IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許-自覚式検眼装置 図1
  • 特許-自覚式検眼装置 図2
  • 特許-自覚式検眼装置 図3
  • 特許-自覚式検眼装置 図4
  • 特許-自覚式検眼装置 図5
  • 特許-自覚式検眼装置 図6
  • 特許-自覚式検眼装置 図7
  • 特許-自覚式検眼装置 図8
  • 特許-自覚式検眼装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】自覚式検眼装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
A61B3/028
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019159900
(22)【出願日】2019-09-02
(65)【公開番号】P2021037042
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】立花 献
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042760(JP,A)
【文献】特開2018-047050(JP,A)
【文献】特開平08-266465(JP,A)
【文献】特開2018-047049(JP,A)
【文献】特開2019-063238(JP,A)
【文献】特開2019-069049(JP,A)
【文献】特開2010-259495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の左眼と右眼に視標を呈示する視標呈示手段を有し、前記左眼と前記右眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、
前記左眼及び前記右眼に前記視標を呈示した状態における、前記左眼及び前記右眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、
前記前眼部画像に基づいて、前記左眼と前記右眼の眼位情報を取得する眼位情報取得手段と、
前記左眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第1画像と、前記右眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第2画像と、を含む融像画像であって、前記左眼及び前記右眼で前記視標を観察した場合における両眼での見え方を示す融像画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記表示制御手段は、前記眼位情報に基づいて、前記第1画像と前記第2画像との位置関係を設定した前記融像画像を前記表示手段に表示し、前記左眼及び前記右眼による融像状態を把握可能とすることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項2】
請求項1の自覚式検眼装置において、
前記表示制御手段は、前記第1画像と、前記第2画像と、の少なくともいずれかの透過率を変更した前記融像画像を、前記表示手段に表示させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項3】
請求項1または2の自覚式検眼装置において、
前記表示制御手段は、前記第1画像と前記第2画像とを識別可能な前記融像画像を、前記表示手段に表示させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項4】
請求項1~3の自覚式検眼装置において、
前記表示制御手段は、前記左眼で観察された前記視標に前記第1画像が対応し、前記右眼で観察された前記視標に前記第2画像が対応することを識別可能な前記融像画像を、前記表示手段に表示させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの自覚式検眼装置において、
前記表示制御手段は、前記融像画像とともに、前記第1画像及び前記第2画像が位置する基準位置であって、前記左眼と前記右眼の前記融像状態が良好とされる基準位置を、前記表示手段に表示させることを特徴とする自覚式検眼装置。
【請求項6】
被検者の左眼と右眼に視標を呈示する視標呈示手段を有し、前記左眼と前記右眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、
前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、
前記左眼及び前記右眼に前記視標を呈示した状態における、前記左眼及び前記右眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得ステップと、
前記前眼部画像に基づいて、前記左眼と前記右眼の眼位情報を取得する眼位情報取得ステップと、
前記左眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第1画像と、前記右眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第2画像と、を含む融像画像であって、前記左眼及び前記右眼で前記視標を観察した場合における両眼での見え方を示す融像画像を表示手段に表示させる表示制御ステップと、
を前記自覚式検眼装置に実行させ、
前記表示制御ステップは、前記眼位情報に基づいて、前記第1画像と前記第2画像との位置関係を設定した前記融像画像を前記表示手段に表示し、前記左眼及び前記右眼による融像状態を把握可能にさせることを特徴とする自覚式検眼プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の眼前に光学部材(例えば、球面レンズ、円柱レンズ、等)を配置し、被検眼に光学部材を介した視標を呈示することによって、被検眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-176893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自覚式測定においては、被検眼に対して両眼視機能検査を行い、左眼と右眼に視標を呈示して、その融像状態を確認することがある。このとき、検者は、被検者が両眼でどのように視標を視認しているかを想像しづらかった。
【0005】
本開示は、上記従来技術に鑑み、被検者が両眼で観察した視標の見え方を容易に想像できる自覚式検眼装置及び自覚式検眼プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を備えることを特徴とする。
【0007】
本開示の第1態様に係る自覚式検眼装置は、被検者の左眼と右眼に視標を呈示する視標呈示手段を有し、前記左眼と前記右眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置であって、前記左眼及び前記右眼に前記視標を呈示した状態における、前記左眼及び前記右眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得手段と、前記前眼部画像に基づいて、前記左眼と前記右眼の眼位情報を取得する眼位情報取得手段と、前記左眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第1画像と、前記右眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第2画像と、を含む融像画像であって、前記左眼及び前記右眼で前記視標を観察した場合における両眼での見え方を示す融像画像を表示手段に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記眼位情報に基づいて、前記第1画像と前記第2画像との位置関係を設定した前記融像画像を前記表示手段に表示し、前記左眼及び前記右眼による融像状態を把握可能とすることを特徴とする。
【0008】
本開示の第2態様に係る自覚式検眼プログラムは、被検者の左眼と右眼に視標を呈示する視標呈示手段を有し、前記左眼と前記右眼の光学特性を自覚的に測定する自覚式検眼装置にて用いる自覚式検眼プログラムであって、前記自覚式検眼装置のプロセッサに実行されることで、前記左眼及び前記右眼に前記視標を呈示した状態における、前記左眼及び前記右眼の前眼部画像を取得する前眼部画像取得ステップと、前記前眼部画像に基づいて、前記左眼と前記右眼の眼位情報を取得する眼位情報取得ステップと、前記左眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第1画像と、前記右眼で前記視標を観察した場合の見え方を示す第2画像と、を含む融像画像であって、前記左眼及び前記右眼で前記視標を観察した場合における両眼での見え方を示す融像画像を表示手段に表示させる表示制御ステップと、を前記自覚式検眼装置に実行させ、前記表示制御ステップは、前記眼位情報に基づいて、前記第1画像と前記第2画像との位置関係を設定した前記融像画像を前記表示手段に表示し、前記左眼及び前記右眼による融像状態を把握可能にさせることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自覚式検眼装置の外観図である。
図2】自覚式検眼装置の測定部を示す図である。
図3】自覚式検眼装置の内部を正面方向から見た概略構成図である。
図4】自覚式検眼装置の内部を側面方向から見た概略構成図である。
図5】自覚式検眼装置の内部を上面方向から見た概略構成図である。
図6】自覚式検眼装置の制御系を示す図である。
