IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】粘着シート及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230418BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230418BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/00
C09J4/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019021739
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128488
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/060364(WO,A1)
【文献】特開2013-209487(JP,A)
【文献】国際公開第2015/080120(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104566(WO,A1)
【文献】特開2011-241377(JP,A)
【文献】特開2015-199813(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175306(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、架橋(メタ)アクリル共重合体と、分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体と、光重合開始剤とを含有し、
前記架橋(メタ)アクリル共重合体は、架橋性(メタ)アクリル共重合体が架橋剤で架橋された構造を有し、
前記重合性単量体は、環状エーテル構造を有する単官能単量体及び分子内に重合性二重結合を2つ以上有する多官能単量体を含み、
前記多官能単量体は、分子内にビスフェノール骨格を有する、粘着シート。
【請求項2】
前記環状エーテル構造を有する単官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して5~30質量部含まれる、請求項1の粘着シート。
【請求項3】
前記環状エーテル構造は4~6員環である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記多官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1~15質量部含まれる、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィルムからなる群より選ばれる1種の第1部材との貼り合せに使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記第1部材と、ガラス板、樹脂フィルム及び樹脂板からなる群より選ばれる1種の第2部材との貼り合せに使用される、請求項に記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート又はその硬化物を備える、積層体。
【請求項8】
前記第1部材をさらに備え、該第1部材と、前記粘着シート又はその硬化物の層とが積層した構造を有する、請求項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及び該粘着シートを備える積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着シートは、例えば、部材どうしを貼り合わさる用途等に使用されており、種々の分野において広く利用されている。このような粘着シートは、近年では液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、あるいはタッチパネル等の入力装置等の用途にも使用されている。表示装置あるいは入力装置を構成する光学ディスプレイ等の各部材どうしの貼り合わせに粘着シートを使用することで、高精度、かつ、容易に各種装置を製造することができる。
【0003】
表示装置、あるいは入力装置においては、例えば、樹脂製のカバーパネルと、タッチパネルセンサー等で構成される層とを、粘着シートによって貼り合わすことが行われており、このような用途に適した粘着シートが種々提案されている。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子内に反応性官能基を有する反応性官能基含有モノマー及びN-ビニルカルボン酸アミドを含む(メタ)アクリル酸エステル重合体と、架橋剤(B)とを含む粘着性組成物から形成される粘着シートが提案されている。このような特定構造を有するアクリルポリマーをベースとする粘着シートをタッチパネル等の入力装置等に使用することで、耐ブリスター性及び耐湿熱白化性を向上させることができるとされている。また、特許文献2には、特定構造のアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物により形成され、所定のせん断貯蔵弾性率を有する粘着剤層を備える光学用粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-172537号公報
【文献】特開2012-87240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、樹脂製のカバーパネル等の部材を粘着シートで貼り合わせる場合、カバーパネル等の部材から発生するガス(いわゆるアウトガス)によって、接着界面において気泡、浮き及び剥がれ等が起こり得るという問題があった。例えば、貼り合わせるカバーパネル等をハードコート層等で保護することでアウトガス発生を抑制できる。しかし、この場合は貼り合わせる部材の種類が制約されるという問題があった。つまり、アウトガスが発生しやすい部材であって、ハードコート層等で保護されてない部材に対しては、耐アウトガス性が劣るという点で、従来の粘着シートを使用し難いという課題を有していた。特許文献1等に開示される技術では、耐ブリスター性(耐アウトガス性)に一定の改善は期待できるものの、例えば、ハードコート層を有していないポリカーボネートを使用した場合、耐ブリスター性は十分でなく、さらなる改善の余地を残していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐アウトガス性に優れる粘着シート及び該粘着シートを備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、環状エーテル構造を有する単官能単量体を使用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
粘着剤層を備える粘着シートであって、
前記粘着剤層は、架橋(メタ)アクリル共重合体と、分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体と、光重合開始剤とを含有し、
前記架橋(メタ)アクリル共重合体は、架橋性(メタ)アクリル共重合体が架橋剤で架橋された構造を有し、
前記重合性単量体は、環状エーテル構造を有する単官能単量体を含む、粘着シート。
項2
前記環状エーテル構造を有する単官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して5~30質量部含まれる、項1の粘着シート。
項3
前記環状エーテル構造は4~6員環である、項1又は2に記載の粘着シート。
項4
前記重合性単量体は、分子内に重合性二重結合を2つ以上有する多官能単量体を含有する、項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
項5
前記多官能単量体は、分子内にビスフェノール骨格を有する、項4に記載の粘着シート。
項6
前記多官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1~15質量部含まれる、項4又は5に記載の粘着シート。
項7
樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィルムからなる群より選ばれる1種の第1部材との貼り合せに使用される、項1~6のいずれか1項に記載の粘着シート。
項8
前記第1部材と、ガラス板、樹脂フィルム及び樹脂板からなる群より選ばれる1種の第2部材との貼り合せに使用される、項7に記載の粘着シート。
項9
項1~8のいずれか1項に記載の粘着シート又はその硬化物を備える、積層体。
項10
前記第1部材をさらに備え、該第1部材と、前記粘着シート又はその硬化物の層とが積層した構造を有する、項9に記載の積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る粘着シートは、耐アウトガス性に優れ、貼り合せ後において気泡、浮き及び剥がれが発生しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0011】
