(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】撮影漏れ検出装置、及び、撮影漏れ検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20230418BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230418BHJP
【FI】
G01N21/88 J
G06T7/00 610Z
(21)【出願番号】P 2019157868
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 悠介
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 英吾
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第3786885(EP,B1)
【文献】米国特許第11320386(US,B2)
【文献】国際公開第2018/168406(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/150872(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110279(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/105373(WO,A1)
【文献】特許第6441421(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 1/00-G06T 1/40
G06T 3/00-G06T 9/40
H04N 23/00
H04N 23/40-H04N 23/76
H04N 23/90-H04N 23/959
E01D 1/00-E01D 24/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら前記撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置を決定する位置決定部と、
前記複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が
前記撮影対象における損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出し、抽出された一対の部分画像のうち
前記撮影対象における損傷部分の画像を含む部分画像の外側に
前記撮影対象における損傷部分が連続していると推定される場合、
前記撮影対象における損傷部分が連続していると推定される前記部分画像の前記外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出し、前記撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、前記撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する撮影漏れ領域検出部と、
前記位置決定部で決定された位置に基づいて、前記広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する撮影漏れ報知部と、
を含む撮影漏れ検出装置。
【請求項2】
前記撮影漏れ報知部は、前記撮影漏れ領域の位置を前記広角画像内に矩形画像で表示する、
請求項1に記載の撮影漏れ検出装置。
【請求項3】
前記部分画像の上下左右の辺に沿った所定幅の端部領域内に
前記撮影対象における損傷部分の画像が存在する場合、前記部分画像の外側に
前記撮影対象における損傷部分が連続していると推定する、
請求項1または請求項2に記載の撮影漏れ検出装置。
【請求項4】
所定の可視特徴の画像を検出する特徴検出部をさらに含み、
前記撮影漏れ報知部は、前記撮影漏れ領域の位置を前記可視特徴との関係で表す情報を付加して報知する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の撮影漏れ検出装置。
【請求項5】
コンピュータが、
撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら前記撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置を決定し、
前記複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が
前記撮影対象における損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出し、抽出された一対の部分画像のうち
前記撮影対象における損傷部分の画像を含む部分画像の外側に
前記撮影対象における損傷部分が連続していると推定される場合、
前記撮影対象における損傷部分が連続していると推定される前記部分画像の前記外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出し、前記撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、前記撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出し、
決定された前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置に基づいて、前記広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する、
