IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-充電率推定装置 図1
  • 特許-充電率推定装置 図2
  • 特許-充電率推定装置 図3
  • 特許-充電率推定装置 図4
  • 特許-充電率推定装置 図5
  • 特許-充電率推定装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-17
(45)【発行日】2023-04-25
(54)【発明の名称】充電率推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/388 20190101AFI20230418BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230418BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20230418BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230418BHJP
   G01R 31/396 20190101ALI20230418BHJP
【FI】
G01R31/388
H02J7/00 X
G01R31/3828
H01M10/48 P
G01R31/396
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019162130
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021039063
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大森 保
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-080560(JP,A)
【文献】国際公開第2013/051135(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0241622(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109655753(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/388
H02J 7/00
G01R 31/3828
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する複数のセルユニットを並列接続した組電池の充電率を推定する充電率推定装置であって、
前記セルユニット毎に設けられた監視装置のそれぞれから、前記セルユニットの各電池セルのうち充電状態の推定値が最も高い高電池セルの前記推定値、及び前記推定値が最も低い低電池セルの前記推定値を取得する推定値取得部と、
前記監視装置のそれぞれから前記セルユニットの充電率を取得する充電率取得部と、
前記監視装置のそれぞれから前記セルユニットに流れる電流の検出値を取得する電流取得部と、
前記セルユニットそれぞれの前記高電池セルの前記推定値及び前記低電池セルの前記推定値が予め定められた上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否かを判定する判定部と、
前記判定部による判定の結果、前記高電池セル及び前記低電池セルの全ての前記推定値が前記範囲内に含まれている場合、前記セルユニットの充電率の平均値を算出し、前記平均値を所定の範囲毎に区分けした区分と前記セルユニットを充電率の高い順に並べた際の順番とを対応付けたデータであって前記平均値が高い区分ほど高い前記順番に対応付けたデータに基づいて、算出された前記平均値に対応する前記セルユニットを選定し、選定された前記セルユニットの充電率を前記組電池の充電率として採用する選定制御部と、
前記判定部による判定の結果、前記高電池セル及び前記低電池セルのうちの少なくとも1つの前記推定値が前記範囲外となる場合、当該判定が行われる前の制御周期で推定された前記組電池の充電率と前記監視装置から取得した前記検出値とに基づき、電流積算法により前記組電池の充電率を推定する積算制御部と、を備える充電率推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電率推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電気自動車は、組電池と、監視装置と、情報集約装置と、を備える。組電池は、複数の電池セルを有するセルユニットを複数備える。監視装置は、セルユニット毎に設けられている。監視装置は、セルユニットの状態を監視している。情報集約装置には、各監視装置から情報が送られる。