1.粘着シート
本発明の粘着シートは粘着剤層を備える。前記粘着剤層は、架橋(メタ)アクリル共重合体と、分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体と、光重合開始剤とを含有し、前記架橋(メタ)アクリル共重合体は、架橋性(メタ)アクリル共重合体が架橋剤で架橋された構造を有し、前記重合性単量体は、環状エーテル構造を有する単官能単量体を含む。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」または「メタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0013】
<架橋(メタ)アクリル共重合体>
架橋(メタ)アクリル共重合体は、架橋性(メタ)アクリル共重合体と架橋剤とが反応して形成される架橋構造を有する重合体である。このような架橋(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、粘着シートにおいて使用されている公知の架橋(メタ)アクリル共重合体を広く適用することができる。
【0014】
(架橋性(メタ)アクリル共重合体)
架橋性(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル共重合体骨格に、架橋反応性を示す官能基が結合した構造を有することができる。架橋反応性を示す官能基としては、特に限定されず、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、チオール基、イソシアネート基等を挙げることができる。黄変及び腐食等が生じにくくなるという点で、粘着剤層は酸フリーであることが好ましいので、架橋性(メタ)アクリル共重合体も酸フリーであることが好ましい。従って、架橋反応性を示す官能基は、カルボキシ基を含まないことがより好ましい。特に好ましい架橋反応性を示す官能基は水酸基であり、この場合、架橋(メタ)アクリル共重合体も形成されやすい。
【0015】
架橋性(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、架橋反応性を示す官能基を有する単量体単位と、架橋反応性を示す官能基を有さない単量体単位とを有することができる。この場合、架橋性(メタ)アクリル共重合体は、例えば、架橋反応性を示す官能基を有するモノマーと、架橋反応性を示す官能基を有さないモノマーとを共重合することで得ることができる。以下、架橋反応性を示す官能基を有するモノマーを「モノマーA」と表記し、架橋反応性を示す官能基を有さないモノマーを「モノマーB」と表記する。
【0016】
モノマーAとしては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリルモノマー及びカルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーを挙げることができる。
【0017】
水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、分子中に一以上の水酸基を有する限りは、その種類は特に限定されない。例えば、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;等を挙げることができる。
【0018】
これらの中でも水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。この場合、耐アウトガス性に優れる粘着シートが得られやすい。水酸基含有(メタ)アクリルモノマーは、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーは、分子中に一以上のカルボキシ基を有する限りは、その種類は特に限定されない。例えば、カルボキシ基含有(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0020】
前述のように、粘着シートは酸フリーであることが好ましい点において、モノマーAは、水酸基含有(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。モノマーAは、その他、アミノ基、アミド基、エポキシ基、チオール基及びイソシアネート基等のいずれか1種以上の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーであってもよい。仮に粘着シートが酸を含む場合、例えば、架橋性(メタ)アクリル共重合体を構成するためのモノマー全質量に対し、酸基を有するモノマーの含有量は5質量%以下とすることができ、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
モノマーBとしては、例えば、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、あるいは、芳香環を有する(メタ)アクリレートを挙げることができる。モノマーBの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル、(メタ)アクリレート等を挙げることができる。モノマーBは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。この場合、耐アウトガス性に優れる粘着シートが得られやすい。モノマーBは、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0022】
架橋性(メタ)アクリル共重合体は、例えば、モノマーAとモノマーBとを公知の重合方法によって重合して製造することができる。この重合方法としては、例えば、溶液重合、バルク重合、懸濁重合、乳化重合等を採用できる。
【0023】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合において、モノマーAとモノマーBとの使用割合は特に限定されず、目的の架橋性(メタ)アクリル共重合体に応じて適宜設定することができる。例えば、モノマーA及びモノマーBの総量100質量部あたり、モノマーA(架橋性官能基を有するモノマー)を0.5~60質量部含むことができる。この場合、粘着シートは所望の粘着力を有することができ、耐アウトガス性の低下も起こりにくい。モノマーA及びモノマーBの総量100質量部あたり、モノマーAを1~55質量部含むことが好ましい。
【0024】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合では、必要に応じて、モノマーA及びモノマーB以外の重合性単量体を併用することもできる。このような重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物以外のモノマーA及びモノマーBと共重合可能なラジカル重合性の単量体を挙げることができる。その具体例として、酢酸ビニル、スチレン等を挙げることができる。モノマーA及びモノマーBと共重合可能なラジカル重合性の単量体の使用量は、例えば、モノマーA及びモノマーBの総量100質量部あたり、20質量部以下であることが好ましい。
【0025】
なお、架橋性(メタ)アクリル共重合体の製造において、モノマーA及びモノマーBの使用割合(質量比)は、モノマーA及びBの重合で得られる架橋性(メタ)アクリル共重合体中に含まれる、架橋反応性を示す官能基を有する単量体単位と、架橋反応性を示す官能基を有さない単量体単位との質量比に対応する。
【0026】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合方法では、必要に応じて溶媒を使用することができる。溶媒の種類は特に限定されず、例えば、重合で使用されている公知の有機溶媒を広く使用することができる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;ヘキサン等の炭化水素;トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族化合物;を挙げることができる。前記重合反応で使用する溶媒の使用量は特に限定されない。
【0027】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合方法では、必要に応じて重合開始剤を使用することができ、例えば、一般的な重合で使用されている公知の重合開始剤を広く使用することができる。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過硫酸アンモニウム、光重合開始剤(イルガキュアーまたはオムニラッド(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。
【0028】
重合開始剤の濃度は特に限定されず、例えば、得られる架橋性(メタ)アクリル共重合体の重合体が所望の分子量を有する範囲で適宜調整することができる。例えば、モノマーA及びモノマーBの総量100質量部あたり、重合開始剤を0.01~5質量部使用することができる。
