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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/016 20060101AFI20230418BHJP
   B62D 24/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B60G17/016
B62D24/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019071532
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020168949
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】信時 正嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信太郎
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-352196(JP,A)
【文献】特開2012-236549(JP,A)
【文献】特開2002-154432(JP,A)
【文献】特開昭58-180371(JP,A)
【文献】特開平06-329055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/016
B62D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアンダーボディとアッパーボディとの間に介在されることにより前記アンダーボディに対する前記アッパーボディの揺動を許容する振子機構と、
前記アンダーボディを傾動可能な車高調整装置と、
前記振子機構が形成する支点回りに前記アッパーボディが揺動することにより該アッパーボディが傾く方向に、前記アンダーボディを傾動させるべく、前記車高調整装置の作動を制御する傾動制御部と、
前記車両の加速度に基づいて前記アンダーボディに設定する傾動角度を演算する傾動角度演算部と、を備え
前記傾動角度演算部は、前記車両の加速度が大きいほど、大きな前記傾動角度を演算する車両制御装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両制御装置において、
前記傾動角度が揺動許可角度を超えるまで、前記アッパーボディの揺動を規制する揺動規制部を備えること、を特徴とする車両制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置において、
前記アッパーボディの傾斜角を変更可能な駆動力を発生するアクチュエータと、
前記車両の加速度に基づいた前記傾斜角の推定値よりも前記傾斜角の実際値が小さい場合には、前記傾斜角を増大させ、前記推定値よりも前記実際値が大きい場合には、前記傾斜角を減少させるべく、前記アクチュエータの作動を制御する揺動制御部と、
を備えること、を特徴とする車両制御装置。
【請求項4】
車両のアンダーボディとアッパーボディとの間に介在されることにより前記アンダーボディに対する前記アッパーボディの揺動を許容する振子機構と、
前記アンダーボディを傾動可能な車高調整装置と、
前記振子機構が形成する支点回りに前記アッパーボディが揺動することにより該アッパーボディが傾く方向に、前記アンダーボディを傾動させるべく、前記車高調整装置の作動を制御する傾動制御部と、
前記アッパーボディの傾斜角を変更可能な駆動力を発生するアクチュエータと、
前記車両の加速度に基づいた前記傾斜角の推定値よりも前記傾斜角の実際値が小さい場合には、前記傾斜角を増大させ、前記推定値よりも前記実際値が大きい場合には、前記傾斜角を減少させるべく、前記アクチュエータの作動を制御する揺動制御部と、を備える車両制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の車両制御装置において、
前記揺動制御部は、前記振子機構の作動により前記アンダーボディの外側に振り出される前記アッパーボディの飛出量が前記アンダーボディの外側に設定された飛出許容限界を超えないように、前記アクチュエータの作動を制御すること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両制御装置において、
前記傾動制御部は、前記揺動により前記アッパーボディに生ずる前記支点回りの傾斜角が調整開始角度を超える場合に、前記アンダーボディを傾動させること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項7】
請求項1請求項6の何れか一項に記載の車両制御装置において、
前記傾動制御部は、前記揺動により前記アッパーボディに生ずる前記支点回りの傾斜角が大きいほど、前記アンダーボディに大きな傾動角度を設定すること、
を特徴とする車両制御装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の車両制御装置において、
前記振子機構は、前記車両の幅方向における前記アッパーボディの揺動を許容する幅方向揺動部を備えること、を特徴とする車両制御装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の車両制御装置において、
前記振子機構は、前記車両の前後方向における前記アッパーボディの揺動を許容する前後方向揺動部を備えること、を特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、車両のアンダーボディ(シャーシ)とアッパーボディとの間に、そのアンダーボディに対するアッパーボディの揺動を許容する振子機構を介在させる構成が開示されている(第10図、及び段落[0090]~[0092]参照)。即ち、車両の加速度に基づいたアッパーボディの揺動を振子機構が許容することにより、乗員が、その車両に生じた加速度変化(例えば、横G等)を感じ難くなる。そして、これにより、良好な乗り心地を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-352196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記振子機構の作動によりアッパーボディが揺動する際には、その下端部を振り出すかたちでアッパーボディが傾動することになる。そして、これにより、アンダーボディの外側に飛び出したアッパーボディの下端部が、周囲の車両に圧迫感を与える等の問題が生ずる可能性があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、振子機構の作動によりアンダーボディの外側に振り出されるアッパーボディの飛出量を抑制することのできる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両制御装置は、車両のアンダーボディとアッパーボディとの間に介在されることにより前記アンダーボディに対する前記アッパーボディの揺動を許容する振子機構と、前記アンダーボディを傾動可能な車高調整装置と、前記振子機構が形成する支点回りに前記アッパーボディが揺動することにより該アッパーボディが傾く方向に、前記アンダーボディを傾動させるべく、前記車高調整装置の作動を制御する傾動制御部と、を備える。
【0007】
即ち、アンダーボディの上方に支持されたアッパーボディが、そのアンダーボディとともにアッパーボディが傾く方向に傾動することで、振子機構が形成するアッパーボディの揺動支点もまた、そのアンダーボディの傾動方向に移動する。更に、この支点の移動により、その揺動するアッパーボディが描く下端部の移動軌跡もまた、アンダーボディの傾動方向に移動する。そして、これにより、そのアッパーボディの振出位置が、アンダーボディを傾動させない場合よりもアンダーボディ側に近づくことで、その振子機構の作動によりアンダーボディの外側に振り出されるアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【0008】
上記課題を解決する車両制御装置において、前記傾動制御部は、前記揺動により前記アッパーボディに生ずる前記支点回りの傾斜角が調整開始角度を超える場合に、前記アンダーボディを傾動させることが好ましい。
【0009】
即ち、アッパーボディの傾斜角が小さい場合には、このアッパーボディがアンダーボディの外側に振り出されることによる外観の変化、及びその外観の変化が車両の周囲に与える影響も小さい。従って、上記構成によれば、車高調整装置の作動によるエネルギー消費を抑えつつ、効果的に、そのアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【0010】
上記課題を解決する車両制御装置において、前記傾動制御部は、前記揺動により前記アッパーボディに生ずる前記支点回りの傾斜角が大きいほど、前記アンダーボディに大きな傾動角度を設定することが好ましい。
【0011】
即ち、アッパーボディの傾斜角が大きいほど、そのアンダーボディからの飛出量もまた大きくなる。従って、上記構成によれば、適切にアンダーボディを傾動させて、そのアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【0012】
