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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】示差熱・熱重量同時測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
G01N25/20 G
G01N25/20 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019150817
(22)【出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021032624
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高島 徹
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-130659(JP,A)
【文献】特開2013-221923(JP,A)
【文献】特開平08-001551(JP,A)
【文献】特開2008-107328(JP,A)
【文献】株式会社島津製作所,DTG-60/60Hシリーズ TG/DTA同時測定装置,日本,株式会社島津製作所,2019年08月06日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、測定後の高温の試料を載せた場合においても該試料による損傷を受けることがない程度の耐熱性を有する材料から成る作業補助台、を備える示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項2】
加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、耐熱性を有する材料から成り、その上面全体が略平面状で且つその中央部が周縁部よりも低いトレー形状である作業補助台、を備える示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項3】
加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、耐熱性を有する材料から成る作業補助台、を備え
前記載置部上に載置された試料の重量を測定する重量測定部の少なくとも一部が前記加熱炉の下方に配置され、前記加熱炉の手前側下部に、前記加熱炉と前記重量測定部との間に位置する接続部を冷却するファンを備え、該ファンを内部に収容するファンカバーの上部に前記作業補助台が取り付けられている示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項4】
前記加熱炉移動部は前記加熱炉を上下方向に移動させるものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項5】
前記作業補助台は、前記ファンカバーの上面に立設された支柱によって該上面との間に所定の空間を有して保持されている、請求項3に記載の示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項6】
前記作業補助台は、耐食性を有する材料から成る、請求項1~のいずれか1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置。
【請求項7】
前記作業補助台はステンレス製である、請求項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、示差熱・熱重量同時測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
示差熱分析は、試料及び基準物質の温度を一定のプログラムに従って変化させながら、該試料と基準物質との温度差を温度の関数として測定する方法であり、例えば、転移、融解、反応等の吸発熱を伴う現象が測定の対象である。一方、熱重量測定は、試料を一定のレートで加熱若しくは冷却したときの、又は一定温度に保持したときの該試料の重量の変化を測定する方法であり、例えば、蒸発、分解、酸化、還元、吸着等の温度に対する重量変化を伴う化学的又は物理的な変化が測定の対象である。従来、示差熱分析と熱重量測定の機能の両方を有し、両測定を同時に実行することが可能である装置が市販されている。
【0003】
図4は、非特許文献1に記載の示差熱・熱重量同時測定装置の外観斜視図である。図中に矢印で示す方向が本装置の正面である。この装置は、下部に試料及び基準物質の重量を測定する重量測定部3、上部に試料及び基準物質を加熱する加熱炉が収容された加熱炉部1が配置され、その加熱炉部1の後方には該加熱炉部1を上下動させる加熱炉移動部2が配置されている。加熱炉移動部2のさらに後方には、様々な電気回路を含む制御部5が設けられている。加熱炉部1の手前側であって重量測定部3のケーシング上部の凸部は、加熱炉部1内の加熱炉の底部と重量測定部3とを接続する接続部を冷却するためのファンを含む冷却部4となっている。
【0004】
図示しないが、重量測定部3からは略鉛直方向に2本の細径棒状のディテクタが延在しており、各ディテクタの上端には微小な試料を載置するための載置皿がそれぞれ取り付けられている。1本のディテクタ上の載置皿は測定対象の試料を載置するものであり、他の1本のディテクタ上の載置皿は示差熱分析の際の基準物質を載置するものである。金属製である載置皿には熱電対が溶接され、その熱電対の配線はディテクタ中に形成された孔に挿通されて制御部5にまで至る。この熱電対により載置皿上の試料や基準物質の温度の計測が可能である。また、重量測定部3によって、載置皿上の試料及び基準物質の重量がそれぞれ計測可能となっている。
【0005】
この示差熱・熱重量同時測定装置を用いた典型的な測定の手順は次の通りである。