情報集約装置は、監視装置から送られる情報から組電池の充電率を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-132761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の電池セルを有する複数のセルユニットを並列接続した組電池の充電率を推定する場合、セルユニット毎に設けられた監視装置によってセルユニットの充電率を推定し、推定した充電率の情報を情報集約装置に送る場合がある。情報集約装置は、セルユニットの充電率の平均値を算出し、算出した平均値に基づきセルユニットを選定する。情報集約装置は、選定したセルユニットの充電率を組電池の充電率として採用する。このように、複数のセルユニットから1つのセルユニットを選定し、選定されたセルユニットの充電率を組電池の充電率とする場合、監視装置による充電率の推定精度によっては、組電池の充電率の推定精度が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、組電池の充電率の推定精度を向上させることができる充電率推定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する充電率推定装置は、複数の電池セルを有する複数のセルユニットを並列接続した組電池の充電率を推定する充電率推定装置であって、前記セルユニット毎に設けられた監視装置のそれぞれから、前記セルユニットの各電池セルのうち充電状態の推定値が最も高い高電池セルの前記推定値、及び前記推定値が最も低い低電池セルの前記推定値を取得する推定値取得部と、前記監視装置のそれぞれから前記セルユニットの充電率を取得する充電率取得部と、前記監視装置のそれぞれから前記セルユニットに流れる電流の検出値を取得する電流取得部と、前記セルユニットそれぞれの前記高電池セルの前記推定値及び前記低電池セルの前記推定値が予め定められた上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定の結果、前記高電池セル及び前記低電池セルの全ての前記推定値が前記範囲内に含まれている場合、前記セルユニットの充電率の平均値を算出し、前記平均値が高いほど充電率の高い前記セルユニットを選定し、選定された前記セルユニットの充電率を前記組電池の充電率として採用する選定制御部と、前記判定部による判定の結果、前記高電池セル及び前記低電池セルのうちの少なくとも1つの前記推定値が前記範囲外となる場合、当該判定が行われる前の制御周期で推定された前記組電池の充電率と前記監視装置から取得した前記検出値とに基づき、電流積算法により前記組電池の充電率を推定する積算制御部と、を備える。
【0007】
充電率推定装置は、全ての高電池セル及び低電池セルの充電状態の推定値が範囲内に含まれている場合には選定制御部により組電池の充電率を推定する。一方で、充電率推定装置は、少なくとも1つの高電池セル及び低電池セルの推定値が範囲外となる場合、積算制御部により組電池の充電率を推定する。監視装置により推定されるセルユニットの充電率は、セルユニットが満充電に近づくと、実際の充電率よりも高い値になる場合がある。これは、監視装置によりセルユニットが満充電と判定されると、充電率が100[%]ではないにも関わらず監視装置が充電率を100[%]とみなすためである。同様に、監視装置により推定されるセルユニットの充電率は、セルユニットが完全放電に近づくと、実際の充電率よりも低い値になる場合がある。これは、監視装置によりセルユニットが完全放電と判定されると、充電率が0[%]ではないにも関わらず監視装置が充電率を0[%]とみなすためである。即ち、監視装置によりセルユニットが満充電と判定されたり、完全放電と判定されると、監視装置による充電率の推定精度が低下する。電池セルの充電状態の推定値が上限値と下限値との間の範囲内に含まれている場合、セルユニットは満充電でも完全放電でもないため、選定制御部により組電池の充電率を推定することができる。一方で、電池セルの充電状態の推定値が範囲外となる場合、セルユニットは満充電、あるいは、完全放電のおそれがある。この場合には、監視装置によるセルユニットの充電率の推定精度が低下しているおそれがあるため、監視装置から取得した電流の検出値を用いて電流積算法により組電池の充電率を推定する。これにより、推定精度が低下しているおそれのある充電率を用いずに組電池の充電率を推定することができる。電池セルの充電状態の推定値に関わらず、常に選定制御部により組電池の充電率を推定する場合に比べて、組電池の充電率の推定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、組電池の充電率の推定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】無人搬送車が用いられるコンテナターミナルを模式的に示す図。
図2】無人搬送車の概略構成図。
図3】組電池の充電率を推定する際に情報集約装置が行う処理を示すフローチャート。