上記課題を解決する車両制御装置は、前記車両の加速度に基づいて前記アンダーボディに設定する傾動角度を演算する傾動角度演算部を備え、前記傾動角度演算部は、前記車両の加速度が大きいほど、大きな前記傾動角度を演算することが好ましい。
【0013】
即ち、車両の加速度が大きいほど、その振子機構の作動によりアッパーボディに生ずる傾斜角もまた大きくなる。従って、上記構成によれば、適切にアンダーボディを傾動させて、そのアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【0014】
上記課題を解決する車両制御装置は、前記傾動角度が揺動許可角度を超えるまで、前記アッパーボディの揺動を規制する揺動規制部を備えることが好ましい。
即ち、例えば、車両の加速度がアッパーボディに形成された車室内の乗員に与える影響を、そのアンダーボディとともにアッパーボディを傾動させる車高調整装置の作動により緩和可能な場合には、振子機構の作動によるアッパーボディの揺動を規制する。そして、これにより、このアッパーボディがアンダーボディの外側に飛び出さないようにすることで、そのアッパーボディの揺動により生ずる外観の変化を抑えて、周囲の車両等に圧迫感を与えないようにすることができる。
【0015】
上記課題を解決する車両制御装置は、前記アッパーボディの傾斜角を変更可能な駆動力を発生するアクチュエータと、前記車両の加速度に基づいた前記傾斜角の推定値よりも前記傾斜角の実際値が小さい場合には、前記傾斜角を増大させ、前記推定値よりも前記実際値が大きい場合には、前記傾斜角を減少させるべく、前記アクチュエータの作動を制御する揺動制御部と、を備えることが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、乗員の乗車位置による重心移動、或いは横風のような外部要因等、外乱の影響に依らず、その振子機構の作動により生ずるアッパーボディの傾斜角、つまりは揺動姿勢を最適化することができる。特に、車両の加速度に基づいた自律的な揺動により生ずる傾斜角が不足する場合であっても、その不足分をアクチュエータの駆動力により補うことができる。そして、これにより、良好な乗り心地を確保することができる。
【0017】
更に、自律的に揺動する振子機構にアクチュエータを組み合わせることにより、小さな出力でアッパーボディの揺動姿勢を制御することができる。そして、これにより、装置の小型化及び省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
上記課題を解決する車両制御装置において、前記揺動制御部は、前記振子機構の作動により前記アンダーボディの外側に振り出される前記アッパーボディの飛出量が前記アンダーボディの外側に設定された飛出許容限界を超えないように、前記アクチュエータの作動を制御することが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、効果的に、そのアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
上記課題を解決する車両制御装置において、前記振子機構は、前記車両の幅方向における前記アッパーボディの揺動を許容する幅方向揺動部を備えることが好ましい。
【0020】
即ち、走行する車両には、その旋回に伴う幅方向の加速度が発生する。この点、上記構成によれば、この幅方向の加速度に基づいて、その重心が形成される下端部側を車幅方向、慣性力(遠心力)の働く方向に振り出すかたちで、自律的に、そのアッパーボディが揺動する。そして、これにより、車両走行時における良好な乗り心地を確保することができる。
【0021】
上記課題を解決する車両制御装置において、前記振子機構は、前記車両の前後方向における前記アッパーボディの揺動を許容する前後方向揺動部を備えることが好ましい。
即ち、走行する車両には、その加減速に伴う前後方向の加速度が発生する。この点、上記構成によれば、この前後方向の加速度に基づいて、その重心が形成される下端部側を車両前後方向、慣性力の働く方向に振り出すかたちで、自律的に、そのアッパーボディが揺動する。そして、これにより、車両走行時における良好な乗り心地を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、振子機構の作動によりアンダーボディの外側に振り出されるアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両の斜視図。
図2】車両の側面図。
図3】車両の正面図。
図4】振子機構の斜視図。
図5】振子機構の平面図。
図6】振子機構の作用説明図(側面視)。
図7】振子機構の作用説明図(正面視)。
図8】車両制御装置の概略構成を示すブロック図。
図9】(a)は、前後方向揺動アクチュエータの側面図(車両側面視)、(b)は、幅方向揺動アクチュエータの側面図(車両正面視)。
図10】車両制御装置の制御ブロック図。
図11】車高調整装置の作用説明図(側面視)。
図12】車高調整装置の作用説明図(背面視)。
図13】車高調整装置の作用説明図(アッパーボディの飛び出し抑制)。
図14】姿勢制御ECUに設けられた揺動制御部及び傾動制御部を示す制御ブロック図。
図15】アンダーボディの傾動制御について処理手順を示すフローチャート。
図16】アッパーボディの傾斜角とアンダーボディに設定する傾動角度との関係を示す説明図。
図17】別例のアッパーボディの傾斜角とアンダーボディに設定する傾動角度との関係を示す説明図。
図18】車両の加速度とアンダーボディに設定する傾動角度との関係を示す説明図。
図19】アッパーボディの揺動制御及びアンダーボディの傾動制御についての別例を示す制御ブロック図。
図20】アンダーボディの傾動制御について別例の処理手順を示すフローチャート。
図21】アッパーボディの揺動制御についての別例を示す制御ブロック図。
図22】アッパーボディの揺動制御について別例の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、車両制御装置を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1図3に示すように、本実施形態の車両1は、懸架装置(サスペンション)100を介して車輪2に支持されたアンダーボディ(シャーシ)3と、このアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4と、を備えている。そして、本実施形態の車両1は、これらのアンダーボディ3とアッパーボディ4との間に介在されることにより、そのアンダーボディ3に対するアッパーボディ4の揺動を許容する振子機構10を備えている。
【0025】
詳述すると、図2図5に示すように、本実施形態の振子機構10は、アンダーボディ3の前端部3fにおいて、車両1の後方側から前方側(図2中、右側から左側)に向かって上方に湾曲して延びる弧状体11を有した左右一対の前方支持部13,13を備えている。また、この振子機構10は、アンダーボディ3の後端部3rにおいて、それぞれ、車両1の前方側から後方側(図2中、左側から右側)に向かって上方に湾曲して延びる弧状体15を有した左右一対の後方支持部17,17を備えている。尚、本実施形態の車両1において、これらの各前方支持部13,13及び各後方支持部17,17は、それぞれ、その弧状体11,15を斜辺とする略三角枠状の外形を有している。そして、本実施形態の車両1においては、これらの各前方支持部13,13及び後方支持部17,17をアンダーボディ3の車幅方向(図5中、左右方向)両側に固定することにより、その車両前後方向に延在する左右一対の縦置揺動支持部材21,21が形成されている。
【0026】
また、本実施形態の振子機構10は、アンダーボディ3の前端部3f及び後端部3rに対応する位置において、それぞれ、アッパーボディ4の下面4sに固定された前後一対の弧状体22,22を備えている。具体的には、これらの各弧状体22,22は、長手方向の中央部分が下側に凸となる略円弧状の外形を有して車幅方向に延びている。更に、本実施形態の車両1は、アンダーボディ3とアッパーボディ4との間に介在されるミドルボディ25を備えている。そして、本実施形態の振子機構10は、このミドルボディ25に固定された状態で、その前後一対の横置揺動支持部材26,26を形成する各弧状体22,22の湾曲面、及び上記各縦置揺動支持部材21,21を形成する各弧状体11,15の湾曲面に対して、回転可能な状態で摺接する回転体としての複数のローラー(ころ)を備えている。
【0027】
具体的には、本実施形態の車両1において、ミドルボディ25の各側端面25a,25bには、それぞれ、略軸状の外形を有して車幅方向外側に突出する前後一対のメインローラー31(31f,31r)が設けられている。そして、本実施形態のミドルボディ25は、これらの各メインローラー31f,31rが、それぞれ、その対応する位置においてアンダーボディ3に設けられた上記各弧状体11,15に対して上側から当接する状態で、そのアンダーボディ3の上方に組み付けられる構成となっている。
