IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図1
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図2
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図3
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図4
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図5
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図6
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図7
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図8
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図9
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図10
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図11
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図12
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図13
  • 特許-電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20230418BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20230418BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02K5/22
F04B39/00 106E
F04B39/00 106A
H02K15/04 E
H02K15/04 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019084643
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020182337
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】滝本 修二
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】浜名 祥三
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-168832(JP,A)
【文献】特開2014-114795(JP,A)
【文献】特開2015-183668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
F04B 39/00
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
筒状のステータコア、及び前記ステータコアの軸方向の端面から突出するコイルエンドを有するステータを備えるとともに、前記圧縮部を駆動させる電動モータと、
内周面に前記ステータコアが固定された筒状の周壁、及び前記周壁の軸方向の一端に連なるとともに前記ステータコアの軸方向において前記電動モータと並ぶ端壁を有するハウジングと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記ハウジングに形成された貫通孔を介して前記モータ駆動回路と電気的に接続される導電部材と、
前記コイルエンドから引き出されたモータ配線と、
前記導電部材と前記モータ配線とを接続する接続端子と、
前記接続端子を内部に収容するとともに前記導電部材が挿通される導電部材挿通孔が形成され、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に配置された絶縁性のクラスタブロックと、を備えた電動圧縮機であって、
前記導電部材挿通孔は、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置しており、
前記クラスタブロックにおける前記電動モータ側に位置するモータ側端面は、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に押圧面を有し、
前記クラスタブロックにおける前記端壁側に位置するハウジング側端面は、前記ステータコアの軸方向において前記押圧面と並ぶように位置するとともに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側で前記端壁と当接可能な当接面を有することを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記端壁における前記電動モータ側に位置するモータ側壁面には、前記クラスタブロックの一部が収容される凹部が形成されており、
前記当接面は、前記凹部の底面と当接可能である請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
流体を圧縮する圧縮部と、
筒状のステータコア、及び前記ステータコアの軸方向の端面から突出するコイルエンドを有するステータを備えるとともに、前記圧縮部を駆動させる電動モータと、
内周面に前記ステータコアが固定された筒状の周壁、及び前記周壁の軸方向の一端に連なるとともに前記ステータコアの軸方向において前記電動モータと並ぶ端壁を有するハウジングと、
前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、
前記ハウジングに形成された貫通孔を介して前記モータ駆動回路と電気的に接続される導電部材と、
前記コイルエンドから引き出されたモータ配線と、
前記導電部材と前記モータ配線とを接続する接続端子と、
前記接続端子を内部に収容するとともに前記導電部材が挿通される導電部材挿通孔が形成され、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に配置された絶縁性のクラスタブロックと、を備えた電動圧縮機の組立方法であって、
前記ステータコアの軸方向から見たときに前記導電部材挿通孔が前記ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置するように、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に前記クラスタブロックを配置し、