図4】選定制御について説明するための図。
図5】選定制御について説明するための図。
図6】選定制御について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、充電率推定装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、港湾のコンテナターミナルでは、管制塔71からの指令により複数台の無人搬送車10が予め定められた走行経路Rを走行している。図1では、走行経路Rを1つのみ図示しているが、走行経路Rは複数であってもよい。コンテナターミナルには、無人搬送車10にコンテナCを積載する積載位置P1及び充電器72が配置された充電位置P2が設定されている。各無人搬送車10は、管制塔71からの指令によりコンテナCの積載位置P1に停車する。ガントリークレーン73は、コンテナCを吊り下げた状態でコンテナCの積載位置P1まで移動させられる。ガントリークレーン73は、積載位置P1に停車した無人搬送車10にコンテナ船CSからコンテナCを積載する。コンテナCが積載された無人搬送車10は、走行経路Rに沿ってラバータイヤクレーン74まで走行する。ラバータイヤクレーン74により無人搬送車10に積載されたコンテナCが降ろされる。コンテナCが降ろされた無人搬送車10は、走行経路Rに沿ってガントリークレーン73まで戻る。
【0011】
図2に示すように、無人搬送車10は、複数の電池ユニット11と、インバータ21と、走行用モータ22と、充電口23と、車両ECU31と、情報集約装置41と、を備える。電池ユニット11は、複数設けられていればよく、その数は任意である。各電池ユニット11の構成は同一である。各電池ユニット11は、セルユニット12と、電圧検出部15と、電流検出部16と、電池ECU17と、を備える。
【0012】
セルユニット12は、複数の電池セル13を備える。電池セル13は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池など充放電可能なものであればどのようなものを用いていてもよい。複数の電池セル13同士は直列接続されている。なお、電池セル13は、並列接続されていてもよいし、直列接続、又は並列接続された複数の電池セル13同士を直列接続や並列接続したものであってもよい。即ち、複数の電池セル13同士の接続態様は任意である。
【0013】
電圧検出部15は、電池セル13毎の端子間電圧を検出する。本実施形態の端子間電圧は、セルユニット12と走行用モータ22とが接続された状態で電圧検出部15により検出される閉回路電圧である。電流検出部16は、セルユニット12に流れる電流を検出する。電流には、電池セル13からの放電電流及び電池セル13への充電電流が含まれる。なお、以下の説明において、放電電流及び充電電流を総称して充放電電流と称する。
【0014】
電池ECU17は、ハードウェアとしてCPU18及び記憶部19を備える電子制御ユニット:Electronic Control Unitである。電池ECU17は、セルユニット12の状態の監視等、セルユニット12に関する制御を行う。記憶部19には、セルユニット12を制御するための種々のプログラムが記憶されている。CPU18は、記憶部19を参照することで種々の処理を実行する。CPU18は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。記憶部19は、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0015】
電池ECU17は、電圧検出部15の検出値である端子間電圧、及び電流検出部16の検出値である充放電電流を取得可能である。電池セル13のSOC=充電率と電池セル13の端子間電圧には相間関係があり、電池セル13の充電率が低下するほど電池セル13の端子間電圧は低下する。従って、電池セル13の端子間電圧から電池セル13の充電率を推定することができる。本実施形態において、電池セル13の充電状態の推定値は、電池セル13の端子間電圧である。
【0016】
電池ECU17は、セルユニット12の充電率を推定する。セルユニット12の充電率は、電流積算法により推定される。電流積算法は、セルユニット12の充放電電流を積算することにより充電率を推定する方法である。電池ECU17は、セルユニット12の充放電が開始されると、セルユニット12の充放電電流と所定周期との積を所定周期毎に積算することでセルユニット12の容量の変化量[Ah]を算出する。電池ECU17は、セルユニット12の容量の変化量をセルユニット12の満充電容量[Ah]で除算することでセルユニット12の充電率の変化量を算出する。電池ECU17は、セルユニット12の充放電前の充電率に算出した充電率の変化量を加算、あるいは、減算することでセルユニット12の充電率を推定する。セルユニット12の満充電容量は、記憶部19に記憶されている。なお、セルユニット12の充電率は、各電池セル13の端子間電圧から電池セル13の充電率を推定し、電池セル13の充電率から代表値を選定することで推定されてもよい。また、セルユニット12の充電率は、各電池セル13の充電率の平均値としてもよい。即ち、セルユニット12の充電率の推定は、任意の手法で行うことができる。
