮像時刻とが含まれている。第2画像も動画である。第3画像信号Vpix3には、第3撮像装置75が撮像した第3画像と、その撮像時刻とが含まれている。第3画像も動画である。
【0038】
第1画像、第2画像及び第3画像は、それぞれカラー画像又はグレー画像である。グレー画像は、白色及び黒色と、白色と黒色の中間色である灰色を含む画像である。グレー画像は、灰色に複数の階調を含む。階調とは、色や明るさの濃淡の段階数のことである。
【0039】
画像処理部52は、細胞の検出を容易にするために、第1画像又は第2画像の少なくとも一方について、画像の拡大や2値化等の画像処理をする。画像の2値化とは、カラー画像又はグレー画像(以下、元画像)を、濃淡がなく、白色と黒色としかない2値画像(binary image)に変換することである。画像処理部52は、第1画像又は第2画像の少なくとも一方について、元画像を拡大した拡大画像や、元画像を2値化した2値画像を生成する。画像処理部52は、元画像を拡大し、2値化した拡大2値画像を生成してもよい。画像処理部52は、拡大画像、2値画像、拡大2値画像の少なくとも1種類以上を画像情報として、検出部53と画像編集部54とに出力する。
【0040】
検出部53は、画像処理部52から画像情報を受け取り、受け取った画像情報に基づいて、細胞の位置や個数を自動で検出する。そして、検出部53は検出結果を画像編集部54及び記憶部56に出力する。
【0041】
図5は、検出部の構成例を示すブロック図である。
図5に示すように、検出部53は、その機能として、位置検出部531と、距離検出部532と、個数検出部533と、を含む。位置検出部531は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、細胞ce(後述の
図7参照)の位置を自動で検出する。距離検出部532は、位置検出部531によって検出された細胞ceと先端部103の開口部103a(後述の
図9参照)との離隔距離を自動で検出する。個数検出部533は、画像処理部52によって画像処理された第1画像又は第2画像に基づいて、細胞ceの個数を自動で検出する。画像処理部52によって画像処理された画像として、例えば、拡大画像、2値画像及び拡大2値画像の少なくとも1種類以上が挙げられる。位置検出部531、距離検出部532及び個数検出部533の各検出結果は、画像編集部54及び記憶部56にそれぞれ出力される。
【0042】
画像編集部54は、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3を、撮像時刻に基づいて互いに関連付けして、編集画像信号Vpix4を生成する。編集画像信号Vpix4には、編集画像が含まれている。編集画像は、互いに同じ時刻に撮像された第1画像、第2画像及び第3画像を並べて表示する動画である。編集画像において、第1画像、第2画像及び第3画像はそれぞれ、元画像でもよいし、元画像を画像処理した拡大画像、2値画像又は拡大2値画像であってもよい。画像出力部51bは、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3及び編集画像信号Vpix4を記憶部56に出力する。
【0043】
画像編集部54は、検出部53から細胞ceの検出結果を受信する。検出部53が細胞の位置を検出した場合、画像編集部54は、その検出結果を編集画像に反映させてもよい。例えば、画像編集部54は、画像処理部52から受け取った拡大画像、2値画像又は拡大2値画像において、検出部53が検出した細胞ceの位置を矢印によって自動で示したり、検出部53が検出した細胞の位置を枠線によって自動で囲んだりしてもよい。
【0044】
図6は、記憶部の構成例を示すブロック図である。
図6に示すように、記憶部56は、その機能として、マニピュレーションシステム100を動作させるためのプログラムを記憶したプログラム記憶部56aと、画像信号を記憶する画像記憶部56bと、後述する検査点SPn(
図11参照)座標を記憶する座標記憶部56cと、を含む。画像記憶部56bは、第1画像信号Vpix1を記憶する第1画像記憶部561と、第2画像信号Vpix2を記憶する第2画像記憶部562と、第3画像信号Vpix3を記憶する第3画像記憶部563と、編集画像信号Vpix4を記憶する編集画像記憶部564と、を含む。
【0045】
画像出力部51bは、第1画像信号Vpix1、第2画像信号Vpix2、第3画像信号Vpix3及び編集画像信号Vpix4のうち、少なくとも1つ以上の画像信号を表示部80に出力する(
図3参照)。画像出力部51bは、コントローラ50に入力された制御信号Vsig1に従って、表示部80に出力する画像信号を選択して表示部80に出力する。画像出力部51bは、コントローラ50に入力された制御信号Vsig2に従って、表示部80に出力する画像信号を選択して表示部80に出力してもよい。
【0046】
表示部80は、例えば液晶パネル等である。表示部80は、コントローラ50に接続されている。表示部80は、種々の文字情報や画像等を画面に表示する。
図7は、表示部の画面の一例を示す図である。
図7は、表示部80の画面81に編集画像が表示されている場合を例示している。編集画像では、互いに同じタイミングで撮像された第1画像811、第2画像812、第3画像813が並んで配置されている。表示部80は、編集画像をリアルタイム又はほぼリアルタイムで表示してもよいし、編集画像記憶部564に記憶されている編集画像を読み出して再生表示してもよい。
