IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20230418BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230418BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230418BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J7/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019147568
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028358
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田邉 慎吾
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/110368(WO,A1)
【文献】特開2011-026418(JP,A)
【文献】特表2017-528581(JP,A)
【文献】特開2019-104882(JP,A)
【文献】特開2018-165326(JP,A)
【文献】特開2011-213885(JP,A)
【文献】特開2013-216739(JP,A)
【文献】特開2010-180290(JP,A)
【文献】特開2008-208281(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0121568(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含み、
前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)は、ポリオール(a)と、ポリイソシアネートとの反応物であって、
前記ポリオール(a)は、カルボキシル基を有するポリオール(a1)、およびカルボキシル基を有さず、かつ水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を含有し、
前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の酸価は、0.1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である、粘着剤。
【請求項2】
前記硬化剤(B)は、イソシアネート硬化剤(B1)を含む、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対し、前記イソシアネート硬化剤(B1)の含有量は、0.5質量部以上10質量部以下である、請求項記載の粘着剤。
【請求項4】
さらに、帯電防止剤を含む、請求項1~いずれか1項記載の粘着剤。
【請求項5】
基材および請求項1~いずれか1項記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。
【請求項6】
剥離性シートおよび請求項1~いずれか1項記載の粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤および粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車やバイク、トラック等の車両にはわずかな傷が付くことで外観(美粧性)を損なったとしてその補修を必要とするケースが増加している。そこで傷付き防止の目的で貼られるプロテクター用の粘着剤の開発が精力的に行われている。例えば、特許文献1には、ポリオールとポリイソシアネート化合物とをイソシアネート基過剰の割合で反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを得た後、該イソシアネート基末端プレポリマーに鎖延長剤を反応させ、さらに末端停止剤を反応させるウレタン樹脂の製造方法が開示されている。
特許文献2には、活性水素を含まないアクリル系単独重合体または共重合体および多官能(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーを含む組成物からなる層を活性エネルギー線照射により架橋してなる発明が開示されている。
【0003】
特許文献1の粘着剤では、粘着力調整や再剥離性に優れるが、ロールtoロールにて塗工し巻き取った際に初期反応性に劣る為巻ズレが生じる問題があった。加えて、被着体から粘着シートを剥離する際、ゆっくり剥がす際には問題ないが、高速で剥離させる際にはジッピングしてしまう問題もあった。特許文献2の粘着剤では基材密着性確保のためダイレクト塗工法しか適用できず、基材が熱に弱いときに有利とされる転写塗工法への転用が難しいという問題があった。
【0004】
このように、従来の粘着剤では、優れた排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性および耐巻きズレ性のすべてを満足するような粘着剤は得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-124693号公報
【文献】国際公開第2017/010158号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、優れた排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性および耐巻きズレ性を有する粘着シートとそれを得るための粘着剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の実施態様は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含み、前記カルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)の酸価は、0.1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である、粘着剤である。
【0008】
また、本発明の実施態様は、前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)は、ポリオール(a)と、ポリイソシアネートとの反応物であって、前記ポリオール(a)は、カルボキシル基を有さず、かつ水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を含有する前記粘着剤である。
【0009】
また、本発明の実施態様は、前記硬化剤(B)が、イソシアネート硬化剤(B1)を少なくとも含む前記粘着剤である。
【0010】
また、本発明の実施態様は、前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対し、前記イソシアネート硬化剤(B1)の含有量が、0.5質量部以上10質量部以下である、前記粘着剤である。
【0011】
また、本発明の実施態様は、さらに帯電防止剤を含む前記粘着剤である。
【0012】
また、本発明の実施態様は、基材および前記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える粘着シートである。
【0013】
また、本発明の実施態様は、剥離性シートおよび前記粘着剤の硬化物である粘着剤層を備える、粘着シート。である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘着剤を用いて製造された粘着シートは、直近の市場課題である、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性および巻ズレ性に優れる。よって、例えば自動車バンパーやリアトリム、ホイール等のプロテクターフィルムといった自動車等車両用に好適に使用することができる。また自動車等車両以外にも、例えば窓ガラス、LED、電子部品、配線、および皮膚を含む人体等あらゆる部材、積層体にも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。本明細書では、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)を単にウレタンポリオール(A)と称することがある。「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。被着体とは、粘着シートを貼り付ける相手をいう。本明細書で「テープ」、「フィルム」、および「シート」は同義語である。
