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特許7263979磁性体粒子操作装置及び磁性体粒子操作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】磁性体粒子操作装置及び磁性体粒子操作方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230418BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20230418BHJP
   G01N 1/34 20060101ALI20230418BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20230418BHJP
   G01N 33/538 20060101ALI20230418BHJP
   B03C 1/24 20060101ALI20230418BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C12N15/10 114Z
C12M1/32
G01N1/34
G01N1/10 C
G01N33/538
B03C1/24
B01J19/08 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019152922
(22)【出願日】2019-08-23
(65)【公開番号】P2021030155
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智樹
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/001629(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121102(WO,A1)
【文献】特開2005-308668(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059076(WO,A1)
【文献】特開平08-278310(JP,A)
【文献】国際公開第2015/136689(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/08
B03C 1/00-32
C12M 1/26-32
C12N 15/10
C12Q 1/68-6897
G01N 1/10、34
G01N 33/538
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する板状のデバイスであって、前記デバイスの主面に沿い、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有する流路が形成されているデバイスと、
前記流路内に収容される磁性体粒子と、
前記磁性体粒子に対して磁力を作用させるための操作用磁石と、
前記デバイスの前記主面に沿って、前記デバイスに対して相対的に前記操作用磁石を移動させる移動機構と、を備え、
前記流路は、前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿って複数の位置に設けられ、それぞれ液体が収容されたチャンバと、前記順路上で互いに隣り合う2つの前記チャンバの間に設けられ、ゲル状体を収容する隔離部を備え
前記流路は、前記流路内を前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子に対して平面カムとして機能するように前記流路方向に対して傾斜して伸び、前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子を、前記順路上の次の前記チャンバへ誘導する内面を有する、磁性体粒子操作装置。
【請求項2】
前記流路は、前記順路において互いに隣り合う2つのチャンバ間を接続する複数の流路列を有し、
前記移動機構は前記操作用磁石を前記流路列の流路方向に沿って移動させる、請求項1に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項3】
前記流路は、前記平面カムとして機能する内面を前記隔離部に備えている、請求項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項4】
前記流路は、前記平面カムとして機能する内面を前記チャンバ内に備えている、請求項又はに記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項5】
前記チャンバの1つはサンプルが導入されるサンプル導入チャンバであり、
前記流路の前記順路における前記サンプル導入チャンバよりも下流に設けられている少なくとも1つの前記チャンバは、前記サンプル中の目的成分の精製を行なうための洗浄液を収容する洗浄液チャンバであり、
前記流路の前記順路における前記洗浄液チャンバよりもさらに下流に設けられている前記チャンバの1つは、前記目的成分を溶解させて前記磁性体粒子から前記目的成分を離脱させる性質をもつ抽出液を収容する抽出液チャンバである、請求項1からのいずれか一項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項6】
前記流路の前記順路における前記抽出液チャンバよりもさらに下流に設けられている前記チャンバは、前記抽出液チャンバにおいて前記目的成分が離脱した前記磁性体粒子を回収するための磁性体粒子回収チャンバである、請求項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項7】
前記流路の前記順路における前記サンプル導入チャンバよりも上流に設けられている前記チャンバの1つは、初期状態において、前記目的成分を保持していない前記磁性体粒子が収容される磁性体粒子収容チャンバである、請求項又はに記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項8】
