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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/29 20180101AFI20230418BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20230418BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20230418BHJP
   F21S 45/47 20180101ALI20230418BHJP
   F21S 41/19 20180101ALI20230418BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20230418BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20230418BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230418BHJP
【FI】
F21S41/29
F21S41/148
F21S41/33
F21S45/47
F21S41/19
F21S41/43
F21W102:00
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019036437
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020140888
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉江 良裕
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-211219(JP,A)
【文献】特開2018-152321(JP,A)
【文献】特開2014-186999(JP,A)
【文献】特開2011-150993(JP,A)
【文献】特開2004-079353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0103545(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106838758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-2/00,390
2/00,500-45/70
F21V 1/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源から出射した光を反射するリフレクタと、前記リフレクタで反射された光を光軸方向に投影する投影レンズと、を有する車両用灯具において、
前記リフレクタは、前記光源から出射した光を反射する反射面を備える反射部と、前記投影レンズを保持するレンズ保持部と、を一体に有し、
前記反射面は、第1反射面と、前記光源よりも前記レンズ保持部とは反対側に位置し前記第1反射面と連続的に形成した第2反射面と、を有し、
前記レンズ保持部は、前記光軸方向に直交し、前記投影レンズを保持する保持面と、前記保持面とは前記光軸方向の反対側の面である非保持面と、を有し、
前記第2反射面は、前記保持面を基準として、前記第2反射面の先端を前記光源に近づく側に傾斜させた面であり、
前記非保持面の角度は、前記保持面を基準として前記反射部側に前記第2反射面の傾斜角度以上に設定する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用灯具において、
前記リフレクタは、前記反射部と前記レンズ保持部との間に連結部を一体に有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項2に記載された車両用灯具において、
前記連結部は、開口部を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
請求項1からまでの何れか一項に記載された車両用灯具において、
前記光源で発生する熱を放熱する放熱部材と、ネジと、を有し、
前記放熱部材は、前記光源の固定面と、前記ネジを固定するネジ穴と、を有し、
前記リフレクタは、前記固定面に前記光源を取り付けるときの方向と同一方向に前記ネジを通すことが可能な貫通孔を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項4に記載された車両用灯具において、