【0016】
本明細書において、特に明記しない限り、「分子量」は、数平均分子量(Mn)を意味するものとする。なお、「Mn」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0017】
《粘着剤》
本発明の粘着剤は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)を含み、前記カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の酸価が、0.1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下である。
【0018】
<カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)>
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)は、ウレタンポリオールがカルボキシル基を有してさえいれば制限されないが、少なくとも1種以上のカルボキシル基を有するポリオール(a1)と、1種以上のポリイソシアネートとをウレタン化反応させた反応生成物であることが好ましい。
反応時に、ポリイソシアネートのイソシアネート基(イソシアナト基)は、ポリオール(a)の水酸基よりも少なくなるようなモル比(NCO/OH比)で使用する。これにより、ウレタンポリオールが得られる。
カルボキシル基を有するポリオール(a1)は、1分子中に2つ以上の水酸基と、1つ以上のカルボキシル基を有するポリオールである。
ポリイソシアネートは、1分子中に2つのイソシアネート基を有する2官能イソシアネート(ジイソシアネートともいう)であることが好ましい。
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の製造には、反応促進のため触媒を使用することが好ましい。
カルボキシル基含を有するウレタンポリオール(A)は、単独または2種以上を併用できる。
【0019】
ウレタンポリオール(A)の重量平均分子量(Mw)は、3万~50万が好ましく、5万~30万がより好ましく、8万~25万がさらに好ましい。重量平均分子量を上記範囲に調整することで、耐高速剥離ジッピング性や基材密着性をより向上できる。
尚、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
また、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)は、酸価が0.1mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であり、0.3mgKOH/g以上が好ましく、1mgKOH/g以上がより好ましい。上限としては、9mgKOH/g以下が好ましく、6mgKOH/g以下がより好ましい。カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の酸価が0.1mgKOH/g以上であることにより、被着体との相互作用により基材接着性に優れたものとなる。又、酸価が10mgKOH/g以下であることにより、凝集力が高すぎることを抑制し、耐高速剥離ジッピング性に優れたものとなり、またカルボキシル基による触媒のトラップを抑制し、耐巻ズレ性に優れるものとなる。
【0020】
酸価の測定は、水酸化カリウムによる滴定法で行うことができる。
酸価は、下記式(1)で表される。
式(1)
酸価(mgKOH/g)={(5.61×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0021】
[ポリオール(a)]
ポリオール(a)は、水酸基を2つ以上有する化合物である。本発明の粘着剤に使用されるポリオール(a)としては、カルボキシル基を有するポリオール(a1)を含むことが好ましい。水酸基はポリイソシアネートとの反応で消費され、カルボキシル基は被着体との基材密着性を発現させるため、さらには架橋点とするためにカルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)の主鎖に残す設計である。
また、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)を合成する際、カルボキシル基を有するポリオール(a1)以外に、カルボキシル基を有さないポリオール(a2)を併用することが好ましい。カルボキシル基を有さないポリオール(a2)は、1分子中に2つ以上の水酸基を有するが、カルボキシル基は有さないポリオールである。
【0022】
(ポリオール(a1))
カルボキシル基を有するポリオール(a1)としては、例えば、ジヒドロキシフマル酸、ジヒドロキシマレイン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)エタン酸、2,3-ジヒドロキシプロパン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルプロパン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2-ジヒドロキシブタン酸、2,3-ジヒドロキシブタン酸、2,4-ジヒドロキシブタン酸、3,4-ジヒドロキシブタン酸、2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン酸、2,3-ジヒドロキシ-2-メチルブタン酸、2,3-ジヒドロキシ-2-エチルブタン酸、2,3-ジヒドロキシ-2-イソプロピルブタン酸、2,3-ジヒドロキシ-2-ブチルブタン酸、(R)-2,4-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルブタン酸、2,3-ジヒドロキシブタン二酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸、3,5-ジヒドロキシ-3-メチルペンタン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ヘキサン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン酸、3,5-ジヒドロキシヘプタン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)オクタン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ノナン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)デカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ドデカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)テトラデカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ペンタデカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ヘキサデカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタデカン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)オクタデカン酸、ジメチロールオレイン酸、ジメチロールリノール酸、ジメチロールリノレン酸、ジメチロールアラコドン酸、ジメチロールドコサヘキサエン酸、ジメチロールエイコサペンタエン酸等の脂肪族系ジオキシカルボン酸類;2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-6-メチル安息香酸、3,5-ジヒドロキシ-4-メチル安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸、2,3-ジヒドロキシ-4-メトキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸、2,4-ジ(ヒドロキシメチル)安息香酸、3,4-ジ(ヒドロキシメチル)安息香酸、4-ブロモ-3,5-ジヒドロキシ安息香酸、5-ブロモ-2,4-ジヒドロキシ安息香酸、3-クロロ-2,6-ジヒドロキシ安息香酸、5-クロロ-2,4-ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)酢酸、D,L-3,4-ジヒドロキシマンデル酸、2,5-ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸、3,4-(メチレンジオキシ)フェニル酢酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸、3-(2,4-ジヒドロキシフェニル)アクリル酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)アクリル酸、4,4’-ビス(p-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、3-(3,4-メチレンジオキシフェニル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,4-ジヒドロキシ桂皮酸、2,5-ジヒドロキシ桂皮酸、シンナミル-3,4-ジヒドロキシ―α―シアノ桂皮酸、2-ブロモ-4,5-メチレンジオキシ桂皮酸、3,4-メチレンジオキシ桂皮酸、4,5-メチレンジオキシ-2-ニトロ桂皮酸、2,6-ジヒドロキシイソニコチン酸、DL-3,4-ジヒドロキシマンデル酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、3,5-ジヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、3,7-ジヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸、4,8-ジヒドロキシキノリン-2-カルボン酸、3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸、2,4-ジヒドロキシピリミジン-5-カルボン酸、2,6-ジヒドロキシピリジン-4-カルボン酸、ベンジリデンシアノ酢酸、二プロピオン酸-6-エストラジオール、2,5-ジヒドロキシ-1,4-ベンゼン二酢酸、(2R,3R)-2,3-ジヒドロキシ-3-(フェニルカルバモイル)プロピオン酸等の芳香環あるいはヘテロ環含有系ジオキシカルボン酸類等が挙げられる。
カルボキシル基を有するポリオール(a1)は、単独または2種以上を併用できる。
【0023】
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)中のカルボキシル基が主鎖から近い位置にあるためカルボキシル基同士の二量化が抑えられ、耐高速剥離ジッピング性が向上し易くなることから、これらの中でも2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸や2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸が好ましい。
【0024】
ポリオール(a)100質量%中におけるカルボキシル基を有するポリオール(a1)の含有率は、カルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)の酸価に応じて調整することができるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。また上限としては、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下である。上記範囲内とすることで、基材密着性と耐高速剥離ジッピング性のバランスを取り易く、また耐巻取り性を担保し易い。
【0025】
(ポリオール(a2))
ポリオール(a2)は、カルボキシル基を有さないポリオールである。
ポリオール(a)100質量%中におけるカルボキシル基を有さないポリオール(a2)の含有率は、カルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)の酸価に応じて調整することができるが、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.7質量%以下である。また下限としては、好ましくは97.5質量%以上であり、より好ましくは98.5質量%以上である。
【0026】
ポリオール(a2)は、水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)と、水酸基を2つ有するポリオール(a22)とに大別される。すなわち、ポリオール(a21)とは、カルボキシル基を有さず、かつ水酸基を3つ以上有するポリオールであり、ポリオール(a22)とは、カルボキシル基を有さず、かつ水酸基を2つ有するポリオールである。凝集力および粘着力のバランスの観点から、水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を含むことが好ましい。水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を含むことで、より凝集力を付与しやすく耐巻ズレ性が向上する。
【0027】
またさらなる粘着剤層の凝集力および粘着力のバランスを高次元で取る為には、水酸基を2つ有するポリオール(a22)と、水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を併用することが好ましい。
水酸基を2つ有するポリオール(a22)と、3つ以上有するポリオール(a21)を併用する場合、水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)が全ポリオール(a)100質量%中、10~99.9質量%であることが好ましく、20~99.9質量%であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。水酸基数の異なるポリオールの比率を適切に調整することで排気性が向上する。
また、3つ以上有するポリオール(a21)の使用量は、ポリオール(a2)100質量%中、10~100質量%であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。水酸基数の異なるポリオールの比率を適切に調整することで排気性がより向上するためである。
【0028】
また、水酸基を3つ以上有するポリオール(a21)を併用する場合、ポリイソシアネートとポリオール(a)は、NCO/OH比(モル比)が0.80以下に設定することが好ましい。NCO/OH比(モル比)を0.80より大きくすると、特に水酸基を3つ有するポリオールを使用した場合、併用するポリオールや触媒によっては局所的にゲル化が起こり塗工面の異物として検出され歩留まりが低下する場合がある。またNCO/OH比(モル比)は0.50以上であれば、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の重量平均分子量を大きくさせ易く、後述する硬化剤量を抑えられるため耐高速剥離ジッピング性に優れる。
【0029】
ポリオール(a2)としては、例えば、カルボキシル基を有さない、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ブタジエン系ポリオール、ひまし油ポリオール、ポリアミドポリオール、ポリイミドポリオールまたはアクリルポリオール等を用いることができる。
【0030】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、1分子中に2つ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物を開始剤として用い、1種以上のオキシラン化合物を付加重合させた反応物が挙げられる。
【0031】
活性水素含有化合物は、水酸基含有化合物およびアミン等が好ましい。
水酸基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコール(PG)、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール等の2官能活性水素含有化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能活性水素含有化合物;ペンタエリスリトール等の4官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
アミンとしては、例えば、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の2官能活性水素含有化合物等が挙げられる。
