(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】光デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/065 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G02F1/065
(21)【出願番号】P 2019142708
(22)【出願日】2019-08-02
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】309015134
【氏名又は名称】富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌樹
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018005(JP,A)
【文献】特開2015-197448(JP,A)
【文献】特開2006-262476(JP,A)
【文献】特開2015-191137(JP,A)
【文献】特開2006-284838(JP,A)
【文献】特表2020-509427(JP,A)
【文献】特開2004-126152(JP,A)
【文献】特表2015-501945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0086523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
G02B 6/12-6/14
H04B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ICチップ上に形成される光変調器を含む光デバイスであって、
前記光変調器は、
光導波路と、
前記光導波路の一方の側に形成される第1のメタル配線と、
前記光導波路の他方の側に形成される第2のメタル配線と、
前記光ICチップの1つの辺に沿って形成される第1のポリマーパターンと、
前記第1のポリマーパターンに接続し、前記第1のメタル配線と前記第2のメタル配線との間の領域において、少なくとも一部が前記光導波路上に形成される第2のポリマーパターンと、を備え、
前記第1のメタル配線は、
前記光導波路に平行に形成される第1の変調部と、
前記第1のメタル配線の先端に形成される第1のパッド部と、
前記第1の変調部と前記第1のパッド部とを接続する第1の遷移部と、を備え、
前記第2のメタル配線は、
前記光導波路に平行に形成される第2の変調部と、
前記第2のメタル配線の先端に形成される第2のパッド部と、
前記第2の変調部と前記第2のパッド部とを接続する第2の遷移部と、を備え、
前記第1の遷移部と前記第2の遷移部との間の領域
が曲線になるように、前記第1のメタル配線および前記第2のメタル配線が形成され、
第2のポリマーパターンは、前記第1の遷移部と前記第2の遷移部との間の領域において曲線部を有する
ことを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1の変調部と前記第2の変調部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅と、前記第1の遷移部と前記第2の遷移部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅とは、互いに同じである
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1の変調部と前記第2の変調部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅と、前記第1のパッド部と前記第2のパッド部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅とは、互いに同じである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第2のポリマーパターンと前記第1の変調部との間の間隔と、前記第2のポリマーパターンと前記第1の遷移部との間の間隔とは、互いに同じである
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第2のポリマーパターンと前記第1の変調部との間の間隔と、前記第2のポリマーパターンと前記第1のパッド部との間の間隔とは、互いに同じである
ことを特徴とする請求項1または4に記載の光デバイス。
【請求項6】
前記第1のパッド部と前記第2のパッド部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅は、前記第1の変調部と前記第2の変調部との間の領域に形成される第2のポリマーパターンの幅より広い