【0029】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合は、例えば、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
【0030】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を得るための重合の時間及び重合温度も限定されず、使用するモノマーA及びモノマーBの種類、使用量及び重合反応性等に応じて、適宜設定することができる。例えば、20~100℃、1~24時間の条件で重合反応を行うことができる。
【0031】
架橋性(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されず、例えば、粘着シートにおいて粘着力の低下が起こりにくいという観点から、10万~200万とすることができ、40万~100万とすることがより好ましい。
【0032】
なお、本発明でいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量のことである。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、市販のGPC測定機、例えば、日本分光株式会社製、LC-2000Plusシリーズ、検出機としてRI-2031Plus、UV-2075Plus等を使用できる。この場合、例えば、昭和電工株式会社製「Shodex KF801」、「Shodex KF803L」、「Shodex KF800L」及び「Shodex KF800D」の4本を接続してなるGPCカラムが用いられる。カラム温度を40℃とすることができる。溶離液としてテトラヒドロフランが用いられ、流速1.0ml/分にて測定される。通常、標準ポリスチレンを用いて検量線を作製し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を得ることができる。
【0033】
架橋性(メタ)アクリル共重合体は、架橋反応性を示す官能基を有する単量体単位と、架橋反応性を示す官能基を有さない単量体単位とがランダムに配列したいわゆるランダム共重合体とすることができる。あるいは、架橋性(メタ)アクリル共重合体は、ブロックポリマー等、その他の構造を有することもできる。
【0034】
(架橋剤)
架橋剤は、架橋性(メタ)アクリル共重合体の架橋を進行させるための成分である。特に、架橋剤は、架橋性(メタ)アクリル共重合体中の架橋反応性を示す官能基と反応することができる。
【0035】
架橋剤の種類は特に限定されず、公知の架橋剤を広く用いることができる。例えば、架橋剤としては、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤等を挙げることができる。
【0036】
イソシアネート架橋剤の種類は特に限定されず、公知の化合物を広く使用できる。イソシアネート架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、クロロフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネート;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;が例示される。イソシアネート架橋剤は、単独又は異なる2種以上を混合して使用することができる。また、上述したジイソシアネートから得られるアダクト体、ヌレート体、ビュレット体等の3官能の誘導体をイソシアネート架橋剤として用いることがより好ましい。
【0037】
エポキシ架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサノン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0038】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を架橋剤で架橋させて、架橋(メタ)アクリル共重合体を得るにあたり、架橋性(メタ)アクリル共重合体と架橋剤との使用割合は特に限定されない。例えば、架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部あたり、架橋剤を0.01~5質量部使用することができる。この場合、粘着シートは所望の粘着力を有することができる。架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部あたり、架橋剤を0.05~1質量部使用することが好ましい。
【0039】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を架橋剤で架橋させるにあたって、必要に応じて他の成分も併用することができる。当該他の成分としては、例えば、シランカップリング剤を挙げることができる。シランカップリング剤を併用する場合、粘着シートの粘着強度が向上しやすい。
【0040】
シランカップリング剤の種類は特に限定されず、例えば、公知の化合物を広く使用できる。シランカップリング剤としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジアルコキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシランγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0041】
架橋性(メタ)アクリル共重合体を架橋剤で架橋させるにあたって、シランカップリング剤を併用する場合は、その使用量は、架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部あたり、0.1~5質量部含有することができる。
【0042】
<分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体>
粘着シートにおいて、分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体は、環状エーテル構造を有する単官能単量体を含む。環状エーテル構造を有する単官能単量体は、分子内に重合性二重結合及び環状エーテル構造の両方を有する単量体である。以下では、分子内に重合性二重結合を有する重合性単量体を「重合性単量体M」と表記し、環状エーテル構造を有する単官能単量体を「環状エーテル含有モノマー」と表記する。
【0043】
(環状エーテル含有モノマー)
重合性単量体Mに含まれる環状エーテル含有モノマーは、分子中に環状エーテル構造を有するラジカル重合性のモノマーである限り、その種類は特に限定されず、公知の環状エーテル含有モノマーを広く使用することができる。例えば、環状エーテル含有モノマーは、側鎖に環状エーテル構造を含む基を有することができる。
【0044】
環状エーテル構造としては、3員環以上である限りは特に限定されないが、耐アウトガス性が向上しやすいという観点からは、環状エーテル構造は4員環以上であることがより好ましい。つまり、環状エーテル構造は3員環以外であることが好ましい。中でも環状エーテル構造は、4~6員環であること、つまりは4員環、5員環及び6員環のいずれか1種以上であることが好ましい。
【0045】
環状エーテル構造の環を構成する原子のうち、酸素原子の数は1以上である限り特に限定されず、例えば、酸素原子の数は1個又は2個とすることができる。環状エーテル構造の環を構成する原子のうち、酸素原子以外の原子は、通常、炭素原子である。
【0046】
環状エーテル構造は、テトラヒドロフラン構造であることが好ましい。この場合、粘着シートは耐アウトガス性が特に向上する。
【0047】
環状エーテル構造において、環を構成する酸素原子以外の原子(例えば炭素原子)は、1個以上の置換基を有することもできる。置換基の種類は特に限定されず、例えば、炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数2~10のアルキニル基等を挙げることができ、より具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等である。
【0048】
環状エーテル構造が前記置換基を有する場合、置換基の数及び結合位置等は特に限定されず、いずれであっても本発明の効果は損なわれない。通常は、環状エーテル構造が有する前記置換基の数は1個又は2個である。
【0049】
環状エーテル含有モノマーとしては、例えば、環状エーテル構造を有する(メタ)アクリルエステルを挙げることができる。この場合、例えば、(メタ)アクリルエステルのエステルの酸素原子に環状エーテル構造が直接又は間接的に結合した構造を有する。環状エーテル構造が(メタ)アクリルエステルの酸素原子に間接的に結合した構造を有する場合、例えば、下記の一般式(1)又は一般式(2)で表される基がエステルの酸素原子と環状エーテル構造との間に介在する。
-(CH- (1)
(式(1)中、mは1~5の整数を示す)
【0050】
【化1】
【0051】
式(1)において、mは好ましくは1~2である。式(2)において、nは好ましくは0~4である。
【0052】
