(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】空気圧式工具
(51)【国際特許分類】
B25C 1/04 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
B25C1/04
(21)【出願番号】P 2019030821
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏司
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-150575(JP,A)
【文献】特開2014-054704(JP,A)
【文献】特開2008-068376(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136632(WO,A1)
【文献】特開2016-179526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気の空気圧によって作動する
ピストン、および、前記ピストンを作動させるための圧縮空気の流入を制御するメインバルブを備えた駆動機構と、
前記駆動機構を内蔵したボデーハウジングと、
前記ボデーハウジングに接続されたグリップハウジングと、
前記駆動機構への圧縮空気の供給を制御するための電磁弁と、
前記グリップハウジングの内部に配置され、前記電磁弁に連動して作動するバルブステムと、
を備え、
前記電磁弁は、前記グリップハウジングの延設方向に見て前記ボデーハウジングの反対側に配設されて
おり、
前記バルブステムは、前記電磁弁が配置された前記グリップハウジングの一端側から、前記ボデーハウジングに接続された前記グリップハウジングの他端側まで延設されており、
前記バルブステムが前記グリップハウジングの長手方向に移動することによって、前記メインバルブの作動が制御される、空気圧式工具。
【請求項2】
前記電磁弁は、前記グリップハウジングの延設方向に見て前記グリップハウジングの握り手部分よりも前記ボデーハウジングの反対側に配設されていることを特徴とする、請求項1記載の空気圧式工具。
【請求項3】
前記電磁弁は、前記グリップハウジングの端部に取付られていることを特徴とする、請求項1または2記載の空気圧式工具。
【請求項4】
前記電磁弁の開閉状態を切り換えるための電磁弁用スイッチを備え、
前記電磁弁用スイッチは、前記グリップハウジングの延設方向に見て前記ボデーハウジングの反対側に配設されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気圧式工具。
【請求項5】
前記電磁弁の作動を制御する制御基板を備え、
前記制御基板は、前記グリップハウジングの延設方向に見て前記ボデーハウジングの反対側に配設されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気圧式工具。
【請求項6】
前記電磁弁の可動鉄心の移動方向は、前記駆動機構が作動したときの衝撃の発生方向と異なるように配置されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の空気圧式工具。
【請求項7】
前記電磁弁の弁体の移動方向が、前記グリップハウジングの延設方向に配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の空気圧式工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧縮空気の空気圧によって作動する空気圧式工具として、様々な工具が広く一般に使用されている。例えば、トリガが引き操作されたときにピストン上部に圧縮空気が急激に流入し、圧縮空気の圧力によってピストンを衝撃的に作動させて釘を打ち込む釘打ち機が実用に供されている。こうした釘打ち機は、被打込み材にノーズ部を押し付けることで安全装置としてのコンタクト部材が摺動し、コンタクト部材が摺動した状態でトリガが操作されたときに釘が打ち出されるように構成されている。
【0002】
しかしながら、こうした釘打ち機では、コンタクト部材やトリガが所定の位置まで移動したときに機械的にバルブが作動し、圧縮空気の流入経路が切り替わるように構成されている。このため、コンタクト部材やトリガをどのように配置するかや、作業者がコンタクト部材やトリガを操作するときの速度などによって、圧縮空気の流入タイミングが影響を受けてしまい、打ち込みのタイミング制御が困難であるという問題があった。例えば、トリガを引き操作した状態でコンタクト部材を被打込み材に押し当てて釘を打ち込む、いわゆる「コンタクト打ち」をした場合、コンタクト部材がどこまで押し込まれたときに釘が打ち込まれるのかによって、作業者の反動の感じ方や作業性が変化する。このような作業者の感じ方や作業性を改善するため、機械が作動するタイミングを細かく制御したいという要望があった。
