(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】シンク用殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20230418BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
(21)【出願番号】P 2019143525
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真司
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0102203(KR,A)
【文献】特表2018-525063(JP,A)
【文献】特開2018-114197(JP,A)
【文献】実開平06-045595(JP,U)
【文献】特開2017-206236(JP,A)
【文献】特開2018-190604(JP,A)
【文献】特開2018-069224(JP,A)
【文献】特開2017-55978(JP,A)
【文献】特開2008-259576(JP,A)
【文献】特開2006-183241(JP,A)
【文献】特開2001-95699(JP,A)
【文献】特公平6-25425(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L2/00-2/28
A61L11/00-12/14
E03C1/12-1/33
E03D9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンクを殺菌するためのシンク用殺菌装置であって、
筐体と、
前記筐体を
前記シンクのボウル部の外側に固定するための取付部と、
前記筐体内に配置され、主たる波長が200nm~230nmの紫外線を放射する紫外線光源と、
前記紫外線光源から出射された紫外線を、前記筐体の外側に出射させるための出射窓とを備え、
前記出射窓から出射される紫外線の少なくとも一部が、前記シンクの排水口に照射されるように前記取付部によって固定されることを特徴とするシンク用殺菌装置。
【請求項2】
前記筐体と前記シンクとの間に、手指が存在することを検知する人感センサと、
前記人感センサが、手指の存在を検知すると、前記紫外線光源を点灯させ、前記人感センサが、手指の存在を検知しなくなると、所定の時間経過後に、前記紫外線光源を消灯させるように制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のシンク用殺菌装置。
【請求項3】
前記シンクの正面に人が存在することを検知して検知信号を発信する外部機器から、前記検知信号を受信する通信部と、
前記通信部が、前記検知信号を受信すると、前記紫外線光源を消灯させるように制御し、前記検知信号を受信しなくなると、前記紫外線光源の点灯を開始させるように制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のシンク用殺菌装置。
【請求項4】
前記紫外線光源は、クリプトンと塩素の混合ガスが封入されたエキシマランプであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のシンク用殺菌装置。
【請求項5】
前記出射窓は、少なくとも230nm~300nmの紫外線を遮光するフィルタを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のシンク用殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌装置に関し、特にトイレの洗面台や台所におけるシンクに対して紫外線を照射することで殺菌を行うシンク用殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌機能を有する手洗い器が知られている。例えば、下記特許文献1に記載されているような、洗面ボウル部の表面や排水口に対して、LEDから出射される紫外線を照射することで殺菌を行い、カビやぬめり等を発生する菌を殺菌して清潔さを保つものがある。下記特許文献1に記載の手洗い器は、洗面ボウル部の上端のカウンターの下面に殺菌用の紫外線を出射するLEDが配置されている。
【0003】
また、殺菌に用いられる紫外線の波長は、現在もなお、主に254nmが利用されている。これは、波長が260nm付近の紫外線は、細菌や病原菌に対して高い殺菌効果や不活化効果を示すことが知られていることによる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されているような手洗い器用の殺菌装置の構造は、手洗い器の一部分として形成されており、あらゆる手洗い器に汎用的に用いることが想定されているものではない。したがって、既存の手洗い器に殺菌機能を追加する場合は、手洗い器全体を丸ごと取り換えなければならない。