前記光源から出射された光の一部を遮光するシェードを有し、
前記シェードは、前記貫通孔を第1貫通孔とするとき、前記同一方向に前記ネジを通すことが可能な第2貫通孔を有する
ことを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用前照灯は、光源の光を投影レンズに向けて反射する第1リフレクタと第2リフレクタとを有している。第1リフレクタの第1反射面と第2リフレクタの第2反射面が非連続に形成され、光源と第2リフレクタの第2反射面が投影レンズの光軸よりも下方に配置されているため、配光パターンの光度低下を抑制する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-143226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の車両用前照灯は、第1リフレクタと第2リフレクタが別々に構成されていると共に、投影レンズはこれら2つのリフレクタとは別の支持部材により支持されている。このため、車両用前照灯の部品点数が増大する、という問題がある。
【0005】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、部品点数を低減する車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の車両用灯具は、光源と、光源から出射した光を反射するリフレクタと、リフレクタで反射された光を光軸方向に投影する投影レンズと、を有する。この車両用灯具において、リフレクタは、光源から出射した光を反射する反射面を備える反射部と、投影レンズを保持するレンズ保持部と、を一体に有する。反射面は、第1反射面と、光源よりもレンズ保持部とは反対側に位置し第1反射面と連続的に形成した第2反射面と、を有する。レンズ保持部は、光軸方向に直交し、投影レンズを保持する保持面を有する。第2反射面は、保持面を基準として、第2反射面の先端を光源に近づく側に傾斜させた面である。
【発明の効果】
【0007】
このように、リフレクタが反射部とレンズ保持部とを一体に有するため、部品点数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の車両用灯具の全体構成を示す模式的な分解斜視図である。
図2】実施例1の車両用灯具の全体構成を示す概略的な断面図である。
図3】実施例1のリフレクタユニットを示す概略的な断面図であって、図1のI-I線の断面図である。
図4】実施例1の第2反射面の傾斜を示す説明図であって、図3の部分拡大図である。
図5】実施例1のリフレクタユニットを製造する製造装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による車両用灯具を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における車両用灯具は、自動車等の車両前方を照射するプロジェクタタイプの前照灯ユニットに適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体構成」と「リフレクタユニットの要部構成」と「リフレクタユニットの製造装置」に分けて説明する。
【0011】
図1図2に基づいて、全体構成を説明する。
【0012】
車両用灯具1は、車両の前部の左右両側で、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して設けられる。
【0013】
車両用灯具1は、光源2と、ヒートシンク3(放熱部材)と、リフレクタユニット4(リフレクタ)と、シェードユニット5(シェード)と、投影レンズ6と、光源固定ネジ71と、ユニット固定ネジ72(ネジ)と、リフレクタユニット固定ネジ73と、を有する。以下の説明では、車両用灯具1において、リフレクタユニット4や投影レンズ6の光軸に沿う方向を光軸方向Z(投影レンズ6側を車両前側とする)とする。更に、車両用灯具1において、車両に搭載された状態での鉛直方向を上下方向Yとし、光軸方向Z及び上下方向Yに直交する方向を車幅方向Xとする。
【0014】