前記クラスタブロックにおいて前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に位置する部分を、治具によって前記ステータコアの内側から前記端壁に向けて押圧することで、前記クラスタブロックにおいて前記端壁側に位置するとともに前記ステータコアの軸方向において前記治具によって押圧される部分と並ぶ部分を前記端壁と当接させた状態で前記治具と前記端壁とによって前記クラスタブロックを挟持し、
前記クラスタブロックが前記治具と前記端壁とによって挟持された状態で前記貫通孔及び前記導電部材挿通孔に前記導電部材を挿通し、前記導電部材と前記接続端子とを接続することを特徴とする電動圧縮機の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動させる電動モータとを備えている。電動モータは、筒状のステータコア、及びステータコアの軸方向の端面から突出するコイルエンドを有するステータを備えている。電動圧縮機は、内周面にステータコアが固定された筒状の周壁、及び周壁の軸方向の一端に連なるとともにステータコアの軸方向において電動モータと並ぶ端壁を有するハウジングを備えている。また、電動圧縮機は、電動モータを駆動するモータ駆動回路と、ハウジングに形成された貫通孔を介してモータ駆動回路と電気的に接続される導電部材と、コイルエンドから引き出されたモータ配線と、導電部材とモータ配線とを接続する接続端子と、接続端子を内部に収容するとともに導電部材が挿通される導電部材挿通孔が形成された絶縁性のクラスタブロックとを備えている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の電動圧縮機では、クラスタブロックは、ステータコアの軸方向において端壁とコイルエンドとの間に配置されている。クラスタブロックの一部分は、ステータコアの軸方向においてコイルエンドと対向している。そして、クラスタブロックがステータコアの軸方向において電動モータ側に移動した場合、クラスタブロックの一部分がコイルエンドに接触することで、ハウジングの内部におけるクラスタブロックの移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-168832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようにハウジングの内部においてクラスタブロックが固定されていない電動圧縮機では、導電部材を端壁側からクラスタブロック内に押し込むようにして導電部材を接続端子に接続しようとすると、クラスタブロックが電動モータ側に移動してコイルエンドに接触することでコイルエンドが損傷したり、クラスタブロックが変形又は破損したりする虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、導電部材を接続端子に接続する際のクラスタブロックとコイルエンドとの接触及びクラスタブロックの変形や破損を抑制できる電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、筒状のステータコア、及び前記ステータコアの軸方向の端面から突出するコイルエンドを有するステータを備えるとともに、前記圧縮部を駆動させる電動モータと、内周面に前記ステータコアが固定された筒状の周壁、及び前記周壁の軸方向の一端に連なるとともに前記ステータコアの軸方向において前記電動モータと並ぶ端壁を有するハウジングと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、前記ハウジングに形成された貫通孔を介して前記モータ駆動回路と電気的に接続される導電部材と、前記コイルエンドから引き出されたモータ配線と、前記導電部材と前記モータ配線とを接続する接続端子と、前記接続端子を内部に収容するとともに前記導電部材が挿通される導電部材挿通孔が形成され、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に配置された絶縁性のクラスタブロックと、を備えた電動圧縮機であって、前記導電部材挿通孔は、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置しており、前記クラスタブロックにおける前記電動モータ側に位置するモータ側端面は、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に押圧面を有し、前記クラスタブロックにおける前記端壁側に位置するハウジング側端面は、前記ステータコアの軸方向において前記押圧面と並ぶように位置するとともに前記端壁と当接可能な当接面を有することを要旨とする。
【0008】
これによれば、クラスタブロックが端壁とコイルエンドとの間に配置された状態において、治具によってステータコアの内側からクラスタブロックの押圧面を端壁に向けて押圧できる。治具によってクラスタブロックの押圧面を押圧すると、クラスタブロックの当接面が端壁と当接した状態で、クラスタブロックは治具と端壁とによって挟持される。この状態で導電部材を接続端子に接続することで、ステータコアの軸方向においてクラスタブロックがステータ側に移動することが治具によって規制される。また、当接面と押圧面とはステータコアの軸方向に並んでいるため、クラスタブロックが治具と端壁とによって挟持された際に、ステータコアの軸方向と直交する方向に対してクラスタブロックの当接面及び押圧面が傾くことが抑制され、クラスタブロックがコイルエンドに接近するように傾くことが抑制される。よって、導電部材を接続端子に接続する際のクラスタブロックとコイルエンドとの接触を抑制できる。
【0009】
さらに、導電部材挿通孔は、ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置する。言い換えると、導電部材挿通孔は、クラスタブロックにおける治具と端壁とによって挟持される部分に位置していない。このため、クラスタブロックが治具と端壁とによって挟持された際に、クラスタブロックにおける脆弱部分である導電部材挿通孔の周りに応力が集中することが回避される。よって、クラスタブロックの変形や破損を抑制できる。
【0010】
また、上記電動圧縮機について、前記クラスタブロックは、前記押圧面を押圧する治具と凹凸係合される係合部を有するのが好ましい。
これによれば、治具とクラスタブロックの係合部とが凹凸係合することによって、治具に対してクラスタブロックが位置決めされる。よって、治具と端壁とによってクラスタブロックを挟持する際に、治具に対してクラスタブロックがステータコアの軸方向と直交する方向に移動することを規制できる。
【0011】