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【請求項7】
前記光ICチップ上に光受信器がさらに形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器を含む光デバイスに係わる。
【背景技術】
【0002】
光変調器は、光通信システムを実現するためのキーデバイスの1つである。そして、光通信システムの各ノードに実装される光伝送装置の小型化を図るために、光変調器の小型化が要求されている。
【0003】
光変調器の小型化を実現する技術の1つとして、シリコン基板上に光変調器を形成する構成が実用化されている。この構成においては、シリコン基板上に光導波路が形成され、さらに、その光導波路の近傍に電極およびPN接合が設けられる。ここで、光導波路の屈折率は、PN接合に印加される電界に依存する。よって、このPN接合にデータを表す電界信号を印加すれば、光導波路を通過する光は、その電界信号に応じて変調される。すなわち、データを表す変調光信号が生成される。
【0004】
但し、PN接合に印加される電界の変化に対して、光導波路の屈折率の変化は小さい。このため、十分な変調を実現するためには、PN接合に印加すべき信号の駆動電圧を高くしなければならず、消費電力が大きくなってしまう。そこで、この問題を解決または緩和するために、PN接合の代わりにポリマー(すなわち、高分子材料)を使用する光変調器が提案されている。例えば、マッハツェンダ干渉計を構成する光導波路上にポリマーパターンが形成される。そして、このポリマーパターンに、データを表す電界信号が印加される。ここで、ポリマーパターンに印加される電界の変化に対して、光導波路の屈折率は大きく変化する。よって、この構成によれば、駆動電圧を高くすることなく十分な変調が実現される。
【0005】
なお、関連する技術として、EO(electro-optic)ポリマーを用いて光導波路を形成する技術が提案されている(例えば、特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許6355198
【文献】US2013/0121631
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光変調器の駆動信号が印加されるポリマーパターンは、例えば、光ICチップの表面上で光変調器の電極として使用されるメタル配線間に設けられる流路にポリマー材料を注入することで形成される。他方、光ICチップ上での電気信号の反射を抑制するためには、メタル配線の間隔を狭くしてインピーダンスを小さくすることが好ましい。このため、メタル配線間にポリマーパターンを形成する構成においては、ポリマー材料を流すための流路の幅が狭くなる。この結果、流路の幅が狭い領域においてポリマー材料が流れにくくなり、光デバイスの製造効率が低下するおそれがある。
【0008】
本発明の1つの側面に係わる目的は、ポリマーを利用して光導波路の屈折率を変化させる光変調器を含む光デバイスの製造効率を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様の光デバイスは、光ICチップ上に形成される光変調器を含む。光変調器は、光導波路と、前記光導波路の一方の側に形成される第1のメタル配線と、前記光導波路の他方の側に形成される第2のメタル配線と、前記光ICチップの1つの辺に沿って形成される第1のポリマーパターンと、前記第1のポリマーパターンに接続し、前記第1のメタル配線と前記第2のメタル配線との間の領域において、少なくとも一部が前記光導波路上に形成される第2のポリマーパターンと、を備える。前記第1のメタル配線は、前記光導波路に平行に形成される第1の変調部と、前記第1のメタル配線の先端に形成される第1のパッド部と、前記第1の変調部と前記第1のパッド部とを接続する第1の遷移部と、を備える。前記第2のメタル配線は、前記光導波路に平行に形成される第2の変調部と、前記第2のメタル配線の先端に形成される第2のパッド部と、前記第2の変調部と前記第2のパッド部とを接続する第2の遷移部と、を備える。前記第1の遷移部と前記第2の遷移部との間の領域は曲線であり、第2のポリマーパターンは、前記第1の遷移部と前記第2の遷移部との間の領域において曲線部を有する。
【発明の効果】
【0010】
上述の態様によれば、ポリマーを利用して光導波路の屈折率を変化させる光変調器を含む光デバイスの製造効率が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す図である。
【
図3】変調器を構成する光導波路およびメタル配線を示す図である。
【
図4】変調器を構成する光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを示す図である。
【
図5】光変調器の製造工程の一例を示す図(その1)である。