光源2は、発光素子21(例えばLED)と、給電装置22(光源ホルダ)と、を有する。給電装置22は、この車幅方向Xの両側に1つずつ光源固定孔23を有する。光源固定孔23は、ヒートシンク3の光源固定面31aに光源2(発光素子21)を固定するときの方向(上下方向Y)と同一方向に光源固定ネジ71を通すことが可能な孔である。光源2をヒートシンク3に取り付ける際、まずは発光ダイオード等の発光素子21は光源固定面31aに配置され、その後、給電装置22は光源固定ネジ71によってヒートシンク3に固定されている。換言すると、光源2(発光素子21)は、ヒートシンク3の光源固定面31aに取り付けられる。光源2は、点灯制御回路から電力が給電装置22を介して発光素子21に供給されて点灯又は消灯される。なお、「LED」は、「Light Emitting Diode」の略称である。
【0015】
ヒートシンク3は、上下方向Yの上面31に設けられた光源2で発生する熱を外部に逃がす放熱部材であり、ランプハウジングに固定されている。ヒートシンク3は、熱伝導性を有するアルミダイカストや樹脂等から形成されている。ヒートシンク3の上面31のうち車両の前側部分には、光源固定面31aが設けられている。ヒートシンク3は、ヒートシンク3の上面31のうち光源固定面31aよりも車両の後側部分及びヒートシンク3の下面32に設けられた複数の放熱フィン35から外部に放熱する。例えば、この放熱フィン35の上下方向Yの下方には、風を送り込む冷却ファンが適宜設けられる。ヒートシンク3は、車幅方向Xの両側に1つずつ、光源固定ネジ71を固定する第1ネジ穴36と、ユニット固定ネジ72を固定する第2ネジ穴37(ネジ穴)と、リフレクタユニット固定ネジ73を固定する第3ネジ穴38と、を有する。第1ネジ穴36は光源固定ネジ71を、第2ネジ穴37はユニット固定ネジ72を、第3ネジ穴38はリフレクタユニット固定ネジ73を、光源固定面31aに光源2(発光素子21)を取り付けるときの方向(上下方向Y)と同一方向に通すことが可能な穴である。
【0016】
リフレクタユニット4は、発光素子21から出射した光を反射する。リフレクタユニット4は、光軸方向Zの中間位置であって、車幅方向Xの両側に1つずつ第1ユニット固定孔40a(貫通孔、第1貫通孔)を有する。第1ユニット固定孔40aは、光源固定面31aに光源2(発光素子21)を取り付けるときの方向(上下方向Y)と同一方向にユニット固定ネジ72を通すことが可能な孔である。リフレクタユニット4は、第1ユニット固定孔40aよりも光軸方向Zの車両の後側であって、車幅方向Xの両側に1つずつリフレクタユニット固定孔40b(貫通孔)を有する。リフレクタユニット固定孔40bは、第1ユニット固定孔40aと同様に、リフレクタユニット固定ネジ73を通すことが可能な孔である。リフレクタユニット4は、光源2とヒートシンク3を覆う位置に配置され、ユニット固定ネジ72とリフレクタユニット固定ネジ73によってヒートシンク3に固定されている。
【0017】
シェードユニット5は、投影レンズ6により投影される投影光の配光パターンを切り替える。即ち、シェードユニット5は、車両用灯具1の配光パターンを切り替える。配光パターンは、ロービーム配光パターンとハイビーム配光パターンである。シェードユニット5は、この車幅方向Xの両側に1つずつ第2ユニット固定孔50(貫通孔、第2貫通孔)を有する。第2ユニット固定孔50は、第1ユニット固定孔40aと同様に、上下方向Yと同一方向にユニット固定ネジ72を通すことが可能な孔である。シェードユニット5は、ユニット固定ネジ72によってヒートシンク3に固定されている。シェードユニット5は、ブラケット51と、駆動部52と、シェード本体53と、を有する。駆動部52は、ブラケット51に取り付けられている。
【0018】
シェード本体53は、発光素子21から出射された光の一部を遮光してロービーム配光パターンのカットオフラインを形成する。シェード本体53は、回転軸54と、板状の回転基部55と、薄板状の第1シェード部56及び第2シェード部57と、を有する。回転軸54は、回転基部55の軸孔に挿入されている。回転基部55には、第1シェード部56及び第2シェード部57が取り付けられている。第1シェード部56は、回転基部55の上部に取り付けられている。第2シェード部57は、第1シェード部56と所定の間隔を置いて並列されて第1シェード部56に取り付けられている。第1シェード部56と第2シェード部57とは、それぞれの上縁がカットオフラインを形成すべく高さの異なる2つの水平エッジが傾斜エッジで繋ぎ合わされた形状である。
【0019】