図7】左眼及び右眼の基準画像の一例である。
図8】左眼及び右眼の前眼部画像の一例である。
図9】モニタの表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示の実施形態に係る自覚式検眼装置の概要について説明する。以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。符号に付されるL及びRは、それぞれ左眼用及び右眼用を示すものとする。
【0011】
本実施形態における自覚式検眼装置は、被検眼の光学特性を自覚的に測定する。被検眼の光学特性としては、眼屈折力(球面度数、円柱度数、乱視軸角度、等)、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等の少なくともいずれかを測定してもよい。
【0012】
<視標呈示手段>
自覚式検眼装置は、視標呈示手段を備える。視標呈示手段は、被検者の左眼と右眼に視標を呈示する。視標呈示手段としては、表示手段(例えば、ディスプレイ31)を用いてもよい。例えば、表示手段はディスプレイであってもよく、LCOS(Liquid crystal on silicon)、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)、等が挙げられる。
【0013】
本実施形態において、視標呈示手段は、被検者の左眼と右眼に視標を同時に呈示することができればよい。例えば、視標呈示手段は、左眼に視標を呈示するための左眼用視標呈示手段と、右眼に視標を呈示するための右眼用視標呈示手段と、を兼用してもよい。この場合、視標呈示手段において視標を呈示する視標呈示領域が、左眼用の視標を呈示するための視標呈示領域と、右眼用の視標を呈示するための視標呈示領域と、に分割して設けられてもよい。また、例えば、視標呈示手段は、左眼用視標呈示手段と、右眼用視標呈示手段と、をそれぞれ備えてもよい。この場合には、左眼用視標呈示手段と、右眼用視標呈示手段と、を左右一対に設けてもよい。
【0014】
<自覚式測定手段>
自覚式検眼装置は、自覚式測定光学系(例えば、自覚式測定光学系25)を備えてもよい。自覚式測定光学系は、投光光学系(例えば、投光光学系30)を備えてもよい。投光光学系は、被検眼に向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系は、被検眼に視標を呈示する視標呈示部として、前述の視標呈示手段を有してもよい。この場合、投光光学系は、被検眼に向けて、視標呈示手段から出射した視標光束を投光してもよい。また、自覚式測定光学系は、矯正光学系(例えば、矯正光学系60)を備えてもよい。矯正光学系は、投光光学系の光路内に配置され、視標光束の光学特性を変化させる。この場合、投光光学系は、被検眼に向けて、視標呈示手段から出射し、矯正光学系を介して矯正された視標光束を投光してもよい。
【0015】
<前眼部画像取得手段>
自覚式検眼装置は、前眼部画像取得手段(例えば、制御部70)を備える。前眼部画像取得手段は、被検眼の前眼部画像を取得する。本実施形態において、前眼部画像取得手段は、左眼及び右眼に視標を呈示した状態における、左眼及び右眼の前眼部画像を取得する。なお、前眼部画像は、左眼の前眼部と、右眼の前眼部と、を含む1枚の画像でもよい。また、前眼部画像は、左眼の前眼部と、右眼の前眼部と、の各々の画像(すなわち、2枚の画像)であってもよい。
【0016】
前眼部画像取得手段は、左眼及び右眼の前眼部画像をリアルタイムに取得してもよい。例えば、前眼部画像取得手段は、左眼及び右眼の前眼部画像を連続的に取得してもよい。また、例えば、前眼部画像取得手段は、左眼及び右眼の前眼部画像を、所定の時間間隔(一例として、5秒間隔等)で取得してもよい。
【0017】
例えば、自覚式検眼装置は、自覚式検眼装置とは別に、被検者の左眼及び右眼の前眼部を撮像するための装置を備えてもよい。この場合、前眼部画像取得手段は、被検者の左眼及び右眼の前眼部を撮像するための装置が撮像した前眼部画像を受信することによって、前眼部画像を取得してもよい。一例として、被検者の左眼及び右眼の前眼部を撮像するための装置は、ウェアラブルデバイス(例えば、眼鏡型ウェアラブル端末、ヘッドマウントディスプレイ、等)であってもよい。
【0018】
例えば、自覚式検眼装置は、前眼部撮像手段(例えば、観察光学系50、撮像部90)を備えてもよい。前眼部撮像手段は、被検者の左眼及び右眼に視標を呈示した状態における、被検者の左眼及び右眼の前眼部を撮像する。この場合、前眼部画像取得手段は、前眼部撮像手段によって撮像された前眼部画像を取得してもよい。
【0019】
<眼位情報取得手段>
自覚式検眼装置は、眼位情報取得手段(例えば、制御部70)を備える。眼位情報取得手段は、被検者の左眼及び右眼の眼位に関する眼位情報を取得する。例えば、眼位情報は、左眼及び右眼の視線方向を表すことができる情報であってもよい。一例として、左眼及び右眼の特徴部位の位置を示す情報であってもよい。また、一例として、左眼及び右眼の特徴部位のずれ量を示す情報であってもよい。また、一例として、左眼及び右眼の特徴部位の回旋角度を示す情報であってもよい。なお、左眼及び右眼の特徴部位としては、瞳孔位置、角膜頂点位置、等を用いてもよい。
【0020】
本実施形態において、被検者の左眼及び右眼の眼位情報は、左眼及び右眼の前眼部画像に基づいて取得されてもよい。例えば、被検者の左眼及び右眼の眼位情報は、前眼部画像取得手段によって新たに取得された前眼部画像に基づいて、逐次、取得されてもよい。
【0021】
例えば、眼位情報取得手段は、前眼部画像を処理することで、左眼及び右眼の瞳孔位置を検出し、検出した瞳孔位置に基づいて、眼位を測定してもよい。この場合、瞳孔位置は瞳孔のいずれの部位であってもよい。例えば、瞳孔中心位置、及び、瞳孔の外周端部の位置、等の少なくともいずれかが、瞳孔位置として検出されてもよい。また、左眼および右眼の瞳孔間距離に基づいて、眼位が測定されてもよい。
【0022】
また、例えば、眼位情報取得手段は、前眼部画像を処理することで、左眼及び右眼の角膜頂点位置を検出し、検出した角膜頂点位置に基づいて、眼位を測定してもよい。例えば、角膜頂点位置は、左眼及び右眼に投影された視標像を検出し、検出した視標像の位置に基づいて検出されてもよい。また、左眼および右眼の角膜頂点間距離に基づいて、眼位が測定されてもよい。
【0023】
また、例えば、眼位情報取得手段は、前眼部画像を処理することで、左眼及び右眼の瞳孔位置と角膜頂点位置をともに検出し、検出した瞳孔位置及び角膜頂点位置に基づいて、眼位を測定してもよい。例えば、この場合、瞳孔中心位置と角膜頂点位置とのずれ量に基づいて、眼位が測定されてもよい。
【0024】
<表示制御手段>
自覚式検眼装置は、表示制御手段(例えば、制御部70)を備える。表示制御手段は、被検者が左眼及び右眼で視標を観察した場合における、両眼での見え方を示す融像画像を、表示手段(例えば、モニタ6a)に表示させる。例えば、融像画像とは、被検者が左眼で視標を観察した場合の見え方を示す第1画像(例えば、第1画像140L)と、被検者が右眼で視標を観察した場合の見え方を示す第2画像(例えば、第2画像140R)と、を含む画像であってもよい。
【0025】
第1画像は、左眼に呈示した視標に対応する画像であればよい。例えば、第1画像は、左眼に呈示した視標の画像と同一の画像であってもよい。また、例えば、第1画像は、左眼に呈示した視標の画像を簡略化した画像であってもよい。同様に、第2画像は、右眼に呈示した視標に対応する画像であればよい。例えば、第2画像は、右眼に呈示した視標の画像と同一の画像であってもよい。また、例えば、第2画像は、右眼に呈示した視標の画像を簡略化した画像であってもよい。なお、第1画像及び第2画像において、視標の画像を簡略化した画像の一例としては、視標の輪郭線を示した画像、等であってもよい。
【0026】
本実施形態において、被検者の両眼での見え方を示す融像画像は、左眼及び右眼の眼位情報に基づいて、表示手段に表示されてもよい。より詳細には、表示制御手段が、左眼及び右眼の眼位情報に基づいて、第1画像と第2画像との位置関係を設定した融像画像を、表示手段に表示させてもよい。この場合、左眼及び右眼の眼位情報に基づいて、第1画像と第2画像との距離を設定してもよい。一例としては、左眼及び右眼の眼位情報に基づいて、第1画像の中心から第2画像の中心までの距離を設定してもよい。例えば、表示制御手段は、左眼の眼位情報に基づいて、第1画像の表示位置を所定の位置座標に設定するとともに、右眼の眼位情報に基づいて、第2画像の表示位置を所定の位置座標に設定してもよい。これによって、融像画像は、その第1画像と第2画像とが、少なくとも一部が重畳された状態、離れた状態、等で表示手段に表示される。
【0027】
表示制御手段は、第1画像と、第2画像と、の少なくともいずれかの透過率を変更した融像画像を、表示手段に表示させてもよい。例えば、表示制御手段は、第1画像と第2画像との一方の透過率を変更し、透過率を変更していない画像に、透過率を変更した画像を重ねて表示させてもよい。また、例えば、表示制御手段は、第1画像と第2画像との双方の透過率を変更し、第1画像と第2画像との一方の画像に他方の画像を重ねて表示させてもよい。この場合、第1画像と第2画像との透過率は、同一の透過率に変更されてもよいし、異なる透過率に変更されてもよい。これによって、第1画像と第2画像とが、部分的あるいは全体的に重畳して表示されても、第1画像と第2画像との重なり具合を容易に把握することができる。なお、第1画像と第2画像との透過率を互いに異なる透過率に変更することによって、第1画像と第2画像とを識別させることもできる。
【0028】