【0032】
オキシラン化合物としては、例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、およびブチレンオキシド(BO)等のアルキレンオキシド(AO);テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。
【0033】
ポリエーテルポリオールは、分子内に活性水素含有化合物に由来するアルキレンオキシ基を有することが好ましい(このポリオールを「ポリオキシアルキレンポリオール」ともいう)。ポリオキシアルキレンポリオールを構成する水酸基含有化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールが好ましく、特に結晶性が低く柔軟性、排気性が発現し易いポリプロピレングリコールが好ましい。
【0034】
ポリエーテルポリオールの数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、透明性や柔軟性が発現し易いことから、200~20,000が好ましく、400~15,000がより好ましく、600~10,000がさらに好ましく、1,000~7,000が特に好ましい。数平均分子量を200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、数平均分子量を20,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0035】
ポリエステルポリオールは、例えば、1種以上のポリオール成分と1種以上の酸成分とをエステル化反応させ化合物(エステル化物)、またはラクトンを開環重合して合成した化合物(開環重合物)等が好ましい。
【0036】
ラクトンは、例えば、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、およびポリバレロラクトン等が挙げられる。
【0037】
ポリオール成分は、例えば、上記の活性水素含有化合物の他に、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0038】
酸成分は、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、および4,4’-ビフェエルジカルボン酸、ダイマー酸、トリマー酸ならびにこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0039】
ポリエステルポリオールの数平均分子量(Mn)は、200~6,000が好ましく、500~6,000がより好ましく、500~4,000がさらに好ましく、500~3,000が特に好ましい。数平均分子量を200以上にすることでウレタンポリオール(A)合成時の反応制御がし易い。また、数平均分子量を6,000以下にすることでウレタンポリオール(A)の凝集力を適度な範囲に調整し易い。
【0040】
これらの中でもポリオール(a2)は、脂肪族が好ましい。これにより排気性、耐高速剥離ジッピング性及び基材密着性がより向上する。
【0041】
ポリオールの中でもアミンを有するものやポリアミンを用いる場合、後述するポリイソシアネートと反応してウレア結合が生成する。ウレア結合は塗膜に凝集力をもたらすが粘着剤層として硬くなり易く、耐高速剥離ジッピング性に不利なため、含まないことが好ましい。
【0042】
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネート等公知のポリイソシアネートを使用できる。
【0043】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0046】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0047】
上記のポリイソシアネートは、ジイソシアネートであるが、上記ジイソシアネートを変性したトリイソシアネートも使用できる。トリイソシアネートは、例えば、上記ジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビュウレット体、および3量体(この3量体はイソシアヌレート環を含む。)等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系、または3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)等の脂環族系が好ましい。これらにより排気性、耐高速剥離ジッピング性、および基材密着性がより向上する。
【0049】
ポリイソシアネート(b)は、単独または2種以上を使用できる。
【0050】
[触媒]
触媒は、例えば、3級アミン系化合物および有機金属系化合物等が好ましい。
【0051】
3級アミン系化合物は、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、および1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)等が挙げられる。
【0052】
有機金属系化合物は、錫系化合物および非錫系化合物等が好ましい。
錫系化合物は、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、および2-エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
非錫系化合物は、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、およびブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系化合物;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、およびナフテン酸鉛等の鉛系化合物;2-エチルヘキサン酸鉄および鉄アセチルアセトネート等の鉄系化合物;安息香酸コバルトおよび2-エチルヘキサン酸コバルト等のコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛および2-エチルヘキサン酸亜鉛等の亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウム等のジルコニウム系化合物が挙げられる。これらの中でも錫系化合物は、反応速度向上や着色が少ないためより好ましい。
触媒は、単独または2種以上を使用できる。
【0053】
触媒は、ポリオール(a)とポリイソシアネートの合計100質量部に対して、0.001~1.0質量部を使用することが好ましい。
【0054】
[合成溶剤]
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の製造には、1種以上の合成溶剤を用いる。合成溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの中でもポリオール(a)の溶解性および溶剤の沸点等の点から、エステル系溶剤、および炭化水素系溶剤が好ましい。
る。
【0055】
[カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の製造方法]
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の製造方法は、特に制限されず、塊状重合法、溶液重合法等の公知の重合方法により製造することができる。
製造方法の手順は、例えば、
(手順1)1種以上のポリオール(a)、1種以上のポリイソシアネート、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の合成溶剤を一括してフラスコに仕込む手順;
(手順2)1種以上のポリオール(a)、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の合成溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネートを滴下添加する手順;
(手順3)1種以上のポリオール(a)のうち最終滴下分を余らせた残り、必要に応じて1種以上の触媒、および必要に応じて1種以上の合成溶剤をフラスコに仕込み、これに1種以上のポリイソシアネートを滴下添加し、その後余らせておいた分の1種以上のポリオール(a)を追って滴下する手順;が挙げられる。
これらの中でも反応熱の制御が容易な(手順2)(手順3)が好ましい。