シェード本体53は、駆動部52により、回転軸54を中心として回転可能にブラケット51に設けられている。換言すると、シェード本体53は、回転軸54を中心として、回転基部55が起きた回転姿勢と、回転基部55が寝た回転姿勢と、の間で回転する。シェード本体53は、回転基部55が起きた回転姿勢になると、第1シェード部56及び第2シェード部57の上縁がリフレクタユニット4および投影レンズ6の焦点位置またはその近傍に位置するように配置される。ここで、「起きた回転姿勢」とは、第1シェード部56及び第2シェード部57が投影レンズ6に至る光の一部を遮光する回転姿勢である。「寝た回転姿勢」とは、第1シェード部56及び第2シェード部57が投影レンズ6に至る光を遮光しない回転姿勢である。即ち、シェード本体53は、回転基部55が起きた回転姿勢のとき、ロービーム位置となる。一方、シェード本体53は、回転基部55が寝た回転姿勢のとき、ハイビーム位置となる。
【0020】
投影レンズ6は、リフレクタユニット4にて反射された発光素子21からの光を車両の前方へ投影すると共に、それらと協働して配光パターンを形成する。投影レンズ6は、リフレクタユニット4に保持されている。
【0021】
図1図4に基づいて、リフレクタユニット4の要部構成を説明する。
【0022】
リフレクタユニット4は、図1図3に示すように、反射部41と、レンズ保持部42と、連結部43と、を有する。反射部41とレンズ保持部42と連結部43は一体に形成されている。
【0023】
反射部41は、図2図3に示すように、光源2側の面に発光素子21から出射した光を反射する反射面41aを備えている。反射面41aは、曲面で形成されており、その表面に反射処理が施されている。反射面41aは、光源2(その中心位置)を第1焦点とし、第1シェード部56及び第2シェード部57の上縁近傍に第2焦点を有する楕円を基本とする自由曲面とされている。反射面41aは、第1反射面41bと、第2反射面41cと、を有する。第1反射面41bと第2反射面41cは連続的に形成されている。
【0024】
第1反射面41bは、反射面41aのうちレンズ保持部42側に位置する面であり、発光素子21から出射される光を車両前側に反射させる面である。第2反射面41cは、反射面41aのうちレンズ保持部42側とは反対側に位置する面であり、発光素子21から出射される光をシェードユニット5付近にある焦点およびその上下方向Yの上側に反射させる面である。
【0025】
第2反射面41cは、図2図4に示すように、光軸方向Zに直交する上下方向Yを基準として、反射面41aのうちレンズ保持部42側とは反対側に位置する先端41d、かつ、第2反射面41cの先端41dを光源2に近づく側に傾斜させた面である。以下、図4に基づき、第2反射面41cについて詳細に説明する。なお、光軸方向Zと直交する面を基準面Aとし、基準面Aは反射面41aにおいて最もレンズ保持部42から離れた位置での第1接平面Bである。第2反射面41cは、基準面Aと反射面41aの接点Pよりも上下方向Yの下側の面であって、基準面Aよりも光源2側に位置する曲面である。そして、「第2反射面41cの先端41dを光源2に近づく側に傾斜させた面」とは、基準面Aに対して、第2反射面41cにおいて最も角度が大きくなる位置での第2接平面Cである。第2反射面41cの第1傾斜角度Dは、第1接平面Bと第2接平面Cの間の角度である。ここで、反射部41は、図3に示すように、楕円形状を基本とした断面であり、その楕円頂点すなわち楕円の焦点を結んだ長軸Eが、光軸方向Zのレンズ保持部42側において上方に傾く。
【0026】
レンズ保持部42は、図1等に示すように、環状形状であり、その内周面42cにはローレット45(凹凸部)が設けられている。レンズ保持部42は、保持面42aと、非保持面42bと、を有する。保持面42aは、投影レンズ6を保持する面であり、光軸方向Zに直交する面である。なお、投影レンズ6は、溶着または接着にて保持面42aに固定される。非保持面42bは、保持面42aとは光軸方向Zの反対側の面である。非保持面42bの第2傾斜角度Fは、保持面42aを基準として反射部41側に第2反射面41cの第1傾斜角度D以上に設定されている。例えば、非保持面42bの第2傾斜角度Fは、保持面42aを基準として、第2反射面41cの第1傾斜角度Dよりも1~10度(例えば2度)傾斜している。
【0027】
連結部43は、反射部41とレンズ保持部42との間に配置されている。連結部43は開口部43aを有する。開口部43aは、連結部43の上下方向Yの上側に形成されている。連結部43の光源2側の内面43bには、ローレット45(凹凸部)が設けられている。
【0028】
ローレット45は、意図しない配光パターンが形成されないために設けられた部材であり、光を散乱させている。
【0029】
図3図5に基づいて、リフレクタユニット4の製造装置を説明する。
【0030】