【
図6】光変調器の製造工程の一例を示す図(その2)である。
【
図7】光変調器の製造工程の一例を示す図(その3)である。
【
図8】光変調器の端部におけるメタル配線およびポリマーパターンの構成の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係わる光変調器の端部におけるメタル配線およびポリマーパターンの構成の一例を示す図である。
【
図10】メタル配線およびポリマーパターンの構成のバリエーションを示す図である。
【
図11】送受信モジュールを含む光デバイスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係わる光デバイスの一例を示す。本発明の実施形態に係わる光デバイス100は、光ICチップ10上に形成される光変調器を含む。光ICチップ10は、この実施例では、シリコンウエハ上に形成される。この場合、シリコンウエハ上に複数の光ICチップが形成される。すなわち、光ICチップ10は、シリコンウエハから切り出される複数の光ICチップの中の1つである。なお、この実施例では、光変調器は、偏波多重光信号を生成する。
【0013】
光変調器は、
図1に示すように、変調器11~14、可変光減衰器(VOA)15x、15y、モニタ受光器(mPD)16x、16y、偏波回転器(PR)17、偏波ビームコンバイナ(PBC)18を備える。なお、光変調器は、
図1に示していない他の要素を備えていてもよい。
【0014】
光ICチップ10の形状は、この実施例では、矩形である。ただし、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、光ICチップ10の形状は平行四辺形であってもよい。
【0015】
変調器11~14は、光導波路を介して入力ポートに結合されている。すなわち、連続光が変調器11~14に入力される。また、変調器11、12、13、14には、それぞれ駆動信号XI、XQ、YI、YQが与えられる。なお、駆動信号XI、XQは、データ信号Xに基づいて生成される。また、駆動信号YI、YQは、データ信号Yに基づいて生成される。そして、変調器11は、入力連続光を駆動信号XIで変調することにより、変調光信号XIを生成する。同様に、変調器12、13、14は、変調光信号XQ、YI、YQを生成する。
【0016】
変調光信号XIおよび変調光信号XQが合波され、変調光信号Xが生成される。このとき、変調光信号XIおよび変調光信号XQは、パッド21を介して与えられるバイアスにより、互いに所定の位相差を有するように合波される。なお、変調光信号Xは、データ信号Xを表す。同様に、変調光信号YIおよび変調光信号YQが合波され、変調光信号Yが生成される。このとき、変調光信号YIおよび変調光信号YQは、パッド22を介して与えられるバイアスにより、互いに所定の位相差を有するように合波される。なお、変調光信号Yは、データ信号Yを表す。
【0017】
可変光減衰器15xは、変調光信号Xのパワーを調整する。同様に、可変光減衰器15yは、変調光信号Yのパワーを調整する。このとき、可変光減衰器15x、15yは、例えば、パッド23、24を介して与えられるパワー制御信号に従って、変調光信号X、Yのパワーを互いに同じにする。
【0018】
モニタ受光器16xは、変調光信号Xのパワーを検出する。同様に、モニタ受光器16yは、変調光信号Yのパワーを検出する。なお、モニタ受光器16x、16yにより検出されるパワーは、パッド25、26を介して不図示のコントローラに通知される。そうすると、このコントローラは、可変光減衰器15x、15yを制御するパワー制御信号を生成する。
【0019】
偏波回転器17は、変調光信号X、Yの一方の偏波を制御する。この実施例では、偏波回転器17は、変調光信号Yの偏波を制御する。一例としては、偏波回転器17は、変調光信号Xの偏波および変調光信号Yの偏波が互いに直交するように、変調光信号Yの偏波を制御する。偏波ビームコンバイナ18は、変調光信号X、Yを合波して偏波多重光信号を生成する。この偏波多重光信号は、光導波路を介して出力ポートに導かれる。
【0020】
なお、光デバイス100は、
図1に示していない他の要素を備えてもよい。例えば、光デバイス100は、上述の光変調器に加えて、光受信器を備えてもよい。この場合、光デバイス100は、光トランシーバとして動作する。
【0021】
図2~
図4は、光変調器の構成の一例を示す。なお、
図2~
図4においては、
図1に示す変調器11~14が描かれている。すなわち、
図2~
図4においては、
図1に示す可変光減衰器15x、15y、モニタ受光器16x、16y、偏波回転器17、偏波ビームコンバイナ18は省略されている。
【0022】
