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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/72 20060101AFI20230418BHJP
   B23Q 11/12 20060101ALI20230418BHJP
   B23B 19/00 20060101ALI20230418BHJP
   B23Q 1/64 20060101ALI20230418BHJP
   F16N 7/28 20060101ALI20230418BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20230418BHJP
   F16H 57/039 20120101ALI20230418BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20230418BHJP
【FI】
B23Q1/72 B
B23Q11/12 E
B23B19/00
B23Q1/64 D
F16N7/28
F16H1/16 Z
F16H57/039
F16H57/04 J
F16H57/04 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019017497
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020124767
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若杉 直矢
(72)【発明者】
【氏名】安藤 善昭
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101989(JP,A)
【文献】特開2005-125414(JP,A)
【文献】特公昭50-001065(JP,B1)
【文献】実開昭60-097214(JP,U)
【文献】特開2018-161723(JP,A)
【文献】実開昭54-065486(JP,U)
【文献】実開昭58-132255(JP,U)
【文献】実開昭58-086730(JP,U)
【文献】特開平03-178709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/70-72
B23Q 1/52-54、64
B23Q 11/12
B23B 19/00
F16N 7/28
F16H 1/16
F16H 57/039
F16H 57/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部と、
前記固定部に対して旋回軸の回りに旋回可能に設けられていて、前記旋回軸の回りに主軸装置を旋回させる旋回部と、
前記旋回部を旋回させる回転動力を発生する動力源と、
前記動力源の回転速度を減速して前記回転動力を前記旋回部に伝達する減速機構部と、を備え、
前記減速機構部は、
軸状に形成され、前記旋回部に対して前記動力源が発生した前記回転動力を伝達する第一伝達要素と、
前記第一伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第一伝達要素を格納する第一空間部と、
前記動力源と前記回転動力の伝達が可能となるように連結され、且つ、前記第一伝達要素の一端側に前記第一伝達要素に同軸に連結されて、前記第一伝達要素に前記回転動力を伝達する第二伝達要素と、
前記第二伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第二伝達要素を格納し、前記第一空間部と区画されている第二空間部と、
前記第一空間部と前記第二空間部との間で潤滑油の流動を可能とし、前記第一伝達要素の周方向にて複数設けられる第一連通路と、
を備える、工作機械。
【請求項2】
前記第一伝達要素は、ねじ軸状に形成され、前記第一伝達要素の回転軸に対して捩れの関係を有する前記旋回軸の回りに回転可能なリング状の第一被伝達要素に前記回転動力を伝達する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記減速機構部は、更に、
前記第一伝達要素の前記第二伝達要素と連結された前記一端側を回転可能に支持し、前記第一空間部と前記第二空間部とを区画する第一支持部を備え、
前記第一連通路は、前記第一支持部に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記減速機構部は、
前記第一伝達要素、前記第二伝達要素及び潤滑油を格納するケーシングを有し、
前記ケーシングは、
前記一端側を回転可能に支持すると共に前記第一空間部と前記第二空間部とを区画する第一壁部と、
を備え、
前記第一連通路は、前記第一壁部に設けられた貫通孔を含んで構成された、請求項1乃至請求項3のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記減速機構部は、更に、
前記第一伝達要素の他端側に形成され、前記第一空間部と区画されている第三空間部と、
前記第一空間部と前記第三空間部との間で潤滑油の流動を可能とする第二連通路と、
を備える、請求項1乃至請求項のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記減速機構部は、更に、
前記第一伝達要素の前記他端側を回転可能に支持し、前記第一空間部と前記第三空間部とを区画する第二支持部を備え、
前記第二連通路は、前記第二支持部に形成されている、請求項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記減速機構部は、