また、上記電動圧縮機について、前記クラスタブロックは、2つの前記係合部を有するのが好ましい。
これによれば、クラスタブロックが1つの係合部を有する場合に起こり得る、係合部を軸とした治具に対するクラスタブロックの回動が回避される。よって、治具と端壁とによってクラスタブロックを挟持する際に、治具に対してクラスタブロックがステータコアの軸方向と直交する方向に移動することをより規制できる。
【0012】
また、上記電動圧縮機について、前記クラスタブロックは、前記ハウジング側端面と前記モータ側端面とを接続する側面のうち、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に位置する部位から突出するとともに、前記ステータコアの軸方向に貫通する孔が形成された突出部を有するのが好ましい。
【0013】
これによれば、突出部に形成された孔に治具の一部を挿入することによって、治具に対してクラスタブロックが位置決めされる。よって、治具と端壁とによってクラスタブロックを挟持する際に、治具に対してクラスタブロックがステータコアの軸方向と直交する方向に移動することを規制できる。
【0014】
また、上記電動圧縮機について、前記端壁における前記電動モータ側に位置するモータ側壁面には、前記クラスタブロックの一部が収容される凹部が形成されており、前記当接面は、前記凹部の底面と当接可能であるのが好ましい。
【0015】
これによれば、凹部が形成されていない端壁とコイルエンドとの間にクラスタブロックが配置される場合と比較して、ステータコアの軸方向において電動圧縮機を小型化できる。
【0016】
上記問題点を解決するための電動圧縮機の組立方法は、流体を圧縮する圧縮部と、筒状のステータコア、及び前記ステータコアの軸方向の端面から突出するコイルエンドを有するステータを備えるとともに、前記圧縮部を駆動させる電動モータと、内周面に前記ステータコアが固定された筒状の周壁、及び前記周壁の軸方向の一端に連なるとともに前記ステータコアの軸方向において前記電動モータと並ぶ端壁を有するハウジングと、前記電動モータを駆動するモータ駆動回路と、前記ハウジングに形成された貫通孔を介して前記モータ駆動回路と電気的に接続される導電部材と、前記コイルエンドから引き出されたモータ配線と、前記導電部材と前記モータ配線とを接続する接続端子と、前記接続端子を内部に収容するとともに前記導電部材が挿通される導電部材挿通孔が形成され、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に配置された絶縁性のクラスタブロックと、を備えた電動圧縮機の組立方法であって、前記ステータコアの軸方向から見たときに前記導電部材挿通孔が前記ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置するように、前記ステータコアの軸方向において前記端壁と前記コイルエンドとの間に前記クラスタブロックを配置し、前記クラスタブロックにおいて前記ステータコアの軸方向から見たときに前記ステータコアの内周面よりも径方向内側に位置する部分を、治具によって前記ステータコアの内側から前記端壁に向けて押圧することで、前記クラスタブロックにおいて前記端壁側に位置するとともに前記ステータコアの軸方向において前記治具によって押圧される部分と並ぶ部分を前記端壁と当接させた状態で前記治具と前記端壁とによって前記クラスタブロックを挟持し、前記クラスタブロックが前記治具と前記端壁とによって挟持された状態で前記貫通孔及び前記導電部材挿通孔に前記導電部材を挿通し、前記導電部材と前記接続端子とを接続することを要旨とする。
【0017】
これによれば、ステータコアの軸方向においてクラスタブロックがステータ側に移動することが治具によって規制される。また、クラスタブロックにおいて治具によって押圧される部分と端壁と当接する部分は、ステータコアの軸方向に並んでいるため、クラスタブロックが押圧治具と端壁とによって挟持された際に、ステータコアの軸方向と直交する方向に対してクラスタブロックが傾くことが抑制され、クラスタブロックがコイルエンドに接近するように傾くことが抑制される。よって、導電部材を接続端子に接続する際のクラスタブロックとコイルエンドとの接触を抑制できる。
【0018】
さらに、導電部材挿通孔は、ステータコアの内周面よりも径方向外側に位置する。言い換えると、導電部材挿通孔は、クラスタブロックにおける治具と端壁とによって挟持される部分に位置していない。このため、クラスタブロックが治具と端壁とによって挟持された際に、クラスタブロックにおける脆弱部分である導電部材挿通孔の周りに応力が集中することが回避される。よって、クラスタブロックの変形や破損を抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、導電部材を接続端子に接続する際のクラスタブロックとコイルエンドとの接触及びクラスタブロックの変形や破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電動圧縮機の側断面図。
図2図1における2-2線断面図。
図3】コネクタの分解斜視図。
図4】コネクタの断面図。
図5】(a)はクラスタブロックの側面図、(b)はクラスタブロックの底面図。
図6図1における6-6線断面図。
図7】(a)は図6における7a-7a線断面図、(b)は図6における7b-7b線断面図。
図8】押圧治具の斜視図。
図9】電動圧縮機の組立方法を示す断面図。
図10】電動圧縮機の組立方法を示す断面図。
図11】電動圧縮機の組立方法を示す背面図。
図12図11におけるX-X線断面図。
図13図11におけるY-Y線断面図。
図14】電動圧縮機の組立方法を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、電動圧縮機及び電動圧縮機の組立方法を具体化した一実施形態を図1図14にしたがって説明する。
図1に示すように、電動圧縮機10のハウジング11は、有底筒状のモータハウジング12を有している。モータハウジング12は、底壁12aと、底壁12aの外周縁から筒状に延設された周壁12bとを有している。底壁12aは、周壁12bの軸方向の一端に連なる端壁である。ハウジング11は、モータハウジング12の開口部側に連結された有底筒状の吐出ハウジング13と、モータハウジング12の底壁12aに連結された有底筒状のカバー14とを有している。モータハウジング12の底壁12aとカバー14とによって収容空間S1が区画されている。
【0022】
吐出ハウジング13の底壁には吐出ポート13hが形成されており、吐出ポート13hには図示しない外部冷媒回路の一端が接続されている。モータハウジング12の周壁12bには吸入ポート12hが形成されており、吸入ポート12hには外部冷媒回路の他端が接続されている。