環状エーテル含有モノマーのさらなる具体例としては、下記の(3-1)~(3-6)で示す化合物を挙げることができる。
【0053】
【化2】
【0054】
重合性単量体Mに含まれる環状エーテル含有モノマーは、1種単独であってもよいし、異なる2種以上の環状エーテル含有モノマーを含むこともできる。
【0055】
粘着シートにおいて、環状エーテル含有モノマーの含有量は特に限定されない。粘着シートの耐アウトガス性がより優れるという観点から、粘着シートにおいて、環状エーテル含有モノマー(環状エーテル構造を有する単官能単量体)は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して5~50質量部含まれることが好ましい。
【0056】
さらに詳述すると、粘着シートにおいて、環状エーテル含有モノマーは、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して7質量部以上含まれることがより好ましく、10質量部以上含まれることが特に好ましい。また、粘着シートにおいて、環状エーテル含有モノマーは、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して40質量部以下含まれることがより好ましく、30質量部以下含まれることがより好ましく、25質量部以下含まれることが特に好ましい。
【0057】
重合性単量体Mは、本発明の効果が阻害されない限り、環状エーテル含有モノマー以外の単官能重合性単量体を含むこともできる。このような単官能重合性単量体としては、例えば、公知の単官能重合性単量体を広く適用することができる。重合性単量体Mが環状エーテル含有モノマー以外の単官能重合性単量体を含む場合、その含有量は、例えば、重合性単量体Mの全質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下とすることができる。
【0058】
(多官能単量体)
重合性単量体Mは、分子内に重合性二重結合を2つ以上有する多官能単量体を含有することも好ましい。この場合、粘着シートは耐アウトガス性が向上しやすいことに加えて、粘着シートを硬化させたときの収縮を抑制することもできる。分子内に重合性二重結合を2つ以上有する多官能単量体を以下では単に「多官能単量体」と表記する。
【0059】
多官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、粘着シートにおいて使用されている公知の多官能単量体を広く使用することができる。中でも、粘着シートを硬化させたときの収縮をより抑制しやすいという観点から、多官能単量体は、分子内にビスフェノール骨格を有することが好ましい。より具体的には、ビスフェノール骨格を有するアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリルエステルを多官能単量体として使用することができる。この場合、アルキレンオキサイドは、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等である。アルキレンオキサイド単位数は、例えば、1~5とすることができる。
【0060】
多官能単量体としては、例えば、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,4-ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,9-ノナンジオール、ジアクリル酸1,6-ヘキサンジオール、ジ(メタ)アクリル酸ポリブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ネオペンチルグリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸トリプロピレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、トリ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール、テトラ(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類、メタクリル酸ビニル等が挙げられる。
【0061】
前述の分子内にビスフェノール骨格を有する多官能単量体としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクレート、プロポキシ化ビスフェノールAのジアクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジアクレート等が挙げられる。
【0062】
多官能単量体は市販品を使用することもでき、例えば、東亞合成社製の三官能モノマーM310(トリメチロールプロパンPO変性トリアクリレート)や三官能モノマーM321(トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、東亞合成社製の二官能モノマーM211B(ビスフェノールA EO変性ジアクリレート)等が挙げられる。
【0063】
多官能単量体において、1分子中の重合性二重結合の数は2以上である限り特に限定されない。例えば、多官能単量体において、1分子中の重合性二重結合の数は2個とすることができる。
【0064】
粘着シートにおいて、多官能単量体の含有量は特に限定されない。粘着シートの耐アウトガス性及び硬化後の収縮がより抑制されるという観点から、粘着シートにおいて、多官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して1~15質量部含まれることが好ましい。
【0065】
粘着シートにおいて、多官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して3質量部以上含まれることがより好ましく、5質量部以上含まれることが特に好ましい。また、粘着シートにおいて、多官能単量体は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して12質量部以下含まれることが好ましい。
【0066】
重合性単量体Mは、単官能単量体と多官能単量体のみで構成することができ、さらには、環状エーテル含有モノマー及び多官能単量体のみで構成することもできる。
【0067】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、前記重合性単量体Mに光を照射して重合反応(光重合)を進行させる成分である。光重合開始剤は、前記重合性単量体Mを光重合させることができる限り、その種類は特に限定されず、例えば、公知の光重合開始剤を広く使用することができる。
【0068】
光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-ヘニルプロパノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチル-1-プロパノン等のアルキルフェノン系光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイドや、2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤、ベンゾイルギ酸メチルや4メチルベンゾフェノン等の分子内水素引き抜き型光重合開始剤の他、オキシムエステル系光重合開始剤やカチオン系光重合開始剤等が挙げられる。光重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0069】
粘着シートにおいて、光重合開始剤の含有量は、例えば、100質量部の前記重合性単量体Mあたり、0.1~10質量部とすることができる。光重合開始剤の含有量について、架橋性(メタ)アクリル共重合体を基準とすれば、100質量部の架橋性(メタ)アクリル共重合体あたり、光重合開始剤の含有量は、0.05~5質量部とすることができる。
【0070】
<粘着剤層>
上述のように、粘着シートを構成する粘着剤層は、前記架橋(メタ)アクリル共重合体と、前記重合性単量体Mと、光重合開始剤とを含有する。本発明の効果が阻害されない限り、粘着剤層は、その他の成分、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、防腐剤等が含まれていてもよい。粘着剤層がその他の成分を含む場合、その含有量は、例えば、粘着剤層の全質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下とすることができる。
【0071】
(粘着剤層の形成方法)
粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、公知の手法を広く適用することができる。例えば、粘着剤層は、粘着剤組成物を用いて形成することができる。ここで使用する粘着剤組成物は、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体、前記架橋剤、前記前記重合性単量体M、及び、光重合開始剤を含有することができる。