前記第一伝達要素、前記第二伝達要素及び潤滑油を格納するケーシングを有し、
前記ケーシングは、
前記他端側を回転可能に支持すると共に前記第一空間部と前記第三空間部とを区画する第二壁部と、
を備え、
前記第二連通路は、前記第二壁部に設けられた貫通孔を含んで構成された、請求項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記第二連通路は、前記第一伝達要素の周方向にて複数設けられる、請求項乃至請求項のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項9】
固定部と、
前記固定部に対して旋回軸の回りに旋回可能に設けられていて、前記旋回軸の回りに主軸装置を旋回させる旋回部と、
前記旋回部を旋回させる回転動力を発生する動力源と、
前記動力源の回転速度を減速して前記回転動力を前記旋回部に伝達する減速機構部と、を備え、
前記減速機構部は、
軸状に形成され、前記旋回部に対して前記動力源が発生した前記回転動力を伝達する第一伝達要素と、
前記第一伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第一伝達要素を格納する第一空間部と、
前記動力源と前記回転動力の伝達が可能となるように連結され、且つ、前記第一伝達要素の一端側に前記第一伝達要素に同軸に連結されて、前記第一伝達要素に前記回転動力を伝達する第二伝達要素と、
前記第二伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第二伝達要素を格納し、前記第一空間部と区画されている第二空間部と、
前記第一空間部と前記第二空間部との間で潤滑油の流動を可能とする第一連通路と、
前記第一伝達要素の他端側に形成され、前記第一空間部と区画されている第三空間部と、
前記第一空間部と前記第三空間部との間で潤滑油の流動を可能とする第二連通路と、
を備える、工作機械。
【請求項10】
前記第一伝達要素、前記第二伝達要素及び前記第一連通路は、
鉛直方向にて前記動力源よりも下方に位置し、
前記第一空間部及び前記第二空間部に格納された潤滑油の液面高さは、
少なくとも前記第一伝達要素から前記旋回部に対して前記回転動力を伝達する第一伝達部分、及び、前記第一連通路よりも前記鉛直方向にて上方であり、且つ、前記動力源よりも前記鉛直方向にて下方となるように設定された、請求項1乃至請求項9のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記液面高さは、
前記動力源から前記第二伝達要素に対して前記回転動力を伝達する第二伝達部分に潤滑油が供給されるように設定された、請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記減速機構部は、
前記第一連通路を介して前記第一空間部及び前記第二空間部の間で流動する潤滑油の状態を検出する潤滑油状態検出部を有する、請求項1乃至請求項11のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項13】
前記減速機構部は、
前記第一連通路を介して前記第一空間部及び前記第二空間部の間で流動する潤滑油を冷却する冷却部を有する、請求項1乃至請求項12のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【請求項14】
前記旋回部は、
前記主軸装置の主軸の回転軸を前記旋回軸に対して傾斜させた状態で、前記主軸装置を前記旋回軸の回りに旋回させる、請求項1乃至請求項13のうちの何れか一項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された旋回装置を備えた工作機械が知られている。この従来の工作機械において、旋回装置は、動力源及び減速機構部を有する固定本体部と、固定本体部に支持されて旋回軸部と共に回転可能な旋回本体部と、旋回軸の回りで旋回本体部に支持される主軸装置と、を備えている。旋回装置は、動力源からの回転動力を減速機構部を介して旋回軸部に伝達することにより、旋回本体部に支持された主軸装置を旋回軸の回りで旋回させるようになっている。これにより、旋回装置は、主軸装置を垂直姿勢と水平姿勢との間で旋回割出しするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-161723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の旋回装置の減速機構部は、一つの回転軸部材に、歯車等により形成されて回転動力を伝達する第一伝達要素及び第二伝達要素を備える場合がある。又、減速機構部は、第一伝達要素を潤滑油と共に格納する第一空間部と、第一空間部と区画されて第二伝達要素を潤滑油と共に格納する第二空間部とを備える場合がある。
【0005】
ところで、第一空間部と第二空間部とが区画されており、第一伝達要素が第一空間部にて油浴潤滑され、且つ、第二伝達要素が第二空間部にて油浴潤滑される構造では、第一空間部及び第二空間部のそれぞれにおいて潤滑油の油量及び運転時の発熱量が異なる。その結果、第一空間部及び第二空間部において、それぞれの油温が不均等になり、潤滑油から第一伝達要素及び第二伝達要素を含む減速機構部の構造体に伝わる熱量も不均等になる。従って、構造体に複雑な熱変形が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、旋回部を旋回させる際に潤滑油から減速機構部を構成する構造体に伝わる熱量を均等にすることができる工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、固定部と、