前記初期状態において、前記磁性体粒子収容チャンバには、前記磁性体粒子を引き付けながら前記操作用磁石に追従して前記流路内を移動する金属体が収容されている、請求項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項9】
前記流路は、前記流路方向に対して交差しかつ前記磁性体粒子収容チャンバを通過する直線上に、前記流路の前記順路において前記磁性体粒子収容チャンバよりも上流に位置する少なくとも1つの金属体収容チャンバを備え、前記金属体収容チャンバに前記初期状態において前記金属体が収容されている、請求項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項10】
前記操作用磁石は第1の円周上に設けられており、
前記移動機構は、前記第1の円周と同一の中心軸及び半径を有する第2の円周上に、前記流路方向が前記第2の円周の接線方向に対して略平行となるように前記デバイスを配置させ、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って移動させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って移動させるものである、請求項1からのいずれか一項に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項11】
前記移動機構は、前記第2の円周上に複数の前記デバイスを配列させ、すべての前記デバイスを同時に前記第2の円周に沿って同じ方向へ前記操作用磁石に対して相対的に移動させるものであり、前記第1の円周上の複数の位置に、前記第2の円周上に配列される複数の前記デバイスにそれぞれ対応する前記操作用磁石が設けられている、請求項10に記載の磁性体粒子操作装置。
【請求項12】
板状のデバイスの内部において磁性体粒子を操作する磁性体粒子操作方法であって、
前記デバイスは、前記デバイスの主面に沿い、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有する流路を内部に備えており、前記流路は、前記流路を前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿った複数の位置にそれぞれ液体を収容するチャンバが設けられているものであり、
操作用磁石を用いて前記流路内の磁性体粒子に磁力を作用させ、前記磁性体粒子が前記流路の前記主面に対して交差する内面に接触するように、前記操作用磁石を前記主面に沿って前記デバイスに対して相対的に移動させ、前記内面を前記磁性体粒子に対して平面カムとして機能させ、前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ誘導するステップと、
前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ向かわせるように、前記操作用磁石を前記主面に沿って前記デバイスに対して相対的に移動させ、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ導入するステップと、をその順に備えている、磁性体粒子操作方法。
【請求項13】
前記磁性体粒子を引き付けながら前記操作用磁石に追従して前記流路内を移動する複数の金属体を、前記流路の前記順路上において互いに間隔をもって配置し、
前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石によって前記複数の金属体を同時に前記流路方向へ移動させる、請求項12に記載の磁性体粒子操作方法。
【請求項14】
前記誘導するステップよりも前に、第1の円周上に前記操作用磁石を配置し、前記第1の円周と同一の中心軸及び半径を有する第2の円周上に、前記流路方向が前記第2の円周の接線方向に対して略平行となるように前記デバイスを前記第2の円周上に配置するステップを備え、
前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って移動させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って移動させ、それによって前記磁性体粒子を前記順路上における次の前記チャンバへ移動させる、請求項12又は13に記載の磁性体粒子操作方法。
【請求項15】
前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石が前記デバイスの前記主面に沿って前記流路方向の同じ方向へ複数回にわたって通過するように、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って回転させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って回転させる、請求項14に記載の磁性体粒子操作方法。
【請求項16】
前記第1の円周上の複数の位置にそれぞれ前記操作用磁石が配置されており、
前記配置するステップにおいて、前記第1の円周上に配列された複数の前記操作用磁石にそれぞれ対応する前記第2の円周上の複数の位置にそれぞれ前記デバイスを配置し、
前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記第2の円周上に配列された複数の前記デバイスを同時に前記第2の円周に沿って同じ方向へ前記磁性体粒子に対して相対的に移動させ、それによって、前記第2の円周上に配置された複数の前記デバイス内の前記磁性体粒子を前記第1の円周上に配置された複数の前記操作用磁石を用いて同時に操作する、請求項15に記載の磁性体粒子操作方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体粒子操作装置及び磁性体粒子操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプル中の特定の成分を精製・抽出する方法として、磁気ビーズ(以下、磁性体粒子ともいう)を用いた磁気ビーズ法(Solid-phase extraction)が知られている。磁気ビーズ法は、可磁化物質(γFe、Feなど)を含有する高分子ポリマー粒子(磁性体粒子)に目的成分を保持させ、磁性体粒子を磁石によって所定の試薬内で操作することにより、目的成分の精製及び抽出を行なう方法である。磁気ビーズ法の基本的な操作は以下の通りである。