例えば、このような透過率を変更する制御は、第1画像と第2画像との位置関係が、第1画像と第2画像とが部分的に重なるように設定された際に、少なくとも実行されればよい。もちろん、第1画像と第2画像との位置関係が、第1画像と第2画像とが全体的に重なるように設定された際に、実行されてもよい。また、第1画像と第2画像との位置関係が、第1画像と第2画像とが重ならず離れるように設定された際に、実行されてもよい。
【0029】
例えば、表示制御手段は、第1画像と、第2画像と、を識別可能な融像画像を、表示手段に表示させてもよい。例えば、表示制御手段は、第1画像と第2画像の少なくともいずれかについて、透過率を変更する制御、色彩を変更する制御、識別子を表示する制御、等の少なくともいずれかの制御を行うことで、第1画像と第2画像とを識別可能とした融像画像を、表示手段に表示させてもよい。
【0030】
例えば、透過率を変更する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像との透過率を互いに異なる透過率に変更してもよい。また、例えば、色彩を変更する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像との色彩を、互いに異なる色彩に変更してもよい。一例としては、第1画像と第2画像との、配色、色調(濃淡、強弱、明暗、等の少なくともいずれか)、等を変更してもよい。また、例えば、識別子を表示する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像との少なくともいずれかに対して、識別子を表示してもよい。一例としては、第1画像と第2画像との少なくともいずれかに対して、記号、文字、図形、等の少なくともいずれかを表示してもよい。これによって、第1画像と第2画像との各々の画像を区別でき、互いの画像のずれを把握しやすくなる。すなわち、被検者の左眼及び右眼による融像状態のずれを把握しやすくなる。
【0031】
なお、表示制御手段は、上記のような、第1画像及び第2画像における透過率を変更する制御、色彩を変更する制御、及び識別子を表示する制御、等のいずれかを実行する構成であってもよいし、組み合わせて実行する構成としてもよい。
【0032】
例えば、表示制御手段は、被検者の左眼で観察された視標に第1画像が対応し、被検者の右眼で観察された視標に第2画像が対応することを識別可能な融像画像を、表示手段に表示させてもよい。例えば、表示制御手段は、第1画像と第2画像の少なくともいずれかについて、透過率を変更する制御、色彩を変更する制御、識別子を表示する制御、等の少なくともいずれかの制御を行うことで、左眼で観察された視標に第1画像が対応し、右眼で観察された視標に第2画像が対応することを識別可能とした融像画像を、表示手段に表示させてもよい。
【0033】
一例として、透過率を変更する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像とを互いに異なる透過率に変更し、さらに、第1画像及び第2画像と、透過率と、の対応関係を呈示してもよい。また、一例として、色彩を変更する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像とを互いに異なる色彩に変更し、さらに、第1画像及び第2画像と、色彩と、の対応関係を呈示してもよい。また、一例として、識別子を表示する場合、表示制御手段は、第1画像と第2画像との少なくともいずれかに、左右を表す識別子を表示してもよい。これによって、第1画像と第2画像とが、左右にどれだけのずれをもつかを把握しやすくなる。すなわち、被検者の左眼及び右眼による融像状態の適否を把握しやすくなる。
【0034】
表示制御手段は、このような融像画像とともに、第1画像及び第2画像が位置する基準位置であって、左眼と右眼の融像状態が良好とされる基準位置を、表示手段に表示させてもよい。言い換えると、第1画像及び第2画像が位置する基準位置であって、左眼と右眼の眼位にずれが生じていないことを示す基準位置を、表示手段に表示させてもよい。例えば、基準位置が表示されることによって、基準位置に対する第1画像及び第2画像のずれから、左眼及び右眼の斜位の方向等を、容易に判断することができる。また、例えば、基準位置が表示されることによって、基準位置に対する第1画像及び第2画像のずれに基づいた、左眼及び右眼に対する適切な検査を行うことができる。一例としては、左眼及び右眼が融像しやすくなるように、左眼及び右眼に呈示する視標の呈示位置を変更して、検査を行ってもよい。
【0035】
また、表示制御手段は、このような融像画像とともに、左眼及び右眼による融像状態を示す融像情報を、表示手段に表示させてもよい。例えば、融像情報は、左眼及び右眼による融像ができているか、あるいは、融像ができていないかを表す情報であってもよい。また、例えば、融像情報は、左眼及び右眼の眼位情報に基づいた、左眼及び右眼の眼位のずれを表す情報であってもよい。なお、この場合、左眼及び右眼の眼位のずれは、水平方向の成分と垂直方向の成分として表されてもよい。また、この場合、左眼及び右眼の眼位のずれは、プリズムで表されてもよい。一例としては、プリズムの量と、プリズムの方向と、が示されてもよい。なお、プリズムの方向は、Base In、Base Out、等の指標であってもよいし、内方、外方、等の指標であってもよいし、角度であってもよい。
【0036】
なお、表示制御手段は、上記のような、第1画像及び第2画像が位置する基準位置を表示する制御、左眼及び右眼の融像情報を表示する制御、のいずれかを実行する構成としてもよいし、組み合わせて実行する構成としてもよい。
【0037】
例えば、表示制御手段は、融像画像を更新するための出力信号に基づいて、融像画像を更新して表示させるようにしてもよい。例えば、出力信号は、眼位情報取得手段が眼位情報を取得したタイミングで、逐次、出力されてもよい。この場合、前眼部画像取得手段による前眼部画像の取得タイミングが所定の時間間隔に設定されることで、順に取得される前眼部画像に基づいて眼位情報を取得する毎に、出力信号が出力されてもよい。また、この場合、前眼部画像取得手段による前眼部画像の取得タイミングはリアルタイムに設定され、リアルタイムに取得された前眼部画像に基づいた、眼位情報取得手段による眼位情報の取得タイミングが所定の時間間隔に設定されることで、眼位情報を取得する毎に、出力信号が出力されてもよい。これらの構成によって、所定の時間間隔で更新される融像画像を表示手段に表示させることができ、被検者のまばたき、測定誤差、等の影響により、融像画像が細かく変化して見づらくなってしまうことを抑制できる。
【0038】
本実施形態では、前眼部画像取得手段が、前眼部画像をリアルタイムに取得し、眼位情報取得手段が、新たに取得された前眼部画像に基づいて、逐次、眼位情報を取得し、表示制御手段が、逐次取得された眼位情報に基づいて、融像画像をリアルタイムに更新して、表示手段に表示させる構成としてもよい。これによって、左眼及び右眼による融像状態の変化を、リアルタイムに把握することができる。
【0039】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0040】
<実施例>
本実施形態に係る自覚式検眼装置(以下、検眼装置)の一実施例について説明する。
【0041】
図1は、検眼装置の外観図である。例えば、検眼装置1は、筐体2、呈示窓3、額当て4、顎台5、コントローラ6、撮像部90、等を備える。
【0042】
筐体2は、その内部に、後述の測定部7、偏向ミラー81、反射ミラー84、凹面ミラー85、等を有する。呈示窓3は、被検眼Eに視標を呈示するために用いる。額当て4は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。顎台5は、被検眼Eと検眼装置1との距離を一定に保つために用いる。
【0043】
コントローラ6は、モニタ6a、スイッチ部6b、等を備える。モニタ6aは、各種の情報(例えば、被検眼Eの測定結果、等)を表示する。モニタ6aは、タッチパネルであり、モニタ6aがスイッチ部6bの機能を兼ねている。スイッチ部6bは、各種の設定(例えば、開始信号の入力、等)を行うために用いる。コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、図示なきケーブルを介した有線通信により、制御部70へ出力される。なお、コントローラ6からの操作指示に応じた信号は、赤外線等を介した無線通信により、制御部70へ出力されてもよい。
【0044】
撮像部90は、図示なき撮像光学系を備える。例えば、撮像光学系は、被検者の顔を撮像するために用いられる。例えば、撮像光学系は、撮像素子とレンズにより構成されてもよい。
【0045】
<測定部>
測定部7は、左眼用測定部7Lと右眼用測定部7Rを備える。本実施例において、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、は同一の部材で構成される。もちろん、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、はその少なくとも一部が異なる部材で構成されてもよい。測定部7は、左右一対の後述する自覚式測定部と、左右一対の後述する他覚式測定部と、を有する。測定部7からの視標光束及び測定光束は、呈示窓3を介して被検眼Eに導光される。
【0046】
図2は、測定部7を示す図である。図2では、測定部7として、左眼用測定部7Lを例に挙げる。右眼用測定部7Rは、左眼用測定部7Lと同様の構成であるため省略する。例えば、左眼用測定部7Lは、他覚式測定光学系10、自覚式測定光学系25、第1指標投影光学系45、第2指標投影光学系46、観察光学系50、等を備える。