リフレクタユニット4は、製造装置8により製造される。製造装置8は、樹脂射出成形方法に用いられる。製造装置8は、金型9を有する。
【0031】
金型9は、キャビティ空間内に溶融した樹脂材料を成形する。金型9は、固定枠91に固定された固定型91aと、可動枠92に固定された可動型92aと、スライド型93と、を有する。なお、金型9には、ガスを抜くためのガス抜き孔が適宜設けられている。ここで、キャビティ空間は、金型9の型締めにより、固定型91aと可動型92aとスライド型93で作り出される空間である。
【0032】
固定型91aの固定側キャビティ91bは、固定型91aのリフレクタユニット4の上側部分及び連結部43の開口部43aにあたる彫り込み面をいう。なお、固定枠91には鋳込み口が適宜設けられ、固定型91aには鋳込み口と固定側キャビティ91bを連結する湯口が適宜設けられている。
【0033】
可動枠92は、可動型92aと共に非保持面42bが延びる方向で往復移動可能に設けられている。ここで、「非保持面42bが延びる方向」は、製造時の鉛直方向である可動方向Mに一致し、上下方向Yには一致しない。なお、可動枠92の移動は、油圧シリンダにより行われ、油圧シリンダは可動枠コントローラにより制御される。可動型92aの可動側キャビティ92bは、可動型92aの主に反射面41a、連結部43の開口部43aより下側の内面43b部分及び非保持面42bにあたる彫り込み面(空間)をいう。
【0034】
スライド型93は、スライド方向Sにスライド可能に設けられている。ここで、「スライド方向S」は、可動方向Mには直交せず、成形される保持面42aと直交する方向(光軸方向Z)であって、可動方向M及び可動方向Mに交差する水平方向H(図3の楕円の長軸Eの方向)との間の角度方向になる。なお、スライド型93の移動は、油圧シリンダにより行われ、油圧シリンダはスライド型コントローラにより制御される。スライド型93のスライド側キャビティ93bは、スライド型93の主にレンズ保持部42の環状形状の内周面42c及び保持面42aにあたる彫り込み面(空間)をいう。
【0035】
次に、実施例1の作用を説明する。以下、実施例1の作用を、「樹脂射出成形方法(製造方法)の動作作用」と「取付作用」と「車両用灯具1の特徴作用」に分けて説明する。
【0036】
図3図5に基づいて、樹脂射出成形方法の動作作用について説明する。
【0037】
まず、固定型91aと可動型92aの型開き状態又は固定型91aと可動型92aの型締め状態にて、スライド型93がスライド方向Sの固定型91a及び可動型92aへ近づく方向へ移動され、スライド型93が可動型92aに配置される(スライド型配置工程)。次に、スライド型配置後であって型開き状態のときは、可動枠92が可動方向Mの下方向へ移動され、可動型92aが固定型91aに型締めされる(型締め工程)。
【0038】
次に、スライド型配置後又は型締め後、溶融された樹脂材料が、鋳込み口から湯口を通じてキャビティ空間内へ充填され、樹脂材料が冷却される(充填冷却工程)。なお、樹脂材料の充填の際、鋳込み口の樹脂材料は、鋳込みピストンにより湯口へ押し込まれる。これにより、湯口から加圧された樹脂材料(圧入樹脂材料)がキャビティ空間内へ充填(注入)される。次に、充填冷却後、スライド型93がスライド方向Sの固定型91a及び可動型92aから遠ざかる方向へ移動され、スライド型93が固定型91a及び可動型92aから取り外される(スライド型取り外し工程)。続いて、スライド型93が取り外された後、可動枠92が可動方向Mの上方向へ移動され、可動型92aが固定型91aから型開きされる(型開き工程)。そして、金型9が型開き後、成形品であるリフレクタユニット4が取り出される(成形品取出工程)。
【0039】
このように、金型9によりリフレクタユニット4が成形される。更に、1つの可動型92aにより、第1反射面41b及び第2反射面41cが連続的に成形される。なお、第1ユニット固定孔40a及びリフレクタユニット固定孔40bの孔の傾きは、可動方向Mに一致する傾きに成形される。
【0040】
例えば、反射による配光機能が異なる2つの反射面を有するリフレクタのみを成形する場合、2つの反射面を1つの可動型(以下、「1つの型」という。)にて成形する。なお、2つの反射面は、実施例1のように連続的、又は、従来の車両用前照灯のように非連続、に設計されているものとする。また、この製造時において、光軸方向は、図1の方向と同一とする。この場合、1つの型を取り外す移動方向を光軸方向に設定すれば、2つの反射面を1つの型で成形できる。
【0041】