(1)作業者は測定対象の試料を調製する。具体的には、まず測定手法等に応じた適宜の試料セル(容器)を選択し、作業テーブル上でその試料セル中に試料を収容する。次に、試料を収容したものと同じタイプの試料セルにアルミナ粉末等を収容することで基準物質を準備する。通常、試料セルは、直径が数mm程度、高さが1~2mm程度のごく小さな偏平円筒状のものである。
(2)そのあと、作業者が操作パネルで所定の操作を行うと、加熱炉移動部2は加熱炉部1を、二つの載置皿が十分に露出する位置まで上昇させる。
(3)その状態で作業者は、精密ピンセットを用い、試料及び基準物質を載置皿上に載せる。
(4)作業者が操作パネルで所定の操作を行うと、加熱炉移動部2は加熱炉部を下降させ、試料及び基準物質を載せた載置皿は加熱炉の内部に収容される。そのあと、作業者が操作パネルで所定の操作を行うと測定が開始される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「DTG-60/60Hシリーズ TG/DTA同時測定装置」、[online]、株式会社島津製作所、[2019年8月6日検索]、インターネット<URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/ta/dtg60.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の示差熱・熱重量同時測定装置では、測定の際に微小な試料や基準物質を作業者が載置皿の上に載せ、また測定終了後には、載置皿から試料や基準物質を取り出す必要がある。試料や基準物質は小さく、またその形状が円盤形状等である場合もあるため、慣れた作業者であってもピンセットで把持するのは困難である。また、載置皿は比較的高い位置にあるため、試料や基準物質を載置皿に載せる作業は慎重に行う必要がある。さらに、ディテクタを折ったり重量測定部を破損したりしないようにするため、試料や基準物質を載置する際には過度の力が加わらないように作業を行う必要がある。こうしたことから、試料や基準物質の載置・取り外しの作業は作業者にとって非常に負担であり、作業性の改善が強く要望されていた。
【0008】
本発明はこうした課題を解決するために成されたものであり、その主たる目的とするところは、作業者が試料や基準物質を載置皿上に載置したり取り出したりする際の作業性を向上させることができる示差熱・熱重量同時測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様による示差熱・熱重量同時測定装置は、加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、測定後の高温の試料を載せた場合においても該試料による損傷を受けることがない程度の耐熱性を有する材料から成る作業補助台、を備えるものである。
また、本発明の他の態様による示差熱・熱重量同時測定装置は、加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、耐熱性を有する材料から成り、その上面全体が略平面状で且つその中央部が周縁部よりも低いトレー形状である作業補助台、を備えるものである。
また、本発明の他の態様による示差熱・熱重量同時測定装置は、加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、耐熱性を有する材料から成る作業補助台、を備え、
前記載置部上に載置された試料の重量を測定する重量測定部の少なくとも一部が前記加熱炉の下方に配置され、前記加熱炉の手前側下部に、前記加熱炉と前記重量測定部との間に位置する接続部を冷却するファンを備え、該ファンを内部に収容するファンカバーの上部に前記作業補助台が取り付けられているものである
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様の示差熱・熱重量同時測定装置において作業補助台は主として二つの機能を有する。その一つは、作業者が試料をピンセットで把持して載置部に載置する際に、又は載置部に載置されている試料をピンセットで把持する際に、手(特に小指球)を載せて支持するための置き台の機能である。他の一つは、測定の前又は後に試料や基準物質を仮に置くための置き台である。
【0011】
本発明の上記態様の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、作業者が試料を着脱する際に、ピンセットを持った手の小指球を作業補助台の上に載せて支えることができるため、手の位置を無理なく固定することができ、載置部上に試料を載せる等の細かな作業が容易になる。また、手に負担が掛からないので、過度な力が載置部に掛からないように力を調整するのも容易であるし、作業者の疲労も軽減される。
【0012】
また、分析前の試料にはゴミなどが付着しないようにする必要があるが、本発明の上記態様の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、ピンセットで摘んだ試料を一旦、清浄な作業補助台の上に仮置きすることができる。それにより、分析前の試料が汚れることを回避することができる。また、分析直後の試料は高温になっている場合があるが、載置部から取り出した試料を耐熱性のある作業補助台の上に一旦仮置きして温度を下げるようにすることもできる。こうしたことによっても、試料の着脱時の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である示差熱・熱重量同時測定装置の外観上面図(a)及び外観側面図(b)。
図2】本実施形態である示差熱・熱重量同時測定装置における作業補助台付近の外観斜視図。
図3】本実施形態である示差熱・熱重量同時測定装置における、試料を載置皿上に置く作業の様子を示す斜視図。
