(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20230418BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230418BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20230418BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230418BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C1/00 Z
B60C11/00 B
B60C11/00 D
C08L9/00
C08K3/04
(21)【出願番号】P 2019116956
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕記
(72)【発明者】
【氏名】柴田 寛和
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-028887(JP,A)
【文献】特開2010-089680(JP,A)
【文献】特開2006-168595(JP,A)
【文献】特開2011-093386(JP,A)
【文献】特開2002-105249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向内側のビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーは、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N
2SA)が30~90m
2/gのカーボンブラックを40~70質量部含み、かつ前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムの配合割合が40質量部以下であり、
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)と、前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)とが、(M100 cap)×(M100 BF)≦22(MPa) を満たし、かつ
ビードフィラー高さとタイヤ断面高さの比である(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が、0.2~0.7である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビードフィラーの60℃におけるtanδ(60℃)が、0.1未満であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)が、5.0(MPa)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)が、1.0~4.0(MPa)であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ロードノイズの低減および乗り心地の向上を両立し得る空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはカーカスが設けられ、カーカスの両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
ビード部はビードコアとその外周上の断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラーとを備えてなる。
【0003】
ところで、モータを動力源として走行する電気自動車は、内燃機関を動力源として走行する自動車と比較して、車両由来の騒音が大きく低減されている。そのため車両走行におけるノイズ源としてタイヤ由来の騒音(ロードノイズ)がクローズアップされており、さらなるロードノイズの低減が求められている。
【0004】
ロードノイズを低減するには、例えばキャップトレッドゴム等のタイヤを構成する部材を柔らかくすることによって、タイヤのバネ特性を低下させる手法が知られている。しかし、例えばキャップトレッドゴムのモジュラスが下がると乗り心地が悪化する問題点があり、ロードノイズの低減と乗り心地の向上は、二律背反の関係にある。
【0005】
なお、ロードノイズの低減を図る技術としては、例えば特許文献1~3に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-253708号公報
【文献】特開2014-80074号公報
【文献】国際公開WO2014/002631号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、ロードノイズの低減および乗り心地の向上を両立し得る空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、ビードフィラーの組成、キャップトレッドゴムとビードフィラーの100%モジュラスの関係、およびビードフィラー高さとタイヤ断面高さとの関係を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0009】
1.タイヤ径方向内側のビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記ビードフィラーは、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~90m2/gのカーボンブラックを40~70質量部含み、かつ前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムの配合割合が40質量部以下であり、
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)と、前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)とが、(M100 cap)×(M100 BF)≦22(MPa) を満たし、かつ
ビードフィラー高さとタイヤ断面高さの比である(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が、0.2~0.7である
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
2.前記ビードフィラーの60℃におけるtanδ(60℃)が、0.1未満であることを特徴とする前記1に記載の空気入りタイヤ。
3.前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)が、5.0(MPa)以上であることを特徴とする前記1または2に記載の空気入りタイヤ。
4.前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)が、1.0~4.0(MPa)であることを特徴とする前記1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ径方向内側のビード部に設けられたビードフィラーと、タイヤ接地面を構成するキャップトレッドゴムと、を備え、前記ビードフィラーは、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~90m2/gのカーボンブラックを40~70質量部含み、かつ前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムの配合割合が40質量部以下であり、前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)と、前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)とが、(M100 cap)×(M100 BF)≦22(MPa) を満たし、かつビードフィラー高さとタイヤ断面高さの比である(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が、0.2~0.7であることを特徴としているので、ロードノイズの低減および乗り心地の向上を両立し得る空気入りタイヤを提供することができる。