【0047】
オペレータがジョイスティック57又は入力部58を操作することによって、画面81に表示される画像を切り替えることが可能である。オペレータがジョイスティック57又は入力部58を操作することによって、画面81に表示される編集画像(動画)を一時停止させることが可能である。プログラム記憶部56a(
図6参照)が記憶しているプログラムに基づいて、コントローラ50(
図4参照)が所定の画像を画面81に自動で表示させたり、画面81に表示される画像を自動で切り替えたりしてもよい。
【0048】
画面81に表示される画像は、編集画像に限定されることはなく、第1画像811、第2画像812又は第3画像813のみでもよい。画面に表示される画像は、元画像に限定されることはなく、画像処理部52によって画像処理された画像(例えば、拡大画像、2値画像及び拡大2値画像の少なくとも1種以上)であってもよい。例えば、画面81に表示される画像は、第1画像811と、第1画像811の一部が拡大された拡大画像と、拡大画像が2値化された拡大2値画像と、であってもよい。
【0049】
図8は、実施形態に係る採取用ピペットの構成例を示す側面図である。
図9及び
図10は、実施形態に係る採取用ピペットの先端部を拡大して示す図である。
図8に示すように、採取用ピペット10は、2段に屈曲した形状のガラス針である。具体的には、採取用ピペット10は、平面視で、管状の中央部101と、中央部101の一端に接続する管状の後方部102と、中央部101の他端に接続する管状の先端部103と、を含む。後方部102は、ピペット保持部15によって保持される側の部位である。先端部103は、細胞等の微小対象物を採取する側の部位である。先端部103の先端には開口部103aが設けられている。
【0050】
中央部101と後方部102との間には第1屈曲部104が存在する。中央部101と先端部103との間には第2屈曲部105が存在する。中央部101の長手方向と後方部102の長手方向とは、互いに交差している。中央部101の長手方向と先端部103の長手方向とは、互いに交差している。中央部101の長手方向の長さL1と、後方部102の長手方向の長さL2と、先端部103の長手方向の長さL3とは、L3<L1、かつ、L3<L2である。これによれば、採取用ピペット10の先端部である先端部103を容器38内に配置することが容易である。
【0051】
中央部101を、中央部101の長手方向と直交する平面で切断した形状は円形である。後方部102を、後方部102の長手方向と直交する平面で切断した形状は円形である。先端部103を、先端部103の長手方向と直交する平面で切断した形状は円形である。後方部102の外径φ21と、先端部103の外径φ31とは、φ21>φ31である。第1管部の外径φ11は、第1屈曲部104の側から第2屈曲部105の側に向かって小さくなっている。
【0052】
例えば、中央部101は、第1屈曲部104と第2屈曲部105との間に、外径が大きく変化する狭窄部106を含む。中央部101において、狭窄部106と第1屈曲部104との間に位置する第1部位101aよりも、狭窄部106と第2屈曲部105との間に位置する第2部位101bの方が、外径φ11が小さい。第2部位101bの長手方向の長さL4は、先端部103の長手方向の長さL3よりも長い。
【0053】
図9に示すように、開口部103aと第2屈曲部105との間で、先端部103の内径φ32の大きさはほぼ一定である。先端部103の内径φ32と、採取用ピペット10の採取対象である細胞ceの直径φceとは、φ32>φceである。先端部103の内径φ32は細胞ceの直径φceよりも数μm程度大きいことが好ましい。これにより、採取用ピペット10は、細胞ceを先端部103の内側に導入することができる。
【0054】
第1屈曲部104の屈曲角度θ1と、第2屈曲部105の屈曲角度θ2とは、θ1>θ2である。第1屈曲部104の屈曲角度θ1は、中央部101の長手方向と後方部102の長手方向とが成す鈍角の角度である。第2屈曲部105の屈曲角度θ2は、中央部101の長手方向と先端部103の長手方向とが成す鈍角の角度である。
【0055】
先端部103は、長手方向が水平面に対して傾斜角度θ3傾いている。傾斜角度θ3は、例えば、2°以上3°以下である。
図10に示すように、先端部103の開口部103a側の先端が容器38の底面38bに接触している場合、容器38の底面38bと第2屈曲部105とのZ軸方向の距離H1は、例えば、30μmである。これによれば、採取用ピペット10は、開口部103a側の先端が容器38のウェル38aの底面38bに接触した際に、先端部103がたわむことができる。
【0056】
次に、マニピュレーションシステム100によって、細胞ceの採取動作を行う前に、採取される細胞ceが収容される容器38の底面38bのZ座標を算出する方法について説明する。
図11は、実施形態に係る容器の一例を示す平面図である。
図11に示すように、容器38は、実施形態において、6つのウェル38aを含むウェルプレートである。容器38のウェル38aには、液体39(
図7参照)と採取前の細胞ceが収容される。採取前の細胞ceは、ウェル38aの底面38bに載置される。
【0057】