【0072】
具体的に粘着剤層の形成方法は、前記粘着剤組成物を基材上に塗布して粘着剤組成物の塗膜を形成する工程、及び、該塗膜を乾燥処理(硬化)することで、粘着剤層を形成する工程を備えることができる。
【0073】
前記粘着剤組成物の調製方法は特に限定されず、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体、前記架橋剤、前記前記重合性単量体M、及び、光重合開始剤を所定の配合割合で混合することで調製することができる。混合方法も特に限定されず、例えば、市販の混合機を使用できる。
【0074】
前記粘着剤組成物において、架橋性(メタ)アクリル共重合体、架橋剤、前記重合性単量体M、及び、光重合開始剤それぞれの含有量は、目的とする粘着シートに応じて適宜設定することができる。具体的には、粘着シートに含まれる前記架橋(メタ)アクリル共重合体、記重合性単量体M及び光重合開始剤の含有量がそれぞれ前述の範囲となるように、前記粘着剤組成物に含まれる各成分の含有量を調節することができる。
【0075】
前記粘着剤組成物は、例えば、塗布性を向上させるために必要に応じて溶剤を含むこともできる。溶剤としては特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル化合物;ジエチルエーテル等のエーテル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の塩素系炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びt-ブタノール等のアルコール等が挙げられる。溶剤は、単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0076】
前記粘着剤組成物が溶剤を含む場合、塗布性を考慮して、該粘着剤組成物の固形分濃度が10~60質量%の範囲となるように溶剤を使用することが好ましく、15~50質量%の範囲となるように溶剤を使用することがさらに好ましい。
【0077】
前記粘着剤組成物を基材上に塗布する方法は特に限定されず、例えば、公知の塗布方法を広く採用することができる。例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の市販の塗布装置を用いて前記粘着剤組成物を塗布することができる。
【0078】
粘着剤組成物の塗布量は特に限定されず、目的の粘着シートの粘着剤層の厚みに応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤組成物の塗布量は、後記する乾燥処理後に形成される粘着剤層の厚みが5~1000μmとなるように調節することができる。
【0079】
粘着剤組成物を塗布するための基材の種類も特に限定的ではなく、粘着剤層の形成に用いられる基材を広く使用することができる。例えば、粘着剤組成物を塗布するための基材として、剥離シートを挙げることができる。
【0080】
剥離シートとしては、例えば、粘着シートにおいて接着剤層を保護するために使用されている、いわゆるセパレータを挙げることができる。より具体的には、剥離シートとして、離型層を備える樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0081】
剥離シートにおいて、樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を挙げることができる。
【0082】
離型層とは、前記樹脂フィルムの少なくとも片面に形成された層であって、粘着剤層の粘着力よりも小さい剥離力を有し、容易に剥離シートを剥離することができるように形成された層であることを意味する。このような離型層は、例えば、粘着シートにおいて離型層として使用される公知の成分を広く適用することができる。例えば、公知のシリコーン材料で離型層を形成することができる。
【0083】
基材として前記剥離シートを使用する場合、粘着剤組成物は、当該剥離シートの離型層面に塗布して、粘着剤組成物の塗膜を形成することができる。
【0084】
粘着剤組成物を、前記剥離シート等の基材上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥処理をすることで、粘着剤層が基材上に形成される。この乾燥処理により、粘着剤組成物に含まれる前記架橋性(メタ)アクリル共重合体と前記架橋剤との反応が進み、前記架橋性(メタ)アクリル共重合体が前記架橋剤で架橋されて、前記架橋(メタ)アクリル共重合体が形成される。
【0085】
乾燥処理の条件は特に限定されず、例えば、従来から行われている粘着剤組成物の塗膜の乾燥方法を広く採用することができる。このような乾燥処理は、例えば、公知の加熱装置等を用いて行うことができる。加熱温度は、例えば、50~200℃とすることができ、好ましくは60~150℃とすることができる。加熱時間は溶剤が揮発し、粘着剤層の残留溶剤濃度が例えば1000ppm以下になるように設定すればよく、粘着剤組成物の濃度、所望する粘着剤層の厚み等に応じて上記温度範囲で1~30分程度の時間内で適宜設定することが好ましい。
【0086】
上記乾燥処理によって、前記架橋(メタ)アクリル共重合体と、前記重合性単量体Mと、光重合開始剤とを含有する粘着剤層が形成される。つまり、乾燥処理においては、架橋性(メタ)アクリル共重合体の架橋反応が主に進行して硬化が進むが、前記重合性単量体Mはいまだ重合が起こっていない状態である。言い換えれば、粘着剤層は、前記粘着剤組成物が半硬化した状態であるといえる。念のための注記に過ぎないが、架橋性(メタ)アクリル共重合体の架橋反応は、乾燥処理によって必ずしも完了するわけではなく、後記するエージング処理によっても架橋反応は進行し得る。
【0087】
このように形成された粘着剤層には、さらに接着剤層を保護するための保護層を貼り合せることができる。この場合、保護層は、粘着剤層の基材とは逆側の面に貼り合わされる。保護層としては、例えば、前述と同様、剥離シートを挙げることができる。この保護層としての剥離シートも前記基材の場合と同様、離型層を備える樹脂フィルム等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、前述と同様、ポリエチレンテレフタレートフィルム等を挙げることができ、また、離型層は、例えば、公知のシリコーン材料で形成することができる。
【0088】
基材及び保護層がいずれも剥離シート(それぞれ第1の剥離シート、第2の剥離シート)である場合、基材としての剥離シート(第1の剥離シート)の離型層の剥離力と、保護層を形成するための剥離シート(第2の剥離シート)の離型層の粘着力とは異なることが好ましい。つまり、基材及び保護層がいずれも剥離シートである場合、それぞれの剥離シートの剥離力が異なることが好ましい。この場合、剥離シートを剥がすときに一方の剥離シートだけを選択的に剥がすことが容易になり、いわゆる泣き別れの現象を抑止しやすい。
【0089】
粘着剤層を形成し、必要に応じて保護層を上記のように形成した後、適宜、エージング処理を行うことで、所望の粘着シートを得ることができる。このエージング処理により、前述のように、架橋性(メタ)アクリル共重合体の架橋反応が進行し、硬化がさらに進む。
【0090】
エージング処理の方法は特に限定されず、例えば、15~50℃の雰囲気下に粘着シートを静置させる方法を挙げることができる。エージング時間は、温度によって適宜設定することができ、例えば、1日~10日とすることができる。
【0091】
<粘着シートの構成>
粘着シートにおいて、粘着剤層の厚みは特に限定されず、使用する用途等に応じて適宜設定することができる。例えば、粘着シートを、入力装置等における樹脂製のカバーパネル等の部材の貼り合わせに使用する場合、粘着剤層の厚みは、5~1000μmとすることができる。粘着シートは片面粘着シート及び両面粘着シートのいずれでもよく、通常は、両面粘着シートである。
【0092】
粘着シートは、粘着剤層のみで形成されていてもよいし、必要に応じて他の層を有していてもよい。他の層は、粘着剤層の片面又は両面に形成することができる。他の層としては、前述の剥離シートを挙げることができる。粘着剤層の両面に剥離シートが形成される場合は、前述のように、両剥離シート(第1の剥離シート及び第2の剥離シート)の剥離力が異なるようにすることができる。両剥離シートの剥離力が異なる場合、例えば、剥離シートを剥がすときに一方の剥離シートだけを選択的に剥がすことが容易になり、いわゆる泣き別れの現象を抑止しやすい。
【0093】
例えば、前述の粘着剤層の形成方法において、基材として剥離シートを使用し、また、保護層としても剥離シートを使用する場合は、粘着剤層の両面に剥離シートを有する粘着シート(剥離層付き粘着シート)を直接得ることができる。なお、粘着剤層を形成した後、別途、その両面に剥離シートを設けて、剥離層付き粘着シートを得ることもできる。
【0094】
粘着シートが剥離シートを有する場合、これらの剥離シートは粘着シートにおける、いわゆるセパレータとしての機能を有することができる。
【0095】