【0047】
<他覚式測定光学系>
他覚式測定光学系10は、被検眼の光学特性を他覚的に測定する他覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する他覚式測定部を例に挙げて説明する。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、眼軸長、角膜形状、等であってもよい。例えば、他覚式測定光学系10は、投影光学系10aと、受光光学系10bと、で構成される。
【0048】
投影光学系10aは、被検眼Eの瞳孔中心部を介して、被検眼Eの眼底にスポット状の測定指標を投影する。例えば、投影光学系10aは、光源11、リレーレンズ12、ホールミラー13、プリズム15、対物レンズ102、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。
【0049】
受光光学系10bは、被検眼Eの眼底で反射された眼底反射光束を、被検眼Eの瞳孔周辺部を介してリング状に取り出す。例えば、受光光学系10bは、ダイクロイックミラー29、ダイクロイックミラー35、対物レンズ102、プリズム15、ホールミラー13、リレーレンズ16、ミラー17、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、撮像素子22、等を備える。
【0050】
なお、本実施例では、投影光学系10aと受光光学系10bとの説明を省略する。これらの詳細については、例えば、特開2018-47049号公報を参考されたい。
【0051】
<自覚式測定光学系>
自覚式測定光学系25は、被検眼Eの光学特性を自覚的に測定する自覚式測定部の構成の一部として用いられる。本実施例では、被検眼Eの光学特性として、被検眼Eの眼屈折力を測定する自覚式測定部を例に挙げる。なお、被検眼Eの光学特性は、眼屈折力の他、コントラスト感度、両眼視機能(例えば、斜位量、立体視機能、等)、等であってもよい。例えば、自覚式測定光学系25は、投光光学系30と、矯正光学系60と、で構成される。
【0052】
<投光光学系>
投光光学系30は、被検眼Eに向けて視標光束を投光する。例えば、投光光学系30は、ディスプレイ31、投光レンズ33、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ101、ダイクロイックミラー35、ダイクロイックミラー29、等を備える。
【0053】
ディスプレイ31には、視標(固視標、検査視標、等)が表示される。ディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33からダイクロイックミラー29までの光学部材を順に経由して、被検眼Eに投影される。ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光路と、自覚式測定光学系25の光路と、を共通光路にする。すなわち、ダイクロイックミラー35は、他覚式測定光学系10の光軸L1と、自覚式測定光学系25の光軸L2と、を同軸にする。ダイクロイックミラー29は、光路分岐部材である。ダイクロイックミラー29は、投光光学系30による視標光束と、後述の投影光学系10aによる測定光束と、を反射して被検眼Eに導く。
【0054】
<矯正光学系>
矯正光学系60は、投光光学系30の光路内に配置される。また、矯正光学系60は、ディスプレイ31から出射した視標光束の光学特性を変化させる。例えば、矯正光学系60は、乱視矯正光学系63、後述の駆動機構39、等を備える。
【0055】
乱視矯正光学系63は、被検眼Eの円柱度数や乱視軸角度を矯正するために用いる。乱視矯正光学系63は、投光レンズ33と投光レンズ34との間に配置される。乱視矯正光学系63は、焦点距離の等しい、2枚の正の円柱レンズ61aと円柱レンズ61bで構成される。円柱レンズ61aと円柱レンズ61bは、回転機構62aと回転機構62bの駆動によって、光軸L2を中心として、各々が独立に回転する。
【0056】
なお、本実施例では、乱視矯正光学系63として、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。乱視矯正光学系63は、円柱度数、乱視軸角度、等を矯正できる構成であればよい。一例としては、投光光学系30の光路に、矯正レンズを出し入れしてもよい。
【0057】
本実施例において、投影光学系10aが備える光源11及びリレーレンズ12と、受光光学系10bが備える受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22と、投光光学系30が備えるディスプレイ31と、は駆動機構39によって光軸方向へ一体的に移動可能となっている。つまり、ディスプレイ31、光源11、リレーレンズ12、受光絞り18、コリメータレンズ19、リングレンズ20、及び撮像素子22、が駆動ユニット95として同期し、駆動機構39によって、これらが一体的に移動される。駆動機構39は、モータ及びスライド機構からなる。駆動機構39が移動した移動位置は、図示なきポテンショメータによって検出される。
【0058】
駆動機構39は、駆動ユニット95を光軸方向へ移動させることで、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる。これによって、他覚式測定では、被検眼Eに雲霧をかけることができる。自覚式測定では、被検眼Eに対する視標の呈示距離を光学的に変更し、被検眼Eの球面度数を矯正することができる。すなわち、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる構成が、被検眼Eの球面度数を矯正する球面矯正光学系として用いられ、ディスプレイ31の位置を変更することによって、被検眼Eの球面度数が矯正される。なお、球面矯正光学系の構成は、本実施例とは異なっていてもよい。例えば、多数の光学素子を光路内に配置することで、球面度数を矯正してもよい。また、例えば、レンズを光路内に配置し、レンズを光軸方向に移動させることで、球面度数を矯正してもよい。
【0059】
<第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系>
第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46は、ダイクロイックミラー29と、後述の偏向ミラー81と、の間に配置される。第1指標投影光学系45は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46は、第1指標投影光学系45とは異なる位置に配置され、被検者眼の角膜に有限遠のアライメント指標を投影するための近赤外光を発する。第2指標投影光学系46から出射される近赤外光(アライメント光)は、観察光学系50によって被検眼の前眼部を撮影するための前眼部撮影光としても用いられる。
【0060】
<観察光学系>
観察光学系(撮像光学系)50は、ダイクロイックミラー29、対物レンズ103、撮像レンズ51、撮像素子52、等を備える。ダイクロイックミラー29は、前眼部観察光及びアライメント光を透過する。撮像素子52は、被検眼Eの前眼部と共役な位置に配置された撮像面をもつ。撮像素子52からの出力は、制御部70に入力される。これによって、被検眼Eの前眼部画像は撮像素子52により撮像され、モニタ6a上に表示される。なお、この観察光学系50は、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によって、被検眼Eの角膜に形成されるアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置が検出される。
【0061】
<検眼装置の内部構成>
検眼装置1の内部構成について説明する。図3は、検眼装置1の内部を正面方向から見た概略構成図である。図4は、検眼装置1の内部を側面方向から見た概略構成図である。図5は、検眼装置1の内部を上面方向から見た概略構成図である。なお、図4及び図5では、説明の便宜上、左眼用測定部7Lの光軸のみを示している。
【0062】
検眼装置1は、自覚式測定部を備える。例えば、自覚式測定部は、測定部7、偏向ミラー81、駆動機構82、駆動部83、反射ミラー84、凹面ミラー85、等で構成される。なお、自覚式測定部はこの構成に限定されない。例えば、反射ミラー84を有しない構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束が、偏向ミラー81を介した後に凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向から照射されてもよい。また、例えば、ハーフミラーを有する構成であってもよい。この場合には、測定部7からの視標光束を、ハーフミラーを介して凹面ミラー85の光軸Lに対して斜め方向に照射し、その反射光束を被検眼Eに導光してもよい。
【0063】
検眼装置1は、左眼用駆動部9Lと、右眼用駆動部9Rと、を有し、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、をそれぞれX方向に移動させることができる。例えば、左眼用測定部7L及び右眼用測定部7Rを移動させることによって、測定部7と、後述の偏向ミラー81と、の間の距離が変化し、測定部7からの視標光束のZ方向における呈示位置が変更される。これによって、被検眼Eに、矯正光学系60で矯正された視標光束を導光し、被検眼Eの眼底に矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成されるように、測定部7がZ方向に調整される。