ウェル38aの底面38bには、平面視において検査領域SZが設定される。検査領域SZは、細胞ceを含む所定の領域である。検査領域SZは、複数の検査点SPnによって決定される。検査点SPnの個数neは、本実施形態において、3個である。検査点SPnは、第1検査点SP1、第2検査点SP2及び第3検査点SP3を含む。検査領域SZは、第1検査点SP1、第2検査点SP2及び第3検査点SP3によって決定される。検査領域SZは、第1検査点SP1、第2検査点SP2及び第3検査点SP3を頂点に含む矩形状である。検査領域SZは、実施形態において、長方形状である。検査領域SZは、正方形状でもよい。
【0058】
第1検査点SP1のX座標X1及びY座標Y1と、第2検査点SP2のX座標X2及びY座標Y2と、第3検査点SP3のX座標X3及びY座標Y3とは、後述する
図14に示すステップST14において、操作者が入力部58を介して入力することにより設定される。コントローラ50は、入力部58を介して入力された第1検査点SP1のXY座標(X1,Y1)、第2検査点SP2のXY座標(X2,Y2)及び第3検査点SP3のXY座標(X3,Y3)の座標情報を記憶部56の座標記憶部56cに記憶させる。
【0059】
(第n検査点のZ座標を決定する第1方法)
第1検査点SP1のZ座標Z1は、第1検査点SP1のXY座標(X1,Y1)における容器38の底面38bのZ座標である。まず、駆動制御部55は、採取用ピペット10を座標記憶部56cに記憶された第1検査点SP1のXY座標(X1,Y1)へ移動させる。次に、駆動制御部55は、採取用ピペット10の先端をZ軸方向かつ下方に移動させる。座標記憶部56cは、採取用ピペット10の先端が底面38bに接触した位置の座標に基づいて、第1検査点SP1のZ座標Z1を記憶する。
【0060】
第2検査点SP2のZ座標Z2は、第2検査点SP2のXY座標(X2,Y2)における容器38の底面38bのZ座標である。第1検査点SPと同様に、駆動制御部55は、第2検査点SP2のXY座標(X2,Y2)において、採取用ピペット10の先端をZ軸方向かつ下方に移動させる。座標記憶部56cは、採取用ピペット10の先端が底面38bに接触した位置の座標に基づいて、第2検査点SP2のZ座標Z2を記憶する。
【0061】
第3検査点SP3のZ座標Z3は、第3検査点SP3のXY座標(X3,Y3)における容器38の底面38bのZ座標である。第1検査点SPと同様に、駆動制御部55は、第3検査点SP3のXY座標(X3,Y3)において、採取用ピペット10の先端をZ軸方向かつ下方に移動させる。座標記憶部56cは、採取用ピペット10の先端が底面38bに接触した位置の座標に基づいて、第3検査点SP3のZ座標Z3を記憶する。
【0062】
本実施形態において、検査点SPnの個数neは3個であるが、4個以上であっても同様に第n検査点SPnのZ座標Znを求めることができる。駆動制御部55は、予め入力部58を介して座標記憶部56cに設定された第n検査点SPnのXY座標(Xn,Yn)において、採取用ピペット10の先端をZ軸方向かつ下方に移動させる。座標記憶部56cは、採取用ピペット10の先端が底面38bに接触した位置の座標情報に基づいて、第n検査点SPnのZ座標Znを記憶する。
【0063】
(第n検査点のZ座標を決定する第2方法)
図12及び
図13は、実施形態の採取用ピペットの動作を説明する説明図である。第1検査点SP1のZ座標Z1は、第1検査点SP1のXY座標(X1,Y1)における容器38の底面38bのZ座標である。まず、駆動制御部55は、採取用ピペット10を座標記憶部56cに記憶された第1検査点SP1のXY座標(X1,Y1)へ移動させる。次に、駆動制御部55は、採取用ピペット10を試料ステージ30の載置面30aに平行な一方向に所定の範囲で往復移動させる。一方向は、本実施形態において、Y軸方向に平行な方向である。所定の範囲は、例えば、Y1を中心に、500μmである。採取用ピペット10の往復移動は、第1顕微鏡41を介してZ軸方向に撮像する第1撮像装置45によって確認できる。採取用ピペット10の先端部103は、平面視において長手方向がX軸方向に平行なので、
図12に示すように、平面視において長手方向と交差する方向に往復移動する。駆動制御部55は、採取用ピペット10を往復移動させた状態で、採取用ピペット10の先端をZ軸方向かつ下方に移動させる。採取用ピペット10は、先端が容器38の底面38bに接触すると、
図13に示すように、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示す。採取用ピペット10の先端部103の挙動が変わることにより、操作者は、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと確認できる。操作者は、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示した場合、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと判断し、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作を行うものとする。所定操作は、例えば、入力部58の所定のボタンの操作等である。座標記憶部56cは、駆動制御部55が採取用ピペット10を下方に移動させている間に、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作が開始された時点の採取用ピペット10の先端の座標を第1検査点SP1のZ座標Z1として記憶する。