【0056】
反応温度は、触媒を使用する場合、100℃未満が好ましく、70~95℃がより好ましい。反応温度を100℃未満にするとウレタン反応以外の副反応を抑制できるため所望のカルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)を得易い。反応温度は、触媒を使用しない場合、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましい。
【0057】
カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)を製造する際のポリオール(a)の水酸基(OH)とポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)は、NCO/OHのモル比でいうと0.3~0.95が好ましく、0.4~0.90がより好ましく、0.5~0.80がさらに好ましい。NCO/OH比が上記の範囲内にあることで適度な分子鎖を有するカルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)が形成できるため、排気性および基材密着性がより向上する。
【0058】
合成する際に触媒を用いる場合、上記触媒を不活性化させることが好ましい。反応停止剤は、例えばアセチルアセトン等を配合すればよい。
反応停止剤は、単独または2種類以上を使用できる。
【0059】
<硬化剤(B)>
硬化剤(B)としては、イソシアネート硬化剤(B1)、エポキシ硬化剤、金属キレート硬化剤、およびアジリジン硬化剤等が挙げられる。これらは単独または2種以上を使用できる。硬化剤(B)の使用量としては、厳密には後述する硬化剤の種類によるものの、カルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下が好ましい。これらのうち本発明においては、基材密着性の観点でイソシアネート硬化剤(B1)を用いることが好ましい。
【0060】
イソシアネート硬化剤(B1)は、イソシアネート基を複数有する公知の化合物である。
イソシアネート硬化剤(B1)は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)で説明したポリイソシアネートを用いることが好ましく、単独または2種以上を使用できる。これらの中でも、芳香族ポリイソシアネート、およびこのトリメチロールプロパンアダクト体、ならびにこれらのビュウレット体、ならびにこれら3量体である3官能イソシアネート等がポットライフの観点でより好ましい。
イソシアネート硬化剤(B1)は、単独または2種以上を使用できる。
【0061】
イソシアネート硬化剤(B1)の配合量は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.2~15質量部がより好ましく、0.5~10質量部がさらに好ましい。イソシアネート硬化剤(B1)を0.1質量部以上用いることで、排気性および耐巻ズレ性をより優れたものとし、20質量部以下に抑えることで、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性をより優れたものとすることができる。
【0062】
エポキシ硬化剤は、例えば、ビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、およびN,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。中でも反応性の高さからN,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンが好ましい。
エポキシ化合物は単独または2種以上を併用できる。
【0063】
エポキシ硬化剤の配合量は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01~1質量部を含むことが好ましい。この範囲で用いることで、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性をより優れたものとすることができる。
【0064】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。中でも反応性とポットライフのバランスからアルミニウムトリスアセチルアセトネートが好ましい。
金属キレートは単独または2種以上を併用できる。
【0065】
金属キレートの配合量は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。この範囲で用いることで、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性をより優れたものとすることができる。
【0066】
アジリジン硬化剤は、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、およびトリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン等が挙げられる。中でも反応性の高さから2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]が好ましい。
アジリジン硬化剤は単独または2種以上を併用できる。
【0067】
アジリジン硬化剤の配合量は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.1~1質量部を含むことが好ましい。この範囲で用いることで、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性をより優れたものとすることができる。
【0068】
<有機溶剤>
有機溶剤としては、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の合成溶剤として挙げた溶剤をそのまま使用でき、また合成後に追加してもよい。塗工後の乾燥オーブンにおける乾燥能力に応じて、1種以上の有機溶剤を用いることができ、沸点の異なる2種以上を用いることがレベリング性の観点で好ましい。有機溶剤は、例えば、沸点の低い早口溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等が好ましく、沸点の高い遅口溶剤としては、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸プロピル、トルエン等が好ましい。これらの中でも早口溶剤と遅口溶剤を組み合わせると良好な塗面を得易く、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性に優れる。
溶剤系であることにより、ウレタンエマルション等に比べて、耐水性が優れたものとすることができる。
【0069】
<硬化促進剤>
本発明の粘着剤は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)と硬化剤(B)の反応を促進するため、硬化促進剤を含有することが好ましい。これらの中でも反応性の点でジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、およびジオクチル錫ジラウレート(別名:DOTDL)等が好ましい。
硬化促進剤(D)は、単独または2種類以上が併用できる。
【0070】
硬化促進剤の配合量は、カルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、0.05質量部以上がさらに好ましい。上限としては、3質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。この範囲の硬化促進剤を含むことで、排気性や耐巻ズレ性がより優れたものとできる。
【0071】
<硬化遅延剤>
本発明の粘着剤は、硬化促進剤を含有する場合、ポットライフを確保するために硬化遅延剤を使用することが好ましい。硬化遅延剤としては、反応停止剤と同様、例えばアセチルアセトン等が好ましい。
硬化遅延剤は、単独または2種類以上を使用できる。
【0072】
<酸化防止剤>
酸化防止剤は、ラジカル補足剤および過酸化物分解剤等が挙げられる。ラジカル補足剤は、フェノール系化合物およびアミン系化合物等が挙げられる。過酸化物分解剤は、硫黄系化合物およびリン系化合物等が挙げられる。
【0073】