【0003】
まず、血液、組織成分、培養上澄み液などの生物学的サンプルを調製し、そのサンプルに磁性体粒子を加えて混和する。サンプルに加えられる磁性体粒子は、細胞、微生物、タンパク質、核酸などの目的成分に対して特異的な抗体やタンパク質などが表面に結合されているものである。これにより、サンプル中の目的成分が磁性体粒子によって保持される。
【0004】
その後、サンプル及び磁性体粒子が収容されている容器に外部から磁石を近づけ、磁性体粒子を磁石へ引き付けて容器内に保持しながら、懸濁液を容器から除去する。容器内に洗浄液などの試薬を加えて混和した後、磁石によって磁性体粒子を容器内に保持しながら洗浄液を容器から除去する。この洗浄液による目的成分の洗浄を繰り返した後、目的成分を溶解する性質をもつ溶出液を容器内に加えて混和し、目的成分を磁性体粒子から離脱させる。そして、磁石によって磁性体粒子を容器内に保持しながら、目的成分を含む溶出液を容器から取り出す。
【0005】
上記の磁気ビーズ法では、容器への洗浄液の供給と排出を繰り返す必要があり、作業が煩雑である上、目的成分を抽出するまでの作業を自動化することが難しいという問題があった。そこで、カラム型又はチップ型のデバイスを用いることが提案されている(特許文献1、2参照)。このようなデバイスを用いれば、核酸などの目的成分の精製をデバイス内で完結させることができ、磁気ビーズ法を効率的かつ簡易的に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2012/086243A1
【文献】WO2016/121102A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な構造のデバイスを用いて目的成分の抽出をより効率的かつ簡易的に行なうことができるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁性体粒子操作装置は、主面を有する板状のデバイスであって、前記デバイスの主面に沿い、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有する流路が形成されているデバイスと、前記流路内に収容される磁性体粒子と、前記磁性体粒子に対して磁力を作用させるための操作用磁石と、前記板状部材の前記主面に沿って、前記デバイスに対して相対的に前記操作用磁石を移動させる移動機構と、を備え、前記流路は、前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿って複数の位置に設けられ、それぞれ液体が収容されたチャンバと、前記順路上で互いに隣り合う2つの前記チャンバの間に設けられ、ゲル状体を収容する隔離部を備える。
【0009】
本発明に係る磁性体粒子操作方法は、板状のデバイスの内部において磁性体粒子を操作する磁性体粒子操作方法であって、前記デバイスは、前記デバイスの主面に沿い、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有する流路が形成されており、前記流路は、前記流路を前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿った複数の位置にそれぞれ液体を収容するチャンバが設けられているものであり、操作用磁石を用いて前記流路内の磁性体粒子に磁力を作用させ、前記磁性体粒子が前記流路の前記主面に対して交差する内面に接触するように、前記操作用磁石を前記主面に沿って前記デバイスに対して相対的に移動させ、前記内面を前記磁性体粒子に対して平面カムとして機能させ、前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ誘導するステップと、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ向かわせるように、前記操作用磁石を前記主面に沿って前記デバイスに対して相対的に移動させ、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ導入するステップと、をその順に備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る磁性体粒子操作装置では、第1端及び第2端を有するとともに途中に折返し部を有する流路が内部に形成されている新規な構造のデバイスを用い、そのデバイスの主面に沿って操作用磁石をデバイスに対して相対的に移動させるだけで、デバイス内の磁性体粒子を操作することができる。これにより、目的成分の抽出を効率的かつ簡易的に行なうことができる。
【0011】
本発明に係る磁性体粒子操作方法では、第1端及び第2端を有するとともに途中に折返し部を有する流路が内部に形成されている新規な構造のデバイスを用い、操作用磁石をデバイスの主面に沿って相対的に移動させるだけで、所定の順路に沿って設けられている各チャンバへ磁性体粒子を導入することができるので、目的成分の抽出を効率的かつ簡易的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】磁性体粒子操作装置の位置実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の磁性体粒子操作装置のデバイスに形成されている流路の一例を示す、流路の平面図である。
図3】同流路の構造を説明するための概念図である。