図4】従来の示差熱・熱重量同時測定装置の外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態である示差熱・熱重量同時測定装置について、添付図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置の外観平面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。図2は、本実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置における作業補助台付近の外観斜視図である。図3は、本実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置における、試料を載置皿上に置く作業の様子を示す斜視図である。
【0016】
図4に示した従来の示差熱・熱重量同時測定装置と外観上の意匠は少し相違するものの、基本的な各部の配置は類似している。即ち、装置の下部には、試料及び基準物質の重量を測定する天秤式秤量部30を含む重量測定部3、上部に加熱炉10が収容された加熱炉部1が配置され、その加熱炉部1の後方には該加熱炉部1を上下動させる(図1(b)中の符号1’は上昇途中の加熱炉部の位置を示す)加熱炉移動部2が配置されている。加熱炉移動部2のさらに後方には、様々な電気回路を含む制御部5が設けられている。加熱炉部1の手前側であって重量測定部3のケーシング上部の凸部は、加熱炉10の底部と天秤式秤量部30とを接続する金属性の接続部を冷却するためのファン40を含む冷却部4となっている。
【0017】
加熱炉移動部2により加熱炉部1が所定位置まで上昇された状態では、図3に示すように、その下方の天秤式秤量部30より接続部8bを介して上方に延伸する2本のディテクタ8が露出する。その2本のディテクタ8の上部にはそれぞれ試料(及び基準物質)を載せるための載置皿8aが設けられている。載置皿8aは例えば白金等の金属製であり、裏面に温度計測用の熱電対が溶接されている。ディテクタ8は例えばアルミナ等の絶縁体から成り、その外径は約1.5mmで、その内部には長手方向に延伸する直径が0.4mm程度の二つの孔が形成されている。その二つの孔に上記熱電対に接続された素線がそれぞれ挿通されている。
【0018】
本実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置では、本装置を用いた測定作業を行う作業者から見て加熱炉部の手前であって、冷却部4の水平で平坦なファンカバー4a上面の上部に、作業補助台6を設けている。この作業補助台6は耐熱性、耐食性を有する材料から成る略平板状の部材であり、左右方向に離れた2本の支柱7によってファンカバー4a上面の上に支持されている。ここでは、ファンカバー4a上面と作業補助台6との間には、高さ(図1(b)中のA)が約40mm程度である空間が形成されている。これは、作業補助台6とファンカバー4aとの両方の放熱性を考慮したものである。
【0019】
作業補助台6の材料は上記条件を満たせばよいが、ここではステンレスであり、プレス成型法により所定の形状に製作されている。即ち、作業補助台6は前縁部が奥側から手前側に向かって下傾した形状であり、これにより、作業補助台6上に手前側から手を載せ易くなっている。また、作業補助台6の中央部6aはその周縁部よりも0.5mm程度低い窪みとなったトレー形状であり、さらにその中央部6a底面には滑り止めの表面加工が施されている。これにより、作業補助台6に試料が載せられたとき、該試料が作業補助台6から落下しにくくなっている。
【0020】
また作業補助台6の上面は、ディテクタ8の上端の載置皿8aよりも所定の高さ(図1(b)中のB)だけ低くなっている。この高さは、後述するように作業補助台6の上に作業者がピンセットを持った手を載せたときに、試料を載置皿8aの上に載せたり、逆に載置皿8aから試料を取り出したりする作業が行い易い位置になるように定められている。
【0021】
本実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置では、従来の装置と同様に、加熱炉部1を所定位置まで上昇させ、二つの載置皿8aが十分に露出している状態で、載置皿8a上での試料及び基準物質の載置の作業が行われる。
【0022】
具体的には、作業者は図示しない作業テーブル上で精密ピンセット110を用いて試料を摘み、その精密ピンセット110を持った手100の小指球を、図3に示すように作業補助台6の右端(右利きの人の場合)に載せる。こうして作業補助台6上で小指球を支えながら、精密ピンセット110で摘んだ試料(又は基準物質)Sを載置皿8a上に載せる。もちろん、精密ピンセット110を用いて摘んだ試料を一旦、作業補助台6の中央部6aに仮置きし、そのあと、改めて精密ピンセット110を持った手100の小指球を作業補助台6の右端に載せてから精密ピンセット110で作業補助台6上の試料を摘み直してもよい。作業補助台6上を清潔に保っておくことで、仮置きした試料の汚れを防止することができる。
【0023】
上述したように作業補助台6上で手100の小指球を支えることができるので、ディテクタ8の載置皿8a上に試料Sを載せる細かな作業が容易になる。また、無理な力が載置皿8aに掛かることを回避し、ディテクタ8や天秤式秤量部30が破損に至ることを防止することができる。また、手の疲労も少なくて済むので、作業効率が向上する。
【0024】
また、測定直後の試料はかなりの高温になっている場合もあるが、そうした高温の試料を載置皿8a上から取り出して、一旦、作業補助台6の中央部6aに置くことができる。作業補助台6は金属(ステンレス)製であるため、試料がかなりの高温であっても作業補助台6に損傷を与えることがない。また、作業補助台6は放熱性も良好であるので、中央部6aに置かれた試料の温度は急速に下がる。そうして十分に温度が下がるまで待って、他の場所に測定済み試料を移動させることができる。
【0025】
なお、作業補助台6の形状等は上記記載のものに限らない。