【0064】
第2検査点SP2のZ座標Z2は、第2検査点SP2のXY座標(X2,Y2)における容器38の底面38bのZ座標である。第1検査点SPと同様に、駆動制御部55は、第2検査点SP2のXY座標(X2,Y2)において、採取用ピペット10の先端をY軸方向に往復移動させながらZ軸方向かつ下方に移動させる。操作者は、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示した場合、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと判断し、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作を行うものとする。座標記憶部56cは、駆動制御部55が採取用ピペット10を移動させている間に、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の採取用ピペット10の先端の座標を第2検査点SP2のZ座標Z2として記憶する。
【0065】
第3検査点SP3のZ座標Z3は、第3検査点SP3のXY座標(X3,Y3)における容器38の底面38bのZ座標である。第1検査点SPと同様に、駆動制御部55は、第3検査点SP3のXY座標(X3,Y3)において、採取用ピペット10の先端をY軸方向に往復移動させながらZ軸方向かつ下方に移動させる。操作者は、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示した場合、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと判断し、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作を行うものとする。座標記憶部56cは、駆動制御部55が採取用ピペット10を移動させている間に、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の採取用ピペット10の先端の座標を第3検査点SP3のZ座標Z3として記憶する。
【0066】
本実施形態において、検査点SPnの個数neは3個であるが、4個以上であっても同様に第n検査点SPnのZ座標Znを求めることができる。駆動制御部55は、予め入力部58を介して座標記憶部56cに設定された第n検査点SPnのXY座標(Xn,Yn)において、採取用ピペット10の先端をY軸方向に往復移動させながらZ軸方向かつ下方に移動させる。操作者は、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示した場合、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと判断し、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作を行うものとする。座標記憶部56cは、駆動制御部55が採取用ピペット10を移動させている間に、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の採取用ピペット10の先端の座標を第n検査点SPnのZ座標Znとして記憶する。
【0067】
上述した第1方法又は第2方法によって各検査点SPnのZ座標Znを計測することにより、各検査点SPnの座標(Xn,Yn,Zn)の座標情報が得られる。本実施形態においては、第1検査点SP1の座標(X1,Y1,Z1)、第2検査点SP2の座標(X2,Y2,Z2)及び第3検査点SP3の座標(X3,Y3,Z3)の座標情報が得られる。算出部59は、各検査点SPnの座標情報に基づいて、検査領域SZの平面の近似式を算出する。具体的には、例えば、駆動制御部55は、第1検査点SP1から第n検査点SPnまでの座標(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、・・・、(Xne,Yne,Zne)を近似する平面の近似式を算出する。近似式は、Z=aX+bY+cによって表される。a、b及びcは、定数である。算出部59は、例えば、最小二乗法により、近似式を算出する。本実施形態において、検査点SPnの個数neは3個なので、近似平面は、第1検査点SP1の座標(X1,Y1,Z1)、第2検査点SP2の座標(X2,Y2,Z2)及び第3検査点SP3の座標(X3,Y3,Z3)を通る平面である。検査点SPnの個数neが3個である場合、算出部59は、連立方程式を解くことによって、近似式を算出してもよい。記憶部56は、算出部59で算出された近似式を記憶する。
【0068】
以上説明したように、本実施形態のマニピュレーションシステム100は、容器38と、試料ステージ30と、採取用ピペット10と、駆動制御部55と、算出部59と、記憶部56と、を備える。容器38は、細胞ce(微小対象物)が収容される。試料ステージ30は、容器38が載置される。採取用ピペット10は、細胞ceを採取する。駆動制御部55は、試料ステージ30及び採取用ピペット10を制御する。算出部59は、容器38の底面38bにおいて測定された複数の検査点SPnを近似する平面の近似式を算出する。記憶部56は、近似式を記憶する。