【0011】
上述のように、ロードノイズを低減するには、キャップトレッドゴムを柔らかくすることが有効であるが、その反面、キャップトレッドゴムのモジュラスが下がり乗り心地が低下してしまう。本発明では、ビードフィラーの組成、キャップトレッドゴムとビードフィラーの100%モジュラスの関係、およびビードフィラー高さとタイヤ断面高さとの関係を特定化することにより、キャップトレッドゴムがロードノイズの改善を担い乗り心地を減じた場合でも、ビードフィラーが乗り心地を補完する役割を果たし、結果として二律背反の関係にあるロードノイズの低減と乗り心地の向上を同時に達成することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
(ビードフィラー)
本発明の空気入りタイヤに用いられるビードフィラーは、タイヤ径方向内側のビード部に設けられ、ビードコアの外周上の断面三角形状のゴム組成物からなることができる。タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に直交する方向であり、タイヤ径方向内側とはタイヤ回転軸に近づく方法を指す。
本発明では、ビードフィラーの組成が特定される。すなわち、前記ビードフィラーは、天然ゴムおよびブタジエンゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対し、窒素吸着比表面積(N2SA)が30~90m2/gのカーボンブラックを40~70質量部含み、かつ前記ジエン系ゴム100質量部中、前記天然ゴムの配合割合が40質量部以下である。
【0015】
前記カーボンブラックの配合量が40~70質量部の範囲外である場合、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が30~90m2/gの範囲外である場合、前記天然ゴムの割合が40質量部を超える場合、前記(M100 cap)×(M100 BF)が22(MPa)を超える場合、および/または、(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が0.2~0.7の範囲外である場合は、ロードノイズの低減と乗り心地の向上を同時に達成することができない。
【0016】
ここで、本発明の効果向上の観点から、下記の形態が好ましい。
(1)前記カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、40~60質量部が好ましい。この範囲によれば、さらなる低発熱化および高強度を両立できる。
(2)前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は30~50m2/gが好ましい。なおカーボンブラックは2種類以上をブレンドして用いてもよい。
(3)前記天然ゴムの割合は、前記ジエン系ゴム100質量部中、10~30質量部が好ましい。この範囲によれば、さらなる高荷重耐久化および高強度を両立できる。
(4)前記ブタジエンゴムの割合は、前記ジエン系ゴム100質量部中、60~90質量部が好ましい。更には65~85質量部が好ましい。
なお窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0017】
本発明で使用されるビードフィラーを構成するゴムは、天然ゴム(NR)およびブタジエンゴム(BR)以外にも、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等を併用することもできる。本発明で使用されるゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0018】
また、前記ビードフィラーには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのビードフィラーに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0019】
本発明の空気入りタイヤにおけるキャップトレッドゴムは、空気入りタイヤの接地面を構成するゴムである。
【0020】
本発明において、キャップトレッドゴムの組成は、下記で説明する(M100 cap)×(M100 BF)の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのキャップトレッドゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0021】
また、本発明の空気入りタイヤにおけるその他の部材を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えばその他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0022】
加硫後のキャップトレッドゴムの最大厚み(アンダートレッドとの接触面からタイヤ径方向におけるタイヤ表面までの最大長さ)はとくに制限されないが、例えば2mm~20mmであり、2mm~15mmが好ましい。
【0023】
本発明の空気入りタイヤは、前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)と、前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)とが、下記式を満たすことが必要である。
【0024】
(M100 cap)×(M100 BF)≦22(MPa)
【0025】
すなわち、(M100 cap)および(M100 BF)を乗じた値が22(MPa)以下であることにより、上述のように、キャップトレッドゴムがロードノイズの改善を担い乗り心地を減じた場合でも、ビードフィラーが乗り心地を補完する役割を果たし、結果として二律背反の関係にあるロードノイズの低減と乗り心地の向上を同時に達成することが可能となる。
【0026】
本発明で言う前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)および前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)は、JIS K6251に準拠し、23℃、500mm/分にて引張り試験を行い100%伸長時の応力を測定した値(MPa)とする。
【0027】
前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)および前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)の調整は、例えば可塑剤、充填剤、加硫剤または架橋剤の増減により可能である。
【0028】
なお本発明の効果が一層向上するという観点から、前記(M100 cap)×(M100 BF)は、20(MPa)以下が好ましく、17(MPa)以下がさらに好ましく、8~17(MPa)であることがとくに好ましい。
【0029】
また本発明の効果が一層向上するという観点から、前記ビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)は、5.0(MPa)以上であることが好ましく、5.5(MPa)以上であることがさらに好ましく、5.5~7.0(MPa)であることがとくに好ましい。また、前記キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)は、1.0~4.0(MPa)が好ましく、1.0~3.0(MPa)がさらに好ましい。
【0030】
図1は、空気入りタイヤの子午線断面図である。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0031】
一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含むカーカス4が装架されている。各ビード部3には、環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。そして、カーカス4はビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。