固定部に対して旋回軸の回りに旋回可能に設けられていて、旋回軸の回りに主軸装置を旋回させる旋回部と、
旋回部を旋回させる回転動力を発生する動力源と、
動力源の回転速度を減速して回転動力を旋回部に伝達する減速機構部と、を備え、
減速機構部は、
軸状に形成され、旋回部に対して動力源が発生した回転動力を伝達する第一伝達要素と、
第一伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び第一伝達要素を格納する第一空間部と、
動力源と回転動力の伝達が可能となるように連結され、且つ、第一伝達要素の一端側に第一伝達要素に同軸に連結されて、第一伝達要素に回転動力を伝達する第二伝達要素と、
第二伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び第二伝達要素を格納し、第一空間部と区画されている第二空間部と、
第一空間部と第二空間部との間で潤滑油の流動を可能とし、前記第一伝達要素の周方向にて複数設けられる第一連通路と、を備える工作機械にある
本発明の他の態様は、固定部と、
前記固定部に対して旋回軸の回りに旋回可能に設けられていて、前記旋回軸の回りに主軸装置を旋回させる旋回部と、
前記旋回部を旋回させる回転動力を発生する動力源と、
前記動力源の回転速度を減速して前記回転動力を前記旋回部に伝達する減速機構部と、を備え、
前記減速機構部は、
軸状に形成され、前記旋回部に対して前記動力源が発生した前記回転動力を伝達する第一伝達要素と、
前記第一伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第一伝達要素を格納する第一空間部と、
前記動力源と前記回転動力の伝達が可能となるように連結され、且つ、前記第一伝達要素の一端側に前記第一伝達要素に同軸に連結されて、前記第一伝達要素に前記回転動力を伝達する第二伝達要素と、
前記第二伝達要素を油浴潤滑するように潤滑油及び前記第二伝達要素を格納し、前記第一空間部と区画されている第二空間部と、
前記第一空間部と前記第二空間部との間で潤滑油の流動を可能とする第一連通路と、
前記第一伝達要素の他端側に形成され、前記第一空間部と区画されている第三空間部と、
前記第一空間部と前記第三空間部との間で潤滑油の流動を可能とする第二連通路と、を備える、工作機械にある。
【0008】
上記態様によれば、第一空間部に格納された潤滑油と第二空間部に格納された潤滑油とは、第一連通路を介して互いに流動することができる。これにより、減速機構部において、第一伝達要素及び第二伝達要素が回転して動力源からの回転動力を旋回部に伝達する際には、潤滑油の流動によって、第一空間部及び第二空間部における潤滑油の油温を均等にすることができる。従って、第一伝達要素及び第二伝達要素を含む減速機構部を構成する構造体に伝わる熱量が均等になり、その結果、構造体の複雑な熱変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の工作機械の斜視図である。
図2】旋回主軸装置の斜視図である。
図3】旋回主軸装置における主軸の旋回範囲を旋回軸方向から見た図である。
図4図2に示すIV-IV線に沿った減速機構部の断面図である。
図5】減速機構部における第一空間部における潤滑油の液面高さを説明するための図である。
図6】減速機構部における第二空間部における潤滑油の液面高さを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1.工作機械1の構成)
以下、一実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、説明に用いる各図は概略図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。
【0011】
工作機械1は、図1に示すように、五軸マシニングセンタであり、ベッド11、コラム12、サドル13、旋回主軸装置20、スライドテーブル14及びターンテーブル15を備えている。ベッド11は、ほぼ矩形状であり、床上に配置される。ベッド11上には、コラム12が起立して設けられている。
【0012】
コラム12の側面には、サドル13がX軸方向に移動可能に設けられる。サドル13の側面には、主軸装置30が取り付けられる旋回主軸装置20が鉛直方向に一致するY軸方向に移動可能に設けられている。又、ベッド11の上には、スライドテーブル14がZ軸方向に移動可能に設けられている。スライドテーブル14の上には、ターンテーブル15がY軸回り(B軸)に回転可能に設けられている。ターンテーブル15には、図示省略の工作物が冶具を介して固定されるようになっている。
【0013】
図2に示すように、旋回主軸装置20は、旋回部を構成する旋回軸部21(図4を参照)及び旋回本体部22と、固定部としての固定本体部23と、減速機構部24と、を備えている。旋回主軸装置20は、固定本体部23に対して旋回軸部21を旋回本体部22と共に回転させる。これにより、旋回主軸装置20は、図3に示すように、主軸装置30の姿勢(回転軸Rの向き)を水平方向(0度)から垂直方向(180度)を経て所定角度θ(例えば、210度)までの間で変化させて主軸装置30の旋回割出しを行う。尚、旋回本体部22(旋回軸部21)の回転角度は、例えば、図示を省略するエンコーダヘッド及びエンコーダスケールを有するロータリエンコーダ等の検出器を用いて検出される。
【0014】