【0028】
即ち、ミドルボディ25の各側端面25a,25bにおける前方側(図5中、上側)の位置に設けられた各メインローラー31fは、それぞれ、上記各前方支持部13を構成する各弧状体11の上側湾曲面11uに摺接する。また、ミドルボディ25の各側端面25a,25bにおける後方側(図5中、下側)の位置に設けられた各メインローラー31rは、それぞれ、上記各後方支持部17を構成する各弧状体15の上側湾曲面15uに摺接する。そして、本実施形態の車両1は、これらの各メインローラー31f,31rが、それぞれ、その摺接する各弧状体11,15の上側湾曲面11u,15u上を転動することにより、ミドルボディ25と一体に、そのアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4が車両前後方向に揺動する構成になっている。
【0029】
また、ミドルボディ25の前端面25f及び後端面25rには、それぞれ、略軸状の外形を有して車両前後方向に延びる左右一対のメインローラー32(32a,32b)が設けられている。更に、本実施形態のアッパーボディ4は、これらの各メインローラー32に対し、それぞれ、その下面4sに固定された各弧状体22,22の下側湾曲面22lが上側から摺接する状態で、そのミドルボディ25の上方に組み付けられる構成になっている。そして、本実施形態の車両1は、このミドルボディ25の前端面25f及び後端面25rに設けられた各メインローラー32が、それぞれ、見かけ上、その摺接する各弧状体22の下側湾曲面22l上を転動するかたちで、そのミドルボディ25を介してアッパーボディ4の上方に支持されたアンダーボディ3が車幅方向に揺動する構成になっている。
【0030】
尚、本実施形態の車両1において、ミドルボディ25の各側端面25a,25bには、それぞれ、上記各メインローラー31(31f,31r)よりも小径の略軸状を有して上記各弧状体11,15の各下側湾曲面11l,15lに摺接する前後一対の補助ローラー33(33f,33r)が設けられている。また、ミドルボディ25の前端面25f及び後端面25rには、それぞれ、上記各メインローラー32(32a,32b)よりも小径の略軸状を有して上記各弧状体22の各上側湾曲面22uに摺接する前後一対の補助ローラー34(34a,34b)が設けられている。更に、各メインローラー31(31f,31r)及び各メインローラー32(32a,32b)の先端には、それぞれ、径方向外側に拡開するフランジが設けられている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、その各弧状体11,15,22から各メインローラー31(31f,31r),32が脱離することなく、安定的に、そのアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4が揺動する構成になっている。
【0031】
さらに詳述すると、図6に示すように、本実施形態の車両1において、車両前後方向におけるアッパーボディ4の揺動支点P1は、上記各縦置揺動支持部材21を構成する各弧状体11,15の上側湾曲面11u,15uにより規定される。つまり、これらの各上側湾曲面11u,15uに摺接する各メインローラー31(31f,31r)の転動軌跡Q1が円弧形状を描くことで、これらの各縦置揺動支持部材21及び各メインローラー31を介してアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4の揺動支点P1は、この円弧形状の中心(焦点)位置となる。そして、本実施形態の車両1は、これにより、そのアッパーボディ4の上端部4a側に揺動支点P1を形成することで、車両1の前後方向加速度(加減速G)に基づいて、その重心が形成される下端部4b側を車両前後方向、慣性力の働く方向に振り出すかたちで、自律的に、そのアッパーボディ4が揺動する構成になっている。
【0032】
また、図7に示すように、車幅方向におけるアッパーボディ4の揺動支点P2についても同様に、上記各横置揺動支持部材26を構成する各弧状体22の下側湾曲面22lにより規定される。つまり、この場合もまた、その下側湾曲面22lに摺接する各メインローラー32(32a,32b)の転動軌跡Q2が円弧形状を描くことで、これらの各横置揺動支持部材26及び各メインローラー32を介してアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4の揺動支点P2は、この円弧形状の中心(焦点)位置となる。そして、本実施形態の車両1は、これにより、そのアッパーボディ4の上端部4a側に揺動支点P2を形成することで、車両1の幅方向加速度(横G)に基づいて、その重心が形成される下端部4b側を車幅方向、慣性力(遠心力)の働く方向に振り出すかたちで、自律的に、そのアッパーボディ4が揺動する構成になっている。
【0033】
尚、アッパーボディ4の各揺動支点P1,P2の形成位置は、例えば、アッパーボディ4が形成する車室空間において、その車両1の乗員35が中央位置で起立していると仮定した場合に、この乗員35の頭部35hが配置される位置、或いは、その頭部35hよりも上方の位置に設定される。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、車両1に生じた加速度変化を乗員35が感じ難くすることで、その良好な乗り心地を実現する構成になっている。
【0034】
即ち、本実施形態の車両1においては、アンダーボディ3に固定された各弧状体11,15が形成する各縦置揺動支持部材21と、ミドルボディ25に固定された状態で各弧状体11,15の上側湾曲面11u,15uに摺接する回転体としての各メインローラー31によって、その振子機構10の前後方向揺動部41が形成されている。また、アッパーボディ4の下面4sに固定された各弧状体22が形成する各横置揺動支持部材26と、ミドルボディ25に固定された状態で各弧状体22の下側湾曲面22lに摺接する回転体としての各メインローラー32によって、その振子機構10の幅方向揺動部42が形成されている。そして、本実施形態の振子機構10は、これらの前後方向揺動部41及び幅方向揺動部42が連動することにより、そのミドルボディ25を介してアンダーボディ3に支持されたアッパーボディ4について、車両1の水平方向における全方位の揺動を許容する構成となっている。
【0035】
また、図8に示すように、本実施形態の車両1には、その振子機構10が形成する支点(P1,P2)回りに揺動(図6及び図7参照)するアッパーボディ4の傾斜角(α,β)を変更可能な駆動力を発生する前後方向揺動アクチュエータ51及び幅方向揺動アクチュエータ52が設けられている。更に、これらの前後方向揺動アクチュエータ51及び幅方向揺動アクチュエータ52は、姿勢制御ECU55によって、その作動が制御されている。そして、本実施形態の車両1においては、これにより、その振子機構10の作動により発生するアッパーボディ4の傾斜角(α,β)、つまりは、このアッパーボディ4の揺動姿勢を最適化することが可能な車両制御装置60が形成されている。
【0036】
詳述すると、図9(a)に示すように、本実施形態の前後方向揺動アクチュエータ51は、上記各弧状体11,15が形成する各縦置揺動支持部材21と略等しい湾曲率を有して車両前後方向(図9(a)中、左右方向)に延びるセクターギヤ61を備えている。本実施形態の車両1において、このセクターギヤ61は、上記各縦置揺動支持部材21に略平行な状態でアンダーボディ3に固定されている(図5参照)。また、本実施形態の前後方向揺動アクチュエータ51は、このセクターギヤ61の上側湾曲面61uに形成されたギヤ歯62に歯合するピニオンギヤ63を備えている。更に、前後方向揺動アクチュエータ51は、駆動源となるモータ64の回転を減速して出力する駆動ユニット65を備えている。本実施形態の車両1において、この駆動ユニット65は、ミドルボディ25に固定されている。そして、本実施形態の前後方向揺動アクチュエータ51は、この駆動ユニット65に駆動されたピニオンギヤ63が回転することで、その駆動ユニット65が固定されたミドルボディ25と一体に、アッパーボディ4を車両1の前後方向に揺動させることが可能となっている。
【0037】
一方、図9(b)に示すように、本実施形態の幅方向揺動アクチュエータ52は、各横置揺動支持部材26を形成する上記各弧状体22と略等しい湾曲形状を有して車幅方向(図9(b)中、左右方向)に延びるセクターギヤ66を備えている。本実施形態の車両1において、このセクターギヤ66は、各弧状体22と略平行な状態でアッパーボディ4の下面4sに固定されている(図5参照)。また、本実施形態の幅方向揺動アクチュエータ52は、このセクターギヤ66の下側湾曲面66lに形成されたギヤ歯67に歯合するピニオンギヤ68を備えている。更に、幅方向揺動アクチュエータ52は、駆動源となるモータ69の回転を減速して出力する駆動ユニット70を備えている。本実施形態の車両1において、この駆動ユニット70は、ミドルボディ25に固定されている。そして、本実施形態の幅方向揺動アクチュエータ52は、この駆動ユニット70に駆動されたピニオンギヤ68が回転することで、そのミドルボディ25を介してアンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4を車両1の幅方向に揺動させることが可能となっている。