撮影漏れ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影漏れ検出装置、及び、撮影漏れ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物及び橋梁などの損傷状態の画像を撮影し、記録することは、安全管理において重要である。損傷状態を記録する際には、詳細な損傷状態が判別できる定量的な情報、及び、損傷部分の位置の情報を取得することが望まれる。例えば、橋梁の床板1パネル(6m×3m)から0.1mmの幅のひびわれを検出して記録する場合、1つの画像からこれら2つの情報を双方とも取得することは困難である。
【0003】
床板全体を1つの画像に含むように撮影すると、0.1mmの幅のひびわれを、当該画像において視認することはできないし、ひびわれを視認可能な画像から、ひびわれが床板全体のどの部分に存在するか知ることはできない。したがって、例えば、ひびわれを視認可能な画像を撮影する際に、ひびわれの位置を別途記録しておく、などの手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2018/168406号公報
【文献】特開2018-36226号公報
【文献】特開2017-211976号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】「画像特徴に基づくイメージモザイキング」、電子情報通信学会論文誌、Vol.J82-D-II、No.10、1999年10月、pp.1581-1589
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、床板全体を含む広角画像と、ひびわれが視認可能な部分画像と、をコンピュータで制御される移動体を使用して取得する技術が存在する。当該技術では、部分画像を合成することで、ひびわれが視認可能な分解能を確保した合成画像を撮影する。当該技術では、まず、広角画像を撮影し、のりしろを考慮した部分画像の撮影計画を立案する。部分画像を取得する際には、広角画像との対応付けを行うことで、現在の移動体の位置を取得すると共に、移動体は、部分画像を撮影するために次に移動する位置に関する情報を取得する。当該技術では、これにより、適切な分解能で、漏れなく床板全体の部分画像を撮影することができる。
【0007】
しかしながら、当該技術では、部分画像を取得する際に、コンピュータで制御される移動体を使用することが前提となる。
【0008】
本発明は、1つの側面として、簡易な装置で撮影対象における損傷部分の撮影漏れを検出することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの実施形態では、撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、複数の部分画像各々の広角画像に対する位置を決定する。複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出する。抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に損傷部分が連続していると推定される場合、損傷部分が連続していると推定される部分画像の外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出する。撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する。決定された位置に基づいて、広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、1つの側面として、簡易な装置で撮影対象における損傷部分の撮影漏れを検出することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】重複している部分画像の一例を示す概念図である。
【
図3】部分画像の撮影順序の一例を示す概念図である。
【
図4】撮影漏れ候補領域の一例を示す概念図である。
【
図5】撮影漏れ領域の報知の一例を示す概念図である。
【
図6】撮影漏れ検出処理の対象となる複数の部分画像の一例を示す概念図である。
【
図7】撮影漏れ検出処理の中間判定データの一例を示す表である。
【
図8】本実施形態の一例を示すハードウェア構成図である。
【
図9】第1実施形態の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態のシステム構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】第2実施形態の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して第1実施形態の一例を詳細に説明する。
【0013】
図1に例示する画像処理システム1は、撮像装置10、画像記憶装置20、撮影漏れ検出装置30及び表示装置40を含む。撮像装置10は、例えば、ユーザが手で保持して撮影する小型のデジタルカメラであってもよいし、スマートデバイスなどに内蔵されているカメラであってもよい。画像記憶装置20は、撮像装置10によって撮影される広角画像及び部分画像を記憶する。
【0014】