図4】同流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図5図4の状態から操作用磁石を流路方向の負方向へ移動させたときの、流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図6図5の状態から操作用磁石をさらに流路方向の負方向へ移動させたときの、流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図7図6の状態から操作用磁石をさらに流路方向の負方向へ移動させたときの、流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図8図7の状態から操作用磁石を流路方向の正方向へ移動させたときの、流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図9図8の状態から操作用磁石をさらに流路方向の正方向へ移動させたときの、流路内での磁性体粒子の状態を示す図である。
図10】デバイスに形成される流路の変形例を示す、流路の平面図である。
図11】同流路に沿って図10の初期状態から操作用磁石を流路方向へ2往復させたときの状態を示す、流路の平面図である。
図12】同流路に沿って図11の状態から操作用磁石を流路方向へ1往復させたときの状態を示す、流路の平面図である。
図13】デバイスに形成される流路のさらなる変形例を示す、流路の平面図である。
図14】デバイスを円周に沿って移動させる移動機構の一例を示す平面図である。
図15】デバイスに形成される流路のさらなる変形例を示す、流路の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る磁性体粒子操作装置及び磁性体粒子操作方法の実施形態について説明する。
【0014】
磁性体粒子操作装置1は、デバイス2、操作用磁石4及び移動機構6を備えている。デバイス2は、主面を有する板状部材8の内部に磁性体粒子を移動させるための流路10が内部に設けられ、流路10内へサンプルを導入するための導入口12、流路10から目的成分を取り出すための抽出口14がそれぞれ板状部材8の主面に設けられたものである。デバイス2の流路10板状部材8の主面に対して平行に設けられているである。
【0015】
磁性体粒子操作装置1は、後述するようにサンプルから夾雑物を取り除き、核酸などの目的成分を精製するための目的成分精製装置(目的成分抽出装置)として機能してよい。
【0016】
操作用磁石4は、流路10の流路方向に対して交差する(図では直交している)方向へ延びるように設けられている。操作用磁石4は、流路10の流路方向に対して交差する方向へ延びる棒状の磁石であってもよいし、複数の磁石が流路10の流路方向に対して交差する方向へ直線状に配列されて構成されたものであってもよい。
【0017】
移動機構6は、操作用磁石4がデバイス2の主面に沿って流路10の流路方向へデバイス2とは相対的に移動するように、デバイス2及び/又は操作用磁石4を流路10の流路方向へ移動させるように構成されている。
【0018】
デバイス2内の流路10の構造について、図2を用いて説明する。
【0019】
流路10は第1端10S及び第2端10Eを有する。そして、流路10は、第1端10Sから第2端10Eへ向かう破線矢印で示されたジグザグ状の順路が実質的に形成されるように、流路方向の反対側への折返し部を複数有する。流路10は、第1端10S、各折返し部、第2端10Eの各位置にそれぞれ、液を収容するためのチャンバ16-1から16-6を備えている。流路10は、順路上において互いに隣り合うチャンバの間を連通させる流路列20-1~20-6を備えている。流路列20-1はチャンバ16-1の出口流路であり、流路列20-2~20-5はそれぞれチャンバ16-2~16-5の出入口流路であり、流路20-6はチャンバ16-6の入口流路である。流路列20-1~20-6の流路方向は、デバイス2の主面に沿った一方向(図において左右方向)である。さらに、流路10は、流路列20-1~20-6の流路方向の正側(図において右側)に設けられているチャンバ16-1、16-3及び16-5と流路方向の負側(図において左側)に設けられているチャンバ16-2、16-4及び16-6-との間に、各チャンバ内に収容された液を互いに隔離するためのゲルが配置された隔離部18を備えている。すなわち、流路10は、破線で示された順路を直線的に描いたときに、図3に示されているように、各チャンバ16-1から16-6が互いの間に隔離部18を挟んで順路に沿って配列された構成を備えている。
【0020】
チャンバ16-1の出口流路20-1とチャンバ16-2の出入口流路20-2、チャンバ16-2の出入口流路20-2とチャンバ16-3の出入口流路20-3、チャンバ16-3の出入口流路20-3とチャンバ16-4の出入口流路20-4、チャンバ16-4の出入口流路20-4とチャンバ16-5の出入口流路20-5、チャンバ16-5の出入口流路20-5とチャンバ16-6の入口流路20-6はそれぞれ、デバイス2の主面側からみて流路方向に対して直交する方向にずれた位置に設けられている。そして、流路10の内面(又は内壁)の一部は、流路10の内部において流路方向へ移動する磁性体粒子に対して平面カムとして機能し、磁性体粒子を順路における次のチャンバへ導くように、デバイス2の主面側から見て流路方向に対して傾斜している。これにより、流路10は、操作用磁石4を流路方向へデバイス2に対して一次元的に相対移動させるだけで、流路10の内部の磁性体粒子を流路10の順路に沿ってチャンバ16-1から16-6へ順に導入することができるように構成されている。
【0021】
この実施例では、チャンバ16-2は、導入口12が通じてサンプルが導入されるサンプル導入チャンバである。チャンバ16-1は、初期状態において、磁性体粒子22が金属体24(例えば、鉄球)とともに収容される磁性体粒子収容チャンバである(図4参照)。チャンバ16-3及び16-4は、サンプル中の目的成分の精製を行なうための洗浄液が収容された洗浄液チャンバである。チャンバ16-5は、目的成分を溶解させて磁性体粒子から離脱させる性質を有する抽出液が収容された抽出液チャンバである。チャンバ16-6は、目的成分が離脱した磁性体粒子を収容して回収するための磁性体粒子回収チャンバである。
【0022】
図4から図9を用いて、デバイス2の流路10内における磁性体粒子の動きについて説明する。
【0023】