【0038】
さらに詳述すると、図8に示すように、本実施形態の姿勢制御ECU55は、車両1に設けられた傾斜角センサ71,72の出力信号に基づいて、そのアッパーボディ4の揺動により当該アッパーボディ4に生じた前後方向傾斜角α(図6参照)及び幅方向傾斜角β(図7参照)を検出する。尚、本実施形態の車両1において、これらの各傾斜角センサ71,72は、それぞれ、その前後方向揺動アクチュエータ51及び幅方向揺動アクチュエータ52の駆動源である各モータ64,69に同期したパルス信号をカウントすることにより、その前後方向傾斜角α及び幅方向傾斜角βを検出する。また、本実施形態の姿勢制御ECU55には、車両1の前後方向加速度(前後G)を検出する加速度センサ73の出力信号G1、及び車両1の幅方向加速度(横G)を検出する加速度センサ74の出力信号G2が入力される。更に、この姿勢制御ECU55には、ステアリングセンサ75により検出される操舵角θhや車速V、或いはアクセル信号Sac及びブレーキ信号Sbk等、各種の車両状態量や制御信号が入力される。そして、本実施形態の姿勢制御ECU55は、これらの車両情報に基づいて、アッパーボディ4の揺動姿勢を最適化すべく、その前後方向揺動アクチュエータ51及び幅方向揺動アクチュエータ52の作動を制御する構成になっている。
【0039】
図10に示すように、本実施形態の姿勢制御ECU55は、前後方向揺動アクチュエータ51の制御信号Sm1を生成する前後方向傾斜制御部81と、幅方向揺動アクチュエータ52の制御信号Sm2を生成する幅方向傾斜制御部82と、を備えている。
【0040】
具体的には、本実施形態の前後方向傾斜制御部81には、アクセル信号Sacに示されるアクセル開度及びブレーキ信号Sbkに示される車両の制動力に基づいて、車両1の前後方向加速度Gfrを演算(推定)する前後方向加速度演算部83が設けられている。また、前後方向傾斜制御部81には、上記加速度センサ73の出力信号G1に基づいて、その前後方向加速度演算部83において演算された前後方向加速度Gfrの補正値γ1を演算する補正値演算部84が設けられている。そして、本実施形態の前後方向傾斜制御部81は、この補正値γ1を加算した後の前後方向加速度Gfr(Gfr´)に基づいて、そのアッパーボディ4の揺動により当該アッパーボディ4に生ずる前後方向傾斜角の推定値αeを演算する前後方向傾斜角推定値演算部85を備えている。
【0041】
更に、本実施形態の前後方向傾斜制御部81は、この前後方向傾斜角の推定値αeと上記傾斜角センサ71により検出された前後方向傾斜角(の実際値)αとの偏差Δαに基づいたフィードバック制御演算を実行するフィードバック制御部86を備えている。即ち、このフィードバック制御部86は、その前後方向傾斜角の推定値αeに実際値(α)を追従させるべく、前後方向揺動アクチュエータ51の制御量ε1を演算する。そして、前後方向傾斜制御部81は、このフィードバック制御部86が演算する制御量ε1に基づいて、その図示しない駆動回路に対する制御信号Sm1の出力を実行する制御信号出力部87を備えている。
【0042】
一方、幅方向傾斜制御部82には、操舵角θh及び車速Vに基づいて、車両1の幅方向加速度Gsdを演算(推定)する幅方向加速度演算部93が設けられている。また、幅方向傾斜制御部82には、上記加速度センサ74の出力信号G2に基づいて、その幅方向加速度演算部93において演算された幅方向加速度Gsdの補正値γ2を演算する補正値演算部94が設けられている。そして、本実施形態の幅方向傾斜制御部82は、この補正値γ2を加算した後の幅方向加速度Gsd(Gsd´)に基づいて、そのアッパーボディ4の揺動により当該アッパーボディ4に生ずる幅方向傾斜角の推定値βeを演算する幅方向傾斜角推定値演算部95を備えている。
【0043】
更に、本実施形態の幅方向傾斜制御部82は、この幅方向傾斜角の推定値βeと上記傾斜角センサ72により検出された幅方向傾斜角(実際値)βとの偏差Δβに基づいたフィードバック制御演算を実行するフィードバック制御部96を備えている。即ち、このフィードバック制御部96は、その幅方向傾斜角の推定値βeに実際値(β)を追従させるべく、幅方向揺動アクチュエータ52の制御量ε2を演算する。そして、幅方向傾斜制御部82は、このフィードバック制御部96が演算する制御量ε2に基づいて、その図示しない駆動回路に対する制御信号Sm2の出力を実行する制御信号出力部97を備えている。
【0044】
尚、本実施形態の姿勢制御ECU55は、図示しないローパスフィルタを通した上で、その各加速度センサ73,74の出力信号G1,G2を各補正値演算部84,94に入力する。また、その加速度(Gfr,Gsd)に応じた傾斜角(α,β)の推定、つまり、前後方向加速度演算部83及び幅方向加速度演算部93における推定値αe,βeの演算は、それぞれ、シミュレーションや実験等により得られた一次の近似式(y=Ax+B)を用いて行われる。更に、上記各フィードバック制御部86,96においては、そのフィードバック制御としてPID(比例・積分・微分)制御が実行される。そして、上記各制御信号出力部87,97は、制御信号Sm1,Sm2として、前後方向揺動アクチュエータ51及び幅方向揺動アクチュエータ52の駆動源となる各モータ64,69の作動を制御するモータ制御信号の生成及び出力を実行する構成になっている。
【0045】
即ち、本実施形態の姿勢制御ECU55において、前後方向傾斜制御部81は、車両の前後方向加速度Gfrから演算される前後方向傾斜角の推定値αeよりも実際値(α)が小さい場合には、そのアッパーボディ4の前後方向傾斜角αが増大する方向の駆動力を前後方向揺動アクチュエータ51に発生させるような制御信号Sm1を生成する。そして、前後方向傾斜角の推定値αeよりも実際値(α)が大きい場合には、そのアッパーボディ4の前後方向傾斜角αが減少する方向の駆動力を前後方向揺動アクチュエータ51に発生させるような制御信号Sm1を生成する。
【0046】
同様に、幅方向傾斜制御部82は、車両の幅方向加速度Gsdから演算される前後方向傾斜角の推定値βeよりも実際値(β)が小さい場合には、そのアッパーボディ4の幅方向傾斜角βが増大する方向の駆動力を幅方向揺動アクチュエータ52に発生させるような制御信号Sm2を生成する。更に、幅方向傾斜制御部82は、幅方向傾斜角の推定値βeよりも実際値(β)が大きい場合には、そのアッパーボディ4の幅方向傾斜角βが減少する方向の駆動力を幅方向揺動アクチュエータ52に発生させるような制御信号Sm2を生成する。そして、本実施形態の車両制御装置60は、これにより、その振子機構10の作動によるアッパーボディ4の揺動姿勢を最適化する構成になっている。
【0047】
また、図2図3、及び図8に示すように、本実施形態の車両1において、懸架装置100は、その車高を車輪2毎に調整することによりアンダーボディ3を傾動可能な車高調整装置101としての機能を有している。更に、本実施形態の姿勢制御ECU55は、この車高調整装置101の作動を制御する。そして、本実施形態の車両制御装置60は、これにより、そのアッパーボディ4の揺動にあわせてアンダーボディ3を傾動させる構成になっている。
【0048】
即ち、図11及び図12に示すように、本実施形態の車高調整装置101は、前輪2fに支持された前端部3fの車高Hfと後輪2rに支持された後端部3rの車高Hrとのバランスを変更することで、そのアンダーボディ3を車両前後方向に傾動させることができる。そして、左右の各車輪2a,2bに支持された幅方向両端部の車高Ha,Hbについて、そのバランスを変更することにより、アンダーボディ3を車幅方向に傾動させることができる。
【0049】
尚、図11に示す例では、走行路102を基準面とした前端部3fの車高Hfよりも後端部3rの車高Hrを高くすることで(Hf<Hr)、そのアンダーボディ3が車両前方側(図11中、左側)に傾動した状態となっている。そして、図12に示す例では、同図中、右側の車高Hbよりも左側の車高Haを高くすることで(Hb<Ha)、そのアンダーボディ3が車幅方向、右側に傾動した状態となっている。
【0050】
詳述すると、本実施形態の姿勢制御ECU55は、上記のように振子機構10の作動によりアッパーボディ4が傾く方向に、そのアンダーボディ3を傾動させるべく、車高調整装置101の作動を制御する。そして、本実施形態の車両制御装置60は、これにより、その揺動によりアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量を抑制することが可能になっている。
【0051】
即ち、アンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4がアンダーボディ3とともに傾動することで、その振子機構10が形成するアッパーボディ4の揺動支点Pがアンダーボディ3の傾動方向に移動する。
【0052】