粘着シートが剥離シートを備える場合、剥離シートの厚みは特に限定されない。例えば、剥離シートの厚みは20~300μmとすることができ、好ましくは30~150μmとすることができる。粘着剤層の両面の剥離シートは互いに厚みが異なっていてもよい。
【0096】
<粘着シートの使用方法>
粘着シートは、基板、フィルム等の部材(被着体)どうしを貼り合せて接着させる用途に広く使用することができる。
【0097】
例えば、一対の被着体の間に粘着シートを介在させ、被着体どうしを粘着シートで貼り合せることにより積層体を形成することで、被着体同士を粘着シートで貼り合せることができる。特に、被着体同士を該粘着シートで貼り合わせた後の積層体に活性エネルギー線を照射することで耐久性を最大限高めることができる。なお、粘着シートが剥離シートを備える場合は、当該剥離シートを剥がした状態で、一対の被着体の間に粘着シートを介在させる。
【0098】
前述のように、粘着シートにおける粘着剤層は、粘着剤組成物が半硬化した状態で存在することから、活性エネルギー線が粘着剤層に照射されることで、粘着剤層に存在する重合性単量体Mの重合反応が光重合開始剤によって起こる。これにより、粘着剤層の硬化がさらに進行し、この粘着剤層の硬化によって、被着体どうしがより強固に接着される。
【0099】
粘着剤層が硬化することによって、重合性単量体Mの重合体(以下、「重合体M」と表記する)が粘着剤層中に生成する。この重合体Mは、その構成単位中に環状エーテル含有モノマーの由来する構成単位を有し、これを有することで、粘着シートに優れた耐アウトガス性が発揮される。この結果、重合性単量体Mの重合反応前、重合反応中及び重合反応後に、被着体からガス成分(アウトガス)が発生したとしても、粘着剤層はそのアウトガスによる影響を受けにくいことから、粘着剤層が硬化した後も気泡、浮き及び剥離が発生しにくい。
【0100】
ここで、前記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
【0101】
活性エネルギー線照射の積算光量は、例えば500~5000mJ/cm、好ましくは1000~4000mJ/cm、より好ましくは1500~3000mJ/cmである。
【0102】
活性エネルギー線の照射方法も特に限定されず、例えば、前記積層体の全面に対して活性エネルギー線を照射することができる。この観点から、被着体の少なくとも一方は、透明であることが好ましい。活性エネルギー線の照射にあたっては、例えば、公知の活性エネルギー線照射装置を使用することができる。
【0103】
粘着シートは、耐アウトガス性に優れることから、従来、被着体からのアウトガスによる気泡等の発生が起こりやすかった用途に特に好適である。
【0104】
具体的に、粘着シートは、樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィルムからなる群より選ばれる1種の第1部材との貼り合わせに使用することができる。第1部材は、例えば、公知の製造方法により得ることができ、あるいは、市販品から入手することもできる。第1部材が樹脂板である場合、例えば、キャスト法により得ることができる他、射出成型法等の各種成型方法によって得ることができる。なお、第1部材は、粘着シートの使用目的に応じて、板、シート及びフィルム以外の種々の形状に成型加工されていてもよい。
【0105】
第1部材の厚みは特に限定されず、粘着シートが適用される用途に応じて適宜設定することができる。例えば、第1部材が樹脂板である場合、その厚みは通常、1mm以上とすることができる。
【0106】
樹脂板等の第1部材を形成するための樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のスチレン樹脂等を挙げることができる。樹脂は、異なる2種以上を含むこともでき、例えば、アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含む複合材料を挙げることもできる。中でも粘着シートは、ポリメチルメタクリレート樹脂板及びポリカーボネート樹脂板等の貼り合せに使用されることが好ましく、ポリカーボネート樹脂板の貼り合せに使用されることが特に好ましい。つまりは、粘着シートを使用して貼り合わせを行う場合、一方の被着体をポリカーボネート樹脂等の樹脂板とすることができる。
【0107】
ポリカーボネート樹脂は、アクリル樹脂等に比べてアウトガスが発生しやすい材料として知られている。このため、アウトガスの問題を抑制すべく、従来はポリカーボネート樹脂板にハードコート層を設ける等の工夫がなされていたが、本発明の粘着シートを使用する場合は、ハードコート層を有していないポリカーボネート樹脂板であっても、アウトガスによる影響を抑制することができる。アウトガスは、例えば、貼り合わせ時の活性エネルギー線の照射時に発生することがあるし、あるいは、貼り合わせ後、時間と共に徐々に発生することも考えられる。
【0108】
粘着シートは、前記第1部材と、樹脂板、樹脂シート及び樹脂フィルムからなる群より選ばれる1種の第2部材との貼り合せに使用されることがより好ましい。
【0109】
粘着シートは優れた耐アウトガス性を有し、特にポリカーボネート樹脂板を被着体とする貼り合わせに好適であることから、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、タッチパネル等の入力装置等の用途に特に好適に使用することができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば、透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルム等が挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0110】
2.積層体
本発明の積層体は、前述した粘着シート又はその硬化物を備える。なお、粘着シートが剥離シートを備える場合は、当該剥離シートが剥離された状態で積層体に存在する。つまり、積層体は前記粘着剤層を備えているということができる。
【0111】
積層体において、粘着剤層が前述のように半硬化した状態であれば(つまり、粘着剤層中に前記重合性単量体Mが存在する場合)、積層体は粘着シートを備える。一方、積層体において、粘着剤層が前述のように活性エネルギー線の照射によってさらに硬化した状態であれば、積層体は粘着シートの硬化物を備える。
【0112】
積層体は、さらに他の層を備えることができ、例えば、前記第1部材を挙げることができる。積層体が前記第1部材を備える場合、積層体は、第1部材と、前記粘着シート又はその硬化物の層とが積層した構造を有する。第1部材としては、<粘着シートの使用方法>の項で説明した第1部材と同様である。従って、第1部材としては、例えば、ポリカーボネート樹脂板を挙げることができる。
【0113】
積層体は、ポリカーボネート樹脂板等の第1部材に加えて、さらに他の層、例えば、基材層等を備えることができる。この場合、積層体は、基材層と、粘着シート又はその硬化物と、第1部材とがこの順に積層した構造を有することができる。
【0114】
基材層としては、ITO基板、ガラス基板、金属基板、樹脂基板、紙、布、不織布等を挙げることができる。
【0115】
積層体が粘着シートの硬化物を備える場合は、例えば、硬化前の粘着シート(つまり、半硬化した状態である粘着剤層)を備える積層体を製作し、この積層体に活性エネルギー線を照射することで、粘着シートの硬化物を備える積層体を得ることができる。
【0116】
積層体は、耐アウトガス性に優れることから、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置、タッチパネル等の入力装置等の用途に特に好適に使用することができる。
【0117】
積層体の製造方法は特に限定されず、例えば、上述した粘着シートの粘着剤層を被着体に対して半硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を後硬化させる工程を含むことができる。具体的に、積層体の製造方法は、粘着シートの少なくとも一方の面側に被着体を積層する工程1、及び前記粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射することにより前記粘着剤層を後硬化させる工程2を順に有する。つまり、積層体の製造方法は、前述の粘着剤層を形成する工程を備えることができる。
【実施例
【0118】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0119】
(合成例1)
<架橋性(メタ)アクリル共重合体(a-1)の作製>
モノマーB(架橋反応性を示す官能基を有さないモノマー)としてブチルアクリレート(BA)を、モノマーA(架橋反応性を示す官能基を有するモノマー)として2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)を準備し、BAが75質量%及び2HEAが25質量%であるモノマー混合物を調製した。このモノマー混合物と、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の酢酸エチル溶液とを混合して混合物を得た後、該混合物を60℃に加熱してランダム共重合させ、架橋性(メタ)アクリル共重合体(a-1)を得た。架橋性(メタ)アクリル共重合体(a-1)の重量平均分子量は58万であった。