【0023】
モータハウジング12内には回転軸16が収容されている。さらに、モータハウジング12内には、回転軸16が回転することにより流体としての冷媒を圧縮する圧縮部17と、回転軸16を回転させることで圧縮部17を駆動する電動モータ18とが収容されている。電動モータ18は、圧縮部17よりもモータハウジング12の底壁12a寄りに配置されている。収容空間S1内には、電動モータ18を駆動するモータ駆動回路19が配置されている。本実施形態では、圧縮部17、電動モータ18、及びモータ駆動回路19は、この順序で回転軸16の軸線が延びる方向である回転軸16の軸線方向に沿って並んで配置されている。
【0024】
圧縮部17は、モータハウジング12内に固定された固定スクロール17aと、固定スクロール17aに対向配置された可動スクロール17bとを備える。固定スクロール17aと可動スクロール17bとの間には容積変更可能な圧縮室S2が区画されている。固定スクロール17aと吐出ハウジング13とによって吐出室S3が区画されている。圧縮室S2の容積変更により圧縮された冷媒は、吐出室S3に吐出される。
【0025】
電動モータ18は、回転軸16と一体的に回転するロータ21(回転子)と、ロータ21を取り囲むステータ22(固定子)とから構成されている。ロータ21は、円筒形状をなすロータコア23を有するとともに、ロータコア23は回転軸16に止着されている。ロータコア23には複数の永久磁石24が埋設されているとともに、各永久磁石24は、ロータコア23の周方向に等ピッチに設けられている。
【0026】
ステータ22は、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定された円筒状のステータコア25と、ステータコア25に設けられるU相、V相、W相のコイル26とを有している。ステータコア25の軸方向は、回転軸16の軸線方向と一致している。ステータコア25の一端面251からは各相の第1コイルエンド261が突出している。ステータコア25の他端面252からは各相のコイルエンドとしての第2コイルエンド262が突出している。第1コイルエンド261は、回転軸16の軸線方向の圧縮部17側に位置するとともに、第2コイルエンド262は、回転軸16の軸線方向のモータ駆動回路19側に位置している。第2コイルエンド262において、ステータコア25の軸方向で他端面252とは反対側に位置する端面をコイル端面262aとする。
【0027】
各相の第2コイルエンド262からは、モータ配線27が2本ずつ引き出されている。U相、V相、W相のコイル26は、低電圧化を図るために、2本の導線が巻回されて形成された二重線構造になっている。なお、図1では、1本のモータ配線27のみを図示している。各モータ配線27は、コイル26の導線が絶縁被膜によって被覆された状態で第2コイルエンド262から引き出されている。
【0028】
回転軸16の軸線方向におけるモータハウジング12の底壁12aの両端面のうち、電動モータ18と対向する端面をモータ側壁面としての内面121とし、内面121とは反対側の端面を外面122とする。底壁12aの内面121には、収容凹部123が形成されている。また、底壁12aの内面121には、電動モータ18に向けて突出するボス部124が形成されている。ボス部124の先端面には、ベアリング収容部124aが凹設されている。一方、底壁12aの外面122は平面状である。
【0029】
図2に示すように、収容凹部123は、回転軸16の軸方向から見たときに、二点鎖線で示すステータコア25の内周面25aよりも外側に位置する部分と、ステータコア25の内周面25aよりも内側に位置する部分とを有している。
【0030】
図1に示すように、モータハウジング12内において、電動モータ18と圧縮部17との間には軸支部材15が設けられている。軸支部材15の中央部には、回転軸16の一端部が挿通される挿通孔15aが形成されている。挿通孔15aと回転軸16の一端部との間にはラジアルベアリング20aが設けられている。回転軸16の一端部は、ラジアルベアリング20aを介して軸支部材15に回転可能に支持されている。ベアリング収容部124aの内側には回転軸16の他端部が挿入されている。ベアリング収容部124aと回転軸16の他端部との間にはラジアルベアリング20bが設けられている。回転軸16の他端部は、ラジアルベアリング20bを介してベアリング収容部124aに回転可能に支持されている。
【0031】
電動圧縮機10は、ハウジング11内に収容された気密端子31を備えている。気密端子31は、U相、V相、W相のコイル26に対応する3つの導電部材32と、3つの導電部材32を互いに絶縁した状態で支持する支持プレート33とを有している。なお、図1では、1つの導電部材32のみを図示している。各導電部材32は、直線状に延びる円柱状の金属端子である。各導電部材32の一端は、収容空間S1内においてモータ駆動回路19に電気的に接続されている。各導電部材32の他端は、収容凹部123の底面123aに形成された貫通孔125を介して収容空間S1からモータハウジング12内に突出している。
【0032】
モータハウジング12内には、モータ配線27と導電部材32とを接続するコネクタ34が収容されている。コネクタ34は、回転軸16の軸線方向において電動モータ18と底壁12aとの間に配置されている。
【0033】
図3に示すように、コネクタ34は、U相、V相、W相のコイル26に対応する3つの接続端子40と、3つの接続端子40を収容する絶縁性のクラスタブロック50とを備えている。
【0034】
図3及び図4に示すように、各接続端子40は、各相の2本のモータ配線27と電気的に接続される第1接続部41と、各導電部材32と電気的に接続される第2接続部42とを有している。第1接続部41は、直線状に延びている。第1接続部41には、2本のモータ配線27の先端部が接続されている。各相の2本のモータ配線27は、円筒状の絶縁性のチューブ部材28に挿通され、チューブ部材28によって覆われている。各モータ配線27の先端部では、チューブ部材28によって覆われず、かつ絶縁被膜が除去された導線が露出している。
【0035】
図3に示すように、各接続端子40は、チューブ部材28における第1接続部41側の端部、及び2本のモータ配線27の第1接続部41側の一部をかしめるかしめ部43を有している。かしめ部43は、第1接続部41におけるチューブ部材28側の一端部からチューブ部材28を取り囲むように延設されている。各モータ配線27は、チューブ部材28に挿通された状態でかしめ部43によってかしめられることにより、各接続端子40に機械的に接続されている。
【0036】