【0003】
このような要望を満たすために、例えば特許文献1に記載されているような電磁弁を使用することが考えられる。すなわち、スイッチによって電気的に作動する電磁弁を使用すれば、スイッチが押下された瞬間に機械が作動するため、機械の作動タイミングを容易に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されているように空気圧式工具に電磁弁を使用する場合、電磁弁などの電気部品をどこに配置するかという点が問題となる。電気部品の配置場所によっては、機械の作動時の衝撃により部品の破損や断線などのトラブルになるおそれがある。
【0006】
また、衝撃を受けやすい場所に電磁弁を配置すると、衝撃により電磁弁の可動鉄心が動いて誤作動するおそれもある。このような誤作動は可動鉄心を押さえるバネなどの荷重を大きく設定することで防止できるが、バネ荷重を大きくすると、バネ荷重に抗して可動鉄心を作動させるために大きな力が必要となり、電磁弁(コイル)の大型化や消費電力の増加につながるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、電磁弁を使用することで機械の作動タイミングを制御しやすくするとともに、電磁弁を大型化することなく誤作動を防止できる空気圧式工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、圧縮空気の空気圧によって作動する駆動機構と、前記駆動機構を内蔵したボデーハウジングと、前記ボデーハウジングに接続されたグリップハウジングと、前記駆動機構への圧縮空気の供給を制御するための電磁弁と、を備え、前記電磁弁は、前記グリップハウジングの延設方向に見て前記ボデーハウジングの反対側に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記の通りであり、電磁弁は、グリップハウジングの延設方向に見てボデーハウジングの反対側に配設されている。このような構成によれば、衝撃を発生させる駆動機構から離れた位置に電磁弁を配置することができる。また、グリップハウジングを握る手の手前側に電磁弁が配設されることになるため、駆動機構の衝撃が電磁弁に伝わる前に、グリップハウジングを握る手によって衝撃が緩衝されるようになっている。よって、駆動機構の作動時に衝撃が発生したとしても、電磁弁に対する衝撃の影響を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】電磁弁の断面図であって、(a)電磁弁が閉状態の図、(b)電磁弁が開状態の図である。
【
図3】駆動機構が作動前の空気圧式工具の断面図である。
【
図4】駆動機構が作動前の空気圧式工具の一部拡大断面図である。
【
図5】駆動機構が作動中の空気圧式工具の断面図である。
【
図6】駆動機構が作動中の空気圧式工具の一部拡大断面図である。
【
図7】制御ユニットおよび起動ユニットを取り外した空気圧式工具の断面図である。
【
図8】変形例1に係る図であって、工具本体の断面図である。
【
図9】変形例1に係る操作部付近の一部拡大断面図であって、(a)操作前の状態を示す図、(b)操作後の状態を示す図である。
【
図10】変形例2に係る図であって、外部電源を使用する空気圧式工具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、釘の打ち出し方向(
図3における下方向)を下方向、下方向とは反対方向(
図3における上方向)を上方向、グリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の方向(
図3における左方向)を前方向、前方向とは反対方向(
図3における右方向)を後方向として説明する。
【0012】
本実施形態に係る空気圧式工具10は、外部から供給された圧縮空気の空気圧によって作動するものであり、例えば
図1に示すような釘打ち機である。なお、本実施形態においては、空気圧式工具10として釘打ち機を例に説明するが、空気圧式工具10としては釘打ち機に限らず、他の工具であってもよい。例えば、圧縮空気で作動するネジ締結機などの工具であってもよい。
【0013】
この空気圧式工具10は、
図1に示すように、ボデーハウジング12に対して略垂直にグリップハウジング25を連結した工具本体11を備えている。
【0014】
ボデーハウジング12は、内部に駆動機構13を収容した筒状の部材である。このボデーハウジング12の先端部には、被打込材に押し付けられるノーズ部20が設けられている。このノーズ部20には、連結釘を収容したマガジン23が接続されており、マガジン23に装填された連結釘の先頭の釘が、供給装置によってノーズ部20へと供給されるようになっている。ノーズ部20へと供給された釘は、駆動機構13が作動したときに、後述するドライバ16によってノーズ部20の先端に設けられた射出口20aから打ち出される。