【0006】
さらに、波長が254nmの紫外線は、人体に照射されると、人間の細胞の核に到達し、皮膚などを構成する細胞が死滅してしまうため、人体には有害である。そのため、254nmの紫外線を照射する殺菌装置は、専ら手洗い器を殺菌するのみを目的として設置されるものであり、また、このような装置を設置する場合は、手洗い器に対して照射しつつも、人体には照射されないようにする工夫が必要であった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、シンクの形状によらずに設置可能で、人体に対して無害な紫外線を照射してシンクの殺菌処理が行えるシンク用殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシンク用殺菌装置は、
シンクを殺菌するためのシンク用殺菌装置であって、
筐体と、
前記筐体を固定するための取付部と、
前記筐体内に配置され、主たる波長が200nm~230nmの紫外線を放射する紫外線光源と、
前記紫外線光源から出射された紫外線を、前記筐体の外側に出射させるための出射窓とを備え、
前記出射窓から出射される紫外線の少なくとも一部が、前記シンクの排水口に照射されるように前記取付部によって固定されることを特徴とする。
【0009】
上記殺菌装置は、シンクの排水口に向かって出射窓から出射される紫外線を照射できるように、筐体を壁面やシンクの縁部、あるいは蛇口等に固定するための取付部を備えている。取付部の構成例としては、壁面やシンク等にネジ止めする構成や、蛇口等を把持する構成を採用し得る。
【0010】
つまり、殺菌処理の対象とするシンクの形状や大きさには左右されず、既に設置されているシンクに対して、付加的に設置することができる。なお、本明細書において、「シンク」とは、台所等に備え付けられている、水等を流す排水溝を備えた水槽状の台のことである。
【0011】
また、紫外線光源から放射される光には、殺菌に不要な波長帯の光も含まれており、特に230nm~300nmの波長帯の紫外線の一部には、人体に悪影響を及ぼす可能性がある光も存在する。しかし、230nmよりも短い波長の紫外線であれば、殺菌効果としては有効であり、大気や皮膚に対する透過率が低いため、人体に対する影響も少ない。
【0012】
さらに、紫外線光源から放射される光には、空気中の酸素に照射されると、酸素に吸収され、酸素の結合を切りオゾンを発生させる波長帯の光も含まれており、特に200nm未満の波長帯の紫外線にはこのような作用がある。
【0013】
オゾンは、空気中にも僅かに存在しており、非常に低い濃度であれば人体に対してほとんど影響はないが、高濃度になると、人体に悪影響を及ぼしてしまう。しかし、200nmよりも長い波長の紫外線であれば、オゾンの生成効率が低いため、人体に悪影響を及ぼす程の高濃度なオゾンは発生しない。
【0014】
例えば、207nmや222nmといった波長の紫外線は、皮膚に対して照射されても、皮膚組織の角層や角層近傍の位置における表皮層内で吸収され、真皮までは届かないため、人体に対する影響が少なく、人体に悪影響を及ぼす高濃度なオゾンを発生させるおそれもない。
【0015】
さらに、手洗い器等のシンクは、排水口が細菌等の発生源の一つであり、シンクの表面を紫外線で殺菌処理を行うだけでは、排水口から湧き出てくる細菌等によって再び汚染されてしまう。そこで、上記構成とすることで、排水口から湧き出てくる菌を狙って殺菌することができるため、細菌等で汚染されることを抑制することができる。
【0016】
上記殺菌装置において、
前記筐体と前記シンクとの間に、手指が存在することを検知する人感センサと、
前記人感センサが、手指の存在を検知すると、前記紫外線光源を点灯させ、前記人感センサが、手指の存在を検知しなくなると、所定の時間経過後に、前記紫外線光源を消灯させるように制御する制御部とを備えていても構わない。
【0017】
上述のように、230nm以下の波長の紫外線は、人体に対する影響が少ない。そこで、上記構成とすることで、手を洗う人は、水で洗うのと同時に、紫外線によって手の表面を安全に殺菌処理することができる。
【0018】
また、人がシンクから手を引き抜いた後も、所定の時間紫外線光源は点灯しているため、水が流れた後の排水口やシンクの表面の殺菌処理を行うことができ、排水口やシンクの清潔さを保つことができる。
【0019】
上記殺菌装置において、