【0069】
これによれば、近似された仮想平面は、実際の容器38の底面38bから平均化されるので、実際の底面38bとの間の誤差が小さくなる。このため、細胞ceを採取する際に、容器38の底面38bに存在する細胞ceの高さに位置合わせできるよう、採取用ピペット10の先端の位置を好適に制御できる。したがって、容器38内の細胞ceを安定的に自動採取することができる。また、底面の平面度が精密な高価な容器を使用する必要がないので、追加の研削仕上げ工程及び特注品の使用によるコストの発生を抑制することができる。
【0070】
細胞ceを採取する際は、まず、コントローラ50が、細胞ceのX座標Xce及びY座標Yceを検出する。算出部59は、記憶部56に記憶された近似式Z=aX+bY+cのXにX座標Xceを代入し、YにY座標Yceを代入することによって、細胞ceのZ座標Zceを算出する。これにより、容器38から細胞ceの採取を行う際の採取用ピペット10の適切な位置を得るためのマニピュレータ20のZ方向の移動距離を得ることができる。
【0071】
次に、マニピュレーションシステム100において、検査点SPnの座標を取得し、検査領域SZの平面の近似式を算出する方法について説明する。マニピュレーションシステム100の動作を開始する前に、操作者は、まず、
図1に示す第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野内に、採取用ピペット10を配置する。ここで、採取用ピペット10の先端の高さは、少なくとも容器38が設置される高さより上方の位置とする。採取用ピペット10は、
図7に示す画面81に表示される。操作者は、画面81を確認しながらジョイスティック57を操作し、採取用ピペット10を予め設定された所定の初期位置の座標(X0,Y0,Z0)へ移動させる。操作者は、次に、採取される細胞ceが入れられた容器38を試料ステージ30に設置する。操作者は、次に、容器38のウェル38aが、第1顕微鏡41、第2顕微鏡61及び第3撮像装置75の視野と重なるように試料ステージ30を移動させる。操作者は、次に、駆動装置414を駆動させることによって第1顕微鏡41の対物レンズ412を移動させて、第1顕微鏡41の焦点をウェル38aの底面38bに存在する細胞ceに合わせる。操作者は、駆動装置613を駆動させることによって第2顕微鏡61の対物レンズ612を移動させて、第2顕微鏡61の焦点を細胞ceに合わせる。
【0072】
図14は、実施形態の動作の一例を示すフローチャート図である。マニピュレーションシステム100は、検査領域SZを決定する複数の検査点SPnに対し、1つの検査点SPnごとに操作を行い、複数の検査点SPnについてZ座標Znを取得する操作を繰り返し実行する。検査点SPnの個数neは、本実施形態において、3個である。コントローラ50は、複数の検査点SPnに対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム100による自動操作は、例えば、入力部58の開始ボタンを押すことでスタートする。
【0073】
まず、ステップST10において、操作者は、マニピュレーションシステム100が複数回の検査操作を実行した後、操作を終了する回数である操作終了回数neを、
図3に示す入力部58を介してコントローラ50の記憶部56に設定する。開始ボタンが押された後に、コントローラ50は、操作終了回数neを入力するよう操作者に促す通知を表示部80に表示させてもよい。1つの検査点SPnごとに操作を行うので、操作終了回数neは、操作を行う検査点SPnの個数neである。すなわち、本実施形態において、操作終了回数neは、3である。記憶部56に操作終了回数neが記憶されると、ステップST12において、コントローラ50は、実行した操作回数のカウンタ値である操作実行回数nをn=0として記憶部56に記憶させる。
【0074】
次に、ステップST14において、操作者は、各検査点SPnのXY座標(Xn,Yn)を、入力部58を介してコントローラ50の記憶部56の座標記憶部56cに設定する。ステップST12が実行された後に、コントローラ50は、各検査点SPnのXY座標(X1,Y1)、(X2,Y2)、・・・、(Xne,Yne)を入力するよう操作者に促す通知を表示部80に表示させてもよい。本実施形態において、操作者は、第1検査点SP1のX座標X1及びY座標Y1と、第2検査点SP2のX座標X2及びY座標Y2と、第3検査点SP3のX座標X3及びY座標Y3と、を設定する。座標記憶部56cに第1検査点SP1の座標(X1,Y1)、第2検査点SP2の座標(X2,Y2)及び第3検査点SP3の座標(X3,Y3)が記憶されると、ステップST16において、コントローラ50は、操作実行回数nのカウンタ値を1つ増やして、n=n+1として、記憶部56に記憶させる。
【0075】
次に、ステップST18において、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、XY平面において、採取用ピペット10を第n検査点SPnへ移動させる。すなわち、駆動制御部55は、採取用ピペット10を第n検査点SPnの直上の座標(Xn,Yn,Z0)へ移動させる。
【0076】