第2接続部42は、第1接続部41の他端部に連続している。第2接続部42は、第1接続部41の他端部から延設された一対の長側壁421と、一対の長側壁421の長手方向の一端に架設された第1短側壁422と、一対の長側壁421の長手方向の他端に架設された第2短側壁423とを有する略四角筒状である。第2接続部42の四角筒の軸心は、第1接続部41の長手方向と直交し、長側壁421の短手方向に延びている。第2接続部42において一対の長側壁421と、第1短側壁422と、第2短側壁423とで形成される四角筒の内側には、導電部材32の他端が挿入される。
【0037】
クラスタブロック50は、第1~第5壁部51~55を有する。第1壁部51及び第2壁部52はそれぞれ、段形状をなす一対の縁部と、直線状に延びる一対の縁部とを有している。第3壁部53は、第1壁部51の段形状をなす一対の縁部のうちの一方と、第2壁部52の段形状をなす一対の縁部のうちの一方とを接続する。第4壁部54は、第1壁部51の直線状に延びる一対の縁部のうちの一方と、第2壁部52の直線状に延びる一対の縁部のうちの一方とを接続する。第5壁部55は、第1壁部51の直線状に延びる一対の縁部のうちの他方と、第2壁部52の直線状に延びる一対の縁部のうちの他方とを接続する。第1壁部51及び第2壁部52が対向する方向をクラスタブロック50の厚さ方向とし、第4壁部54及び第5壁部55が対向する方向をクラスタブロック50の短手方向とする。また、クラスタブロック50の厚さ方向及び短手方向の両方と直交する方向をクラスタブロック50の長手方向とする。
【0038】
クラスタブロック50は、内部に3つの収容穴50hを有している。3つの収容穴50hは、クラスタブロック50の短手方向に並んで配置されている。各収容穴50hは、区画壁56によって他の収容穴50hと区画されている。各収容穴50hは、クラスタブロック50の長手方向に沿って軸心が延びる細長孔状である。各収容穴50hは、第3壁部53とは反対側に開口している。各収容穴50hは、開口側から見たとき長方形状である。
【0039】
クラスタブロック50は、第1壁部51を貫通する3つの貫通部51hと、第1壁部51の外面51aから突出する円筒状の3つのガイド部57とを備えている。各貫通部51h及び各ガイド部57は、クラスタブロック50の長手方向において第3壁部53寄りに位置している。各ガイド部57の内側は各貫通部51hに連通し、各貫通部51hは各収容穴50hに連通している。
【0040】
図4に示すように、接続端子40は、収容穴50hの内部に収容されている。第1接続部41が延びる方向は、クラスタブロック50の長手方向と一致している。クラスタブロック50の長手方向において、接続端子40の第1接続部41は収容穴50hの開口側に位置し、接続端子40の第2接続部42は第3壁部53側に位置している。また、第2接続部42の四角筒の軸心は、クラスタブロック50の厚さ方向に延びている。接続端子40の第2接続部42の四角筒の内側は、クラスタブロック50の第1壁部51の貫通部51h及びガイド部57の内側と連通している。導電部材32の他端は、ガイド部57の内側、及び貫通部51hを介して接続端子40の第2接続部42の四角筒の内側に挿嵌される。ガイド部57の内周面及び貫通部51hは、導電部材32が挿通される導電部材挿通孔58を構成している。よって、クラスタブロック50は、3つの導電部材挿通孔58を有している。クラスタブロック50において、導電部材挿通孔58の周りは、導電部材挿通孔58が形成されていない部分と比較して脆弱であり、剛性や強度が劣る。各収容穴50hの開口側において、チューブ部材28の外周面と収容穴50hを形成する内周面との間には、樹脂59が充填されている。
【0041】
図5(a)及び図5(b)に示すように、クラスタブロック50は、第2壁部52の外面52aから突出する係合部としてのブロック側ピン61を有している。ブロック側ピン61は、円柱状であり、ブロック側ピン61の先端部は、第2壁部52から離れるにつれて外径が縮径する先細り形状になっている。ブロック側ピン61は、クラスタブロック50の長手方向において第3壁部53とは反対側に位置している。また、ブロック側ピン61は、クラスタブロック50の長手方向において、3つのガイド部57のうちの中央に位置するガイド部57と並んでいる。
【0042】
クラスタブロック50は、第4壁部54の外面54aから突出する突出部62を有している。突出部62の第1壁部51側の第1端面62aは、第1壁部51の外面51aよりも凹んでいる。突出部62の第2壁部52側の第2端面62bは、第2壁部52の外面52aよりも突出している。突出部62には、円孔状のブロック側挿入孔63が形成されている。ブロック側挿入孔63は、突出部62をクラスタブロック50の厚さ方向に貫通する孔である。ブロック側挿入孔63の内周面における第2端面62b寄りの部分は、第2端面62bから第1端面62aに向かうにつれて内径が縮径するテーパ面63aになっている。
【0043】
図1に示すように、クラスタブロック50は、回転軸16の軸線方向においてモータハウジング12の底壁12aと電動モータ18との間に配置されている。クラスタブロック50の厚さ方向は、回転軸16の軸線方向と一致している。回転軸16の軸線方向において、クラスタブロック50の第1壁部51の外面51aは、モータハウジング12の底壁12a側に位置し、第2壁部52の外面52aは、電動モータ18側に位置している。よって、クラスタブロック50において、第1壁部51の外面51aを、モータハウジング12の底壁12a側に位置するハウジング側端面とし、第2壁部52の外面52aを電動モータ18側に位置するモータ側端面とする。そして、第3~第5壁部53~55の外面53a~55aは、第1壁部51の外面51aと第2壁部52の外面52aとを接続する側面とする。
【0044】
図6に示すように、クラスタブロック50は、ステータコア25の軸方向から見たときにステータコア25の内周面25aよりも外側に位置する外周側部位50aと、ステータコア25の内周面25aよりも内側に位置する内周側部位50bとを有している。なお、図6では、モータハウジング12の図示を省略している。外周側部位50aは、クラスタブロック50の第1壁部51の一部、第2壁部52の一部、第3壁部53、第4壁部54の一部、及び第5壁部55を含む。また、外周側部位50aは、導電部材挿通孔58を含む。内周側部位50bは、クラスタブロック50の第1壁部51の一部、第2壁部52の一部、及び第4壁部54の一部を含む。また、内周側部位50bは、ブロック側ピン61及び突出部62を含む。クラスタブロック50の外周側部位50aは、回転軸16の軸方向において第2コイルエンド262と並び、内周側部位50bは、回転軸16の軸方向においてロータ21と並んでいる。
【0045】