【0015】
このノーズ部20には、釘の打ち出し方向に摺動可能なコンタクト部材21が取り付けられている。コンタクト部材21は、自然状態においてノーズ部20から突出するように付勢されており、被打込材にノーズ部20を押し付けたときに奥側へと押し込まれて摺動するようになっている。このコンタクト部材21が摺動すると、コンタクト部材21に連結されたコンタクトアーム22が一体的に摺動するようになっている。コンタクトアーム22は、
図4および
図6に示すように、後述するコンタクトスイッチ43を押下可能な位置まで延設されている。このため、コンタクト部材21が押し込まれてコンタクトアーム22が摺動すると、コンタクトアーム22がコンタクトスイッチ43を押下し、これによりノーズ部20が被打込材に押し付けられていることが検知されるようになっている。
【0016】
本実施形態に係る駆動機構13は、
図3および
図5に示すように、圧縮空気の空気圧によってピストン15を摺動させて作動するものである。ピストン15は、シリンダ14内に摺動可能に配置されており、ピストン15の上部に圧縮空気が流入したときにノーズ部20の方向に衝撃的に摺動するようになっている。このピストン15の下部には、ピストン15と一体的に摺動するドライバ16が連結されている。このドライバ16は、ノーズ部20内を摺動可能に配置されており、ノーズ部20内に待機している釘を射出口20aの方向に打ち出すことが可能となっている。
【0017】
上記したピストン15を作動させるための圧縮空気の流入は、シリンダ14の上部開口を覆うように配置されたヘッドバルブ17によって制御される。駆動機構13が作動していない状態では、
図3に示すように、ヘッドバルブ17が下方に位置することでピストン15の上部への圧縮空気の流入が阻止されている。一方、駆動機構13が作動したときには、
図5に示すように、ヘッドバルブ17が上動することでシリンダ14とメインチャンバ26(後述)とを連通させ、ピストン15の上部へ圧縮空気が流入するようになっている。ピストン15の上部へ圧縮空気が流入すると、圧縮空気の圧力によってピストン15が衝撃的に下方に摺動し、ピストン15に連結されたドライバ16によって釘が打ち出されるようになっている。
【0018】
このボデーハウジング12に接続されたグリップハウジング25は、作業者が把持可能に棒状に形成されている。また、作業者がグリップハウジング25を握ったときに作業者の人差し指がかかる位置には、人差し指で引き操作可能な操作部44が設けられている。この操作部44が操作されると、駆動機構13に並設された電磁弁用スイッチ41がオンになり、後述する制御基板34に操作信号が出力されるようになっている。制御基板34は、この操作信号をトリガにして後述する電磁弁32を作動させる。
【0019】
このグリップハウジング25の内部は、
図3に示すように空間となっており、この空間によって圧縮空気を貯留するメインチャンバ26が形成されている。外部から供給された圧縮空気はこのメインチャンバ26に貯留されて、釘の打ち出しなどに使用される。
【0020】
また、このグリップハウジング25の後端部(ボデーハウジング12とは反対側の端部)には、メインチャンバ26を閉塞するグリップエンド部材30が取り付けられている。このグリップエンド部材30は、グリップハウジング25に対して着脱可能に設けられている。グリップエンド部材30には、ホース55のプラグ56を着脱可能な管継手30aが設けられている。この管継手30aに対して外部のエア供給源(空気圧縮機など)に接続したホース55を接続することで、メインチャンバ26に圧縮空気を供給することができる。
【0021】
本実施形態においては、このグリップエンド部材30に一体的に制御ユニット31が取り付けられている。制御ユニット31は、駆動機構13を制御するためのものであり、
図3に示すように、電磁弁32と、バルブステム33と、制御基板34と、電源供給端子35と、電気コネクティングロッド38と、を備えている。
【0022】
電磁弁32は、駆動機構13への圧縮空気の供給を制御するためのものである。この電磁弁32は、
図2に示すように、コイル32aと、固定鉄心32bと、可動鉄心32cと、エア流路32eと、を備えている。
【0023】
エア流路32eは、電磁弁32の内部に圧縮空気を通過させるためのものである。このエア流路32eの上流側の開口であるエア入口32fは、メインチャンバ26と連通している。このため、エア入口32fへは、メインチャンバ26内に貯留された圧縮空気が常に供給されるようになっている。また、エア流路32eの下流側の開口であるエア出口32gは、後述するステムシリンダ33bに連通している。更に、このエア流路32eから分岐するように、排気口32hに連通する経路が形成されている。排気口32hは、空気圧式工具10の外部(大気)と連通するように形成されている。
【0024】
コイル32aに電流が流れていない状態においては、