次に、ステップST20において、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ピペット10を試料ステージ30の載置面30aに平行な一方向に所定の範囲で往復移動開始させる。一方向は、本実施形態において、Y軸方向に平行な方向である。所定の範囲は、例えば、500μmである。採取用ピペット10は、第1顕微鏡41の視野内において、上下方向に繰り返し動作する。採取用ピペット10の先端部103は、平面視において長手方向がX軸方向に平行なので、
図12に示すように、平面視において長手方向と交差する方向に往復移動する。
【0077】
次に、ステップST22において、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ピペット10をZ軸方向かつ下方に移動させる。すなわち、駆動制御部55は、採取用ピペット10をY軸方向に往復移動させている状態で、Z軸方向に平行かつ下方に移動させる。採取用ピペット10が下方に移動開始すると、ステップST24において、コントローラ50は、所定操作が実行されるのを待機する。コントローラ50は、待機状態を示す通知を表示部80に表示させてもよい。所定操作は、例えば、入力部58の所定のボタンの操作等である。
【0078】
採取用ピペット10は、先端が容器38の底面38bに接触すると、
図13に示すように、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示す。操作者は、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を示した場合、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したと判断し、所定操作を行うものとする。第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した画像データに基づいて、先端部103が底面38bに引き摺られるような挙動を検出し、人工知能が判断してもよい。
【0079】
ステップST26において、コントローラ50は、所定操作が実行されたか否かを判断する。ステップST26において、所定操作が実行されていないと判断された場合(ステップST26;No)、ステップST22に移行する。ステップST26において、所定操作が実行されたと判断された場合(ステップST26;Yes)、ステップST28に移行する。
【0080】
ステップST28において、コントローラ50は、採取用ピペット10の先端のZ座標を第n検査点SPnのZ座標Znとして座標記憶部56cに記憶させる。算出部59は、例えば、採取用ピペット10の初期位置の座標と試料ステージ30及びマニピュレータ20のZ軸の移動距離とに基づいて、採取用ピペット10の先端のZ座標を算出してもよい。ステップST30において、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ピペット10の往復移動を停止させる。ステップST30は、ステップST28の前に実行されてもよい。
【0081】
次に、ステップST32において、コントローラ50は、操作実行回数nが操作終了回数neに達したか否かを判断する。ステップST32において、操作実行回数nが操作終了回数neよりも小さいと判断された場合(ステップST32;No)、ステップST16に戻って別の検査点SPnに対する操作を繰り返し実行する。ステップST32において、操作実行回数nが操作終了回数ne以上と判断された場合(ステップST32;Yes)、予め設定された個数neの検査点SPnに対するZ座標Znの取得操作を終了し、ステップST34に移行する。
【0082】
ステップST34において、算出部59は、座標記憶部56cに記憶された複数の検査点SPnの座標(Xn,Yn,Zn)に基づいて、検査領域SZ内の複数の検査点SPnを近似する平面の近似式を算出する。本実施形態において、算出部59は、第1検査点SP1の座標(X1,Y1,Z1)、第2検査点SP2の座標(X2,Y2,Z2)及び第3検査点SP3の座標(X3,Y3,Z3)を通る平面の近似式を算出する。コントローラ50は、算出した近似式を記憶部56に記憶させる。記憶部56が近似式を記憶すると、マニピュレーションシステム100は、一連の動作を終了する。
【0083】
実施形態において、採取用ピペット10の初期位置への移動は、マニピュレーションシステム100による自動操作を開始する前に、操作者がジョイスティック57の操作によって行うが、マニピュレーションシステム100が行ってもよい。例えば、ステップST10が実行される前に、コントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した画像データの画像処理を行う。コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、採取用ピペット10の先端中央の位置座標を検出する。座標記憶部56cは、採取用ピペット10の先端中央の位置座標を記憶する。次に、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、検出結果に基づいて、採取用ピペット10を予め設定された所定の初期位置の座標(X0,Y0,Z0)へ移動させる。また、ステップST30の後に、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、採取用ピペット10を初期位置へ移動させてもよい。