図4に示されているように、チャンバ16-1内に収容された金属体24の位置に操作用磁石4を配置すると、金属体24が磁化され、磁化された金属体24に磁性体粒子22が引き付けられる。金属体24をチャンバ16-1内で流路方向へ移動させることにより、チャンバ16-1内に収容されている磁性体粒子22が金属体24の周囲に回収される。
【0024】
図4の状態から、流路方向の負側(図において左側)へ操作用磁石4を金属体24が追従する速度で移動させると、図5に示されているように、チャンバ16-1の流路方向に対して傾斜した内面17に金属体24及び磁性体粒子22の集合体が接触し、その内面17が平面カムとして機能することにより、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-1の出口流路20-1へ導かれる。
【0025】
図5の状態から、流路方向の負側(図において左側)へ操作用磁石4を金属体24が追従する速度でさらに移動させると、図6に示されているように、隔離部18の流路方向に対して傾斜した内面19に金属体24及び磁性体粒子22の集合体が接触し、その内面19が平面カムとして機能することにより、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-2の出入口流路20-2へ導かれる。そして、操作用磁石4をさらに流路方向の負側へ移動させると、図7に示されているように、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-2内に導入される。
【0026】
目的成分を含むサンプルが収容されたチャンバ16-2内で、磁性体粒子22が追従できないような速度で金属体24を動作させると、磁性体粒子22がチャンバ16-2内に分散し、磁性体粒子22の表面に目的成分(例えば、核酸)が吸着する。その後、金属体24をチャンバ16-2内でゆっくりと移動させることにより、目的成分を保持した磁性体粒子22が金属体24の周囲に引き付けられて回収される。
【0027】
その後、流路方向の正側(図において右側)へ操作用磁石4を金属体24が追従する速度で移動させると、図8に示されているように、隔離部18の流路方向に対して傾斜した内面19に金属体24及び磁性体粒子22の集合体が接触し、その内面19が平面カムとして機能することにより、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-3の出入口流路20-3へ導かれる。そして、操作用磁石4をさらに流路方向の正側へ移動させると、図9に示されているように、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-3内に導入される。
【0028】
洗浄液が収容されているチャンバ16-3内で、磁性体粒子22が追従できないような速度で金属体24を動作させると、磁性体粒子22がチャンバ16-2内に分散し、磁性体粒子22に吸着した目的成分以外の成分が磁性体粒子22から離脱する。その後、金属体24をチャンバ16-3内でゆっくりと移動させることにより、磁性体粒子22が金属体24の周囲に引き付けられて回収される。
【0029】
チャンバ16-3での洗浄動作以後の動作については図示していないが、金属体24及び磁性体粒子22の集合体を引き付けた操作用磁石4を流路方向の負側(図において左側)へ移動させることによって、隔離部18の内面19が金属体24及び磁性体粒子22の集合体に対して平面カムとして機能し、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-4へ導入される。チャンバ16-4内では、チャンバ16-3内での洗浄動作と同様の洗浄動作を行なうことができる。
【0030】
チャンバ16-4内での洗浄動作が終了した後、金属体24の周囲に磁性体粒子22を引き付けた状態で、操作用磁石4を流路方向の正側へ移動させることにより、隔離部18の内面19が金属体24及び磁性体粒子22の集合体に対して平面カムとして機能し、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-5に導入される。
【0031】
抽出液が収容されているチャンバ16-5内で、磁性体粒子22が追従できないような速度で金属体24を動作させると、磁性体粒子22がチャンバ16-5内に分散し、磁性体粒子22に吸着した目的成分が磁性体粒子22から離脱し、抽出液中に遊離する。金属体24をチャンバ16-3内でゆっくりと移動させることにより、磁性体粒子22が金属体24の周囲に引き付けられて回収される。
【0032】
その後、金属体24及び磁性体粒子22の集合体を引き付けた操作用磁石4を流路方向の負側(図において左側)へ移動させることにより、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-6内に導入される。結果として、チャンバ16-5内には、目的成分を含む抽出液のみが残るため、目的成分を含む抽出液のみを抽出口14を通じてデバイス2の外部へ取り出すことができる。
【0033】
デバイス2の流路10の構造は上述のものに限定されない。図10に示されているように、流路10に折返し部をより多く設けることによって、目的成分の回収率を向上させる機能をデバイス2に付加することもできる。図10の例では、流路10が第1端10Sから第2端10Eまでの順路上に、チャンバ16-1からチャンバ16-10が順に設けられている。チャンバ16-1は第1端10Sの位置に設けられ、チャンバ16-10は第2端10Eの位置に設けられ、チャンバ16-2から16-9は各折返し部の位置に設けられている。流路10の内面17、19は、図2に示した例と同様に、流路方向へ移動する金属体24及び磁性体粒子22の集合体に対して平面カムとして機能して、第1端10Sから第2端10Eへ向かう順路に沿って次のチャンバへ金属体24及び磁性体粒子22の集合体を導くように、デバイス2の主面側からみて流路方向に対して傾斜している。
【0034】