【0120】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定条件は以下のとおりである。
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム:Shodex KF801、KF803L、KF800L、KF800D(昭和電工社製を4本接続して使用した)
カラム温度:40℃
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI-2031plus(JASCO製)
ポンプ:RI-2080plus(JASCO製)
流量(流速):0.8ml/分
注入量:10μL
校正曲線:標準ポリスチレンShodex standard ポリスチレン(昭和電工社製)Mw=1320~2,500,000迄の10サンプルによる校正曲線を使用した。
【0121】
(合成例2-1)
前述の特許文献1を参照し、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)60質量%、4-アクリロイルモルホリン5質量%、イソボルニルアクリレート15質量%、N-ビニルアセトアミド5質量%及び2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量%を溶液重合法により共重合させて、架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)を調製した。この架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)の分子量は重量平均分子量(Mw)51万であった。
【0122】
(合成例2-2)
前述の特許文献2の実施例1記載の方法に従って、次のように架橋性アクリル共重合体を調製した。2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)63質量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)15質量部、メタクリル酸メチル(MMA)9質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)13質量部、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を酢酸エチルへ溶解した。溶液を65℃に加熱してランダム共重合させ、架橋性アクリル共重合体(b-2)を得た。架橋性アクリル共重合体(B-2)の重量平均分子量は78万であった。
【0123】
(実施例1)
<粘着剤組成物(A-1)の作製>
合成例1で製造した架橋性アクリル共重合体(a-1)100質量部に対して、架橋剤としてトリレンジイソシアネート化合物(東ソー社製、コロネートL-55E)を0.2質量部、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,KBM-403)を0.30質量部、環状エーテル含有モノマーとして3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート(大阪有機化学工業社製、OXE-10)を25質量部、多官能単量体としてビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成社製、アロニックス M211B)を12質量部、及び、光重合開始剤としてビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製、IRGACURE819)を1.0質量部添加し、固形分濃度が35質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して、半硬化状態の粘着剤組成物(A-1)を得た。
【0124】
<粘着剤層(A-1)の作製>
次いで、第1の剥離シートとして、シリコーン系剥離剤で処理された易接着剤層を備えた厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム社製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備した。この第1の剥離シートの易接着剤層側の面に、乾燥後の塗工厚みが150μmになるように粘着剤組成物(A-1)を、アプリケーターにて均一に塗工し、粘着剤組成物(A-1)の塗膜を作製した後、90℃の空気循環式恒温オーブンで3分間乾燥処理することで、第1の剥離シートの表面に粘着剤層(A-1)を形成した。
【0125】
次いで、第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された厚さ75μmの第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム社製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)を準備した。この第2の剥離シートを、第1の剥離シートの表面に形成されている粘着剤層(A-1)の上に貼り合わせた。これにより、粘着剤層(A-1)が剥離力差のある1対の剥離シートに挟まれた第1の剥離シート/粘着剤層(A-1)/第2の剥離シートの構成の剥離シート付き粘着シートが得られた。この剥離シート付き粘着シートを23℃、相対湿度50%の条件で7日間静置して、エージング処理を行った。
【0126】
(実施例2)
環状エーテル含有モノマーとして3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレートの代わりに3-エチルー3-オキセタニルメチルメタクリレート(大阪有機化学工業社製、OXE-30)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0127】
(実施例3)
環状エーテル含有モノマーとして3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート25質量部の代わりにテトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#150)20質量部を使用し、多官能単量体としてビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート12質量部の代わりにビスフェノールF EO変性ジアクリレート(東亞合成社製、アロニックス M208)6質量部を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0128】
(実施例4)
環状エーテル含有モノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートの代わりにテトラヒドロフルフリル構造を有したアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#150D)を使用したこと以外は実施例3と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0129】
(実施例5)
環状エーテル含有モノマーとして3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレート25質量部の代わりに(2-メチルー2-エチルー1,3-ジオキソランー4-イル)メチルアクリレート(大阪有機化学工業社製、MEDOL-10)10質量部を使用し、多官能単量体としてビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート12質量部の代わりにビスフェノールA EO(3.8)付加物ジアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#700HV)10質量部を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0130】
(実施例6)
(2-メチルー2-エチルー1,3-ジオキソランー4-イル)メチルアクリレート10質量部の代わりに環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(大阪有機化学工業社製、ビスコート#200)10質量部を使用したこと以外は実施例5と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0131】
(比較例1)
環状エーテル構造を有する単官能単量体、多官能単量体及び光重合開始剤を使用しなかった以外は実施例1と同様にして剥離シート付き粘着シートを得た。
(比較例2)
単官能単量体として3-エチル-3-オキセタニルメチルアクリレートの代わりにイソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、ISTA)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法で剥離シート付き粘着シートを得た。