【0084】
次に、マニピュレーションシステム100において、容器38内の細胞ceを採取する方法について説明する。採取された細胞ceが入れられた容器38は、上述したステップST10からステップST34において、試料ステージ30に設置され、底面38bを近似する平面の近似式が算出されたものとする。
図15は、実施形態の動作の一例を示すフローチャート図である。マニピュレーションシステム100は、複数の細胞ceに対し、1つの細胞ceごとに操作を行い、複数の細胞ceについて操作を繰り返し実行することが可能だが、ここでは1つの細胞ceに対する操作について説明する。コントローラ50は、細胞ceに対する操作を自動で実行する。マニピュレーションシステム100による自動操作は、例えば、入力部58の開始ボタンを押すことでスタートする。
【0085】
まず、ステップST50において、コントローラ50の画像処理部52は、第1撮像装置45、第2撮像装置65及び第3撮像装置75が撮像した画像データの画像処理を行う。コントローラ50の検出部53は、画像処理によって、細胞ceのXY座標(Xce,Yce)を検出する。座標記憶部56cは、細胞ceのXY座標(Xce,Yce)を記憶する。
【0086】
ステップST52において、算出部59は、記憶部56に記憶された近似式Z=aX+bY+cのXに、X座標Xceを代入し、近似式のYにY座標Yceを代入して、細胞ceのZ座標Zceを算出する。座標記憶部56cは、細胞ceのZ座標Zceを記憶する。
【0087】
ステップST54において、駆動制御部55は、マニピュレータ20を駆動して、座標記憶部56cに記憶された細胞ceの座標(Xce,Yce,Zce)に基づいて、採取用ピペット10の先端を、細胞ceを採取する採取位置へ移動させる。採取位置は、採取用ピペット10の開口部103a(
図9参照)が細胞ceに対向する位置である。ステップST52によって、細胞ceのZ座標Zceが算出されているので、採取用ピペット10を適切な位置へ移動させることができる。
【0088】
ステップST56において、駆動制御部55は、電動マイクロポンプ29(
図3参照)を駆動させ、採取用ピペット10の内部圧力を常圧より低くする。これにより、採取用ピペット10は、先端の開口部103aから細胞ceを吸引して採取する。
【0089】
図16は、実施形態のウェル底面の形状の一部を拡大して示す模式図である。
図16に示すように、実際のウェル38aの底面38bは、水平面に対して、凹凸及び傾斜を含む形状である。すなわち、
図14に示すステップST34において算出された近似式によって表される仮想平面は、実際の底面38bに対して誤差を含む。
図8に示すように、採取用ピペット10の先端部103は、長手方向が水平面に対して傾斜角度θ3傾いている。これにより、採取用ピペット10は、開口部103a側の先端が容器38のウェル38aの底面38bに接触した際に、先端部103がたわみ、近似式によって表される平面と実際の底面38bとの間の誤差を許容することができる。採取用ピペット10は、近似式によって表される平面と実際の底面38bとの間におけるZ軸方向の距離H2以下の誤差を許容する。容器38の底面38bと第2屈曲部105とのZ軸方向の距離H1が30μmである場合、距離H2は、例えば、15μmである。
【0090】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、算出部59は、記憶部56に記憶された近似式に基づいて、細胞ce(微小対象物)の位置座標(Xce,Yce,Zce)を算出する。これによれば、容器38の底面38bに存在する細胞ceの高さに採取用ピペット10の先端を好適に位置合わせできるので、容器38内の細胞ceを安定的に自動採取することができる。
【0091】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、近似式は、採取用ピペット10の先端を接触させることによって測定された複数の検査点SPnの座標情報に基づいて算出される。これによれば、実際に細胞ceを採取する採取用ピペット10が容器38の底面38bに接触した位置に基づいて近似式を算出するので、細胞ceを採取する際に、より好適に採取用ピペット10の先端を細胞ceに位置合わせすることができる。
【0092】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、駆動制御部55は、採取用ピペット10をZ軸方向(試料ステージ30の載置面30aの法線方向)に移動させる。記憶部56(座標記憶部56c)は、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触した位置の座標情報に基づいて、検査点SPnのZ座標Zn(法線方向の座標)を記憶する。これによれば、実際に細胞ceを採取する採取用ピペット10が容器38の底面38bに接触した位置に基づいて近似式を算出するので、細胞ceを採取する際に、より好適に採取用ピペット10の先端を細胞ceに位置合わせすることができる。