前記シンクの正面に人が存在することを検知して検知信号を発信する外部機器から、前記検知信号を受信する通信部と、
前記通信部が、前記検知信号を受信すると、前記紫外線光源を消灯させるように制御し、前記検知信号を受信しなくなると、前記紫外線光源の点灯させるように制御する制御部とを備えていても構わない。
【0020】
上述のように、230nm以下の波長の紫外線は、人体に無害ではあるが、紫外線が照射されることに抵抗がある人もいる。そこで、上記構成とすることで、人がシンクを利用しない間は、常時排水口やシンクの表面の殺菌処理を行い、シンクの清潔さを保ちつつ、人がシンクを利用する場合にのみ、紫外線光源の点灯を停止させることができ、人体に紫外線を照射させないようにすることができる。
【0021】
前記紫外線光源は、クリプトンと塩素の混合ガスが封入されたエキシマランプであっても構わない。
【0022】
クリプトンと塩素の混合ガスが封入されたエキシマランプは、主たる波長が222nmである紫外線を出射するため、上述の波長の紫外線を得ることができる。
【0023】
また、紫外線光源をエキシマランプとすることで、点灯後すぐに安定した出力が得られる。したがって、消灯させたとしても、待機時間なく再稼働ができるため、起動時間を待つことなく使用することができる。
【0024】
前記出射窓は、少なくとも230nm~300nmの紫外線を遮光するフィルタを備えていても構わない。
【0025】
主たる波長が200nm~230nmの紫外線を発する光源である場合、放射照度は低いものの、230nm~300nmの波長の成分が一部含まれる場合がある。この場合に、紫外線光源から出射された紫外線がそのまま出射窓から殺菌装置の外部に取り出されると、人体に対して悪影響を及ぼす可能性がある230nm~300nmの波長の紫外線が人体に対して照射される場合が起こり得る。
【0026】
上述の通り、207nmや222nmといった波長の紫外線は、皮膚に対して照射されても、皮膚組織の角層や角層近傍の位置における表皮層内で吸収され、真皮までは届かず、人体に対する影響が少ない。しかし、230nmよりも波長の長い、例えば、254nmの紫外線は、波長は皮膚の表皮まで透過し、生細胞にダメージを与える可能性がある。
【0027】
したがって、前記フィルタを備えることで、少なくとも230nm~300nmの波長の紫外線は遮光され、人体に対して影響のある紫外線が、紫外線照射器の照射窓から出射されることを抑制することができる。
【0028】
上記殺菌装置を設置するにあたって、殺菌処理の対象とするシンクの表面に、紫外線を反射する反射面が形成されていても構わない。
【0029】
反射面は、例えば、既存のシンクの表面に対して、フッ素樹脂等の材料を塗布することで形成することができる。
【0030】
シンクの表面に紫外線を反射する反射面が形成されると、シンクの表面における紫外線の反射率が向上する。シンクの表面の紫外線に対する反射率が向上すると、シンクの表面で紫外線が反射され、殺菌装置の出射窓から直接紫外線が照射されない領域にも紫外線が到達するため、シンク全体に満遍なく、かつ、効率的に紫外線を照射することができる。
【0031】
上記殺菌装置を設置するにあたって、殺菌処理の対象とするシンクの表面に、紫外線が照射されることで可視光の波長帯の光を出射するように蛍光部を形成していても構わない。
【0032】
蛍光部は、例えば、既存のシンクの表面に対して、蛍光剤の塗布や、蛍光剤を含むシール等で形成することができる。
【0033】
紫外線は、人が視認することができないため、シンクに向かって殺菌用の紫外線が出射されているかを目視で確認することができない。そこで、上述のように、シンクの表面に蛍光剤を塗布することで、シンクに紫外線が照射されていれば、シンクが殺菌中であるか、また、紫外線光源に不具合が発生していないか等を、蛍光部から出射させる可視光である蛍光によって目視で確認することができる。
【0034】
このように、照射対象とするシンクに対して、殺菌の効果をより向上させるための処理や、紫外線の照射がされているかを確認するための処理を、シンクに施すことによって、本発明の殺菌装置は、より効率的で、かつ、より安全なシンクの殺菌システム等を構築することもできる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、シンクの形状によらずに設置可能で、人体に対して無害な紫外線を照射してシンクの殺菌処理が行えるシンク用殺菌装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】殺菌装置を設置した状態のシンクの模式的な全体斜視図である。
【