図2(a)に示すように、可動鉄心32cがバネによって固定鉄心32bから離反する方向に付勢されており、これにより、可動鉄心32cに連動する弁体32dがエア流路32eを閉状態としている。この閉状態では、上流側のエア入口32fから供給された圧縮空気が下流側のエア出口32gへと供給されないようになっている。
【0025】
一方、コイル32aに電流が流れると、
図2(b)に示すように、可動鉄心32cがバネの付勢力に抗して固定鉄心32bに接近する方向に移動する。これにより、可動鉄心32cに連動して弁体32dが移動し、エア流路32eを開状態に移行させる。この開状態では、上流側のエア入口32fから供給された圧縮空気が下流側のエア出口32gへと供給されるようになっている。エア出口32gは後述するステムシリンダ33bに連通しており、エア出口32gからステムシリンダ33bへ供給された圧縮空気は、バルブステム33を動かすために使用される。
【0026】
なお、コイル32aに電流が流れなくなり、開状態から閉状態に戻った場合には、
図2(a)に示すように、可動鉄心32cがバネによって固定鉄心32bから離反する方向に復帰する。これにより、エア流路32eが閉じられるとともに、エア出口32gと排気口32hが連通する。このため、ステムシリンダ33b側へ供給された圧縮空気が排気口32hから抜けるようになっている。これによりステムシリンダ33b内の気圧が下がり、圧縮空気の圧力で摺動していたバルブステム33が元の位置に戻るようになっている。
【0027】
バルブステム33は、グリップエンド部材30から突出するように設けられた棒状部材である。このバルブステム33は、グリップエンド部材30をグリップハウジング25に取り付けたときに、グリップハウジング25の延設方向D1に沿って、グリップハウジング25の内部に配置される。このバルブステム33は、グリップハウジング25の長手方向に摺動可能に支持されており、電磁弁32から供給される圧縮空気の有無に従って、電磁弁32に連動して作動する。
【0028】
具体的には、本実施形態に係るバルブステム33は、後端側(グリップエンド部材30側)にステムピストン33aを備えている。このステムピストン33aは、グリップエンド部材30に固定されたステムシリンダ33bの内部に摺動可能に配置されている。上記したように、電磁弁32がオン(開状態)となって、ステムシリンダ33b内に圧縮空気が供給されると、圧縮空気の圧力でステムピストン33aが押圧され、バルブステム33がボデーハウジング12の方向へ摺動するように構成されている。なお、電磁弁32がオフ(閉状態)のとき、すなわち、ステムシリンダ33b内に圧縮空気が供給されていないときには、圧縮空気による圧力が働かないので、バルブステム33はバネによって付勢されてグリップエンド部材30側で待機するように構成されている。
【0029】
このバルブステム33の先端側(ボデーハウジング12側)には、圧縮空気の供給経路を切り替えるための弁として機能するエア切り替え部33cが設けられている。このエア切り替え部33cは、上記したようにバルブステム33がグリップハウジング25の延設方向D1に移動することで、
図3および
図4に示す待機位置から、
図5および
図6に示す作動位置に移動するようになっている。このようにエア切り替え部33cが移動することで、上記したヘッドバルブ17の作動が制御されるようになっている。
【0030】
具体的には、本実施形態に係る空気圧式工具10は、ヘッドバルブ17の移動を制御するためのパイロットバルブ42を備えている。このパイロットバルブ42は、圧縮空気の流通経路を切り替えるために電磁弁32に連動して作動するようになっており、ヘッドバルブ17の上部空間P2とメインチャンバ26との間に設けられている。
【0031】
図4に示すように、エア切り替え部33cが待機位置にあるときには、P5に示す位置においてパイロットバルブ42の下部空間P4がメインチャンバ26と連通しているため、パイロットバルブ42の下部空間P4に圧縮空気が流入し、圧縮空気の圧力でパイロットバルブ42が上動した状態となっている(パイロットバルブ42の上下に圧縮空気が供給されるが、受圧面積の差でパイロットバルブ42を押し上げる力の方が大きくなるように設定されている)。このようにパイロットバルブ42が上動した状態では、P3に示す位置において、ヘッドバルブ17の上部空間P2とメインチャンバ26とが連通するとともに、ヘッドバルブ17の上部空間P2と排気経路P1とが遮断されている。このため、ヘッドバルブ17の上部空間P2に圧縮空気が流入し、圧縮空気の圧力でヘッドバルブ17が下動した状態となる(ヘッドバルブ17の上下に圧縮空気が供給されるが、受圧面積の差でヘッドバルブ17を押し下げる力の方が大きくなるように設定されている)。ヘッドバルブ17が下動した状態では、ピストン15の上部への圧縮空気の流入が阻止されるので、駆動機構13は作動しない。
【0032】
一方、