例えば、図13に示すように、振子機構10の作動によりアッパーボディ4が車幅方向に傾く場合、本実施形態の姿勢制御ECU55は、このアッパーボディ4の傾く方向(図13中、右側)に、そのアンダーボディ3を傾動させる。また、これにより、その振子機構10がアッパーボディ4の上端部4a側に形成する揺動支点P(P2)が、そのアンダーボディ3の傾動方向(図13中、右側)、つまりは、その揺動により当該アッパーボディ4の下端部4bがアンダーボディ3から車幅方向外側に振り出される方向とは反対方向に移動する(P→P´)。そして、この揺動支点Pの移動により、その揺動するアッパーボディ4が描く下端部4bの移動軌跡Rもまた、アンダーボディ3の傾動方向に移動することになる(R→R´)。
【0053】
つまり、アッパーボディ4の傾斜角(幅方向傾斜角β)が等しく「βx」であったとしても、このアッパーボディ4が傾く方向にアンダーボディ3を傾動させた場合におけるアッパーボディ4の振出位置X´は、アンダーボディ3を傾動させない場合におけるアッパーボディ4の振出位置Xよりも、よりアンダーボディ3に近づくことになる。そして、この図13に示す例では、これにより、同図中、左側に向かってアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量Dが抑制されている(D→D´、D>D´)。
【0054】
更に、本実施形態の姿勢制御ECU55は、振子機構10の作動によりアッパーボディ4が車両前後方向に傾く場合(図11参照)も同様に、このアッパーボディ4が揺動により傾く方向に、そのアンダーボディ3を傾動させるべく、車高調整装置101の作動を制御する。そして、本実施形態の車両制御装置60は、これにより、車両1の水平方向における全方位の揺動について、そのアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量Dを抑制することが可能になっている。
【0055】
詳述すると、図14に示すように、本実施形態の姿勢制御ECU55は、上記前後方向傾斜制御部81及び幅方向傾斜制御部82を有してアッパーボディ4の揺動姿勢を制御する揺動制御部110に加え、上記のように車高調整装置101の作動を制御することにより、そのアンダーボディ3を傾動させる傾動制御部111を備えている。
【0056】
具体的には、図8及び図14に示すように、本実施形態の姿勢制御ECU55は、車高センサ103の出力信号に基づいて、その各車輪2が配置された前後左右のコーナー部分におけるアンダーボディ3の車高Hfa,Hfb,Hra,Hrbを検出する。そして、本実施形態の傾動制御部111は、これらの車輪2が設けられた位置毎の車高Hfa,Hfb,Hra,Hrbに基づいて、そのアンダーボディ3における前後方向の傾動角度(前後方向傾動角度ζ、図11参照)、及び車幅方向の傾動角度(幅方向傾動角度η、図12参照)を検出する。
【0057】
また、図14に示すように、本実施形態の傾動制御部111には、その揺動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角として、前後方向傾斜制御部81及び幅方向傾斜制御部82により演算された前後方向傾斜角及び幅方向傾斜角の各推定値αe,βeが入力される。そして、本実施形態の傾動制御部111は、これら前後方向傾斜角及び幅方向傾斜角の各推定値αe,βeに基づいて、そのアンダーボディ3の前後方向傾動角度ζ及び幅方向傾動角度ηを制御する。
【0058】
さらに詳述すると、図15のフローチャートに示すように、本実施形態の傾動制御部111は、その揺動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角として前後方向傾斜角の推定値αeを取得すると(ステップ1101)、その値を所定の調整開始角度α1と比較する(ステップ1102)。そして、前後方向傾斜角の推定値αeが調整開始角度α1よりも大きい場合(αe>α1、ステップ1102:YES)、即ちアッパーボディ4が調整開始角度α1を超えて車両前後方向に傾く場合に、その調整開始角度α1を超える前後方向傾斜角の推定値αeに基づいて、アンダーボディ3に設定する前後方向傾動角度ζを演算する(ステップ1103)。
【0059】
更に、本実施形態の傾動制御部111は、アッパーボディ4に生ずる傾斜角として幅方向傾斜角の推定値βeを取得すると(ステップ1104)、同様に、その値を所定の調整開始角度β1と比較する(ステップ1105)。そして、幅方向傾斜角の推定値βeが調整開始角度β1よりも大きい場合(βe>β1、ステップ1105:YES)、即ちアッパーボディ4が調整開始角度β1を超えて車幅方向に傾く場合に、その調整開始角度β1を超える幅方向傾斜角の推定値βeに基づいて、アンダーボディ3に設定する幅方向傾動角度ηを演算する(ステップ1106)。
【0060】
具体的には、図13に示すように、本実施形態の車両1には、振子機構10の作動によりアンダーボディ3の外側にアッパーボディ4の下端部4bが振り出された場合に、そのアンダーボディ3からの飛出量Dを許容することのできる限界位置として、飛出許容限界Dlimが設定されている。そして、本実施形態の傾動制御部111において、上記調整開始角度α1,β1は、それぞれ、アンダーボディ3に傾動がない状態において、そのアッパーボディ4の飛出量Dが、アンダーボディ3の外側に設定された上記所定の飛出許容限界Dlimを超えない傾斜角(α,β)の値に設定されている。
【0061】
また、図16に示すように、本実施形態の傾動制御部111は、調整開始角度α1を超える前後方向傾斜角の推定値αeに基づいて、そのアッパーボディ4に生ずる前後方向傾斜角αが大きくなる場合ほど、アンダーボディ3に設定する前後方向傾動角度ζとして、より大きな値を演算する。同様に、調整開始角度β1を超える幅方向傾斜角の推定値βeに基づいて、そのアッパーボディ4に生ずる幅方向傾斜角βが大きくなる場合ほど、アンダーボディ3に設定する幅方向傾動角度ηとして、より大きな値を演算する。そして、本実施形態の傾動制御部111は、上記ステップ1103及びステップ1106で演算した設定値に、その前後方向傾動角度ζ及び幅方向傾動角度ηを一致させるべく、車高調整装置101の作動を制御して、その車輪2が設けられた位置毎にアンダーボディ3の車高Hfa,Hfb,Hra,Hrbを調整する(ステップ1107)。
【0062】
尚、本実施形態の傾動制御部111は、図16に示すような前後方向傾斜角の推定値αeと前後方向傾動角度ζとの関係、及び幅方向傾斜角の推定値βeと幅方向傾動角度ηとの関係を、それぞれ、互いに独立したマップMの形式で、その図示しない記憶領域に保持する。また、本実施形態の傾動制御部111は、前後方向傾斜角の推定値αeが調整開始角度α1以下である場合(αe≦α1、ステップ1102:NO)には、ステップ1103の処理を実行しない。同様に、幅方向傾斜角の推定値βeが調整開始角度β1以下である場合(βe≦β1、ステップ1105:NO)、ステップ1106の処理を実行しない。そして、本実施形態の車両制御装置60は、これにより、アッパーボディ4が、その車両前後及び車幅方向における何れかの調整開始角度α1,β1を超えて傾く場合にのみ、このアッパーボディ4が傾く方向に、そのアンダーボディ3を傾動させる構成になっている。
【0063】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)車両制御装置60は、車両1のアンダーボディ3とアッパーボディ4との間に介在されることにより、そのアンダーボディ3に対するアッパーボディ4の揺動を許容する振子機構10を備える。また、車両制御装置60は、アンダーボディ3を傾動可能な車高調整装置101を備える。そして、この車両制御装置60は、その振子機構10が形成する支点(揺動支点P)回りにアッパーボディ4が揺動することにより当該アッパーボディ4が傾く方向に、そのアンダーボディ3を傾動させるべく、車高調整装置101の作動を制御する傾動制御部111を有した姿勢制御ECU55を備える。
【0064】
即ち、アンダーボディ3の上方に支持されたアッパーボディ4が、そのアンダーボディ3とともにアッパーボディ4が傾く方向に傾動することで、振子機構10が形成するアッパーボディ4の揺動支点Pもまた、そのアンダーボディ3の傾動方向に移動する(P→P´)。更に、この揺動支点Pの移動により、その揺動するアッパーボディ4が描く下端部4bの移動軌跡Rもまた、アンダーボディ3の傾動方向に移動する(R→R´)。そして、これにより、そのアッパーボディ4の振出位置Xが、アンダーボディ3を傾動させない場合よりもアンダーボディ3側に近づくことで(X→X´)、その振子機構10の作動によりアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量Dを抑制することができる(D→D´、D>D´)。
【0065】
(2)傾動制御部111は、振子機構10の作動によりアッパーボディ4に生ずる揺動支点P回りの傾斜角(α,β)が所定の調整開始角度(α1,β1)を超える場合に、そのアンダーボディ3をアッパーボディ4が傾く方向に傾動させる。
【0066】
即ち、アッパーボディ4の傾斜角(α,β)が小さい場合には、このアッパーボディ4がアンダーボディ3の外側に振り出されることによる外観の変化、及びこの外観の変化が車両1の周囲に与える影響も小さい。従って、上記構成によれば、車高調整装置101の作動によるエネルギー消費を抑えつつ、効果的に、そのアッパーボディの飛出量を抑制することができる。