図10の例では、流路10の順路に沿って第1端10Sから数えて6つ目に配置されたチャンバ16-6がサンプル導入チャンバである。そして、チャンバ16-6の順路上における1つ上流にあるチャンバ16-5は、初期状態で、金属体24及び磁性体粒子22が収容される磁性体粒子収容チャンバである。流路10の順路においてチャンバ16-5よりも上流に位置するチャンバであって、チャンバ16-5と同じ流路方向の正側に配置された、すなわち、流路方向に対して直交しかつチャンバ16-5を通過する直線状に配置された2つのチャンバ16-3及び16-1はそれぞれ、金属体26及び28が収容された金属体収容チャンバである。チャンバ16-7及び16-8は洗浄液チャンバであり、チャンバ16-9は抽出液チャンバであり、チャンバ16-10は磁性体粒子回収チャンバである。
【0035】
チャンバ16-3及び16-1に収容されている金属体26及び28は、金属体24及び磁性体粒子22の集合体と同時に、操作用磁石4に追従して金属体24及び磁性体粒子22の後を追うように流路10内を移動する。図11に示されているように、金属体24及び磁性体粒子22の集合体がチャンバ16-9に導入されたときには、金属体26はチャンバ16-7に導入され、金属体28はチャンバ16-5に導入される。さらに、操作用磁石4を流路方向の負側(図において左側)へ移動させると、金属体24及び磁性体粒子22の集合体はチャンバ16-10に導入される。
【0036】
流路10の内面は、チャンバ16-10内の金属体24及び磁性体粒子22が、操作用磁石4による流路方向の正側への移動に伴ってチャンバ16-9へ戻ることを妨げる形状となっている。このため、金属体24及び磁性体粒子22がチャンバ16-10に導入された後で、操作用磁石4を流路方向の正側へ移動させると、図12に示されているように、金属体24及び磁性体粒子22がチャンバ16-10に回収され、金属体26がチャンバ16-9に導入され、金属体28がチャンバ16-7に導入された状態となる。このように、磁性体粒子22及び金属体24が最終的なチャンバ16-10に導入された後も、操作用磁石4を流路方向へ移動させることで、金属体26及び28を順に抽出液チャンバ16-9へ導入することができる。金属体26及び28は、金属体24及び磁性体粒子22の集合体と同じ経路で抽出液チャンバ16-9まで移動するため、抽出チャンバ16-9までの移動中に金属体24から離脱して移動経路上に残留した磁性体粒子22が金属体26及び28によって回収される。これにより、目的成分の回収率が向上する。
【0037】
また、以上において説明した流路10の構造では、折返し部に設けられているチャンバの入口と出口が共通であるが、図13に示されているように、流路10の折返し部に設けられているチャンバ16-2から16-5の入口と出口が別々に設けられていてもよい。
【0038】
図13の例では、チャンバ16-1の出口とチャンバ16-2の入口、チャンバ16-2の出口とチャンバ16-3の入口、チャンバ16-3の出口とチャンバ16-4の入口、チャンバ16-4の出口とチャンバ16-5の入口、チャンバ16-5の出口とチャンバ16-6の入口がそれぞれ、流路方向に対して平行な同一直線状に配置されている。
【0039】
チャンバ16-2から16-5のそれぞれの端面は、磁性体粒子(及び金属体の集合体)を出口へ導くように流路方向に対して傾斜している。チャンバ16-2を例に説明すると、チャンバ16-2の流路方向負側の端面が、デバイス2の主面側からみて流路方向に対して傾斜している。チャンバ16-2内の磁性体粒子をチャンバ16-3へ移動させる際に、磁性体粒子がチャンバ16-2内の端面に接触するように、操作用磁石4を流路方向の負側へ移動させと、チャンバ16-2の端面が流路方向の負側へ移動する磁性体粒子に対して平面カムとして機能し、磁性体粒子がチャンバ16-2の出口及びチャンバ16-3の入口を通過する流路方向に平行な直線上に配置される。その後、操作用磁石4を流路方向の正側へ移動させることにより、磁性体粒子がチャンバ16-3へ導かれる。磁性体粒子をチャンバ16-3からチャンバ16-4へ、チャンバ16-4からチャンバ16-5へ、及び、チャンバ16-5からチャンバ16-6へ移動させる際も同様である。
【0040】
なお、図13の例では、チャンバ16-1とチャンバ16-2の間、チャンバ16-2とチャンバ16-3の間、チャンバ16-3とチャンバ16-4の間、チャンバ16-4とチャンバ16-5の間、及び、チャンバ16-5とチャンバ16-6の間の隔離部18が、ゲルの充填を容易にするために互いに連通しているが、必ずしも各隔離部18が互いに連通していなくてもよい。
【0041】
また、図15に示されているように、流路10のチャンバ16-1~16-6は幅広形状に設けられている必要はない。この場合、チャンバ16-1~16-6には、流路方向に対して傾斜した内面は設けられない。
【0042】
図14は、デバイス2と操作用磁石4とを互いに相対的に移動させる移動機構6の一例を示している。複数の操作用磁石4が第1の円周上に配列されている。移動機構6は、第1の円周と同一の中心軸及び同一の半径を有する第2の円周上にデバイス2を配置させ、配置されたデバイス2を第2の円周に沿って移動させる回転テーブルによって実現されている。
【0043】
デバイス2は、第2の円周の接線方向がデバイス2に設けられている流路10の主要な流路方向に対して略平行となるように配置される。このような構成にすることで、回転テーブル6を回転させるだけで、操作用磁石4を流路10の流路方向へデバイス2の主面に沿ってデバイス2に対して相対的に移動させることができる。さらには、図14のように、第1の円周上に配列された操作用磁石4のそれぞれに対応して複数のデバイス2を第2の円周上に配置し、それらのデバイス2を回転テーブル6によって同時に移動させることで、複数のデバイス2内での磁性体粒子の操作を同時に実行することができる。
【0044】
また、デバイス2内において磁性体粒子を次のチャンバへ移動させる際に、操作用磁石4が複数回にわたって同じ方向へデバイス2を横切るように、回転テーブル6を回転させることで、操作用磁石4による1度の操作では次のチャンバに導入できなかった磁性体粒子を確実に次のチャンバへ導入することができ、結果として、目的成分の回収率が向上する。
【0045】