【0093】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、駆動制御部55は、採取用ピペット10をY軸方向(載置面30aに平行な一方向)に所定の範囲で往復移動させている状態で、採取用ピペット10をZ軸方向(載置面30aの法線方向)に移動させる。これによれば、採取用ピペット10が容器38の底面38bに接触した際に、採取用ピペット10の先端の挙動が変化する。このため、オペレータは、採取用ピペット10の先端が容器38の底面38bに接触したことを確認することができる。
【0094】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、記憶部56(座標記憶部56c)は、駆動制御部55が採取用ピペット10を移動させている間に、採取用ピペット10の先端の座標を入力する所定操作が実行された時点の採取用ピペット10の先端の座標を検査点SPnのZ座標Znとして記憶する。これによれば、実際に細胞ceを採取する採取用ピペット10が容器38の底面38bに接触した位置に基づいて近似式を算出するので、細胞ceを採取する際に、より好適に採取用ピペット10の先端を細胞ceに位置合わせすることができる。
【0095】
本実施形態のマニピュレーションシステム100において、採取用ピペット10は、長手方向が試料ステージ30の載置面30aに対して所定の傾斜角度θ3傾いている先端部103を含む。これによれば、採取用ピペット10が容器38の底面38bに接触した際に、採取用ピペット10の先端がたわみ、近似された仮想平面と実際の底面38bとの間の誤差を許容することができる。
【0096】
本実施形態のマニピュレーションシステム100の駆動方法は、細胞ce(微小対象物)が収容される容器38と、容器38が載置される試料ステージ30と、細胞ceを採取する採取用ピペット10と、を備えるマニピュレーションシステム100の駆動方法である。マニピュレーションシステム100の駆動方法は、容器38の底面38bに予め設定された複数の検査点SPnにそれぞれ採取用ピペット10の先端を接触させるステップST20と、複数の検査点SPnにそれぞれ接触した際の採取用ピペット10の先端の座標を検査点SPnの座標として記憶するステップST28と、複数の検査点SPnの座標に基づいて、複数の検査点SPnを近似する平面の近似式を算出するステップST34と、近似式に基づいて細胞ceの位置座標を算出するステップST54と、を含む。
【0097】
これによれば、近似された仮想平面は、実際の容器38の底面38bから平均化されるので、実際の底面38bとの間の誤差が小さくなる。このため、細胞ceを採取する際に、容器38の底面38bに存在する細胞ceの高さに位置合わせできるよう、採取用ピペット10の先端の位置を好適に制御できる。したがって、容器38内の細胞ceを安定的に自動採取することができる。また、底面の平面度が精密な高価な容器を使用する必要がないので、追加の研削仕上げ工程及び特注品の使用によるコストの発生を抑制することができる。
【0098】
本実施形態のマニピュレーションシステム100及びマニピュレーションシステム100の駆動方法は適宜変更してもよい。例えば、採取用ピペット10等の形状等は、微小対象物の種類や、微小対象物に対する操作に応じて適宜変更することが好ましい。検査領域SZにおける容器38の底面38bの平面を近似する近似式を算出する操作は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜手順の一部を省略してもよく、また、手順を置換して実行してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 基台
3、4 固定具
10 採取用ピペット
101 中央部
101a 第1部位
101b 第2部位
102 後方部
103 先端部
103a 開口部
104 第1屈曲部
105 第2屈曲部
106 狭窄部
15 ピペット保持部
20 マニピュレータ
21 X軸テーブル
22 Y軸テーブル
23 Z軸テーブル
26、27 駆動装置
28、71 連結部
29 電動マイクロポンプ
30 試料ステージ
30a 載置面
31 X軸ステージ
32 Y軸ステージ
36 駆動装置
38 容器
38a ウェル
38b 底面
39 液体
40 第1顕微鏡ユニット
41 第1顕微鏡
411 鏡筒
412 対物レンズ
414 駆動装置
45 第1撮像装置
50 コントローラ
51a 画像入力部
51b 画像出力部
52 画像処理部
53 検出部
531 位置検出部
532 距離検出部
533 個数検出部
54 画像編集部
55 駆動制御部
56 記憶部
56a プログラム記憶部
56b 画像記憶部
561 第1画像記憶部
562 第2画像記憶部
563 第3画像記憶部
564 編集画像記憶部
56c 座標記憶部
59 算出部
57 ジョイスティック
58 入力部
60 第2顕微鏡ユニット
61 第2顕微鏡
611 鏡筒
612 対物レンズ
613 駆動装置
65 第2撮像装置
75 第3撮像装置
80 表示部
81 画面
811 第1画像
812 第2画像
813 第3画像
100 マニピュレーションシステム
P 圧力
ce 細胞
L1、L2、L3、L4 長さ
H1、H2 距離
φ11、φ21、φ31 外径
φ32 内径
φce 直径
θ1、θ2 屈曲角度
θ3 傾斜角度
SZ 検査領域
SPn 検査点
SP1 第1検査点
SP2 第2検査点
SP3 第3検査点