【0067】
(3)調整開始角度(α1,β1)は、アンダーボディ3に傾動がない状態において、その振子機構10の作動により揺動するアッパーボディ4の飛出量Dが、アンダーボディ3の外側に設定された飛出許容限界Dlimを超えない傾斜角(α,β)の値に設定される。これにより、効果的に、その飛出許容限界Dlimを超えた飛出量Dの発生を抑制することができる。
【0068】
(4)傾動制御部111は、揺動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)が大きいほど、アンダーボディ3に大きな傾動角度(ζ,η)を設定する。
即ち、アッパーボディ4の傾斜角(α,β)が大きいほど、そのアンダーボディ3からの飛出量Dもまた大きくなる。従って、上記構成によれば、適切にアンダーボディ3を傾動させて、そのアッパーボディ4の飛出量Dを抑制することができる。
【0069】
(5)傾動制御部111は、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいた傾斜角の推定値(αe,βe)を用いて上記調整開始角度(α1,β1)の超過判定及び傾動角度(ζ,η)の演算を実行する。
【0070】
上記構成によれば、揺動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)を先読みして、速やかに、そのアンダーボディ3を傾動させるべく車高調整装置101の作動を制御することができる。そして、これにより、遅延なく、適切に、アンダーボディ3を傾動させることができる。
【0071】
(6)車両制御装置60は、揺動するアッパーボディ4の傾斜角(α,β)を変更可能な駆動力を発生するアクチュエータ(51,52)と、このアクチュエータ(51,52)の作動を制御する揺動制御部110を有した姿勢制御ECU55と、を備える。そして、揺動制御部110は、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいた傾斜角の推定値(αe,βe)よりも、その傾斜角の実際値(α,β)が小さい場合には、その傾斜角(α,β)を増大させ、その推定値(αe,βe)よりも実際値(α,β)が大きい場合には、その傾斜角を減少させるべく、アクチュエータ(51,52)を制御する。
【0072】
上記構成によれば、乗員の乗車位置による重心移動、或いは横風のような外部要因等、外乱の影響に依らず、その振子機構10の作動により生ずるアッパーボディ4の傾斜角(α,β)、つまりは揺動姿勢を最適化することができる。特に、車両1の加速度に基づいた自律的な揺動により生ずる傾斜角(α,β)が不足する場合であっても、その不足分をアクチュエータ(51,52)の駆動力により補うことができる。そして、これにより、良好な乗り心地を確保することができる。
【0073】
更に、自律的に揺動する振子機構10にアクチュエータ(51,52)を組み合わせることにより、小さな出力でアッパーボディ4の揺動姿勢を制御することができる。そして、これにより、装置の小型化及び省エネルギー化を図ることができる。
【0074】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0075】
・上記実施形態では、車両1の状態量(θh,V)及び制御信号(Sac,Sbk)に基づき車両1の加速度を推定する。そして、その推定された加速度(Gfr,Gsd)を加速度センサ(71,72)の出力信号(G1,G2)に基づく補正値(γ1,γ2)より補正した値(Gfr´,Gsd´)に基づいて、その車両1の加速度に基づいた揺動によりアッパーボディ4に生じる傾斜角の推定値(αe,βe)を演算することとした。
【0076】
しかし、これに限らず、加速度センサ(71,72)の出力信号(G1,G2)に基づいた実測値を主たる入力として、その傾斜角の推定値(αe,βe)を演算する構成としてもよい。尚、この場合、例えば、その傾斜角の推定値(αe,βe)について、一演算当たりの変化量に制限(ガード値)を設けるとよい。そして、これにより、その加速度センサ(71,72)の出力信号(G1,G2)に混入するノイズの影響を抑えて、安定的に、そのアッパーボディ4の揺動姿勢を制御することができる。
【0077】
・また、推定された加速度(Gfr,Gsd)のみを用いて傾斜角の推定値(αe,βe)を演算する構成であってもよい。更に、加速度センサ(71,72)の出力信号(G1,G2)に基づく実測値のみを用いて傾斜角の推定値(αe,βe)を演算する構成であってもよい。そして、制御信号に示されるものを含め、操舵角θh、車速V、アクセル信号Sac、及びブレーキ信号Sbk以外の状態量を加速度の推定に用いる構成としてもよい。
【0078】
・上記実施形態では、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に応じた傾斜角(α,β)の推定、つまり、前後方向加速度演算部83及び幅方向加速度演算部93における推定値αe,βeの演算は、それぞれ、シミュレーションや実験等により得られた一次の近似式(y=Ax+B)を用いて行われることとした。しかし、これに限らず、例えば、車両1の加速度(Gfr,Gsd)と傾斜角の推定値(αe,βe)との関係が規定されたマップを用いて演算する構成であってもよい。
【0079】
・上記実施形態では、振子機構10は、車両1の前後方向におけるアッパーボディ4の揺動を許容する前後方向揺動部41と、車両1の幅方向におけるアッパーボディ4の揺動を許容する幅方向揺動部42と、を備えることとした。しかし、これに限らず、その振子機構10が、前後方向揺動部41のみを備える構成であってもよく、幅方向揺動部42のみを備える構成であってもよい。
【0080】
・更に、車両1の前後方向及び幅方向に限らず、互いに直交する第1方向及び第2方向にアッパーボディ4の揺動を許容する第1方向揺動部及び第2方向揺動部を備える構成であってもよい。このような構成としても、第1方向揺動部及び第2方向揺動部が連動することで、その第1方向及び第2方向を含む平面(例えば、水平面)における全方位の揺動を許容することができる。そして、これにより、より良好な乗り心地を確保することができる。
【0081】
・また、上記実施形態では、アンダーボディ3に固定された各弧状体11,15と、ミドルボディ25に固定された状態で各弧状体11,15の上側湾曲面11u,15uに摺接する各メインローラー31によって、その振子機構10の前後方向揺動部41が形成される。そして、アッパーボディ4の下面4sに固定された各弧状体22と、ミドルボディ25に固定された状態で各弧状体22の下側湾曲面22lに摺接する各メインローラー32によって、その振子機構10の幅方向揺動部42が形成されることとした。しかし、これに限らず、車両1の加速度に基づいて、その重心が形成される下端部4b側を慣性力の働く方向に振り出すかたちで、自律的にアッパーボディ4が揺動する構成であれば、例えば、アンダーボディ3に形成された支点からアッパーボディ4が吊り下げられる等、その振子機構10の構成は、任意に変更してもよい。
【0082】
・上記実施形態では、振子機構10を構成する前後方向揺動部41及び幅方向揺動部42にあわせ、車高調整装置101は、アンダーボディ3の車高を車輪2毎に調整することにより、車両前後方向及び車幅方向において、そのアンダーボディ3を傾動可能な構成とした。しかし、これに限らず、例えば、その振子機構10が前後方向揺動部41のみを備える構成である場合には、車両前後方向のみにアンダーボディ3を傾動可能な構成であってもよく、振子機構10が幅方向揺動部42のみを備える構成である場合には、車幅方向のみにアンダーボディ3を傾動可能な構成であってもよい。つまり、アッパーボディ4の揺動を許容する方向において、そのアッパーボディ4が傾く方向に、アンダーボディ3を傾動させることが可能であればよい。
【0083】
・上記実施形態では、アッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)が所定の調整開始角度(α1,β1)を超える場合に、アンダーボディ3を傾動させる。そして、その調整開始角度(α1,β1)の超過判定には、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいた傾斜角の推定値(αe,βe)を用いることとした。しかし、これに限らず、調整開始角度(α1,β1)の超過判定に、アッパーボディ4に生ずる傾斜角の実際値(α,β)を用いる構成であってもよい。尚、この場合、車高調整装置101の作動速度を考慮して、予め、その調整開始角度(α1,β1)を低く設定するとよい。これにより、効果的に、そのアッパーボディ4の飛出量Dを抑制することができる。
【0084】
・また、図17に示すように、調整開始角度(α1,β1)を設定することなく、アッパーボディ4の傾斜角(α,β)に応じてアンダーボディ3を傾動させる構成であってもよい。そして、アンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)の演算についてもまた、そのアッパーボディ4に生じた傾斜角の実際値(α,β)を用いる構成であってもよい。
【0085】