撮影漏れ検出装置30は、位置決定部31、損傷検出部32、撮影漏れ検出部33、及び撮影漏れ報知部34を含む。表示装置40は、例えば、液晶ディスプレイなどであってよいし、撮像装置10と一体化されている液晶ディスプレイであってもよい。画像記憶装置20は、撮像装置10及び撮影漏れ検出装置30に接続されている代わりに、撮像装置10に含まれていてもよいし、撮影漏れ検出装置30に含まれていてもよい。また、撮像装置10、画像記憶装置20、撮影漏れ検出装置30及び表示装置40は、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0015】
撮影漏れ検出装置30の位置決定部31は、広角画像における部分画像の各々の位置を決定する。広角画像は撮影対象全体を撮影した画像であり、撮影対象全体の範囲は、ユーザによって決定される。撮影対象は、例えば、橋梁の底部の所定の範囲の部分、ビルの壁部の所定の範囲の部分、及び、船舶の外装などであってよい。所定の部分画像は、撮影範囲をずらしながら撮影対象の一部分を順に撮影した画像である。一般に、損傷部分は、予め、目視で確認されており、部分画像は、損傷部分の詳細を知るためにユーザによって撮影される。
【0016】
広角画像における部分画像の各々の位置を決定するために、例えば、部分画像の各々と広角画像との間の射影変換行列であるホモグラフィ行列を算出する。ホモグラフィはアフィン変換の拡張である。これにより、広角画像と部分画像の各々との位置の対応が判明し、広角画像における部分画像の各々の位置を決定することができる。損傷検出部32は、部分画像の各々から損傷部分の画像の検出を行う。検出には、既存の手法を使用することができる。損傷は、例えば、ひびわれまたは汚損などであってよい。
【0017】
撮影漏れ検出部33は、(1)撮影した順序が連続する2つの部分画像に重複部分がなく、(2)損傷部分が部分画像の外側に延びており、(3)外側に延びている損傷部分を含む、当該2つの部分画像以外の部分画像が存在しない場合に、撮影漏れを検出する。部分画像の領域は矩形の領域となるので、矩形の4辺の各々に対応する4つの2変数1次連立不等式の解として、部分画像の領域を表すことができる。
図2に例示するように、2つの部分画像BGの各々の連立不等式に共通解が存在する場合は、(1)で重複部分が存在する、と判定する。
【0018】
撮影した順序が連続する2つの部分画像に着目するのは、
図3に例示するように、損傷部分DMが連続する形状を有し、また、作業効率の観点からも、撮影漏れ防止の観点からも、近接領域は連続して(
図2では、P1、P2、P3、P4の順で)撮影されるためである。近接領域を連続して撮影し、連続して撮影された2枚の画像が共通部分を含む場合、2枚の画像は重複している。一方、連続して撮影された2枚の画像が、共通部分を含まない場合、2枚の画像の間に撮影漏れ領域が存在するか、ユーザが意図的に撮影対象を変更した可能性がある。
【0019】
撮影漏れ領域が存在する場合、連続して撮影された2つの部分画像の少なくとも一方で、
図4に例示するように損傷部分DMが部分画像BGの外側に延びている可能性が高い。したがって、部分画像BGの外側の損傷部分が延びていると推定される領域TCを撮影漏れ候補領域とする。撮影漏れ候補領域の大きさ、及び、撮影漏れ領域の大きさは、部分画像と同様の大きさであってよい。
【0020】
詳細には、例えば、部分画像BGの画像端に、部分画像BGの上下左右の辺に沿ったN画素(Nは、所定の整数)の幅をもつ画像端領域EBを設ける。損傷部分の画像の少なくとも一部分が画像端領域EB内に存在する場合、(2)で当該損傷部分は部分画像の外側に延びている、と判定する。N画素は、例えば、部分画像の幅または高さの1/50~1/70程度の画素数であってよい。
【0021】
撮影漏れ検出部33は、撮影漏れ候補領域を含む部分画像の有無を調べる。詳細には、撮影漏れ候補領域の領域を表す連立不等式の解が、全ての部分画像の領域を表す連立不等式の解に含まれていない場合、当該撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する。
【0022】
撮影漏れ報知部34は、撮影漏れ領域をユーザに報知する。例えば、
図5に例示するように、撮影装置40の一例であるディスプレイ40’の画面上に広角画像WGを表示し、当該広角画像WG上に部分画像BGの各々と検出した損傷部分の画像DMと共に、撮影漏れ領域TCを破線矩形で表示する。なお、撮影漏れ領域TCの表示は一例であり、例えば、他の部分とは異なる色または明るさの矩形で撮影漏れ領域を表示するようにしてもよい。
【0023】
図6に、損傷部分DM1、DM2、及びDM3の順に、損傷部分に沿って撮影した部分画像P1~P14を例示する。
図7に、例示するように、部分画像P1及びP2、P2及びP3、P3及びP4、P4及びP5、P6及びP7、P8及びP9、P9及びP10、P10及びP11、P13及びP14の組合せA、B、C、D、F、H、I、J、Mでは、重複がある。即ち、組み合わせに含まれる2つの部分画像は重複している。したがって、組み合わせA、B、C、D、F、H、I、J、Mでは、撮影漏れは存在しない。
【0024】
部分画像P5及びP6、P7及びP8、P11及びP12、P12及びP13の組合せE、G、K、Lでは、重複がないため、即ち、組み合わせに含まれる2つの部分画像は重複していないため、撮影漏れが存在する可能性がある。また、組合せE、G、K、Lでは、部分画像の外側に延びる損傷部分が存在するため、まだ、撮影漏れが存在する可能性があり、部分画像の外側に延びる損傷部分の位置が撮影漏れ候補領域となる。
【0025】