【0064】
例えば、偏向ミラー81は、左右一対にそれぞれ設けられた右眼用偏向ミラー81Rと左眼用偏向ミラー81Lとを有する。例えば、偏向ミラー81は、矯正光学系60と被検眼Eとの間に配置される。すなわち、本実施例における矯正光学系60は、左右一対に設けられた左眼用矯正光学系と右眼用矯正光学系とを有しており、左眼用偏向ミラー81Lは左眼用矯正光学系と左眼ELの間に配置され、右眼用偏向ミラー81Rは右眼用矯正光学系と右眼ERの間に配置される。例えば、偏向ミラー81は、瞳共役位置に配置されることが好ましい。
【0065】
例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼用測定部7Lから投影される光束を反射して、左眼ELに導光する。また、例えば、左眼用偏向ミラー81Lは、左眼ELからの眼底反射光束を反射して、左眼用測定部7Lに導光する。例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼用測定部7Rから投影される光束を反射して、右眼ERに導光する。また、例えば、右眼用偏向ミラー81Rは、右眼ERからの眼底反射光束を反射して、右眼用測定部7Rに導光する。なお、本実施例では、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射させて導光する偏向部材として、偏向ミラー81を用いる構成を例に挙げて説明しているが、これに限定されない。偏向部材は、被検眼Eに測定部7から投影された光束を反射して導光することができればよく、例えば、プリズム、レンズ、等であってもよい。
【0066】
例えば、駆動機構82は、モータ(駆動部)等からなる。例えば、駆動機構82は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動機構82Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動機構82Rと、を有する。例えば、駆動機構82の駆動によって、偏向ミラー81は回転移動する。例えば、駆動機構82は、水平方向(X方向)の回転軸、及び鉛直方向(Y方向)の回転軸に対して偏向ミラー81を回転させる。すなわち、駆動機構82は偏向ミラー81をXY方向に回転させる。なお、偏向ミラー81の回転は、水平方向又は鉛直方向の一方であってもよい。
【0067】
例えば、駆動部83は、モータ等からなる。例えば、駆動部83は、左眼用偏向ミラー81Lを駆動するための駆動部83Lと、右眼用偏向ミラー81Rを駆動するための駆動部83Rと、を有する。例えば、駆動部83の駆動によって、偏向ミラー81はX方向に移動する。例えば、左眼用偏向ミラー81L及び右眼用偏向ミラー81Rが移動されることによって、左眼用偏向ミラー81L及び右眼用偏向ミラー81Rとの間の距離が変更され、被検眼Eの瞳孔間距離にあわせて、左眼用光路と右眼用光路との間のX方向における距離を変更することができる。
【0068】
なお、例えば、偏向ミラー81は、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれにおいて複数設けられてもよい。例えば、左眼用光路と右眼用光路とのそれぞれに、2つの偏向ミラーを設ける構成(例えば、左眼用光路に2つの偏向ミラーを設ける構成、等)が挙げられる。この場合、一方の偏向ミラーがX方向に回転され、他方の偏向ミラーがY方向に回転されてもよい。例えば、偏向ミラー81が回転移動されることによって、視標光束の像を被検眼の眼前に形成するためのみかけの光束を偏向させ、視標光束の像の形成位置を光学的に補正することができる。
【0069】
例えば、凹面ミラー85は、左眼用測定部7Lと、右眼用測定部7Rと、で共有される。例えば、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、で共有される。すなわち、凹面ミラー85は、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、を共に通過する位置に配置されている。もちろん、凹面ミラー85は、左眼用光路と右眼用光路とで共有される構成でなくてもよい。すなわち、左眼用矯正光学系を含む左眼用光路と、右眼用矯正光学系を含む右眼用光路と、のそれぞれに凹面ミラーが設けられる構成であってもよい。例えば、凹面ミラー85は、被検眼Eに矯正光学系60を通過した視標光束を導光し、被検眼Eの眼前に矯正光学系60を通過した視標光束の像を形成する。
【0070】
<自覚式測定部の光路>
自覚式測定部の光路について、左眼用光路を例に挙げて説明する。なお、右眼用光路は、左眼用光路と同様の構成である。例えば、左眼用の自覚式測定部において、自覚式測定光学系25におけるディスプレイ31から出射した視標光束は、投光レンズ33を介して乱視矯正光学系63へと入射し、乱視矯正光学系63を通過すると、投光レンズ34、反射ミラー36、対物レンズ101、ダイクロイックミラー35、及びダイクロイックミラー29、を経由して、左眼用測定部7Lから左眼用偏向ミラー81Lに向けて導光される。左眼用偏向ミラー81Lで反射された視標光束は、反射ミラー84により凹面ミラー85に向けて反射される。ディスプレイ31とから出射した視標光束は、このように各光学部材を経由して、左眼ELに到達する。
【0071】
これにより、左眼ELの眼鏡装用位置(例えば、角膜頂点位置から12mm程度)を基準として、左眼ELの眼底上に、矯正光学系60で矯正された視標光束の像が形成される。従って、球面度数の矯正光学系(本実施例では、駆動機構39の駆動)による球面度数の調整が眼前で行われたことと、乱視矯正光学系63があたかも眼前に配置されたことと、が等価になっている。被検者は、自然な状態で、凹面ミラー85を介して光学的に所定の検査距離で眼前に形成された視標光束の像を視準することができる。
【0072】
<制御部>
図6は、検眼装置1の制御系を示す図である。例えば、制御部70には、モニタ6a、不揮発性メモリ75(以下、メモリ75)、測定部7が備える光源11、撮像素子22、ディスプレイ31、撮像素子52、等の各種部材が電気的に接続されている。また、例えば、制御部70には、駆動部9、駆動機構39、駆動部83、等がそれぞれ備える図示なき駆動部が電気的に接続されている。
【0073】
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。例えば、CPUは、検眼装置1における各部材の制御を司る。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、検眼装置1の動作を制御するための各種プログラム、視標、初期値、等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0074】
例えば、メモリ75は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ75としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。例えば、メモリ75には、他覚式測定部及び自覚式測定部を制御するための制御プログラムが記憶されている。
【0075】
<制御動作>
検眼装置1の制御動作について説明する。
【0076】
<被検眼に対する測定部のアライメント>
検者は、被検者に、顎を顎台5に載せて、呈示窓3を観察するように指示する。また、検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eを固視させるための固視標を選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じ、ディスプレイ31に固視標を表示させる。被検眼Eには、ディスプレイ31からの視標光束が投影されることで、その眼前に固視標が呈示される。
【0077】
続いて、検者は、スイッチ部6bを操作し、被検眼Eと測定部7とのアライメントを開始するためのスイッチを選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じて、被検眼Eの角膜に第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46によるアライメント指標像を投影する。また、制御部70は、アライメント指標像を用いて、被検眼Eに対する測定部7のX方向、Y方向、及びZ方向のずれを検出し、このずれに基づいて、測定部7を移動させる。これによって、アライメントが完了される。
【0078】
<自覚式測定による光学特性の取得>
検者は、被検眼Eに対する測定部7のアライメントが完了すると、被検眼Eに対する自覚式測定を開始する。例えば、左眼EL及び右眼ERに対して順に自覚式測定が行われ、左眼ELの自覚値と、右眼ERの自覚値と、がそれぞれ取得される。
【0079】
検者は、スイッチ部6bを操作して、所定の検査視標(例えば、ランドルト環視標)と、検査視標を呈示する所定の呈示距離(検査距離)と、を選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じ、ディスプレイ31に検査視標を表示させる。また、制御部70は、駆動機構39の駆動を制御して、被検眼Eからディスプレイ31までの光学的な距離が所定の呈示距離となるように、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させる。
【0080】