・更に、上記実施形態及び図17に示す別例では、アンダーボディ3を傾動させる場合、そのアッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)が大きいほど、アンダーボディ3に大きな傾動角度(ζ,η)を設定することとした。しかし、アンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)は、必ずしも、傾斜角(α,β)の増加に応じて線形で増加するものでなくともよい。例えば、アッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)が所定の調整開始角度(α1,β1)を超える場合に、一定の傾動角度(ζ,η)を設定する構成であってもよい。そして、傾斜角(α,β)の増加に応じてステップ状に、アンダーボディ3の傾動角度(ζ,η)を増加させる構成等であってもよい。
【0086】
・また、図18に示すように、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいて、そのアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)を演算する構成としてもよい。即ち、車両1の加速度(Gfr,Gsd)が大きいほど、その振子機構10の作動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)もまた大きくなる。従って、このような構成を採用して、車両1の加速度(Gfr,Gsd)が大きいほど、そのアンダーボディ3に大きな傾動角度(ζ,η)を設定することによっても、上記実施形態と同様、適切にアンダーボディ3を傾動させて、そのアッパーボディ4の飛出量Dを抑制することができる。
【0087】
・更に、車高調整装置101の作動によりアンダーボディ3を傾動させて当該アンダーボディ3とともにアッパーボディ4を傾かせた後、その振子機構10の作動によりアッパーボディ4を揺動させる構成であってもよい。
【0088】
具体的には、上記のように車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づきアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)を演算するとともに、この傾動角度(ζ,η)が所定の揺動許可角度(ζ0,η0)を超えるまで、そのアッパーボディ4の揺動を規制する構成としてもよい。
【0089】
例えば、図19に示す姿勢制御ECU55Bにおいて、傾動制御部111Bには、その揺動制御部110Bを構成する前後方向傾斜制御部81及び幅方向傾斜制御部82において用いられる車両1の前後方向加速度Gfr及び幅方向加速度Gsd(図10参照、Gfr´,Gsd´)が入力される。そして、この傾動制御部111Bは、これら車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいて、そのアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)を演算する傾動角度演算部121としての機能を有している(図18参照)。
【0090】
更に、傾動制御部111Bは、その演算したアンダーボディ3の傾動角度(ζ,η)を揺動制御部110Bに出力する。そして、この別例の姿勢制御ECU55Bにおいては、これにより、その揺動制御部110Bが、アンダーボディ3の傾動角度(ζ,η)が揺動許可角度(ζ0,η0)を超えるまで、そのアッパーボディ4の揺動を規制する揺動規制部122として機能する構成になっている。
【0091】
詳述すると、図20のフローチャートに示すように、揺動規制部122としての揺動制御部110Bは、傾動角度演算部121としての傾動制御部111Bにおいて演算されたアンダーボディ3の前後方向傾動角度ζを取得すると(ステップ1201)、この前後方向傾動角度ζを所定の揺動許可角度ζ0と比較する(ステップ1202)。そして、その前後方向傾動角度ζが揺動許可角度ζ0以下である場合(ζ≦ζ0、ステップ1201:YES)には、振子機構10の前後方向揺動部41をロックして、車両前後方向におけるアッパーボディ4の揺動を規制すべく、その前後方向揺動アクチュエータ51の作動を制御する(ステップ1203)。
【0092】
また、揺動制御部110Bは、傾動制御部111Bにおいて演算されたアンダーボディ3の幅方向傾動角度ηを取得すると(ステップ1204)、同様に、この幅方向傾動角度ηを所定の揺動許可角度η0と比較する(ステップ1205)。そして、その幅方向傾動角度ηが揺動許可角度η0以下である場合(η≦η0、ステップ1205:YES)には、振子機構10の幅方向揺動部42をロックして、車幅方向におけるアッパーボディ4の揺動を規制すべく、その幅方向揺動アクチュエータ52の作動を制御する(ステップ1206)。
【0093】
即ち、車両1の加速度(Gfr,Gsd)がアッパーボディ4に形成された車室内の乗員に与える影響を、そのアンダーボディ3とともにアッパーボディ4を傾動させる車高調整装置101の作動により緩和可能な場合には、振子機構10の作動によるアッパーボディ4の揺動を規制する。そして、これにより、このアッパーボディ4がアンダーボディ3の外側に飛び出さないようにすることで、その外観の変化を抑えて、周囲の車両に圧迫感を与えないようにすることができる。
【0094】
尚、この図19及び図20に示す別例では、傾動制御部111Bは、揺動制御部110Bにおいて用いられる車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいて、そのアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)を演算することとした。しかし、これに限らず、上記実施形態における傾動制御部111と同様、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づき演算される傾斜角の推定値(αe,βe)を用いて、その傾動角度(ζ,η)の演算を行う構成としてもよい。
【0095】
また、揺動規制部122としての揺動制御部110Bは、各アクチュエータ(51,52)の作動を制御することにより、その振子機構10の作動をロックすることとした。しかし、これに限らず、これらのアクチュエータ(51,52)とは別体に、その振子機構10をロックしてアッパーボディ4の揺動を規制可能なロック機構を設ける構成であってもよい。更に、その揺動制御部110と揺動規制部122とが別体に設けられた構成であってもよい。そして、制御モードの切り替えによって、上記実施形態のようなアッパーボディ4に生ずる傾斜角(α,β)が所定の調整開始角度(α1,β1)を超える場合にアンダーボディ3を傾動させる制御の実行と選択可能な構成であってもよい。
【0096】
・更に、振子機構10の作動によりアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量Dが、アンダーボディ3の外側に設定された飛出許容限界Dlimを超えないように(図13参照)、各アクチュエータ(51,52)の作動を制御する構成としてもよい。これにより、効果的に、そのアッパーボディの飛出量を抑えることができる。
【0097】
例えば、図21に示す揺動制御部110Cは、車両1の加速度(Gfr,Gsd)に基づいて、その振子機構10の作動によりアッパーボディ4に生ずる傾斜角の推定値(αe,βe)を演算する傾斜角推定値演算部125(85,95)と、その傾斜角の推定値(αe,βe)を制限(補正)する傾斜角推定値制限部130と、を備えている。
【0098】
具体的には、この別例の揺動制御部110Cにおいて、傾斜角推定値制限部130には、その傾斜角推定値演算部125において演算された傾斜角の推定値(αe,βe)とともに、上記傾動制御部111(111B)から取得したアンダーボディ3の傾動角度(ζ,η)が入力される(図19参照)。更に、この傾斜角推定値制限部130は、これらのアッパーボディ4に生ずる傾斜角の推定値(αe,βe)及びアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)に基づいて、そのアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の飛出量Dを演算する。そして、この飛出量Dが、アンダーボディ3の外側に設定された飛出許容限界Dlimを超えないように、その各アクチュエータ(51,52)の制御目標値となる傾斜角の推定値(αe,βe)を制限する。
【0099】
詳述すると、図22のフローチャートに示すように、傾斜角推定値制限部130は、アッパーボディ4に生ずる前後方向傾斜角の推定値αeが入力されると(ステップ1301)、先ず、アンダーボディ3の前後方向傾動角度ζを取得する(ステップ1302)。そして、傾斜角推定値制限部130は、これらアッパーボディ4に生ずる前後方向傾斜角の推定値αe及びアンダーボディ3の前後方向傾動角度ζに基づいて、その車両前後方向においてアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の前後方向飛出量D1を演算する(ステップ1303)。