フェノール系化合物は、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-,C7-C9側鎖アルキルエステル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、およびトコフェノール等が挙げられる。
【0074】
リン系化合物は、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0075】
酸化防止剤を用いることで、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)の熱劣化を防ぐことができる。中でもテトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが、分子量が高くブリードアウトしにくい点で好ましい。
酸化防止剤の含有量は特に制限されず、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。酸化防止剤を用いることで他の性能を劣化させずに粘着剤や粘着剤層の熱分解を抑制することができる。
【0076】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびトリアジン系化合物等が挙げられる。
紫外線吸収剤の含有量は特に制限されず、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。紫外線鳩首剤を用いることで他の性能を劣化させずに粘着剤や粘着剤層の光分解を抑制することができることに加え、紫外線の透過を防ぐため下地への悪影響を抑制することができる。
【0077】
<光安定剤>
光安定剤は、ヒンダードアミン系化合物およびヒンダードピペリジン系化合物等が挙げられる。光安定剤の含有量は特に制限されず、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0078】
<帯電防止剤>
本明細書の粘着剤は、さらに帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤を含むと粘着シートを剥離する際の静電気放電を抑制し、耐高速剥離ジッピング性を向上させる効果が得られる。
帯電防止剤は、例えば、無機塩、イオン液体、イオン固体、界面活性剤等が挙げられる。これらの中でもイオン性液体が好ましい。なお、「イオン性液体」は、常温溶融塩ともいい、25℃で液体の性状を示す。
【0079】
無機塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0080】
イオン液体は、カチオンとアニオンの塩であり、カチオンは、例えば、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0081】
イミダゾリウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0082】
ピリジニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、1-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロリン酸塩、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド、1-メチルピリジニウムビス(パーフルオロブチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
【0083】
アンモニウムイオンを含むイオン液体は、例えば、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド等が挙げられる。
【0084】
その他、カチオンがピロリジニウムイオン、ホスホニウムイオン、およびスルホニウムイオン等である公知のイオン液体を適宜使用できる。
【0085】
イオン固体は、イオン液体同様、カチオンとアニオンの塩であるが、常圧下25℃において固体の性状を示す。カチオンは、例えば、アルカリ金属イオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、アンモニウムイオン等が好ましい。
【0086】
アルカリ金属イオンを含むイオン固体は、例えば、リチウムビスフルオロスルホニルイミド、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、リチウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、リチウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、リチウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、ナトリウムビスフルオロスルホニルイミド、ナトリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、ナトリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、ナトリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、ナトリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、カリウムビスフルオロスルホニルイミド、カリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、カリウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、カリウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、カリウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0087】
ホスホニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、テトラブチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルヘキサデシルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラオクチルホスホニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0088】
ピリジニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスフルオロスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0089】
アンモニウムイオンを含むイオン固体は、例えば、トリブチルメチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、トリブチルメチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、トリブチルメチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、オクチルトリブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、オクチルトリブチルムビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド、テトラブチルビスフルオロスルホニルイミド、テトラブチルビストリフルオロメチルスルホニルイミド、テトラブチルビスペンタフルオロエチルスルホニルイミド、テトラブチルビスヘプタフルオロプロピルスルホニルイミド、テトラブチルビスノナンフルオロブチルスルホニルイミド等が挙げられる。
【0090】
その他、カチオンが、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、スルホニウムイオン等である公知のイオン固体を適宜使用できる。
【0091】
界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、および両性のタイプに分類できる。
【0092】