なお、図14の例では、操作用磁石4の位置が固定され、デバイス2のみが第2の円周に沿って移動するように構成されているが、デバイス2の位置が固定され、操作用磁石4のみが第1の円周に沿って移動するように構成されていてもよいし、デバイス2及び操作用磁石4の両方がそれぞれ第2の円周及び第1の円周に沿って移動するように構成されていてもよい。
【0046】
また、図14の例のように、デバイス2と操作用磁石4との相対移動方向が円周方向である場合、デバイス2の流路10を湾曲させて流路10の流路方向を前記相対移動方向と一致させてもよい。
【0047】
以上において説明した実施例は、本発明の実施形態の例示に過ぎない。本発明に係る磁性体粒子操作装置及び磁性体粒子操作方法の実施形態は、以下に示すとおりである。
【0048】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の実施形態では、主面を有する板状のデバイスであって、前記デバイスの主面に、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有する流路が形成されているデバイスと、前記流路内に収容される磁性体粒子と、前記磁性体粒子に対して磁力を作用させるための操作用磁石と、前記デバイスの前記主面に沿って、前記デバイスに対して相対的に前記操作用磁石を移動させる移動機構と、を備え、前記流路は、前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿って複数の位置に設けられ、それぞれ液体が収容されたチャンバと、前記順路上で互いに隣り合う2つの前記チャンバの間に設けられ、ゲル状体を収容する隔離部を備える。
【0049】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の上記実施形態の第1態様では、前記流路は、前記順路において互いに隣り合う2つのチャンバ間を接続する複数の流路列を有し、前記移動機構は前記操作用磁石を前記流路列の流路方向に沿って移動させるものである。
【0050】
上記第1態様において、前記流路は、前記流路内を前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子に対して平面カムとして機能するように前記流路方向に対して傾斜して伸び、前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子を、前記順路上の次の前記チャンバへ誘導する内面を有するものであってよい。これにより、前記操作用磁石を前記流路方向へ移動させるだけで、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ移動させることができ、前記移動機構の構成を簡単なものとすることができる。
【0051】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の上記実施形態の第1態様では、前記流路は、前記平面カムとして機能する内面を前記隔離部に備えている。
【0052】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の上記実施形態の第2態様では、前記流路は、前記平面カムとして機能する内面を前記チャンバ内に備えている。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0053】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の上記実施形態の第3態様では、前記チャンバの1つはサンプルが導入されるサンプル導入チャンバであり、前記流路の前記順路における前記サンプル導入チャンバよりも下流に設けられている少なくとも1つの前記チャンバは、前記サンプル中の目的成分の精製を行なうための洗浄液を収容する洗浄液チャンバであり、前記流路の前記順路における前記洗浄液チャンバよりもさらに下流に設けられている前記チャンバの1つは、前記目的成分を溶解させて前記磁性体粒子から前記目的成分を離脱させる性質をもつ抽出液を収容する抽出液チャンバである。このような態様により、サンプル導入チャンバに導入されたサンプル中の目的成分を洗浄液チャンバにおいて他の成分から分離し、抽出液チャンバにおいて磁性体粒子から離脱させて回収することができる。なお、この第3態様は、上記第1態様及び第2態様と自由に組み合わせることができる。
【0054】
上記第3態様の第1具体例として、前記流路の前記順路における前記抽出液チャンバよりもさらに下流に設けられている前記チャンバが、前記抽出液チャンバにおいて前記目的成分が離脱した前記磁性体粒子を回収するための磁性体粒子回収チャンバである例が挙げられる。これにより、前記抽出液チャンバに目的成分を含む抽出液のみを存在させることができ、目的成分の抽出が容易になる。
【0055】
また、上記第3態様の第2具体例として、前記流路の前記順路における前記サンプル導入チャンバよりも上流に設けられている前記チャンバの1つを、初期状態において、前記目的成分を保持していない前記磁性体粒子が収容される磁性体粒子収容チャンバとすることができる。このように、磁性体粒子収容チャンバを設けることで、目的成分を磁性体粒子に吸着させる処理もデバイス内において行なうことができる。この第2具体例は、上記第1具体例と組み合わせることができる。
【0056】
上記第2具体例では、前記初期状態において、前記磁性体粒子収容チャンバに、前記磁性体粒子を引き付けながら前記操作用磁石に追従して前記流路内を移動する金属体が収容されていてもよい。これにより、操作用磁石の動作に磁性体粒子を追従させやすくなる。
【0057】
上記の場合、前記流路は、前記流路方向に対して交差しかつ前記磁性体粒子収容チャンバを通過する直線上に、前記流路の前記順路において前記磁性体粒子収容チャンバよりも上流に位置する少なくとも1つの金属体収容チャンバを備え、前記金属体収容チャンバに前記初期状態において前記金属体が収容されていてもよい。これにより、磁性体粒子の移動の際に、操作用磁石によって金属体を磁性体粒子の後を追うように流路内で移動させることができるので、操作用磁石に追従しきれずに移動経路上に残留した磁性体粒子を金属体によって回収することができる。その結果、目的成分の回収率が向上する。