【0017】
複数のセルユニット12同士は互いに並列接続されている。これにより、複数のセルユニット12によって組電池14が構成されている。各電池ユニット11の電池ECU17は、組電池14のセルユニット12毎に設けられ、セルユニット12の監視を行う監視装置として機能している。
【0018】
インバータ21は、組電池14から入力される直流電力を交流電力に変換して走行用モータ22に出力する。なお、無人搬送車10は、組電池14の直流電力を変圧してインバータ21に出力するコンバータを備えていてもよい。
【0019】
走行用モータ22は、交流回転電機である。走行用モータ22は、インバータ21に接続されている。走行用モータ22は、インバータ21からの電力供給時には電動機として動作し、回転駆動力を発生させる。この回転駆動力が車軸を通じて駆動輪に伝達されることで無人搬送車10は走行する。一方、走行用モータ22は、無人搬送車10の制動時や下り斜面での加速度低減時には発電機として動作し、回生発電を行なう。走行用モータ22が発電した電力は、充電電流としてインバータ21を通じて組電池14に供給される。
【0020】
充電口23は、充電器72に接続可能なインレットである。充電口23は、組電池14と充電器72とを接続する。
車両ECU31は、ハードウェアとしてCPU32と、記憶部33と、を備える。車両ECU31は、無人搬送車10の走行に関する制御を行う。例えば、車両ECU31は、インバータ21を制御することで無人搬送車10の走行速度等を制御して無人搬送車10を走行させる。記憶部33には、無人搬送車10を制御するための種々のプログラムが記憶されている。記憶部33は、RAM及びROMなどで構成される。電池ECU17と同様に、車両ECU31は、特定用途向け集積回路:ASICを備えてもよい。車両ECU31は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、或いはそれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。
【0021】
情報集約装置41は、組電池14に対して1つ設けられている。情報集約装置41は、ハードウェアとしてCPU42と、記憶部43と、を備える。記憶部43は、RAM及びROMなどで構成される。CPU42は、記憶部43を参照することで種々の処理を実行する。CPU42は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。記憶部43は、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0022】
情報集約装置41は、各電池ECU17からセルユニット12についての情報を取得する。即ち、各セルユニット12についての情報は情報集約装置41に集約される。本実施形態では、情報集約装置41は、セルユニット12の充電率、セルユニット12を構成する全ての電池セル13の端子間電圧、及びセルユニット12の充放電電流に関する情報を各電池ECU17から取得する。セルユニット12を構成する全ての電池セル13には、端子間電圧が最も高い高電池セルと、端子間電圧が最も低い低電池セルとが含まれている。従って、情報集約装置41は、高電池セルの端子間電圧及び低電池セルの端子間電圧の情報を取得しているといえる。情報集約装置41は、推定値取得部、充電率取得部及び電流取得部として機能している。情報集約装置41は、各電池ECU17から取得した情報を用いて組電池14の充電率を推定する。情報集約装置41は、推定した組電池14の充電率を車両ECU31に送る。
【0023】
無人搬送車10では、組電池14の充電率に応じて組電池14の入出力制限が行われる。入力制限は、組電池14を構成する各セルユニット12の少なくとも1つの充電率が第1閾値より高くなった場合に行われる。第1閾値は、セルユニット12の充電率が過剰に高くならないように設定された値である。出力制限は、組電池14を構成する各セルユニット12の少なくとも1つの充電率が第1閾値よりも低い第2閾値より低くなった場合に行われる。第2閾値は、セルユニット12の充電率が過剰に低くならないように設定された値である。
【0024】