図2は、変調器11~14を構成する光導波路を表す。各変調器11~14は、この実施例では、マッハツェンダ干渉計により実現される。すなわち、各変調器11~14は、1組の光導波路を含む。1組の光導波路は、互いに実質的に同じ長さであり、また、互いに実質的に平行に形成されている。そして、入力光導波路は、各変調器11~14の入力端に光学的に結合されている。よって、
図1に示すように、光デバイス100に連続光が入力されると、その連続光は、入力光導波路を介して変調器11~14に導かれる。
【0023】
光デバイス100は、
図2に示すように、ドライバ基板30および終端基板40を備える。ドライバ基板30には、信号パッドおよび接地パッドが設けられている。なお、
図2~
図4において、Sは、信号パッドを表し、Gは、接地パッドを表す。そして、この実施例では、各変調器11~14に対して、1個の信号パッドSおよび2個の接地パッドGが設けられている。信号パッドSは、2個の接地パッドGの間に設けられている。また、信号パッドSは、駆動信号を生成する駆動回路に接続されている。接地パッドGは、グランドに接続されている。なお、駆動回路は、ドライバ基板30上に実装されてもよいし、ドライバ基板30の外部に設けられてもよい。
【0024】
終端基板40にも、信号パッドSおよび接地パッドGが設けられている。この例では、各変調器11~14に対して、1個の信号パッドSおよび2個の接地パッドGが設けられている。信号パッドSは、2個の接地パッドGの間に設けられている。また、信号パッドSと接地パッドGとの間には、終端抵抗Rが設けられている。なお、
図3~
図4においては、終端抵抗Rは省略されている。
【0025】
図3は、変調器11~14を構成する光導波路およびメタル配線を示す。各メタル配線は、マッハツェンダ干渉計を構成する光導波路に平行に形成される。また、各メタル配線は、ワイヤを介して、ドライバ基板30および終端基板40に形成される対応するパッドに接続される。
【0026】
例えば、変調器11は、メタル配線1、2a、2bを備える。メタル配線1は、マッハツェンダ干渉計を構成する光導波路に重なるように形成される。また、メタル配線1は、ワイヤを介して、ドライバ基板30に設けられている対応する信号パッドS、および、終端基板40に設けられている対応する信号パッドSに接続される。メタル配線2a、2bは、マッハツェンダ干渉計を挟むように形成される。また、メタル配線2a、2bは、それぞれ、ワイヤを介して、ドライバ基板30に設けられている対応する接地パッドG、および、終端基板40に設けられている対応する接地パッドGに接続される。ワイヤは、導電率の高い金属で実現される。変調器12~14の構成は、実質的に変調器11と同じである。
【0027】
図4は、変調器11~14を構成する光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを示す。ポリマーパターンは、この実施例では、各変調器11~14において、マッハツェンダ干渉計を構成する1組の光導波路の一方に沿って形成される。なお、ポリマーパターンは、
図4では、斜線領域で表されている。また、ポリマーパターンは、光ICチップ10の表面に電気光学ポリマー(EOポリマー)を塗布することで形成される。
【0028】
図5~
図7は、光変調器の製造工程の一例を示す。ここでは、光ICチップ上に光導波路、メタル配線、およびポリマーパターンを形成する手順の一例を説明する。なお、この実施例では、
図5(a)に示すSOI基板を使用して光変調器が形成されるものとする。SOI基板は、シリコン基板とSi層との間に、絶縁層としてのBOX層(SiO2膜)を備える。
【0029】
図5(b)において、Si層にN
+領域が形成される。このとき、レジスト膜を利用してSi層に選択的にN型イオンを注入することでN
+領域が形成される。なお、N
+領域は、後の工程で光導波路が形成される領域の近傍に形成される。
【0030】
図5(c)において、光導波路が形成される。このとき、レジスト膜を利用してSi層およびN
+領域をエッチングすることで光導波路が形成される。
【0031】
図5(d)~
図6(b)において、コンタクト層が形成される。即ち、
図5(d)に示すように、Si層およびN
+領域の表面に酸化膜が形成される。続いて、
図6(a)に示すように、レジスト膜を利用したエッチングにより、N
+領域の表面の一部において酸化膜が除去される。そして、
図6(b)に示すように、酸化膜が除去された領域にコンタクト層が形成される。すなわち、N
+領域に電気的に接続するコンタクト層が形成される。
【0032】
図6(c)~
図6(d)において、メタル配線が形成される。即ち、
図6(c)に示すように、酸化膜の表面にメタル層が形成される。この後、
図6(d)に示すように、選択的にメタル層を除去することにより、メタル配線が形成される。
【0033】
図7(a)~
図7(b)において、ポリマーパターンが形成される。即ち、