続いて、検者は、スイッチ部6bを操作して、所望の矯正度数を設定する。検者は、被検眼Eの光学特性(例えば、被検眼Eの他覚式測定における光学特性、被検眼Eの自覚式測定における光学特性、等)を予め取得しておき、これに基づいて、所望の矯正度数を設定してもよい。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じ、投光光学系30と、矯正光学系60と、の少なくともいずれかを制御する。例えば、制御部70は、駆動機構39を駆動させ、ディスプレイ31を光軸L2方向へ移動させることによって、被検眼Eの球面度数を矯正してもよい。また、例えば、制御部70は、回転機構62aと回転機構62bを駆動させ、円柱レンズ61aと円柱レンズ61bを光軸L2bの軸周りに回転させることによって、被検眼Eの円柱度数と乱視軸角度との少なくともいずれかを矯正してもよい。これによって、被検眼Eの眼屈折度が所定のディオプタ値(例えば、0D等)で矯正される。
【0081】
検者は、スイッチ部6bを操作して、被検眼Eに呈示する検査視標の視力値を切り換えながら、被検眼Eを矯正する矯正度数が適切であるかを確認する。被検眼Eを矯正する矯正度数が不適切であった場合等には、被検眼Eの眼屈折度を所定のディオプタ値とは異なるディオプタ値で矯正し、再度、矯正度数が適切であるかを確認してもよい。制御部70は、検者が適切と判断した矯正度数を、被検眼Eの自覚値として取得し、メモリ75に記憶させる。
【0082】
<基準画像の取得>
本実施例では、後述の両眼に対する自覚式測定を開始するよりも前に、予め、眼位ずれを判定する際に用いる基準画像が取得される。例えば、左眼ELと右眼ERの各々の自覚値を順に測定する上記の自覚式測定よりも前に、固視標を固視させる等して、基準画像が取得されてもよい。また、例えば、左眼ELと右眼ERの各々の自覚値を順に測定する上記の自覚式測定中に、基準画像が取得されてもよい。例えば、基準画像は、左眼EL及び右眼ERが、各々の眼に対する正面方向に配置された視標(固視標または検査視標)を観察した状態の前眼部画像であってもよい。もちろん、左眼EL及び右眼ERが、正面方向とは異なる方向に配置された視標を観察した状態の前眼部画像であってもよい。
【0083】
ここでは、上記の自覚式測定中(片眼に対する自覚式測定中)に、基準画像が取得される場合を例に挙げる。例えば、左眼EL(右眼ER)の自覚値を測定している間に、左眼EL(右眼ER)が所定の検査視標を所定の呈示距離にて観察した状態での前眼部画像が、基準画像として、予め取得される。制御部70は、左眼EL(右眼ER)の角膜に向けて、第1指標投影光学系45及び第2指標投影光学系46が備える赤外光源から測定光束を照射させ、左眼EL(右眼ER)の角膜に輝点像を投影する。また、制御部70は、観察光学系50の撮像素子52を用いて、左眼EL(右眼ER)の基準画像を取得する。
【0084】
図7は、左眼EL及び右眼ERの基準画像の一例である。図7(a)は左眼ELの基準画像120Lを示す。図7(b)は右眼ERの基準画像120Rを示す。左眼ELの基準画像120Lとしては、左眼ELの像とともに、左眼ELの角膜に形成された輝点像125が表示される。輝点像125は、第1指標投影光学系45の赤外光源によって表れるリング指標像B1と、第2指標投影光学系46の赤外光源によって表れるリング指標像B2と、からなる。
【0085】
制御部70は、基準画像120Lを解析して、輝度の立ち上がりや立ち下がりから、瞳孔と輝点像125を検出する。また、制御部70は、瞳孔の中心を計算することで、瞳孔中心位置PLを検出する。また、制御部70は、リング指標像B2の中心を計算することで、角膜頂点位置KLを検出する。もちろん、制御部70は、リング指標像B1から角膜頂点位置KLを検出してもよいし、リング指標像B1とリング指標像B2とから角膜頂点位置KLを検出してもよい。同様に、右眼ERの基準画像120Rとしては、右眼ERの像とともに、右眼ERの角膜に形成された輝点像125が表示される。制御部70は、基準画像120Rを解析して、右眼ERの瞳孔中心位置PR及び角膜頂点位置KRを検出する。
【0086】
例えば、制御部70は、基準画像120Lから検出した左眼ELの瞳孔中心位置PLと角膜頂点位置KLとのずれ量ΔdL1を、メモリ75に記憶する。また、例えば、制御部70は、基準画像120Rから検出した右眼ERの瞳孔中心位置PRと角膜頂点位置KRとのずれ量ΔdR1を、メモリ75に記憶する。
【0087】
<融像状態の確認>
続いて、検者は、左眼ELを矯正した状態で、左眼ELに左眼用の検査視標を所定の呈示距離で呈示するとともに、右眼ERを矯正した状態で、右眼ERに右眼用の検査視標を所定の呈示距離で呈示し、左眼EL及び右眼ERによる融像検査を開始する。
【0088】
例えば、検者は、被検者の回答等から、被検者の左眼EL及び右眼ERの融像状態を判断することができる。しかし、本実施例では、被検者が左眼EL及び右眼ERで検査視標を観察した際の見え方(つまり、被検者が両眼で検査視標を観察した際の見え方)を示す融像画像をモニタ6aに表示させる。これによって、検者は、被検者の左眼EL及び右眼ERの融像状態を容易に想像できる。また、これによって、検者は、被検者の左眼EL及び右眼ERに対する適切な融像検査を行うことができる。以下、これについて説明する。
【0089】
例えば、検者はスイッチ部6bを操作し、左眼EL及び右眼ERに呈示する所定の検査視標と、所定の呈示距離と、を選択する。制御部70は、スイッチ部6bからの入力信号に応じ、左眼用測定部7Lが備えるディスプレイ31(以下、ディスプレイ31L)に左眼用の検査視標を表示させ、右眼用測定部7Rが備えるディスプレイ31(以下、ディスプレイ31R)に右眼用の検査視標を表示させ、これらのディスプレイを光軸L2方向へ移動させる。
【0090】
<前眼部画像に基づく眼位ずれの算出>
制御部70は、左眼EL及び右眼ERに検査視標を呈示している間、左眼EL及び右眼ERの角膜に輝点像を投影し、左眼ELの前眼部画像と、右眼ERの前眼部画像と、をそれぞれ取得する。
【0091】
図8は、左眼EL及び右眼ERの前眼部画像の一例である。図8(a)は左眼ELの前眼部画像150Lを示す。図8(b)は右眼ERの前眼部画像150Rを示す。制御部70は、左眼ELの前眼部画像150Lを解析して、左眼ELの瞳孔中心位置PL及び角膜頂点位置KLを検出するとともに、右眼ERの前眼部画像150Rを解析して、右眼ERの瞳孔中心位置PR及び角膜頂点位置KRを検出する。また、制御部70は、左眼ELの瞳孔中心位置PL及び角膜頂点位置KLのずれ量ΔdL2を求めるとともに、右眼ERの瞳孔中心位置PR及び角膜頂点位置KRのずれ量ΔdR2を求める。
【0092】
制御部70は、左眼EL及び右眼ERの眼位が正常であるかを、左眼EL及び右眼ERの基準画像120により求めたずれ量(ずれ量ΔdL1及びずれ量ΔdR1)と、左眼EL及び右眼ERの自覚式測定中に得られた前眼部画像により求めたずれ量(ずれ量ΔdL2及びずれ量ΔdR2と、を用いて判定する。
【0093】
例えば、制御部70は、左眼ELにおいて、ずれ量ΔdL1に対し、ずれ量ΔdL2が、予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。例えば、制御部70は、左眼ELについて、ずれ量ΔdL1に対してずれ量ΔdL2が所定の閾値を超える場合に、左眼ELの眼位が正常であると判定してもよい。また、例えば、制御部70は、左眼ELについて、ずれ量ΔdL1に対してずれ量ΔdL2が所定の閾値未満である場合に、左眼ELの眼位にずれがあると判定してもよい。
【0094】
同様に、制御部70は、右眼ERにおいて、ずれ量ΔdR1に対し、ずれ量ΔdR2がが、予め設定された閾値を超えるか否かを判定する。例えば、制御部70は、右眼ERについて、ずれ量ΔdR1に対してずれ量ΔdR2が所定の閾値を超える場合に、右眼ERの眼位が正常であると判定してもよい。また、例えば、制御部70は、右眼ERについて、ずれ量ΔdR1に対してずれ量ΔdR2が所定の閾値未満である場合に、右眼ERの眼位にずれがあると判定してもよい。
【0095】
なお、本実施例では、左眼EL及び右眼ERにおけるずれ量の閾値に、許容範囲を設けてもよい。例えば、制御部70が、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれを許容範囲に基づいて判定することで(つまり、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれが許容範囲の上限から下限におさまるか否かを判定することで)、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれがわずかである際に、眼位ずれがないとみなすことができる。このため、測定誤差等による細かなずれの変化を抑制できる。
【0096】
例えば、左眼EL及び右眼ERの眼位が正常である場合(つまり、左眼EL及び右眼ERいずれにも眼位ずれがない場合)、左眼EL及び右眼ERは、検査視標を融像できると考えてもよい。また、例えば、左眼EL及び右眼ERの少なくともいずれかに眼位ずれがある場合、左眼EL及び右眼ERは、検査視標を融像できない可能性があると考えてもよい。
【0097】
<融像画像の表示>
制御部70は、左眼EL及び右眼ERにおける角膜頂点位置の方向とずれ量に基づいて、被検者が両眼で検査視標を観察した際の見え方を示す融像画像を、モニタ6aに表示させる。例えば、制御部70は、左眼ELの角膜頂点位置KLの方向とずれ量ΔdLに基づいて、左眼ELが左眼用の検査視標を観察した際の見え方を示す第1画像を、モニタ6aに表示させる。また、例えば、制御部70は、右眼ERの角膜頂点位置KRの方向とずれ量ΔdRに基づいて、右眼ERが右眼用の検査視標を観察した際の見え方を示す第2画像を、モニタ6aに表示させる。すなわち、制御部70は、第1画像と第2画像とを含む融像画像をモニタ6aに表示させる。