旋回軸部21は、中空円筒状であり、旋回軸DがZ軸(回転軸R)に対して略45度傾斜するように、上端側が固定本体部23の内部に配置される。旋回軸部21の上端は、図4に示すように、動力源としてのモータ25が発生した回転動力が減速機構部24を介して伝達されるリング状の第一被伝達要素としてのリングギヤ21aが設けられており、回転駆動可能に支持されている。
【0015】
旋回本体部22は、旋回軸部21の下端に相対回転不能に固定されており、旋回軸Dの回りに回転可能に設けられる。旋回本体部22には、図2に示すように、主軸装置30が主軸31の回転軸Rを旋回軸部21の旋回軸Dに対して45度傾斜させた状態で旋回軸Dの回りに旋回可能となるように設けられる。ここで、主軸31の先端側には回転工具32が着脱可能に取り付けられ、主軸31の後端側には主軸31の回転用モータ(図示省略)が連結される。
【0016】
固定本体部23は、サドル13の側面に対して、Y軸方向に移動可能に設けられている。固定本体部23の内部には、図2に示すように、旋回軸部21及び旋回本体部22を旋回軸Dの回りに回転させるための回転動力を発生する動力源としてのモータ25が収容されている。モータ25のモータシャフト25aには、ドライブギヤ26が相対回転不能に連結されている。ドライブギヤ26は、図2に示すように、固定本体部23の側面から突出して設けられており、収容部23aの内部に収容されるようになっている。
【0017】
(2.減速機構部24の構成)
減速機構部24は、図4に示すように、例えば、ウォーム減速機構や、ローラギヤカム減速機構(例えば、特開2017-89663号公報を参照)等を含む。即ち、減速機構部24は、ねじ軸状に形成された第一伝達要素241を備えている。減速機構部24は、更に、ドライブギヤ26の回転動力を入力する第二伝達要素としてのドリブンギヤ242、及び、第一伝達要素241とドリブンギヤ242とを同軸に連結するシャフト243を備えている。第一伝達要素241、ドリブンギヤ242及びシャフト243は、例えば、固定本体部23と一体に形成された中空筒状のケーシング244の内部に収容される。
【0018】
第一伝達要素241は、例えば、ウォーム減速機構のウォームギヤやローラギヤカム機構の回転カム軸部材等である。第一伝達要素241は、図4に示すように、旋回軸部21の第一被伝達要素としてのリングギヤ21aに対して捩れの関係を有する、所謂、食い違い軸となるように配置されている。第一伝達要素241は、ドリブンギヤ242の回転速度を減速して回転動力を旋回軸部21のリングギヤ21aに伝達する。第一伝達要素241は、シャフト243の軸方向における長さがドリブンギヤ242よりも大きく、シャフト243を介して両端部が回転可能に支持されている。
【0019】
ドリブンギヤ242は、モータ25のモータシャフト25aに連結されたドライブギヤ26に歯合している。ドリブンギヤ242は、ドライブギヤ26よりも大径とされており、モータ25(ドライブギヤ26)の回転速度を減速して回転動力をシャフト243を介して連結された第一伝達要素241に伝達する。
【0020】
シャフト243は、第一伝達要素241に対して同軸なるように貫通しており、一端側にてドリブンギヤ242と相対回転不能となるように連結されている。これにより、シャフト243は、第一伝達要素241とドリブンギヤ242とを一体回転可能に連結する。シャフト243は、第一伝達要素241とドリブンギヤ242との間である一端側、及び、第一伝達要素241から突出した他端側が軸受によってケーシング244に対して回転可能となるように支持されている。
【0021】
ケーシング244は、図4に示すように、内部空間が第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3に区画されている。具体的に、ケーシング244は、内周面から周方向に沿って立設された第一壁部244a及び第二壁部244bを有している。これにより、第一壁部244aはケーシング244の内部空間を第一空間部R1と第二空間部R2とに区画し、第二壁部244bはケーシング244の内部空間を第一空間部R1と第三空間部R3とに区画している。
【0022】
第一壁部244aは、第一伝達要素241が第一空間部R1に格納され且つドリブンギヤ242が第二空間部R2に格納された状態で、第一伝達要素241とドリブンギヤ242との間に配置されており、軸受を介してシャフト243の一端側を支持している。即ち、第一壁部244aは、軸受と共に第一支持部を構成する。第二壁部244bは、第一伝達要素241が第一空間部R1に格納され且つドリブンギヤ242が第二空間部R2に格納された状態で、軸受を介して第一伝達要素241から突出したシャフト243の他端側を支持している。即ち、第二壁部244bは、軸受と共に第二支持部を構成する。
【0023】
更に、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3のそれぞれには、潤滑油が後述する液面高さLとなるように格納(充填)される。これにより、第一空間部R1に格納された第一伝達要素241、及び、第二空間部R2に格納されたドリブンギヤ242は、所謂、油浴潤滑によって、少なくとも一部が潤滑油に浸漬された状態で潤滑される。尚、第三空間部R3は、潤滑油と共に第一伝達要素241(シャフト243)の他端側を格納可能とされている。
【0024】
又、減速機構部24は、第一壁部244aに設けられた複数の第一連通路245及び第二壁部244bに設けられた複数の第二連通路246を有している。第一壁部244aに貫通孔として設けられた第一連通路245は、第一空間部R1及び第二空間部R2に充填された潤滑油の流動を可能とする。第二壁部244bに貫通孔として設けられた第二連通路246は、第一空間部R1及び第三空間部R3に充填された潤滑油の流動を可能とする。これにより、ケーシング244の内部に格納(充填)された潤滑油は、複数の第一連通路245及び第二連通路246を介して、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3の間で流動することが可能となっている。