一方、例えば、従来の車両用前照灯では、第1リフレクタと第2リフレクタに加え、投影レンズを支持する支持部材が別々に構成されている。このため、部品点数を低減すべく、反射による配光機能が異なる2つの反射面を有するリフレクタと、レンズ保持部(支持部材)と、を一体に成形する。このように成形する場合、2つの反射面を1つの型にて成形する。なお、2つの反射面は、リフレクタのみを成形する場合と同様に設計されているものとする。この場合、1つの型の移動方向と、レンズ保持部のレンズを取り付ける保持面を成形する型の移動方向と、を考慮する必要がある。ここで、レンズ保持部のレンズを取り付ける保持面は光軸方向に直交する面に成形する必要がある。このため、光軸方向のレンズ保持部側へ、1つの型を移動できないので、1つの型を光軸方向に直交する上下方向に移動する。そして、1つの型を取り外すために上下方向に移動すると、この1つの型の移動により2つの反射面のうち第2反射面が成形できなくなる。なお、リフレクタの反射面全体は、楕円形状を基本とした断面であり、その楕円の長軸が、光軸方向と平行又は光軸方向のレンズ保持部側において下方に傾く場合には、1つの型を上下方向に移動しても、1つの金型で2つの反射面を成形できる。
【0042】
これに対し、実施例1では、第2反射面41cは、光軸方向Z(スライド方向S)に直交する保持面42aを基準として、第2反射面41cの先端41dを光源2に近づく側に傾斜させた面である。更に、非保持面42bの第2傾斜角度Fは、保持面42aを基準として反射部41側に第2反射面41cの第1傾斜角度D以上に設定されている。このため、可動型92aの移動方向が可動方向M(非保持面42bが延びる方向)に設定できる。即ち、型開きされるとき、可動型92aが可動方向Mと同一方向に移動されることにより、第1反射面41b及び第2反射面41cが連続的に成形される。換言すると、型開きされるとき、可動型92aは光軸方向Zに直交しない可動方向Mに移動されるため、可動型92aが移動しても第2反射面41cが成形できる。従って、反射部41とレンズ保持部42を一体に成形する際、1つの可動型92aにより第1反射面41bと第2反射面41cが成形される。このため、1つの可動型92aにより反射面41aを成形する場合、第2反射面41cの設計自由度を増すことができる。
【0043】
図1に基づいて、取付作用を説明する。
【0044】
ヒートシンク3には、少なくとも光源2とリフレクタユニット4とシェードユニット5とが固定される。まず、ヒートシンク3が治具に固定される。その後、ヒートシンク3には、上下方向Yの上側から光源固定面31aに発光素子21が固定される。次に、給電装置22は、その開口部と発光素子21の上下方向Yの位置を一致させて、ヒートシンク3に配置される。次に、光源固定孔23と第1ネジ穴36を一致させる。その後、一致させた状態で上下方向Yの上側から光源固定ネジ71が通される。そして、光源固定ネジ71によってヒートシンク3に給電装置22が固定される。
【0045】
続いて、ヒートシンク3には、上下方向Yの上側から、シェードユニット5が配置され、その後に投影レンズ6が保持されたリフレクタユニット4が配置される。次に、第2ネジ穴37と第1ユニット固定孔40aと第2ユニット固定孔50を一致させる。その後、一致させた状態で上下方向Yの上側からユニット固定ネジ72が通される。そして、ユニット固定ネジ72によってヒートシンク3にリフレクタユニット4及びシェードユニット5が固定される。
【0046】
次に、第3ネジ穴38とリフレクタユニット固定孔40bを一致させる。その後、一致させた状態で、上下方向Yの上側からリフレクタユニット固定ネジ73が通される。そして、ユニット固定ネジ72とリフレクタユニット固定ネジ73によってヒートシンク3にリフレクタユニット4が確実に固定される。なお、第1ユニット固定孔40a及びリフレクタユニット固定孔40bの孔は上下方向Yよりも傾いているが、上下方向Yの上側から各固定ネジ72,73を通すことが可能である。
【0047】
このように、ヒートシンク3への光源2とリフレクタユニット4とシェードユニット5の配置方向、及び、各固定ネジ71,72,73を通す方向が、同一方向に統一できる。換言すると、ヒートシンク3を治具で固定した後、ヒートシンク3を別の治具で固定せずに、ヒートシンク3に対して一方向で複数の部材(光源2、リフレクタユニット4及びシェードユニット5)が取り付けられる。
【0048】
例えば、従来の車両用前照灯では、支持部材に対して第1リフレクタや第2リフレクタや光源の給電装置等を取り付ける際、複数の方向から取り付けなければならず、取付作業が煩雑になる。