図7(a)に示すように、第1壁部51の外面51aは、収容凹部123の底面123aと当接可能である。図7(b)に示すように、突出部62の第1端面62aは、底壁12aの内面121と当接可能である。よって、底壁12aの内面121のうち、突出部62の第1端面62aと対向する部分は、収容凹部123の底面123aよりも突出している。クラスタブロック50の各ガイド部57は、モータハウジング12の底壁12aの貫通孔125の内側に挿入されている。これにより、底壁12aの貫通孔125に対して、クラスタブロック50の導電部材挿通孔58が位置決めされる。
【0046】
第1壁部51の外面51aと第2壁部52の外面52aとの距離をクラスタブロック50の厚さ方向の寸法Aとする。クラスタブロック50の厚さ方向の寸法Aは、回転軸16の軸線方向における底壁12aと第2コイルエンド262との距離Bよりも短い。なお、本実施形態では、底壁12aと第2コイルエンド262との距離Bとは、底壁12aの収容凹部123の底面123aと第2コイルエンド262のコイル端面262aとの距離を指す。
【0047】
次に、電動圧縮機10の組み立てに用いられる押圧治具70について説明する。
図8に示すように、押圧治具70は、本体部71を有している。本体部71は、ステータコア25の内周面25aに沿う形状の外周側湾曲面71aと、外周側湾曲面71aと対をなす面であり、外周側湾曲面71aに向けて凹となる内周側湾曲面71bと、外周側湾曲面71aと内周側湾曲面71bとを径方向に繋ぐ接続面71cとを有している。接続面71cは、内周側湾曲面71b寄りの部分が外周側湾曲面71a寄りの部分よりも凹む段形状になっている。接続面71cにおける外周側湾曲面71a側の高段部分には、逃し部71dが凹設されている。逃し部71dは、突出部62におけるクラスタブロック50の第2壁部52の外面52aよりも突出した部分を挿入可能な形状に形成されている。
【0048】
押圧治具70は、逃し部71dの底面から突出する治具側ピン72を有している。治具側ピン72は、接続面71cから離れるにつれて外径が縮径するように先細りする円錐形状になっている。治具側ピン72の外径は、治具側ピン72をブロック側挿入孔63に挿入可能な径に設定されている。本体部71の接続面71cには、円孔状の治具側挿入穴73が形成されている。治具側挿入穴73の内周面における開口寄りの部分は、開口側から底側に向かうにつれて内径が縮径するテーパ面73aになっている。治具側挿入穴73の内径は、治具側挿入穴73にブロック側ピン61を挿入可能な径に設定されている。接続面71cに沿う方向における治具側ピン72と治具側挿入穴73との最短距離は、クラスタブロック50の第2壁部52の外面52aに沿う方向におけるブロック側ピン61とブロック側挿入孔63との最短距離とほぼ同じである。
【0049】
次に、電動圧縮機10の組立方法について、本実施形態の作用とともに説明する。
図9及び図10に示すように、クラスタブロック50を底壁12aと第2コイルエンド262との間に配置する。このとき、ステータコア25の軸方向から見たときに、導電部材挿通孔58がステータコア25の内周面25aよりも径方向内側に位置するように、クラスタブロック50は配置される。クラスタブロック50は、ステータコア25の軸方向から見たときにステータコア25の内周面25aよりも外側に位置する外周側部位50aと、ステータコア25の内周面25aよりも内側に位置する内周側部位50bとを有する。
【0050】
図9図11に示すように、クラスタブロック50が底壁12aと第2コイルエンド262との間に配置された状態において、押圧治具70の本体部71を接続面71c側からステータコア25の内側に挿入し、押圧治具70によってクラスタブロック50をモータハウジング12の底壁12aに向けて押圧する。このとき、本体部71の外周側湾曲面71aは、ステータコア25の内周面25aと対向する。なお、図11では、説明の便宜上、モータハウジング12の図示を省略している。
【0051】
図12に示すように、押圧治具70を挿入するにあたって、まず、クラスタブロック50のブロック側ピン61を押圧治具70の治具側挿入穴73に挿入する。つまり、クラスタブロック50のブロック側ピン61と押圧治具70の治具側挿入穴73とを凹凸係合させる。よって、ブロック側ピン61は、押圧治具70と凹凸係合される係合部である。
【0052】
また、図13に示すように、ブロック側ピン61を治具側挿入穴73に挿入するのと同時に、突出部62における第2壁部52の外面52aよりも突出した部分を押圧治具70の逃し部71dに挿入するとともに、治具側ピン72をクラスタブロック50の突出部62のブロック側挿入孔63に挿入する。つまり、クラスタブロック50のブロック側挿入孔63と押圧治具70の治具側ピン72とを凹凸係合させる。よって、ブロック側挿入孔63は、押圧治具70と凹凸係合される係合部である。したがって、クラスタブロック50は、2つの係合部を有している。
【0053】
図9に示すように、押圧治具70の挿入を進めると、本体部71の接続面71cのうち外周側湾曲面71a寄りの部分により、クラスタブロック50の第2壁部52の外面52aにおける内周側部位50bを構成する部分は押圧される。よって、第2壁部52の外面52aは、内周側部位50bを構成する部分に押圧治具70により押圧される押圧面50cを有している。図10に示すように、本体部71の逃し部71dの底面により、突出部62の第2端面62bは押圧される。なお、本体部71の接続面71cのうち内周側湾曲面71b寄りの部分は、外周側湾曲面71a寄りの部分よりも凹んでいることで、本体部71とボス部124とが干渉しないようになっている。
【0054】
更に、押圧治具70の挿入を進めると、図9に示すように、クラスタブロック50の第1壁部51の外面51a全体は、収容凹部123の底面123aに当接する。第1壁部51の外面51aは、内周側部位50bを構成する部分に、クラスタブロック50の厚さ方向において押圧面50cと並ぶように位置するとともに収容凹部123の底面123aと当接可能な当接面50dを有している。また、図10に示すように、突出部62の第1端面62aは、底壁12aの内面121に当接する。これにより、クラスタブロック50は、押圧治具70の本体部71と底壁12aとによってステータコア25の軸方向に挟持される。クラスタブロック50の第2壁部52の外面52aにおける外周側部位50aを構成する部分は、第2コイルエンド262のコイル端面262aと離間している。よって、クラスタブロック50の第2壁部52の外面52aのうち外周側部位50aを構成する部分と、第2コイルエンド262のコイル端面262aとの間には、隙間Pが生じた状態となる。
【0055】