【0025】
ここで、ケーシング244の内部に充填された潤滑油のY軸方向における液面高さLは、図5及び図6に示すように、少なくとも、第一伝達要素241からリングギヤ21aに回転動力が伝達される第一伝達部分P1、及び、第一連通路245が浸漬されるように設定される。即ち、液面高さLは、鉛直方向に一致するY軸方向にて、第一伝達部分P1よりも上方であり、且つ、モータ25(モータシャフト25a)よりも下方となるように設定される。
【0026】
これにより、第一伝達要素241とリングギヤ21aとの第一伝達部分P1は、図5に示すように、常に潤滑油に浸漬された状態が維持されて潤滑される。一方、図6に示すように、ドライブギヤ26からドリブンギヤ242に回転動力が伝達される第二伝達部分P2には、ドリブンギヤ242が回転することによってかき上げられた潤滑油が供給されることにより潤滑される。
【0027】
又、減速機構部24には、図4に示すように、少なくとも第一連通路245を介して接続された第一空間部R1及び第二空間部R2の間で流動する潤滑油の状態を検出する潤滑油状態検出部を構成する油量センサ247及び油温センサ248が設けられる。具体的に、油量センサ247は潤滑油の油量(液面高さLに相当)を検出し、油温センサ248は潤滑油の温度を検出する。
【0028】
ここで、油量センサ247及び油温センサ248の配置については、少なくとも第一連通路245を介して接続された第一空間部R1及び第二空間部R2の間で流動する潤滑油の状態が検出可能であれば良い。減速機構部24は、第一連通路245によって第一空間部R1及び第二空間部R2が接続され、第二連通路246によって第一空間部R1及び第三空間部R3が接続されている。従って、潤滑油は、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3の間で流動することが可能である。このため、油量センサ247及び油温センサ248は、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3のうちの何れか一つに配置することが可能であり、本実施形態においては第二空間部R2に配置する場合を例示する。
【0029】
尚、油量センサ247及び油温センサ248は検出した油量及び油温を図示省略の制御装置に出力するようになっている。これにより、制御装置は、潤滑油の油量が低下している場合には、例えば、警告ランプ等を点灯させて作業者に報知し、潤滑油の油温が上昇している場合は、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3のうちの何れか一つに配置された冷却部249を作動させて潤滑油を冷却する。冷却部249は、少なくとも第一連通路245を介して第一空間部R1及び第二空間部R2の間で流動する潤滑油を冷却する。
【0030】
(3.工作機械1の作動)
次に、工作機械1の工作物に対する加工動作について説明する。尚、本実施形態においては、主軸装置30の姿勢(回転軸Rの向き)が水平方向(0度)にあるときに工作物の一側面に孔を穿設する。又、主軸装置30の姿勢(回転軸Rの向き)が垂直方向(180度)にあるときに工作物の上面に孔を穿設する加工動作について説明する。
【0031】
工作機械1の制御装置は、ターンテーブル15を回転させて工作物の加工側面を回転工具32側に位置決めし、主軸31の回転用モータを駆動して回転工具32を回転させる。そして、制御装置は、動力源としてのモータ25を駆動させて旋回軸部21及び旋回本体部22を回転させて主軸装置30を旋回させ、回転工具32の回転位相を0度に割り出す。続いて、制御装置は、サドル13、旋回主軸装置20及びスライドテーブル14をX,Y,Z軸方向にそれぞれ移動させて工作物の一側面に孔を穿設する加工を開始する。
【0032】
この場合、旋回主軸装置20が主軸装置30の姿勢(回転軸Rの向き)を回転移動させる際には、モータ25が発生する回転動力は減速機構部24を介して旋回軸部21に伝達される。即ち、減速機構部24においては、ドリブンギヤ242がドライブギヤ26の回転速度を減速する(第一段減速)。ドリブンギヤ242はシャフト243を介して第一伝達要素241に同軸に連結されている。これにより、第一伝達要素241はドリブンギヤ242と同じ回転速度で回転している。
【0033】
第一伝達要素241は、旋回軸部21のリングギヤ21aと第一伝達部分P1にて噛み合っている。従って、第一伝達要素241の回転速度は更に減速されてリングギヤ21aに伝達される(第二段減速)。このように、モータ25(ドライブギヤ26)の回転速度が第一段減速及び第二段減速を経て減速されて旋回軸部21のリングギヤ21aに伝達されることにより、減速機構部24は、減速に反比例する回転動力(トルク)を旋回軸部21に伝達することができる。
【0034】
第一伝達要素241が格納される第一空間部R1及び第二伝達要素としてのドリブンギヤ242が格納される第二空間部R2には、液面高さがLとなるように潤滑油が充填(格納)されており、第一伝達要素241及びドリブンギヤ242は油浴潤滑される。このため、上述したように、第一伝達要素241の第一伝達部分P1は潤滑油に浸漬した状態が維持される。一方、ドリブンギヤ242は一部が潤滑油に浸漬しており、第二伝達部分P2にはドリブンギヤ242の回転に伴って潤滑油がかき上げられて供給される。