しかしながら、組合せK及びLでは、撮影漏れ候補領域が他の部分画像の何れかに含まれているため、撮影漏れはない。一方、組合せEでは、撮影漏れ候補領域が他の部分画像の何れにも含まれていないため、撮影漏れ候補領域は撮影漏れ領域として検出される。また、組み合わせEにおいて、部分画像P5の外側に延びる損傷部分の位置、及び、部分画像P6の外側に延びる損傷部分の位置は、部分画像1つ分の大きさの領域、即ち、共通領域に存在する。この場合、撮影漏れ領域は、部分画像P5及びP6の双方に部分的に重複するように設定される。一方、組合せGでは、部分画像P7の外側に延びる損傷部分の位置、及び、部分画像撮影漏れ候補領域が他の部分画像の何れにも含まれていないため、撮影漏れ候補領域は撮影漏れ領域として検出される。
【0026】
撮影漏れ検出装置30は、一例として、
図8に示すように、CPU(Central Processing Unit)51、一次記憶部52、二次記憶部53、及び、外部インターフェイス54を含む。CPU51は、ハードウェアであるプロセッサの一例である。CPU51、一次記憶部52、二次記憶部53、及び、外部インターフェイス54は、バス59を介して相互に接続されている。
【0027】
一次記憶部52は、例えば、RAM(Random Access Memory)などの揮発性のメモリである。二次記憶部53は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性のメモリである。
【0028】
二次記憶部53は、プログラム格納領域53A及びデータ格納領域53Bを含む。プログラム格納領域53Aは、一例として、撮影漏れ検出プログラムなどのプログラムを記憶している。データ格納領域53Bは、一例として、撮影漏れ検出プログラムを実行している間に生成される中間データなどを記憶する。
【0029】
CPU51は、プログラム格納領域53Aから撮影漏れ検出プログラムを読み出して一次記憶部52に展開する。CPU51は、撮影漏れ検出プログラムをロードして実行することで、
図1の位置決定部31、損傷検出部32、撮影漏れ検出部33、及び、撮影漏れ報知部34として動作する。
【0030】
なお、撮影漏れ検出プログラムなどのプログラムは、外部サーバに記憶され、ネットワークを介して、一次記憶部52に展開されてもよい。また、撮影漏れ検出プログラムなどのプログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)などの非一時的記録媒体に記憶され、記録媒体読込装置を介して、一次記憶部52に展開されてもよい。
【0031】
外部インターフェイス54には外部装置が接続され、外部インターフェイス54は、外部装置とCPU51との間の各種情報の送受信を司る。
図8では、外部インターフェイス54に、画像記憶装置20の一例である外部記憶装置20’及び表示装置の一例であるディスプレイ40’が接続されている例を示している。また、外部記憶装置20’には、撮像装置10の一例であるカメラ10’が接続されている。
【0032】
しかしながら、外部記憶装置20’及びディスプレイ40’は、外部インターフェイス54に接続されていなくてもよいし、これらの内、何れか1つが外部インターフェイス54に接続されていてもよい。即ち、外部記憶装置20’及びディスプレイ40’の内、何れか1つまたは双方は、撮影漏れ検出装置30に内蔵されていてもよいし、ネットワークを介して、撮影漏れ検出装置30と離隔した位置に配置されていてもよい。
【0033】
撮影漏れ検出装置30は、パーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレットなどであってもよいし、例えば、クラウド上に存在してもよく、ネットワーク経由で画像記録装置20及び表示装置40と通信してもよい。
【0034】
図9に、撮影漏れ検出処理の流れの一例を示す。CPU51は、ステップ101で、外部記憶装置20’から広角画像及び複数の部分画像を取得する。CPU51は、ステップ102で、広角画像における複数の部分画像の各々の位置を決定する。
【0035】
CPU51は、ステップ103で、複数の部分画像の各々から損傷部分の画像を検出する。CPU51は、ステップ104で、連続して撮影された2つの部分画像の全ての組合せについて処理を完了したか否か判定する。ステップ104の判定が否定された場合、CPU51は、ステップ105で、2つの部分画像が重複しているか否か判定する。ステップ105の判定が否定された場合、CPU51は、ステップ106で、部分画像の外側に延びる損傷部分が存在するか否か判定する。
【0036】
ステップ106の判定が肯定された場合、CPU51は、ステップ107で、損傷部分が延びる部分画像の外側の位置の撮影漏れ候補領域が他の部分画像の何れかに含まれているか否か判定する。ステップ107の判定が否定された場合、CPU51は、ステップ108で、撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として記憶する。
【0037】
CPU51は、ステップ104に戻り、ステップ104~ステップ108の処理を繰り返す。ステップ105及び107で判定が肯定された場合、及び、ステップ106で判定が否定された場合も、ステップ104に戻る。ステップ104の判定が肯定された場合、CPU51は、ステップ109で、撮影漏れ領域を報知し、処理を終了する。
【0038】
コンピュータで制御された移動体を使用せずに、ユーザが損傷部分の詳細を表す部分画像を撮影する場合、撮影漏れが生じないように、画像を撮影することは困難である。撮影漏れが生じないように、撮影済みの画像を確認しながら、撮影を行うには長時間を要する。また、例えば、遠隔から焦点距離を長くして撮影する場合、カメラの向きが少しずれることにより、撮影範囲が大きくずれ、ユーザが意図した撮影位置が撮影されない。