【0032】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、複数層のベルト層7がタイヤ全周にわたって埋設されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
【0033】
また、上記空気入りタイヤにおいて、
図1に示すように、ビードフィラー6の高さBHは5mm~70mmの範囲が好ましい。更には10mm~65mmの範囲が好ましい。ビードフィラー6の高さBHはタイヤ径方向に沿って測定される高さである。
【0034】
また本発明において、ビードフィラー高さとタイヤ断面高さの比である(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)は、0.2~0.7であり、好ましくは0.3~0.6であり、さらに好ましくは0.3~0.5である。
タイヤ断面高さSHは、タイヤを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した無負荷状態のタイヤの外径とリム径との差の1/2である。
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
【0035】
(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が前記範囲であることにより、キャップトレッドゴムがロードノイズの改善を担い乗り心地を減じた場合でも、ビードフィラーが乗り心地を補完する役割を果たし、結果として二律背反の関係にあるロードノイズの低減と乗り心地の向上を同時に達成することが可能となる。
【0036】
また本発明では、ビードフィラーの60℃におけるtanδ(60℃)が、0.1未満であることが好ましく、0.08以下であることがさらに好ましい。ビードフィラーがこのようなtanδ(60℃)の範囲を有することにより、さらなる低発熱性を空気入りタイヤに付与することができる。tanδ(60℃)が小さい場合、乗り心地は悪化する方向であるが、(M100 cap)×(M100 BF)や、ビードフィラー高さとタイヤ断面高さの比である(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)を最適化することにより、乗り心地を悪化せずに、転がり抵抗と両立できる。
【0037】
また本発明の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤの製造方法に従って製造が可能であり、例えば乗用車用途が好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0039】
実施例1~4および比較例1~2
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.6リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種ビードフィラー(BF)を得た。
【0040】
一方、キャップトレッドゴムを常法にしたがい調製し、可塑剤もしくは充填剤の量を増減することにより、表1に示す各種硬度を有するキャップトレッドゴム(CAP)を得た。
【0041】
キャップトレッドゴムの100%モジュラス(M100 cap)およびビードフィラーの100%モジュラス(M100 BF)は、JIS K6251に準拠し、23℃、500mm/分にて引張り試験を行い100%伸長時の応力を測定した(MPa)。
またビードフィラーの60℃におけるtanδ(60℃)は、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、伸張変形歪率10±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で測定した。
また、(ビードフィラー高さBH)/(タイヤ断面高さSH)を測定した。
結果を表1に示す。
【0042】
前記ビードフィラーと、前記キャップトレッドゴムとを組み込み、タイヤサイズ245/40R18の各種空気入りタイヤを製造した。なお、ビードフィラーおよびキャップトレッドゴム以外の各部材の条件は、各種空気入りタイヤ間で同一とした。
【0043】
得られた各種空気入りタイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
乗り心地:各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件にて、走行時の乗り心地についてテストドライバーによる官能評価を行った。乗り心地:各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件にて、走行時のロードノイズについてテストドライバーによる官能評価を行った。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、乗り心地に顕著な向上が見られる。
4:「3」点に対し、乗り心地に向上が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、乗り心地に劣っていた。
1:「3」点に対し、乗り心地に顕著に劣っていた。
【0045】
ロードノイズ:各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件にて、走行時のロードノイズについてテストドライバーによる官能評価を行った。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、ロードノイズに顕著な改善が見られる。
4:「3」点に対し、ロードノイズに改善が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、ロードノイズが感じられる。
1:「3」点に対し、ロードノイズが顕著に感じられる。
【0046】
【0047】
*1:NR(TSR20)
*2:BR1(宇部興産(株)製UBEPOL412、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン)
*3:BR2(日本ゼオン(株)製NIPOL BR 1220)
*4:カーボンブラックCB(キャボットジャパン社製ショウブラックN550、N2SA=40m2/g)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日新理化(株)製ステアリン酸50S)
*7:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*8:アロマオイル(出光興産(株)製ダイアナプロセスNH-70S)
*9:加硫促進剤(三新化学工業(株)製NS-G)
*10:硫黄(四国化成工業(株)製ミュークロンOT-20、硫黄含有量=80質量%)
【0048】
上記の表1から明らかなように、各実施例では、ビードフィラーの組成、キャップトレッドゴムとビードフィラーの100%モジュラスの関係、およびビードフィラー高さとタイヤ断面高さとの関係を特定化しているので、比較例1に比べて、ロードノイズの低減および乗り心地の向上が両立している。
比較例2では、NRの配合量および(ビードフィラー高さ)/(タイヤ断面高さ)が本発明で規定する上限を超えているので、ロードノイズおよび乗り心地に改善が見られなかった。
【0049】
比較例3および実施例5
上記実施例1~4および比較例1~2において、製造した空気入りタイヤのサイヤサイズを195/65R15、リムサイズ15x6J,空気圧230kPaとしたこと以外は、上記例を繰り返した。結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表2の結果から、実施例5では、ビードフィラーの組成、キャップトレッドゴムとビードフィラーの100%モジュラスの関係、およびビードフィラー高さとタイヤ断面高さとの関係を特定化しているので、比較例3に比べて、ロードノイズの低減および乗り心地の向上が両立している。
【符号の説明】
【0052】
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層