【0035】
ところで、例えば、ドリブンギヤ242における負荷の大きさが第一伝達要素241における負荷の大きさよりも大きい場合、ドリブンギヤ242の発熱によって第二空間部R2の潤滑油の油温が第一空間部R1の潤滑油の油温よりも上昇する。この場合、減速機構部24においては、第一連通路245及び第二連通路246を介して、潤滑油が第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3の間で潤滑油が流動することができ、潤滑油の油温は均等化される。
【0036】
即ち、第一壁部244aには複数の第一連通路245が設けられている。又、第二壁部244bには複数の第二連通路246が設けられている。これにより、第二空間部R2においてドリブンギヤ242が回転することに伴い、油温が上昇した第二空間部R2の潤滑油は第一連通路245を介して第一空間部R1に向けて流動する。
【0037】
又、第一空間部R1において第一伝達要素241が回転することに伴い、油温が相対的に低い第一空間部R1の潤滑油は第一連通路245及び第二連通路246を介して第二空間部R2及び第三空間部R3に向けて流動する。尚、第三空間部R3は、シャフト243(第一伝達要素241)の他端側を格納可能であり回転動力が伝達されないため、第一空間部R1及び第二空間部R2に比べて油温が急激に変化しにくい。
【0038】
このように、減速機構部24においては、第一連通路245及び第二連通路246を介して、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3の間で潤滑油が流動する、換言すれば、潤滑油が対流する。これにより、減速機構部24においては、ケーシング244に格納(充填)された潤滑油が強制的に撹拌され、その結果、潤滑油の油温が均等になる。
【0039】
そして、潤滑油の油温の差が解消されることにより、負荷の大きく発熱し易いドリブンギヤ242が冷却される。従って、第一伝達要素241、ドリブンギヤ242、シャフト243及びケーシング244を含んで構成される減速機構部24の構造体においては、潤滑油から伝わる熱量が均等になる。その結果、構造体に複雑な熱変形が生じることを抑制することができる。
【0040】
ここで、第一壁部244aと共に第一支持部を構成する軸受、及び、第二壁部244bと共に第二支持部を構成する軸受は、第一連通路245及び第二連通路246に比べて潤滑油の流動性が乏しいものの、潤滑油を流動させることは可能である。従って、第一支持部の軸受及び第二支持部の軸受も、それぞれ、第一連通路及び第二連通路を構成することが可能である。
【0041】
以上の説明からも理解できるように、上述した実施形態の工作機械1は、固定部としての固定本体部23と、固定本体部23に対して旋回軸Dの回りに旋回可能に設けられていて、旋回軸Dの回りに主軸装置30を旋回させる旋回部としての旋回軸部21及び旋回本体部22と、旋回軸部21を旋回させる回転動力を発生する動力源としてのモータ25と、モータ25の回転速度を減速して回転動力を旋回軸部21に伝達する減速機構部24と、を備える。ここで、旋回本体部22は、主軸装置30の主軸31の回転軸Rを旋回軸Dに対して傾斜(具体的には、45度傾斜)させた状態で、主軸装置30を旋回軸Dの回りに旋回させる。
【0042】
減速機構部24は、軸状に形成され、旋回軸部21に対してモータ25が発生した回転動力を伝達する第一伝達要素241と、第一伝達要素241を油浴潤滑するように潤滑油及び第一伝達要素241を格納する第一空間部R1と、モータ25と回転動力の伝達が可能となるようにドライブギヤ26に連結され(歯合し)、且つ、第一伝達要素241にシャフト243を介して同軸に連結されて、第一伝達要素241に回転動力を伝達する第二伝達要素としてのドリブンギヤ242と、ドリブンギヤ242を油浴潤滑するように潤滑油及びドリブンギヤ242を格納し、第一空間部R1と区画されている第二空間部R2と、第一空間部R1と第二空間部R2との間で潤滑油の流動を可能とする第一連通路245と、を備える。
【0043】
これによれば、第一空間部R1に格納された潤滑油と第二空間部R2に格納された潤滑油とは、第一連通路245を介して互いに流動することができる。これにより、減速機構部24において、第一伝達要素241及びドリブンギヤ242が回転してモータ25からの回転動力を旋回軸部21に伝達する際に、潤滑油が第一連通路245を介して流動することにより、第一空間部R1及び第二空間部R2における潤滑油の油温を均等にすることができる。従って、第一伝達要素241及びドリブンギヤ242を含む減速機構部24を構成する構造体に伝わる熱量が均等になり、その結果、構造体の複雑な熱変形を抑制することができる。
【0044】
この場合、第一伝達要素241は、ねじ軸状に形成され、第一伝達要素241の回転軸に対して捩れの関係を有する旋回軸Dの回りに回転可能なリング状の第一被伝達要素であるリングギヤ21aに回転動力を伝達することができる。
【0045】
これによれば、ねじ軸状の例えばウォーム減速機構やローラギヤカム減速機構等において、第一伝達要素241の軸方向中央付近に大きな負荷がかかる構造を有する減速機構部24であっても、構造体に伝わる熱量を均等にすることができる。これにより、構造体の複雑な熱変形を抑制することができる。
【0046】