【0132】
(比較例3)
合成例2-1で製造した架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-1)100質量部に対して、架橋剤としてトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,BHS8515)0.15質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製,KBM-403)0.30質量部とを添加し、固形分濃度が35質量%となるように溶剤としてメチルエチルケトンを添加して粘着剤組成物(B-1)を得た。次いで、実施例1の粘着剤層(A-1)の作製方法において、粘着剤組成物(A-1)を粘着剤組成物(B-1)に変更した以外は実施例1の粘着剤層(A-1)の作製方法と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得た。この剥離シート付き粘着シートは、粘着剤層(B-1)を有していた。
【0133】
(比較例4)
合成例2-2で製造した架橋性(メタ)アクリル共重合体(b-2)100質量部に対して、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(三井化学社製、タケネートD110N)を0.3質量部、架橋促進剤としてエチレンジアミンにプロピレンオキシドを付加したポリオール(アデカ社製、EDP-300)を0.2質量部、シランカップリング剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業製、KBM-403)0.15重量を添加し、固形分濃度が30質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して粘着剤組成物(B-1)を得た。次いで、実施例1の粘着剤層(A-1)の作製方法において、粘着剤組成物(A-1)を粘着剤組成物(B-2)に変更し、かつ、乾燥処理を60℃の空気循環式恒温オーブンで1分間乾燥後さらに155℃で1分間乾燥する条件に変更すると共に、エージング処理を23℃で120時間の処理に変更した以外は実施例1の粘着剤層(A-1)の作製方法と同様の手順で剥離シート付き粘着シートを得た。この剥離シート付き粘着シートは、粘着剤層(B-2)を有していた。
【0134】
<耐アウトガス性評価>
(試験例1-1)
実施例1~6及び比較例2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウトガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、該粘着剤層に対して第1部材として厚み1mmのポリカーボネート樹脂板(帝人社製のパンライトシートPC-1151)に貼り合わせた。次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層に対し、第2部材として100mm×200mmの大きさのガラス板を全面に貼着した。これにより、ポリカーボネート樹脂板/粘着剤層/ガラス板で構成される積層体サンプルを得た。積層体サンプルをオートクレーブにて、40℃、0.5MPaで30分処理した後、ガラス板側から紫外線を積算光量が3000mJ/cmとなるように照射して、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た。試験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、2時間後及び100時間後のそれぞれにおいて、試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを下記の3種類の判定基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0135】
(試験例1-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例1、3及び4で作製した剥離シート付き粘着シートを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例1-1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを試験例1-1と同様の判定基準で評価した。
【0136】
(試験例2-1)
実施例1~6及び比較例2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウトガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ該粘着剤層に対して、第1部材として厚み1mmのハードコート付ポリカーボネート樹脂板(三菱ガス化学社製のユーピロン・シートMR-58U)のハードコート層が付いていない側に貼り合わせた。次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層に対し、第2部材として100mm×200mmの大きさのガラス板を全面に貼着した。これにより、ポリカーボネート樹脂板/粘着剤層/ガラス板で構成される積層体サンプルを得た。積層体サンプルをオートクレーブにて、40℃、0.5MPaで30分処理した後、ガラス板側から紫外線を積算光量が3000mJ/cmとなるように照射して、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た。試験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、2時間後及び100時間後のそれぞれにおいて、試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを下記の3種類の判定基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0137】
(試験例2-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例1、3及び4で作製した剥離シート付き粘着シートを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例2-1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを試験例2-1と同様の判定基準で評価した。
【0138】
(試験例3-1)
実施例1~6及び比較例2で作製した剥離シート付き粘着シートを用いて、耐アウトガス性評価を以下のように行った。剥離シート付き粘着シートにおいて、軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、該粘着剤層に対して、第2部材として厚み125μmのITOフィルム(尾池工業社製 KB300)を貼り合わせた。次に、重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層に対し、第1部材として100mm×200mmの大きさの厚さ1mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)からなるアクリル樹脂板(三菱レイヨン社製,アクリライト MR-200)を全面に貼着した。これにより、ポリメチルメタクリレート樹脂板/粘着剤層/ITOフィルムで構成される積層体サンプルを得た。積層体サンプルをオートクレーブにて、40℃、0.5MPaで30分処理した後、ガラス板側から紫外線を積算光量が3000mJ/cmとなるように照射して、100mm×200mmの大きさの試験サンプルを得た。試験サンプルを85℃、相対湿度85%の環境下に置き、2時間後及び100時間後のそれぞれにおいて、試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを下記の3種類の判定基準で評価した。
◎:2時間後及び100時間後のいずれも気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
○:2時間後に微小気泡が観察されるが、100時間後には気泡、浮き及び剥がれが見られなかった。
×:2時間後にも100時間後にも気泡、浮き及び剥がれが見られた。
【0139】
(試験例3-2)
剥離シート付き粘着シートとして、比較例1、3及び4で作製した剥離シート付き粘着シートを用いたこと、及び、積層体サンプルに紫外線を照射しなかったこと以外は試験例3-1と同様の方法で、試験サンプルを得た。試験サンプルを目視観察し、気泡、浮き及び剥がれを試験例3-1と同様の判定基準で評価した。
【0140】
(評価結果)
表1に、耐アウトガス性の評価結果を示す。実施例1~6で得られた粘着シートと、比較例1~4で得られた粘着シートとの対比から、実施例1~6で得られた粘着シートでは耐アウトガス性に優れ、特にハードコート層を有していないポリカーボネートフィルムに対しても優れた耐アウトガス性を有していることがわかった。
【0141】
【表1】