【0100】
次に、傾斜角推定値制限部130は、この前後方向飛出量D1を車両前後方向の飛出許容限界Dlim1と比較する(ステップ1304)。更に、傾斜角推定値制限部130は、その前後方向飛出量D1が飛出許容限界Dlim1を超える場合(D1>Dlim1、ステップ1304:YES)には、取得した前後方向傾動角度ζが変わらないとした場合に、その前後方向飛出量D1が飛出許容限界Dlim1を超えない値となる最大の傾斜角推定値α0を演算する(ステップ1305)。そして、傾斜角推定値制限部130は、このステップ1304において演算した最大の傾斜角推定値α0を、その制限処理が施された後の前後方向傾斜角の推定値αe´に決定する(αe´=α0、ステップ1306)。
【0101】
尚、傾斜角推定値制限部130は、上記ステップ1303において、その前後方向飛出量D1が飛出許容限界Dlim1以下であると判定した場合(D1≦Dlim1、ステップ1303:NO)には、上記ステップ1305及びステップ1306の処理を実行しない。そして、上記ステップ1301において入力された前後方向傾斜角の推定値αeを、そのまま、その制限処理が施された後の前後方向傾斜角の推定値αe´に決定する(αe´=αe、ステップ1307)。
【0102】
また、傾斜角推定値制限部130は、アッパーボディ4に生ずる幅方向傾斜角の推定値βeが入力されると(ステップ1308)、続いて、アンダーボディ3の幅方向傾動角度ηを取得する(ステップ1309)。そして、傾斜角推定値制限部130は、これらアッパーボディ4に生ずる幅方向傾斜角の推定値βe及びアンダーボディ3の幅方向傾動角度ηに基づいて、その車幅方向においてアンダーボディ3の外側に振り出されるアッパーボディ4の幅方向飛出量D2を演算する(ステップ1310)。
【0103】
次に、傾斜角推定値制限部130は、この幅方向飛出量D2を車幅方向の飛出許容限界Dlim2と比較する(ステップ1311)。更に、傾斜角推定値制限部130は、その幅方向飛出量D2が飛出許容限界Dlim2を超える場合(D2>Dlim2、ステップ1311:YES)には、取得した幅方向傾動角度ηが変わらないとした場合に、その幅方向飛出量D2が飛出許容限界Dlim2を超えない値となる最大の傾斜角推定値β0を演算する(ステップ1312)。そして、傾斜角推定値制限部130は、このステップ1312において演算した最大の傾斜角推定値β0を、その制限処理が施された後の幅方向傾斜角の推定値βe´に決定する(βe´=β0、ステップ1313)。
【0104】
尚、傾斜角推定値制限部130は、上記ステップ1311において、その幅方向飛出量D2が飛出許容限界Dlim2以下であると判定した場合(D2≦Dlim2、ステップ1311:NO)には、上記ステップ1312及びステップ1313の処理を実行しない。そして、上記ステップ1308において入力された幅方向傾斜角の推定値βeを、そのまま、その制限処理が施された後の幅方向傾斜角の推定値βe´に決定する(βe´=βe、ステップ1314)。
【0105】
そして、傾斜角推定値制限部130は、上記ステップ1306又はステップ1307において決定した制限処理後の前後方向傾斜角の推定値αe´、及び上記ステップ1313又はステップ1314において決定した制限処理後の幅方向傾斜角の推定値βe´を出力する構成になっている(ステップ1315)。
【0106】
・また、車高調整装置101の作動によりアンダーボディ3とともにアッパーボディ4が傾動する分、つまりは、そのアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)に基づいて、その各アクチュエータ(51,52)の制御目標値となる傾斜角の推定値(αe,βe)を低減する構成としてもよい。
【0107】
このような傾斜角の推定値(αe,βe)を低減する方法については、例えば、図21に示す上記別例の揺動制御部110Cに設けられた傾斜角推定値制限部130の位置に、そのアンダーボディ3の傾動角度(ζ,η)に基づき傾斜角の推定値(αe,βe)を低減する低減制御部を設ける構成とすればよい。そして、車両1の加速度(Gfr,Gsd)と傾斜角の推定値(αe,βe)との関係が規定されたマップを用いて、その傾斜角の推定値(αe,βe)を演算する構成において、そのマップ中に、予めアンダーボディ3に設定する傾動角度(ζ,η)に基づく低減分を設定する構成としてもよい。
【0108】
・上記実施形態及び上記各別例では、その車両制御装置60が、振子機構10の作動により揺動するアッパーボディ4の傾斜角(αe,βe)を変更可能な駆動力を発生するアクチュエータ(51,52)を備えることとした。しかし、これに限らず、このようなアクチュエータ(51,52)を備えることなく、単純に振子機構10の作動によりアッパーボディ4が自律的に揺動する構成において、そのアッパーボディ4が傾く方向に、アンダーボディ3を傾動させる構成としてもよい。
【0109】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記調整開始角度は、前記アンダーボディに傾動がない状態において、前記振子機構の作動により揺動する前記アッパーボディの飛出量が、前記アンダーボディの外側に設定された所定の飛出許容限界を超えない前記傾斜角の値に設定されること、を特徴とする車両制御装置。これにより、効果的に、その飛出許容限界を超えた飛出量の発生を抑制することができる。
【0110】
(ロ)傾動制御部は、前記車両の加速度に基づいた前記傾斜角の推定値を用いて前記調整開始角の超過判定を実行すること、を特徴とする車両制御装置。
(ハ)傾動制御部は、前記車両の加速度に基づいた前記傾斜角の推定値を用いて前記傾動角度の演算を実行すること、を特徴とする車両制御装置。
【0111】
上記各構成によれば、揺動によりアッパーボディに生ずる傾斜角を先読みして、速やかに、そのアンダーボディを傾動させるべく車高調整装置の作動を制御することができる。そして、これにより、遅延なく、適切に、アンダーボディを傾動させることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…車両、2(2a,2b,2f,2r)…車輪、3…アンダーボディ、3f…前端部、3r…後端部、4…アッパーボディ、4a…上端部、4b…下端部、4s…下面、10…振子機構、11…弧状体、11l…下側湾曲面、11u…上側湾曲面、13…前方支持部、15…弧状体、15l…下側湾曲面、15u…上側湾曲面、17…後方支持部、21…縦置揺動支持部材、22…弧状体、22l…下側湾曲面、22u…上側湾曲面、25…ミドルボディ、25a,25b…側端面、25f…前端面、25r…後端面、26…横置揺動支持部材、31(31f,31r)…メインローラー(回転体)、32(31a,31b)…メインローラー(回転体)、33(32f,32r)…補助ローラー(回転体)、34(34a,34b)…補助ローラー(回転体)、35…乗員、35h…頭部、41…前後方向揺動部、42…幅方向揺動部、51…前後方向揺動アクチュエータ、52…幅方向揺動アクチュエータ、55,55B…姿勢制御ECU、60…車両制御装置、61…セクターギヤ、61u…上側湾曲面、62…ギヤ歯、63…ピニオンギヤ、64…モータ、65…駆動ユニット、66…セクターギヤ、66l…下側湾曲面、67…ギヤ歯、68…ピニオンギヤ、69…モータ、70…駆動ユニット、71,72…傾斜角センサ、73,74…加速度センサ、75…ステアリングセンサ、81…前後方向傾斜制御部、82…幅方向傾斜制御部、83…前後方向加速度演算部、84…補正値演算部、85…前後方向傾斜角推定値演算部、86…フィードバック制御部、87…制御信号出力部、93…幅方向加速度演算部、94…補正値演算部、95…幅方向傾斜角推定値演算部、96…フィードバック制御部、97…制御信号出力部、100…懸架装置、101…車高調整装置、102…走行路、103…車高センサ、110,110B,110C…揺動制御部、111,111B…傾動制御部、121…傾動角度演算部、122…揺動規制部、125…傾斜角推定値演算部、130…傾斜角推定値制限部、P1,P2…揺動支点、Q1,Q2…転動軌跡、α…前後方向傾斜角(実際値)、αe…推定値、Δα…偏差、Gfr,Gfr´…前後方向加速度、G1…出力信号、γ1…補正値、ε1…制御量、Sm1…制御信号、β…幅方向傾斜角(実際値)、βe…推定値、Δβ…偏差、Gsd,Gsd´…幅方向加速度、G2…出力信号、γ2…補正値、ε2…制御量、Sm2…制御信号、Sac…アクセル信号、Sbk…ブレーキ信号、V…車速、θh…操舵角、Hf,Hr,Ha,Hb,Hfa,Hfb,Hra,Hrb…車高、P,P´…揺動支点、R,R´…移動軌跡、X,X´…振出位置、ζ…前後方向傾動角度、η…幅方向傾動角度、ζ0,η0…揺動許可角度、M…マップ、α1,β1…調整開始角度、D,D´…飛出量、Dlim,Dlim1,Dlim2…飛出許容限界、D1…前後方向飛出量、D2…幅方向飛出量、α0,β0…最大の傾斜角推定値。
図1
図2
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図9
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