図6に示すように、エア切り替え部33cが作動位置に移動すると、P5に示す位置において、パイロットバルブ42の下部空間P4がメインチャンバ26と遮断されるとともに、パイロットバルブ42の下部空間P4が排気経路P6と連通する。このため、パイロットバルブ42の下部空間P4の圧縮空気が排気経路P6から排気され、パイロットバルブ42の下部空間P4の気圧が下がる。パイロットバルブ42の下部空間P4の気圧が下がると、パイロットバルブ42の上下の圧力差によって、パイロットバルブ42が下動する。このようにパイロットバルブ42が下動すると、P3に示すように、ヘッドバルブ17の上部空間P2とメインチャンバ26とが遮断されるとともに、ヘッドバルブ17の上部空間P2と排気経路P1とが連通する。このため、ヘッドバルブ17の上部空間P2の圧縮空気が排気経路P1から排気され、ヘッドバルブ17の上部空間P2の気圧が下がる。ヘッドバルブ17の上部空間P2の気圧が下がると、ヘッドバルブ17の上下の圧力差によって、ヘッドバルブ17が上動する。ヘッドバルブ17が上動すると、ピストン15の上部へ圧縮空気が急激に流入し、駆動機構13が作動する。
【0033】
このように、本実施形態においては、電磁弁32が作動したことに連動して、バルブステム33、パイロットバルブ42、ヘッドバルブ17が順に作動し、駆動機構13が作動するように構成されている。また、バルブステム33がグリップハウジング25の長手方向に移動することによって、駆動機構13への圧縮空気の供給が実行されるようになっている。このため、電磁弁32と駆動機構13とをそれぞれグリップハウジング25の両端に配置した場合でも、電磁弁32によって駆動機構13の作動タイミングを制御できるように構成されている。
【0034】
制御基板34は、電磁弁32などの電気部品の作動を制御するためのものである。この制御基板34は、電気信号の入力をトリガにして処理を実行するための回路を備えている。本実施形態においては、制御基板34の入力側には、電磁弁用スイッチ41やコンタクトスイッチ43が接続されている。また、制御基板34の出力側には、電磁弁32が接続されている。この制御基板34は、電磁弁用スイッチ41とコンタクトスイッチ43とがいずれもオンになったことを検知したときに、電磁弁32のコイル32aに電流を流して電磁弁32をオンに切り替える制御を実行するように構成されている。
【0035】
電源供給端子35は、電源供給を受けるための端子であり、制御基板34や電磁弁32などの電気部品に電力を供給する電源を接続するためのものである。本実施形態に係る空気圧式工具10はバッテリ36によって駆動するため、本実施形態に係る電源供給端子35は、バッテリ36を接続するための端子として構成されている。例えば、
図3に示すように、バッテリ36を収容するケースの内側に電源供給端子35を設け、ケースにバッテリ36を収容したときにバッテリ36の端子と電源供給端子35とが電気的に接続されるようにしてもよい。なお、電源供給端子35の形状としては
図3に示すような態様に限らず、従来周知の様々な形状を使用可能であることは言うまでもない。
【0036】
電気コネクティングロッド38は、上記したバルブステム33と略平行に、グリップエンド部材30から突出するように設けられた棒状部材である。この電気コネクティングロッド38は、グリップエンド部材30をグリップハウジング25に取り付けたときに、グリップハウジング25の延設方向D1に沿って、グリップハウジング25の内部に配置される。
【0037】
この電気コネクティングロッド38は、電気を伝導することが可能であり、後端においてバッテリ36や制御基板34と電気的に接続されている。また、
図7に示すように、電気コネクティングロッド38の先端には接点部38aが設けられている。この接点部38aは、後述する起動ユニット40への電力供給や、起動ユニット40との電気信号の授受に使用することが可能な端子である。この接点部38aを起動ユニット40に接続することで、電磁弁用スイッチ41およびコンタクトスイッチ43が、バッテリ36や制御基板34と電気的に接続される。すなわち、電磁弁用スイッチ41やコンタクトスイッチ43の押下を制御基板34で検知することが可能となる。このように、本実施形態においては、配線をすることなく電気部品を互いに接続可能となっている。
【0038】
上記した電磁弁32、バルブステム33、制御基板34、電源供給端子35、電気コネクティングロッド38、などの部品は、ユニット化されて制御ユニット31を構成しており、この制御ユニット31は、工具本体11に対して一体的に着脱可能となっている。すなわち、グリップハウジング25の端部にグリップエンド部材30を取り付けるだけで、制御ユニット31を工具本体11に取り付けられるようになっている。
【0039】
なお、本実施形態においては、この制御ユニット31とは別に、操作部44に関連する部品をユニット化した起動ユニット40を備えている。本実施形態に係る起動ユニット40は、電磁弁用スイッチ41と、パイロットバルブ42と、コンタクトスイッチ43と、操作部44と、を備えている。