非イオン性界面活性剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステル、肪酸ジエタノールアミド、ポリエーテルエステルアミド型、エチレンオキシド-エピクロルヒドリン型、およびポリエーテルエステル型等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は、例えば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェート、ポリスチレンスルホン酸型等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、第4級アンモニウム塩基含有アクリレート重合体型等が挙げられる。
両性界面活性剤は、例えば、アルキルベタインおよびアルキルイミダゾリウムベタイン、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキルジヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0093】
帯電防止剤は、25℃で液体または固体で区別する。
25℃で液体の帯電防止剤は、固体と比較して、粘着層と被着体との界面に移行し易いため、より良好な帯電防止性が得易い。
【0094】
また、25℃で固体の帯電防止剤は、液体と比較して、粘着層中に一部が凝集物とて存在し易い。これにより粘着層の応力緩和性が向上するため、良好な基材密着性が得易い。
【0095】
これらの中でも帯電防止剤としては、ピリジニウムイオンを含むイオン液体、アンモニウムイオンを含むイオン液体が好ましく、ピリジニウムイオンを含むイオン液体としては、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましく、アンモニウムイオンを含むイオン液体としては、テトラブチルホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホニルイミドが好ましい。
【0096】
帯電防止剤は、単独または2種以上を使用できる。
【0097】
帯電防止剤の含有量は、カルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.03~2質量部がより好ましく、0.1~1質量部が更に好ましい。
【0098】
本発明の粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、所望により各種樹脂や添加剤を添加することができる。例えば、タッキファイヤ、シランカップリング剤、熱または光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、抗菌剤、保湿剤、ビタミン類、顔料、染料、香料などを挙げることができる。これらは、必要に応じて有効量を配合する。
【0099】
《粘着シート》
本発明において粘着シートは、基材上に本発明の粘着剤から形成されて硬化した粘着剤層を有するものである。もしくは、さらに粘着剤層に剥離シートを有するものである。粘着シートは、例えば、基材上に粘着剤を塗工、乾燥することにより製造できる。粘着剤層は基材の少なくとも一方の面に設けられていればよい。
【0100】
粘着剤を塗工するに際し、適当な液状媒体、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、その他の炭化水素系溶剤等の有機溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。ただし、水やアルコール等はカルボキシル基を有するウレタンポリオール(A)とイソシアネート硬化剤(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、注意が必要である。
【0101】
基材としては、例えば、セロハン、プラスチックシート、ゴム、発泡体、布帛、ゴム布、樹脂含浸布、ガラス板、木材等が挙げられ、板状であってもフィルム状であっても良い。基材は単独でも用いることもできるし、複数のものを積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。更に基材の表面を剥離処理したもの(以下、剥離性シートと呼ぶ)を用いることもできる。
【0102】
プラスチックシートとしては、プラスチックフィルムともいわれ、ポリビニルアルコールフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、アクリル系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリスチレン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、エポキシ系樹脂のフィルムなどが挙げられる。
【0103】
本発明において粘着剤の塗工方法は、特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の硬化形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60~130℃程度の熱風加熱でよい。
【0104】
本発明の粘着シートは、(ア)剥離処理されたシートの剥離処理面に粘着剤を塗工、乾燥し、基材を粘着剤層の表面に積層したり、(イ)基材に粘着剤を直接塗工、乾燥し、粘着剤層の表面に剥離処理されたシートの剥離処理面を積層したりすることによって得ることができる。
【0105】
粘着剤層の厚さは、0.1~300μmであることが好ましく、1~200μmであることがより好ましく、3~150μmであることが更に好ましい。0.1μm未満では十分な粘着力が得られないことがある。300μmを超えても粘着力等の特性はそれ以上向上しない場合が多い。
【実施例
【0106】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。以下の記載において、特に断りがない限り、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味するものとする。表中の配合量は質量部を表す。また、溶剤以外は、不揮発分換算値である。
【0107】
[分子量の測定]
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF-804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:1.0mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.2%、
試料注入量:100μL。
【0108】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
<カルボキシル基を有するポリオール(a1)>
(a1):2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(分子量148)、
<カルボキシル基を有さないポリオール(a2)>
(a2-1):サンニックス PP-1000(ポリプロピレングリコール、数平均分子量Mn1000、水酸基数2、三洋化成工業社製)、
(a2-2):クラレポリオール P-1010(ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn1000、水酸基数2、クラレ社製)、
(a2-3):クラレポリオール C-1090(ポリカーボネートポリオール、数平均分子量Mn1000、水酸基数2、クラレ社製)、
(a2-4):NISSO-PB GI-2000(水添化ポリブタジエンポリオール、数平均分子量Mn2000、水酸基数2、日本曹達社製)、
(a2-5):サンニックス GP-3000(ポリプロピレングリコール、数平均分子量Mn3000、水酸基数3、三洋化成工業社製)、
(a2-6):クラレポリオール F-2010(ポリエステルポリオール、数平均分子量Mn2000、水酸基数3、クラレ社製)、
(a2-7):サンニックス PP-2000(ポリプロピレングリコール、数平均分子量Mn2000、水酸基数2、三洋化成工業社製)、
【0109】
<ポリイソシアネート>
HDI:デスモジュールH(ヘキサメチレンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製)、
IPDI:デスモジュールI(イソホロンジイソシアネート、住化コベストロウレタン社製)、
XDI:タケネート500(キシリレンジイソシアネート、三井化学社製)、
【0110】
<硬化剤(B)>
(B1-1)TDIアダクト:スミジュールL75(トリレンジイソシアネート-トリメチロールプロパンアダクト、住化コベストロウレタン社製)、