図2】殺菌装置の一実施形態を示す模式的な全体斜視図である。
【
図3】
図2の殺菌装置を出射窓側から見たときの模式的な図面である。
【
図4A】
図2の殺菌装置を出射窓側から見たときの模式的な断面図である。
【
図4B】人感センサを備えない場合の殺菌装置の出射窓側から見たときの模式的な断面図である。
【
図5A】
図2の殺菌装置を出射窓側から見たときの模式的な断面図の一部拡大図である。
【
図5B】紫外線光源を管軸方向に向かって見たときの図面である。
【
図6A】外部機器6が人の存在を検知して、殺菌装置1に検知信号S1を送信する動作を模式的に示す図面である。
【
図6B】殺菌装置の一実施形態を示す模式的な全体斜視図である。
【
図7】放電用ガスにクリプトンと塩素が含まれるエキシマランプから出射される紫外線のスペクトルの一例である。
【
図8】シンクのボウル部の表面に反射面を形成した構成を示す模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明のシンク用殺菌装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0038】
図1は、殺菌装置1を設置した状態のシンク2の模式的な全体斜視図である。
図1に示すように、第一実施形態の殺菌装置1は、既に設置済みであるシンク2に対して、蛇口3の上部の壁面5に、殺菌装置1を追加的に固定した構成で説明する。なお、上述したように、殺菌装置1は、壁面5やシンク2の縁部2b、あるいは蛇口等に固定するものであっても構わない。
【0039】
なお、以下説明におけるシンク2は、壁面5に取り付けられた、水を流す排水口4を備えた水槽状のボウル部2aと、縁部2bを併せたものを指す。
【0040】
図2は、殺菌装置1の一実施形態を示す模式的な全体斜視図である。
図3は、
図2の殺菌装置1を出射窓12側から見たときの模式的な図面である。
図2及び
図3に示すように、殺菌装置1は、筐体10と、筐体10を壁面5に固定するための取付部11と、紫外線L1を出射するための出射窓12と、人感センサ13を備えている。
【0041】
図4Aは、
図2の殺菌装置1を出射窓側から見たときの模式的な断面図である。
図4Aが示すように、筐体10の内部には、紫外線光源14と、紫外線光源14への電力の供給を制御するための給電制御部15が配置されている。
【0042】
筐体10は、
図1に示すように、取付部11によって蛇口3の上部の壁面5に固定される。取付部11の詳細な構成は、第一実施形態においては、
図2に示すように、壁面5にネジで固定する構成であるが、シンク2の縁部2b、あるいは蛇口等に固定する機構であっても構わない。
【0043】
出射窓12は、取付部11によって壁面5に固定された時に、排水口4側に向かって紫外線L1を出射するように形成されている。なお、第一実施形態においては、二つの出射窓12が形成されているが、排水口4に紫外線L1の少なくとも一部が照射される構成であれば、出射窓12は、一つ、あるいは三つ以上構成されていても構わない。
【0044】
人感センサ13は、筐体10とシンク2との間に手指が存在することを検知するために配置されている。人感センサ13は、具体的には、赤外線センサ、光電センサ、焦電センサ等を採用し得る。
【0045】
給電制御部15は、人感センサ13から出力される信号に基づいて、紫外線光源14への電力供給を制御する。より詳細には、人感センサ13が、筐体10とシンク2との間に手指が差し込まれた、すなわち、筐体10とシンク2との間の手指が検知されると、紫外線光源14に対して電力を供給する。
【0046】
そして、人感センサ13が、筐体10とシンク2との間から手指が引き抜かれたこと、すなわち、筐体10とシンク2との間の手指を検知しなくなると、検知信号の出力を停止する。検知信号の出力が停止されると、給電制御部15は、紫外線光源14を所定時間経過後に消灯させるように制御を行う。検知信号の出力の停止から、紫外線光源14の消灯までの時間は、1s~600sの範囲で設定されることが好ましい。
【0047】
なお、
図4Bは、人感センサ13を備えない場合の殺菌装置1の出射窓側から見たときの模式的な断面図であって、
図4Bに示すように、殺菌装置1が人感センサ13を備えない場合は、給電制御部15は、スイッチSWの切り替え等に応じて、紫外線光源14への電力供給を制御するものであってもよく、電源と接続されると、常時紫外線光源14に電力を供給するものであっても構わない。
【0048】
紫外線光源14は、第一実施形態においては、エキシマランプであり、詳細な構造について
図5A及び
図5Bを参照しながら説明する。
【0049】
図5Aは、