これらの場合、減速機構部24は、更に、第一伝達要素241のドリブンギヤ242と連結されたシャフト243の一端側を回転可能に支持し、第一空間部R1と第二空間部R2とを区画する第一支持部を構成する第一壁部244a及び軸受を備える。ここで、減速機構部24は、第一伝達要素241、ドリブンギヤ242及び潤滑油を格納するケーシング244を有する。そして、ケーシング244は、第一伝達要素241(シャフト243)の一端側を回転可能に支持すると共に第一空間部R1と第二空間部R2とを区画する第一支持部を構成する第一壁部244aを備えており、第一連通路245が第一壁部244aに設けられた貫通孔を含んで構成される。
【0047】
これらによれば、ケーシング244の内部に第一空間部R1と第二空間部R2とを区画する第一壁部244a(第一支持部)を設けることができ、且つ、第一壁部244aに第一連通路245を設けることができる。従って、減速機構部24の小型軽量化が可能となり、ひいては、工作機械1の小型軽量化を実現することができる。
【0048】
又、これらの場合、第一連通路245は、第一伝達要素241の周方向にて複数設けられる。これによれば、第一空間部R1及び第二空間部R2の間において、潤滑油をスムーズに流動させることができる。従って、第一空間部R1及び第二空間部R2における潤滑油の油温を均等にすることができ、その結果、構造体の複雑な熱変形を抑制することができる。
【0049】
又、これらの場合、減速機構部24は、更に、第一伝達要素241(シャフト243)の他端側に形成され、第一空間部R1と区画されている第三空間部R3と、第一空間部R1と第三空間部R3との間で潤滑油の流動を可能とする第二連通路246と、を備える。
【0050】
これによれば、第三空間部R3には、第一伝達要素241(シャフト243)の他端側及び潤滑油が格納される。即ち、第三空間部R3は、回転動力を伝達するため部材が配置されず、主に潤滑油を格納する空間となる。そして、第一空間部R1と第三空間部R3との間においては、第二連通路246を介して、潤滑油が流動することができる。従って、例えば、第一空間部R1及び第二空間部R2における潤滑油の油温上昇によって構造体に熱変形が生じ得る状況において、第三空間部R3は構造体に生じる熱変形を抑制するように作用することができる。
【0051】
この場合、減速機構部24は、更に、第一伝達要素241(シャフト243)の他端側を回転可能に支持し、第一空間部R1と第三空間部R3とを区画する第二支持部を構成する第二壁部244b及び軸受を備える。ここで、ケーシング244は、第一伝達要素241(シャフト243)の他端側を回転可能に支持すると共に第一空間部R1と第三空間部R3とを区画する第二壁部244bを備えており、第二連通路246が第二壁部244bに設けられた貫通孔を含んで構成される。
【0052】
これによれば、ケーシング244の内部に第一空間部R1と第三空間部R3とを区画する第二壁部244b(第二支持部)を設けることができ、且つ、第二壁部244bに第二連通路246を設けることができる。従って、減速機構部24の小型軽量化が可能となり、ひいては、工作機械1の小型軽量化を実現することができる。
【0053】
又、これらの場合、第二連通路246は、第一伝達要素241の周方向にて複数設けられる。これによれば、第一空間部R1及び第三空間部R3の間において、潤滑油をスムーズに流動させることができる。従って、第一空間部R1及び第三空間部R3における潤滑油の油温を均等にすることができ、その結果、構造体の複雑な熱変形を抑制することができる。
【0054】
これらの場合、第一伝達要素241、ドリブンギヤ242及び第一連通路245は、鉛直方向に一致するY軸方向にてモータ25(モータシャフト25a)よりも下方に位置し、第一空間部R1及び第二空間部R2に格納された潤滑油の液面高さLは、少なくとも第一伝達要素241から旋回軸部21のリングギヤ21aに対して回転動力を伝達する第一伝達部分P1、及び、第一連通路245よりも鉛直方向にて上方であり、且つ、モータ25(モータシャフト25a)よりも鉛直方向にて下方となるように設定される。又、この場合、液面高さLは、モータ25(ドライブギヤ26)からドリブンギヤ242に対して回転動力を伝達する第二伝達部分P2に潤滑油が供給されるように設定される。
【0055】
これらによれば、液面高さLは、第一伝達部分P1よりもY軸方向にて上方且つモータ25(モータシャフト25a)よりもY軸方向にて下方に設定することができる。加えて、液面高さLは、第二伝達部分P2に潤滑油を供給できるように設定することができる。即ち、第一伝達部分P1に応じて規定された液面高さLは、ドリブンギヤ242の潤滑にも適する。これにより、第一伝達要素241及びドリブンギヤ242を油浴潤滑する場合、第一連通路245により潤滑油の流動が可能であるため、同一の液面高さLを維持できると共に、同一の液面高さLで第一伝達要素241及びドリブンギヤ242の潤滑を成立させることができる。
【0056】
尚、ドリブンギヤ242の潤滑に適さない液面高さLとしては、ドリブンギヤ242の回転に伴って撹拌された潤滑油がドライブギヤ26及びドリブンギヤ242にかからないほど液面が低い場合を挙げることができる。又、ドリブンギヤ242の潤滑に適さない液面高さLとしては、モータシャフト25aの高さまで液面が高く、その結果、モータ25への潤滑油の進入が懸念される場合を挙げることができる。
【0057】
又、これらの場合、減速機構部24は、第一連通路245を介して第一空間部R1及び第二空間部R2の間を連通する潤滑油の状態を検出する潤滑油状態検出部としての油量センサ247及び油温センサ248を有する。
【0058】