【0039】
本実施形態では、撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、複数の部分画像各々の広角画像に対する位置を決定する。複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出する。抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に損傷部分が連続していると推定される場合、損傷部分が連続していると推定される部分画像の外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出する。撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する。決定された位置に基づいて、広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する。
【0040】
本実施形態では、コンピュータで制御された移動体で移動するような特別な撮像装置を使用することなく、市販の安価なデジタルカメラなどの簡易な装置で、損傷部分の状態と当該損傷部分の位置との情報を含む画像を取得することを可能とする。これにより、本実施形態では、簡易な装置で撮影対象における損傷部分の撮影漏れを検出することを可能とする。
【0041】
[第2実施形態]
以下、図面を参照して第2実施形態の一例を詳細に説明する。第1実施形態と同様の構成及び作用については、説明を省略する。
【0042】
図10に、第2実施形態の撮影漏れ検出システム2を例示する。第2実施形態の撮影漏れ検出システム2は、撮影漏れ検出装置30が、特徴検出部35を含む点で、第1実施形態の撮影漏れ検出システム1と相違する。
【0043】
特徴検出部35は、広角画像から人が容易に視認可能で、かつ、人が認識しやすい特徴的な可視特徴の画像を検出する。可視特徴は、ユーザが予め設定しておく。可視特徴は、例えば、損傷部分を目視で検査するユーザによってチョークで書かれた損傷部分の大きさを表す数字の画像、及び、損傷部分を検出する対象である橋梁に含まれるパネルの型枠の画像などであってよい。可視特徴の検出では、検出した可視特徴とその位置情報(例えば、可視特徴の外接矩形の4頂点)を記憶する。可視特徴の検出には既存の手法を使用することができる。
【0044】
特徴検出部35は、可視特徴と撮影漏れ領域との位置関係を求める。詳細には、まず、撮影漏れ領域から最も近い可視特徴を選択する。次に、例えば、撮影漏れ領域の重心と、選択した可視特徴の外接矩形の重心との距離が最短である可視特徴を選択する。次に、可視特徴に対する撮影漏れ領域の方向を求める。例えば、撮影漏れ領域の重心と選択された可視特徴の外接矩形の重心を結ぶ線分の画像上の傾きを算出する。
【0045】
特徴検出部35は、最後に、可視特徴と撮影漏れ領域との距離を求める。例えば、撮影漏れ領域の重心と選択された可視特徴の外接矩形の重心の画像上の距離を算出する。当該距離を可視特徴の外接矩形の幅で割り、当該距離が可視特徴の何倍であるかを算出してもよい。
【0046】
撮影漏れ報知部34は、全ての撮影漏れ領域をユーザに報知する。報知する際に、可視特徴との位置関係を併せて報知する。例えば、「チョーク文字『0.1』右側、『0.1』の幅×2離れた位置」、「右端からパネル型枠の1/4、上端からパネル型枠の1/3の位置」などと文字で表示してもよいし、簡単なイラストで表示してもよい。
【0047】
図11に、撮影漏れ検出処理の流れの一例を示す。CPU51は、ステップ110で、予め設定されている可視特徴を検出し、ステップ111で、撮影漏れ領域を報知する際に、可視特徴との位置の関連を併せて報知する。
【0048】
本実施形態では、撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、複数の部分画像各々の広角画像に対する位置を決定する。複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出する。抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に損傷部分が連続していると推定される場合、損傷部分が連続していると推定される部分画像の外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出する。撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する。決定された位置に基づいて、広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する。
【0049】
また、本実施形態では、撮影漏れ領域の位置を可視特徴との関係で表す情報を付加して報知する。本実施形態によれば、これにより、報知された撮影漏れ領域に基づいて再撮影を行う際に、可視特徴に対応する特徴を確認することで、撮影位置の決定を容易に行うことが可能となる。
【0050】
なお、
図9及び
図11のフローチャートは一例であり、処理の順序は適宜変更可能である。
【0051】
以上の各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0052】
(付記1)
撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら前記撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置を決定する位置決定部と、