【0098】
図9は、モニタ6aの表示画面の一例である。図9(a)は、左眼EL及び右眼ERに眼位ずれがある状態での表示画面を示す。図9(b)は、左眼ELには眼位ずれがなく、右眼ERに眼位ずれがある状態での表示画面を示す。図9(c)は、左眼EL及び右眼ERに眼位ずれがない状態での表示画面を示す。本実施例において、モニタ6aには、融像画像140(第1画像140L及び第2画像140R)、基準位置130、識別マーク135、融像情報138、等が表示される。例えば、基準位置130は、左眼EL及び右眼ERに眼位ずれがないときに、第1画像140L及び第2画像140Rが位置する位置である。例えば、識別マーク135は、第1画像140Lと第2画像140Rとを識別可能とするマークである。例えば、融像情報138は、左眼EL及び右眼ERの融像状態を示す情報である。なお、モニタ6aには、左眼ELの前眼部画像150L、右眼ERの前眼部画像150R、等がともに表示されてもよい。
【0099】
制御部70は、左眼ELの眼位ずれに基づいて、第1画像140Lの表示位置を設定する。例えば、制御部70は、左眼ELのずれ量ΔdL2に基づき、第1画像140Lの基準位置130に対する表示位置の移動方向と移動量を決定する。同様に、制御部70は、右眼ERの眼位ずれに基づいて、第2画像140Rの表示位置を設定する。例えば、制御部70は、右眼ERのずれ量ΔdL2に基づき、第2画像140Rの基準位置130に対する表示位置の移動方向と移動量を決定する。なお、左眼EL及び右眼ERにおけるずれ量ΔdL2及びずれ量ΔdR2と、モニタ6aの表示画面を構成する画素数と、は予め対応付けられていてもよい。
【0100】
これによって、第1画像140Lの中央CLは、基準位置130に対して眼位ずれに基づく所定の位置に配置されるように、表示位置が設定される。また。これによって、第2画像140Rの中央CRは、基準位置130に対して眼位ずれに基づく所定の位置に配置されるように、表示位置が設定される。
【0101】
例えば、左眼EL及び右眼ERのいずれにも眼位ずれがある状態では、第1画像140Lの中央CLと、第2画像140Rの中央CRと、が基準位置130に対して眼位ずれに基づく所定の位置に配置されるように、表示位置が設定される。このため、例えば、図9(a)のように、第1画像140Lと第2画像140Rが、互いに重ならず離れて表示される。例えば、左眼ELに眼位ずれがなく、右眼ERに眼位ずれがある状態では、第1画像140Lの中央CLが基準位置130に配置され、第2画像140Rの中央CRが基準位置130に対して眼位ずれに基づく所定の位置に配置されるように、表示位置が設定される。このため、例えば、図9(b)のように、第1画像140Lと第2画像140Rは、一部が重なって表示される。
【0102】
なお、図9(a)及び図9(b)において、左眼EL及び右眼ERの少なくともいずれかの眼位ずれが大きいほど、第1画像140Lと第2画像140Rとは離れて表示される。また、図9(a)及び図9(b)において、左眼EL及び右眼ERの少なくともいずれかの眼位ずれが小さいほど、第1画像140Lと第2画像140Rとは部分的に重なって表示される。
【0103】
また、例えば、左眼EL及び右眼ERのいずれにも眼位ずれがない状態では、第1画像140Lの中央CLが基準位置130に配置されるとともに、第2画像140Rの中央CRが基準位置130に配置される。このため、例えば、図9(c)のように、第1画像140Lと第2画像140Rとが一致し、全体的に重なって表示される。
【0104】
例えば、検者は、モニタ6aを確認し、第1画像140Lと第2画像140Rとの位置関係を確認することで、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の適否を、容易に把握することができる。
【0105】
本実施例において、第1画像140Lと第2画像140Rとの少なくとも一部が重なり、第1画像140Lと第2画像140Rとの一方の画像が他方の画像に隠れてしまった場合には、第1画像140Lと第2画像140Rとの位置関係を確認しづらく、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の適否を把握できないことがある。特に、第1画像140Lと第2画像140Rとが部分的に重なる場合は、このような状況になりやすい。このため、制御部70は、第1画像140Lと第2画像140Rとの透過率を変更して、モニタ6aに表示させてもよい。一例として、第1画像140Lと第2画像140Rとの透過率を、それぞれ50%として、モニタ6aに表示させてもよい。これによって、検者は、第1画像140Lと第2画像140Rとの少なくとも一部が重なる場合であっても、第1画像140Lと第2画像140Rをどちらも視認できるようになる。
【0106】
また、本実施例において、第1画像140Lと第2画像140Rとが重ならない場合、あるいは、第1画像140Lと第2画像140Rとが部分的に重なる場合には、左眼ELが検査視標を観察した見え方と、右眼ERが検査視標を観察した見え方と、に第1画像140Lと第2画像140Rとのいずれが対応しているかがわからなくなることがある。このため、制御部70は、第1画像140Lと第2画像140Rとに、識別マーク135を表示させてもよい。一例として、第1画像140Lには左を表す記号を、第2画像140Rには右を表す記号を、それぞれ付してもよい。これによって、検者は、左眼ELと右眼ERのいずれの眼で観察している画像が、第1画像140Lまたは第2画像140Rに対応しているかを、容易に把握することができる。また、これによって、検者は、左眼ELと右眼ERのいずれの眼で観察している画像が、前述の基準位置130に対してずれているか(言い換えると、左眼EL及び右眼ERのいずれに眼位ずれが生じているか)を直感的に理解することができる。
【0107】
さらに、本実施例において、制御部70は、第1画像140Lと第2画像140Rとに、融像情報138を表示してもよい。例えば、融像情報138は、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれを表す、プリズムの量であってもよい。一例として、8プリズム(Δ8)、5プリズム(Δ5)、等の数値を表示してもよい。また、例えば、融像情報138は、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれを表す、プリズムの方向(基底の方向)であってもよい。一例として、Base In(BI)、Base Out(BO)、等の指標を表示してもよい。これによって、特に、第1画像140Lと第2画像140Rとが離れる場合、あるいは、部分的に重なる場合に、左眼EL及び右眼ERにおける眼位ずれの程度を容易に理解し、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の適否(例えば、融像状態の不良の程度)を把握することができる。
【0108】
<眼位ずれに基づく処方>
例えば、検者は、第1画像140Lと第2画像140Rとの位置関係から、左眼ELと右眼ERの融像状態を把握することで、左眼EL及び右眼ERに対して適切な処方を行うことができる。例えば、検者は、モニタ6aの表示画面に、図8(a)及び図8(b)のような融像画像140が表示された場合、眼位ずれがある眼に対し、眼位ずれ(例えば、前述のプリズム量)に基づいたプリズムレンズを配置してもよい。
【0109】
また、例えば、検者は、左眼EL及び右眼ERが融像しやすいように、眼位ずれに基づいて、検査視標の呈示位置を移動させてもよい。この場合、制御部70は、左眼EL及び右眼ERに対する検査視標の見かけ上の呈示位置(すなわち、ディスプレイ31L及びディスプレイ31Rの表示画面における見かけ上の呈示位置)を移動させるため、偏向ミラー81の回転を制御して、輻輳角度を変更してもよい。例えば、左眼EL及び右眼ERの眼位ずれに基づいて、偏向ミラー81の回転量が自動で設定されてもよい。また、例えば、検者がモニタ6aを操作することにより、偏向ミラー81の回転量が手動で設定されてもよい。一例としては、検者がモニタ6a上で第1画像140L及び第2画像140Rの少なくともいずれかの表示位置を移動させた移動量に基づいて、偏向ミラー81の回転量が設定されてもよい。なお、モニタ6aの表示画面を構成する画素数と、偏向ミラー81の回転量と、は予め対応付けられていてもよい。
【0110】
これによって、例えば、モニタ6aの表示画面で、図8(a)及び図8(b)に示す融像画像140が、図8(c)に示す融像画像140へと変化する。すなわち、第1画像140Lと第2画像140Rとが互いに近づき、第1画像140Lと第2画像140Rとが一致するように変化する。例えば、このような場合に、検者は、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の不良が改善されたと判断することができる。
【0111】
以上説明したように、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、被検者の左眼及び右眼の眼位情報に基づいて、左眼で視標を観察した場合の見え方を示す第1画像と、右眼で視標を観察した場合の見え方を示す第2画像と、の位置関係を設定した融像画像を表示させる。これによって、検者は、被検者が左眼及び右眼で視標を観察した両眼での見え方を、容易に想像することができる。また、これによって、検者は、被検者の左眼及び右眼による融像状態を、容易に把握することができる。