図7(a)に示すように、光ICチップ10の表面に形成されている酸化膜を選択的に除去することで、ポリマー流路が形成される。そして、ポリマー流路にポリマー材料を注入することにより、
図4に示すポリマーパターンが形成される。このとき、
図7(b)に示すように、ポリマーパターンは、光導波路上に接触するように形成される。具体的には、マッハツェンダ干渉計を構成する1組の光導波路の一方に接触するようにポリマーパターンが形成される。この後、
図3に示すように、各メタル配線とドライバ基板30上の対応するパッドとの間、および、各メタル配線と終端基板40上の対応するパッドとの間が、それぞれワイヤで接続される。
【0034】
ここで、例えば、
図7(b)に示す2つのメタル配線が
図3に示すメタル配線1、2aであり、
図7(b)に示す光導波路が
図2~
図3に示す変調器11を構成するマッハツェンダ干渉計の一方の光導波路であるものとする。この場合、変調器11の駆動信号は、メタル配線1およびメタル配線1に接触するN
+領域を介してポリマーパターンに印加される。また、このポリマーパターンは、N
+領域およびメタルパターン2aを介して電気的にグランドに接続される。したがって、駆動信号に対応する電界がポリマーパターンに与えられ、この結果、駆動信号に応じて光導波路の屈折率が変化する。すなわち、駆動信号に対応する変調が実現される。
【0035】
このように、光導波路に光変調器の駆動信号を印加するためのポリマーパターンは、光ICチップ10の表面にポリマー流路を形成し、そのポリマー流路にポリマー材料を注入することで形成される。
図4に示す例では、ポリマー注入プールからポリマー材料を注入し、そのポリマー材料をポリマー流路終端に向かって流すことにより、ポリマーパターンが形成される。
【0036】
具体的には、
図4において、ポリマー材料がポリマー注入プールから左方向に向かって流れることで、流入路ポリマーパターン3が形成される。また、ポリマー材料が流入路ポリマーパターン3から上方向に向かって流れることで、チャネルポリマーパターン4~7が形成される。チャネルポリマーパターン4~7は、それぞれ、
図1に示す干渉計11~14を構成する光導波路上に形成される。さらに、チャネルポリマーパターン4~7の上端から流出するポリマー材料がポリマー流路終端に向かって流れることで、流出路ポリマーパターン8が形成される。このときポリマーパターン3~8は、光ICチップ10の表面において、メタル配線と重ならないように形成される。
【0037】
図8は、光変調器の端部におけるメタル配線およびポリマーパターンの構成の一例を示す。ここでは、光変調器を構成する4個の変調器のうちの1つ(例えば、変調器11)の端部の構成を示す。なお、図面を見やすくするために、変調器の構成要素を
図8(a)および
図8(b)に分けて示している。具体的には、
図8(a)では、ポリマーパターンが省略され、光導波路およびメタル配線が描かれている。一方、
図8(b)では、光導波路が省略され、メタル配線およびポリマーパターンが描かれている。
【0038】
図8(a)に示す光導波路は、
図1~
図4に示す変調器11を構成する干渉計に含まれる1組の光導波路の一方に対応する。
図8に示すメタル配線1、2a、2bは、
図3~
図4に示すメタル配線1、2a、2bに対応する。よって、メタル配線1は、ドライバ基板30から与えられる駆動信号を伝搬する。メタル配線2a、2bは、グランドに接続される。また、
図8(b)に示す流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4は、
図4に示す流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4に対応する。
【0039】
各メタル配線1、2a、2bは、変調部、パッド部、遷移部を含む。変調部は、光導波路に平行に形成される部分に相当する。パッド部は、各メタル配線の先端部に形成され、
図3に示すワイヤがボンディングされる部分に相当する。遷移部は、変調部とパッド部とを接続する部分に相当する。尚、駆動信号を伝搬するためのメタル配線1のパッド部は、変調部におけるメタル配線の幅を広げることで形成される。したがって、メタル配線1の遷移部の幅は、テーパ状に変化する(パッド部から変調部に向かって徐々に狭くなっていく)。
【0040】
ポリマーパターンは、上述したように、
図4に示すポリマー注入プールからポリマー材料を注入することで形成される。このとき、このポリマー材料は、流入路ポリマーパターン3のための流路を流れ、さらに、チャネルポリマーパターン4のための流路を流れる。
【0041】
他方、光ICチップ10上での電気信号の反射を抑制するためには、メタル配線1とメタル配線2a、2bとの間の間隔を小さくしてインピーダンスを小さくすることが好ましい。
図8に示す例では、間隔Dを小さくすることが好ましい。
【0042】