前記複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出し、抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定される場合、前記損傷部分が連続していると推定される前記部分画像の前記外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出し、前記撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、前記撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出する撮影漏れ領域検出部と、
前記位置決定部で決定された位置に基づいて、前記広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する撮影漏れ報知部と、
を含む撮影漏れ検出装置。
(付記2)
前記撮影漏れ報知部は、前記撮影漏れ領域の位置を前記広角画像内に矩形画像で表示する、
付記1の撮影漏れ検出装置。
(付記3)
前記部分画像の上下左右の辺に沿った所定幅の端部領域内に前記損傷部分の画像が存在する場合、前記部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定する、
付記1または付記2の撮影漏れ検出装置。
(付記4)
所定の可視特徴の画像を検出する特徴検出部をさらに含み、
前記撮影漏れ報知部は、前記撮影漏れ領域の位置を前記可視特徴との関係で表す情報を付加して報知する、
付記1~付記3の何れかの撮影漏れ検出装置。
(付記5)
コンピュータが、
撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら前記撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置を決定し、
前記複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出し、抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定される場合、前記損傷部分が連続していると推定される前記部分画像の前記外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出し、前記撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、前記撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出し、
決定された前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置に基づいて、前記広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する、
撮影漏れ検出方法。
(付記6)
前記撮影漏れ領域の位置を前記広角画像内に矩形画像で表示する、
付記5の撮影漏れ検出方法。
(付記7)
部分画像の上下左右の辺に沿った所定幅の端部領域内に前記損傷部分の画像が存在する場合、前記部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定する、
付記5または付記6の撮影漏れ検出方法。
(付記8)
所定の可視特徴の画像を検出し、
前記撮影漏れ領域の位置を前記可視特徴との関係で表す情報を付加して報知する、
付記5~付記7の何れかの撮影漏れ検出方法。
(付記9)
撮影対象全体を撮影した広角画像、及び各々の撮影範囲をずらしながら前記撮影対象の一部分を順に撮影した複数の部分画像に基づいて、前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置を決定し、
前記複数の部分画像の中から撮影した順が連続し、重複する部分を有さず、かつ少なくとも一方が損傷部分の画像を含む一対の部分画像を抽出し、抽出された一対の部分画像のうち損傷部分の画像を含む部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定される場合、前記損傷部分が連続していると推定される前記部分画像の前記外側の位置を撮影漏れ候補領域として検出し、前記撮影漏れ候補領域が他の部分画像に含まれていない場合、前記撮影漏れ候補領域を撮影漏れ領域として検出し、
決定された前記複数の部分画像各々の前記広角画像に対する位置に基づいて、前記広角画像における撮影漏れ領域に対応する位置を報知する、
撮影漏れ検出処理をコンピュータに実行させるプログラム。
(付記10)
前記撮影漏れ領域の位置を前記広角画像内に矩形画像で表示する、
付記9のプログラム。
(付記11)
部分画像の上下左右の辺に沿った所定幅の端部領域内に前記損傷部分の画像が存在する場合、前記部分画像の外側に前記損傷部分が連続していると推定する、
付記9または付記10のプログラム。
(付記12)
所定の可視特徴の画像を検出し、
前記撮影漏れ領域の位置を前記可視特徴との関係で表す情報を付加して報知する、
付記9~付記11の何れかのプログラム。
【符号の説明】
【0053】
10 撮像装置
30 撮影漏れ検出装置
31 位置決定部
32 損傷検出部
33 撮影漏れ検出部
34 撮影漏れ報知部
35 特徴検出部
40 表示装置
51 CPU
52 一次記憶部
53 二次記憶部