【0112】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1画像と第2画像との少なくともいずれかの透過率を変更した融像画像を表示させる。これによって、検者は、第1画像と第2画像とが全体的に、あるいは、部分的に重なる場合であっても、第1画像と第2画像との重なり具合を容易に把握することができる。特に、第1画像と第2画像とが部分的に重なる場合には、第1画像と第2画像との境目がわかるため、互いのずれを把握しやすくなる。なお、第1画像と第2画像との透過率を互いに異なる透過率に変更することで、第1画像と第2画像とを識別させることも可能となる。
【0113】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1画像と第2画像とを識別可能な融像画像を表示させる。これによって、検者は、各々の画像を区別し、第1画像と第2画像とのずれを把握しやすくなる。
【0114】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、左眼で観察された視標に第1画像が対応し、右眼で観察された視標に第2画像が対応することを識別可能な融像画像を表示させる。これによって、検者は、各々の画像を区別でき、第1画像と第2画像とのずれを把握しやすくなるとともに、左右のずれの程度(言い換えると、左眼及び右眼による融像状態の適否)を容易に確認することができる。なお、例えば、左眼及び右眼の融像状態によっては、必ずしもモニタの表示画面の左側に第1画像が位置し、右側に第2画像が位置するとは限らない。各々の眼で観察された視標に、各々の画像を対応させる構成とすれば、このような場合でも、検者は左右のずれの程度を理解しやすくなる。
【0115】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、融像画像とともに、第1画像及び第2画像が位置する基準位置であって、左眼と右眼の融像状態が良好とされる基準位置を表示させる。これによって、検者は、基準位置に対する第1画像及び第2画像のずれから、左眼及び右眼の斜位の方向等を、容易に判断することができる。また、これによって、検者は、基準位置に対する第1画像及び第2画像のずれに基づいて、左眼及び右眼に対する適切な検査を行うことができる。
【0116】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、融像画像とともに、融像状態を示す融像情報を表示させる。例えば、融像状態の適否、左眼と右眼のずれ量、等を表示させてもよい。これによって、検者は、被検者の左眼及び右眼による融像状態を、より容易に把握することができる。
【0117】
また、例えば、本実施例における自覚式検眼装置は、第1画像と第2画像とを重畳させた融像画像を表示させる。このため、左眼で観察された視標に対応する画像と、右眼で観察された視標に対応する画像と、を別々に表示する場合に比べて、被検者の両眼での見え方を、直観的に想像することができる。
【0118】
<変容例>
なお、本実施例では、観察光学系50を用いることで、左眼EL及び右眼ERの前眼部画像を取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、本実施例では、撮像部90が備える図示なき撮像光学系を用いることで、左眼EL及び右眼ERの前眼部画像を取得する構成としてもよい。例えば、この場合、被検者の左眼EL及び右眼ERを少なくとも含む顔画像が、前眼部画像として取得される。制御部70は、顔画像(前眼部画像)から左眼EL及び右眼ERの眼位を取得し、眼位に基づいた融像画像を、モニタ6aに表示させる。
【0119】
ここで、被検者の顔が傾いていた場合等は、左眼EL及び右眼ERによる融像が上手くできず、融像画像における第1画像140Lと第2画像140Rが上下方向にずれて表示されることがある。このため、制御部70は、顔画像を融像画像とともにモニタ6aに表示させるようにしてもよい。検者は、顔画像を確認することで、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の不良が、顔の傾きに基づくものであるか、あるいは、眼位ずれに基づくものであるかを、容易に判断することができるようになる。
【0120】
なお、本実施例では、左眼EL及び右眼ERに、所定の呈示距離で検査視標を呈示する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本実施例では、左眼EL及び右眼ERに、呈示距離を連続的に変化させて検査視標を呈示する構成としてもよい。制御部70は、ディスプレイ31L及びディスプレイ31Rの表示を制御するとともに、ディスプレイ31L及びディスプレイ31Rを一定の速度で徐々に移動させることで、左眼EL及び右眼ERに、呈示距離に対応した検査視標を呈示することができる。
【0121】
例えば、このとき、制御部70は、ディスプレイ31L及びディスプレイ31Rを移動させる間に、左眼EL及び右眼ERの前眼部画像をリアルタイムに取得し、このような新たに取得された前眼部画像に基づいて、逐次、眼位を取得してもよい。また、例えば、制御部70は、新たに眼位を取得する毎に、融像画像を更新するための出力信号を出力し、出力信号に基づいて、融像画像をリアルタイムに更新し、モニタ6aに表示させてもよい。これによって、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の変化を、リアルタイムに把握することができる。
【0122】
なお、本実施例では、左眼ELが検査視標を観察した場合の見え方を示す第1画像140Lと、右眼ERが検査視標を観察した場合の見え方を示す第2画像140Rと、が同一サイズの画像である構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1画像140Lと第2画像140Rとを異なるサイズの画像とする構成であってもよい。例えば、左眼ELに呈示される検査視標と、右眼ERに呈示される検査視標と、が同一サイズの検査視標であっても、左眼ELと右眼ERの度数に2D以上の差がある場合等は、不等像視の状態になりやすい。このため、制御部70は、左眼ELと右眼ERの度数の差を考慮し、第1画像140Lと第2画像140Rのサイズを変更して、モニタ6aに表示させてもよい。検者は、基準位置130に対して第1画像140Lと第2画像140Rとがずれていたときに、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の不良が、不等像視に基づくものであると推測することができる。
【0123】
例えば、このような場合、制御部70は、左眼ELと右眼ERの度数の差を考慮した検査視標を、ディスプレイ31L及びディスプレイ31Rに表示させてもよい。すなわち、制御部70は、左眼ELに呈示される検査視標と、右眼ERに呈示される検査視標と、を異なるサイズでディスプレイ31L及びディスプレイ31Rに表示させてもよい。これによって、左眼ELと右眼ERにおける不等像視の状態を改善させてもよい。検者は、再度、基準位置130に対する第1画像140Lと第2画像140Rとのずれを確認し、左眼EL及び右眼ERによる融像状態の不良が改善されるか否かを検査してもよい。
【0124】
なお、本実施例では、被検者の左眼EL及び右眼ERに検査視標を呈示する際に、左眼EL及び右眼ERに対する検査視標の呈示距離に基づいた視差を設定してもよい。この場合、制御部70は、ディスプレイ31Lに表示させる左眼用の検査視標と、ディスプレイ31Rに表示させる右眼用の検査視標と、が浮き上がる(もしくは、沈み込む)ような視差量を設定し、検査視標に立体感をもたせることができる。例えば、左眼EL及び右眼ERに検査視標を遠用呈示距離にて呈示する場合は、各々の検査視標の視差量を小さく設定する。また、例えば、左眼EL及び右眼ERに検査視標を近用呈示距離にて呈示する場合は、各々の検査視標の視差量を大きく設定する。これによって、左眼EL及び右眼ERは、左眼用の検査視標と右眼用の検査視標とが呈示された際、これらの検査視標を融像しやすくなる。
【0125】
制御部70は、左眼EL及び右眼ERがこのような検査視標を観察した状態における各々の前眼部画像から眼位を取得し、眼位に基づいた融像画像をモニタ6aに表示させる。このとき、左眼EL及び右眼ERに呈示する検査視標と同様に、左眼ELにおける検査視標の見え方を示す第1画像140Lと、右眼ERにおける検査視標の見え方を示す第2画像140Rと、に視差量が設定されていると、融像状態を確認しづらいことがある。例えば、被検者は所定の呈示距離で視差をもつ検査視標を観察するが、検者は所定の呈示距離とは異なる距離で視差をもつ第1画像140L及び第2画像140Rを観察することになるため、これらの画像が全体的に重なってもずれがあるように感じられる。
【0126】
そこで、制御部70は、第1画像140L及び第2画像140Rが全体的に重なってもこのようなずれが生じないように、これらの画像の表示を制御してもよい。例えば、制御部70は、視差量を設定していない第1画像140Lと第2画像140Rを表示させてもよい。また、例えば、制御部70は、第1画像140Lに視差量を設定して表示させるとともに、この第1画像140Lと同一の画像を第2画像140Rとして表示させてもよい。もちろん、例えば、制御部70は、第2画像140Rに視差量を設定して表示させるとともに、この第2画像140Rと同一の画像を第1画像140Lとして表示させてもよい。
【符号の説明】
【0127】
1 自覚式検眼装置
7 測定部
25 自覚式測定光学系
70 制御部
75 メモリ
81 偏向ミラー
84 反射ミラー
85 凹面ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9