【0040】
電磁弁用スイッチ41およびコンタクトスイッチ43は、電磁弁32の開閉状態を切り換えるためのマイクロスイッチであり、上記したように、この電磁弁用スイッチ41とコンタクトスイッチ43とがいずれもオンとなったときに電磁弁32がオン(開状態)となるように制御される。
【0041】
本実施形態に係る操作部44は、
図4に示すように、起動ユニット40において揺動軸44aを中心に揺動可能に設けられている。この操作部44は、作業者によって引き操作されたときに揺動し、電磁弁用スイッチ41を押下するように構成されている。具体的には、
図6に示すように、作業者が指で操作部44を引き操作すると、操作部44の先端の押圧部44bが棒状の従動部材45を押し下げるように構成されている。従動部材45は先端が電磁弁用スイッチ41に臨むように配置されているため、従動部材45の先端によって電磁弁用スイッチ41が押下されるようになっている。
【0042】
この起動ユニット40には、
図7に示すように、ステム接続部46およびロッド接続部47が設けられている。
【0043】
ステム接続部46は、バルブステム33の先端を挿入して接続するためのものである。このステム接続部46にバルブステム33の先端(エア切り替え部33c)を挿入することで、起動ユニット40内部のエア経路にエア切り替え部33cを組み込むことができるようになっている。これにより、ネジ等を使用しなくてもバルブステム33を駆動機構13側に組み込むことができる。また、電磁弁32をグリップエンド部材30側に配置したにもかかわらず、電磁弁32に連動させて駆動機構13を作動させることができる。また、制御ユニット31を取り外すときにも、ステム接続部46からバルブステム33を引き抜くだけでよいので、メンテンス作業も容易となっている。
【0044】
また、ロッド接続部47は、電気コネクティングロッド38の先端を挿入して接続するためのものである。ロッド接続部47に電気コネクティングロッド38の先端(接点部38a)を挿入することで、起動ユニット40と制御ユニット31とが電気的に接続されるようになっている。これにより、配線を使用しなくても電磁弁用スイッチ41などの電気部品を電源や制御基板34に接続することができる。また、制御基板34や電源供給端子35をグリップエンド部材30側に配置したにもかかわらず、電磁弁用スイッチ41やコンタクトスイッチ43の押下信号をトリガとして電磁弁32を作動させることができる。また、制御ユニット31を取り外すときにも、ロッド接続部47から電気コネクティングロッド38を引き抜くだけでよいので、メンテンス作業も容易となっている。
【0045】
この起動ユニット40は、工具本体11に対して一体的に着脱可能となっている。すなわち、グリップハウジング25の下方に形成された開口に起動ユニット40を取り付けるだけで、起動ユニット40を構成するすべての部品が工具本体11に取り付けられるようになっている。なお、この起動ユニット40の取り付け方向は、制御ユニット31の取り付け方向(グリップハウジング25の延設方向D1)と直交するように形成されている。そして、起動ユニット40を工具本体11に取り付けた後に、制御ユニット31を工具本体11およびに取り付けることで、ステム接続部46およびロッド接続部47に、バルブステム33の先端および電気コネクティングロッド38の先端が挿入されるようになっている。
【0046】
このように、本実施形態においては、制御ユニット31と起動ユニット40とは、それぞれ個別に工具本体11に対して取り付け可能であり、工具本体11の内部で互いに接続可能となっている。そして、容易に制御ユニット31と起動ユニット40とを接続できるため、分解および組み付けが容易となっている。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る空気圧式工具10は、電磁弁32がグリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の反対側に配設されている。このため、衝撃を発生させる駆動機構13から離れた位置に電磁弁32を配置することができる。また、グリップハウジング25を握る手の手前側(駆動機構13の反対側)に電磁弁32が配設されることになるため、駆動機構13の衝撃が電磁弁32に伝わる前に、グリップハウジング25を握る手によって衝撃が緩衝されるようになっている。よって、駆動機構13の作動時に衝撃が発生したとしても、電磁弁32に対する衝撃の影響を小さくすることができる。
【0048】
なお、電磁弁32の配設位置としては、グリップハウジング25の延設方向D1に見て、ボデーハウジング12よりもグリップエンド部材30寄りに(ボデーハウジング12から電磁弁32までの距離よりも、グリップエンド部材30から電磁弁32までの距離が近くなるように)配置することが望ましい。