また、上記実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置では、冷却部4が加熱炉部1の手前に配置されていたため、ファンカバー4a上面に作業補助台6を取り付けていたが、同じ機能の冷却部が加熱炉部1の側方などに配置されている場合には、当然、作業補助台6が取り付けられる部材は異なる。
【0026】
また、上記実施形態の示差熱・熱重量同時測定装置では、加熱炉部1が上下方向に移動する構成であるが、水平方向に移動する構成のものも知られている。こうした構成の示差熱・熱重量同時測定装置であっても、載置皿の手前側の適宜の位置に作業補助台を設けることで同様の効果を奏する。
【0027】
また、上記実施形態は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲でさらに適宜修正、変更、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【0028】
[種々の態様]
上述した例示的な実施形態が以下の態様の具体例であることは、当業者には明らかである。
【0029】
(第1項)本発明に係る示差熱・熱重量同時測定装置の一態様は、加熱炉と、微小な試料をその上部に載置するための載置部と、前記載置部を前記加熱炉の内部に収容する位置と該載置部を外部に露出させる位置との間で該加熱炉を移動させる加熱炉移動部と、を具備する示差熱・熱重量同時測定装置であって、
当該装置を操作する作業者から見て前記加熱炉の手前側であって、前記載置部よりも低い位置に、耐熱性を有する材料から成る作業補助台、を備えるものである。
【0030】
第1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、作業者が試料を載置部に載せたり載置部から試料を取り出したりする際に、ピンセットを持った手の小指球を作業補助台の上に載せて支えることができる。それにより、そうした作業時に手の位置を無理なく固定することができ、載置部上に試料を載せる等の細かな作業が容易になる。また、手に負担が掛からないので、過度な力が載置部に掛からないように力を調整することも容易であるし、作業者の疲労も軽減される。
【0031】
また第1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、ピンセットで摘んだ試料を一旦、清浄な作業補助台の上に仮置きすることができる。それにより、分析前の試料を装置のケーシングの上等に仮置きすることで汚れてしまうことを回避することができる。また、分析直後の試料は高温になっている場合があるが、載置部から取り出した試料を耐熱性のある作業補助台の上に一旦仮置きして温度を下げるようにすることもできる。こうしたことによっても、試料の着脱時の作業性を向上させることができる。
【0032】
(第2項)第1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置において、前記作業補助台は、その上面全体が略平面状で且つその中央部が周縁部よりも低いトレー形状であるものとすることができる。
【0033】
第2項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、作業補助台のトレー部に試料を仮置きしたときに、該試料が作業補助台から落下することを防止することができる。
【0034】
(第3項)第2項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置において、前記加熱炉移動部は前記加熱炉を上下方向に移動させるものであり、前記載置部上に載置された試料の重量を測定する重量測定部の少なくとも一部が前記加熱炉の下方に配置され、前記加熱炉の手前側下部に、前記加熱炉と前記重量測定部との間に位置する接続部を冷却するファンを備え、該ファンを内部に収容するファンカバーの上部に前記作業補助台が取り付けられているものとすることができる。
【0035】
第3項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、ファンカバーの上部空間を有効に利用することができる。また、作業補助台を支持する支柱の長さが短くて済み、作業補助台の強度が向上する。
【0036】
(第4項)第3項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置において、前記作業補助台は、前記ファンカバーの上面に立設された支柱によって該上面との間に所定の空間を有して保持されているものとすることができる。
【0037】
第4項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、作業補助台とファンカバーとの間に空間が形成されていることで、作業補助台に高温の試料を置いたときに温度が下がり易くなる。また、ファンカバーで囲まれるファンで発生する熱も外部に逃げ易くなる。
【0038】
(第5項)第1~4項のいずれかに1項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置において、前記作業補助台は、耐食性を有する材料から成るものとすることができる。
【0039】
(第6項)第5項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置において、前記作業補助台はステンレス製であるものとすることができる。
【0040】
第5項及び第6項に記載の示差熱・熱重量同時測定装置によれば、例えば作業補助台上に置かれた試料から薬品などが漏出した場合でも作業補助台自体の汚染や損傷を低減することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…加熱炉部
10…加熱炉
2…加熱炉移動部
3…重量測定部
30…天秤式秤量部
4…冷却部
40…ファン
5…制御部
8…ディテクタ
8a…載置皿
8b…接続部
図1
図2
図3
図4