(B1-2)XDIアダクト:タケネートD110N(キシリレンジイソシアネート-トリメチロールプロパンアダクト、三井化学社製)、
TETRAD-X:N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)
アルミキレートA:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(川研ファインケミカル社製)
PZ-33:2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート](日本触媒社製)
【0111】
<酸化防止剤>
Irg1010:イルガノックス1010(フェノール系酸化防止剤、BASF社製)
【0112】
<硬化促進剤(D)>
DOTDL:(ジオクチル錫ジラウレート)
【0113】
<帯電防止剤>
・FSI-Am塩:(トリ-n-オクチルメチルアンモニウム・ビストリフルオロメタンスルホニルイミド)
【0114】
[ウレタンポリオールの合成例]
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにサンニックスPP-1000(2官能ポリエーテルポリオール、三洋化成工業社製)655部、サンニックスGP-3000(3官能ポリエーテルポリオール、三洋化成工業社製)340部、2,2-ジメチロールブタン酸5部、ヘキサメチレンジイソシアネート100部、トルエン733部を仕込み、80℃まで徐々に昇温して、10時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認した後に40℃まで冷却し、反応を終了した。このカルボキシル基含有ウレタンポリオール(A1)の重量平均分子量(Mw)は111,000、不揮発分は60%、ポリオール(a)中の水酸基を3つ以上有するポリオール比率は34質量%であった。
【0115】
(合成例2~17)
合成例1と同様の方法で表1の配合量(質量部)に従って、ウレタンポリオール(A2~16、A’1)を合成した。
【0116】
(合成例18)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにサンニックスPP-2000(2官能ポリエーテルポリオール、三洋化成工業社製)1000部、ヘキサメチレンジイソシアネート84部、トルエン271部を仕込み、80℃まで徐々に昇温して、10時間反応を行った。IRチャートのNCO特性吸収(2,270cm-1)が消失していることを確認した後に40℃まで冷却してからトルエン476部を添加し、鎖延長剤として2,2-ジメチロールブタン酸36.9部を配合して反応させた。1時間後に末端停止剤であるジエチルアミン8部を添加して反応を終了した。このウレタンポリオール(A’2)の重量平均分子量(Mw)は124,000、不揮発分は60%、水酸基を3つ以上有するポリオール比率は0%であった。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
(実施例1)
合成例1で得られた樹脂溶液中の不揮発分であるカルボキシル基含有ウレタンポリオール(A1)100質量部に対して、不揮発分比でイソシアネート硬化剤(B1-1)を0.2質量部配合し、さらに有機溶剤(C)として酢酸エチルを15部(ただしカルボキシル基含有ウレタンポリオール(A)、硬化剤(B)等に含まれる溶剤分も加算)、酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.5質量部、硬化促進剤としてジオクチル錫ジラウレートを0.1質量部、硬化遅延剤としてアセチルアセトン3質量部配合し、ディスパーで攪拌することで、粘着剤を得た。
基材として、50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、E5100、東洋紡社製)を用意した。この基材の片面に、得られた粘着剤を乾燥後の粘着剤層の厚みが20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥して、粘着剤層を形成した。この粘着剤層上に、厚さ38μmの剥離性シート(スーパーステックSP-PET38:リンテック社製)を貼着して、粘着シートを得た。40℃乾燥条件で3日間養生した後、各種評価に供した。
【0120】
(実施例2~30、比較例1~2)
実施例2~30、比較例1~2の各例においては、配合組成を表に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法にて、粘着剤および粘着シートを得た。
【0121】
[評価項目および評価方法]
評価項目および評価方法は、以下の通りである。
【0122】
(排気性)
得られた粘着テープを幅100mm・長さ200mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃-50%RH雰囲気下で30分間放置した後、測定試料から剥離シートを剥離した。粘着テープの両端を両手で持ちながら露出した粘着剤層の中心部をガラス板に接触させた後、両手を離した。測定試料の自重で粘着層全体がガラス板に密着するまでの時間を測定することで、粘着剤の濡れ性を評価した。ガラス板と密着するまでの時間が短いほどガラスに対するなじみ性(親和性)が良好であるため、ガラスを使用した製造工程でガラスを良好に保護することができる。評価基準は以下の通りである。

・貼り合わせ評価
◎:密着まで3秒未満、優良。
○:密着まで3秒以上5秒未満、良好。
△:密着まで5秒以上7秒未満、実用可。
×:密着まで7秒以上、実用不可。
【0123】
(耐高速剥離ジッピング性)
得られた粘着シートを幅25mm・長さ100mmの大きさに準備し、測定試料とした。次いで、23℃-50%RHの雰囲気下で、測定試料から剥離シートを剥離し、露出した粘着層をウレタン塗装板に貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、23℃-50%RHの雰囲気下で24時間放置した。引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度10m/分、剥離角度180°の条件で剥離した際の挙動を評価した。

評価基準は以下の通りである。
◎:剥離挙動としてジッピングではなく、滑らかに剥離している、優良。
〇:剥離挙動として若干ジッピングしながら剥離している、良好。
△:部分的にジッピングしながら剥離している、実用可。
×:全体がジッピングしながら剥離している、又は凝集破壊により剥離している、実用不可。
【0124】
(基材密着性)
得られた粘着シートの粘着層に対して、互いに直交する2つの直線方向に対して、それぞれ2mm間隔で11回カットを行って、1mm四方の100個のマスを形成した。この100マス全体を指で3回擦った後、目視にて基材シート上に残ったマスの数を数えた。

評価基準は以下の通りである。
◎:残ったマスの数が95~100個、優。
○:残ったマスの数が80~95個、良好。
△:残ったマスの数が60~80個、実用可。
×:残ったマスの数が0~60個、実用不可。
【0125】
(耐巻ズレ性)
巻ズレは、ロールtoロールで塗工した場合に、有機溶剤を乾燥した直後に剥離性シートとラミネートして巻き取った後に生じる。このとき乾燥直後の塗膜の架橋が進んでいれば巻ズレは発生しない。そこで代用評価として、初期ゲル分率を測定した。養生前の粘着シートから幅30mm長さ100mmの試験片を切り出した。この試験片を、SUSメッシュ(目開き:0.077mm、線径:0.05mm)に貼り付けた後、酢酸エチルに浸漬した。50℃で24時間抽出した後、100℃で30分乾燥し、下記式(1)に基づいて、初期ゲル分率(質量%)を算出した。

初期ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100・・・(1)
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着層の質量、
G2:酢酸エチルによる抽出および乾燥後の粘着層の質量。

評価基準は以下の通りである。
◎:初期ゲル分率が60質量%以上、優良。
○:初期ゲル分率が50質量%以上60質量%未満、良好。
△:初期ゲル分率が40質量%以上50質量%未満、実用可。
×:初期ゲル分率が40質量%未満、実用不可。
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
表3~6に示すように、本発明の粘着剤を用いた粘着シートは、排気性、耐高速剥離ジッピング性、基材密着性および巻ズレ性に優れることが確認できた。