ところが、間隔Dを小さくすると、メタル配線1とメタル配線2a、2bとの間に形成されるチャネルポリマーパターン4のための流路の幅Wが狭くなる。特に、遷移部においてメタル配線1とメタル配線2aとの間の領域が屈曲するので、この領域においてチャネルポリマーパターン4のための流路の幅Wが狭くなる。そして、この流路の幅Wが狭い場合、ポリマー材料が流れにくくなり、チャネルポリマーパターン4(及び、チャネルポリマーパターン5~7)を所望の形状に形成できないおそれがある。すなわち、光ICチップ10または光デバイス100の製造効率が低下するおそれがある。
【0043】
<実施形態>
図9は、本発明の実施形態に係わる光変調器の端部におけるメタル配線およびポリマーパターンの構成の一例を示す。ここでは、
図8と同様に、光変調器を構成する4個の変調器のうちの1つ(例えば、変調器11)の端部の構成を示す。なお、
図9においては、
図8(b)と同様に、光導波路が省略され、メタル配線およびポリマーパターンが描かれている。
【0044】
図9に示すメタル配線1、2a、2bは、
図3~
図4に示すメタル配線1、2a、2bに対応する。よって、メタル配線1は、ドライバ基板30から与えられる駆動信号を伝搬する。メタル配線2a、2bは、グランドに接続される。
【0045】
図9(a)は、ポリマー流路にポリマー材料が注入される前の状態を示し、
図9(b)は、ポリマー流路にポリマー材料が注入された後の状態を示す。すなわち、
図9(a)においては、ポリマー流路3xおよびポリマー流路4xが描かれている。なお、ポリマー流路3xにポリマー材料が注入されると、流入路ポリマーパターン3が形成される。ポリマー流路4xにポリマー材料が注入されると、チャネルポリマーパターン4が形成される。
図9(b)に示す流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4は、
図4に示す流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4に対応する。
【0046】
各メタル配線は、変調部、パッド部、遷移部を含む。例えば、メタル配線1は、変調部81、パッド部82、遷移部83を含む。また、メタル配線2aは、変調部91、パッド部92、遷移部93を含む。変調部は、光導波路に平行に形成される部分に相当する。パッド部は、各メタル配線の先端部に形成され、
図3に示すワイヤがボンディングされる部分に相当する。遷移部は、変調部とパッド部とを接続する部分に相当する。
【0047】
図9(a)に示すポリマー流路3xは、光ICチップの1つの辺に沿って形成される。また、ポリマー流路4xは、メタル配線1とメタル配線2aとの間の領域に形成される。ここで、ポリマー流路3x、4xは、
図7(a)に示す工程で形成される。そして、
図4に示すポリマー注入プールからポリマー材料を注入すると、このポリマー材料は、ポリマー流路3x、4xを流れる。このとき、ポリマー流路3xを流れるポリマー材料のフローは、分岐されてポリマー流路4に導かれる。この結果、
図9(b)に示すように、流入路ポリマーパターン3およびチャネルポリマーパターン4が形成される。
【0048】
本発明の実施形態においては、メタル配線1の遷移部83とメタル配線2aの遷移部93との間の領域は曲線である。すなわち、遷移部83と遷移部93との間の領域が曲線になるように、メタル配線1およびメタル配線2aが形成される。また、ポリマー流路4xは、例えば、メタル配線1とメタル配線2aとの間の領域の中央に形成される。したがって、このポリマー流路4xにポリマー材料を注入することで形成されるポリマーパターン3は、メタル配線1の遷移部83とメタル配線2aの遷移部93との間の領域において曲線部を有する。
【0049】
このように、メタル配線1とメタル配線2aとの間の領域(特に、遷移部83と遷移部93との間の領域)に形成されるポリマー流路4xが曲線部を有している。このため、
図9に示す構成によれば、メタル配線1とメタル配線2aとの間の間隔が同じである場合、遷移部におけるポリマー流路が直線である構成(
図8(b)参照)と比較して、遷移部におけるポリマー流路4xの幅を広くできる。したがって、ポリマー流路3xからポリマー流路4xに流入するポリマー材料は、遷移部83、93間のポリマー流路4xにおいて滞ることなく流れる。この結果、チャネルポリマーパターン4が形成されるので、光ICチップ10または光デバイス100の製造効率が改善する。
【0050】
また、
図8に示す構成および
図9に示す構成において、メタル配線1とメタル配線2aとの間の間隔が互いに同じであるものとすると、遷移部において、
図8に示すチャネルポリマーパターン4の幅Wが狭くなる。換言すれば、
図8に示す構成および
図9に示す構成において、チャネルポリマーパターン4の幅が互いに同じであるものとすると、遷移部において、