【0058】
本発明に係る磁性体粒子操作装置の上記実施形態の第4態様では、前記操作用磁石は第1の円周上に設けられており、前記移動機構は、前記第1の円周と同一の中心軸及び半径を有する第2の円周上に、前記流路方向が前記第2の円周の接線方向に対して略平行となるように前記デバイスを配置させ、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って移動させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って移動させるものである。このような態様により、回転運動だけでデバイスと操作用磁石との相対移動を実現ことができ、移動機構の構成が簡単である。また、回転運動は無限軌道を描くため、操作用磁石がデバイスを同じ方向へ複数回にわたって横切るように相対移動を行なうことができ、磁性体粒子をより確実に移動させることができる。この第4態様は、上記第1態様から第3態様と自由に組み合わせることができる。
【0059】
上記第4態様の一具体例として、前記移動機構は、前記第2の円周上に複数の前記デバイスを配列させ、すべての前記デバイスを同時に前記第2の円周に沿って同じ方向へ前記操作用磁石に対して相対的に移動させるものであり、前記第1の円周上の複数の位置に、前記第2の円周上に配列される複数の前記デバイスにそれぞれ対応する前記操作用磁石が設けられている態様が挙げられる。このような態様により、複数のデバイス内での磁性体粒子の操作を同時並行的に行なうことができる。
【0060】
本発明に係る磁性体粒子操作方法の実施形態は、デバイスの内部において磁性体粒子を操作する磁性体粒子操作方法であって、前記デバイスは、第1端及び第2端を有するとともに少なくとも1つの折返し部を有し、主要な流路方向が前記主面に対して平行な一方向である流路が形成されており、前記流路を前記第1端から前記第2端へ向かう順路に沿って複数のチャンバが存在するように、前記折返し部を含む前記流路上の複数の位置に前記チャンバを備えているものであり、操作用磁石を用いて前記流路内の磁性体粒子に磁力を作用させ、前記磁性体粒子が前記流路の前記主面に対して交差する内面に接触するように、前記操作用磁石を前記主面に沿って前記流路方向へ前記デバイスに対して相対的に移動させ、前記内面を前記磁性体粒子に対して平面カムとして機能させ、前記流路方向へ移動する前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ誘導するステップと、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ向かわせるように、前記操作用磁石を前記流路方向へ移動させ、前記磁性体粒子を前記順路上の次の前記チャンバへ導入するステップと、をその順に備えている。
【0061】
本発明に係る磁性体粒子操作方法の上記実施形態の第1態様では、前記磁性体粒子を引き付けながら前記操作用磁石に追従して前記流路内を移動する複数の金属体を、前記流路の前記順路上において互いに間隔をもって配置し、前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石によって前記複数の金属体を同時に前記流路方向へ移動させる。このような態様により、流路の順路において磁性体粒子よりも下流に配置された金属体を、磁性体粒子の後を追うように流路内で移動させることができ、操作用磁石に追従しきれずに移動経路上に残存した磁性体粒子を、後から追ってきた金属体によって回収することができる。その結果、目的成分の回収率を向上させることができる。
【0062】
本発明に係る磁性体粒子操作方法の上記実施形態の第2態様では、前記誘導するステップよりも前に、第1の円周上に前記操作用磁石を配置し、前記第1の円周と同一の中心軸及び半径を有する第2の円周上に、前記流路方向が前記第2の円周の接線方向に対して略平行となるように前記デバイスを前記第2の円周上に配置するステップを備え、前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って移動させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って移動させ、それによって前記磁性体粒子を前記順路上における次の前記チャンバへ移動させる。このような態様により、デバイスと操作用磁石の相対移動を回転運動のみによって実現することができる。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0063】
上記第2態様の第1具体例では、前記導入するステップにおいて、前記操作用磁石が前記デバイスの前記主面に沿って前記流路方向の同じ方向へ複数回にわたって通過するように、前記操作用磁石を前記第1の円周に沿って回転させ、及び/又は、前記デバイスを前記第2の円周に沿って回転させる。これにより、磁性体粒子をより確実に移動させることができる。
【0064】
上記第2態様の第2具体例では、前記第1の円周上の複数の位置にそれぞれ前記操作用磁石が配置されており、前記配置するステップにおいて、前記第1の円周上に配列された複数の前記操作用磁石にそれぞれ対応する前記第2の円周上の複数の位置にそれぞれ前記デバイスを配置し、前記誘導するステップ及び前記導入するステップにおいて、前記第2の円周上に配列された複数の前記デバイスを同時に前記第2の円周に沿って同じ方向へ前記磁性体粒子に対して相対的に移動させ、それによって、前記第2の円周上に配置された複数の前記デバイス内の前記磁性体粒子を前記第1の円周上に配置された複数の前記操作用磁石を用いて同時に操作する。これにより、複数のデバイス内での磁性体粒子の操作を同時並行的に行なうことができる。
【符号の説明】
【0065】
1 磁性体粒子操作装置
2 デバイス
4 操作用磁石
6 移動機構
8 板状部材
10 流路
10S 流路の第1端
10E 流路の第2端
12 導入口
14 抽出口
16-1~16-10 チャンバ
18 隔離部
22 磁性体粒子
24,26,28 金属体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15