次に、図14に示すように、クラスタブロック50が押圧治具70と底壁12aとによって挟持された状態で接続端子40に導電部材32を接続する。詳しくは、底壁12aの外面122側から導電部材挿通孔58に挿通された導電部材32を、接続端子40の第2接続部42の四角筒の内側に挿入する。このとき、クラスタブロック50は押圧治具70と底壁12aとによって挟持されているため、導電部材32を接続端子40に接続する際にステータコア25の軸方向においてクラスタブロック50がステータ22側に移動することが押圧治具70によって規制される。また、押圧面50cと当接面50dは、ステータコア25の軸方向において並んでいるため、クラスタブロック50が押圧治具70と底壁12aとによって挟持された際に、ステータコア25の軸方向と直交する方向に対してクラスタブロック50の第1壁部51及び第2壁部52の外面51a,52aが傾くことが抑制され、クラスタブロック50が第2コイルエンド262に接近することが抑制される。よって、クラスタブロック50を第2コイルエンド262に接触させることなく、導電部材32を接続端子40に接続できる。
【0056】
さらに、導電部材挿通孔58がステータコア25の内周面25aよりも径方向外側に位置する。言い換えると、導電部材挿通孔58は、クラスタブロック50における押圧治具70と底壁12aとによって挟持される部分に位置していない。このため、クラスタブロック50が押圧治具70と底壁12aとによって挟持された際に、クラスタブロック50における脆弱部分である導電部材挿通孔58の周りに応力が集中することが回避される。よって、クラスタブロック50の変形や破損を抑制できる。
【0057】
本実施形態の効果について説明する。
(1)クラスタブロック50が底壁12aとステータ22の第2コイルエンド262との間に配置された状態において、押圧治具70によってステータコア25の内側からクラスタブロック50の押圧面50cを底壁12aに向けて押圧する。これにより、クラスタブロック50の第1壁部51の外面51aが底壁12aの収容凹部123の底面123aと当接した状態で、クラスタブロック50は押圧治具70と底壁12aとによって挟持される。この状態で導電部材32を接続端子40に接続することで、ステータコア25の軸方向においてクラスタブロック50がステータ22側に移動することが押圧治具70によって規制される。
【0058】
また、押圧面50cと当接面50dはステータコア25の軸方向に並んでいるため、クラスタブロック50が押圧治具70と底壁12aとによって挟持された際に、ステータコア25の軸方向と直交する方向に対してクラスタブロック50の第1壁部51及び第2壁部52の外面51a,52aが傾くことが抑制され、クラスタブロック50が第2コイルエンド262に接近するように傾くことが抑制される。よって、クラスタブロック50を第2コイルエンド262に接触させることなく導電部材32を接続端子40に接続できる。
【0059】
さらに、導電部材挿通孔58は、ステータコア25の内周面25aよりも径方向外側に位置する。言い換えると、導電部材挿通孔58は、クラスタブロック50における押圧治具70と底壁12aとによって挟持される部分に位置していない。このため、クラスタブロック50が押圧治具70と底壁12aとによって挟持された際に、クラスタブロック50における脆弱部分である導電部材挿通孔58の周りに応力が集中することが回避される。よって、押圧治具70と底壁12aとによりクラスタブロック50を挟持した際のクラスタブロック50の変形や破損を抑制できる。
【0060】
(2)クラスタブロック50は、第2壁部52の外面52aにおける内周側部位50bを構成する部分から突出するブロック側ピン61を有している。このため、押圧治具70の本体部71の接続面71cに形成された治具側挿入穴73にブロック側ピン61を挿入することによって、押圧治具70に対してクラスタブロック50が位置決めされる。よって、押圧治具70と底壁12aとによってクラスタブロック50を挟持する際に、押圧治具70に対してクラスタブロック50がステータコア25の軸方向と直交する方向に移動することを抑制できる。
【0061】
(3)クラスタブロック50は、第4壁部54の外面54aにおける内周側部位50bを構成する部分から突出するとともに、ステータコア25の軸方向に貫通するブロック側挿入孔63が形成された突出部62を有している。このため、押圧治具70の治具側ピン72をブロック側挿入孔63に挿入することで、押圧治具70に対してクラスタブロック50が位置決めされる。よって、押圧治具70と底壁12aとによってクラスタブロック50を挟持する際に、押圧治具70に対してクラスタブロック50がステータコア25の軸方向と直交する方向に移動することを抑制できる。
【0062】
(4)例えば、クラスタブロック50がブロック側ピン61のみを有する場合、ブロック側ピン61を軸として押圧治具70に対してクラスタブロック50が回動することがある。同様に、クラスタブロック50が突出部62のみを有する場合、治具側ピン72を軸として押圧治具70に対してクラスタブロック50が回動することがある。これに対し、本実施形態のクラスタブロック50は、ブロック側ピン61及びブロック側挿入孔63の2つの係合部を有する。このため、押圧治具70に対するクラスタブロック50の回動が回避される。よって、押圧治具70と底壁12aとによってクラスタブロック50を挟持する際に、クラスタブロック50がステータコア25の軸方向と直交する方向に移動することをより抑制できる。
【0063】
(5)底壁12aの内面121には、クラスタブロック50の一部が収容される収容凹部123が形成されている。このため、収容凹部123が形成されていない底壁12aの内面121と、第2コイルエンド262のコイル端面262aとの間にクラスタブロック50が配置される場合と比較して、ステータコア25の軸方向において電動圧縮機10を小型化できる。
【0064】
(6)電動圧縮機10のハウジング11内には高圧の冷媒が流れるため、ハウジング11には高圧に耐えられるだけの強度が求められる。したがって、ハウジング11の厚みはできるだけ厚くする方が好ましい。
【0065】
例えば、突出部62の第1端面62aがクラスタブロック50の第1壁部51の外面51aと面一の場合、収容凹部123にクラスタブロック50の厚さ方向の一部を収容するためには、底壁12aの内面121における突出部62の第1端面62aと対向する部分にも収容凹部123を形成する必要がある。このとき、ステータコア25の軸方向における底壁12aの厚みは、突出部62と対向する部分と収容凹部123が形成される部分とで同じになる。
【0066】