図9に示すメタル配線1とメタル配線2aとの間の間隔が小さくなる。よって、本発明の実施形態においては、光ICチップ10または光デバイス100の製造効率が改善させながら、メタル配線間のインピーダンスを小さくできる。この結果、電気信号を伝搬する配線のインピーダンスを整合させやすくなり、光ICチップ10上での電気信号の反射が抑制される。
【0051】
なお、ポリマー流路4xの幅(すなわち、チャネルポリマーパターン4の幅)は、パッド部、遷移部、および変調部において互いに実質的に同じであることが好ましい。この場合、ポリマー流路を介してポリマー材料を流す工程において、ポリマー材料は、ポリマー流路4xの途中で滞ることなく変調部に流れる。
【0052】
また、
図10(a)に示すように、チャネルポリマーパターン4とメタル配線1の変調部81との間の間隔Gm、チャネルポリマーパターン4とメタル配線1の遷移部83との間の間隔Gt、およびチャネルポリマーパターン4とメタル配線1のパッド部82との間の間隔Gpは、互いに実質的に同じであることが好ましい。同様に、図示していないが、チャネルポリマーパターン4とメタル配線2aの変調部91との間の間隔Gm、チャネルポリマーパターン4とメタル配線2aの遷移部93との間の間隔Gt、およびチャネルポリマーパターン4とメタル配線2aのパッド部92との間の間隔Gpも、互いに実質的に同じであることが好ましい。さらに、チャネルポリマーパターン4とメタル配線1との間の間隔、及び、チャネルポリマーパターン4とメタル配線2aとの間の間隔も、互いに同じであることが好ましい。上述の構成においては、電気信号を伝搬する配線のインピーダンスを整合させやすく、光ICチップ10上での電気信号の反射が抑制される。
【0053】
更に、ポリマー流路3xからポリマー流路4xへポリマー材料が流入しにくいときは、
図10(b)に示すように、メタル配線1のパッド部82とメタル配線2aのパッド部92との間の間隔を広くし、パッド部に形成されるチャネルポリマーパターン4の幅を広くしてもよい。すなわち、変調部に形成されるチャネルポリマーパターン4の幅W1よりパッドに形成されるチャネルポリマーパターン4の幅W2を広くしてもよい。この構成によれば、ポリマー流路3xからポリマー流路4xへポリマー材料が流入しやすくなるので、光ICチップ10または光デバイス100の製造効率が改善する。
【0054】
<送受信モジュール>
図11は、送受信モジュールを含む光デバイスの一例を示す。光デバイス100は、この実施例では、光源51、送受信パッケージ60、DSP71を備える。送受信パッケージ60は、受信部61、TIA回路62、ドライバ回路63、変調部64を備える。受信部61および変調部64は、例えば、
図1に示す光ICチップ10に実装される。変調部64は、例えば、
図2~
図4に示す構成により実現される。なお、光デバイス100は、
図11に示していない要素を備えていてもよい。
【0055】
光源51は、所定の波長の連続光を生成する。この連続光は、光ICチップ10上に形成される光導波路を介して変調部64に導かれる。また、受信部61がコヒーレント受信器であるときは、この連続光は、受信部61にも導かれる。
【0056】
受信光信号(Rx_in)は、受信部61に導かれる。受信部61は、例えば、コヒーレント受信器である。この場合、受信部61は、光源51により生成される連続光を利用して受信光信号を表す電界情報信号を生成する。TIA回路62は、受信部61により生成される電界情報信号を電圧信号に変換して増幅する。
【0057】
DSP(Digital Signal Processor)71は、受信光信号を表す電界情報信号から受信データを再生する。なお、受信データを再生する機能は、周波数オフセットを補償する機能、波形歪みを補償する機能、位相を推定する機能を含んでもよい。また、DSP71は、送信データから駆動信号を生成する。なお、駆動信号を生成する機能は、変調方式に応じてマッピングを行う機能を含んでもよい。
【0058】
駆動信号は、ドライバ回路63により増幅されて変調部64に与えられる。なお、ドライバ回路63は、
図2~
図4に示すドライバ基板30に実装されてもよい。そして、変調部64は、ドライバ回路63を介して与えられる駆動信号で連続光を変調して変調光信号(Tx_out)を生成する。
【0059】
このように、光ICチップ上に受信部61および変調部64を実装することで、送受信モジュールの小型化が実現される。また、
図9または
図10に示す構成を導入すれば、光ICチップ10または光デバイス100の製造効率が改善する。
【符号の説明】
【0060】
1、2a、2b メタル配線
3 流入路ポリマーパターン
4~7 チャネルポリマーパターン
8 流出路ポリマーパターン
3x、4x ポリマー流路
10 光ICチップ
11~14 変調器
81、91 変調部
82、92 パッド部
83、93 遷移部
100 光デバイス