【0049】
より望ましくは、グリップハウジング25の延設方向D1に見て、グリップハウジング25の握り手部分(作業者が握ることが想定されている部分)よりもボデーハウジング12の反対側に配設されていることが望ましい。例えば、本実施形態のようにグリップハウジング25の端部(グリップエンド部材30)に電磁弁32を取り付ければ、グリップハウジング25の握り手部分よりも後方に電磁弁32を配置することができる。このように配置することで、電磁弁32に対する衝撃の影響を小さくすることができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、グリップエンド部材30に電磁弁32を取り付けるようにしたが、これに限らず、グリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の反対側であれば、別の箇所に電磁弁32を配設してもよい。例えば、本実施形態に係る空気圧式工具10であれば、マガジン23の後部(ボデーハウジング12とは反対側の端部)に電磁弁32を配設した場合でも、電磁弁32に対する衝撃の影響を小さくすることができる
また、本実施形態に係る電磁弁32の可動鉄心32cの移動方向D2は、
図3に示すように、駆動機構13が作動したときの衝撃の発生方向D3(釘の打ち出し方向)と異なるように配置されている。具体的には、本実施形態においては、電磁弁32の可動鉄心32cの移動方向D2は、駆動機構13が作動したときの衝撃の発生方向D3(釘の打ち出し方向)と直交するように配置されている。このような構成によれば、駆動機構13の作動時に衝撃が発生したとしても、その衝撃方向には可動鉄心32cが移動できないので、衝撃により可動鉄心32cが動いて誤作動することを防止できる。別の観点から言えば、可動鉄心32cを押さえ込むバネ荷重を小さくすることができるので、可動鉄心32cを作動させるための磁力を小さく設定することができる。よって、コイル32aの巻き数を減らしたり、電流値を下げたりすることで、電磁弁32(コイル32a)の小型化や消費電力の抑制を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態においては、制御基板34や電源供給端子35についても、グリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の反対側に配設されている。このような構成によれば、駆動機構13の作動時に衝撃が発生したとしても、制御基板34や電源供給端子35に対する衝撃の影響を小さくすることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、制御基板34や電源供給端子35をグリップエンドに取り付けているが、これに限らない。例えば、制御基板34や電源供給端子35をマガジン23に取り付けた場合でも、ボデーハウジング12の反対側に配設することで衝撃を受けにくくすることができる。
【0053】
また、特に図示しないが、駆動機構13が作動したときの衝撃を緩和するために、ゴム等の弾性材料で形成された緩衝材を介して電子部品(電磁弁32、制御基板34、電源供給端子35など)を工具本体11に取り付けてもよい。
【0054】
(変形例1)
変形例1について、
図8~9を参照しながら説明する。なお、本変形例の基本的構成は上記した実施形態と相違しないため、重複する記載を避けて、相違する箇所のみを説明する。
【0055】
上記した実施形態においては、操作部44付近に電磁弁用スイッチ41を配置したが、これに限らず、電磁弁用スイッチ41をグリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の反対側に配設してもよい。例えば、
図8に示すように、グリップエンド部材30に電磁弁用スイッチ41を取り付けてもよい。本変形例においては、コンタクトスイッチ43が設けられていないため、電磁弁用スイッチ41をグリップエンド側に配置することで、電気部品はすべてグリップエンド側でユニット化されるようになっている。
【0056】
本変形例においては、
図8に示すように、工具本体11に、操作部44が揺動可能に取り付けられている。また、この操作部44の内部にはコンタクトレバー48が取り付けられ、このコンタクトレバー48に臨むように摺動子27が取り付けられている。
【0057】
コンタクトレバー48は、操作部44の内部に揺動可能に取り付けられた部材である。このコンタクトレバー48は、
図9に示すように、一端が操作部44に揺動可能に取り付けられており、他端がコンタクトアーム22の先端に臨むように配置されている。このため、操作部44が引き操作されて上動し、かつ、コンタクト部材21が押し込まれてコンタクトアーム22が上動したときに、コンタクトレバー48の両端が持ち上げられるようになっている。このようにコンタクトレバー48の両端が持ち上げられることで、中間部において後述する摺動子27を押し込むように構成されている。