組電池14の出力制限は、出力制限値を設定することで行われる。車両ECU31によって出力制限値が設定されると、インバータ21は組電池14の出力が出力制限値を上回らないように制御される。組電池14の入力制限は、車両ECU31によって入力制限値を設定することで行われる。入力制限値が設定されると、インバータ21は組電池14への入力が入力制限値を上回らないように制御される。インバータ21による組電池14の出力及び入力の制御は、公知の手段によって行われ、特に限定されない。例えば、インバータ21のスイッチング周波数を変化させ、デューティ比を増減させることで、組電池14の出力及び入力の制御を行うことができる。なお、本実施形態の入力制限は、回生による組電池14の充電時に行われるが、充電器72による組電池14の充電時に行われてもよい。この場合の入力制限は、充電器72により実施される。
【0025】
次に、情報集約装置41が組電池14の充電率を推定する際に行う処理について説明する。
図3に示すように、ステップS1において、情報集約装置41は、セルユニット12それぞれの各電池セル13の端子間電圧が予め定められた上限値以上か否かを判定する。上限値としては、例えば、電池セル13が満充電の場合の端子間電圧や、電池セル13が満充電の場合の端子間電圧よりも若干低い値が用いられる。即ち、電池ECU17で満充電判定が行われたことを情報集約装置41で判定できるように上限値は設定されている。ステップS1の判定結果が肯定の場合、情報集約装置41はステップS2の処理を行う。一方で、ステップS1の判定結果が否定の場合、情報集約装置41はステップS3の処理を行う。
【0026】
ステップS2において、情報集約装置41は、充電率推定をオンにする。また、1回前の制御周期で、後述するステップS6又はステップS7で推定された組電池14の充電率を記憶部43のRAMに記憶する。情報集約装置41は、ステップS2の処理を終えると、ステップS3の処理を行う。
【0027】
ステップS3において、情報集約装置41は、セルユニット12それぞれの各電池セル13の端子間電圧が予め定められた下限値以下か否かを判定する。下限値としては、例えば、電池セル13が完全放電の場合の端子間電圧や、電池セル13が完全放電の場合の端子間電圧よりも若干高い値が用いられる。即ち、電池ECU17で完全放電判定が行われたことを情報集約装置41で判定できるように下限値は設定されている。ステップS3の判定結果が肯定の場合、情報集約装置41はステップS4の処理を行う。一方で、ステップS3の判定結果が否定の場合、情報集約装置41はステップS5の処理を行う。
【0028】
ステップS4において、情報集約装置41は、充電率推定をオンにする。また、1回前の制御周期で、後述するステップS6又はステップS7で推定された組電池14の充電率を記憶部43のRAMに記憶する。即ち、ステップS4では、ステップS2と同様の処理が行われる。言い換えれば、ステップS1及びステップS3では、セルユニット12それぞれについて、各電池セル13の端子間電圧が予め定められた上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否かの判定が行われる。そして、判定の結果、端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲外となる電池セル13が存在する場合、1回前の制御周期で情報集約装置41によって推定された充電率が記憶部43に記憶されることになる。なお、各電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否か判定されることで、高電池セルの端子間電圧及び低電池セルの端子間電圧についても、上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否かが判定されているといえる。情報集約装置41は、ステップS1及びステップS3の処理を行うことで、判定部として機能している。情報集約装置41は、ステップS4の処理を終えると、ステップS5の処理を行う。
【0029】
ステップS5において、情報集約装置41は、充電率推定がオンか否かを判定する。情報集約装置41は、ステップS5の判定結果が否定であれば、ステップS6の処理を行う。一方で、情報集約装置41は、ステップS5の判定結果が肯定であれば、ステップS7の処理を行う。
【0030】
ステップS6において、情報集約装置41は、選定制御を行う。選定制御は、複数のセルユニット12の充電率のうち、組電池14の充電率として採用する充電率を選定する制御である。情報集約装置41は、セルユニット12の充電率の平均値を算出し、平均値が高いほど充電率の高いセルユニット12を選定する。そして、選定されたセルユニット12の充電率を組電池14の充電率として採用する。以下、詳細に説明を行う。
【0031】
図4に示すように、各セルユニット12の充電率にはばらつきが生じる。このため、各セルユニット12の充電率を高い順に整列させると、充電率の高い順に1番目~n番目のセルユニット12が存在することになる。なお、nはセルユニット12の数であり、2以上の自然数である。図4に示す例では、nは4以上の自然数になる。
【0032】