【0049】
これに対し、実施例1では、ヒートシンク3に対して一方向で複数の部材が取り付けられる。従って、ヒートシンク3に対して光源2とリフレクタユニット4とシェードユニット5が簡易に取り付けられる。加えて、ユニット固定ネジ72をリフレクタユニット4とシェードユニット5の固定に併用できる。そして、共通するユニット固定ネジ72により、ヒートシンク3に対してリフレクタユニット4とシェードユニット5が取り付けられる。
【0050】
図1図4に基づいて、車両用灯具1の特徴作用を説明する。
【0051】
例えば、従来の車両用前照灯は、第1リフレクタと第2リフレクタに加え投影レンズを支持する支持部材が別々に構成されている。このため、車両用前照灯の部品点数が増大する、という問題がある。
【0052】
これに対し、実施例1のリフレクタユニット4は、図3に示すように、第1反射面41bと第2反射面41cを有する反射部41と、投影レンズ6を保持するレンズ保持部42を、一体に有する。このため、従来の車両用前照灯よりも部品点数を低減できる。
【0053】
加えて、実施例1では、図2図4に示すように、第2反射面41cは、光軸方向Zに直交する保持面42aを基準として、第2反射面41cの先端41dを光源2に近づく側に傾斜させた面である。このため、反射部41における楕円の長軸Eが、光軸方向Zのレンズ保持部42側において上方に傾く。
【0054】
ここで、発光素子21に近い反射面41aほど、発光素子21からの光束が多く入射する。そして、実施例1では、楕円の長軸Eが光軸方向Zのレンズ保持部42側において上方に傾いているため、楕円の長軸が傾いていない場合と比較して、発光素子21に近い反射面41a(特に第2反射面41c)の面積を大きくすることができる。このため、楕円の長軸が傾いていない場合よりも、発光素子21からの光束を有効に活用できる。従って、発光素子21からの光束のロスを抑制できる。
【0055】
実施例1では、図3等に示すように、リフレクタユニット4は、反射部41とレンズ保持部42との間に連結部43を一体に有する。即ち、連結部43により、反射部41とレンズ保持部42の距離を調整できる。従って、反射面41aの反射による配光を調整できる。加えて、連結部43が追加で設けられても、非保持面42bの第2傾斜角度Fが設定されていることにより、リフレクタユニット4を一体に成形できる。このため、連結部43の光軸方向Zの長さを調整できる。
【0056】
実施例1では、連結部43は、上下方向Yの上側に開口部43aを有する。光源2で発生する熱は、リフレクタユニット4内の上下方向Yの上側に上昇する。従って、リフレクタユニット4内の熱を外部に逃がすことができる。
【0057】
以上説明したように、実施例1の車両用灯具1にあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0058】
(1)光源2と、光源2から出射した光を反射するリフレクタ(リフレクタユニット4)と、リフレクタ(リフレクタユニット4)で反射された光を光軸方向Zに投影する投影レンズ6と、を有する。この車両用灯具1において、リフレクタ(リフレクタユニット4)は、光源2から出射した光を反射する反射面41aを備える反射部41と、投影レンズ6を保持するレンズ保持部42と、を一体に有する。反射面41aは、第1反射面41bと、光源2よりもレンズ保持部42とは反対側に位置し第1反射面41bと連続的に形成した第2反射面41cと、を有する。レンズ保持部42は、光軸方向Zに直交し、投影レンズ6を保持する保持面42aを有する。第2反射面41cは、保持面42aを基準として、第2反射面41cの先端41dを光源2に近づく側に傾斜させた面(第2接平面C)である。従って、部品点数を低減する車両用灯具1を提供することができる。加えて、発光素子21からの光束のロスを抑制できる。
【0059】
(2)レンズ保持部42は、保持面42aと、保持面42aとは光軸方向Zの反対側の面である非保持面42bと、を有する。非保持面42bの角度(第2傾斜角度F)は、保持面42aを基準として反射部41側に第2反射面41cの傾斜角度(第1傾斜角度D)以上に設定する。従って、反射部41とレンズ保持部42を一体に成形する際、1つの可動型92aにより第1反射面41bと第2反射面41cを成形できる。
【0060】
(3)リフレクタ(リフレクタユニット4)は、反射部41とレンズ保持部42との間に連結部43を一体に有する。従って、反射面41aの反射による配光を調整できる。
【0061】
(4)連結部43は、開口部43aを有する。従って、リフレクタ(リフレクタユニット4)内の熱を外部に逃がすことができる。