図2の殺菌装置1を出射窓側から見たときの模式的な断面図の一部拡大図である。すなわち、出射窓12側から紫外線光源14を見たときの図面である。
図5Bは、紫外線光源14を管軸方向に向かって見たときの図面である。
図5Bに示すように、管体14cは、電力を供給するための凹部が形成されている電極(14a,14b)によって支持されている。
【0050】
紫外線光源14は、電極(14a,14b)間に放電用ガスG1が電離状態となるだけの電圧が印加されると、管体14c内の放電用ガスG1を介して電流が流れ、管体14cの管軸を中心として周方向に紫外線L1を出射する。
【0051】
このとき、紫外線光源14は、給電制御部15より二つの電極(14a,14b)間に電圧が印加されると紫外線L1を出射する。紫外線光源14から出射窓12側へ放射された紫外線L1は、そのまま出射窓12からシンク2側へ進行する。しかし、紫外線光源14から出射窓12とは反対側へ放射された紫外線L1は、出射窓12側へと進行せずに出射窓12から出射されない。そこで、出射窓12とは反対側へ放射された紫外線L1を出射窓12側に向かわせるように、紫外線光源14から見て出射窓12に対して反対側の位置に反射部材を設けていても構わない。
【0052】
さらに、紫外線光源14を支持している電極(14a,14b)は、紫外線光源14から出射される紫外線L1の進行の邪魔とならないように、紫外線光源14から見て、出射窓12とは反対側に配置されている。そのため、電極(14a,14b)も同様に紫外線L1を出射窓12側へ反射する性質を有していることが好ましい。
【0053】
一例として、電極(14a,14b)の材料としては、アルミニウム、ステンレス、鉄、銅等、導電性のある材質からなるものであって、少なくとも出射窓12と対向する面においては、鏡面研磨処理のような加工が施されていることが好ましい。
【0054】
図4に示すように、殺菌装置1は、複数の紫外線光源14を収容しており、二つの電極(14a,14b)によって支持されている。これらの電極(14a,14b)間に電圧が印加されることで、紫外線光源14から出射された紫外線L1が、出射窓12からシンク2に向かって出射される。
【0055】
紫外線光源14は、紫外線L1に対して透過性を有する管体14cに放電用ガスG1が封入されて構成されるエキシマランプである。放電用ガスG1は、放電によって紫外線L1を出射することのできる材料で構成される。放電用ガスG1は、例えば、キセノン、アルゴン、ネオン、クリプトン等の希ガス又はこれらの混合ガスと、フッ素、塩素、臭素等のハロゲンガス又はこれらの混合ガスとを含む。
【0056】
一例として、放電用ガスG1は、クリプトンと塩素を含む混合ガスで構成される。この場合、紫外線光源14からは主たる波長が222nmの紫外線L1が出射される。また別の一例として、放電用ガスG1は、クリプトンと臭素を含む混合ガスで構成される。この場合、紫外線光源14からは主たる波長が207nmの紫外線L1が出射される。
【0057】
波長が200nm~230nm付近の紫外線L1を出射する殺菌装置1によって十分な殺菌効果を得るためには、出射窓12は、できる限りシンク2に近づけて使用することが好ましい。より詳細には、シンク2の表面、あるいは、排水口4と出射窓12との距離が10cm以内となるように配置されることが好ましい。
【0058】
第一実施形態は、
図2を参照しながら上述したように、筐体10を取付部11によって壁面5にネジで固定する構成である。したがって、シンク2の形状や大きさによらず、壁面5上での位置を調整して追加的に設置することができる。なお、取付部11の構成は、上述のように、壁面5にネジ止めする構成に限られず、シンク2の縁部2bに固定するものであってもよく、蛇口等に固定するものであっても構わない。
【0059】
さらに、上述のように、設置される殺菌装置1によれば、紫外線光源14から出射される紫外線L1が排水口4に照射されるため、排水口4から湧き出ってくる菌を狙って殺菌することができ、シンク2が排水口4から湧き出てくる菌で汚染されることを抑制することができる。
【0060】
また、紫外線光源14がエキシマランプであることから、上述のように、点灯後すぐに安定した出力が得られる。紫外線光源14を消灯していたとしても、人がシンク2と手を差し出した時に、待機時間なく使用することができる。
【0061】
[第二実施形態]
本発明の殺菌装置1の第二実施形態の構成につき、第一実施形態と異なる箇所を中心に説明する。
【0062】
図6Aは、外部機器6が人の存在を検知して、殺菌装置1に検知信号S1を送信する動作を模式的に示す図面である。
図6Bは、殺菌装置1の第二実施形態を示す模式的な図面である。