これによれば、油量センサ247及び油温センサ248は、第一連通路245を介して第一空間部R1及び第二空間部R2の間を流動する潤滑油の油量及び油温を検出することができる。このため、油量センサ247及び油温センサ248を減速機構部24(ケーシング244)の第一空間部R1又は第二空間部R2に設置すれば良く、油量センサ247及び油温センサ248を配置する際の自由度を向上させることができる。これにより、作業者が潤滑油の油量及び油温を確認しやすくなって工作機械1の保守性を向上させることができる。又、センサの数を低減することができるため、コスト低減も達成することができる。
【0059】
尚、第二連通路246を介して第一空間部R1及び第三空間部R3の間で潤滑油が流動する場合には、油量センサ247及び油温センサ248を減速機構部24(ケーシング244)の第三空間部R3に設置することも可能である。この場合においても、油量センサ247及び油温センサ248は、第一空間部R1及び第二空間部R2の間を流動する潤滑油の油量及び油温を検出することができる。
【0060】
更に、これらの場合、減速機構部24は、第一連通路245を介して少なくとも第一空間部R1及び第二空間部R2の間で流動する潤滑油を冷却する冷却部249を有する。
【0061】
これによれば、冷却部249は、第一連通路245を介して第一空間部R1及び第二空間部R2の間を流動する潤滑油を冷却することができる。このため、冷却部249を減速機構部24(ケーシング244)の第一空間部R1及び第二空間部R2に設置すれば良く、冷却部249を配置する際の自由度を向上させることができる。これにより、冷却部249の設置数を減少させることができて小型軽量化及びコスト低減を達成することができる。
【0062】
尚、第二連通路246を介して第一空間部R1及び第三空間部R3の間で潤滑油が流動する場合には、冷却部249を減速機構部24(ケーシング244)の第三空間部R3に設置することも可能である。この場合においても、冷却部249は、第一空間部R1及び第二空間部R2の間を流動する潤滑油を冷却することができる。
【0063】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記実施形態においては、一つのケーシング244の内部に第一壁部244a及び第二壁部244bを設けて第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3を形成するようにした。これに代えて、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3のそれぞれを別体として形成することも可能である。この場合、第一空間部R1と第二空間部R2とを連通する連通路、及び、第一空間部R1と第三空間部R3とを連通する連通路は、例えば、管体等で構成される。
【0065】
尚、この場合においても、第一伝達要素241及び第二伝達要素であるドリブンギヤ242がシャフト243によって同軸に配置されることが好ましい。そして、第一空間部R1、第二空間部R2及び第三空間部R3に格納(充填)される潤滑油の液面高さLは、第一空間部R1に格納される第一伝達要素241とリングギヤ21aとの第一伝達部分P1よりも上方であり、且つ、モータ25(ドライブギヤ26)よりも下方となるように設定される。
【0066】
又、上記実施形態においては、第二伝達要素として一つのドリブンギヤ242で構成するようにした。しかしながら、第二伝達要素としては、一つの歯車で構成されることに限らず、複数の歯車からなる歯車機構で構成しても良い。この場合においても、第二伝達要素は油浴潤滑可能となるように第二空間部R2に格納され、例えば、歯車の回転に伴って潤滑油がかき上げられて各歯車の潤滑及び冷却が行われる。
【0067】
又、上記実施形態においては、旋回軸DがZ軸(回転軸R)に対して45度傾斜するようにした。これに代えて、旋回軸DがZ軸(回転軸R)に直交するようにしたり、旋回軸DがY軸(回転軸R)に直交するようにしたり構成することも可能である。
【0068】
又、上記実施形態においては、減速機構部24が潤滑油状態検出部としての油量センサ247及び油温センサ248を備えるように構成した。しかしながら、必要に応じて、油量センサ247及び油温センサ248の両方又は一方を省略して構成することも可能である。又、上記実施形態においては、減速機構部24が冷却部249を備えるように構成した。しかしながら、必要に応じて、冷却部249を省略して構成することも可能である。
【0069】
更に、上記実施形態においては、減速機構部24が潤滑油状態検出部として潤滑油の油量(液面高さLに相当)を検出するように油量センサ247を備えるようにした。これに代えて、潤滑油の油量(液面高さLに相当)を検出可能であれば、油面計等の他の検出手段を備えて構成可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0070】
1…工作機械、11…ベッド、12…コラム、13…サドル、14…スライドテーブル、15…ターンテーブル、20…旋回主軸装置、21…旋回軸部(旋回部)、21a…リングギヤ(第一被伝達要素)、22…旋回本体部(旋回部)、23…固定本体部(固定部)、23a…収容部、24…減速機構部、241…第一伝達要素、242…ドリブンギヤ(第二伝達要素)、243…シャフト、244…ケーシング、244a…第一壁部(第一支持部)、244b…第二壁部(第二支持部)、245…第一連通路、246…第二連通路、247…油量センサ(潤滑油状態検出部)、248…油温センサ(潤滑油状態検出部)、249…冷却部、25…モータ(動力源)、25a…モータシャフト、26…ドライブギヤ、30…主軸装置、31…主軸、32…回転工具、D…旋回軸、P1…第一伝達部分、P2…第二伝達部分、R…回転軸、R1…第一空間部、R2…第二空間部、R3…第三空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6