これに対し、本実施形態の突出部62の第1端面62aは、クラスタブロック50の第1壁部51の外面51aよりも凹んでいる。このため、底壁12aの内面121における突出部62の第1端面62aと対向する部分には収容凹部123を形成しなくても、収容凹部123にクラスタブロック50の一部を収容することができる。つまり、底壁12aの内面121における突出部62の第1端面62aと対向する部分を、収容凹部123の底面123aよりも突出させることができる。よって、ステータコア25の軸方向における底壁12aの厚みは、収容凹部123が形成された部分よりも、突出部62の第1端面62aと対向する部分で厚くなる。その結果、ステータコア25の軸方向において電動圧縮機10を小型化しつつも、ハウジング11の強度の低下を抑制できる。
【0067】
(7)クラスタブロック50のブロック側ピン61は、先端部に向かうにつれて先細りする形状である。このため、押圧治具70の治具側挿入穴73に対してブロック側ピン61を挿入し易い。
【0068】
(8)押圧治具70の治具側挿入穴73は、開口側から底側に向かうにつれて内径が縮径するテーパ面73aになっている。このため、押圧治具70の治具側挿入穴73に対してブロック側ピン61を挿入し易い。
【0069】
(9)押圧治具70の治具側ピン72は、先端部に向かうにつれて先細りする形状である。このため、クラスタブロック50の突出部62のブロック側挿入孔63に対して治具側ピン72を挿入し易い。
【0070】
(10)クラスタブロック50の突出部62のブロック側挿入孔63の内周面は、突出部62の第2端面62bから第1端面62aに向かうにつれて内径が縮径するテーパ面63aになっている。このため、クラスタブロック50の突出部62のブロック側挿入孔63に対して治具側ピン72を挿入し易い。
【0071】
(11)クラスタブロック50の変形や破損が抑制されることで、クラスタブロック50内への冷媒の侵入が抑制される。よって、接続端子40とハウジング11との絶縁を確保できる。
【0072】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○ クラスタブロック50の形状を適宜変更してもよい。ただし、クラスタブロック50は、内周側部位50bを構成する部分に押圧治具70によって押圧される押圧面50cを有するとともに、ステータコア25の軸方向において押圧面50cと並ぶ面に底壁12aと当接可能な当接面50dを有するものとする。
【0073】
○ クラスタブロック50の当接面50dが底壁12aに当接可能であれば、第1壁部51の外面51a全体が底壁12aに当接可能でなくてもよい。
○ 第2壁部52の外面52aのうち内周側部位50bを構成する部分の一部によって、押圧面50cが形成されていてもよい。
【0074】
○ クラスタブロック50のブロック側ピン61を凸部に代えるとともに、押圧治具70の治具側挿入穴73を凹部に代えてもよい。要は、クラスタブロック50と押圧治具70とが凹凸係合されるのであれば、押圧治具70及びクラスタブロック50の係合部の形状を適宜変更してもよい。
【0075】
○ クラスタブロック50のブロック側挿入孔63を凹部に代えるとともに、押圧治具70の治具側ピン72を凸部に代えてもよい。要は、クラスタブロック50と押圧治具70とが凹凸係合されるのであれば、押圧治具70及びクラスタブロック50の係合部の形状を適宜変更してもよい。
【0076】
○ クラスタブロック50のブロック側ピン61を省略するとともに、押圧治具70の治具側挿入穴73を省略してもよい。
○ クラスタブロック50のブロック側挿入孔63を省略するとともに、押圧治具70の治具側ピン72を省略してもよい。
【0077】
○ クラスタブロック50のブロック側ピン61の外径は一定でもよい。
○ クラスタブロック50のブロック側挿入孔63の内径は一定でもよい。また、ブロック側挿入孔63は、突出部62を貫通する貫通孔に限定されず、突出部62の第2端面62b側に開口し、かつ第1端面62a側に閉塞する穴でもよい。
【0078】
○ 押圧治具70の治具側ピン72の外径は一定でもよい。
○ 押圧治具70の治具側挿入穴73の内径は一定でもよい。また、治具側挿入穴73は、本体部71を貫通する貫通孔でもよい。
【0079】
○ ブロック側ピン61は、クラスタブロック50における内周側部位50bを構成する部分に形成されるとともに押圧治具70の治具側挿入穴73に挿入可能であれば、クラスタブロック50の側面に形成されていてもよいし、突出部62の第2端面62bに形成されていてもよい。
【0080】
○ ブロック側挿入孔63は、クラスタブロック50における内周側部位50bを構成する部分に形成されるとともに押圧治具70の治具側ピン72が挿入可能であれば、第2壁部52の外面52aに形成されていてもよい。ただし、ブロック側挿入孔63は、各収容穴50hとは連通しないものとする。
【0081】
○ 突出部62の第1端面62aは、クラスタブロック50の第1壁部51の外面51aと面一でもよい。この場合、底壁12aの内面121における突出部62の第1端面62aと対向する部分まで収容凹部123の形成範囲を広げる。
【0082】
○ 突出部62の第2端面62bは、クラスタブロック50の第2壁部52の外面52aと面一でもよい。この場合、押圧治具70の逃し部71dは不要になる。
○ 突出部62の第1端面62aは、底壁12aの内面121に当接しなくてもよい。
【0083】
○ 突出部62の第2端面62bは、押圧治具70の逃し部71dの底面によって押圧されなくてもよい。
○ モータハウジング12の底壁12aの収容凹部123を省略してもよい。この場合、回転軸16の軸線方向における底壁12aの内面121と第2コイルエンド262のコイル端面262aとの距離を、底壁12aと第2コイルエンド262との距離Bとする。
【0084】
○ 圧縮部17は、スクロール式に限らず、例えば、ピストン式やベーン式等であってもよい。
○ モータ駆動回路19は、圧縮部17及び電動モータ18と回転軸16の軸線方向に並んでいなくてもよい。例えば、モータ駆動回路19は、回転軸16の径方向においてモータハウジング12の外側に配置されていてもよい。この場合、貫通孔125は、モータハウジング12の周壁12bに形成される。
【符号の説明】
【0085】
10…電動圧縮機、11…ハウジング、12a…端壁としての底壁、12b…周壁、17…圧縮部、18…電動モータ、19…モータ駆動回路、22…ステータ、25…ステータコア、25a…内周面、27…モータ配線、32…導電部材、40…接続端子、50…クラスタブロック、50c…押圧面、50d…当接面、51a…ハウジング側端面としての第1壁部の外面、52a…モータ側端面としての第2壁部の外面、58…導電部材挿通孔、61…係合部としてのブロック側ピン、62…突出部、63…係合部及び孔としてのブロック側挿入孔、70…治具としての押圧治具、121…モータ側壁面としての内面、123…凹部としての収容凹部、123a…底面、125…貫通孔、262…コイルエンドとしての第2コイルエンド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14