【0058】
摺動子27は、上記したコンタクトレバー48の中間部に臨むように、上下に摺動可能に取り付けられている。この摺動子27は、
図9(a)に示すように、自然状態においてはバネなどにより下方に突出するように付勢されている。また、この摺動子27は、
図9(b)に示すように、操作部44およびコンタクト部材21が同時に操作されたときにのみ、コンタクトレバー48によって押し込まれて上方に移動するように構成されている。この摺動子27は、摺動方向に対して斜めに張り出して形成されたテーパ部27aを備えている。このテーパ部27aは、後述するスイッチステム49を押して作動させるための部位である。
【0059】
また、本変形例においては、
図8に示すように、電気コネクティングロッド38の代わりに、スイッチステム49が配設されている。スイッチステム49は、グリップエンド部材30から突出するように設けられた棒状部材である。このスイッチステム49は、グリップエンド部材30をグリップハウジング25に取り付けたときに、グリップハウジング25の延設方向D1に沿って、グリップハウジング25の内部に配置される。このスイッチステム49は、グリップハウジング25の長手方向に摺動可能に支持されており、摺動子27に連動して作動するようになっている。
【0060】
具体的には、本実施形態に係るスイッチステム49は、前端部が摺動子27のテーパ部27aに臨んでいる。摺動子27が上動する前の状態では、
図9(a)に示すように、スイッチステム49とテーパ部27aとは接触しておらず、スイッチステム49はバネなどの付勢力によって前方に突出した状態となっている。
【0061】
この状態から摺動子27が上動すると、
図9(b)に示すように、摺動子27のテーパ部27aがスイッチステム49を押し込む。これにより、スイッチステム49はバネなどの付勢力に抗して後方に摺動する。スイッチステム49の後端部は、電磁弁用スイッチ41を押下可能に配置されているため、後方に摺動したスイッチステム49によって電磁弁用スイッチ41が押下される。
【0062】
すなわち、操作部44およびコンタクト部材21が同時に操作されると、摺動子27が上動してスイッチステム49を後方に押し込み、後方に押し込まれたスイッチステム49によって電磁弁用スイッチ41が押下されるようになっている。電磁弁用スイッチ41が押下されると、上記した実施形態と同様に電磁弁32が作動し、パイロットバルブ42やヘッドバルブ17が作動するので、駆動機構13が作動して打ち込み動作が実行されるようになっている。
【0063】
このような構成によれば、電磁弁用スイッチ41についても、グリップハウジング25の延設方向D1に見てボデーハウジング12の反対側に配設することができる。よって、駆動機構13の作動時に衝撃が発生したとしても、電磁弁用スイッチ41に対する衝撃の影響を小さくすることができる。
【0064】
また、電気部品をすべてグリップエンド側に配置できるので、配線のわずらわしさがなく、組み付け性やメンテナンス性を向上することができる。
【0065】
(変形例2)
上記した実施形態においては、空気圧式工具10がバッテリ36で駆動する態様について説明したが、これに限らず、空気圧式工具10が外部電源で作動するようにしてもよい。
【0066】
すなわち、上記した実施形態に係る電源供給端子35は、バッテリ36を接続するためのものであったが、これに代えて、
図10に示すように、外部電源に接続した電源ケーブル58を接続可能な電源供給端子35を設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 空気圧式工具
11 工具本体
12 ボデーハウジング
13 駆動機構
14 シリンダ
15 ピストン
16 ドライバ
17 ヘッドバルブ
20 ノーズ部
20a 射出口
21 コンタクト部材
22 コンタクトアーム
23 マガジン
25 グリップハウジング
26 メインチャンバ
27 摺動子
27a テーパ部
30 グリップエンド部材
30a 管継手
31 制御ユニット
32 電磁弁
32a コイル
32b 固定鉄心
32c 可動鉄心
32d 弁体
32e エア流路
32f エア入口
32g エア出口
32h 排気口
33 バルブステム
33a ステムピストン
33b ステムシリンダ
33c エア切り替え部
34 制御基板
35 電源供給端子
36 バッテリ
38 電気コネクティングロッド
38a 接点部
40 起動ユニット
41 電磁弁用スイッチ
42 パイロットバルブ
43 コンタクトスイッチ
44 操作部
44a 揺動軸
44b 押圧部
45 従動部材
46 ステム接続部
47 ロッド接続部
48 コンタクトレバー
49 スイッチステム
55 ホース
56 プラグ
58 電源ケーブル
D1 グリップハウジングの延設方向
D2 電磁弁の可動鉄心の移動方向
D3 衝撃の発生方向