情報集約装置41は、全てのセルユニット12の充電率を加算し、nで除算することでセルユニット12の充電率の平均値を算出する。情報集約装置41は、充電率の平均値の区分と、選定されるセルユニット12の順番とを対応付けたデータを記憶部43に記憶しており、このデータに従ってセルユニット12の選定を行う。なお、セルユニット12の順番とは、充電率が高い順にセルユニット12を整列させたときの順番である。
【0033】
図5に示すように、充電率の平均値の区分は、所定の範囲毎の区分である。図5では、充電率の平均値は、100~a[%]、a~b[%]、b~c[%]…z~0[%]の範囲で区分けされている。なお、aは100よりも低い値であり、zは0よりも高い値である。また、a>b>c…>zの順に高い値である。選定されるセルユニット12は、セルユニット12を充電率の高い順に並べたときの順番によって定められている。図5では、100~a[%]の区分には1番高い充電率のセルユニット12、a~b[%]の区分には2番目に高い充電率のセルユニット12、b~c[%]の区分には3番目に高い充電率のセルユニット12、z~0[%]の区分には充電率が最も低いセルユニット12がそれぞれ対応付けられている。
【0034】
図6に示すように、情報集約装置41は、充電率の平均値の区分に応じて、充電率の順序に従ったセルユニット12を選定することで、充電率の平均値が高いほど充電率の高いセルユニット12を選定することになる。例えば、充電率の平均値が最も高い区分では、最も充電率の高いセルユニット12が選定され、充電率の平均値が最も低い区分では、最も充電率の低いセルユニット12が選定される。情報集約装置41は、ステップS6の処理を行うことで選定制御部として機能している。
【0035】
次に、ステップS7の処理について説明する。
図3に示すように、ステップS7において、情報集約装置41は、電流積算法で組電池14の充電率を推定する。詳細にいえば、情報集約装置41は、ステップS2又はステップS4で記憶部43に記憶した充電率と、電池ECU17から取得した電流検出部16の検出値とに基づき、組電池14の充電率を推定する。ステップS2又はステップS4で記憶された充電率は、1回前の制御周期で推定された充電率であるため、ステップS7の処理を行う時点で、制御周期の分だけセルユニット12が充放電されているといえる。情報集約装置41は、セルユニット12の充放電電流と制御周期とを積算することでセルユニット12の容量の変化量[Ah]を算出する。情報集約装置41は、セルユニット12の容量の変化量をセルユニット12の満充電容量[Ah]で除算することでセルユニット12の充電率の変化量を算出する。情報集約装置41は、ステップS2又はステップS4で記憶部43に記憶された充電率に、算出した充電率の変化量を加算、あるいは、減算することでセルユニット12の充電率を推定する。なお、セルユニット12の満充電容量は、記憶部43に記憶されていてもよいし、電池ECU17から取得してもよい。また、情報集約装置41が電流積算に用いる充放電電流は、直近の選定制御で選定されたセルユニット12の充放電電流を用いることが好ましい。情報集約装置41は、ステップS2、ステップS4及びステップS7の処理を行うことで積算制御部として機能している。
【0036】
次に、ステップS8において、情報集約装置41は、セルユニット12それぞれの各電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲内に含まれているか否かを判定する。即ち、ステップS1又はステップS3で範囲外と判定された電池セル13が範囲内に含まれるようになったか否かを判定する。ステップS8の判定結果が肯定の場合、情報集約装置41はステップS9の処理を行う。一方で、ステップS8の判定結果が否定の場合、情報集約装置41は処理を終了する。
【0037】
情報集約装置41は、ステップS9において、充電率推定をオフにして処理を終了する。これにより、以降の制御周期では、選定制御により組電池14の充電率が推定されることになる。なお、ステップS1~ステップS9の処理は、所定の制御周期で繰り返し行われる。
【0038】
上記したように、本実施形態では、情報集約装置41が、各電池ECU17から取得した情報を用いてステップS1~ステップS9の処理を実行することで、組電池14の充電率は推定される。即ち、情報集約装置41が予め定められたプログラムに従って動作することで組電池14の充電率を推定する充電率推定装置として機能している。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。
電池ECU17により推定されるセルユニット12の充電率は、セルユニット12が満充電に近づくと、実際の充電率よりも高い値になる場合がある。これは、電池ECU17の種類によっては、セルユニット12の満充電判定が行われており、電池ECU17によりセルユニット12が満充電と判定されると、充電率が100[%]ではないにも関わらず電池ECU17が充電率を100[%]とみなすためである。例えば、電池ECU17により、セルユニット12の充電率が95[%]以上は満充電と判定されると、実際の充電率と電池ECU17により情報集約装置41に送られる充電率には最大で5[%]の差分が生じることになる。