図6Aに示すように、第二実施形態における殺菌装置1は、シンク2の正面に人が存在することを検知する外部機器6と組み合わせて構成される。また、
図6Bに示すように、第二実施形態の殺菌装置1は、検知信号S1を受信するための通信部60を備える。
【0063】
通信部60が検知信号S1を受信すると、給電制御部15は、紫外線光源14を消灯させるように制御し、検知信号S1を受信しなくなると、紫外線光源14を点灯させるように制御を行う。
【0064】
上記構成とすることで、上述のように、人がシンク2を利用しない間は、常時排水口4やシンク2は、の表面の殺菌処理を行いシンク2の清潔さを保ち、人がシンク2を利用する場合にのみ、紫外線光源14の点灯を停止させることができ、人体に紫外線L1を照射させないようにすることができる。
【0065】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0066】
〈1〉 殺菌装置1は、出射窓12の面上、又は出射窓12と紫外線光源14との間に、230nm~300nmの紫外線L1を遮光するためのフィルタを備えるものとしても構わない。
【0067】
紫外線光源14は、主たる波長が200nm~230nmの紫外線L1を発する光源である場合、放射照度は低いものの、紫外線L1には、230nm~300nmの波長の成分が一部含まれる場合がある。
【0068】
例えば、
図7は、放電用ガスG1にクリプトンと塩素が含まれるエキシマランプから出射される紫外線L1のスペクトルの一例である。
図7に示すように、主たる発光波長が222nmのエキシマランプであっても、出射する紫外線L1には、ごく僅かでありながらも、人体に対して悪影響を及ぼす可能性がある230nm~300nmの波長も含まることがある。
【0069】
かかる構成によれば、紫外線光源14から出射される紫外線L1に、人体に悪影響を及ぼす可能性がある波長成分(すなわち、上記230nm~300nm)が含まれている場合においても、殺菌に用いられる200nm~230nmの紫外線L1は出射窓12から放射される一方で、人体に悪影響を及ぼす可能性がある230nm~300nmの紫外線L1については出射窓12から照射されないようにすることができる。
【0070】
〈2〉 本発明の殺菌装置1を設置するにあたって、殺菌処理の対象とするシンク2の表面に、紫外線L1を反射する反射面や、紫外線L1が照射されることで可視光の波長帯の光を出射するように蛍光部を形成していても構わない。
図8は、シンク2のボウル部2aの表面に反射面80を形成した構成を示す模式的な図面である。
【0071】
反射面80は、例えば、既存のシンク2のボウル部2aの表面に、フッ素樹脂を塗布することで形成される。その他に、反射面80を形成する方法としては、アルミナ等を表面に塗布や貼り付ける方法がある。また、蛍光部を形成する方法としては、例えばMo・xAl2O3:ySiO2Euを成分とする蛍光剤を塗布する方法や、当該蛍光剤を含むシール等を貼り付ける方法がある。
【0072】
〈3〉
図5A及び
図5Bを参照して上述した、紫外線光源14であるエキシマランプの構成はあくまで一例である。エキシマランプは、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一波長帯に属する紫外線L1を出射する限りにおいて、その構造は任意である。一例として、エキシマランプは、同心円状に管体が二重に設けられ、内側管と外側管の間に放電用ガスG1が封入される構造であっても構わない(二重管構造)。また、別の例として、エキシマランプは、放電用ガスG1が封入された単一の管体の内部と外側に電極が設けられた構造(一重管構造)であっても構わないし、放電用ガスG1が封入された、矩形上の面を有する管体の向かい合う2面に電極が設けられた構造(扁平管構造)であっても構わない。
【0073】
〈4〉 筐体10の形状は、
図2に示す形状には限られず、内部構造や取付部11の構造に応じて適当な形状を採用しても構わない。
【0074】
〈5〉 本発明の殺菌装置1は、新たにシンク2を作成して、殺菌装置1と併せて設置する場合は、当該シンク2の形状に合わせるように形成、あるいは、シンク2と一体構成となるように形成しても構わない。
【符号の説明】
【0075】
1 : 殺菌装置
2 : シンク
2a : ボウル部
2b : 縁部
3 : 蛇口
4 : 排水口
5 : 壁面
10 : 筐体
11 : 取付部
12 : 出射窓
13 : 人感センサ
14 : 紫外線光源
14a,14b : 電極
14c : 管体
15 : 給電制御部
60 : 通信部
80 : 反射部
G1 : 放電用ガス
L1 : 紫外線
S1 : 検知信号