【0062】
(5)車両用灯具1は、光源2で発生する熱を放熱する放熱部材(ヒートシンク3)と、ネジ(ユニット固定ネジ72)と、を有する。放熱部材(ヒートシンク3)は、光源2(発光素子21)の固定面(光源固定面31a)と、ネジ(ユニット固定ネジ72)を固定するネジ穴(第2ネジ穴37)と、を有する。リフレクタ(リフレクタユニット4)は、固定面(光源固定面31a)に光源2(発光素子21)を取り付けるときの方向(上下方向Y)と同一方向にネジ(ユニット固定ネジ72)を通すことが可能な貫通孔(第1ユニット固定孔40a)を有する。従って、放熱部材(ヒートシンク3)に対して光源2とリフレクタ(リフレクタユニット4)を簡易に取り付けることができる。
【0063】
(6)車両用灯具1は、光源2から出射された光の一部を遮光するシェード(シェードユニット5)を有する。貫通孔を第1貫通孔(第1ユニット固定孔40a)とする。シェード(シェードユニット5)は、固定面(光源固定面31a)に光源2(発光素子21)を取り付けるときの方向(上下方向Y)と同一方向にネジ(ユニット固定ネジ72)を通すことが可能な第2貫通孔(第2ユニット固定孔50)を有する。従って、共通するネジ(ユニット固定ネジ72)により、放熱部材(ヒートシンク3)に対してリフレクタユニット4とシェード(シェードユニット5)を取り付けることができる。加えて、放熱部材(ヒートシンク3)に対して光源2とリフレクタ(リフレクタユニット4)とシェード(シェードユニット5)を簡易に取り付けることができる。
【0064】
以上、本開示の車両用灯具1を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0065】
実施例1では、リフレクタユニット4が連結部43を有する例を示した。しかし、これに限られない。例えば、リフレクタユニットは連結部を有さなくても良く、連結部に代えてレンズ保持部の光軸方向の長さを長くしても良い。
【0066】
実施例1では、開口部43aが連結部43の上下方向Yの上側に形成されている例を示した。しかし、これに限られない。例えば、開口部は、連結部の車幅方向の右側と左側の両方又は片方に形成されても良い。なお、開口部は、連結部に形成されていなくても良い。
【0067】
実施例1では、発光素子21が光源固定面31aに配置される例を示した。しかし、これに限られない。例えば、発光素子が基板に載置され、給電装置(光源)が上下方向の上側から基板を挟み込んで発光素子を固定面(光源固定面)に配置する構成とされても良い。
【0068】
実施例1では、リフレクタユニット4の製造装置及び製造方法を、製造装置8及び(樹脂)射出成形方法とする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、リフレクタユニットの製造装置及び製造方法を、重力による圧力の鋳造装置及び鋳造方法としても良い。要するに、リフレクタユニットの製造装置及び製造方法は、鋳造により製造するものでれば良い。
【0069】
実施例1では、リフレクタユニット4を成形する材料を、樹脂材料とする例を示した。しかし、これに限られない。例えば、リフレクタユニット4を成形する材料を、金属材料としても良い。金属材料にした場合、リフレクタユニットの製造装置及び製造方法を、実施例1と同様に射出成形としても良いし、重力による圧力の鋳造としても良い。
【0070】
実施例1では、本開示の車両用灯具1を、自動車等の車両前方を照射するプロジェクタタイプの前照灯ユニットに適用する例を示した。しかし、本開示の車両用灯具1は、光源と、反射部とレンズ保持部を一体に有するリフレクタと、投影レンズと、を備える車両用灯具であれば、車両に用いる他の車両用灯具であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用灯具
2 光源
3 ヒートシンク(放熱部材)
31a 光源固定面(固定面)
37 第2ネジ穴(ネジ穴)
4 リフレクタユニット(リフレクタ)
40a 第1ユニット固定孔(貫通孔、第1貫通孔)
41 反射部
41a 反射面
41b 第1反射面
41c 第2反射面
41d 先端
42 レンズ保持部
42a 保持面
42b 非保持面
43 連結部
43a 開口部
5 シェードユニット(シェード)
50 第2ユニット固定孔(第2貫通孔)
6 投影レンズ
72 ユニット固定ネジ(ネジ)
D 第1傾斜角度(第2反射面41cの傾斜角度)
F 第2傾斜角度(非保持面の角度)
図1
図2
図3
図4
図5