【0040】
同様に、電池ECU17により推定されるセルユニット12の充電率は、セルユニット12が完全放電に近づくと、実際の充電率よりも低い値になる場合がある。これは、電池ECU17の種類によっては、セルユニット12の完全放電判定が行われており、電池ECU17によりセルユニット12が完全放電と判定されると、充電率が0[%]ではないにも関わらず電池ECU17が充電率を0[%]とみなすためである。例えば、電池ECU17により、セルユニット12の充電率が5[%]以下は完全放電と判定されると、実際の充電率と電池ECU17により情報集約装置41に送られる充電率には最大で5[%]の差分が生じることになる。
【0041】
従って、電池ECU17によりセルユニット12が満充電と判定されたり、完全放電と判定されると、電池ECU17によるセルユニット12の充電率の推定精度が低下する。結果として、セルユニット12が満充電に近い状態や完全放電に近い状態で、選定制御で組電池14の充電率を推定すると、推定精度の低下した状態の電池ECU17により推定された充電率が採用されるおそれがある。セルユニット12の充電率が100~a[%]の場合には、充電率が1番高いセルユニット12が選定されるため、電池ECU17により充電率が100[%]と推定されたセルユニット12が存在する場合には、このセルユニット12が選定されると考えられる。すると、実際には組電池14の充電率は100[%]より低いにも関わらず、組電池14の充電率は100[%]と判定される。結果として、組電池14には入力制限が課されることになり、実際には組電池14の充電を行えるにも関わらず、組電池14の充電が制限されるおそれがある。セルユニット12の充電率がz~0[%]の場合には、充電率が1番低いセルユニット12が選定されるため、電池ECU17により充電率が0[%]と推定されたセルユニット12が存在する場合には、このセルユニット12が選定されると考えられる。すると、実際には組電池14の充電率は0[%]より高いにも関わらず、組電池14の充電率は0[%]と判定される。結果として、組電池14には出力制限が課されることになり、実際には組電池14の放電を行えるにも関わらず、組電池14の放電が制限されるおそれがある。
【0042】
これに対し、本実施形態の情報集約装置41は、全ての電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲内に含まれている場合には選定制御により組電池14の充電率を推定する。一方で、情報集約装置41は、少なくとも1つの電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲外となる場合、電流積算法により組電池14の充電率を推定する。電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲内に含まれている場合、セルユニット12は満充電でも完全放電でもないため、選定制御により組電池14の充電率を推定することができる。一方で、電池セル13の端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲内に含まれていない場合、セルユニット12は満充電、あるいは、完全放電のおそれがある。この場合には、電池ECU17によるセルユニット12の充電率の推定精度が低下しているおそれがあるため、電池ECU17から取得した電流検出部16の検出値を用いて電流積算法により組電池14の充電率を推定する。
【0043】
なお、セルユニット12の充電率の推定を開回路電圧と充電率との相間関係から行うことも考えられる。しかしながら、電圧検出部15から開回路電圧を取得するためには、リレーによってセルユニット12と走行用モータ22との接続を遮断することでセルユニット12を走行用モータ22から切り離す必要がある。無人搬送車10の走行中には、セルユニット12と走行用モータ22とを切り離しにくいため、開回路電圧と充電率との相間関係から充電率の推定を行いにくい。これに対して、本実施形態では、開回路電圧を取得することなく、セルユニット12の充電率を推定しているため、セルユニット12と走行用モータ22との接続を遮断することなく、セルユニット12の充電率を推定することができる。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
(1)電池セル13の端子間電圧からセルユニット12が満充電、あるいは、完全放電のおそれがあるか否かを判定している。そして、セルユニット12が満充電、あるいは、完全放電のおそれがある場合、電池ECU17による充電率の推定精度が低下しているおそれがあるため、情報集約装置41で充電率の推定を行う。推定精度が低下しているおそれのある充電率を用いずに組電池14の充電率を推定することができる。電池セル13の端子間電圧に関わらず、常に選定制御により組電池14の充電率を推定する場合に比べて、組電池14の充電率の推定精度を向上させることができる。
【0045】
(2)情報集約装置41は、選定制御に際して、セルユニット12の充電率の平均値が高いほど充電率の高いセルユニット12を選定している。仮に、セルユニット12の充電率の平均値を組電池14の充電率として採用すると、1つのセルユニット12が入出力制限の必要となる充電率の場合に、他のセルユニット12の充電率によって入出力制限の必要となるセルユニット12の充電率が均されてしまう。結果として、入出力制限が必要にも関わらず入出力制限が行われず、セルユニット12の劣化が促進される場合がある。これに対し、セルユニット12の充電率の平均値が高いほど充電率の高いセルユニット12を選定すると、平均値が高い場合には充電率の高いセルユニット12が、平均値が低い場合には充電率の低いセルユニット12が選定される。従って、入出力制限の必要なセルユニット12の充電率が、他のセルユニット12の充電率によって均されることがなく、入出力制限が必要なセルユニット12が存在する場合に入出力制限が行われないことを抑止できる。
【0046】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○情報集約装置41は、電池ECU17のそれぞれから、少なくとも高電池セルの端子間電圧及び低電池セルの端子間電圧を取得できればよく、全ての電池セル13の端子間電圧を取得しなくてもよい。即ち、各電池ECU17は、全ての電池セル13の端子間電圧から、最も高い端子間電圧と、最も低い端子間電圧を選定して情報集約装置41に送信してもよい。情報集約装置41は、高電池セルの端子間電圧を取得することで、セルユニット12が満充電のおそれがあるか否かを判定することができる。情報集約装置41は、低電池セルの端子間電圧を取得することで、セルユニット12が完全放電のおそれがあるか否かを判定することができる。従って、この場合であっても実施形態と同様の制御を行うことができる。
【0047】
○電池セル13の充電状態の推定値として、端子間電圧に代えて、電池セル13の充電率を用いてもよい。電池セル13の充電率は、電流積算法により推定されてもよいし、電池セル13の端子間電圧から推定してもよい。電池セル13の端子間電圧から電池セル13の充電率を推定する場合、例えば、端子間電圧から開回路電圧を推定し、開回路電圧と電池セル13の充電率との相間関係から充電率の推定を行う。開回路電圧と電池セル13の充電率との相間関係は、例えば、電池ECU17の記憶部19に記憶される。また、電池セル13の充電状態の推定値として、端子間電圧に代えて、電池セル13の残容量[Ah]を用いてもよい。電池セル13の残容量は、電池セル13の充電率と電池セル13の満充電容量[Ah]から算出することができる。電池セル13の満充電容量は、例えば、電池ECU17の記憶部19に記憶される。
【0048】
○電池ECU17により推定されたセルユニット12の充電率と、情報集約装置41により電流積算法により推定されたセルユニット12の充電率との差が閾値以上の場合に、情報集約装置41は、組電池14に異常が生じていると判断してもよい。この場合、リレー等で組電池14と走行用モータ22とを遮断することで、組電池14の放電を規制してもよい。
【0049】
○情報集約装置41によって推定された組電池14の充電率は、入出力制限以外に用いられてもよい。無人搬送車10では、組電池14の充電率が低下すると、充電器72によって組電池14の充電を行う。情報集約装置41によって推定された組電池14の充電率から充電を行うか否かが判定されてもよい。
【0050】
○情報集約装置41は、端子間電圧が上限値と下限値との間の範囲外となる電池セル13が存在する場合、2回前や3回前の制御周期の充電率を記憶し、この充電率と充放電電流とに基づき組電池14の充電率を推定してもよい。
【0051】
○推定値取得部、充電率取得部、電流取得部、判定部、選定制御部及び積算制御部は、それぞれ個別の制御装置であってもよい。
○情報集約装置41は、組電池14が搭載される装置であれば、無人搬送車10とは異なる装置に搭載されていてもよい。例えば、フォークリフト等の産業車両、乗用車、車両以外の電化製品等、組電池14の充電率を推定する必要のある装置であれば、どのような装置であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
12…セルユニット、13…電池セル、14…組電池、17…監視装置としての電池ECU、41…充電率取得部、推定値取得部、電流取得部、判定部、選定制御部、積算制御部及び充電率推定装置として機能する情報集約装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6